説明

燃料電池システム及び電流電圧特性推定方法

【課題】燃料電池のIV特性を精度良く推定することができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池と、燃料電池の初回起動時の電流電圧を計測する手段と、計測した電流電圧に基づいて燃料電池のIV特性マップを作成する手段と、計測した電流の範囲を複数の電流領域に分割し各電流領域における電圧平均値を算出する手段と、最小電流領域の電圧平均値を含む最小代表点と最大電流領域の電圧平均値を含む最大代表点とを結ぶ電流電圧直線を生成する手段と、電流電圧直線に対する各電流領域の電圧平均値のばらつきが所定範囲内か否かを判定する手段と、ばらつきが所定範囲内である場合に最小電流領域から最大電流領域までの電流領域を安定領域として設定する手段と、設定した安定領域内において計測した燃料電池の電流電圧に基づいて燃料電池のIV特性を推定する手段と、を備える燃料電池システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム及び電流電圧特性推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、反応ガス(燃料ガス及び酸化ガス)の供給を受けて発電を行う燃料電池を備えた燃料電池システムが提案され、実用化されている。かかる燃料電池システムの燃料電池のカソード極側には酸化ガスとしての空気が供給され、燃料電池のアノード極側には燃料ガスとしての水素ガスが供給され、これら空気と水素ガスとの電気化学反応により、電力が生成される。
【0003】
このような燃料電池システムにおいては、燃料電池の発電効率を向上させる目的で、燃料電池の電流電圧特性(以下、「IV特性」ということがある)を考慮して燃料電池出力を決定する制御がなされている。但し、IV特性は、燃料電池の運転状態や運転環境によって大きく変動するものである。このため、近年においては、燃料電池の運転状態等に基づいてIV特性を推定する技術(特許文献1及び2参照)や、燃料電池に供給される空気の流量・圧力を考慮して基本IV特性マップを設定し、電流や電圧の実測値に基づいて基本IV特性マップを補正する技術(特許文献3参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−188665号公報
【特許文献2】特開2008−311080号公報
【特許文献3】特開2007−207442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び2に記載された技術においては、濃度分極や活性化分極を考慮してIV特性の推定を行っているものの、IV特性の推定精度には依然として改善の余地があった。また、特許文献3に記載された技術は、実測値を用いて基本IV特性マップを補正して実測値とのズレを是正するものであるが、小電流領域や大電流領域を含む全ての電流領域において補正を行うと、IV特性を精度良く補正することができない場合があった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、燃料電池の電流電圧特性を精度良く推定することができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る第一の燃料電池システムは、燃料電池と、この燃料電池の初回起動時における出力電流及び出力電圧を計測する電流電圧計測手段と、この電流電圧計測手段で計測した出力電流及び出力電圧に基づいて燃料電池の電流電圧特性分布図を作成する分布図作成手段と、電流電圧計測手段で計測した出力電流の範囲を複数の電流領域に分割し、各電流領域における電圧平均値を算出する電圧平均値算出手段と、複数の電流領域のうち最小電流領域と最大電流領域とを特定し、最小電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる最小代表点と、最大電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる最大代表点と、を結ぶ電流電圧直線を生成する直線生成手段と、各電流領域の中間電流値において、前記各電流領域の電圧平均値と、直線生成手段で生成した電流電圧直線上の電圧値と、の差分が第一の閾値以下であるか否かを判定する差分判定手段と、この差分判定手段で差分が第一の閾値以下であると判定した場合に、最小電流領域の中間電流値から最大電流領域の中間電流値までの電流領域を安定領域として設定する安定領域設定手段と、この安定領域設定手段で設定した安定領域内において計測した燃料電池の出力電流及び出力電圧に基づいて燃料電池の電流電圧特性を推定する特性推定手段と、を備えるものである。
