説明

燃料電池の搭載構造

【課題】セルスタックを昇圧するコンバータのワイヤーハーネスを最適配置できるようにする。
【解決手段】燃料電池スタック3を昇圧するコンバータ150を該燃料電池スタック3と一体化して車両の床下に搭載する構造であって、コンバータ150のワイヤーハーネス151を、燃料電池スタック3側とは反対側の車両前側からで、且つ車両幅方向においてはトランスアクスルTAがない側から引き出す構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の搭載構造に関する。さらに詳述すると、本発明は、燃料電池車等における燃料電池の搭載構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車等に燃料電池を搭載するための構造には、セルスタック(セル積層体)と該セルスタックを昇圧するコンバータとが一体化され、セルスタックの端部セルの一端または両端にコンバータの発熱部品が配置されており、セルスタックとコンバータとがバスによって接続されているものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−003288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、セルスタックを昇圧するコンバータのワイヤーハーネスの最適配置に関しては検討されていない。
【0005】
そこで、本発明は、セルスタックを昇圧するコンバータのワイヤーハーネスを最適配置できるようにした燃料電池の搭載構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するべく、本発明者は、車両のトランスアクスル等に着目して種々の検討を行い、課題解決に結び付く新たな知見を得るに至った。このような知見に基づく本発明は、燃料電池スタックを昇圧するコンバータを該燃料電池スタックと一体化して車両の床下に搭載する構造であって、コンバータのワイヤーハーネスを、燃料電池スタック側とは反対側の車両前側からで、且つ車両幅方向においてはトランスアクスルがない側から引き出す構造であることを特徴とする。
【0007】
このような燃料電池の搭載構造においては、当該車両等の衝突時にトランスアクスルが相対的に後退しても、ワイヤーハーネスが破損することを効果的に抑制することができる。
【0008】
また、上記のごとき燃料電池の搭載構造は、トランスアクスルがない側からは高圧ワイヤーハーネスを、トランスアクスルがある側からは低圧ワイヤーハーネスを引き出すとともに、インターロックのワイヤーハーネスはトランスアクスルがない側から、PM−ECUのワイヤーハーネスはトランスアクスルがある側から引き出し、インターロックは高圧ワイヤーハーネスのコネクタに接続して、PM−ECUのワイヤーハーネスは低圧ワイヤーハーネスのグロメット等の防水構造を経由して、燃料電池の昇圧コンバータの外部に引き出す構造であることが好ましい。
【0009】
このような燃料電池の搭載構造によれば、ワイヤーハーネスを効率的に配置することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セルスタックを昇圧するコンバータのワイヤーハーネスを最適配置することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態における燃料電池の搭載例を概略的に示す平面図である。
【図2】トランスアクスルを有する車両への燃料電池の搭載例を概略的に示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるFCコンバータの平面図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるFCコンバータの側面図である。
【図5】トランスアクスルを有する車両におけるFCコンバータの搭載例を示す平面図である。
【図6】トランスアクスルを有する車両におけるFCコンバータ等の搭載例を示す側面図である。
【図7】PM−ECUのワイヤーハーネスの引き出し例、インターロックの配置例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1〜図7に本発明にかかる燃料電池システムの搭載構造の実施形態を示す。以下では、該搭載構造の適用例として、燃料電池1等を含む燃料電池システム100を搭載した燃料電池車両(FCHV;Fuel Cell Hybrid Vehicle)を説明する。
【0014】
