説明

燃料電池、その端部シール部材及び端部シール部材の製造方法

【課題】端部シール部材の要求性能を十分に備えた安価な燃料電池及びその端部シール部材を提供する。
【解決手段】多孔質カーボン板40a,40b,40c,40dのガス流路に平行な外延部には、それぞれのガスが対極に漏洩しないように端部シール部材10a,10b,10c,10dが配置される。この端部シール部材10a,10b,10c,10dは、膨張黒鉛シートなどの本体11を収縮性樹脂チューブ12に挿入し、両端は熱融着により封止するとともに、一部にガス抜き穴15aを開けた後、収縮されて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池、その端部シール部材及び端部シール部材の製造方法に関し、特に電解質を保持した電解質層を燃料極触媒層と空気極触媒層とで挟み、燃料極触媒層に燃料ガスのガス流路を有する多孔質材及び空気極触媒層に酸化剤ガスのガス流路を有する多孔質材料を配置した単位セルが積層される燃料電池、その端部シール部材及び端部シール部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池は、燃料の化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換できることから発電効率が高く環境にもやさしいとして、多様な用途への普及が期待されている。
図5は、燃料電池の単位セルを2積層した状態を示した概略構成図である。
【0003】
燃料電池は、セパレータ91a,91bの間に、ガス流路を有する多孔質カーボン板93a,93bと、対極を構成する電極部94a,94bが挟持されている。電極94aと電極94bとの間には、図示しない電解質層が形成されている。同様に、セパレータ91b,91cの間に、多孔質カーボン板93c,93dと、対極を構成する電極部94c,94dが挟持されている。多孔質カーボン板93a,93b,93c,93dのガス流路に平行な外延部には、それぞれのガスが対極に漏洩しないように端部シール部材92a,92b,92c,92dが配置されている。
【0004】
端部シール部材92a,92b,92c,92dには、ガス不透過性とともに電解質に対する耐食性が求められている。また、ガス流路の高さを確保する必要もあることから、2mm程度の厚さも必要である。さらに、電解質を多く含んでしまうと端部シール部材92a,92b,92c,92dの端面において上下セル間で電解質が液絡し、上下セル間での電解質の移動などの問題が発生する可能性があるため、端面で電解質が液絡しないことが求められた。これらの条件を満足する端部シール部材92a,92b,92c,92dとして、従来は黒鉛化された緻密な炭素材や、セパレータを端部シール部材の幅に切断してフッ素樹脂フィルムを介して積層したものが使用されていたが高価であった。
【0005】
そこで、安価な膨張黒鉛シートにパーフルオロエチレン系樹脂によりはっ水処理を施して端部シール部材とする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、側端部のガスシール工程を簡略化するため、多孔質カーボン板を樹脂系の収縮チューブで被覆して端部をシールする技術もある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3838403号公報
【特許文献2】特開平3−205764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のような燃料電池の端部シール部材の構成には、以下のような問題点があった。
膨張黒鉛シートをはっ水処理して端部シール部材に用いる技術は安価に端部シール部材を構成することができるが、パーフルオロエチレン系樹脂によるはっ水処理は運転時間とともに劣化するという問題点がある。数千時間程度の運転では電解質に対する不浸透性を保っているが、数万時間の運転時間では不浸透性の低下が見られる。
【0007】
