説明

燃料電池からの触媒回収方法

【課題】より簡素な工程により燃料電池から触媒を分離する。
【解決手段】高分子電解質から成る膜によって形成される電解質層を備える燃料電池から、電極を構成する触媒を回収する方法は、燃料電池を分解して得られ、電解質層と、電解質層の両面上に形成されて触媒を備える電極と、電極上に配置される導電性多孔質体から成るガス流路層と、から成る膜−電極−ガス流路層接合体を、乾式で粉砕する第1の工程(ステップS110およびステップS120)を備える。さらに、第1の工程で粉砕して得られる粒子を、粒径と粒子密度の少なくともいずれか一方に基づいて、触媒の大部分が含まれる触媒含有粒子群と、触媒含有粒子群よりも高分子電解質の含有割合が高い電解質含有粒子群とに乾式で分離する第2の工程(ステップS130)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池からの触媒回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、一般に、電解質層の両側に、貴金属等の金属から成る触媒を備えた電極を備え、アノード側に水素が供給されると共に、カソード側に酸素が供給されて、電気化学反応を進行することにより起電力を得る。このような燃料電池は、燃料の有する化学エネルギを直接電気エネルギに変換する高効率な発電装置であって、環境汚染物質を排出しない発電装置として、普及が期待されている。ここで、燃料電池の普及のためには、触媒などの燃料電池の構成要素の再利用を図ることが重要と考えられている。再利用のために燃料電池から触媒を回収する方法としては、燃料電池を分解して得られる電解質膜/電極接合体(MEA)を、加熱メタノール等の溶解液に浸漬させて、電解質膜を構成する高分子電解質を溶解液に溶解させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここでは、高分子電解質を溶解させた溶解液から、溶解液中の不溶物部分として、電極を構成する触媒を担持した導電性担体を分離することによって、触媒を回収している。
【0003】
【特許文献1】特開2005−235504号公報
【特許文献2】特公平8−6152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高分子電解質を溶解液中に溶解させて触媒を回収する場合には、燃料電池を分解して得られるMEAを溶解液に浸漬して高分子電解質の溶解を行なわせると共に、高分子電解質を溶解した溶解液から、触媒含む不溶部分を分離する、すなわち、液相部分と固相部分との分離を行なう必要があり、触媒分離の工程が複雑になる。また、触媒と分離した電解質は、溶解液に溶解する状態で得られるため、電解質を処理するためには電解質と共に溶解液を処理する必要があり、電解質の処理工程も複雑となる。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、より簡素な工程により燃料電池から触媒を分離することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、高分子電解質から成る膜によって形成される電解質層を備える燃料電池から、電極を構成する触媒を回収する方法であって、
前記燃料電池を分解して得られ、前記電解質層と、前記電解質層の両面上に形成されて前記触媒を備える電極と、前記電極上に配置される導電性多孔質体から成るガス流路層と、から成る膜−電極−ガス流路層接合体を、乾式で粉砕する第1の工程と、
前記第1の工程で粉砕して得られる粒子を、粒径と粒子密度の少なくともいずれか一方に基づいて、前記触媒の大部分が含まれる触媒含有粒子群と、該触媒含有粒子群よりも前記高分子電解質の含有量が多い電解質含有粒子群とに乾式で分離する第2の工程と
を備えることを要旨とする。
【0007】
以上のように構成された本発明の燃料電池からの触媒回収方法によれば、燃料電池を分解して得られる膜−電極−ガス流路層接合体を、乾式で粉砕し分級することにより、ドライ工程によって触媒を高分子電解質から分離して回収することができるため、触媒を回収する工程を簡素化することができる。また、ドライ工程によって高分子電解質を触媒から除去できることにより、除去した電解質に対して溶媒などの他の物質が混在することが無く、電解質の処理工程も簡素化することができる。ここで、本発明の触媒回収方法の対象となる燃料電池が備える電解質層を形成する高分子電解質は、フッ素系樹脂であることとしても良い。
【0008】
本発明の触媒回収方法において、さらに、
前記触媒含有粒子群から、前記触媒を分離・精製する第3の工程を備えることとしても良い。
【0009】
