説明

燃料用フィルター

【課題】濾過の効率を高めることの可能な燃料用フィルターを提供する。
【解決手段】燃料用フィルターは、濾材シート23によって袋状に形成されるフィルター部材と、フィルター部材内に配設されるフレーム部材とを備えている。フレーム部材は、濾材シート23をフィルター部材の内側から外側へ押す複数のフレームリブ33を有し、濾材シート23は、積層された複数の不織布及び織物メッシュを互いに固定する溶着部28を有する。この溶着部28は、複数のフレームリブ33と対向する位置に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内で燃料を濾過する燃料用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や自動二輪車等における燃料タンク内の燃料は、通常、燃料タンク内に配設された燃料用フィルターを通して内燃機関に供給される。こうした燃料用フィルターとしては、例えば特許文献1に記載のように、メッシュ織物や不織布等の濾材シートから形成される袋状のフィルター部材を用いるものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のフィルター部材は、一つの折り目で二重に折り重ねられた濾材シートを有し、該折り目で区画された一対のシート部分が互いの縁で溶着されることにより袋状に形成されている。また、袋状に形成されたフィルター部材の内部には、一対のシート部分を該内部において互いに離間させる骨格としてのフレーム部材が配設されている。そして、一対のシート部分の各々で濾過された燃料は、これらシート部分で囲まれるフィルター部材の内部に一旦貯留されたのち、該フィルター部材の内部から内燃機関へ供給される。このような構成によれば、フィルター部材の外表面が一対のシート部分によって構成されるため、フィルター部材が有する外表面の略全体で濾過機能が発現するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3353986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した燃料用フィルターにおいては、一対のシート部分の双方で濾過の機能が発現されるようになるものの、濾材シートにおける下記(a)(b)の領域で濾過の効率が低いものとなっている。
【0006】
(a)フィルター部材のうちでフレーム部材と対向する領域
(b)フィルター部材のうちで溶着部が占有する領域
詳述すると、上述したフィルター部材は、燃料タンク内における燃料の圧力やフューエルポンプの稼動による内部空間の負圧を受けてフレーム部材へ押圧される。そのため、フィルター部材が有する外表面の略全体で濾過機能が発現するようになるものの、濾材シートとフレーム部材とが接触する部分では、フィルター部材の内部空間へ燃料が流入し難くなる結果、燃料用フィルターの濾過の効率が低くなる。
【0007】
また、上述した燃料の中には、水、金属粉、土砂等、互いにサイズの異なる多数の異物が混入している。それゆえに、フィルター部材を構成する濾材シートにも、濾過対象のサイズに合わせて、互いに異なる複数のメッシュ織物や不織布が求められる。一方、複数のメッシュ織物や不織布を用いて濾材シートを構成する場合には、積層された不織布の位置が互いにずれることを抑えるため、積層された不織布を互いに固定する複数の溶着部をフィルター部材の全体にわたり離散的に形成する必要がある。そのため、このようにして溶着された溶着部においても、フィルター部材の内部空間へ燃料が流入し難くなる結果、燃料用フィルターの濾過の効率が低くなる。
【0008】
本発明は、上記実状を鑑みてなされてものであり、その目的は、濾過の効率を高めることの可能な燃料用フィルターを提供することになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、濾材シートによって袋状に形成されるフィルター部材と、前記フィルター部材内に配設されるフレーム部材とを備え、前記フレーム部材は、前記濾材シートに向かって突出する複数のフレームリブを有し、前記濾材シートは、積層された複数の不織布と、前記複数のフレームリブの各々と対向するように前記複数の不織布の各々に形成されるとともに、前記複数の不織布を互いに固定する溶着部とを有することを要旨とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、フィルター部材の溶着部とフレーム部材のフレームリブとが互いに対向する。これにより、溶着部によって濾過の効率が低下する領域とフレームリブによって濾過の効率が低下する領域とが重なるようになる。それゆえに、フィルター部材のうちで溶着部を除いた領域では、それの濾過機能が発現されやすくなるため、濾過の効率を高めることが可能である。
