説明

燃料電池システム及び燃料電池システム用の弁セット

【課題】空気管路にバタフライ弁と逆止弁を用いることにより、燃料電池システムを小型化する。
【解決手段】燃料電池に接続される空気出口管14に設けられ、回転軸54の周りに回転する第1の弁体52を有するバタフライ弁24と、バタフライ弁24の下流側に設けられ、板状の第2の弁体61を有する逆止弁27と、を含み、逆止弁27が閉状態でバタフライ弁24の第1の弁体52を回転させるとバタフライ弁24の第1の弁体52の先端60が逆止弁27の第2の弁体61に当たる様に配置されている弁セット50と、バタフライ弁24の開度を変更する制御部と、を備え、制御部は、燃料電池の始動の際に、バタフライ弁24の第1の弁体52を回転させ、閉弁状態の逆止弁27の第2の弁体61に当接させて逆止弁27を開弁状態にする逆止弁開弁手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムの始動時、停止時、停止中の制御及び、燃料電池システムの空気管路に設けられる弁セットの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は燃料と酸化剤との電気化学反応によって発電するもので、イオン交換する電解質膜の両側にアノードとカソードとが対向して配置された膜電極アセンブリ(MEA)と、アノードに燃料を供給する燃料供給流路が形成された燃料用セパレータと、カソードに酸化剤を供給する酸化剤供給流路が形成された酸化剤用セパレータと、を備えている。燃料と酸化剤には色々なガスが用いられるが、例えば、燃料には水素、酸化剤としては酸素を含む空気を用い、電気化学反応によって発電がされると共にカソードに水が生成される形式のものが多く用いられている。
【0003】
このような燃料電池において、運転が停止した際には、カソードの酸化剤供給流路中に酸化剤ガスである空気が残留しており、アノードの燃料供給流路中には燃料ガスである水素が残留した状態となっている。この状態で外部から空気が燃料電池のカソードに流入すると、発電反応とは違う化学反応によって水素と酸素が結合して水が生成される。この反応が発生すると、膜電極アセンブリ(MEA)の炭素が奪われることにより、電解質膜劣化してしまう場合があった。
【0004】
このため、カソードへの空気流入を遮断する空気遮断弁を設け、燃料電池システムの停止時に空気遮断弁を閉めた状態でアノードへ水素を供給し、燃料電池本体の発電によってカソードに残留する酸素を消費させる運転を行って電解質膜の劣化を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005―158555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、燃料電池の空気出口側には、カソードの空気圧力を所定の圧力に調整する圧力調節弁が設けられているが、この圧力調節弁は、空気の流れを遮断する機能がない場合がほとんどで、例えば、特許文献1で提案されているように、燃料電池への空気の流入を遮断する場合には、圧力調節弁と共に遮断弁を設置する必要があった。また、遮断弁は弁体が凍結した際でも確実に動作させられるように、駆動力の大きな電磁式または空気作動式のアクチュエータを持つポペット弁が用いられることが多い。
【0007】
しかし、大きなアクチュエータを備える弁は弁自体の他に、アクチュエータのために大きなスペースが必要となることから、燃料電池システムが大型化してしまうことがあった。他方で、自動車などに搭載する燃料電池システムは、小型、コンパクトであることが要求されていた。
【0008】
そこで、本発明は、燃料電池システムを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の弁セットは、燃料電池に接続される空気管路に設けられ、空気の流れ及び圧力を調整する弁セットであって、流れ方向と交差する回転軸の周りに回転する第1の弁体を有するバタフライ弁と、バタフライ弁の下流側に設けられ、その上流と下流との圧力差によって撓む板状の第2の弁体を有する逆止弁と、を備え、各弁は、逆止弁が閉状態でバタフライ弁の第1の弁体を回転させると、その先端が逆止弁の第2の弁体に接する様に配置されていること、を特徴とする。
【0010】
本発明の弁セットにおいて、逆止弁が閉状態の場合、逆止弁の第2の弁体の上流側の面とバタフライ弁の第1の弁体の回転中心との間の第2の弁体の上流側の面に垂直な方向の距離は、第1の弁体の先端の回転半径よりも小さいこと、としても好適であるし、逆止弁が開弁状態でバタフライ弁の第1の弁体を回転させると、その先端が逆止弁の第2の弁体の上流側面を下流方向に向かって押し出して、逆止弁を開弁させること、としても好適である。
【0011】
本発明の弁セットにおいて、逆止弁の第2の弁体は、空気管路の流れ方向と交差し下流側に向いているフランジ面に一端が片持ち式に固定され、他端は弾性変形によってフランジ面に対して接離自在となるよう取り付けられ、逆止弁は第2の弁体の他端がフランジ面から下流側に向って移動することにより開弁すること、としても好適であるし、逆止弁の開度は空気流量が増加するに従って増加し、空気流量が所定の流量以上の場合、逆止弁の第2の弁体の上流側の面は第1の弁体の先端の回転円の下流側に位置していること、としても好適であるし、バタフライ弁の第1の弁体が全閉位置から、第1の弁体の先端が逆止弁の第2の弁体に当接する当接位置までの第1の弁体の回転角度は、所定の角度よりも大きいこと、としても好適である。
【0012】
本発明の燃料電池システムは、燃料ガスと空気との電気化学反応で発電する燃料電池と、燃料電池に接続される空気管路に設けられ、流れ方向と交差する回転軸の周りに回転する第1の弁体を有するバタフライ弁と、バタフライ弁の下流側に設けられ、その上流と下流との圧力差によって撓む板状の第2の弁体を有する逆止弁と、を含み、逆止弁が閉状態でバタフライ弁の第1の弁体を回転させると、その先端が逆止弁の第2の弁体に当たる様に配置されている弁セットと、バタフライ弁の開度を変更する制御部と、を備え、制御部は、燃料電池の始動の際に、バタフライ弁の第1の弁体を回転させ、閉弁状態の逆止弁の第2の弁体に当接させて逆止弁を開弁状態にする逆止弁開弁手段を有すること、を特徴とする。
【0013】