【0008】
また、本発明に係る第一の電流電圧特性推定方法は、燃料電池の初回起動時における出力電流及び出力電圧を計測する電流電圧計測工程と、電流電圧計測工程で計測した出力電流及び出力電圧に基づいて燃料電池の電流電圧特性分布図を作成する分布図作成工程と、電流電圧計測手段で計測した出力電流の範囲を複数の電流領域に分割し、各電流領域における電圧平均値を算出する電圧平均値算出工程と、複数の電流領域のうち最小電流領域と最大電流領域とを特定し、最小電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる最小代表点と、最大電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる最大代表点と、を結ぶ電流電圧直線を生成する直線生成工程と、各電流領域の中間電流値において、各電流領域の電圧平均値と、直線生成工程で生成した電流電圧直線上の電圧値と、の差分が第一の閾値以下であるか否かを判定する差分判定工程と、この差分判定工程で差分が第一の閾値以下であると判定した場合に、最小電流領域の中間電流値から最大電流領域の中間電流値までの電流領域を安定領域として設定する安定領域設定工程と、この安定領域設定工程で設定した安定領域内において計測した燃料電池の出力電流及び出力電圧に基づいて燃料電池の電流電圧特性を推定する特性推定工程と、を備えるものである。
【0009】
かかる構成及び方法を採用すると、計測した出力電流の範囲を分割した複数の電流領域における出力電圧の平均値(電圧平均値)を算出し、最小電流領域における電圧平均値を含む最小代表点と最大電流領域における電圧平均値を含む最大代表点とを結ぶ電流電圧直線を生成する。そして、この電流電圧直線に対する各電流領域の電圧平均値のばらつきが比較的少ない場合に安定領域を確定させ、この安定領域内におけるデータを用いて燃料電池の電流電圧特性を推定することができる。従って、ばらつきの多い安定領域外における電流電圧特性データを採用することなく、精度良く、電流電圧特性の推定を行うことができる。
【0010】
前記燃料電池システム(前記電流電圧特性推定方法)において、差分判定手段(差分判定工程)で差分が第一の閾値以下であると判定した場合に、各電流領域において電圧平均値と電圧計測値との差分の積算値を算出し、この積算値が第二の閾値以下であるか否かを判定する積算値判定手段(積算値判定工程)を採用することができる。かかる場合には、積算値判定手段(積算値判定工程)で積算値が第二の閾値以下であると判定した場合に、最小電流領域の中間電流値から最大電流領域の中間電流値までの電流領域を安定領域として設定する安定領域設定手段(安定領域設定工程)を採用することができる。
【0011】
かかる構成及び方法を採用すると、電流電圧直線に対する各電流領域の電圧平均値のばらつきが比較的少ない場合に、各電流領域の電圧平均値に対する電圧計測値のばらつきの度合いを判定し、電圧計測値のばらつきが比較的少ない場合に安定領域を確定させることができる。すなわち、二重のばらつき判定を経て安定領域を確定させることができるので、より精度良く電流電圧特性の推定を行うことができる。
【0012】
前記燃料電池システムにおいて、差分判定手段で差分が第一の閾値を超えるものと判定した場合、又は、積算値判定手段で積算値が第二の閾値を超えるものと判定した場合に、直前の最小電流領域に隣接する電流領域を新たな最小電流領域とする一方、直前の最大電流領域に隣接する電流領域を新たな最大電流領域として特定し、新たな最小電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる新たな最小代表点と、新たな最大電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる新たな最大代表点と、を結ぶ新たな電流電圧直線を生成する直線生成手段を採用することができる。
【0013】