【0011】
請求項2に記載の発明において、前記溶着部は、前記フィルター部材の内面に凹状に形成され、前記フレームリブは、前記溶着部と対向する対向面を有し、該対向面が該溶着部の外側と当接することを要旨とする。
【0012】
ここで、積層された不織布を、例えば超音波溶着法によって溶着する場合、溶着治具の押圧及び樹脂繊維の溶融・固化によって、溶着部はその周辺よりも窪むことになる。そして、このような溶着部に対向するフレームリブが同溶着部に入り込んだ状態で燃料用フィルターが振動するとなれば、フレーム部材及びフィルター部材に機械的な負荷を与えてしまう。この点、請求項2に記載のフレームリブによれば、溶着部と対向するフレームリブの対向面が、凹状に形成された溶着部の外側と当接するため、溶着部にフレームリブが入り込むことを抑えることができる。それゆえに、フレーム部材及びフィルター部材に対する機械的な負荷を抑えることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記フレームリブには、前記溶着部の外側と当接する複数の当接部が凸設されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明によれば、溶着部の外側と複数の当接部とが当接するため、フレームリブの対向面の全体とフィルター部材とが当接する構成に比べて、フレームリブとフィルター部材との接触面積を小さくすることができる。それゆえに、濾過の効率をさらに高めることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記フィルター部材は、一つの面に沿って扁平な形状に形成され、前記フレーム部材は、前記一つの面に沿って扁平な形状に形成されたベースフレームを有し、前記フレームリブは、前記ベースフレームから前記濾材シートに向かって突出していることを要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明のように、フレームリブは、ベースフレームから濾材シートに向かって突出させることによって構成することができる。
請求項5に記載の発明は、前記フレーム部材は、前記濾材シートが一つの折り目で二重に折り重ねられて、該折り目で区画された一対のシート部分が前記ベースフレームを挟むように、該一対のシート部分が互いの縁で溶着されることにより袋状に形成され、前記フレームリブは、前記ベースフレームにおける一方の前記シート部分側にのみ形成され、前記溶着部は、前記ベースフレームが含まれる面を対称面として面対称となるように前記一対のシート部分の各々に形成されていることを要旨とする。
【0016】
一対のシート部分に挟まれたベースフレームにおいて、該ベースフレームにおける一方
のシート部分側にのみフレームリブが形成されると、ベースフレームにおける他方のシート部分側では、ベースフレームそのものがフィルター部材の内面に当接することになる。そのため、ベースフレームにおける他方のシート部分側では、溶着部に加え、ベースフレームも濾過効率を低下させる要因となる。この点、請求項5に記載の発明によれば、ベースフレームに対して対称となるように一対のシート部分の各々に溶着部が形成されている。そのため、一対のシート部分の各々に形成された溶着部が、フレーム部材を挟んで互いに対向することになる。すなわち、対向する溶着部の一方がフレームリブに、他方がベースフレームに対向する。それゆえに、これらの領域が重なる分だけ濾過に寄与する領域をさらに増やすことができるため、濾過の効率を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る燃料用フィルターを用いた燃料供給装置の概略構成を模式的に示す図。
【図2】(a)燃料用フィルターの斜視構造を示す斜視図であって、一部、燃料用フィルター部材の内部構造を示す図、(b)溶着部における濾材シートの断面構造を示す断面図。
【図3】フレーム部材の斜視構造を示す斜視図。
【図4】連結部付近における燃料用フィルターの断面構造を断面図。