本発明の燃料電池システムにおいて、燃料電池に空気を供給する空気圧縮機と、空気管路の圧力を検出する圧力検出手段と、を含み、制御部は、空気圧縮機を始動して空気管路の圧力を第1の圧力まで上昇させた後、逆止弁開弁手段によって逆止弁を開弁すること、としても好適であるし、制御部は、バタフライ弁の第1の弁体を回転させて閉弁状態の逆止弁の第2の弁体に当接させた後の空気管路の圧力が第2の圧力より低くなった場合には逆止弁が開弁したと判断し、バタフライ弁の第1の弁体を回転させて閉弁状態の逆止弁の第2の弁体に当接させた後の空気管路の圧力が第2の圧力より低くならなかった場合には逆止弁が開弁していないと判断する逆止弁開弁判断手段を含み、バタフライ弁の第1の弁体を回転させて閉弁状態の逆止弁の第2の弁体に当接させた後に逆止弁が開弁していないと判断した場合には、再度バタフライ弁の第1の弁体を回転させて閉弁状態の逆止弁の第2の弁体に当接させるリトライ手段を有すること、としても好適である。
【0014】
本発明の燃料電池システムにおいて、燃料電池を格納する格納ケースを含み、弁セットは、格納ケースの中に下流側が重力方向下側となるように配置されていること、としても好適であるし、制御部は、燃料電池の停止中にバタフライ弁の第1の弁体を回転させて逆止弁の第2の弁体に接離させ、逆止弁の開閉を行うこと、としても好適であるし、空気圧力を検出する圧力センサまたは燃料電池の温度を検出する温度センサを含み、制御部は、燃料電池の停止中に空気圧力または燃料電池の温度がそれぞれ所定の閾値よりも低くなった場合に、バタフライ弁の第1の弁体を回転させて逆止弁の第2の弁体に接離させ、逆止弁の開閉を行うこと、としても好適である。
【0015】
本発明の燃料電池システムにおいて、制御部は、燃料電池の停止の際に、第1の弁体が逆止弁の第2の弁体に接しない中間開度にバタフライ弁を開弁した状態で燃料電池を停止する停止手段を有すること、としても好適であるし、逆止弁開弁手段は、中間開度で停止しているバタフライ弁の第1の弁体を全開方向に回転させること、としても好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、燃料電池システムを小型化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態における燃料電池システムの構成を示す系統図である。
【図2】本発明の実施形態における弁セットの断面を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態における弁セットを構成するバタフライ弁の構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における弁セットを構成する逆止弁の構造を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態における燃料電池システムの始動工程を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態における弁セットを構成するバタフライ弁の弁体の回転角度と弁体の回転速度との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の他の実施形態における弁セットの断面を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態における燃料電池システムの停止中の弁の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態における燃料電池システムの空気圧力の変化を示すグラフである。
【図10】本発明の実施形態における弁セットの動作を示す説明図である。
【図11】本発明の実施形態における燃料電池システムの停止動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態の燃料電池システム100は、燃料に水素、酸化剤ガスに空気を用いる燃料電池10と、燃料電池10のカソード側に空気を供給する空気系統110と、アノード側に水素を供給する水素系統120と、燃料電池10と、空気系統110と水素系統120の運転を制御する制御部40とを備えている。
【0019】
空気系統110は、燃料電池10に空気を供給する空気圧縮機11と、空気圧縮機11の吐出空気を燃料電池10に供給する空気供給管12と、空気供給管12に設けられた入口空気遮断弁21と、入口空気遮断弁21と燃料電池10の空気入口とを接続する空気入口管13と、燃料電池10の空気出口に接続された空気出口管14と、空気出口管14に接続されたバタフライ弁24と、バタフライ弁24の下流側に直結された逆止弁27と、逆止弁27の下流側に接続される空気排出管15と、空気排出管15に接続された希釈器16と、一端が希釈器16に接続され、他端が大気に開放されている大気放出管17と、を備えている。バタフライ弁24と逆止弁27とは弁セット50を構成し、バタフライ弁24はモータ25によって内部の弁体が回転駆動され、バタフライ弁24には弁体の回転角度する角度センサ26が取り付けられている。また、空気入口管13には空気圧力を検出する圧力センサ23が取り付けられている。
【0020】
入口空気遮断弁21は空気供給管12から分岐した作動空気管18から作動空気が供給されるアクチュエータ22によって開閉動作を行うよう構成されている。作動空気は、作動空気管18に設けられたパイロット弁19,20を開閉することによってアクチュエータ22に供給される。
【0021】
水素系統120は、図示しない水素タンクから燃料電池10に水素を供給する水素供給管30と、燃料電池10の水素出口管31と、水素出口管31と水素供給管30とを接続する水素循環管32と、水素循環管32に取り付けられた水素ポンプ33と、水素出口管31から分岐して希釈器16に接続される水素排出管34と、水素排出管34に取り付けられた水素排出弁35とを備えている。
【0022】
燃料電池10と、空気入口管13と、空気出口管14と、バタフライ弁24と、逆止弁27と、空気排出管15と、希釈器16と、水素供給管30と、水素出口管31と、水素循環管32と、水素ポンプ33と、水素排出弁35と、水素排出管34とは、保温性のケーシング36の中に格納されており、燃料電池10の熱によってバタフライ弁24、逆止弁27が凍結しにくいよう構成されている。このため、燃料電池10を車両の床下に搭載した場合でも別途防水ケーシングを設ける必要がなく、燃料電池システム100を小型化できる。また、燃料電池10には、その温度を検出する温度センサ28が取り付けられている。
