燃料電池およびその製造方法並びに燃料電池用のカーボン多孔質層の製造方法およびその撥水性検査方法
【課題】長期に亘り燃料電池の酸化剤極におけるガス拡散性低下を抑制する。
【解決手段】燃料電池に、電解質膜13と、燃料極と、酸化剤極とを備える。燃料極は、燃料極触媒層14と燃料極ガス拡散層16とを備える。酸化剤極は、酸化剤極触媒層15と酸化剤極ガス拡散層17とを備える。酸化剤極ガス拡散層17は、多孔質基材であるカーボンペーパー20と、その表面に形成されたカーボン多孔質層21とを備える。カーボン多孔質層21は、カーボン粒子およびフッ素樹脂で気孔率が80%以上90%以下かつ密度が0.24g/cm3以上0.30g/cm3以下に形成される。
【解決手段】燃料電池に、電解質膜13と、燃料極と、酸化剤極とを備える。燃料極は、燃料極触媒層14と燃料極ガス拡散層16とを備える。酸化剤極は、酸化剤極触媒層15と酸化剤極ガス拡散層17とを備える。酸化剤極ガス拡散層17は、多孔質基材であるカーボンペーパー20と、その表面に形成されたカーボン多孔質層21とを備える。カーボン多孔質層21は、カーボン粒子およびフッ素樹脂で気孔率が80%以上90%以下かつ密度が0.24g/cm3以上0.30g/cm3以下に形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池およびその製造方法並びに燃料電池用のカーボン多孔質層の製造方法およびその撥水性検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池発電システムは、水素などの燃料と空気などの酸化剤を燃料電池本体に供給して、電気化学的に反応させることにより、燃料の持つ化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換して外部へ取り出す発電装置である。この燃料電池発電システムは、比較的小型であるにもかかわらず、高効率で、環境性に優れるという特徴を持つ。また、発電に伴う発熱を温水や蒸気として回収することにより、コージェネレーションシステムとしての適用が可能である。
【0003】
このような燃料電池本体は、電解質の違いなどにより様々なタイプに分類される。中でも、電解質に固体高分子電解質膜を用いた固体高分子形燃料電池は、低温動作性や高出力密度などの特徴から、一般家庭用を視野に入れた小型コージェネレーションシステムや電気自動車用の動力源としての用途に適している。このため、今後、市場規模が急激に拡大することが予想されている。
【0004】
固体高分子形燃料電池発電システムは、一般家庭用の小型コージェネレーションシステムを例にとると、改質装置、燃料電池スタック、電気制御装置および熱利用系などで構成されている。改質装置は、都市ガスやLPGに代表される炭化水素系燃料から水素含有ガスを製造する。燃料電池スタックは、改質装置で製造された水素含有ガスと大気中の空気を燃料極および酸化剤極にそれぞれ供給して起電力を発生する。電機制御装置は、燃料電池スタックで発生した電気エネルギーを外部負荷に供給する。熱利用系は、発電に伴う発熱を回収する。
【0005】
この燃料電池発電システムにおいて、実際に発電機能を担っている燃料電池スタックは、運転に伴う様々な要因により経時的に徐々に電圧が低下し、結果として発電効率が低下する。このため、燃料電池スタックの経時的な電圧低下を抑制することが、発電効率の高い燃料電池発電システムを提供する上で、最も重要なポイントとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−294117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電池性能低下要因として、酸化剤極におけるガス拡散性低下、いわゆるフラッディングが挙げられる。このガス拡散性低下を抑制する対策として、酸化剤極におけるガス拡散層の触媒層に接する面に撥水性を有するカーボン多孔質層を形成する構成が広く採用されている。しかし、さらなる高性能化、高耐久化を実現するためには、カーボン多孔質層のガス拡散性低下抑制機能の向上が要求される。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、長期に亘り燃料電池の酸化剤極におけるガス拡散性低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を達成するため、本発明は、燃料電池において、電解質膜と、前記電解質膜の一方の表面に接する燃料極と、触媒層とこの触媒層に接する面にカーボン粒子およびフッ素樹脂で形成された気孔率が80%以上90%以下かつ密度が0.24g/cm3以上0.30g/cm3以下のカーボン多孔質層とを備えて前記触媒層が前記電解質膜の前記燃料極に対して反対側の表面に接する酸化剤極と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、燃料電池の製造方法において、カーボン粉末およびフッ素樹脂粉末を混合したフッ素樹脂含有量が20%ないし40%である混合粉末を多孔質基材の表面に目付け量が0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下となるように乾式塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後に前記多孔質基材に乾式塗布された前記混合粉末を面圧換算値で0.2kgf/cm2以上2.5kgf/cm2以下で圧着させる圧着工程と、前記混合粉末が圧着された前記多孔質基材にフッ素樹脂のガラス転移温度以上で熱処理を施してカーボン多孔質層を形成する熱処理工程と、前記カーボン多孔質層を備えた単電池を形成する工程と、前記単電池を積層したスタックを締結する締結工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、燃料電池の製造方法において、カーボン粉末およびフッ素樹脂粉末を混合した混合粉末を多孔質基材の表面に乾式塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後に前記多孔質基材に乾式塗布された前記混合粉末を圧着させる圧着工程と、前記混合粉末が圧着された前記多孔質基材にフッ素樹脂のガラス転移温度以上で熱処理を施してカーボン多孔質層を形成する熱処理工程と、前記カーボン多孔質層の表面に所定の表面張力の標準溶液を所定量滴下して浸透時間を計測する検査工程と、前記浸透時間が所定の範囲内の前記カーボン多孔質層を用いて単電池を形成する工程と、前記単電池を積層したスタックを締結する締結工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、燃料電池において、電解質膜と、前記電解質膜の一方の表面に接する燃料極と、触媒層とこの触媒層に接する面にカーボン粒子およびフッ素樹脂で形成されたカーボン多孔質層とを備えて前記触媒層が前記電解質膜の前記燃料極に対して反対側の表面に接する酸化剤極と、前記酸化剤極の前記電解質膜に対して反対側の表面に接する溝状のガスチャンネルを形成するセパレータと、を有し、前記カーボン多孔質層の前記ガスチャンネルに対向する部分の密度が前記セパレータと接する部分に比べて小さいことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、燃料電池用のカーボン多孔質層の製造方法において、カーボン粉末およびフッ素樹脂粉末を混合したフッ素樹脂含有量が20%ないし40%である混合粉末を多孔質基材の表面に目付け量が0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下となるように乾式塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後に前記多孔質基材に乾式塗布された前記混合粉末を面圧換算値で0.2kgf/cm2以上2.5kgf/cm2以下で圧着させる圧着工程と、前記混合粉末が圧着された前記多孔質基材にフッ素樹脂のガラス転移温度以上で熱処理を施してカーボン多孔質層を形成する熱処理工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、燃料電池用のカーボン粒子およびフッ素樹脂で形成されたカーボン多孔質層の撥水性検査方法において、前記カーボン多孔質層の表面に所定の表面張力の標準溶液を所定量滴下して浸透時間を計測する検査工程と、前記浸透時間が所定の範囲内か否かを判定する判定工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、長期に亘り燃料電池の酸化剤極におけるガス拡散性低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る燃料電池の一実施の形態における単電池の断面図である。
【図2】本発明に係る燃料電池の一実施の形態を用いた燃料電池システムのブロック図である。
【図3】本発明に係る燃料電池の一実施の形態における乾式塗布装置の模式的立断面図である。
【図4】本発明に係る燃料電池の一実施の形態における圧着ローラーの模式的立断面図である。
【図5】本発明に係る燃料電池の一実施の形態において耐久試験を行った固体高分子型燃料電池試料の諸元および試験結果を示した表である。
【図6】本発明に係る燃料電池の一実施の形態においてカーボン多孔質層の気孔率と耐久試験前の拡散分極との関係を示すグラフである。
【図7】本発明に係る燃料電池の一実施の形態においてカーボン多孔質層の気孔率と10,000時間の耐久試験後の拡散分極との関係を示すグラフである。
【図8】本発明に係る燃料電池の一実施の形態において耐久試験を行った固体高分子型燃料電池のカーボン多孔質層の気孔率と圧着面圧との関係を示すグラフである。
【図9】本発明に係る燃料電池の一実施の形態における酸化剤極のガス拡散層の模式的断面図である。