【図5】フィルター部材を構成する濾材の展開図。
【図6】(a)フレームリブの側面図、(b)フレームリブの平面図。
【図7】フィルター部材の重畳溶着部とフレーム部材の屈曲部分との関係を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る燃料用フィルターの一実施の形態について図1〜図7を参照して説明する。まず、燃料用フィルターが用いられる燃料供給装置について説明する。図1は、燃料供給装置の概略構成を模式的に示す図である。
【0019】
図1に示されるように、燃料供給装置10は、燃料Fが貯留された燃料タンク11と、該燃料タンク11内に配置されたチャンバ12及びフューエルポンプ13と、該チャンバ12内に配設される燃料用フィルター20とを有している。燃料用フィルター20は、屈曲可能に構成されて燃料Fを濾過するフィルター体21と、フィルター体21に接続される連結部材22とを有している。フィルター体21は、その一端がチャンバ12の底壁を押圧するように屈曲しており、上記連結部材22を介してフューエルポンプ13に接続されている。フューエルポンプ13は、フランジ14によって燃料タンク11に固定された供給用配管15に接続されている。そして燃料供給装置10は、フューエルポンプ13が駆動されることによって、チャンバ12内の燃料Fを燃料用フィルター20で濾過し、供給用配管15を通じて、その濾過された燃料Fを内燃機関16へ供給する。
【0020】
次に、上述した燃料用フィルター20について図2〜図6を参照して詳しく説明する。図2(a)は、燃料用フィルターの斜視構造を示す斜視図であって、同図2(a)では、燃料用フィルターの内部構造を説明するために、燃料用フィルターの一部が切り欠かれた状態を示す。図2(b)は、溶着部における濾材シートの断面構造を示す断面図である。図3は、フレーム部材の斜視構造を示す斜視図である。図4は、連結部付近における燃料用フィルターの断面構造を示す断面図である。
【0021】
図2(a)に示されるように、燃料用フィルター20は、一つの方向に延びるフィルター体21と、該フィルター体21の長手方向の一端に連結された連結部材22とを有している。フィルター体21は、互いに対向する上側シート部分23a及び下側シート部分23bによって扁平な袋状に形成されるフィルター部材24と、該フィルター部材24内に
配設されるフレーム部材25とによって構成される。
【0022】
フィルター部材24は、複数のシート状の合成繊維が積層された1枚の濾材シート23から形成されている。フィルター部材24は、一つの折り目で二重に折り重ねられた上記濾材シート23を有し、該折り目で区画された上側シート部分23aと下側シート部分23bとが互いの縁で溶着されることにより袋状に形成されている。図2(b)に示されるように、本実施形態の濾材シート23は、ポリプロピレン繊維で形成された不織布26aを最内層として有し、油と水とを分離可能な平織りのメッシュ織物27を最外層として有している。これら不織布26aとメッシュ織物27との間には、内側に位置するものほどメッシュのサイズが小さくなるように、不織布26b,26cが積層されている。
【0023】
こうした濾材シート23で構成されるフィルター部材24においては、外側に位置する層で粒径の大きな異物が捕捉され、内側に位置する層で粒径の小さな異物が捕捉される。すなわち、サイズの異なる異物が互いに異なる層で捕捉されるため、各層における目詰まりを抑えることができる。なお、スパンボンド法で形成された不織布を最内層である不織布26aに採用し、且つメルトブロウン法で形成された不織布を中間層である不織布26b,26cに採用すれば、相対的に高い剛性が不織布26aに与えられるため、不織布26aとフレーム部材25との擦れによって不織布からパーティクルが発生することを抑えることができる。
【0024】
濾材シート23には、最内層となる不織布26a側から不織布26a,26b,26c、メッシュ織物27を超音波溶着法で溶着させた複数の溶着部28が離散的に設けられている。複数の溶着部28の各々は、フィルター部材24の内面に円形孔状に形成されている。このような溶着部28が形成されることによって、積層された不織布26a,26b,26c、及びメッシュ織物27が互いに固定される。そのため、燃料用フィルター20の使用時において、これら不織布26a,26b,26c、及びメッシュ織物27が互いにずれることを抑えることが可能である。また、不織布26a,26b,26c、及びメッシュ織物27が積層された母材から濾材シート23を切り出すこと、さらには、これらが積層された状態で燃料用フィルター20を組み立てることが可能である。