【0023】
制御部40は、内部の信号処理を行うCPUと、制御プログラムや制御データを格納するメモリとを備えるコンピュータである。燃料電池10、空気圧縮機11、パイロット弁19,20、バタフライ弁24を駆動するモータ25、水素排出弁35は、それぞれ制御部40に接続され、制御部40の指令によって駆動されるよう構成されている。また、圧力センサ23、温度センサ28は、角度センサ26は制御部40に接続され、それぞれのセンサ23,28,26で検出したデータは制御部40に入力されるよう構成されている。
【0024】
図2に示すように、燃料電池10から重力方向下側に向かって略垂直に延びる空気出口管14は、バタフライ弁24のケーシングを兼用する構造となっており、その内面14aには第1の弁体52の先端60、60’と接して空気をシールするシール部14bが設けられている。シール部14bは第1の弁体52の外周に沿った形状に設けられており、図3に示すように第1の弁体52が円板状である場合には、シール部14bも円環状となっている。図3に示すように、バタフライ弁24は、流れ方向である空気出口管14の中心線14cと直交する方向の回転軸54の周りに回転する第1の弁体52と、回転軸54に同軸に配置され、第1の弁体52とモータ25とを接続し、モータ25の回転力を第1の弁体52に伝達するシャフト53と、を備えている。
【0025】
図2に示すように、空気出口管14の下流側には空気出口管14の外周方向に突出するフランジ51が設けられている。フランジ51の合わせ面51aは開口56を持つ平面で、逆止弁27の弁座を兼用しており、その表面には板状の第2の弁体61の根元66が固定ボルト62によって固定されている。フランジ51の合わせ面51aは第2の弁体61の根元66側が高く、先端67側が低くなるような傾斜がつけられ、燃料電池10の停止中に燃料電池10からの水滴が落下してきた場合、水滴が逆止弁27の弁座となっている合わせ面51aの全面に溜まらず、重力方向下側となる先端67側に溜まるよう構成されている。このため、滞留した水が凍結した場合であっても、合わせ面51aと第2の弁体61との固着面積が少なくなる。また、後で説明するように、バタフライ弁24の第1の弁体52を回転させて逆止弁27の第2の弁体61に衝突させて逆止弁27を開弁する際に、第1の弁体52の衝突する側が低くなっているので、水滴が凍結した場合でも、第1の弁体52が衝突して大きな開弁力を第2の弁体61に及ぼすことが出来るよう構成されている。また、バタフライ弁24の下流側が重力方向下側となるように配置されているので、燃料電池10の停止の際に第1の弁体52と空気出口管14のシール部14b或いは内面14aとの間に水が滞留して、第1の弁体52と空気出口管14とが凍結固着することを抑制することが出来るよう構成されている。
【0026】
図2に示すように、第2の弁体61の先端67側にある空気出口管14のシール部14bは、第1の弁体52の先端60の移動線である円59に沿ってフランジ51の合わせ面51aに向かって角度θ2だけ延びている。これによって、本実施形態は、弁空気流量が少ない場合のバタフライ弁24の入口と出口との間の圧力差を大きくすることが出来、低流量の場合で燃料電池10の空気流路の圧力を高く保持して運転することが出来る。また、第2の弁体61の根元66側の空気出口管14の内面14aにはフランジ51の合わせ面51aに向かう半径の大きな曲面57が設けられている。
【0027】
図4に示すように、逆止弁27の第2の弁体61は、燃料電池10側の空気圧力が希釈器16側の空気圧力よりも高くなると圧力差によって下流側である希釈器16側に符号61bで示すように撓み、合わせ面51aに固定されていない先端67がフランジ51の合わせ面51aから離れることによって第2の弁体61が開口56を開放し、開弁する。また、第2の弁体61は、合わせ面51a側に湾曲するような初期変位を与えたバネ材を固定ボルト62で合わせ面51aに固定しているので、燃料電池10側の空気圧力と希釈器16側の空気圧力との間に圧力差がない場合には、その付勢力によって合わせ面51aに密着して符号61aで示すように合わせ面51aの開口56を塞ぎ、空気をシールする。このように、逆止弁27は下流に向かって開弁する構造となっていることから、従来技術のポペット弁のように誤閉弁によって燃料電池システム100が運転できなくなることを抑制することが出来るよう構成されている。
【0028】
図2に示すように、空気排出管15は、上流側に外周に向って突出するフランジ63を備えており、フランジ63はボルト58によって空気出口管14のフランジ51に取り付けられている。フランジ63と空気排出管15との間には、第2の弁体61が下流側に撓むことが出来るスペースを取るためのテーパ状の接続部65が設けられている。そして、空気排出管15は、その中心線15cが空気出口管14の中心線14cから第2の弁体61の先端67側に向かう方向に傾斜するように配置され、第2の弁体61が開弁した際に空気がスムースに空気出口管14から空気排出管15に向って流れることが出来るよう構成されている。
【0029】
図2に示すように、第1の弁体52は回転軸54の周りに回転し、その先端60,60’の回転半径はRとなっている。このため、第1の弁体52の先端60、60’は、回転軸54を中心とする円59に沿って移動する。一方、フランジ51の合わせ面51aに垂直方向の回転軸54と合わせ面51aとの距離Dは、回転半径Rより小さくなっている。このため、第1の弁体52が回転軸54の回りに回転するとその先端60は、合わせ面51aよりも下流側に突出することとなる。一方、燃料電池10側の空気圧力と希釈器16側の空気圧力との間に圧力差がない場合には、逆止弁27は閉弁状態となり、第2の弁体61の上流側の面は合わせ面51aに密着する。このため、逆止弁27が閉弁状態の場合には、第2の弁体61の上流側の面と垂直方向の回転軸54と第2の弁体61の上流側の面との距離は距離Dと等しく、回転半径Rより小さくなっている。このため、逆止弁27が閉弁状態で、バタフライ弁24の第1の弁体52が符号52aで示す全閉位置から角度θ1だけ反時計周りに符号52bで示す位置まで回転すると、第1の弁体52の先端60は第2の弁体61の上流側の面に接することとなる。