このような構成とすれば、燃料電池から分離した触媒を再利用可能となる。
【0010】
本発明の触媒回収方法において、前記前記第3の工程は、前記触媒含有粒子群を焼成する工程を含むこととしても良い。
【0011】
このような構成とすれば、焼成という簡便な工程によって、触媒含有粒子群から触媒以外の構成材料を除去することができる。特に、電解質層を構成する高分子電解質がフッ素樹脂である場合には、触媒に混在する高分子電解質量が分級によって低減されているため、フッ素樹脂が焼成の工程に供されて生じる有害なフッ化ガスを低減することができ、焼成に伴うガス処理の問題の発生を抑えることができる。
【0012】
本発明の触媒回収方法において、前記ガス流路層は、炭素材料により形成されることとしても良い。
【0013】
このような構成とすれば、第1の工程において粉砕を行なう際に、ガス流路層によって電極の粉砕が妨げられることが無く、ガス流路層を含めて電極を充分に粉砕することが可能になる。
【0014】
本発明の触媒回収方法において、前記触媒は、貴金属を含有することとしても良い。希少な貴金属を簡便な方法により回収可能とすることで、触媒として貴金属を用いる燃料電池の普及を促進することができる。
【0015】
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、燃料電池の構成部材の再利用方法などの形態で実現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を、実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.燃料電池の構成:
B.触媒回収の動作:
C.変形例:
【0017】
A.燃料電池の構成:
図1は、本発明の実施例である燃料電池を構成する単セル10の概略構成を表わす断面模式図である。単セル10は、電解質膜20と、カソード21およびアノード22と、ガス拡散層23,24と、ガスセパレータ25,26と、を備えている。ここで、電極であるカソード21およびアノード22は、電解質膜20上に形成されており、表面に電極が形成された電解質膜20は、ガス拡散層23,24によって挟持されている。そして、このサンドイッチ構造は、さらに両側からガスセパレータ25,26によって挟持されている。なお、以下の説明において、電解質膜20と、カソード21およびアノード22と、ガス拡散層23,24とから成る5層構造を有する積層体を、膜−電極−ガス流路層接合体29(MEGA29)と呼ぶ。
【0018】
電解質膜20は、固体高分子材料、例えばフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状態で良好な電気伝導性を示す。
【0019】
カソード21およびアノード22は、触媒として、例えば白金、あるいは白金合金を備えており、これらの触媒を、導電性を有する担体上に担持させることによって形成されている。より具体的には、カソード21およびアノード22は、例えば、上記触媒を担持したカーボン粒子と、電解質膜20を構成する高分子電解質と同様の電解質と、を備えている。このような触媒を作製するには、例えば、上記触媒担持カーボンおよび高分子電解質を含有する電極ペーストを作製し、この電極ペーストを、電解質膜20上、あるいはガス拡散層23,24上に塗布し、乾燥・固着させればよい。なお、電極は、上記した高分子電解質を備えないなど、異なる構成とすることもできる。
【0020】
ガス拡散層23,24は、ガス透過性を有する導電性部材、例えば、カーボンペーパやカーボンクロスによって形成することができる。本実施例のガス拡散層23,24は、いずれも、全体として平坦な形状の板状部材である。このようなガス拡散層24は、電気化学反応に供されるガスの流路になると共に、集電を行なう。
【0021】
ガスセパレータ25,26は、ガス不透過な導電性部材、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンや、焼成カーボンにより形成されている。ガスセパレータ25,26は、単セル10内に配置されて反応ガス(水素を含有する燃料ガスあるいは酸素を含有する酸化ガス)が流れるガス流路の壁面を成す部材である。本実施例のガスセパレータ25,26は、その表面に、単セル10内のガス流路を形成するための凹凸形状が形成されている。単セル10内では、ガスセパレータ25とガス拡散層23との間には、酸化ガスの流路である単セル内酸化ガス流路27が形成される。また、ガスセパレータ26とガス拡散層24との間には、燃料ガスの流路である単セル内燃料ガス流路28が形成される。単セル内酸化ガス流路27を通過する酸化ガスは、ガス拡散層23を介してカソード21に供給され、電気化学反応に供される。また、単セル内燃料ガス流路28を通過する燃料ガスは、ガス拡散層24を介してアノード22に供給され、電気化学反応に供される。