【図10】本発明に係る燃料電池の一実施の形態におけるカーボン多孔質層製造時のプレス圧力の燃料電池スタックの締結圧力に対する比の燃料電池スタックの性能に対する影響の評価対象試料の諸元および試験結果を示す表である。
【図11】図10に示した評価対象について同一の締結圧力でカーボン多孔質層製造におけるプレス時の面圧を変化させたときの抵抗分極の変化を示すグラフである。
【図12】図10に示した評価対象についてプレス時の面圧を締結圧に対する面圧の比で表記したグラフである。
【図13】本発明に係る燃料電池の一実施の形態においてカーボンとフッ素樹脂粉末の混合粉末の目付け量とカーボン多孔質層の厚さとの関係を示すグラフである。
【図14】本発明に係る燃料電池の一実施の形態におけるカーボン多孔質層の厚さの異なるガス拡散層を備えた燃料電池スタックを用いて燃料電池のガス拡散性を評価した評価対象の試料の諸元および試験結果を示す表である。
【図15】本発明に係る燃料電池の一実施の形態における燃料電池スタックの初期の拡散分極とカーボン多孔質層の厚さとの関係を示すグラフである。
【図16】本発明に係る燃料電池の一実施の形態における燃料電池スタックの10,000時間経過後の拡散分極とカーボン多孔質層の厚さとの関係を示すグラフである。
【図17】本発明に係る燃料電池の一実施の形態における標準溶液の平均浸透時間と拡散分極との関係の評価対象の試料の諸元および試験結果を示す表である。
【図18】本発明に係る燃料電池の一実施の形態において初期および10,000時間後における拡散分極と平均浸透時間との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る燃料電池の一実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、この実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれらに限定されない。
【0018】
図2は、本発明に係る燃料電池の一実施の形態を用いた燃料電池システムのブロック図である。
【0019】
燃料電池システムは、燃料電池スタック1と、改質器2と、ブロワ5と、電気制御装置3と、冷却水ポンプ9と、熱交換器7と、貯湯槽4とを有している。燃料電池スタック1は、電解質膜13と燃料極11と酸化剤極12と冷却板8とを有している。電解質膜13は燃料極11および酸化剤極12で挟まれている。燃料極11には、改質器2が接続されている。酸化剤極12には、ブロワ5が接続されている。
【0020】
改質器2には、都市ガスなどの炭化水素系燃料が供給される。改質器2は、供給された都市ガスから水素リッチガスを生成する。改質器2が生成した水素リッチガスは、燃料電池スタック1の燃料極11に供給される。酸化剤極12には、ブロワ5によって空気が供給される。燃料電池スタック1は、燃料極11に供給された水素および酸化剤極12に供給された酸素を用いて発電する。
【0021】
燃料電池スタック1の燃料極11から排出された燃料排ガスは、改質器2に送られ、改質器2内のバーナーで燃焼された後、系外に排出される。また、酸化剤極12の排ガスは、熱交換器7で廃熱回収された後、系外に排出される。
【0022】
燃料電池スタック1で得られた電気エネルギーは、電気制御装置3によって外部負荷6へ供給される。また、燃料電池スタック1での発電の際に生じた熱エネルギーは、冷却板8を流通する冷媒に回収される。この冷媒は、たとえば水である。冷却板8を流通する冷媒の熱は、熱交換器7によって回収される。酸化剤極12の排ガスおよび冷却板8を循環する冷媒から熱交換器7が回収した熱は、貯湯槽4に蓄熱される。
【0023】
図1は、本実施の形態における単電池の断面図である。
【0024】
本実施の形態の燃料電池スタック1は、セパレータを介して複数の単電池を積層したものである。単電池10は、電解質膜13と、燃料極触媒層14および酸化剤極触媒層15と、燃料極ガス拡散層16および酸化剤極ガス拡散層17とからなっている。セパレータには、燃料極ガス拡散層16に接する燃料ガス流路、および、酸化剤ガス拡散層17に接する酸化剤ガス流路が形成される。冷却板8は、たとえば冷媒が流れる流路が形成されたセパレータの一部として設けられている。
【0025】
燃料極触媒層14および酸化剤極触媒層15は、電解質膜13の両面に接して配置されている。燃料極ガス拡散層16および酸化剤極ガス拡散層17は、これらの触媒層14,15の電解質膜13と接する面の反対の面にそれぞれ配置されている。燃料極ガス拡散層16および酸化剤極ガス拡散層17は、多孔質の層である。
【0026】
燃料極ガス拡散層16は、カーボンペーパー18およびそのカーボンペーパー18の燃料極触媒層14側の面に形成されたカーボン多孔質層19の2層の多孔質層で構成される。同様に、酸化剤極ガス拡散層17は、カーボンペーパー20およびそのカーボンペーパー20の酸化剤極触媒層15側の面に形成されたカーボン多孔質層21の2層の多孔質層で構成される。カーボンペーパー18,20の厚さは、たとえばそれぞれ180μmである。
【0027】
図3は、本実施の形態における乾式塗布装置の模式的立断面図である。
【0028】
乾式塗布装置は、ガス拡散層基材吸引ステージ101と、カーボン多孔質層形成チャンバー102と、混合物供給部103と、ガス供給部104と、ガス流量調整部106と、排気ブロワ107および圧力調整弁108とを備えている。ガス拡散層基材吸引ステージ101には、ガス拡散層基材105が載置される。ガス拡散層基材105は、燃料極ガス拡散層16あるいは酸化剤極ガス拡散層17の基材となるカーボンペーパー18,20に対応する。
【0029】
排気ブロワ107は、ガス拡散層基材吸引ステージ101に接続されている。排気ブロワ107がガス拡散層基材吸引ステージ101から気体を吸引することによって、ガス拡散層基材105はガス拡散層基材吸引ステージ101の表面に吸い付けられた状態となる。排気ブロワ107によるガス拡散層基材吸引ステージ101の吸引圧は、圧力調整弁108によって調整される。
【0030】
カーボン多孔質層形成チャンバー102は、たとえば底面が開放された四角錐状に形成され、その開放部分がガス拡散層基材吸引ステージ101のガス拡散層基材105の載置面に対向して配置される。また、カーボン多孔質層形成チャンバー102の開放部分の反対側の端部には、配管を介して混合物供給部103が接続されている。混合物供給部103には、ガス流量調整部106を介してガス供給部104が接続されている。
【0031】
混合物供給部103は、カーボン多孔質層の原料となるカーボン粉末とポリテトラフルオロエチレン粉末の混合粉末を投入する開口部である。ガス供給部104は、混合物供給部103から投入された混合粉末を噴霧するためのキャリアガスを供給する。ガス流量調整部106は、キャリアガス流量を調整する。
【0032】
図4は、本実施の形態における圧着ローラーの模式的立断面図である。
【0033】
圧着ローラー110は、ガス拡散層基材105およびその表面に塗布された混合粉末109が通過する際に加圧することができるローラーである。
【0034】
ガス拡散層16,17は、以下の方法によって形成する。
【0035】
まず、カーボン粉末とポリテトラフルオロエチレン粉末とを混合した粉体をガス拡散層基材105上に乾式塗布する。カーボン粉末としては、アセチレンブラック、VulcanXC−72、ケッチェンブラックなどを用いることができる。ポリテトラフルオロエチレン粉末としては、テフロン(登録商標)6−Jなどを用いることができる。混合粉末中のポリテトラフルオロエチレン粉末の含有量は、たとえば35%とする。
【0036】
混合物供給部103より供給されたカーボン粉末とポリテトラフルオロエチレン粉末の混合物は、ガス供給部104から供給されたキャリアガスによってカーボン多孔質層形成チャンバー102内で噴霧状となる。噴霧状となった混合粉末は、ガス拡散層基材吸引ステージ101の上面に吸引固定されたガス拡散層基材105上に塗布される。ガス拡散層基材105は、カーボンペーパーである。ここで、混合物供給部103に供給する混合粉末の重量を変えることで、目付け量を制御することができる。本実施の形態では、ガス拡散層基材105の単位面積当たりの混合粉末の塗布重量を2.0±0.2mg/cm2とした。
【0037】
次に、乾式塗布装置によってガス拡散層基材105上に乾式塗布された混合粉末109を、圧着ローラー110を用いて圧着する。圧着圧力は、面圧換算値で0.2〜0.6kgf/cm2とする。ここで面圧換算値とは、圧着ローラーの荷重をワーク長さで割り付けた所定の線圧に管理した状態で、圧着ローラーに感圧紙を通すことなどによって測定した面圧相当値のことを意味する。また、圧着方法としては、ローラー圧着の他、プレス機などにより圧着面圧が制御できる方法であれば代替可能である。
【0038】
ガス拡散層基材105上に乾式塗布された混合粉末109を圧着させた後、350℃で10分間熱処理を行う。これにより、カーボン多孔質層形成工程が完了する。このようにして、平均厚さ75〜82μmで、平均気孔率が85%以上90%以下のカーボン多孔質層19,21が形成される。
【0039】
本実施の形態の固体高分子型燃料電池について、耐久試験を行った。この耐久試験では、燃料極11に改質ガスを、酸化剤極12に空気をそれぞれ供給した。燃料極11に供給される燃料組成は、70〜75%H2、25〜30%CO2、0〜10ppmCOである。改質ガスおよび空気は、燃料利用率が80%であり、酸素利用率が60%となるように供給された。この耐久試験における電池温度は、70〜75℃とした。また、電流密度は、300mA/cm2とした。
【0040】
図5は、本実施の形態において耐久試験を行った固体高分子型燃料電池試料の諸元および試験結果を示した表である。図6は、本実施の形態においてカーボン多孔質層の気孔率と耐久試験前の拡散分極との関係を示すグラフである。図7は、本実施の形態においてカーボン多孔質層の気孔率と10,000時間の耐久試験後の拡散分極との関係を示すグラフである。拡散分極は、燃料極に水素、酸化剤極に空気を、燃料利用率Ufが80%、酸素利用率Uoxが60%となるようにそれぞれ供給し、電流密度を600mA/cm2としたときの値である。
