説明

燃料電池およびそれを備えた燃料電池システム

【課題】要求発電量の過渡変化時等において発電反応に必要な酸素が不足することを防止することができる燃料電池および燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池100は、アノード2と、プロトン伝導性を有しアノード上に設けられた電解質層3と、電解質層上に設けられたカソード4と、カソードに光を照射する発光体42とを備え、カソードは光合成生物を含有することを特徴とする。発光体によってカソードに光が照射され、光合成生物によって光合成がなされる。したがって、カソードにおいて純酸素が発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池およびそれを備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、一般的には水素及び酸素を燃料として電気エネルギーを得る装置である。この燃料電池は、環境面において優れかつ高いエネルギー効率が実現できることから、今後のエネルギー供給システムとして広く開発が進められてきている。
【0003】
上記燃料電池の発電量を増大させるためには、カソードに供給する酸素量を増加させる必要がある。そこで、燃料電池に要求される発電量が変化した場合に、カソードガスの流量および圧力を制御する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−38691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、要求発電量の過渡変化時等においてカソードガスの流量変化遅れが発生するおそれがある。
【0006】
本発明は、要求発電量の過渡変化時等において発電反応に必要な酸素が不足することを防止することができる燃料電池および燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料電池は、アノードと、プロトン伝導性を有しアノード上に設けられた電解質層と、電解質層上に設けられたカソードと、カソードに光を照射する発光体とを備え、カソードは光合成生物を含有することを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る燃料電池においては、発光体によってカソードに光が照射され、光合成生物によって光合成がなされる。したがって、カソードにおいて純酸素が発生する。この場合、カソードガス中の酸素濃度が増加する。それにより、発電反応に寄与する酸素が不足することを抑制することができる。すなわち、この純酸素が燃料電池の発電反応に用いられる。したがって、燃料電池の発電反応を促進することができる。その結果、燃料電池の発電効率を向上させることができる。以上のことから、要求発電量の過渡変化時等においても発電反応に必要な酸素が不足することを防止することができる。
【0009】
発光体は、少なくとも燃料電池の発電電力を用いて発光してもよい。この場合、燃料電池の発電量が増大すると、発光体の発光強度も増加する。それにより、光合成によって生成される純酸素量も増加する。すなわち、要求発電量に応じて純酸素生成量も増加することになる。以上のことから、要求発電量の過渡変化時等において発電反応に必要な酸素が不足することを防止することができる。また、発光体は、少なくとも外部から供給される電力を用いて発光してもよい。
【0010】
発光体は、発光ダイオードを含んでいてもよい。また、電解質層はプロトン伝導性を有する固体高分子電解質であり、カソードはカソード触媒層およびカソードガス拡散層を含んでいてもよい。さらに、カソードガス拡散層はフィラメントから構成され、発光体はフィラメントであってもよい。この場合、新たに発光体を設ける必要がなくなる。
【0011】
光合成生物は、少なくともカソード触媒層に含有されていてもよい。この場合、カソードガス拡散層が閉塞してもカソード触媒層に純酸素を供給することができる。したがって、本発明に係る燃料電池の発電効率低下を抑制することができる。また、光合成生物は、光合成菌類および藻類の少なくとも一方を含んでいてもよい。また、本発明に係る燃料電池は、100℃以下の温度で作動する燃料電池あってもよい。この場合、光合成生物の死滅を防止することができる。
【0012】
本発明に係る燃料電池システムは、請求項1〜8のいずれかに記載の燃料電池と、カソードにおける酸素不足を予測または検出する酸素不足検出手段と、発光体に電力を供給する電力供給手段と、酸素不足検出手段の検出結果に基づいて、発光体を制御する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る燃料電池システムにおいては、発光体によってカソードに光が照射され、光合成生物によって光合成がなされる。したがって、カソードにおいて純酸素が発生する。この場合、カソードガス中の酸素濃度が増加する。それにより、発電反応に寄与する酸素が不足することを抑制することができる。すなわち、この純酸素が燃料電池の発電反応に用いられる。したがって、燃料電池の発電反応を促進することができる。その結果、燃料電池の発電効率を向上させることができる。以上のことから、要求発電量の過渡変化時等においても発電反応に必要な酸素が不足することを防止することができる。また、本発明に係る燃料電池100の作動温度が100℃以下であることから、光合成生物の死滅を防止することができる。さらに、酸素不足検出手段の検出結果に基づいて発光体の発光量を制御することができることから、無駄な電力消費を抑制することができるとともに、光合成生物による光合成を促進することができる。