また、多孔質カーボン板を樹脂系の収縮チューブで被覆して端部シール部材にする技術では、収縮チューブの両端は開放状態であり、別途工程が必要となるという問題点がある。開放状態の部分をガスシール及び電解質不浸透性とするためには、例えば、開放状態の端面に別途樹脂を含浸させたり、別の樹脂フィルムを端面に融着したりするなどの工程が必要となるため、コスト増の要因となっていた。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、端部シール部材の要求性能を十分に備えた安価な燃料電池、その端部シール部材及び端部シール部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、電解質を保持した電解質層を燃料極触媒層と空気極触媒層とで挟み、燃料極触媒層に燃料ガスのガス流路を有する多孔質材及び空気極触媒層に酸化剤ガスのガス流路を有する多孔質材を配置した単位セルが積層される燃料電池において、多孔質材に形成されるガス流路と平行な端部に、膨張黒鉛シートを含む所定の端部シール材が収縮性樹脂チューブによって被覆され、収縮性樹脂チューブの両端が熱融着によって封止され、収縮された端部シール部材が配置される燃料電池、が提供される。
【0010】
このような燃料電池によれば、膨張黒鉛シートを含む所定の端部シール材が収縮性樹脂チューブによって被覆され、収縮性樹脂チューブの両端が熱融着によって封止された端部シール部材が、多孔質材に形成される燃料電池のガス流路と平行な端部に配置される。
【0011】
また、上記課題を解決するために、上記の燃料電池に配置される端部シール部材であって、所定の端部シール材が収縮性樹脂チューブによって被覆され、収縮性樹脂チューブの両端が熱融着によって封止された端部シール部材が提供される。
【0012】
さらに、上記課題を解決するために、上記端部シール部材の製造方法であって、所定の端部シール材を収縮性樹脂チューブによって被覆する手順と、収縮性樹脂チューブの端部を熱融着によって溶断して封止する手順と、収縮性樹脂チューブを収縮させる手順と、を有する端部シール部材の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
開示の燃料電池、その端部シール部材及び端部シール部材の製造方法によれば、端部シール材は、収縮性樹脂チューブによって被覆され、収縮性樹脂チューブの両端が熱融着されて封止される。これにより、端部シール部材の両端を含めた全面が樹脂で被覆されるため、ガス不透過性と電解質に対する耐食性を備えることができる。また、端部シール部材の両端は、収縮性樹脂チューブの両端を熱融着して被覆されるので、両端のシールのために別の樹脂フィルムを融着するなどの工程を省くことができる。この結果、端部シール部材の要求性能を十分に備えた安価な燃料電池及びその端部シール部材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、第1の実施の形態の燃料電池の端部シール部材単体を示した図である。
端部シール部材10は、本体11が収縮性樹脂チューブ12によって被覆されている。
【0015】
本体11は、図では点線によって表されており、膨張黒鉛シートを含む所定の端部シール材で形成される。なお、図では説明のため収縮性樹脂チューブ12との間に隙間があるが、実際には密着される。また、所定の端部シール材は、端部シール材として使用される材を含み、膨張黒鉛シートの他に、例えば、多孔質カーボン板、焼成カーボン板などがある。
【0016】
収縮性樹脂チューブ12は、フッ素樹脂がチューブ状に形成されており、加熱することにより収縮して内部に挿入された本体11を被覆する。使用するフッ素樹脂には、例えば、四フッ化エチレン樹脂(略称PTFE、融点327℃)、フッ化アルキコキシエチレン樹脂(略称PFA、融点300〜310℃)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(略称TFP、融点290〜300℃)などがある。チューブ端14は、端部シール部材10の長手方向両端面の溶断部13で熱融着されることによって封止される。ここでは、チューブ端の14と溶断部13とは同じになる。また、収縮性樹脂チューブ12の任意の箇所にガス抜き用の穴(以下、ガス抜き穴とする)15が開けられる。ガス抜き穴15は、チューブ内のガスの体積変化により収縮性樹脂チューブ12が破損することを防止するためのものであり、必要十分な大きさで任意の個数設けられる。例えば、端部シール部材10の長手方向の両端面にそれぞれ1つずつガス抜き穴15を開け、ガス抜きが均等に行われるようにする。