【0025】
フィルター部材24内に配設されるフレーム部材25は、可撓性を有する合成樹脂で形成されている。図3に示されるように、フレーム部材25は、長手方向に延びる複数の第1フレーム31と、長手方向と直交する短手方向に延びる複数の第2フレーム32とによって構成される格子状のベースフレーム30を有している。ベースフレーム30には、第1フレーム31と第2フレーム32とが交差する箇所に、下側シート部分23bに向かって突出するフレームリブ33が設けられている。このフレームリブ33は、その先端がフィルター部材24の内面に当接し、該先端がフィルター部材24の内面をフィルター部材24の外側へ押すことによって、ベースフレーム30と下側シート部分23bとの間隔を保持する。なお、このフレームリブ33は、フィルター部材24の外表面に対向する平面視において、すなわち下側シート部分23bに対向する平面視において、溶着部28よりも大きくなるように形成されている(図5参照)。
【0026】
また、ベースフレーム30は、連結部材22が連結される連結部35を有している。連結部35は、第1フレーム31及び第2フレーム32に支持される略円筒状のフランジ部36と、フランジ部36から上記フレームリブ33とは反対方向に延びる略円筒状の吸込み部37とを有している。また連結部35には、フランジ部36から下側シート部分23b側に突出する4つの吸込み用リブ39がフランジ部36の周方向に等配されている。この吸込み用リブ39は、フィルター部材24の内面に当接して連結部35のフランジ部36と下側シート部分23bとの間隔を保持し、吸込み部37が下側シート部分23bで塞がれることを防止する。図4に示されるように、連結部35におけるフランジ部36の一
部は、上側シート部分23aに設けられた貫通孔40を通してフィルター部材24の外側に露出している。また、連結部35における吸込み部37は、同貫通孔40を通してフィルター部材24の外側に突出する。
【0027】
ベースフレーム30は、長手方向の中央よりも連結部35側に、ベースフレーム30の短手方向の全幅にわたる屈曲部分41を有している。屈曲部分41は、ベースフレーム30において、該屈曲部分41以外の部分よりも、隣り合う第1フレーム31の間隔が大きく、且つ隣り合う第2フレーム32の間隔が大きい部分である。屈曲部分41を構成する各第1フレーム31には、短手方向に並ぶように、肉厚が薄い薄肉部42が設けられている。すなわち屈曲部分41は、他の部分よりも剛性が低くなるように構成されており、フレーム部材25に外力が作用したときには、該屈曲部分41以外の部分よりも優先的に屈曲される部分である。こうした屈曲部分41が設けられることによって、屈曲部分41が設けられていない構成のフレーム部材に比べて、上記外力に基づくフレーム部材25への機械的な負荷を軽減することができる。
【0028】
このように構成されるフィルター体21によれば、フューエルポンプ13が稼動することで貯留空間43が負圧状態になると、上側シート部分23aは、ベースフレーム30そのものによって、フィルター体21の外側へ押される。また、下側シート部分23bは、フレームリブ33、及び吸込み用リブ39によって、これもまたフィルター体21の外側へ押される。それゆえに、上側シート部分23aと下側シート部分23bとの間隔が保持され、これにより上側シート部分23aと下側シート部分23bとの間に所定のサイズで貯留空間43が形成される。そして、上側シート部分23aの略全体と下側シート部分23bの略全体とで濾過された燃料Fが、こうした貯留空間43を通じて吸込み部37に流入する。
【0029】
図4に示されるように、連結部材22の下端部46は、フレーム部材25の連結部35に連結され、連結部材22の上端部47は、フューエルポンプ13に連結される(図1参照)。連結部材22には、下端部46から上端部47までを貫通するように連絡通路45が形成され、この連絡通路45には、その下端部46側において連結部35の吸込み部37が挿入される。また連結部材22の下端部46は、連結部35のフランジ部36と該下端部46とによって上側シート部分23aが挟持された状態で、フランジ部36に連結されている。そして、フューエルポンプ13が稼動すると、吸込み部37に流入した燃料Fは、連結部材22の連絡通路45を通じてフューエルポンプ13に導入される。