【0014】
制御手段は、カソードにおける酸素不足が前記酸素不足検出手段によって予測または検出された場合に、発光体に電力が供給されるように電力供給手段を制御してもよい。この場合、光合成生物による光合成を促進することができる。したがって、カソードにおける酸素不足を抑制することができる。
【0015】
酸素不足検出手段は燃料電池の発電電流を検出する電流計を含み、酸素不足検出手段は電流計によって検出された電流が所定値よりも大きい場合にカソードにおける酸素不足を予測または検出してもよい。この場合、燃料電池に要求される負荷に応じて光合成量を制御することができる。また、燃料電池システムは、燃料電池を複数備えていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、要求発電量の過渡変化時等において発電反応に必要な酸素が不足することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の第1実施例に係る燃料電池100の模式的断面図である。図1に示すように、燃料電池100は、セパレータ1上に、アノード2、電解質層3、カソード4およびセパレータ5が順に積層された構造を有する。アノード2は、セパレータ1側から電解質層3側にかけて、多孔体層21、アノードガス拡散層22およびアノード触媒層23が順に積層された構造を有する。カソード4は、電解質層3からセパレータ5側にかけて、カソード触媒層43、カソードガス拡散層42および多孔体層41が順に積層された構造を有する。
【0019】
セパレータ1,5は、ステンレス等の導電性材料から構成される。セパレータ1,5の厚さは、例えば、3mm程度である。多孔体層21,41は、発泡焼結金属体等の導電性多孔体から構成される。多孔体層21,41は、ガスが流動するためのガス流路として機能する。多孔体層21,41の層厚は、例えば、0.3mm程度である。
【0020】
アノードガス拡散層22は、カーボンペーパ等の導電性およびガス透過性を備えた材料から構成される。アノードガス拡散層22は、多孔体層21を流動するアノードガスをアノード触媒層23側に拡散させる機能を有する。アノードガスは、水素を含有するガスである。アノードガス拡散層22の層厚は、例えば、205μm程度である。アノード触媒層23は、例えば、白金等の触媒を担持したカーボン等の導電性材料から構成される。アノード触媒層23中の触媒は、水素のプロトン化を促進するための触媒として機能する。アノード触媒層23の層厚は、例えば、5μm程度である。電解質層3は、例えば、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質からなる。電解質層3の膜厚は、30μm程度である。
【0021】
カソードガス拡散層42は、フィラメント等の発光体を繊維状に織った材料から構成される。カソードガス拡散層42は、多孔体層41を流動するカソードガスをカソード触媒層43側に拡散させる機能を有するとともに、発電反応によって生じた電流が供給されることによって発光する機能を有する。カソードガス拡散層42の層厚は、例えば、260μm程度である。また、カソードガスは、エア等の酸素および二酸化炭素を含有するガスである。
【0022】
カソード触媒層43は、例えば、白金等の触媒を担持したカーボン等の導電性材料から構成される。カソード触媒層43中の触媒は、プロトンと酸素との反応を促進するための触媒として機能する。また、カソード触媒層43には、光合成生物が添加されている。光合成生物は、粉末状の発泡樹脂(エンジニアリングプラスチックス)、炭、軽石、ゼオライト等の多孔性物質に浸透させてある。これらの多孔性物質は、大きい表面積を有し、微細な空孔を有する。したがって、この微細な空孔に光合成生物が浸透することによって光合成生物が流出することを防止することができる。カソード触媒層43は、この多孔性物質を含有している。
【0023】
光合成生物としては、常温用の光合成菌類および藻類ならびに低温用の藻類を用いることができる。常温用の光合成菌類としては、緑色光合成細菌、紅色光合成細菌等の光合成細菌があげられる。常温用の藻類としては、藍藻、ケイ藻、緑藻、シアノバクテリア、アオコ等があげられる。低温用の藻類としては、緑藻ボルボックス目の鞭毛藻(chloromonas属、Mesotaenium属)、Ancylonema nordenskioeldii Berggren等の緑藻のチリモ類等の氷雪藻があげられる。
【0024】
続いて、燃料電池100の動作について説明する。まず、アノードガスがセパレータ1から多孔体層21に供給される。アノードガスは、多孔体層21を流動しつつ、アノードガス拡散層22を透過してアノード触媒層23に到達する。アノード触媒層23に到達したアノードガス中の水素は、プロトンと電子とに解離する。プロトンは、電解質層3を伝導し、カソード触媒層43に到達する。
【0025】