【0041】
さらに、比較例として、カーボン多孔質層以外のセル構成を同一として同様に耐久試験を実施した。比較例では、乾式塗布工程の後に実施したローラーによる圧着時の面圧換算値を1.1、1.6、2.5、3.5kgf/cm2相当となるように変更した。
【0042】
図6に示すように、カーボン多孔質層19,21の気孔率の増加に伴って使用初期の拡散分極は小さくなる。また、図7に示すように、10,000時間使用後の拡散分極は、カーボン多孔質層19,21の気孔率が約82%まではほぼ同程度の高い値となるが、気孔率が約82%を超えると気孔率の増加に伴って拡散分極は低下し、気孔率が約86%から約88%の範囲では拡散分極はほぼ一定となる。拡散分極の低下は、ガス拡散性向上を示唆している。
【0043】
これらの結果から、少なくとも耐久試験を行った範囲では、カーボン多孔質層19,21の気孔率を82%以上、より好ましくは85%以上で、90%以下とすることで優れたガス拡散性能を示すことがわかった。つまり、気孔率を82%以上、より好ましくは85%以上90%以下とすることにより、カーボン多孔質層19,21の燃料電池スタック1の初期的なガス拡散性能の向上が図れると共に、経時的なガス拡散性低下も抑制することができる。
【0044】
図8は、本実施の形態において耐久試験を行った固体高分子型燃料電池のカーボン多孔質層の気孔率と圧着面圧との関係を示すグラフである。図8には、白丸で示した試験結果のほかに試験結果を線形近似した直線もあわせて示した。
【0045】
図8に示すように、カーボン多孔質層の気孔率は、圧着面圧の増加に伴ってほぼ直線的に低下することがわかる。すなわち、カーボン多孔質層の圧着面圧を変えることにより、気孔率を制御できる。
【0046】
好ましい耐久性を示す気孔率が82%以上のカーボン多孔質層を得るためには、面圧を2.5kgf/cm2以下とすることが必要である。より好ましくは、面圧を0.2以上1.1kgf/cm2未満とすることにより、気孔率は85%以上90%以下のカーボン多孔質層が得られる。このような圧着面圧でカーボン多孔質層を製造することにより、燃料電池スタックの初期的なガス拡散性能の向上が図れるとともに、経時的なガス拡散性低下も抑制することができる。
【0047】
また、本実施の形態では、カーボン多孔質層製造時のプレス圧力を燃料電池スタック1の締結圧力よりも小さくしている。
【0048】
図9は、本実施の形態における酸化剤極のガス拡散層の模式的断面図である。
【0049】
酸化剤極12のカーボンペーパー18は、セパレータ22に接している。セパレータ22には、溝が形成されていて、その溝が酸化剤である酸素を含有する気体が流れるガスチャンネル23となっている。また、セパレータ22には、酸化剤極12と接する接触部24がガスチャンネル23を挟んで形成されている。
【0050】
燃料電池スタック1の締結圧力がカーボン多孔質層19の製造時のプレス圧力より大きいため、酸化剤極12は、セパレータ22の接触部24に接する部分では押しつぶされる。つまり、カーボンペーパー18を介して間接的にセパレータ22の接触部24で押しつけられた部分25の密度は、セパレータ22のガスチャンネル23に対応した部分26に比べて大きくなる。その結果、カーボン多孔質層19のカーボンペーパー18を挟んでガスチャンネル23と向かい合う部分26の密度は低く、ガス拡散性が向上する。一方、カーボンペーパー18を介してセパレータ22の接触部24と対向する部分25の密度は高く、接触抵抗および電気抵抗が低減され、電気伝導性が向上する。また、燃料極11側も同様の構造となっていて、同様の効果が得られる。なお、カーボン多孔質層を上記のように乾式塗布した後、プレスして形成し熱処理する方法でなく、例えば、カーボン粒子とフッ素樹脂を分散させたインクを基材に塗布し、熱処理する方法等で形成したカーボン多孔質層においても、カーボンペーパー18を介して間接的にセパレータ22の接触部24で押しつけられた部分25の密度を、セパレータ22のガスチャンネル23に対応した部分26に比べて大きくなるようにセルスタックの締結条件を設定することにより、上述と同様の効果が得られる。
【0051】
カーボン多孔質層製造時のプレス圧力の燃料電池スタック1の締結圧力に対する比の燃料電池スタックの性能に対する影響を評価した。
【0052】
図10は、本実施の形態におけるカーボン多孔質層製造時のプレス圧力の燃料電池スタックの締結圧力に対する比の燃料電池スタックの性能に対する影響の評価対象試料の諸元および試験結果を示す表である。図11は、図10に示した評価対象について同一の締結圧力でカーボン多孔質層製造におけるプレス時の面圧を変化させたときの抵抗分極の変化を示すグラフである。図12は、図10に示した評価対象についてプレス時の面圧を締結圧に対する面圧の比で表記したグラフである。
【0053】
図11および図12に示すように、燃料電池スタック1の締結圧力が一定であれば、抵抗分極はカーボン多孔質層製造時のプレス圧力が大きくなるにしたがって大きくなっている。燃料電池スタック1の締結圧力が6kgf/cm2の場合には、抵抗分極はカーボン多孔質層製造時のプレス圧力が2.5kgf/cm2以上ではほぼ一定である。このときのプレス圧力2.5kgf/cm2は、燃料電池スタック1の締結圧力の約0.4倍に相当する。従って、カーボン多孔質層製造時のプレス圧力を締結圧力の40%以下とすることで抵抗分極を低減することができる。つまり、カーボン多孔質層製造時のプレス圧力を締結圧力の40%以下とすることによって、ガス拡散性能を維持した状態で抵抗分極を低減して、性能が向上する。
【0054】
次に、カーボンとフッ素樹脂粉末の混合粉末の目付け量とカーボン多孔質層の厚さとの関係を評価した。
【0055】
図13は、本実施の形態においてカーボンとフッ素樹脂粉末の混合粉末の目付け量とカーボン多孔質層の厚さとの関係を示すグラフである。この評価において、乾式塗布工程の後に行なうローラーによる圧着時の面圧は0.6kgf/cm2とし、カーボンとフッ素樹脂粉末の混合粉末の目付け量を変えて、カーボン多孔質層の厚さの異なるガス拡散層を作成した。図13には、白丸で示した試験結果のほかに試験結果を線形近似した直線およびその近似式もあわせて示した。
【0056】
図13に示すように、カーボン多孔質層の平均厚さyは、カーボンとフッ素樹脂粉末の混合粉末の目付け量xの増加にともなって、ほぼ直線的に増加することがわかる。また、これらの試験結果において、両者の関係はy=37.976xであった。カーボンとフッ素樹脂粉末の混合粉末の目付け量を約0.53mg/cm2から3.2mg/cm2の範囲で変化させることにより、20μmから120μmまでのカーボン多孔質層を形成することができる。
【0057】
これらのカーボン多孔質層の厚さの異なるガス拡散層を備えた燃料電池スタック1を用いて発電試験を行い、燃料電池のガス拡散性を評価した。
【0058】
図14は、本実施の形態におけるカーボン多孔質層の厚さの異なるガス拡散層を備えた燃料電池スタックを用いて燃料電池のガス拡散性を評価した評価対象の試料の諸元および試験結果を示す表である。図15は、本実施の形態における燃料電池スタックの初期の拡散分極とカーボン多孔質層の厚さとの関係を示すグラフである。図16は、本実施の形態における燃料電池スタックの10,000時間経過後の拡散分極とカーボン多孔質層の厚さとの関係を示すグラフである。
【0059】
図15に示すように、燃料電池スタックの初期的なガス拡散性能は、カーボン多孔質層の厚さの増加に伴って、一旦低下して最小値をとった後、上昇していくことがわかる。つまり、燃料電池スタックの初期的なガス拡散性能は、カーボン多孔質層の厚さを所定の範囲とすることにより向上させることができる。本実施の形態においては、カーボン多孔質層の厚さを約20μm以上かつ約100μm以下、より好ましくは約40μm以上かつ約60μm以下とすることにより、燃料電池スタックの初期的なガス拡散性能を向上させることができる。
【0060】
図16に示すように、燃料電池スタックの10,000時間経過後のガス拡散性能は、カーボン多孔質層の厚さの増加に伴って、一旦低下して最小値をとった後、上昇していくことがわかる。つまり、燃料電池スタックのガス拡散性能は、カーボン多孔質層の厚さを所定の範囲とすることにより長期的に維持することができる。本実施の形態においては、カーボン多孔質層の厚さを約20μm以上かつ約80μm以下、より好ましくは約40μm以上かつ約60μm以下とすることにより、燃料電池スタックのガス拡散性能を長期的に維持することができる。
【0061】
カーボン多孔質層にとって、その内部のガス拡散性能および撥水性能のバランスが重要である。ガス拡散性能としては、カーボン多孔質層を備えたガス拡散層のガーレー数がたとえば35秒以下であることが好ましい。ここで、ガーレー数とは、日本工業規格JISP8117で規定された方法で測定される透気抵抗度である。
【0062】
しかし、液滴の表面に対する接触角を測定することによって、表面の撥水性を調べることはできるが、内部の撥水性を測定することはできない。そこで、内部撥水性を評価する方法について検討を重ねた結果、カーボン多孔質層の内部のガス拡散性能および撥水性能が適正であるか否かを判定するために、標準溶液を滴下した際の浸透時間を測定する方法が有効であることを見出した。本実施の形態において、カーボン多孔質層の撥水性検査方法は、検査工程と、判定工程と、を有する。
【0063】
検査工程では、ほぼ水平に配置したカーボン多孔質層の上面に標準溶液を滴下し、カーボン多孔質層の上面に滴下された液滴の浸透時間を測定する。ここでいう浸透時間とは、液滴を滴下してから液滴のすべてが完全に浸透するまでの時間を目視などにより測定した時間を意味する。判定工程では、検査工程で測定した浸透時間が所定の範囲内か否かを判定する。
【0064】