【0022】
なお、単セル10の外周部には、単セル内酸化ガス流路27および単セル内燃料ガス流路28におけるガスシール性を確保するために、ガスケットや接着剤等のシール材が配設されている(図示せず)。
【0023】
燃料電池を組み立てる際には、図1に示す単セル10を複数積層してスタックを形成する。このように、単セル10を積層してスタックを形成する際には、各単セル間に、あるいは所定数の単セルを積層する毎に、冷媒の通過する冷媒流路を設けても良い。上記スタックは、その積層方向に所定の押圧力がかかった状態で保持される。
【0024】
また、スタックの外周部には、単セル10の積層方向と平行であって酸化ガスあるいは燃料ガスが流通する複数のガスマニホールドが設けられている。これら複数のガスマニホールドのうちの酸化ガス供給マニホールドを流れる酸化ガスは、各単セル10に分配され、電気化学反応に供されつつ各単セル内酸化ガス流路27内を通過し、その後、酸化ガス排出マニホールドに集合する。同様に、燃料ガス供給マニホールドを流れる燃料ガスは、各単セル10に分配され、電気化学反応に供されつつ各単セル内燃料ガス流路28内を通過し、その後、燃料ガス排出マニホールドに集合する。
【0025】
B.触媒回収の動作:
以上説明した燃料電池が廃棄処分される際には、燃料電池から触媒の回収が行なわれる。図2は、燃料電池からの触媒回収工程を表わす説明図である。燃料電池から触媒を回収する際には、まず、触媒回収の対象となる燃料電池を分解して、MEGA29を燃料電池から取り出す(ステップS100)。具体的には、燃料電池を構成するスタックにおいて、ガス拡散層23とガスセパレータ25との間、および、ガス拡散層24とガスセパレータ26との間を剥がし、MEGA29を取り出す。
【0026】
MEGA29を取り出すと、次に、このMEGA29を、粗砕する(ステップS110)。この粗砕の工程は、次のステップS120における粉砕工程に先立って、ステップS120における粉砕工程に供することができる大きさにまで、予めMEGA29を砕くための工程である。ステップS110における粗砕の工程は、一般的な乾式の破砕機あるいは粉砕機、例えば、一軸破砕機や鬼歯クラッシャー、あるいはハンマークラッシャーを単独で、あるいは適宜組み合わせて行なえば良い。
【0027】
その後、ステップS110で得た粗砕物を粉砕する(ステップS120)。本実施例では、ボールミルを用いて乾式で粉砕している。ボールミルを用いた粉砕を行なうことで、MEGA29の構成材料が、それぞれ粉砕される。なお、ボールミルとしては、一軸ボールミルや遊星ボールミルを用いることができる。
【0028】
このように、MEGA29をボールミルを用いて粉砕すると、触媒を備える電極と、カーボンによって形成されるガス拡散層23,24と、高分子電解質によって形成される電解質膜20と、がそれぞれ粒子化する。ここで、電解質膜20を構成する高分子電解質は、触媒を構成する金属や、触媒を担持するカーボン粒子、あるいは、ガス拡散層23,24を構成するカーボンに比べて、粘性が高い材料である。そのため、電極やガス拡散層23,24は、電解質膜20よりも粉砕され易く、より粒径の小さな粒子へと粉砕される。なお、電極は、このステップS120の工程において、所定の粒径を有する触媒担持カーボン粒子の集合体へと粉砕される。また、ボールミルを用いた粉砕の程度(得られる粉砕物の粒径および粒度分布)は、用いるボールの大きさやボールの材質、ミルの回転数や処理時間等の条件を適宜設定することによって、調整することができる。
【0029】
ステップS120で粗砕物の粉砕を行なうと、その後、ステップS120で得た粉砕物の分級を行ない(ステップS130)、電極を構成する触媒の回収を行なう。分級の方法は、触媒の大部分を含む触媒含有粒子群と、触媒含有粒子群よりも高分子電解質の含有量が多い電解質含有粒子群とを分離可能であれば良く、ふるい分け分級、または、分級に用いる流体として気体を用いる乾式分級を行なうことができる。ふるい分け分級を行なえば、粒径がより小さく、主として触媒担持カーボンとガス拡散層の粉砕物から成る触媒含有粒子と、粒径がより大きく、主として電解質膜の粉砕物から成る電解質含有粒子とを、容易に分離することができる。また、乾式分級とは、重力や慣性あるいは遠心力を利用する分級方法であり、このような方法により分級を行なう乾式気流分級機としては、例えば、エアセパレータやサイクロン、ミクロンセパレータを挙げることができる。これらの分級機を用いることで、粒径のより小さい触媒含有粒子を、高分子電解質から分離することができる。
【0030】