かかる構成を採用すると、二重のばらつき判定、すなわち、(1)電流電圧直線に対する各電流領域の電圧平均値のばらつき判定、及び、(2)各電流領域の電圧平均値に対する電圧計測値のばらつき判定、の何れか一方において所定の条件が満たされなかった場合に、最小電流領域及び最大電流領域を更新して、新たな電流電圧直線を生成することができる。このように所定の条件が満たされるまで電流電圧直線を更新することができるので、安定領域を徐々に最適なものに近付けることができる。
【0014】
また、前記燃料電池システムにおいて、出力電流の変化方向が増加側である場合の第一の電流電圧特性分布図と、出力電流の変化方向が減少側である場合の第二の電流電圧特性分布図と、を作成する分布図作成手段を採用することができる。かかる場合には、第一の電流電圧特性分布図に対応する第一の電圧平均値と、第二の電流電圧特性分布図に対応する第二の電圧平均値と、を算出する電圧平均値算出手段と、第一の電圧平均値に対応する第一の電流電圧直線と、第二の電圧平均値に対応する第二の電流電圧直線と、を生成する直線生成手段と、第一の電圧平均値及び第一の電流電圧直線に対応する第一の差分判定と、第二の電圧平均値及び第二の電流電圧直線に対応する第二の差分判定と、を行う差分判定手段と、第一の差分判定に基づく第一の安定領域と、第二の差分判定に基づく第二の安定領域と、を設定する安定領域設定手段と、を採用することができる。
【0015】
かかる構成を採用すると、出力電流の変化方向が増加側である場合の電流電圧特性分布図と、出力電流の変化方向が減少側である場合の電流電圧特性分布図と、の各々に基づいて、別々に安定領域を設定することができる。従って、電流増加時と電流減少時におけるヒステリシスの相違に対応することができるので、電流電圧特性の推定精度をさらに向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る第二の燃料電池システムは、燃料電池と、燃料電池の初回起動時における出力電流及び出力電圧を計測する電流電圧計測手段と、電流電圧計測手段で計測した出力電流及び出力電圧に基づいて燃料電池の電流電圧特性分布図を作成する分布図作成手段と、電流電圧計測手段で計測した出力電流の範囲を複数の電流領域に分割し、各電流領域における電圧平均値を算出する電圧平均値算出手段と、複数の電流領域のうち最小電流領域と最大電流領域とを特定し、最小電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる最小代表点と、最大電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる最大代表点と、を結ぶ電流電圧直線を生成する直線生成手段と、各電流領域において電圧平均値と電圧計測値との差分の積算値を算出し、この積算値が所定の閾値以下であるか否かを判定する積算値判定手段と、積算値判定手段で積算値が前記閾値以下であると判定した場合に、最小電流領域の中間電流値から最大電流領域の中間電流値までの電流領域を安定領域として設定する安定領域設定手段と、安定領域設定手段で設定した安定領域内において計測した燃料電池の出力電流及び出力電圧に基づいて燃料電池の電流電圧特性を推定する特性推定手段と、を備えるものである。
【0017】
また、本発明に係る第二の電流電圧特性推定方法は、燃料電池の初回起動時における出力電流及び出力電圧を計測する電流電圧計測工程と、電流電圧計測工程で計測した出力電流及び出力電圧に基づいて燃料電池の電流電圧特性分布図を作成する分布図作成工程と、電流電圧計測手段で計測した出力電流の範囲を複数の電流領域に分割し、各電流領域における電圧平均値を算出する電圧平均値算出工程と、複数の電流領域のうち最小電流領域と最大電流領域とを特定し、最小電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる最小代表点と、最大電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる最大代表点と、を結ぶ電流電圧直線を生成する直線生成工程と、各電流領域において電圧平均値と電圧計測値との差分の積算値を算出し、この積算値が所定の閾値以下であるか否かを判定する積算値判定手段と、積算値判定工程で積算値が前記閾値以下であると判定した場合に、最小電流領域の中間電流値から最大電流領域の中間電流値までの電流領域を安定領域として設定する安定領域設定工程と、安定領域設定工程で設定した安定領域内において計測した燃料電池の出力電流及び出力電圧に基づいて燃料電池の電流電圧特性を推定する特性推定工程と、を備えるものである。
【0018】