一方、カソードガスはセパレータ5から多孔体層41に供給される。カソードガスは、多孔体層41を流動しつつ、カソードガス拡散層42を透過してカソード触媒層43に到達する。カソード触媒層43に到達したカソードガス中の酸素とプロトンとから水が発生するとともに電力が発生する。発生した電力は、セパレータ1,5によって回収される。以上の動作によって、燃料電池100は発電を行う。
【0026】
電力が発生すると、カソードガス拡散層42を構成するフィラメントが発光する。それにより、カソード触媒層43に光が照射される。カソード触媒層43においては、光合成生物は、照射された光とカソードガスに含まれる二酸化炭素と発電生成水とを用いて光合成を行う。すなわち、下記式(1)の反応が行われる。
CO + HO → CHO + O (1)
【0027】
したがって、カソード触媒層43において純酸素が発生する。この場合、カソードガス中の酸素濃度が増加する。それにより、発電反応に寄与する酸素が不足することを抑制することができる。すなわち、この純酸素が燃料電池100の発電反応に用いられる。したがって、燃料電池100の発電反応を促進することができる。その結果、燃料電池100の発電効率を向上させることができる。
【0028】
また、燃料電池100の発電量が増大すると、フィラメントの発光強度も増加する。それにより、光合成によって生成される純酸素量も増加する。すなわち、要求発電量に応じて純酸素生成量も増加することになる。以上のことから、要求発電量の過渡変化時等において発電反応に必要な酸素が不足することを防止することができる。
【0029】
なお、上記の光合成生物は、100℃以上の温度域において死滅するおそれがある。したがって、燃料電池100の作動温度は100℃以下である必要がある。氷点下においては常温用の光合成菌類および藻類は、生息可能であるが、活性が低下して光合成しにくくなる。氷雪藻は、−40℃あたりの温度域においても活性が高く光合成を行うことができる。したがって、カソード触媒層43に氷雪藻が含まれていれば、氷点下における低温起動時においても酸素不足を抑制することができる。以上のことから、カソード触媒層43には、常温用の光合成菌または藻類と氷雪藻との両方を含有していることが好ましい。
【0030】
本実施例においては光合成生物はカソード触媒層43に添加されているが、それに限られない。光合成生物は、多孔体層41、カソードガス拡散層42、カソード触媒層43および電解質層3のいずれかに添加されていてもよく、これらの層のうち複数の層に添加されていてもよい。ただし、光合成生物は、少なくともカソード触媒層43に添加されていることが好ましい。発電反応はカソード触媒層43において行われるからである。また、多孔体層41およびカソードガス拡散層42が閉塞してもカソード触媒層43に酸素を供給することができるからである。
【0031】
続いて、光合成生物の添加方法について説明する。まず、粉末状の発泡樹脂(エンジニアリングプラスチックス等)、炭、軽石、ゼオライト等の多孔性物質の粉末と上記の光合成生物とを混合する。次に、培養室において光合成生物を繁殖させる。それにより、光合成生物は多孔性物質の微細な空孔内に浸透する。図2にその様子を示す。図2に示すように、光合成生物10は、多孔性物質20の微細な空孔に根付いている。上記の多孔体層41、カソードガス拡散層42、カソード触媒層43および電解質層3を形成する際にこの多孔性物質20を添加することによって、光合成生物を燃料電池100に定着させることができる。
【実施例2】
【0032】
続いて、本発明の第2実施例に係る燃料電池100aについて説明する。図3(a)は燃料電池100aの模式的断面図であり、図3(b)は燃料電池100aを上面から見た場合の透過図である。燃料電池100aが図1の燃料電池100と異なる点は、カソードガス拡散層42の代わりにカソードガス拡散層42aが設けられている点および複数の発光ダイオード6がさらに設けられている点である。
【0033】
図3(a)に示すように、発光ダイオード6は、カソードガス拡散層42aおよび多孔体層41にわたって配置されている。各発光ダイオード6は、カソード触媒層43側に光を照射するように配置される。発光ダイオード6のサイズは、例えば、3000μm×3000μm×3000μm程度である。また、図3(b)に示すように、発光ダイオード6は、燃料電池100aの積層面に所定の間隔を空けて配置されている。隣接する発光ダイオード6同士の距離は、例えば、1cm程度である。また、本実施例においては、カソードガス拡散層42aはカーボンペーパ等の導電性およびガス透過性を備えた材料から構成される。
【0034】
本実施例においては、燃料電池100aの発電反応によって発生した電力によって各発光ダイオード6が発光する。この場合、カソード触媒層43および電解質層3に光が照射される。それにより、上記式(1)の反応が光合成生物によって行われる。その結果、純酸素が発生する。
【0035】
発光ダイオード6の発光色は、特に限定されるものではないが、青色または赤色であることが好ましい。すなわち、発光ダイオード6の発光色の波長範囲は、400nm〜500nmまたは600nm〜700nmであることが好ましい。クロロフィルはこの波長範囲の光を吸収しやすいからである。なお、発光ダイオード6の発光色は、白色であってもよい。
【0036】