上記したステップS130において、分級の操作は、複数回行なっても良い。また、その際、異なる種類の分級装置を組み合わせて用いても良い。このようにして分級の操作を繰り返すことで、触媒含有粒子群中に混在する電解質量をさらに低減させることができる。
【0031】
ステップS130で分級を行ない、触媒含有粒子群を高分子電解質から分離した後は、分離した触媒含有粒子群から、触媒を構成する金属の分離を行なえば良い。触媒を構成する金属の分離の方法としては、周知の焼成(熱分解)工程および/または酸抽出の工程を行なうことができる。そしてさらに、分離した金属を、一般的な貴金属の分離・精製工程に供することにより、触媒として用いられた貴金属を回収することができる。
【0032】
ここで、焼成の工程とは、触媒と他の材料との混合物を焼成することによって、金属以外の他の材料を熱分解させ、触媒から触媒以外の他の材料を除去することができる工程であり、触媒を分離する際に広く行なわれる方法である。また、酸抽出の工程とは、触媒と他の材料との混合物を、王水等の貴金属を溶解可能な溶液中に浸漬させて、触媒を溶液中に溶解させることによって回収する工程である。なお、焼成の工程を行なうことなく酸抽出の工程を行なうことも可能であるが、酸抽出の工程に先立って焼成の工程を行なうことにより、酸抽出の対象物の体積を減少させることができ、酸抽出を行なうための装置をコンパクト化できる。
【0033】
以上のように構成された本実施例の燃料電池からの触媒回収方法によれば、燃料電池を分解して得られるMEGA29を、乾式で粉砕して分級しており、ドライ工程によって触媒を高分子電解質から分離して回収することができるため、触媒を回収する工程を簡素化することができる。また、ドライ工程によって高分子電解質を触媒から除去できることにより、除去した電解質に対して溶媒などの他の物質が混在することが無く、高分子電解質の処理工程も簡素化することができる。
【0034】
なお、本実施例では、触媒よりも高分子電解質の方が粘性が高く弾性を有する材料であることを利用して、ステップS120の粉砕工程において触媒を高分子電解質よりも微粒子化することによって、ステップS130の分級工程において粒径の違いに基づく分離を可能にしている。これに対して、ステップS120において粉砕を行なう際の粉砕条件や、用いるボールミルの機種によっては、高分子電解質も、触媒やカーボンと同程度の粒径にまで粉砕可能となる場合がある。このような場合には、ステップS130において、篩いによる分級は困難となるが、材料の密度の違いを利用して、既述した乾式気流分級機を用いた分級により、触媒を電解質から分離することができる。このように、ステップS130の分級工程は、ステップS120の粉砕工程で得られる粒子を、粒径と粒子密度の少なくともいずれか一方に基づいて、触媒含有粒子群と電解質含有粒子群とに分離するものであれば良い。
【0035】
また、本実施例によれば、上記のように乾式で粉砕および分級を行なって触媒と電解質とを分離しているため、触媒を構成する貴金属の分離・精製を行なう際に、焼成の工程を行なう場合であっても、焼成の工程に供されるフッ素樹脂から成る電解質の量を削減することができる。フッ素系樹脂を焼成の工程に供すると、有害なフッ化ガスが発生して、このガスの処理が必要となるが、本実施例のように粉砕・分級の工程によって電解質を予め除去することにより、触媒を構成する金属の分離・精製工程において、電解質の熱分解に伴うガスの発生を抑えることができる。
【0036】
なお、本実施例の触媒回収方法を、カーボン製ではなく金属製のガスセパレータを備える燃料電池に適用することも可能である。金属製のガスセパレータを備えるMEGAを粉砕する場合にも、電解質の粒子が他の粒子に比べて粒子密度が低いことを利用して、電解質を除去するための分級を同様に行なうことができる。ただし、金属製部材は展性および延性に優れているため粉砕され難く、また、これによって触媒を含む電極の粉砕が阻害される可能性がある。これに対してカーボン製部材は粉砕され易く、また、触媒と混合された状態であっても焼成の工程や酸抽出の工程により容易に触媒から除去可能である。そのため、触媒回収の対象とする燃料電池は、カーボン製のガスセパレータを備えることが望ましい。
【0037】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0038】
C1.変形例1:
実施例では、ステップS120における粉砕処理を、ボールミルを用いて行なったが、異なる粉砕装置を用いて行なっても良い。例えば、ロッドミルやジェットミルを用いることができる。衝撃力などの機械的な力や剪断力、あるいは粒子同士の衝突力等を利用して、乾式で粉砕することができればよい。電解質膜を構成する高分子電解質の方が触媒を構成する金属よりも粘性が高いために触媒含有粒子の方が粒径が大きくなること、および/または、高分子電解質の方が金属よりも密度が小さいために触媒含有粒子の方が粒子密度が大きくなること、を利用して粉砕物の分級を行ない、触媒を電解質から分離可能であればよい。