燃料電池1は、複数のセル(発電セル)2が積層されてなるセルスタック(セル積層体あるいは燃料電池スタックとも呼ばれるが、本実施形態ではセルスタックと呼ぶ)3を備える例えば高分子電解質形燃料電池である。この燃料電池1には、セルスタック3からの出力端子電圧Vfcを検出するための電圧センサ、および出力電流(FC電流)を検出するための電流センサ(いずれも図示省略)が取り付けられている。セルスタック3のセル積層方向の一端には、酸化ガス、燃料ガス等の配管が接続される部位(本明細書ではユニットと呼び、符号4で示す)が設けられている(図1、図2参照)。
【0015】
セル2は、イオン交換膜からなる電解質膜およびこれを両面から挟んだ一対の電極からなる膜−電極アッセンブリ(MEA;Membrane Electrode Assembly)と、この膜−電極アッセンブリを外側から挟持する一対のセパレータと、で構成されている。セパレータは例えば金属を基材とする導通体であり、各電極に空気等の酸化ガスおよび水素ガス等の燃料ガスを供給するための流体流路を有しており、互いに隣接するセル2に供給される異種流体の混合を遮断する。かかる構成により、セル2の膜−電極アッセンブリ内において電気化学反応が生じて起電力が得られる。図示を省略しているが、セパレータには、酸化ガス、燃料ガス、冷媒のそれぞれをセル積層方向に流すためのマニホールド(酸化ガスマニホールド、燃料ガスマニホールド、冷媒マニホールド)が形成されている。
【0016】
燃料電池1のセルスタック3からの出力を昇圧等するコンバータ(以下、FCコンバータともいう)150は、燃料電池1の出力電流Ifcを制御する役割を担っており、一次側(入力側:燃料電池1側)に入力されたFC出力端子電圧Vfcを、一次側と異なる電圧値に変換(昇圧または降圧)して二次側(出力側:インバータ側)に出力し、また逆に、二次側に入力された電圧を、二次側と異なる電圧に変換して一次側に出力する双方向の電圧変換装置である。このFCコンバータ150により、燃料電池1の電流Ifcが目標出力に応じた電流(すなわち、目標出力電流Ifc)となるように制御される。
【0017】
このFCコンバータ150は、例えば昇圧コンバータであり、三相運転方式、具体的な回路方式としてはU相、V相、W相によって構成された三相並列形コンバータとしての回路構成を備えている。一例として、本実施形態では、非絶縁タイプの昇圧コンバータを三相並列にして1相に流れる電流を減らし、部品小型化、低損失化を図っている。
【0018】
このFCコンバータ150は、セルスタック3と一体化され、燃料電池車両の床下に搭載されている。ここで、本実施形態では、当該FCコンバータ150のワイヤーハーネス(出力線)151を、燃料電池1のユニット4とは反対側となるように配置している。例えば、ユニット4がセルスタック3の右側に配置されているならば、ワイヤーハーネス151がそれとは反対の左側となるようにFCコンバータ150が配置されている(図1参照)。こうした燃料電池1の搭載構造においては、FCコンバータ150のワイヤーハーネス151が、燃料電池1の配管5と競合ないし干渉しないことから、当該燃料電池1の組み付け性の向上を図ることが可能となる。
【0019】
また、トランスアクスルTAを有する車両においては、FCコンバータ150のワイヤーハーネス151を、セルスタック3側とは反対側の車両前側からで、且つ車両幅方向においてはトランスアクスルTAがない側から取り出すように、これら燃料電池1やFCコンバータ150等を配置することが好ましい(図1〜図4参照)。このような燃料電池1の搭載構造とした場合、当該車両の衝突時にトランクアクセルTAが後退してサスペンションメンバーを押圧し、燃料電池1やFCコンバータ150に接近したとしても隙間を確保しやすいことから、ワイヤーハーネス151が破損することを回避ないし抑制することができる。なお、符号Cで示す一点鎖線は、車両中心を示している。なお、符号6は車両のフレーム、7は車両のタイヤ、8はFCコンバータ150のリアクトル、154はIPM(Intelligent Power Module)をそれぞれ示している(図2、図3参照)。
【0020】
また、トランスアクスルTAを有する車両において、FCコンバータ150に低圧のワイヤーハーネス151Lと高圧のワイヤーハーネス151Hとを接続する場合、当該トランスアクスルTAとは反対側の前面に高圧のワイヤーハーネス151Hを配置することが好適である。例えば、車両中心Cの左側にトランスアクスルTAが配置されている場合、当該車両の衝突時におけるサスペンションメンバーの移動量は、トランスアクスルTAの後退の影響により、右側よりも左側の方が大きくなることから(左側におけるサスメン移動量>右側におけるサスメン移動量)、当該左側に高圧ワイヤーハーネス151Hを設置し難いことがある。この点、上述のような搭載構造とすれば、このような問題を解消することができる(図5参照)。
【0021】