【0030】
次に、上述したフィルター部材24について図5を参照してさらに詳しく説明する。図5は、上側シート部分23aと下側シート部分23bとが溶着された部分でフィルター部材24を切り開いたフィルター部材24の展開図であって、図中のドット領域は、燃料用フィルター20においてフレームリブ33と対向する領域を示している。
【0031】
上記フューエルポンプ13が稼動すると、上述したフィルター部材24は、燃料タンク11内における燃料Fの圧力やフィルター部材24内の負圧によって、フレーム部材25へ押圧される。その結果、濾材シート23とフレーム部材25とが接触する部分では、燃料Fが流れ難くなる。また、濾材シート23のうち、合成繊維が溶着された溶着部28でも、燃料Fが流れ難くなる。そのため、上述した燃料用フィルター20によれば、上側シート部分23aと下側シート部分23bの双方で濾過の機能が発現されるようになるものの、濾材シート23のうちで、下記(イ)〜(ハ)の領域では、濾過の効率が低くなる。
【0032】
(イ)下側シート部分23bのうちでフレームリブ33と対向する領域
(ロ)上側シート部分23aのうちでベースフレーム30と対向する領域
(ハ)フィルター部材24のうちで溶着部28が占有する領域
そこで、本実施の形態では、図5に示されるように、フィルター部材24の溶着部28とフレーム部材25のフレームリブ33とが互いに対向するように、下側シート部分23bでは、フレームリブ33の位置に合わせて溶着部28が設けられている。また、上側シート部分23aでは、ベースフレーム30が含まれる面を対称面として上側シート部分23aの溶着部28と下側シート部分23bの溶着部28とが面対称となるように、溶着部28が設けられている。このような溶着部28の位置は、例えば、以下のようにして設定することが可能である。
【0033】
すなわち、ベースフレーム30が広がる面と平行な二次元の座標系において、複数のフレームリブ33の位置は、連結部35を基準点として一義的に定められる。また、この連結部35の位置と貫通孔40の位置とは、燃料用フィルター20において一致するものである。それゆえに、連結部35の位置と貫通孔40の位置とが一致するような座標変換を各フレームリブ33の位置に施すことによって、フレームリブ33の直上となる濾材シート23上の位置やフレームリブ33と対向する濾材シート23上の位置が定められる。
【0034】
こうした構成であれば、下側シート部分23bの溶着部28によって濾過の効率が低下する領域とフレームリブ33によって濾過の効率が低下する領域とが重なるようになる。また上側シート部分23aの溶着部28によって濾過の効率が低下する領域とベースフレーム30そのものによって濾過の効率が低下する領域とが重なるようになる。すなわち、上記(ハ)の領域が、上記(イ)の領域、あるいは上記(ロ)の領域と重なるようになる。それゆえに、フィルター部材24のうちで溶着部28を除いた領域では、それの濾過機能が発現されやすくなるため、濾過の効率を高めることが可能である。
【0035】
次に、フレーム部材25のフレームリブ33について図6を参照してさらに詳しく説明する。図6(a)は、フレームリブ33の側面図である。図6(b)は、フレームリブ33の平面図であって、溶着部28の位置を二点差線で示す図である。
【0036】
図6(a)に示されるように、フレームリブ33において、溶着部28と対向する対向面には、その長手方向の両端に当接部54,55が形成されている。これら当接部54,55は、図6(b)に示されるように、フィルター部材24の外表面に対向する平面視にて、溶着部28から少なくとも一部がはみ出すように、すなわち溶着部28の外側と当接するように形成されている。
【0037】
こうした当接部54,55がフレームリブ33に形成されることによって、該当接部54,55の形成されていないフレームリブ33に比べて、フィルター部材24の内面では、フレームリブ33との接触面積が小さくなる。すなわち、下側シート部分23bにおいては、フレームリブ33によって押圧される面積が小さくなる。そのため、フレームリブ33によって燃料Fが流れ難くなることを抑えることができる。
【0038】