【0039】
C2.変形例2:
また、触媒回収の対象とする燃料電池は、実施例とは異なる形状であっても良い。例えば、ガスセパレータの形状を、単セル内ガス流路となる空間を形成するための凹凸が表面に形成された形状とする代わりに、単セル内ガス流路の壁面を形成する表面が平坦面である形状としても良い。この場合には、燃料電池の電極とガスセパレータとの間に、ガス拡散層23,24に代えて、あるいはガス拡散層23,24に加えて、例えばカーボン製の多孔質体である流路形成部を配置して、この流路形成部の内部に形成される細孔によって、単セル内ガス流路を形成すればよい。なお、この場合には、ステップS100において燃料電池を分解する際に、電解質膜上に形成された電極と隣接する部材であるガス拡散層23,24、あるいはガス拡散層を備えない場合には上記流路形成部を含む膜−電極−ガス流路層接合体を、スタックから取り出せば良い。
【0040】
C3.変形例3:
実施例では、フッ素系の固体高分子電解質膜から成る電解質膜20を備える燃料電池から触媒を回収したが、異なる種類の燃料電池において、本発明を適用しても良い。例えば、炭化水素系の固体高分子電解質膜を備える燃料電池からの触媒回収方法とすることができる。他種の高分子電解質から成る電解質膜を備える燃料電池であっても、膜−電極−ガス流路層接合体を燃料電池から取り出し、乾式で粉砕を行なうと共に、粒径と粒子密度の少なくともいずれか一方に基づいて粉砕物を分級して触媒含有粒子を得ることで、実施例と同様の効果が得られる。特に、触媒として貴金属を用いる場合には、希少な貴金属を簡便な方法により回収可能とすることで、触媒として貴金属を用いる燃料電池の普及を促進することができ、回収の意義が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】単セル10の概略構成を表わす断面模式図である。
【図2】燃料電池からの触媒回収工程を表わす説明図である。
【符号の説明】
【0042】
10…単セル
20…電解質膜
21…カソード
22…アノード
23,24…ガス拡散層
25,26…ガスセパレータ
27…単セル内酸化ガス流路
28…単セル内燃料ガス流路
29…膜−電極−ガス流路層接合体(MEGA)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質から成る膜によって形成される電解質層を備える燃料電池から、電極を構成する触媒を回収する方法であって、
前記燃料電池を分解して得られ、前記電解質層と、前記電解質層の両面上に形成されて前記触媒を備える電極と、前記電極上に配置される導電性多孔質体から成るガス流路層と、から成る膜−電極−ガス流路層接合体を、乾式で粉砕する第1の工程と、
前記第1の工程で粉砕して得られる粒子を、粒径と粒子密度の少なくともいずれか一方に基づいて、前記触媒の大部分が含まれる触媒含有粒子群と、該触媒含有粒子群よりも前記高分子電解質の含有量が多い電解質含有粒子群とに乾式で分離する第2の工程と
を備える触媒回収方法。
【請求項2】
請求項1記載の触媒回収方法であって、
前記高分子電解質は、フッ素系樹脂である
触媒回収方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の触媒回収方法であって、さらに、
前記触媒含有粒子群から、前記触媒を分離・精製する第3の工程を備える
触媒回収方法。
【請求項4】
請求項3記載の触媒回収方法であって、
前記前記第3の工程は、前記触媒含有粒子群を焼成する工程を含む
触媒回収方法。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか記載の触媒回収方法であって、
前記ガス流路層は、炭素材料により形成される
触媒回収方法。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか記載の触媒回収方法であって、
前記触媒は、貴金属を含有する
触媒回収方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−36569(P2008−36569A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216525(P2006−216525)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】