なお、発光ダイオード6は、多孔体層41、カソードガス拡散層42aおよびカソード触媒層43のいずれに設けられていてもよい。発光ダイオード6の位置は、発光ダイオード6の照射光によって光合成生物が光合成できる箇所であれば特に限定されない。また、カソードガス拡散層42aは、実施例1と同様にフィラメント等の発光体から構成されていてもよい。この場合、フィラメントおよび発光ダイオード6の両方に発光させることができる。
【0037】
また、発光ダイオード6は、発電効率が低下する箇所に配置されていてもよい。一般的に、カソードガスの出口側においては発電効率が低下する傾向にある。発電反応の進行に伴ってカソードガス中の酸素濃度が低下するからである。したがって、図4に示すように、発光ダイオード6はカソードガスの流動経路の出口側に配置されてもよい。
【実施例3】
【0038】
続いて、本発明の第3実施例に係る燃料電池100bについて説明する。図5(a)は燃料電池100bの模式的断面図であり、図5(b)は燃料電池100bに含まれるセパレータ5bのカソード4側の平面図である。燃料電池100bが図1の燃料電池と異なる点は、カソードガス拡散層42の代わりにカソードガス拡散層42bが設けられている点およびセパレータ5の代わりにセパレータ5bが設けられている点である。
【0039】
図5(a)および図5(b)に示すように、セパレータ5bは、波形状にプレス成形された構造を有する。カソードガスは、セパレータ5bの多孔体層41に対向する溝部を流動する。セパレータ5bの多孔体層41に接するリブ部には、複数の発光ダイオード6bが敷詰められている。発光ダイオード6bは、実施例2における発光ダイオード6と同様のものである。発光ダイオード6bは、カソード4側に光を照射するように配置されている。また、本実施例においては、カソードガス拡散層42bはカーボンペーパ等の導電性およびガス透過性を備えた材料から構成される。
【0040】
本実施例においては、燃料電池100bの発電反応によって発生した電力によって各発光ダイオード6bが発光する。この場合、多孔体層41、カソードガス拡散層42、カソード触媒層43および電解質層3に光が照射される。それにより、上記式(1)の反応が光合成生物によって行われる。その結果、純酸素が発生する。
【実施例4】
【0041】
続いて、本発明の第4実施例に係る燃料電池システム200について説明する。図6は、燃料電池システム200の全体構成を示す模式図である。図6に示すように、燃料電池システム200は、燃料電池スタック201、蓄電池202、電流計203および制御部204を備える。
【0042】
燃料電池スタック201は、上記実施例1に係る燃料電池100が複数積層された構造を有する。燃料電池スタック201には、水素を含有するアノードガスとエア等のカソードガスとが供給される。それにより、燃料電池スタック201は発電を行う。蓄電池202は、カソードガス拡散層42のフィラメントに接続されている。蓄電池202は、制御部204の指示に従って、必要量の電力を上記フィラメントに供給する。電流計203は、燃料電池スタック201の発電電流を検出し、その検出結果を制御部204に与える。
【0043】
制御部204は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)等から構成される。制御部204は、電流計203から与えられた検出結果に基づいて燃料電池スタック201における電流密度を計算する。制御部204は、その計算結果に基づいて蓄電池202を制御する。
【0044】
図7は、制御部204が燃料電池システム200を制御する際のフローチャートの一例を示す図である。制御部204は、所定の周期で図7のフローチャートを実行する。以下、図7のフローチャートに従って、制御部204による制御について説明する。
【0045】
図7に示すように、制御部204は、電流計203の検出結果を取得して燃料電池スタック201の電流密度を計算する(ステップS1)。次に、制御部204は、ステップS1で求めた電流密度が所定値(例えば、1A/cm)以上であるか否かを判定する(ステップS2)。この場合、燃料電池スタック201に要求される負荷が大きいか否かを判定することができる。
【0046】
ステップS2において電流密度が所定値以上であると判定された場合、制御部204は、蓄電池202を制御して必要量の電力をカソードガス拡散層42のフィラメントに供給する(ステップS3)。この場合、フィラメントの発光強度が増加する。それにより、光合成生物による上記式(1)の反応が促進されて純酸素が生成される。その結果、各燃料電池100における酸素不足を抑制することができる。ステップS2において電流密度が所定値以上であると判定されなかった場合には、制御部204は動作を終了する。
【0047】
このように、図7のフローチャートに従った制御によって、燃料電池スタック201に要求される負荷が増大した場合において発電に必要な酸素が不足することが抑制される。その結果、燃料電池スタック201に対する要求発電量の過渡変化時等において、発電反応に必要な酸素が不足することを防止することができる。
【0048】
なお、カソード触媒層43に供給される酸素が不足する場合にのみ、フィラメントに発光させてもよい。フィラメントによる発光によって燃料電池100の発電電力が消費され、発電効率が低下するからである。例えば、フィラメント表面とフィラメントと蓄電池202との接続部とを絶縁処理することによって、燃料電池100の発電中のフィラメントの発光を停止することができる。この場合、フィラメントは、蓄電池202から電力が供給された場合にのみ発光する。したがって、燃料電池スタック201の電流密度が所定値以上になった場合にフィラメントに電力を供給することによって、必要な場合にのみフィラメントによって発光させることができる。