そして、第1の弁体52の中心線55が符号55cで示す第2の弁体61の上流側の面と垂直となる位置まで第1の弁体52が回転すると、第1の弁体52は符号52cで示す位置となり、回転半径Rと距離Dとの距離差分だけ先端60で第2の弁体61を下流側に押し出す。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の燃料電池システム100に用いられる弁セット50は、バタフライ弁24と逆止弁27とが一体で、バタフライ弁24の第1の弁体52を逆止弁27の第2の弁体61の上流側の面に当接させてバタフライ弁24の開弁力で第2の弁体61を下流方向に押し出すことが出来るよう構成されていることから、容易に逆止弁27を開弁させることが出来る。また、バタフライ弁24はモータ25によって駆動されることから、氷点下で凍結固着を解除するような大きな開弁力が必要な場合に、モータ25のコイルの抵抗が少なくなりモータ25のトルクが増加し、大きな開弁力が得られるよう構成されている。さらに、逆止弁27の開閉にアクチュエータが不要となることから、開弁応答が早い上、燃料電池システム100を小型化することができるよう構成されている。
【0031】
以上のように構成された燃料電池システム100の始動の際の動作について説明する。燃料電池システム100の停止中は、入口空気遮断弁21と、バタフライ弁24とは全閉で、空気圧縮機11と水素ポンプ33とは停止しているものとして以下説明する。図2に示すように、バタフライ弁24が全閉の場合、第1の弁体52は、略垂直に下に向かって延びる空気出口管14の中心線14cと略垂直な水平方向に向いた符号52aで示す位置にある。この位置での第1の弁体52の中心線は符号55aで示されており、第1の弁体52と同様、空気出口管14の中心線14cと略垂直な水平方向に向いている。
【0032】
燃料電池システム100の始動スイッチがオンとなると、図5のステップS101に示すように、制御部40は、空気圧縮機11を始動する。すると、空気供給管12と作動空気管18の空気圧力が上昇してくるので、制御部40は、図5のステップS102に示すように、パイロット弁19を開として作動空気をアクチュエータ22に流入させ、入口空気遮断弁21を開とする。入口空気遮断弁21が開となると空気入口管13から燃料電池10のカソード側の空気流路に空気が流入し、空気出口管14まで燃料電池10の空気流路が加圧される。この際、バタフライ弁24は、まだ全閉なのでバタフライ弁24の下流にある逆止弁27の第2の弁体61の上流側の面は加圧されていない。そして、図5のステップS103に示すように、制御部40は空気入口管13に設けられた圧力センサ23によって空気圧力Pを検出し、その値と第1の圧力P1と比較する。第1の圧力P1は、燃料電池10の通常運転圧力としても良いし、通常運転圧力より少し高い圧力としてもよい。ただし、燃料電池10の空気流路の最大許容圧力よりも低い圧力である。制御部40は、空気圧力Pが第1の圧力P1まで上昇するまでは燃料電池10の空気流路が加圧されていないと判断し、図5のステップS103に示すように空気圧力が第1の圧力P1に上昇するまで待機する。そして、制御部40は、空気圧力Pが第1の圧力P1よりも高くなったら、燃料電池10の空気流路が加圧されたと判断し、図5のステップS104に示すように、バタフライ弁24を開弁する指令を出力する。
【0033】
この指令によって、バタフライ弁24を駆動するモータ25が回転を開始し、第1の弁体52が図2に示す反時計方向に向かって回転を開始する。回転を開始すると、第1の弁体52の第2の弁体61の根元66側、図2の上では第1の弁体52の右側の先端60’が、空気出口管14の内面14aと離れ始め、空気が第1の弁体52の下流側に流入し始める。この際、第1の弁体52の第2の弁体61の先端67側、図2の上では第1の弁体52の左側の先端60は、空気出口管14の内面のシール部14bと接触しているため、先端60側からは空気が第1の弁体52の下流側には流入してこない。そして、第1の弁体52が図2に示す角度θ2だけ回転すると、第1の弁体52の左側の先端60は、空気出口管14の内面のシール部14bから離れるため、先端60側から空気が第1の弁体52の下流側に流入し始める。
【0034】
空気が第1の弁体52の下流側に流入し始めると逆止弁27の第2の弁体61の上流側(燃料電池10側)の面には、次第に空気圧力が掛かり始める。一方、第2の弁体61の下流側(希釈器16側)は大気に開放されていることから、逆止弁27の第2の弁体61の上流側(燃料電池10側)の空気圧力と下流側(希釈器16側)の空気圧力との圧力差は次第に大きくなってくる。そして、この圧力差によって第2の弁体61を下流方向に撓ませる力が第2の弁体61をフランジ51の合わせ面51aに密着させようとする付勢力よりも大きくなると、第2の弁体61は、弁座である合わせ面51aの表面から離れ、下流側に向って撓み始める。
【0035】
第2の弁体61が下流側に向って撓んでいく速度が第1の弁体52の回転速度よりも速い場合には、第1の弁体52が角度θ2から角度θ1まで回転し、第1の弁体52の中心線55を符号55bで示し、第1の弁体52を符号52bで示す位置まで移動する間に第2の弁体61は符号61bで示す位置まで撓み、その上流側の面は第1の弁体52の先端60の回転円である円59の下流側まで移動する。このため、第1の弁体52と第2の弁体61は接触しない。
【0036】
一方、第2の弁体61が下流側に向って撓んでいく速度が第1の弁体52の回転速度よりも遅い場合には、第1の弁体52が角度θ1まで回転し、第1の弁体52の中心線55を符号55bで示し、第1の弁体52を符号52bで示す位置まで移動すると第1の弁体52は第2の弁体61の上流側の面に接触する。そして、第1の弁体52は第2の弁体61を下流側に開弁させながら回転していく。そして、第1の弁体52が所定の角度まで回転して回転が停止すると、第2の弁体61の上流側の面は、第1の弁体52から離れてさらに下流側に撓んで行く。そして、第2の弁体61は、符号61bで示す位置まで撓み、その上流側の面は、第1の弁体52の先端60の回転円である円59の下流側まで移動し、第1の弁体52と第2の弁体61は接触しなくなる。このため、通常運転中にはバタフライ弁24の第1の弁体52と逆止弁27の第2の弁体61とは接触せず、調圧精度の悪化を抑制することが出来る。
【0037】