また上述したように、フィルター部材24の内面には、溶着部28が凹状に形成されている。そのため、この溶着部28に上記当接部54,55が入り込んだ状態で燃料用フィルター20が振動するとなれば、フレーム部材25及びフィルター部材24に対して大きな機械的な負荷を与えてしまう虞がある。この点、本実施の形態では、当接部54,55が溶着部28の外側と当接するように形成されている。こうした構成であれば、当接部54(55)が溶着部28に入り込んでしまうことが防止されることから、フレーム部材25及びフィルター部材24に対する機械的な負荷を抑えることができる。
【0039】
ちなみに、濾材の周縁部を溶着することによって袋状に形成されるフィルター部材では、周縁部を構成する辺が長くなるとその辺を一度で溶着することが困難になる。図7に示されるように、フィルター部材24では、長手方向に延びる周縁部である長辺61と短手
方向に延びる周縁部である短辺62とにおいて溶着がなされているが、長辺61を溶着させる際に複数回の溶着が実施されている。そして、フィルター部材24の長辺61では、溶着されていない領域を確実に無くすべく、一回の溶着によって形成される溶着領域の端同士が互いに重なるよう、上記複数回の溶着が実施される。そのため、フィルター部材24の長辺61には、上記溶着領域の端が互いに重なる重畳溶着部63が形成される。なお、本実施の形態では、このような重畳溶着部63が長辺61の中央に形成されるように周縁部の溶着が実施されている。すなわち、フレーム部材25の屈曲部分41を避けた位置であって、該屈曲部分41に隣接する位置に上記重畳溶着部63が形成されるように周縁部が溶着されている。
【0040】
ここで、フィルター体21を屈曲させるときには、上述した周縁部の溶着に基づく復元力が反力として作用する。そして、周縁部のうちで剛性が高い上記重畳溶着部63の復元力は、該重畳溶着部63以外の周縁部のものよりも大きい。そのため、上記重畳溶着部63が屈曲部分41と重なるように形成されるとなれば、フィルター体21が屈曲し難くなる虞がある。これに対し、上述した構成によれば、屈曲部分41に隣接する位置に上記重畳溶着部63が形成されるため、フィルター体21が屈曲する際には、重畳溶着部63の復元力が反力として作用し難くなる。それゆえに、フィルター体21の屈曲を円滑に実行することが可能である。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態に係る燃料用フィルター20によれば、以下列記するような効果が得られるようになる。
(1)上記実施形態によれば、フィルター部材24の溶着部28とフレーム部材25のフレームリブ33とが互いに対向する。これにより、溶着部28によって濾過の効率が低下する領域とフレームリブ33によって濾過の効率が低下する領域とが重なるようになる。それゆえに、フィルター部材24のうちで溶着部28を除いた領域では、それの濾過機能が発現されやすくなるため、濾過の効率を高めることが可能である。
【0042】
(2)上記実施形態のフレームリブ33によれば、溶着部28と対向するフレームリブ33の対向面が、凹状に形成された溶着部28の外側と当接するため、溶着部28にフレームリブ33が入り込むことを抑えることができる。それゆえに、フレーム部材及びフィルター部材に対する機械的な負荷を抑えることができる。
【0043】
(3)上記実施形態によれば、溶着部28の外側と複数の当接部54,55とが当接するため、フレームリブ33の対向面の全体とフィルター部材24とが当接する構成に比べて、フレームリブ33とフィルター部材24との接触面積を小さくすることができる。それゆえに、濾過の効率をさらに高めることができる。
【0044】
(4)上記実施形態によれば、ベースフレーム30に対して対称となるように一対のシート部分23a,23bの各々に溶着部28が形成されている。そのため、一対のシート部分23a,23bの各々に形成された溶着部28が、フレーム部材25を挟んで互いに対向することになる。すなわち、対向する溶着部28の一方がフレームリブ33に、他方がベースフレーム30に対向する。それゆえに、これらの領域が重なる分だけ濾過に寄与する領域をさらに増やすことができるため、濾過の効率を高めることが可能である。
【0045】
(5)上記実施形態では、屈曲部分41に隣接する位置に上記重畳溶着部63が形成されるようにした。そのため、フィルター体21が屈曲する際には、重畳溶着部63の復元力が反力として作用し難くなる。それゆえに、フィルター体21の屈曲を円滑に実行することが可能である。