標準溶液の表面張力が低下すると、浸透速度が上昇する。そこで、時間計測における分解能を高める観点から標準溶液の浸透が生じる範囲で、浸透速度がある程度遅いことが要求される。上記条件を満足するためには、表面張力が30〜32mN/m程度の標準溶液を用いることが好ましい。
【0065】
また、浸透させる液滴の量が多くなっても、カーボン多孔質層の表面に形成される液膜はそれほど高くなるわけではないため、浸透時間はある程度のところで飽和する。一方、浸透させる液滴の量が少なすぎると、浸透時間が短くなりすぎて測定が困難になる。そこで、浸透させる液滴の体積は、たとえば1〜10μL(マイクロリットル)とするとよい。
【0066】
次に、標準溶液の平均浸透時間と初期および10,000時間後における拡散分極との関係を評価した。
【0067】
図17は、本実施の形態における標準溶液の平均浸透時間と拡散分極との関係の評価対象の試料の諸元および試験結果を示す表である。図18は、本実施の形態において初期および10,000時間後における拡散分極と平均浸透時間との関係を示したグラフである。ここで、標準試料は表面張力が31mN/mのものを用いた。浸透させる標準試料の液滴の体積は、10μLとした。これらの評価試験では、様々な仕様のカーボン多孔質層を用い、各仕様のカーボン多孔質層に対して、上述の検査方法によって測定した浸透時間の平均を求めた。これらの平均浸透時間は、各仕様における抜き取り検査によるものである。
【0068】
図18から、初期の拡散分極は、液滴の浸透時間が大きくなるにつれて一旦小さくなって一定となり、液滴の浸透時間がある値を超えると再び大きくなっていくことがわかる。つまり、液滴の浸透時間が所定の範囲内となるようなカーボン多孔質層を用いることにより、初期の拡散分極を低減することができる。本実施の形態においては、表面張力31mN/mを10μL滴下した液滴の浸透時間が3秒以上かつ17秒以下となるカーボン多孔質層を用いることにより、初期の拡散分極を低減することができる。
【0069】
また、図18から、10,000時間経過後の拡散分極は、液滴の浸透時間がある値以下ではほぼ一定であり、液滴の浸透時間がある値を超えると大きくなっていくことがわかる。つまり、液滴の浸透時間が所定の値以下となるようなカーボン多孔質層を用いることにより、低い拡散分極を長期的に維持できることがわかる。本実施の形態においては、表面張力31mN/mを10μL滴下した液滴の浸透時間が3秒以上かつ17秒以下、より好ましくは、3秒以上かつ14秒以下となるカーボン多孔質層を用いることにより、低い拡散分極を長期的に維持できる。
【0070】
したがって、表面張力31mN/mを10μL滴下した液滴の浸透時間が3秒以上かつ17秒以下、より好ましくは3秒以上かつ14秒以下となるカーボン多孔質層を用いることにより、初期から長期間にわたって低い拡散分極を長期的に維持できる。このように、本実施の形態のカーボン多孔質層の撥水性検査方法を用いることによって、カーボン多孔質層の内部のガス拡散性能および撥水性能が適正であるか否かを判定することができる。また、内部が適正なガス拡散性能および撥水性能を持つカーボン多孔質層を備えた燃料電池とすることにより、初期から長期間にわたって低い拡散分極を長期的に維持できる。
【0071】
このように、本実施の形態の燃料電池によれば、長期に亘り燃料電池の酸化剤極におけるガス拡散性低下を抑制できる。つまり、ガス拡散層のカーボン多孔質層を最適化することによって、初期的なガス拡散性能の向上と共に、経時的なガス拡散性能の低下を抑制することができる。その結果、燃料電池システムの効率低下を抑制し、高性能化、高耐久化を実現できる。また、ガス拡散層のガス拡散性低下抑制効果は、特に酸化剤極において顕著な効果が発揮される。このため、酸化剤極のカーボン多孔質層のみを最適化しても、初期的なガス拡散性能の向上と共に、経時的なガス拡散性能の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…燃料電池スタック、2…改質器、3…電気制御装置、4…貯湯槽、5…ブロワ、7…熱交換器、8…冷却板、9…冷却水ポンプ、10…単電池、11…燃料極、12…酸化剤極、13…電解質膜、14…燃料極触媒層、15…酸化剤極触媒層、16…燃料極ガス拡散層、17…酸化剤極ガス拡散層、18…カーボンペーパー、19…カーボン多孔質層、20…カーボンペーパー、21…カーボン多孔質層、22…セパレータ、23…ガスチャンネル、24…接触部、101…ガス拡散層基材吸引ステージ、102…カーボン多孔質層形成チャンバー、103…混合物供給部、104…ガス供給部、105…ガス拡散層基材、106…ガス流量調整部、107…排気ブロワ、108…圧力調整弁、110…圧着ローラー
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池およびその製造方法並びに燃料電池用のカーボン多孔質層の製造方法およびその撥水性検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池発電システムは、水素などの燃料と空気などの酸化剤を燃料電池本体に供給して、電気化学的に反応させることにより、燃料の持つ化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換して外部へ取り出す発電装置である。この燃料電池発電システムは、比較的小型であるにもかかわらず、高効率で、環境性に優れるという特徴を持つ。また、発電に伴う発熱を温水や蒸気として回収することにより、コージェネレーションシステムとしての適用が可能である。
【0003】
このような燃料電池本体は、電解質の違いなどにより様々なタイプに分類される。中でも、電解質に固体高分子電解質膜を用いた固体高分子形燃料電池は、低温動作性や高出力密度などの特徴から、一般家庭用を視野に入れた小型コージェネレーションシステムや電気自動車用の動力源としての用途に適している。このため、今後、市場規模が急激に拡大することが予想されている。
【0004】
固体高分子形燃料電池発電システムは、一般家庭用の小型コージェネレーションシステムを例にとると、改質装置、燃料電池スタック、電気制御装置および熱利用系などで構成されている。改質装置は、都市ガスやLPGに代表される炭化水素系燃料から水素含有ガスを製造する。燃料電池スタックは、改質装置で製造された水素含有ガスと大気中の空気を燃料極および酸化剤極にそれぞれ供給して起電力を発生する。電機制御装置は、燃料電池スタックで発生した電気エネルギーを外部負荷に供給する。熱利用系は、発電に伴う発熱を回収する。
【0005】
この燃料電池発電システムにおいて、実際に発電機能を担っている燃料電池スタックは、運転に伴う様々な要因により経時的に徐々に電圧が低下し、結果として発電効率が低下する。このため、燃料電池スタックの経時的な電圧低下を抑制することが、発電効率の高い燃料電池発電システムを提供する上で、最も重要なポイントとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−294117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電池性能低下要因として、酸化剤極におけるガス拡散性低下、いわゆるフラッディングが挙げられる。このガス拡散性低下を抑制する対策として、酸化剤極におけるガス拡散層の触媒層に接する面に撥水性を有するカーボン多孔質層を形成する構成が広く採用されている。しかし、さらなる高性能化、高耐久化を実現するためには、カーボン多孔質層のガス拡散性低下抑制機能の向上が要求される。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、長期に亘り燃料電池の酸化剤極におけるガス拡散性低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を達成するため、本発明は、燃料電池において、電解質膜と、前記電解質膜の一方の表面に接する燃料極と、触媒層とこの触媒層に接する面にカーボン粒子およびフッ素樹脂で形成された気孔率が80%以上90%以下かつ密度が0.24g/cm3以上0.30g/cm3以下のカーボン多孔質層とを備えて前記触媒層が前記電解質膜の前記燃料極に対して反対側の表面に接する酸化剤極と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、燃料電池の製造方法において、カーボン粉末およびフッ素樹脂粉末を混合したフッ素樹脂含有量が20%ないし40%である混合粉末を多孔質基材の表面に目付け量が0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下となるように乾式塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後に前記多孔質基材に乾式塗布された前記混合粉末を面圧換算値で0.2kgf/cm2以上2.5kgf/cm2以下で圧着させる圧着工程と、前記混合粉末が圧着された前記多孔質基材にフッ素樹脂のガラス転移温度以上で熱処理を施してカーボン多孔質層を形成する熱処理工程と、前記カーボン多孔質層を備えた単電池を形成する工程と、前記単電池を積層したスタックを締結する締結工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、燃料電池の製造方法において、カーボン粉末およびフッ素樹脂粉末を混合した混合粉末を多孔質基材の表面に乾式塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後に前記多孔質基材に乾式塗布された前記混合粉末を圧着させる圧着工程と、前記混合粉末が圧着された前記多孔質基材にフッ素樹脂のガラス転移温度以上で熱処理を施してカーボン多孔質層を形成する熱処理工程と、前記カーボン多孔質層の表面に所定の表面張力の標準溶液を所定量滴下して浸透時間を計測する検査工程と、前記浸透