この様に、バタフライ弁24、逆止弁27がそれぞれ開弁すると、燃料電池10の空気流路とそれに接続されている空気入口管13、空気出口管14の空気圧力Pが低下してくる。制御部40は、図5のステップS105に示すように、圧力センサ23によって検出した空気圧力Pが第2の圧力P2よりも低くなるかどうかを判断する。第2の圧力P2は、第1の圧力P1よりも低い圧力で、第1の圧力P1と第2の圧力P2との差圧によって、バタフライ弁24、逆止弁27が開となったことを判断することが出来る程度の圧力であればよく、例えば、第1の圧力P1の90%程度の圧力であってもよい。そして、図5のステップS106に示すように、圧力センサ23によって検出した空気圧力Pが第2の圧力P2よりも低い場合には、制御部40は、逆止弁27が開弁したと判断し、図5のステップS107に示すように、燃料電池10の運転を開始する。
【0038】
しかし、燃料電池10が停止すると燃料電池10の空気流路の中には空気と共に発電によって生成された水分が滞留している。この水分は次第に重力下側にある空気出口管14に落下し、重力方向下側に配置されている逆止弁27の第2の弁体61の先端67側の上流側の面と弁座である合わせ面51aとの間に滞留する。この状態で燃料電池10の温度が低下すると、滞留した水分は凍結し、第2の弁体61と合わせ面51aとが固着してしまう。第2の弁体61の凍結固着が発生すると、空気圧縮機11を始動し、バタフライ弁24を開として、第2の弁体61の上流側の面に第1圧力P1が掛かるような状態となっても、固着力の方が空気の差圧による開弁方向の力よりも大きいため、逆止弁27は開弁せず、第2の弁体61は合わせ面51aに固着した符号61aで示す閉弁状態のままとなる。
【0039】
この様に、第2の弁体61が合わせ面51aに固着した状態で、図5のステップS104のようにバタフライ弁24を開とする指令が出力されると、バタフライ弁24のモータ25が始動し、第1の弁体52が図2の矢印の方向に向かって反時計周りの方向に回転を開始する。第1の弁体52が先に符号52aで示す初期位置から角度θ2だけ回転して、第1の弁体52の下流側、すなわち、第2の弁体61の上流側、に空気が流入して、その圧力が第1の圧力P1となっても、先に説明したように、第2の弁体61は合わせ面51aに固着したままで、逆止弁27は閉の状態となっている。
【0040】
図6に示すように、モータ25によって回転駆動されるバタフライ弁24の第1の弁体52の回転速度は、回転角度が大きくなると速くなっていく。そして、弁体の回転角度が図6に示すようにある角度θ3以上になると速度V1の高速回転状態となる。この角度θ3はバタフライ弁24の駆動用のモータ25の出力或いは動力特性によるが、逆止弁27の第2の弁体61が合わせ面51aに密着した閉状態で、第1の弁体52が符号52aで示す全閉位置から、第1の弁体52の先端60が第2の弁体61の上流側の面に接触するまでの回転角度θ1よりも小さい角度となるようにモータ25の容量が決定されている。この様に構成することで、第1の弁体52の回転速度が速度V1の高速状態となってから第1の弁体52が第2の弁体61の上流側の面に衝突するようにすることが出来る。
【0041】
第1の弁体52が高速状態で第2の弁体61の上流側の面に衝突すると、その衝撃力で逆止弁27の第2の弁体61と合わせ面51aとの間で凍結している氷から弁体が離脱する。そして、第2の弁体61は第1の弁体52の先端60によって下流方向に向かって押し出される。第2の弁体61の上流側の面と下流側の面との圧力差による開弁力と、第1の弁体52の先端60による開弁力とによって第2の弁体61は下流方向に押し出され、開弁する。開弁すると、空気が逆止弁27を通って希釈器16に向って流出し、空気入口管13、燃料電池10の空気流路、空気出口管14の圧力は低下する。そして、図5のステップS105に示すように、制御部40は、圧力センサ23によって取得した空気圧力が第2の圧力P2よりも低い場合には、図5のステップS106に示すように、逆止弁27は開弁したものと判断し、図5のステップS107に示すように、燃料電池10の運転を開始する。
【0042】
一方、図5のステップS104に示すように、バタフライ弁24の第1の弁体52を回転させて逆止弁27の第2の弁体61の上流側の面に衝突させても、圧力センサ23によって検出した空気圧力が第2の圧力P2よりも低くならない場合には、制御部40は、図5のステップS108に示すように、逆止弁27の第2の弁体61は、合わせ面51aに固着したままで、凍結固着は解除されていないと判断する。そして、制御部40は、図5のステップS109に示すように、角度センサ26によってバタフライ弁24の第1の弁体52の全閉位置からの回転角度を取得し、第1の弁体52を符号52aで示す初期位置である全閉位置まで時計回りの方向に回転させる。そして、図5のステップS104に示すように、再度、バタフライ弁24の第1の弁体52を回転させて第2の弁体61の上流側の面に衝突させるリトライ動作を行う。衝突させた後、制御部40は、図5のステップS105に示すように、圧力センサ23によって空気圧力Pを検出し、第2の圧力P2と比較する。そして、空気圧力Pが第2の圧力P2よりも低くなっていたら、逆止弁27の凍結固着は解除され、逆止弁27は開弁したと判断して、図5のステップS107に示すように、燃料電池10の運転を開始する。
【0043】
また、空気圧力Pが第2の圧力P2よりも低くならない場合には、図5のステップS108に示すように、逆止弁27の凍結固着は解除されていないと判断し、制御部40は再度、バタフライ弁24の第1の弁体52を初期位置に戻してバタフライ弁24の開動作を行う。制御部40は、圧力センサ23によって検出した空気圧力Pが第2の圧力P2よりも低くなり、逆止弁27の凍結が解除されたと判断するまで、バタフライ弁24の第2の弁体61を回転させるリトライ動作を繰り返す。
【0044】
上記の実施形態では、リトライ動作の際に一端バタフライ弁24の第1の弁体52を時計回りに回転させて初期位置である全閉位置に移動させてから再度、反時計周りに回転させることとして説明したが、第1の弁体52が第2の弁体61に衝突した反動で、時計周りに初期位置を越えて図2の上で時計周りに回転して停止した場合には、全閉位置まで移動させずに停止した位置から反時計周りに第1の弁体52を回転させるようにしてもよい。
【0045】