【0046】
なお、上記実施の形態は、以下のような態様をもって実施することもできる。
・上記実施形態では、1つの濾材シート23が折り曲げ線50で折り曲げられるとともに、その折り曲げによって重なる周縁部が溶着されることによって、フィルター部材24が袋状に形成されている。これに限らず、フレームリブ33と対向する位置に溶着部28を有する濾材シートと貫通孔40が形成された濾材シートとが互いに重ね合わされ、各々の周縁部が溶着されることによって、袋状のフィルター部材が形成される構成であってもよい。こうした構成であっても、上記(1)〜(3)に記載した効果と同様の効果を得ることができる。
【0047】
・上記実施形態では、上側シート部分23aにおける溶着部28の位置と、下側シート部分23bにおける溶着部28の位置とが、ベースフレーム30が含まれる面を対称面にして面対称である。これに限らず、下側シート部分23bにおける溶着部28の位置は、適宜変更することが可能である。例えば、下側シート部分23bにおける溶着部28の位置は、下側シート部分23bにおける溶着部28の位置とは関係なく、ベースフレーム30と対向する位置であってもよい。こうした構成であっても、上記(1)〜(3)に記載した効果と同様の効果を得ることができる。
【0048】
・上記実施形態におけるフレームリブは、ベースフレーム30から下側シート部分23b側に延びるように形成されている。これに限らず、フレームリブは、ベースフレーム30から上側シート部分23a側に延びるように形成されてもよい。あるいは、ベースフレーム30から下側シート部分23b側に延びるリブとベースフレーム30から上側シート部分23a側に延びるフレームリブ33とによってフレームリブが構成されてもよい。この際、上側シート部分23a側に延びるフレームリブ33と上側シート部分23aの溶着部28とが対向する構成であればよい。こうした構成であっても、上記(1)〜(3)に記載した効果と同様の効果を得ることができる。
【0049】
・上記実施形態では、フレームリブ33の先端が当接部54,55を有するが、この当接部54,55が割愛されて、フレームリブ33の先端が平坦面で形成されてもよい。こうした構成であっても、上記(1)(2)に記載した効果と同様の効果を得ることができる。あるいは、フレームリブの先端に3つ以上の当接部が形成される構成であってもよい。
【0050】
・上記実施形態では、フィルター部材24の内面うちでフレームリブ33と当接する当接領域が、溶着部28ではなく、該溶着部28の外側である。これに限らず、フィルター部材24の内面うちでフレームリブ33と当接する当接領域は、溶着部28であってもよい。こうした構成であっても、上記(1)に記載した効果を得ることができる。
【0051】
・上記実施形態のフレーム部材25は、格子状のベースフレーム30に形成されたフレームリブ33をフレームリブとして有している。これに限らずフレーム部材は、袋状のフィルター部材に貯留空間を形成するものであればよい。例えば、フレーム部材25は、波状に形成されるとともに、その湾曲する折り返し部分によってフィルター部材を内側から外側へ押し、この折り返し部分をフレームリブとして具体化する構成であってもよい。こうした構成であっても、上記(1)に記載した効果を得ることができる。
【0052】
・上記実施形態では、図5に示されるように、複数の溶着部28のうちの一部がフレームリブ33と対向するように形成されている。これを変更して、複数の溶着部28の全てが、フレームリブ33と対向するように形成されてもよい。こうした構成であれば、濾過の効率をさらに高めることができる。
【0053】
・上記実施形態のフィルター部材24には、点状の溶着部28が形成されている。これに限らず溶着部は、例えば、短手方向に延びる形状であってもよいし、長手方向に延びる
形状であってもよい。また、フィルター部材24の外側、すなわちメッシュ織物27側から溶着されているものであってもよい。こうした構成の溶着部であっても、溶着部とフレームリブとが対向するように溶着部が形成されることによって、上記(1)に記載した効果と同様の効果を得ることができる。
【0054】
・上記実施形態では、フレーム部材25に形成されたフレームリブ33の位置に基づいて溶着部28の位置が設定されている。これを変更して、フィルター部材に貯留空間を形成するというフレームリブ33の機能が発現されるようにフレームリブ33が形成され、且つ濾材シートにおける不織布のずれを抑えるという溶着部28の機能が発現されるように溶着部28が形成される構成であれば、例えば溶着部28の位置に基づいてフレームリブ33の位置が設定されてもよい。