【0017】
このような端部シール部材10の製造方法について説明する。
収縮性樹脂チューブ12に、膨張黒鉛シートなどで形成される本体11を挿入する。次に、シーラー(熱線式熱融着器)などによってチューブ端14を溶断し、両端を封止する。これにより、本体11全面が樹脂で被覆され、密閉される。次に、収縮性樹脂チューブ12の一部に、直径0.5μm程度のガス抜き穴15を開ける。これにより、チューブ収縮時の内部ガス抜きを行うことができる。次に、本体11全面が収縮性樹脂チューブ12で被覆された端部シール部材10を加熱して収縮性樹脂チューブ12を収縮させ、端部シール部材10が製造される。
【0018】
このような端部シール部材10の製造方法では、収縮性樹脂チューブ12に本体11を挿入した後、チューブの両端を熱融着によって封止することにより、製造工程を簡略化することができる。そして、製造された端部シール部材10は、両端部のガスシール及び電解不浸透性を確保することができる。また、収縮性樹脂チューブ12の一部にガス抜き穴15を開けることにより、収縮性樹脂チューブ12内のガスの体積変化による破損などを防止することができる。
【0019】
図2は、第1の実施の形態の燃料電池の単位セルを2積層した状態を示した図である。
図の燃料電池は、セパレータ30a及びセパレータ30bの間に形成される単位セルと、セパレータ30b及びセパレータ30cの間に形成される単位セルとが2層に積層された状態を示している。
【0020】
セパレータ30a,30b,30cは、ガス不透過性及び電解質に対する耐食性を満たしている。例えば、セルロース繊維からなる紙に熱硬化性樹脂を含浸し、乾燥後積層してプレスし、さらに焼成して作成される。
【0021】
セパレータ30a,30bに挟持される単位セルは、図示しない電解質層の両面に、燃料ガス流路が形成される多孔質カーボン板40aと電極部(燃料電極)50aとを有する燃料極触媒層と、酸化剤ガスまたは空気の流路(以下、空気流路とする)が形成される多孔質カーボン板40bと電極部(空気電極)50bとを有する空気極触媒層とが配置されている。図の例では、燃料ガス流路と空気流路とは、互いに直交するように重ね合わされている。セパレータ30b,30cに挟持される単位セルについても同様に、電解質層の両面に多孔質カーボン板40cと電極部50cとを有する燃料極触媒層と、多孔質カーボン板40dと電極部50dとを有する空気極触媒層とが配置されている。
【0022】
多孔質カーボン板40a,40b,40c,40dのガス流路に平行な外延部には、それぞれのガスが対極に漏洩しないように端部シール部材10a,10b,10c,10dが配置される。例えば、多孔質カーボン板40aのガス流路方向(図面の燃料電池の奥行き方向)の両端にそれぞれ端部シール部材10aが配置されている。他の端部シール部材10b,10c,10dも同様である。この端部シール部材10a,10b,10c,10dは、図1に示した端部シール部材10と同様に形成される。すなわち、膨張黒鉛シートなどの本体11全面が収縮性樹脂チューブ12で被覆されて形成される。また、収縮性樹脂チューブ12の両端は熱融着により封止され、一部にガス抜き穴が開けられている。このような端部シール部材を、端部シール部材に用いられた収縮性樹脂チューブ12よりも融点の低い樹脂フィルムを挟んでセパレータ30a,30b,30cの端部に設置し、ホットプレスにより熱融着する。これにより、燃料電池の端部シール部材が形成される。例えば、セパレータ30aに熱融着される端部シール部材10aは、端部シール部材10aの長手方向両端の端部シール部材端面16aでチューブの両端が熱融着され、端部シール部材端面16aの多孔質カーボン板40aとは反対方向の位置にガス抜き穴15aが形成されている。
【0023】