この様に、本実施形態の燃料電池システム100は、燃料電池10の停止中に逆止弁27の第2の弁体61が凍結固着した場合であっても、バタフライ弁24の第1の弁体52を高速回転状態で衝突させて第2の弁体61の凍結固着を解除することが出来るので、凍結解除のために駆動力の大きなアクチュエータを備える必要がなく、燃料電池システム100を小型化、コンパクトにすることが出来る。
【0046】
図7を参照しながら、本発明の他の実施形態の弁セット50について説明する。図2を参照して説明したのと同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。図7に示す弁セット50は、フランジ51の合わせ面51aの傾斜方向が図2に示した実施形態と逆になっており、逆止弁27の第2の弁体61の先端67側が高く、第2の弁体61の根元66側が低くなるよう構成されている。この様に構成されていることから、燃料電池10の停止中の燃料電池10から落下した水滴は、第2の弁体61の上流側の面とフランジ51の合わせ面51aの第2の弁体61の根元66側によって仕切られる領域に滞留水として滞留する。このため、滞留水が凍結した場合、逆止弁27の第2の弁体61の先端67側は凍結しない。そして、バタフライ弁24の第1の弁体52によって第2の弁体61を下流側に押し出す場合に、第2の弁体61の固定ボルト62と第1の弁体52と第2の弁体61の上流側の面の当接点との間の長さを腕の長さとするモーメント力によって、第2の弁体61の根元66側に凍結した氷から弁体を離脱させることが出来るので、図2を参照して説明した実施形態よりもより容易に第2の弁体61の凍結を解除することが出来る。
【0047】
本実施形態では、第2の弁体61の先端67側の合わせ面51aが第1の弁体52の回転軸54に近くなっているので、符号52aで示される全閉位置から第1の弁体52の先端60が第2の弁体61の上流側の面に当接するまでの回転角度θ1が図2に示した実施形態よりも小さくなっている。このため、本実施形態では、バタフライ弁24の第1の弁体52の回転速度を素早く上昇させるように大きな駆動用のモータ25を備えている。また、大きなモータ25を備えず、バタフライ弁24を開弁する際には、第1の弁体52を一端、図7上で時計周り方向に回転させてから第2の弁体61に向って反時計周りに回転させるようにして、第2の弁体61に衝突するまでの第1の弁体52の反時計周り方向への回転角度を大きくするようにして動作させるようにしてもよい。
【0048】
本実施形態の弁セット50を組み入れた燃料電池システム100は先に図2に示した弁セット50を組み入れた燃料電池システム100と同様の効果を奏する。
【0049】
以上説明した実施形態では、空気出口管14は燃料電池10から略垂直に重力方向下向きに配置されているものとして説明したが、空気出口管14の配置は水平に配置してもよく、また、バタフライ弁24の第1の弁体52の回転軸54は、図2、図7に示したように水平方向のみではなく、垂直方向を含む他の方向として構成されていてもよい。
【0050】
次に、図8から図10を参照して、図7に示した弁セット50が組み込まれた燃料電池システムの燃料電池10の停止中の動作について説明する。
【0051】
図8のステップS201に示すように、制御部40は、燃料電池10の停止指令を出力する。この指令によって、図1に示す空気圧縮機11と、水素ポンプ33とが停止し、入口空気遮断弁21、バタフライ弁24が閉となる。そして、燃料電池10の空気流路への空気の流入が停止して、図10に示す逆止弁27の第2の弁体61の上流側と下流側との圧力差がなくなるので、第2の弁体61は符号61aで示すようにフランジ51の合わせ面51aに密着し、外気が希釈器16から燃料電池10の方向に流れこまないようになる。
【0052】
燃料電池10が停止して、空気入口、出口の弁が閉となって、燃料電池10の空気流路、空気入口管13、空気出口管14とが外気と遮断された状態で、燃料電池10の温度が低下してくると、燃料電池10の空気流路や空気入口管13、空気出口管14に残留している湿分は、凝縮して水滴となり、燃料電池10の重力方向下側に配置されている弁セット50に落下してくる。一方、湿分が凝縮することによって、燃料電池10の空気流路、空気入口管13、空気出口管14の圧力は図9に示すように低下を初め、大気圧よりも低い真空状態となってくる。真空状態となると、図10に示す逆止弁27の第2の弁体61は、希釈器16の側から燃料電池10の側に向かう力を受け、この力によって第2の弁体61は弁座であるフランジ51の合わせ面51aに押し付けられる。そして、図10に示すように、燃料電池10から落下してきた水滴は重力方向下側にある第2の弁体61の根元66側の第2の弁体61と空気出口管14の内面14aにある曲面57によって区切られる三角形状の領域に滞留水70として滞留してくる。
【0053】
燃料電池10の温度がさらに低下すると、燃料電池10の空気流路と空気入口管13と空気出口管14の圧力は、閾値P3よりも低くなってくる。図8のステップS202に示すように、制御部40は、圧力センサ23によって空気圧力Pを取得し、その空気圧力Pを閾値P3と比較する。そして、空気圧力Pが閾値P3よりも低くなったら、図8のステップS203に示すようにバタフライ弁24を開弁する指令を出力する。
【0054】
この指令によって、モータ25を始動して、図10に示すように符号52aで示す全閉位置で停止していたバタフライ弁24の第1の弁体52を反時計周りに回転させる。第1の弁体52が図10に符号52bで示すように角度θ1だけ回転すると、第1の弁体52の先端60は符号61bの位置にある第2の弁体61の上流側の面に当たる。そして、さらに第1の弁体52が回転すると、第1の弁体52は合わせ面51aに密着している第2の弁体61の上流側の面を下流に向かって押し出す。すると、第2の弁体61と合わせ面51aとの間に隙間が開き、空気が希釈器16側から真空状態の燃料電池10側に入り込んでくる。すると、図9に示すように、圧力センサ23によって検出される空気圧力Pは閾値P3から大気圧力まで上昇する。
【0055】