【0055】
・上記実施形態の濾材シート23は、不織布26a,26b,26c、メッシュ織物27を積層した4層構造としたが、溶着部が形成されているのであれば、2層構造、3層構造、あるいは5層以上の積層構造体であってもよい。
【0056】
・上記実施形態のフレーム部材25は、屈曲部分41を1つ有している。これに限らず、フレーム部材25は、複数の屈曲部分を有していてもよい。
・上記実施形態では、重畳溶着部63が、フィルター部材24の長辺の中央位置、すなわちフレーム部材25の屈曲部分41とは異なる位置に形成されている。これを変更して、重畳溶着部63は、屈曲部分41に形成されてもよい。こうした構成では、フィルター部材24における屈曲部分の剛性が高められるため、屈曲部分41を挟む2つの領域が該屈曲部分41に対して屈曲するように、フィルター部材24の屈曲を利用者に対して促すことが可能である。また、屈曲の解除時におけるフィルター部材24の復元力を向上させることも可能である。
【符号の説明】
【0057】
F…燃料、10…燃料供給装置、11…燃料タンク、12…チャンバ、13…フューエルポンプ、14…フランジ、15…供給用配管、16…内燃機関、20…燃料用フィルター、21…フィルター体、22…接続部材、23…濾材シート、23a…上側シート部分、23b…下側シート部分、24…フィルター部材、25…フレーム部材、26a,26b,26c…不織布、27…メッシュ織物、28…溶着部、29…凹部、30…ベースフレーム、31…第1フレーム、32…第2フレーム、33…フレームリブ、35…連結部、36…フランジ部、37…吸込み部、39…吸込み用リブ、40…貫通孔、41…屈曲部分、42…薄肉部、43…貯留空間、45…連絡通路、46…下端部、47…上端部、50…折り曲げ線、53…切り欠き部、54,55…当接部、61…長辺、62…短辺、63…重畳溶着部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材シートによって袋状に形成されるフィルター部材と、
前記フィルター部材内に配設されるフレーム部材とを備え、
前記フレーム部材は、
前記濾材シートに向かって突出する複数のフレームリブを有し、
前記濾材シートは、
積層された複数の不織布と、
前記複数のフレームリブの各々と対向するように前記複数の不織布の各々に形成されるとともに、前記複数の不織布を互いに固定する溶着部とを有する
ことを特徴とする燃料用フィルター。
【請求項2】
前記溶着部は、
前記フィルター部材の内面に凹状に形成され、
前記フレームリブは、
前記溶着部と対向する対向面を有し、該対向面が該溶着部の外側と当接する
請求項1に記載の燃料用フィルター。
【請求項3】
前記フレームリブには、
前記溶着部の外側と当接する複数の当接部が凸設されている
請求項2に記載の燃料用フィルター。
【請求項4】
前記フィルター部材は、
一つの面に沿って扁平な形状に形成され、
前記フレーム部材は、
前記一つの面に沿って扁平な形状に形成されたベースフレームを有し、
前記フレームリブは、
前記ベースフレームから前記濾材シートに向かって突出している
請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料用フィルター。
【請求項5】
前記フレーム部材は、
前記濾材シートが一つの折り目で二重に折り重ねられて、該折り目で区画された一対のシート部分が前記ベースフレームを挟むように、該一対のシート部分が互いの縁で溶着されることにより袋状に形成され、
前記フレームリブは、
前記ベースフレームにおける一方の前記シート部分側にのみ形成され、
前記溶着部は、
前記ベースフレームが含まれる面を対称面として面対称となるように前記一対のシート部分の各々に形成されている
請求項4に記載の燃料用フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−87725(P2012−87725A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236579(P2010−236579)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】