このような構成の燃料電池では、ガス抜き穴によって、燃料電池の運転中にも生じるチューブ内部のガスの体積変化によるチューブの破損などが防止される。また、両端部も熱融着され、全面が収縮性樹脂チューブで被覆された端部シール材からなる端部シール部材は、要求性能を満たすガス不透過性及び電解質不浸透性を備える。
【0024】
(実施例1) 東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(PF250、厚さ2.5mm、かさ密度0.65g/cc)を18×130mmに切断したものを、グンゼ(株)PFA製熱収縮チューブSMT(厚さ50μm)中に挿入する。熱収縮チューブ端部を白光(株)製ヒートシーラーFV−801により溶断する。そして、溶断部に直径0.5μm程度のガス抜き穴を開ける。その後電気炉中にて180℃、2時間保持して熱収縮チューブを収縮させる。
【0025】
続いて、昭和電工(株)製ガラス状カーボン板(SG−3、厚さ0.6mm)を130×130mmに切断してセパレータとする。熱収縮チューブが密着した膨張黒鉛シートを厚さ25μmのFEPフィルムを180×130mmに切断したものを介してセパレータの両端に設置して、320℃で10分間、0.5MPaにて加圧してセパレータ端部シール部材を得る。
【0026】
上記実施例1により製作された燃料電池は、端部シール部材を透過してのガス洩れ量が10kPaの差圧化で0.1ml/min以下であった。また、電流密度300mA/cm2で2000時間運転後も洩れの増加はなかった。さらに、運転後の分解調査の結果、端部シール部材への電解質の浸入は見られず、腐食や端部シール部材端面での電解質の液絡も発生しなかった。総じて、実施例1により、好的な端部シール部材構成を備えた燃料電池が得られることが確認された。なお、実施例1では、2000時間運転後の洩れの増加がないことが確認されたが、樹脂フィルムで覆われた構造の端部シール部材は40000時間以上の電解質不浸透性が認められており、実施例1についても同様の電解質不浸透性性能が得られると予想される。
【0027】
次に、第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、ガス抜き穴を開ける位置を任意としたが、第2の実施の形態では、端部シール部材の厚さ方向の中央位置よりも上部に開けるとする。
【0028】
図3は、第2の実施の形態の燃料電池の端部シール部材単体を示した図である。図1に示した端部シール部材と同じものには同じ番号を付し、説明は省略する。
端部シール部材20は、収縮性樹脂チューブ12に本体11を挿入し、チューブ端14を溶断して両端を封止した後、収縮性樹脂チューブ12に開けるガス抜き穴21を、端部シール部材20の厚さ方向の中央位置よりも上部に開ける。ガス抜き穴21の大きさは、第1の実施の形態のガス抜き穴15と同様であり、例えば、直径0.5μm程度の穴を開ける。ガス抜き穴21の位置が異なることを除いて、端部シール部材20の材料、製造工程は第1の実施の形態と同様である。
【0029】
このように、ガス抜き穴21を形成することにより、収縮性樹脂チューブ12内のガスの体積変化によって収縮性樹脂チューブ12が破損することを防止することができる。
さらに、ガス抜き穴21を端部シール部材20の厚みの中央よりも上部に開けることにより、チューブ内に凝縮水が溜まった際に、収縮性樹脂チューブ12から凝縮水が垂れ落ちることを防止することができる。
【0030】
樹脂性の収縮チューブには水蒸気透過性があり、運転中にチューブ内に透過した水蒸気が、停止時に凝縮してチューブ内に凝縮水として溜まる場合がある。この状態でガス抜き穴21が端部シール部材20の下部に開いていると、チューブ内の凝縮水がガス抜き穴21から垂れ落ち、構造部材の錆びや電気部品の絶縁性低下の原因となる。よって、ガス抜き穴21を端部シール部材20の上部に開けることにより、凝縮水の垂れ落ちを防止し、構造部材の錆びや電気部品の絶縁性低下を防ぐことが可能となる。
【0031】
図4は、第2の実施の形態の燃料電池の単位セルを2積層した状態を示した図である。図2に示した各部と同じものには同じ番号を付し、説明は省略する。