制御部40は、図8のステップS204に示すように、圧力センサ23によって取得した空気圧力Pが閾値P3から上昇したら、図8のステップS205に示すように、逆止弁27が開弁したものと判断する。空気出口管14の空気圧力Pが大気圧になると、逆止弁27の第2の弁体61の上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差がなくなり、第2の弁体61を合わせ面51aに押し付けている力が低下するので、バタフライ弁24の第1の弁体52は逆止弁27の第2の弁体61を下流側に押し開きやすくなり、図10の符号52cで示す全開位置まで回転して、第2の弁体61を符号61bで示す位置まで下流側に向って押し広げる。すると、第2の弁体61と合わせ面51aとの間に滞留している滞留水70が重力によって重力方向下側に配置されている希釈器16側に流れでる。
【0056】
制御部40は、図8のステップS205で逆止弁27が開弁したと判断したら、図8のステップS206に示すように、所定の時間Δtだけバタフライ弁24を全開状態に保ち、逆止弁27の開状態を保持する。この所定の時間Δtは、図10に示す滞留水70が逆止弁27の第2の弁体61の希釈器16側に流れ出るのに必要な時間であって、例えば、1分から2分程度の時間としてもよい。
【0057】
制御部40は、所定の時間Δtが経過したら、図8のステップS207に示すように、バタフライ弁24を閉とする指令を出力する。この指令によって、モータ25が回転し、バタフライ弁24の第1の弁体52を図10で時計周りの方向に回転させ、図10に符号52aで示す全閉位置まで移動させ、バタフライ弁24を全閉として空気出口管14に滞留した滞留水70の排水動作を終了する。
【0058】
バタフライ弁24が全閉となって燃料電池の空気流路、空気入口管13、空気出口管14が大気と遮断されると、再び燃料電池10の温度低下によって燃料電池10の圧力が低下を始める。しかし、燃料電池10の空気流路内には湿分がほとんどなくなっていることから、空気圧力Pの低下はゆっくりしたものとなる。
【0059】
また、制御部40は、図8のステップS203でバタフライ弁24の開指令を出力した後、図8のステップS204に示すように、空気圧力Pが閾値P3よりも上昇してこない場合には、図8のステップS208に示すように、逆止弁27の第2の弁体61が凍結によって弁座である合わせ面51aに固着しているものと判断し、図8のステップS209に示すように、バタフライ弁24の第1の弁体52を初期位置である全閉位置に移動させ、図8のステップS203に示すように、再度バタフライ弁24を開とするリトライ動作を行う。そして、圧力センサ23によって検出した空気圧力Pが閾値P3から上昇してくるまでリトライ動作を繰り返し、空気圧力Pが閾値P3よりも上昇したら、逆止弁27が開弁したと判断して、図8のステップS206に示すように、バタフライ弁24の全開状態を所定時間Δtだけ継続して滞留水70を排出した後、バタフライ弁24を全閉状態に戻す。
【0060】
以上説明した本発明の実施形態は、燃料電池システム100の停止中にバタフライ弁24の第1の弁体52を回転させて逆止弁27を開弁して空気出口管14の内部に滞留した滞留水70を排出することが出来るので、滞留水70が空気出口管14の内部で凍結して逆止弁27やバタフライ弁24が固着してしまうことを抑制することができる。
【0061】
上記の実施形態では、圧力センサ23によって検出した空気圧力Pが閾値P3に低下した際にバタフライ弁24の第1の弁体52を回転させることとして説明したが、燃料電池10に取り付けた温度センサ28によって燃料電池10の温度の低下を検出し、所定の温度以下となったらバタフライ弁24の第1の弁体52を回転させて逆止弁27を開とする様にしてもよい。
【0062】
図11を参照しながら、燃料電池10の停止の際のバタフライ弁24の他の動作について説明する。図11のステップS301に示すように、燃料電池システム100の停止指令が出力されると、制御部40は、図11のステップS302に示すように、バタフライ弁24の第1の弁体52を図7の上で時計周りとなる閉弁方向に回転させる。また、制御部40は図1に示す角度センサ26によって第1の弁体52の図7に符号52aで示す全閉位置からの回転角度θを取得する。そして、制御部40は、図11のステップS303に示すように、第1の弁体52の回転角度θが、第1の弁体52の先端60が第2の弁体61の内面に接する角度θ1よりも小さく、第1の弁体52の先端60がシール部14bに接する角度θ2よりも大きくなる位置まで回転するまで待機する。そして、図11のステップS304に示すように、第1の弁体の回転角度θがθ1とθ2との間の角度となったら第1の弁体52の回転を停止し、図11のステップS305に示すように、バタフライ弁24の第1の弁体52の回転角度θを保持し、バタフライ弁24を中間開度状態に保持する。
【0063】
これによって、燃料電池10の停止中にバタフライ弁24の第1の弁体52の先端60,60’が空気出口管14の内面14a或いはシール部14bと離れた状態とし、燃料電池10の停止中に燃料電池10から落下してきた水滴が第1の弁体52と空気出口管14との間で凍結固着することを抑制することができる。
【0064】
この様に、バタフライ弁24の開度を中間開度として燃料電池10を停止した場合、燃料電池10の再起動の際には、第1の弁体52を中間開度の位置から図7に符号52cで示す全開方向に向けて反時計周りに回転させて、逆止弁27を開弁させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 燃料電池、11 空気圧縮機、12 空気供給管、13 空気入口管、14 空気出口管、14a 内面、14b シール部、14c,15c,55 中心線、15 空気排出管、16 希釈器、17 大気放出管、18 作動空気管、19,20 パイロット弁、21 入口空気遮断弁、22 アクチュエータ、23 圧力センサ、24 バタフライ弁、25 モータ、26 角度センサ、27 逆止弁、28 温度センサ、30 水素供給管、31 水素出口管、32 水素循環管、33 水素ポンプ、34 水素排出管、35 水素排出弁、36 ケーシング、40 制御部、50 弁セット、51,63 フランジ、51a 合わせ面、52 第1の弁体、53 シャフト、54 回転軸、56 開口、57 曲面、58 ボルト、59 円、60,60’,67 先端、61 第2の弁体、62 固定ボルト、65 接続部、66 根元、70 滞留水、100 燃料電池システム、110 空気系統、120 水素系統。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に接続される空気管路に設けられ、空気の流れ及び圧力を調整する弁セットであって、