時間が所定の範囲内の前記カーボン多孔質層を用いて単電池を形成する工程と、前記単電池を積層したスタックを締結する締結工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、燃料電池において、電解質膜と、前記電解質膜の一方の表面に接する燃料極と、触媒層とこの触媒層に接する面にカーボン粒子およびフッ素樹脂で形成されたカーボン多孔質層とを備えて前記触媒層が前記電解質膜の前記燃料極に対して反対側の表面に接する酸化剤極と、前記酸化剤極の前記電解質膜に対して反対側の表面に接する溝状のガスチャンネルを形成するセパレータと、を有し、前記カーボン多孔質層の前記ガスチャンネルに対向する部分の密度が前記セパレータと接する部分に比べて小さいことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、燃料電池用のカーボン多孔質層の製造方法において、カーボン粉末およびフッ素樹脂粉末を混合したフッ素樹脂含有量が20%ないし40%である混合粉末を多孔質基材の表面に目付け量が0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下となるように乾式塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後に前記多孔質基材に乾式塗布された前記混合粉末を面圧換算値で0.2kgf/cm2以上2.5kgf/cm2以下で圧着させる圧着工程と、前記混合粉末が圧着された前記多孔質基材にフッ素樹脂のガラス転移温度以上で熱処理を施してカーボン多孔質層を形成する熱処理工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、燃料電池用のカーボン粒子およびフッ素樹脂で形成されたカーボン多孔質層の撥水性検査方法において、前記カーボン多孔質層の表面に所定の表面張力の標準溶液を所定量滴下して浸透時間を計測する検査工程と、前記浸透時間が所定の範囲内か否かを判定する判定工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、長期に亘り燃料電池の酸化剤極におけるガス拡散性低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る燃料電池の一実施の形態における単電池の断面図である。
【図2】本発明に係る燃料電池の一実施の形態を用いた燃料電池システムのブロック図である。
【図3】本発明に係る燃料電池の一実施の形態における乾式塗布装置の模式的立断面図である。
【図4】本発明に係る燃料電池の一実施の形態における圧着ローラーの模式的立断面図である。
【図5】本発明に係る燃料電池の一実施の形態において耐久試験を行った固体高分子型燃料電池試料の諸元および試験結果を示した表である。
【図6】本発明に係る燃料電池の一実施の形態においてカーボン多孔質層の気孔率と耐久試験前の拡散分極との関係を示すグラフである。
【図7】本発明に係る燃料電池の一実施の形態においてカーボン多孔質層の気孔率と10,000時間の耐久試験後の拡散分極との関係を示すグラフである。
【図8】本発明に係る燃料電池の一実施の形態において耐久試験を行った固体高分子型燃料電池のカーボン多孔質層の気孔率と圧着面圧との関係を示すグラフである。
【図9】本発明に係る燃料電池の一実施の形態における酸化剤極のガス拡散層の模式的断面図である。
【図10】本発明に係る燃料電池の一実施の形態におけるカーボン多孔質層製造時のプレス圧力の燃料電池スタックの締結圧力に対する比の燃料電池スタックの性能に対する影響の評価対象試料の諸元および試験結果を示す表である。
【図11】図10に示した評価対象について同一の締結圧力でカーボン多孔質層製造におけるプレス時の面圧を変化させたときの抵抗分極の変化を示すグラフである。
【図12】図10に示した評価対象についてプレス時の面圧を締結圧に対する面圧の比で表記したグラフである。
【図13】本発明に係る燃料電池の一実施の形態においてカーボンとフッ素樹脂粉末の混合粉末の目付け量とカーボン多孔質層の厚さとの関係を示すグラフである。
【図14】本発明に係る燃料電池の一実施の形態におけるカーボン多孔質層の厚さの異なるガス拡散層を備えた燃料電池スタックを用いて燃料電池のガス拡散性を評価した評価対象の試料の諸元および試験結果を示す表である。
【図15】本発明に係る燃料電池の一実施の形態における燃料電池スタックの初期の拡散分極とカーボン多孔質層の厚さとの関係を示すグラフである。
【図16】本発明に係る燃料電池の一実施の形態における燃料電池スタックの10,000時間経過後の拡散分極とカーボン多孔質層の厚さとの関係を示すグラフである。
【図17】本発明に係る燃料電池の一実施の形態における標準溶液の平均浸透時間と拡散分極との関係の評価対象の試料の諸元および試験結果を示す表である。
【図18】本発明に係る燃料電池の一実施の形態において初期および10,000時間後における拡散分極と平均浸透時間との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る燃料電池の一実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、この実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれらに限定されない。
【0018】
図2は、本発明に係る燃料電池の一実施の形態を用いた燃料電池システムのブロック図である。
【0019】
燃料電池システムは、燃料電池スタック1と、改質器2と、ブロワ5と、電気制御装置3と、冷却水ポンプ9と、熱交換器7と、貯湯槽4とを有している。燃料電池スタック1は、電解質膜13と燃料極11と酸化剤極12と冷却板8とを有している。電解質膜13は燃料極11および酸化剤極12で挟まれている。燃料極11には、改質器2が接続されている。酸化剤極12には、ブロワ5が接続されている。
【0020】
改質器2には、都市ガスなどの炭化水素系燃料が供給される。改質器2は、供給された都市ガスから水素リッチガスを生成する。改質器2が生成した水素リッチガスは、燃料電池スタック1の燃料極11に供給される。酸化剤極12には、ブロワ5によって空気が供給される。燃料電池スタック1は、燃料極11に供給された水素および酸化剤極12に供給された酸素を用いて発電する。
【0021】
燃料電池スタック1の燃料極11から排出された燃料排ガスは、改質器2に送られ、改質器2内のバーナーで燃焼された後、系外に排出される。また、酸化剤極12の排ガスは、熱交換器7で廃熱回収された後、系外に排出される。
【0022】
燃料電池スタック1で得られた電気エネルギーは、電気制御装置3によって外部負荷6へ供給される。また、燃料電池スタック1での発電の際に生じた熱エネルギーは、冷却板8を流通する冷媒に回収される。この冷媒は、たとえば水である。冷却板8を流通する冷媒の熱は、熱交換器7によって回収される。酸化剤極12の排ガスおよび冷却板8を循環する冷媒から熱交換器7が回収した熱は、貯湯槽4に蓄熱される。
【0023】
図1は、本実施の形態における単電池の断面図である。
【0024】
本実施の形態の燃料電池スタック1は、セパレータを介して複数の単電池を積層したものである。単電池10は、電解質膜13と、燃料極触媒層14および酸化剤極触媒層15と、燃料極ガス拡散層16および酸化剤極ガス拡散層17とからなっている。セパレータには、燃料極ガス拡散層16に接する燃料ガス流路、および、酸化剤ガス拡散層17に接する酸化剤ガス流路が形成される。冷却板8は、たとえば冷媒が流れる流路が形成されたセパレータの一部として設けられている。
【0025】
燃料極触媒層14および酸化剤極触媒層15は、電解質膜13の両面に接して配置されている。燃料極ガス拡散層16および酸化剤極ガス拡散層17は、これらの触媒層14,15の電解質膜13と接する面の反対の面にそれぞれ配置されている。燃料極ガス拡散層16および酸化剤極ガス拡散層17は、多孔質の層である。
【0026】
燃料極ガス拡散層16は、カーボンペーパー18およびそのカーボンペーパー18の燃料極触媒層14側の面に形成されたカーボン多孔質層19の2層の多孔質層で構成される。同様に、酸化剤極ガス拡散層17は、カーボンペーパー20およびそのカーボンペーパー20の酸化剤極触媒層15側の面に形成されたカーボン多孔質層21の2層の多孔質層で構成される。カーボンペーパー18,20の厚さは、たとえばそれぞれ180μmである。
【0027】
図3は、本実施の形態における乾式塗布装置の模式的立断面図である。
【0028】
乾式塗布装置は、ガス拡散層基材吸引ステージ101と、カーボン多孔質層形成チャンバー102と、混合物供給部103と、ガス供給部104と、ガス流量調整部106と、排気ブロワ107および圧力調整弁108とを備えている。ガス拡散層基材吸引ステージ101には、ガス拡散層基材105が載置される。ガス拡散層基材105は、燃料極ガス拡散層16あるいは酸化剤極ガス拡散層17の基材となるカーボンペーパー18,20に対応する。
【0029】
排気ブロワ107は、ガス拡散層基材吸引ステージ101に接続されている。排気ブロワ107がガス拡散層基材吸引ステージ101から気体を吸引することによって、ガス拡散層基材105はガス拡散層基材吸引ステージ101の表面に吸い付けられた状態となる。排気ブロワ107によるガス拡散層基材吸引ステージ101の吸引圧は、圧力調整弁108によって調整される。
【0030】
カーボン多孔質層形成チャンバー102は、たとえば底面が開放された四角錐状に形成され、その開放部分がガス拡散層基材吸引ステージ101のガス拡散層基材105の載置面に対向して配置される。また、カーボン多孔質層形成チャンバー102の開放部分の反対側の端部には、配管を介して混合物供給部103が接続されている。混合物供給部103には、ガス流量調整部106を介してガス供給部104が接続されている。
【0031】