多孔質カーボン板40a,40b,40c,40dのガス流路に平行な外延部に、それぞれのガスが対極に漏洩しないように端部シール部材20a,20b,20c,20dが配置される。図2に示した第1の実施の形態の端部シール部材10a,10b,10c,10dが端部シール部材20a,20b,20c,20dに置き換わったことを除き、他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0032】
多孔質カーボン板40a,40b,40c,40dのガス流路に平行な外延部には、それぞれのガスが対極に漏洩しないように端部シール部材20a,20b,20c,20dが配置される。この端部シール部材20a,20b,20c,20dは、図3に示した端部シール部材20と同様に形成される。すなわち、膨張黒鉛シートなどの本体11を被覆する収縮性樹脂チューブ12の厚みの中央よりも上部にガス抜き穴21が開けられている。このような端部シール部材を、端部シール部材に用いられた収縮性樹脂チューブ12よりも融点の低い樹脂フィルムを挟んでセパレータ30a,30b,30cの端部に設置し、ホットプレスにより熱融着する。このとき、ガス抜き穴21が上部となる向きに端部シール部材を配置する。これにより、燃料電池の端部シール部材が形成される。例えば、セパレータ30aに熱融着される端部シール部材20aは、端部シール部材20aの長手方向両端の端部シール部材端面22aでチューブの両端が熱融着され、端部シール部材端面22aの多孔質カーボン板40aとは反対方向であって、端部シール部材20aの厚み方向の中央よりも上部にガス抜き穴21aが形成されている。
【0033】
このような構成の燃料電池では、ガス抜き穴によって、燃料電池の運転中にも生じるチューブ内部のガスの体積変化によるチューブの破損などが防止される。さらに、ガス抜き穴の位置を端部シール部材の厚みの中央よりも上部とすることによって、収縮性樹脂チューブ12内に凝縮水が溜まった際に、チューブ内から凝縮水が垂れ落ちることを防止することができる。また、両端部も熱融着され、全面が収縮性樹脂チューブ12で被覆された端部シール材からなる端部シール部材は、要求性能を満たすガス不透過性及び電解質不浸透性を備える。
【0034】
(実施例2) 東洋炭素(株)製膨張黒鉛シート(PF250、厚さ2.5mm、かさ密度0.65g/cc)を18×130mmに切断したものを、グンゼ(株)PFA製熱収縮チューブSMT(厚さ50μm)中に挿入する。熱収縮チューブ端部を白光(株)製ヒートシーラーFV−801により溶断する。そして、溶断部の上部(溶断部の中央よりも上)に直径0.5μm程度のガス抜き穴を開ける。その後電気炉中にて180℃、2時間保持して熱収縮チューブを収縮させる。
【0035】
続いて、昭和電工(株)製ガラス状カーボン板(SG−3、厚さ0.6mm)を130×130mmに切断してセパレータとする。熱収縮チューブが密着した膨張黒鉛シートを厚さ25μmのFEPフィルムを180×130mmに切断したものを介してセパレータの両端に設置して、320℃で10分間、0.5MPaにて加圧してセパレータ端部シールを得る。その際、直径0.5μm程度の穴を開けた方が上部となるように端部シールを設置する。
【0036】
上記実施例2により製作された燃料電池は、端部シール部材を透過してのガス洩れ量が10kPaの差圧化で0.1ml/min以下であった。また、電流密度300mA/cm2で2000時間運転後も洩れの増加はなかった。さらに、運転の起動と停止を繰り返しても、熱収縮チューブ内の凝縮水が垂れ落ちることはなかった。運転後の分解調査の結果、端部シール部材への電解質の浸入は見られず、腐食や端部シール部材端面での電解質の液絡も発生しなかった。総じて、実施例2により、好的な端部シール部材構成を備えた燃料電池が得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1の実施の形態の燃料電池の端部シール部材単体を示した図である。
【図2】第1の実施の形態の燃料電池の単位セルを2積層した状態を示した図である。
【図3】第2の実施の形態の燃料電池の端部シール部材単体を示した図である。
【図4】第2の実施の形態の燃料電池の単位セルを2積層した状態を示した図である。
【図5】燃料電池の単位セルを2積層した状態を示した概略構成図である。