流れ方向と交差する回転軸の周りに回転する第1の弁体を有するバタフライ弁と、
バタフライ弁の下流側に設けられ、その上流と下流との圧力差によって撓む板状の第2の弁体を有する逆止弁と、を備え、
各弁は、逆止弁が閉状態でバタフライ弁の第1の弁体を回転させると、その先端が逆止弁の第2の弁体に接する様に配置されていること、
を特徴とする弁セット。
【請求項2】
請求項1に記載の弁セットであって、
逆止弁が閉状態の場合、逆止弁の第2の弁体の上流側の面とバタフライ弁の第1の弁体の回転中心との間の第2の弁体の上流側の面に垂直な方向の距離は、第1の弁体の先端の回転半径よりも小さいこと、
を特徴とする弁セット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の弁セットであって、
逆止弁が開弁状態でバタフライ弁の第1の弁体を回転させると、その先端が逆止弁の第2の弁体の上流側面を下流方向に向かって押し出して、逆止弁を開弁させること、
を特徴とする弁セット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の弁セットであって、
逆止弁の第2の弁体は、空気管路の流れ方向と交差し下流側に向いているフランジ面に一端が片持ち式に固定され、他端は弾性変形によってフランジ面に対して接離自在となるよう取り付けられ、逆止弁は第2の弁体の他端がフランジ面から下流側に向って移動することにより開弁すること、
を特徴とする弁セット。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の弁セットであって、
逆止弁の開度は空気流量が増加するに従って増加し、
空気流量が所定の流量以上の場合、逆止弁の第2の弁体の上流側の面は第1の弁体の先端の回転円の下流側に位置していること、
を特徴とする弁セット。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載の弁セットであって、
バタフライ弁の第1の弁体が全閉位置から、第1の弁体の先端が逆止弁の第2の弁体に当接する当接位置までの第1の弁体の回転角度は、所定の角度よりも大きいこと、
を特徴とする弁セット。
【請求項7】
燃料ガスと空気との電気化学反応で発電する燃料電池と、
燃料電池に接続される空気管路に設けられ、流れ方向と交差する回転軸の周りに回転する第1の弁体を有するバタフライ弁と、バタフライ弁の下流側に設けられ、その上流と下流との圧力差によって撓む板状の第2の弁体を有する逆止弁と、を含み、逆止弁が閉状態でバタフライ弁の第1の弁体を回転させると、その先端が逆止弁の第2の弁体に当たる様に配置されている弁セットと、
バタフライ弁の開度を変更する制御部と、を備え、
制御部は、
燃料電池の始動の際に、バタフライ弁の第1の弁体を回転させ、閉弁状態の逆止弁の第2の弁体に当接させて逆止弁を開弁状態にする逆止弁開弁手段を有すること、
を特徴とする燃料電池システム。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池システムであって、
燃料電池に空気を供給する空気圧縮機と、
空気管路の圧力を検出する圧力検出手段と、を含み、
制御部は、
空気圧縮機を始動して空気管路の圧力を第1の圧力まで上昇させた後、逆止弁開弁手段によって逆止弁を開弁すること、
を特徴とする燃料電池システム。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料電池システムであって、
制御部は、
バタフライ弁の第1の弁体を回転させて閉弁状態の逆止弁の第2の弁体に当接させた後の空気管路の圧力が第2の圧力より低くなった場合には逆止弁が開弁したと判断し、バタフライ弁の第1の弁体を回転させて閉弁状態の逆止弁の第2の弁体に当接させた後の空気管路の圧力が第2の圧力より低くならなかった場合には逆止弁が開弁していないと判断する逆止弁開弁判断手段を含み、
バタフライ弁の第1の弁体を回転させて閉弁状態の逆止弁の第2の弁体に当接させた後に逆止弁が開弁していないと判断した場合には、再度バタフライ弁の第1の弁体を回転させて閉弁状態の逆止弁の第2の弁体に当接させるリトライ手段を有すること、
を特徴とする燃料電池システム。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
燃料電池を格納する格納ケースを含み、
弁セットは、格納ケースの中に下流側が重力方向下側となるように配置されていること、
を特徴とする燃料電池システム。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
制御部は、
燃料電池の停止中にバタフライ弁の第1の弁体を回転させて逆止弁の第2の弁体に接離させ、逆止弁の開閉を行うこと、
を特徴とする燃料電池システム。
【請求項12】
請求項11に記載の燃料電池システムにおいて、
空気圧力を検出する圧力センサまたは燃料電池の温度を検出する温度センサを含み、
制御部は、
燃料電池の停止中に空気圧力または燃料電池の温度がそれぞれ所定の閾値よりも低くなった場合に、バタフライ弁の第1の弁体を回転させて逆止弁の第2の弁体に接離させ、逆止弁の開閉を行うこと、
を特徴とする燃料電池システム。
【請求項13】
請求項7から10のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
制御部は、
燃料電池の停止の際に、第1の弁体が逆止弁の第2の弁体に接しない中間開度にバタフライ弁を開弁した状態で燃料電池を停止する停止手段を有すること、
を特徴とする燃料電池システム。
【請求項14】
請求項13に記載の燃料電池システムであって、
逆止弁開弁手段は、中間開度で停止しているバタフライ弁の第1の弁体を全開方向に回転させること、
を特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−277801(P2010−277801A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128420(P2009−128420)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】