混合物供給部103は、カーボン多孔質層の原料となるカーボン粉末とポリテトラフルオロエチレン粉末の混合粉末を投入する開口部である。ガス供給部104は、混合物供給部103から投入された混合粉末を噴霧するためのキャリアガスを供給する。ガス流量調整部106は、キャリアガス流量を調整する。
【0032】
図4は、本実施の形態における圧着ローラーの模式的立断面図である。
【0033】
圧着ローラー110は、ガス拡散層基材105およびその表面に塗布された混合粉末109が通過する際に加圧することができるローラーである。
【0034】
ガス拡散層16,17は、以下の方法によって形成する。
【0035】
まず、カーボン粉末とポリテトラフルオロエチレン粉末とを混合した粉体をガス拡散層基材105上に乾式塗布する。カーボン粉末としては、アセチレンブラック、VulcanXC−72、ケッチェンブラックなどを用いることができる。ポリテトラフルオロエチレン粉末としては、テフロン(登録商標)6−Jなどを用いることができる。混合粉末中のポリテトラフルオロエチレン粉末の含有量は、たとえば35%とする。
【0036】
混合物供給部103より供給されたカーボン粉末とポリテトラフルオロエチレン粉末の混合物は、ガス供給部104から供給されたキャリアガスによってカーボン多孔質層形成チャンバー102内で噴霧状となる。噴霧状となった混合粉末は、ガス拡散層基材吸引ステージ101の上面に吸引固定されたガス拡散層基材105上に塗布される。ガス拡散層基材105は、カーボンペーパーである。ここで、混合物供給部103に供給する混合粉末の重量を変えることで、目付け量を制御することができる。本実施の形態では、ガス拡散層基材105の単位面積当たりの混合粉末の塗布重量を2.0±0.2mg/cm2とした。
【0037】
次に、乾式塗布装置によってガス拡散層基材105上に乾式塗布された混合粉末109を、圧着ローラー110を用いて圧着する。圧着圧力は、面圧換算値で0.2〜0.6kgf/cm2とする。ここで面圧換算値とは、圧着ローラーの荷重をワーク長さで割り付けた所定の線圧に管理した状態で、圧着ローラーに感圧紙を通すことなどによって測定した面圧相当値のことを意味する。また、圧着方法としては、ローラー圧着の他、プレス機などにより圧着面圧が制御できる方法であれば代替可能である。
【0038】
ガス拡散層基材105上に乾式塗布された混合粉末109を圧着させた後、350℃で10分間熱処理を行う。これにより、カーボン多孔質層形成工程が完了する。このようにして、平均厚さ75〜82μmで、平均気孔率が85%以上90%以下のカーボン多孔質層19,21が形成される。
【0039】
本実施の形態の固体高分子型燃料電池について、耐久試験を行った。この耐久試験では、燃料極11に改質ガスを、酸化剤極12に空気をそれぞれ供給した。燃料極11に供給される燃料組成は、70〜75%H2、25〜30%CO2、0〜10ppmCOである。改質ガスおよび空気は、燃料利用率が80%であり、酸素利用率が60%となるように供給された。この耐久試験における電池温度は、70〜75℃とした。また、電流密度は、300mA/cm2とした。
【0040】
図5は、本実施の形態において耐久試験を行った固体高分子型燃料電池試料の諸元および試験結果を示した表である。図6は、本実施の形態においてカーボン多孔質層の気孔率と耐久試験前の拡散分極との関係を示すグラフである。図7は、本実施の形態においてカーボン多孔質層の気孔率と10,000時間の耐久試験後の拡散分極との関係を示すグラフである。拡散分極は、燃料極に水素、酸化剤極に空気を、燃料利用率Ufが80%、酸素利用率Uoxが60%となるようにそれぞれ供給し、電流密度を600mA/cm2としたときの値である。
【0041】
さらに、比較例として、カーボン多孔質層以外のセル構成を同一として同様に耐久試験を実施した。比較例では、乾式塗布工程の後に実施したローラーによる圧着時の面圧換算値を1.1、1.6、2.5、3.5kgf/cm2相当となるように変更した。
【0042】
図6に示すように、カーボン多孔質層19,21の気孔率の増加に伴って使用初期の拡散分極は小さくなる。また、図7に示すように、10,000時間使用後の拡散分極は、カーボン多孔質層19,21の気孔率が約82%まではほぼ同程度の高い値となるが、気孔率が約82%を超えると気孔率の増加に伴って拡散分極は低下し、気孔率が約86%から約88%の範囲では拡散分極はほぼ一定となる。拡散分極の低下は、ガス拡散性向上を示唆している。
【0043】
これらの結果から、少なくとも耐久試験を行った範囲では、カーボン多孔質層19,21の気孔率を82%以上、より好ましくは85%以上で、90%以下とすることで優れたガス拡散性能を示すことがわかった。つまり、気孔率を82%以上、より好ましくは85%以上90%以下とすることにより、カーボン多孔質層19,21の燃料電池スタック1の初期的なガス拡散性能の向上が図れると共に、経時的なガス拡散性低下も抑制することができる。
【0044】
図8は、本実施の形態において耐久試験を行った固体高分子型燃料電池のカーボン多孔質層の気孔率と圧着面圧との関係を示すグラフである。図8には、白丸で示した試験結果のほかに試験結果を線形近似した直線もあわせて示した。
【0045】
図8に示すように、カーボン多孔質層の気孔率は、圧着面圧の増加に伴ってほぼ直線的に低下することがわかる。すなわち、カーボン多孔質層の圧着面圧を変えることにより、気孔率を制御できる。
【0046】
好ましい耐久性を示す気孔率が82%以上のカーボン多孔質層を得るためには、面圧を2.5kgf/cm2以下とすることが必要である。より好ましくは、面圧を0.2以上1.1kgf/cm2未満とすることにより、気孔率は85%以上90%以下のカーボン多孔質層が得られる。このような圧着面圧でカーボン多孔質層を製造することにより、燃料電池スタックの初期的なガス拡散性能の向上が図れるとともに、経時的なガス拡散性低下も抑制することができる。
【0047】
また、本実施の形態では、カーボン多孔質層製造時のプレス圧力を燃料電池スタック1の締結圧力よりも小さくしている。
【0048】
図9は、本実施の形態における酸化剤極のガス拡散層の模式的断面図である。
【0049】
酸化剤極12のカーボンペーパー18は、セパレータ22に接している。セパレータ22には、溝が形成されていて、その溝が酸化剤である酸素を含有する気体が流れるガスチャンネル23となっている。また、セパレータ22には、酸化剤極12と接する接触部24がガスチャンネル23を挟んで形成されている。
【0050】
燃料電池スタック1の締結圧力がカーボン多孔質層19の製造時のプレス圧力より大きいため、酸化剤極12は、セパレータ22の接触部24に接する部分では押しつぶされる。つまり、カーボンペーパー18を介して間接的にセパレータ22の接触部24で押しつけられた部分25の密度は、セパレータ22のガスチャンネル23に対応した部分26に比べて大きくなる。その結果、カーボン多孔質層19のカーボンペーパー18を挟んでガスチャンネル23と向かい合う部分26の密度は低く、ガス拡散性が向上する。一方、カーボンペーパー18を介してセパレータ22の接触部24と対向する部分25の密度は高く、接触抵抗および電気抵抗が低減され、電気伝導性が向上する。また、燃料極11側も同様の構造となっていて、同様の効果が得られる。なお、カーボン多孔質層を上記のように乾式塗布した後、プレスして形成し熱処理する方法でなく、例えば、カーボン粒子とフッ素樹脂を分散させたインクを基材に塗布し、熱処理する方法等で形成したカーボン多孔質層においても、カーボンペーパー18を介して間接的にセパレータ22の接触部24で押しつけられた部分25の密度を、セパレータ22のガスチャンネル23に対応した部分26に比べて大きくなるようにセルスタックの締結条件を設定することにより、上述と同様の効果が得られる。
【0051】
カーボン多孔質層製造時のプレス圧力の燃料電池スタック1の締結圧力に対する比の燃料電池スタックの性能に対する影響を評価した。
【0052】
図10は、本実施の形態におけるカーボン多孔質層製造時のプレス圧力の燃料電池スタックの締結圧力に対する比の燃料電池スタックの性能に対する影響の評価対象試料の諸元および試験結果を示す表である。図11は、図10に示した評価対象について同一の締結圧力でカーボン多孔質層製造におけるプレス時の面圧を変化させたときの抵抗分極の変化を示すグラフである。図12は、図10に示した評価対象についてプレス時の面圧を締結圧に対する面圧の比で表記したグラフである。
【0053】
図11および図12に示すように、燃料電池スタック1の締結圧力が一定であれば、抵抗分極はカーボン多孔質層製造時のプレス圧力が大きくなるにしたがって大きくなっている。燃料電池スタック1の締結圧力が6kgf/cm2の場合には、抵抗分極はカーボン多孔質層製造時のプレス圧力が2.5kgf/cm2以上ではほぼ一定である。このときのプレス圧力2.5kgf/cm2は、燃料電池スタック1の締結圧力の約0.4倍に相当する。従って、カーボン多孔質層製造時のプレス圧力を締結圧力の40%以下とすることで抵抗分極を低減することができる。つまり、カーボン多孔質層製造時のプレス圧力を締結圧力の40%以下とすることによって、ガス拡散性能を維持した状態で抵抗分極を低減して、性能が向上する。
【0054】
次に、カーボンとフッ素樹脂粉末の混合粉末の目付け量とカーボン多孔質層の厚さとの関係を評価した。
【0055】
図13は、本実施の形態においてカーボンとフッ素樹脂粉末の混合粉末の目付け量とカーボン多孔質層の厚さとの関係を示すグラフである。この評価において、乾式塗布工程の後に行なうローラーによる圧着時の面圧は0.6kgf/cm2とし、カーボンとフッ素樹脂粉末の混合粉末の目付け量を変えて、カーボン多孔質層の厚さの異なるガス拡散層を作成した。図13には、白丸で示した試験結果のほかに試験結果を線形近似した直線およびその近似式もあわせて示した。
【0056】