【0049】
なお、燃料電池スタック201に積層されている燃料電池は、実施例2に係る燃料電池100aまたは実施例3に係る燃料電池100bであってもよい。この場合、蓄電池202は、発光ダイオード6または発光ダイオード6bに接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施例に係る燃料電池の模式的断面図である。
【図2】多孔性物質の微細な空孔内に光合成生物が浸透した様子を示す図である。
【図3】第2実施例に係る燃料電池を説明するための図である。
【図4】発光ダイオードの配置箇所の他の例を示す図である。
【図5】第3実施例に係る燃料電池を説明するための図である。
【図6】第4実施例に係る燃料電池システムの全体構成を示す模式図である。
【図7】制御部が燃料電池システムを制御する際のフローチャートの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
2 アノード
3 電解質層
4 カソード
5,5b セパレータ
6,6b 発光ダイオード
10 光合成生物
20 多孔性物質
41 多孔体層
42,42a,42b カソードガス拡散層
43 カソード触媒層
100,100a,100b 燃料電池
200 燃料電池システム
201 燃料電池スタック
203 電流計
204 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、
プロトン伝導性を有し前記アノード上に設けられた電解質層と、
前記電解質層上に設けられたカソードと、
前記カソードに光を照射する発光体とを備え、
前記カソードは、光合成生物を含有することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記発光体は、少なくとも前記燃料電池の発電電力を用いて発光することを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
前記発光体は、少なくとも外部から供給される電力を用いて発光することを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池。
【請求項4】
前記発光体は、発光ダイオードを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項5】
前記電解質層は、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質であり、
前記カソードは、カソード触媒層およびカソードガス拡散層を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項6】
前記カソードガス拡散層は、フィラメントから構成され、
前記発光体は、前記フィラメントであることを特徴とする請求項5記載の燃料電池。
【請求項7】
前記光合成生物は、少なくとも前記カソード触媒層に含有されることを特徴とする請求項5または6記載の燃料電池。
【請求項8】
前記光合成生物は、光合成菌類および藻類の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項9】
前記燃料電池は、100℃以下の温度で作動する燃料電池であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の燃料電池と、
前記カソードにおける酸素不足を予測または検出する酸素不足検出手段と、
前記発光体に電力を供給する電力供給手段と、
前記酸素不足検出手段の検出結果に基づいて、前記発光体を制御する制御手段とを備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項11】
前記制御手段は、前記カソードにおける酸素不足が前記酸素不足検出手段によって予測または検出された場合に、前記発光体に電力が供給されるように前記電力供給手段を制御することを特徴とする請求項10記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記酸素不足検出手段は、前記燃料電池の発電電流を検出する電流計を含み、
前記酸素不足検出手段は、前記電流計によって検出された電流が所定値よりも大きい場合に前記カソードにおける酸素不足を予測または検出することを特徴とする請求項10または11記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記燃料電池システムは、前記燃料電池を複数備えることを特徴とする請求項10〜12のいずかに記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−294139(P2007−294139A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117983(P2006−117983)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】