【符号の説明】
【0038】
10,10a,10b,10c,10d 端部シール部材
11 本体
12 収縮性樹脂チューブ
13 溶断部
14 チューブ端
15,15a ガス抜き穴
16a 端部シール部材端面
30a,30b,30c セパレータ
40a,40b,40c,40d 多孔質カーボン板
50a,50b,50c,50d 電極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質を保持した電解質層を燃料極触媒層と空気極触媒層とで挟み、前記燃料極触媒層に燃料ガスのガス流路を有する多孔質材及び前記空気極触媒層に酸化剤ガスのガス流路を有する前記多孔質材を配置した単位セルが積層される燃料電池において、
前記多孔質材に形成される前記ガス流路と平行な端部に、膨張黒鉛シートを含む所定の端部シール材が収縮性樹脂チューブによって被覆され、前記収縮性樹脂チューブの両端が熱融着によって封止され、収縮された端部シール部材を配置したことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記所定の端部シール材を封止する前記収縮性樹脂チューブにガス抜き用の穴を開けることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
前記ガス抜き用の穴は、前記端部シール部材の厚さ方向の中央位置よりも上部に形成されることを特徴とする請求項2記載の燃料電池。
【請求項4】
前記端部シール部材は、前記所定の端部シール材を前記収縮性樹脂チューブに挿入して前記収縮性樹脂チューブの端部を熱融着により溶断した後、前記収縮性樹脂チューブを収縮させて形成される、ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項5】
電解質を保持した電解質層を燃料極触媒層と空気極触媒層とで挟み、前記燃料極触媒層に燃料ガスのガス流路を有する多孔質材及び前記空気極触媒層に酸化剤ガスのガス流路を有する前記多孔質材を配置した単位セルが積層される燃料電池の前記多孔質材に形成される前記ガス流路と平行な端部に配置される端部シール部材において、
膨張黒鉛シートを含む所定の端部シール材が収縮性樹脂チューブによって被覆され、前記収縮性樹脂チューブの両端が熱融着によって封止され、収縮されたことを特徴とする端部シール部材。
【請求項6】
前記所定の端部シール材を封止する前記収縮性樹脂チューブにガス抜き用の穴を開けることを特徴とする請求項5記載の端部シール部材。
【請求項7】
前記ガス抜き用の穴は、前記端部シール部材の厚さ方向の中央位置よりも上部に形成されることを特徴とする請求項6記載の端部シール部材。
【請求項8】
電解質を保持した保持した電解質層を燃料極触媒層と空気極触媒層とで挟み、前記燃料極触媒層に燃料ガスのガス流路を有する多孔質材及び前記空気極触媒層に酸化剤ガスのガス流路を有する前記多孔質材を配置した単位セルが積層される燃料電池の前記多孔質材に形成される前記ガス流路と平行な端部に配置される端部シール部材の製造方法において、
膨張黒鉛シートを含む所定の端部シール材を収縮性樹脂チューブによって被覆する手順と、
前記収縮性樹脂チューブの端部を熱融着によって溶断して封止する手順と、
前記収縮性樹脂チューブを収縮させる手順と、
を有することを特徴とする端部シール部材の製造方法。
【請求項9】
さらに、熱融着によって封止された前記収縮性樹脂チューブにガス抜き用の穴を開ける手順を有することを特徴とする請求項8記載の端部シール部材の製造方法。
【請求項10】
前記ガス抜き用の穴は、前記端部シール部材の厚さ方向の中央位置よりも上部に形成することを特徴とする請求項9記載の端部シール部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−259743(P2009−259743A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110253(P2008−110253)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】