図13に示すように、カーボン多孔質層の平均厚さyは、カーボンとフッ素樹脂粉末の混合粉末の目付け量xの増加にともなって、ほぼ直線的に増加することがわかる。また、これらの試験結果において、両者の関係はy=37.976xであった。カーボンとフッ素樹脂粉末の混合粉末の目付け量を約0.53mg/cm2から3.2mg/cm2の範囲で変化させることにより、20μmから120μmまでのカーボン多孔質層を形成することができる。
【0057】
これらのカーボン多孔質層の厚さの異なるガス拡散層を備えた燃料電池スタック1を用いて発電試験を行い、燃料電池のガス拡散性を評価した。
【0058】
図14は、本実施の形態におけるカーボン多孔質層の厚さの異なるガス拡散層を備えた燃料電池スタックを用いて燃料電池のガス拡散性を評価した評価対象の試料の諸元および試験結果を示す表である。図15は、本実施の形態における燃料電池スタックの初期の拡散分極とカーボン多孔質層の厚さとの関係を示すグラフである。図16は、本実施の形態における燃料電池スタックの10,000時間経過後の拡散分極とカーボン多孔質層の厚さとの関係を示すグラフである。
【0059】
図15に示すように、燃料電池スタックの初期的なガス拡散性能は、カーボン多孔質層の厚さの増加に伴って、一旦低下して最小値をとった後、上昇していくことがわかる。つまり、燃料電池スタックの初期的なガス拡散性能は、カーボン多孔質層の厚さを所定の範囲とすることにより向上させることができる。本実施の形態においては、カーボン多孔質層の厚さを約20μm以上かつ約100μm以下、より好ましくは約40μm以上かつ約60μm以下とすることにより、燃料電池スタックの初期的なガス拡散性能を向上させることができる。
【0060】
図16に示すように、燃料電池スタックの10,000時間経過後のガス拡散性能は、カーボン多孔質層の厚さの増加に伴って、一旦低下して最小値をとった後、上昇していくことがわかる。つまり、燃料電池スタックのガス拡散性能は、カーボン多孔質層の厚さを所定の範囲とすることにより長期的に維持することができる。本実施の形態においては、カーボン多孔質層の厚さを約20μm以上かつ約80μm以下、より好ましくは約40μm以上かつ約60μm以下とすることにより、燃料電池スタックのガス拡散性能を長期的に維持することができる。
【0061】
カーボン多孔質層にとって、その内部のガス拡散性能および撥水性能のバランスが重要である。ガス拡散性能としては、カーボン多孔質層を備えたガス拡散層のガーレー数がたとえば35秒以下であることが好ましい。ここで、ガーレー数とは、日本工業規格JISP8117で規定された方法で測定される透気抵抗度である。
【0062】
しかし、液滴の表面に対する接触角を測定することによって、表面の撥水性を調べることはできるが、内部の撥水性を測定することはできない。そこで、内部撥水性を評価する方法について検討を重ねた結果、カーボン多孔質層の内部のガス拡散性能および撥水性能が適正であるか否かを判定するために、標準溶液を滴下した際の浸透時間を測定する方法が有効であることを見出した。本実施の形態において、カーボン多孔質層の撥水性検査方法は、検査工程と、判定工程と、を有する。
【0063】
検査工程では、ほぼ水平に配置したカーボン多孔質層の上面に標準溶液を滴下し、カーボン多孔質層の上面に滴下された液滴の浸透時間を測定する。ここでいう浸透時間とは、液滴を滴下してから液滴のすべてが完全に浸透するまでの時間を目視などにより測定した時間を意味する。判定工程では、検査工程で測定した浸透時間が所定の範囲内か否かを判定する。
【0064】
標準溶液の表面張力が低下すると、浸透速度が上昇する。そこで、時間計測における分解能を高める観点から標準溶液の浸透が生じる範囲で、浸透速度がある程度遅いことが要求される。上記条件を満足するためには、表面張力が30〜32mN/m程度の標準溶液を用いることが好ましい。
【0065】
また、浸透させる液滴の量が多くなっても、カーボン多孔質層の表面に形成される液膜はそれほど高くなるわけではないため、浸透時間はある程度のところで飽和する。一方、浸透させる液滴の量が少なすぎると、浸透時間が短くなりすぎて測定が困難になる。そこで、浸透させる液滴の体積は、たとえば1〜10μL(マイクロリットル)とするとよい。
【0066】
次に、標準溶液の平均浸透時間と初期および10,000時間後における拡散分極との関係を評価した。
【0067】
図17は、本実施の形態における標準溶液の平均浸透時間と拡散分極との関係の評価対象の試料の諸元および試験結果を示す表である。図18は、本実施の形態において初期および10,000時間後における拡散分極と平均浸透時間との関係を示したグラフである。ここで、標準試料は表面張力が31mN/mのものを用いた。浸透させる標準試料の液滴の体積は、10μLとした。これらの評価試験では、様々な仕様のカーボン多孔質層を用い、各仕様のカーボン多孔質層に対して、上述の検査方法によって測定した浸透時間の平均を求めた。これらの平均浸透時間は、各仕様における抜き取り検査によるものである。
【0068】
図18から、初期の拡散分極は、液滴の浸透時間が大きくなるにつれて一旦小さくなって一定となり、液滴の浸透時間がある値を超えると再び大きくなっていくことがわかる。つまり、液滴の浸透時間が所定の範囲内となるようなカーボン多孔質層を用いることにより、初期の拡散分極を低減することができる。本実施の形態においては、表面張力31mN/mを10μL滴下した液滴の浸透時間が3秒以上かつ17秒以下となるカーボン多孔質層を用いることにより、初期の拡散分極を低減することができる。
【0069】
また、図18から、10,000時間経過後の拡散分極は、液滴の浸透時間がある値以下ではほぼ一定であり、液滴の浸透時間がある値を超えると大きくなっていくことがわかる。つまり、液滴の浸透時間が所定の値以下となるようなカーボン多孔質層を用いることにより、低い拡散分極を長期的に維持できることがわかる。本実施の形態においては、表面張力31mN/mを10μL滴下した液滴の浸透時間が3秒以上かつ17秒以下、より好ましくは、3秒以上かつ14秒以下となるカーボン多孔質層を用いることにより、低い拡散分極を長期的に維持できる。
【0070】
したがって、表面張力31mN/mを10μL滴下した液滴の浸透時間が3秒以上かつ17秒以下、より好ましくは3秒以上かつ14秒以下となるカーボン多孔質層を用いることにより、初期から長期間にわたって低い拡散分極を長期的に維持できる。このように、本実施の形態のカーボン多孔質層の撥水性検査方法を用いることによって、カーボン多孔質層の内部のガス拡散性能および撥水性能が適正であるか否かを判定することができる。また、内部が適正なガス拡散性能および撥水性能を持つカーボン多孔質層を備えた燃料電池とすることにより、初期から長期間にわたって低い拡散分極を長期的に維持できる。
【0071】
このように、本実施の形態の燃料電池によれば、長期に亘り燃料電池の酸化剤極におけるガス拡散性低下を抑制できる。つまり、ガス拡散層のカーボン多孔質層を最適化することによって、初期的なガス拡散性能の向上と共に、経時的なガス拡散性能の低下を抑制することができる。その結果、燃料電池システムの効率低下を抑制し、高性能化、高耐久化を実現できる。また、ガス拡散層のガス拡散性低下抑制効果は、特に酸化剤極において顕著な効果が発揮される。このため、酸化剤極のカーボン多孔質層のみを最適化しても、初期的なガス拡散性能の向上と共に、経時的なガス拡散性能の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…燃料電池スタック、2…改質器、3…電気制御装置、4…貯湯槽、5…ブロワ、7…熱交換器、8…冷却板、9…冷却水ポンプ、10…単電池、11…燃料極、12…酸化剤極、13…電解質膜、14…燃料極触媒層、15…酸化剤極触媒層、16…燃料極ガス拡散層、17…酸化剤極ガス拡散層、18…カーボンペーパー、19…カーボン多孔質層、20…カーボンペーパー、21…カーボン多孔質層、22…セパレータ、23…ガスチャンネル、24…接触部、101…ガス拡散層基材吸引ステージ、102…カーボン多孔質層形成チャンバー、103…混合物供給部、104…ガス供給部、105…ガス拡散層基材、106…ガス流量調整部、107…排気ブロワ、108…圧力調整弁、110…圧着ローラー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、
触媒層とガス拡散層とを有し、前記触媒層が前記電解質膜の一方の表面に接するように配置された燃料極と、
触媒層とガス拡散層とを有し、前記触媒層が前記電解質膜の一方の表面に接するように配置された酸化剤極とで構成される燃料電池において、
前記酸化剤極のガス拡散層は、前記触媒層に接する面にカーボン粒子およびフッ素樹脂で形成された気孔率が80%以上90%以下かつ密度が0.24g/cm3以上0.30g/cm3以下のカーボン多孔質層を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記カーボン多孔質層の厚さは20μm以上80μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記カーボン多孔質層のガーレー数は35秒以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記カーボン多孔質層は表面張力が31mN/mの液滴を10μL浸透させたときの面内平均浸透時間が3秒以上17秒以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項5】
カーボン粉末およびフッ素樹脂粉末を混合したフッ素樹脂含有量が20%ないし40%である混合粉末を多孔質基材の表面に目付け量が0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下となるように乾式塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後に前記多孔質基材に乾式塗布された前記混合粉末を面圧換算値で0.2kgf/cm2以上2.5kgf/cm2以下で圧着させる圧着工程と、