さらに、上述の高圧ワイヤーハーネス151Hとは反対側(トランスアクスルTAがある側)に低圧ワイヤーハーネス151Lを配置することも好適である(図5参照)。特に、PM−ECU(電源制御用コンピュータ)10がエンジンコンパートメント(エンコパ)に置かれることがあること、当該燃料電池1がトンネル(例えば車両に設けられたセンタートンネル)内に搭載される構造の場合に低圧ワイヤーハーネス151Lが左右から引き出しにくいこと、を考慮した場合に、本実施形態のごとき構造は好適である。なお、PM−ECU10は、例えばユーザにより操作される車両電源スイッチ等からのパワースイッチ信号に基づいて当該車両の電源供給の切替状態を切り替える。
【0022】
また、低圧ワイヤーハーネスのグロメットを燃料電池1のカバー側に取り付ける構造とすると、当該カバーにサービスホールやカバーが必要となる。こういった点を考慮し、FDC−ECU10をFCコンバータ150の上に配置し、さらに、当該FDC−ECU10にワイヤーハーネス151を接続する構造とすることも好適である(図6参照)。この場合、当該FDC−ECU10のワイヤーハーネス151を、トランスアクスルTAがある側から引き出して取り回す構造とすることもできる。さらには、FDC−ECU10のワイヤーハーネス151を、低圧ワイヤーハーネス151L用のグロメット30を経由して、FCコンバータ150の外部に引き出す構造とすることも好ましい(図6、図7参照)。
【0023】
また、サービスホールカバー用のインターロック20は、サスペンションメンバーとの間に隙間ができるように、燃料電池車両の前方あるいは中央寄りの位置に配置されていることが好適である(図7参照)。また、同様の理由から、該インターロック20は、トランスアクスルTAがない側に配置され、高圧ワイヤーハーネス151Hのコネクタに接続されていることも好適である。
【0024】
また、上述したとおり、車両中心Cの左側にトランスアクスルTAが配置されている場合、当該車両の衝突時におけるサスペンションメンバーの移動量は、トランスアクスルTAの後退の影響により、右側よりも左側の方が大きくなる(左側におけるサスメン移動量>右側におけるサスメン移動量)。この点を考慮し、左側に低圧ワイヤーハーネス151Lを配することとすれば、車両中心Cを挟んで、インターロック20を右側、PM−ECU10を左側に配置することも好適である。
【0025】
以上のような燃料電池の搭載構造によれば、ワイヤーハーネス151(高圧ワイヤーハーネス151H、低圧ワイヤーハーネス151Lを含む)を効率的に配置することが可能となる。
【0026】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、燃料電池スタックを昇圧するコンバータを該燃料電池スタックと一体化して車両の床下に搭載する構造に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0028】
1…燃料電池、2…セル、3…セルスタック(燃料電池スタック)、150…FCコンバータ(コンバータ)、151…ワイヤーハーネス、TA…トランスアクスル、10…PM−ECU、20…インターロック、30…グロメット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックを昇圧するコンバータを該燃料電池スタックと一体化して車両の床下に搭載する構造であって、
前記コンバータのワイヤーハーネスを、前記燃料電池スタック側とは反対側の車両前側からで、且つ車両幅方向においてはトランスアクスルがない側から引き出す構造であることを特徴とする、燃料電池の搭載構造。
【請求項2】
前記トランスアクスルがない側からは高圧ワイヤーハーネスを、前記トランスアクスルがある側からは低圧ワイヤーハーネスを引き出すとともに、インターロックのワイヤーハーネスは前記トランスアクスルがない側から、PM−ECUのワイヤーハーネスは前記トランスアクスルがある側から引き出し、前記インターロックは前記高圧ワイヤーハーネスのコネクタに接続して、前記PM−ECUのワイヤーハーネスは前記低圧ワイヤーハーネスのグロメットを経由して、前記燃料電池の昇圧コンバータの外部に引き出す構造であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池の搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107448(P2013−107448A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252704(P2011−252704)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】