前記混合粉末が圧着された前記多孔質基材にフッ素樹脂のガラス転移温度以上で熱処理を施してカーボン多孔質層を形成する熱処理工程と、
前記カーボン多孔質層を備えた単電池を形成する工程と、
前記単電池を積層したスタックを締結する締結工程と、
を有することを特徴とする燃料電池の製造方法。
【請求項6】
前記締結工程での前記スタックの締結時の面圧は前記圧着工程での圧着圧力よりも高いことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項7】
前記圧着工程での圧着圧力は前記スタックの締結時の面圧の40%以下であることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項8】
カーボン粉末およびフッ素樹脂粉末を混合した混合粉末を多孔質基材の表面に乾式塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後に前記多孔質基材に乾式塗布された前記混合粉末を圧着させる圧着工程と、
前記混合粉末が圧着された前記多孔質基材にフッ素樹脂のガラス転移温度以上で熱処理を施してカーボン多孔質層を形成する熱処理工程と、
前記カーボン多孔質層の表面に所定の表面張力の標準溶液を所定量滴下して浸透時間を計測する検査工程と、
前記浸透時間が所定の範囲内の前記カーボン多孔質層を用いて単電池を形成する工程と、
前記単電池を積層したスタックを締結する締結工程と、
を有することを特徴とする燃料電池の製造方法。
【請求項9】
前記標準溶液は表面張力が31mN/m以下であることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項10】
電解質膜と、
触媒層とガス拡散層とを有し、前記触媒層が前記電解質膜の一方の表面に接するように配置された燃料極と、
触媒層とガス拡散層とを有し、前記触媒層が前記電解質膜の一方の表面に接するように配置された酸化剤極と、
前記燃料極および酸化剤極にそれぞれ反応ガスを供給する溝状のガスチャネルを形成する一対のセパレータと、
で構成される燃料電池において、
前記酸化剤極のガス拡散層は、前記触媒層に接する面にカーボン粒子およびフッ素樹脂で形成されたカーボン多孔質層を備え、
前記カーボン多孔質層の前記ガスチャンネルに対向する部分の密度が前記セパレータと接する部分に比べて小さいことを特徴とする燃料電池。
【請求項11】
カーボン粉末およびフッ素樹脂粉末を混合したフッ素樹脂含有量が20%ないし40%である混合粉末を多孔質基材の表面に目付け量が0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下となるように乾式塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後に前記多孔質基材に乾式塗布された前記混合粉末を面圧換算値で0.2kgf/cm2以上2.5kgf/cm2以下で圧着させる圧着工程と、
前記混合粉末が圧着された前記多孔質基材にフッ素樹脂のガラス転移温度以上で熱処理を施してカーボン多孔質層を形成する熱処理工程と、
を有することを特徴とする燃料電池用のカーボン多孔質層の製造方法。
【請求項12】
燃料電池用のガス拡散層に配置したカーボン粒子およびフッ素樹脂で形成されたカーボン多孔質層の撥水性検査方法において、
前記カーボン多孔質層の表面に所定の表面張力の標準溶液を所定量滴下して浸透時間を計測する検査工程と、
前記浸透時間が所定の範囲内か否かを判定する判定工程と、
を有することを特徴とする燃料電池用のカーボン多孔質層の撥水性検査方法。
【請求項1】
電解質膜と、
触媒層とガス拡散層とを有し、前記触媒層が前記電解質膜の一方の表面に接するように配置された燃料極と、
触媒層とガス拡散層とを有し、前記触媒層が前記電解質膜の一方の表面に接するように配置された酸化剤極とで構成される燃料電池において、
前記酸化剤極のガス拡散層は、前記触媒層に接する面にカーボン粒子およびフッ素樹脂で形成された気孔率が80%以上90%以下かつ密度が0.24g/cm3以上0.30g/cm3以下のカーボン多孔質層を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記カーボン多孔質層の厚さは20μm以上80μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記カーボン多孔質層のガーレー数は35秒以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記カーボン多孔質層は表面張力が31mN/mの液滴を10μL浸透させたときの面内平均浸透時間が3秒以上17秒以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項5】
カーボン粉末およびフッ素樹脂粉末を混合したフッ素樹脂含有量が20%ないし40%である混合粉末を多孔質基材の表面に目付け量が0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下となるように乾式塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後に前記多孔質基材に乾式塗布された前記混合粉末を面圧換算値で0.2kgf/cm2以上2.5kgf/cm2以下で圧着させる圧着工程と、
前記混合粉末が圧着された前記多孔質基材にフッ素樹脂のガラス転移温度以上で熱処理を施してカーボン多孔質層を形成する熱処理工程と、
前記カーボン多孔質層を備えた単電池を形成する工程と、
前記単電池を積層したスタックを締結する締結工程と、
を有することを特徴とする燃料電池の製造方法。
【請求項6】
前記締結工程での前記スタックの締結時の面圧は前記圧着工程での圧着圧力よりも高いことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項7】
前記圧着工程での圧着圧力は前記スタックの締結時の面圧の40%以下であることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項8】
カーボン粉末およびフッ素樹脂粉末を混合した混合粉末を多孔質基材の表面に乾式塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後に前記多孔質基材に乾式塗布された前記混合粉末を圧着させる圧着工程と、
前記混合粉末が圧着された前記多孔質基材にフッ素樹脂のガラス転移温度以上で熱処理を施してカーボン多孔質層を形成する熱処理工程と、
前記カーボン多孔質層の表面に所定の表面張力の標準溶液を所定量滴下して浸透時間を計測する検査工程と、
前記浸透時間が所定の範囲内の前記カーボン多孔質層を用いて単電池を形成する工程と、
前記単電池を積層したスタックを締結する締結工程と、
を有することを特徴とする燃料電池の製造方法。
【請求項9】
前記標準溶液は表面張力が31mN/m以下であることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項10】
電解質膜と、
触媒層とガス拡散層とを有し、前記触媒層が前記電解質膜の一方の表面に接するように配置された燃料極と、
触媒層とガス拡散層とを有し、前記触媒層が前記電解質膜の一方の表面に接するように配置された酸化剤極と、
前記燃料極および酸化剤極にそれぞれ反応ガスを供給する溝状のガスチャネルを形成する一対のセパレータと、
で構成される燃料電池において、
前記酸化剤極のガス拡散層は、前記触媒層に接する面にカーボン粒子およびフッ素樹脂で形成されたカーボン多孔質層を備え、
前記カーボン多孔質層の前記ガスチャンネルに対向する部分の密度が前記セパレータと接する部分に比べて小さいことを特徴とする燃料電池。
【請求項11】
カーボン粉末およびフッ素樹脂粉末を混合したフッ素樹脂含有量が20%ないし40%である混合粉末を多孔質基材の表面に目付け量が0.5mg/cm2以上2.0mg/cm2以下となるように乾式塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後に前記多孔質基材に乾式塗布された前記混合粉末を面圧換算値で0.2kgf/cm2以上2.5kgf/cm2以下で圧着させる圧着工程と、
前記混合粉末が圧着された前記多孔質基材にフッ素樹脂のガラス転移温度以上で熱処理を施してカーボン多孔質層を形成する熱処理工程と、
を有することを特徴とする燃料電池用のカーボン多孔質層の製造方法。
【請求項12】
燃料電池用のガス拡散層に配置したカーボン粒子およびフッ素樹脂で形成されたカーボン多孔質層の撥水性検査方法において、
前記カーボン多孔質層の表面に所定の表面張力の標準溶液を所定量滴下して浸透時間を計測する検査工程と、
前記浸透時間が所定の範囲内か否かを判定する判定工程と、
を有することを特徴とする燃料電池用のカーボン多孔質層の撥水性検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−59503(P2012−59503A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200961(P2010−200961)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(301060299)東芝燃料電池システム株式会社 (358)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(301060299)東芝燃料電池システム株式会社 (358)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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