かかる構成及び方法を採用すると、計測した出力電流の範囲を分割した複数の電流領域における出力電圧の平均値(電圧平均値)を算出し、最小電流領域における電圧平均値を含む最小代表点と最大電流領域における電圧平均値を含む最大代表点とを結ぶ電流電圧直線を生成する。そして、各電流領域の電圧平均値に対する電圧計測値のばらつきの度合いを判定し、電圧計測値のばらつきが比較的少ない場合に安定領域を確定させ、この安定領域内におけるデータを用いて燃料電池の電流電圧特性を推定することができる。従って、ばらつきの多い安定領域外における電流電圧特性データを採用することなく、精度良く、電流電圧特性の推定を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、燃料電池の電流電圧特性を精度良く推定することができる燃料電池システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【図2】図1に示す燃料電池システムの初回起動時に計測した出力電流及び出力電圧のIV特性マップである。
【図3】図2のIV特性マップの最小電流領域における電圧平均値を含む最小代表点と最大電流領域における電圧平均値を含む最大代表点とを結ぶ電流電圧直線を示す図である。
【図4】(A)は電圧平均値と電圧計測値との差が比較的大きい電流領域における計測値分布状況を示す図であり、(B)は電圧平均値と電圧計測値との差が比較的小さい電流領域における計測値分布状況を示す図である。
【図5】安定領域探索のために図3の電流電圧直線を更新していく過程を示す図である。
【図6】図1の燃料電池システムの電流電圧特性推定方法を説明するためのフローチャートである。
【図7】電流の変化方向と電流電圧特性との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池システムについて説明する。本実施形態に係る燃料電池システムは、移動体としての燃料電池自動車(FCHV:Fuel Cell Hybrid Vehicle)に搭載された発電システムである。
【0022】
まず、図1〜図5を用いて、本実施形態に係る燃料電池システム1の構成について説明する。
【0023】
図1は本実施形態に係る燃料電池システム100を搭載した車両の概略構成である。燃料電池40は、供給される反応ガス(燃料ガス及び酸化ガス)から電力を発生する手段であり、固体高分子型、燐酸型、熔融炭酸塩型等種々のタイプの燃料電池を利用することができる。燃料電池40は、MEA等を備えた複数の単セルを直列に積層したスタック構造を有している。この燃料電池40の実運転動作点における出力電流及び出力電圧は、各々、電流センサ140及び電圧センサ150によって検出される。燃料電池40の燃料極(アノード)には、燃料ガス供給源10から水素ガス等の燃料ガスが供給される一方、酸素極(カソード)には、酸化ガス供給源70から空気等の酸化ガスが供給される。
【0024】
燃料ガス供給源10は、例えば水素タンクや様々な弁等から構成され、弁開度やON/OFF時間等を調整することにより、燃料電池40に供給する燃料ガス量を制御する。酸化ガス供給源70は、例えばエアコンプレッサやエアコンプレッサを駆動するモータ、インバータ等から構成され、このモータの回転数等を調整することにより、燃料電池40に供給する酸化ガス量を調整する。
【0025】
バッテリ60は、充放電可能な二次電池であり、例えばニッケル水素バッテリ等により構成されている。バッテリ60の代わりに二次電池以外の充放電可能な蓄電器(例えばキャパシタ)を設けても良い。このバッテリ60と燃料電池40とはトラクションモータ用のインバータ110に並列接続されており、バッテリ60とインバータ110の間にはDC/DCコンバータ130が設けられている。
【0026】
インバータ110は、例えばパルス幅変調方式のPWMインバータであり、制御装置80から与えられる制御指令に応じて燃料電池40又はバッテリ60から出力される直流電力を三相交流電力に変換し、トラクションモータ115へ供給する。トラクションモータ115は、車輪116L、116Rを駆動するためのモータであり、かかるモータの回転数はインバータ110によって制御される。
【0027】
DC/DCコンバータ130は、バッテリ60から入力されたDC電圧を昇圧又は降圧して燃料電池40側に出力する機能と、燃料電池40等から入力されたDC電圧を昇圧又は降圧してバッテリ60側に出力する機能と、を備えている。かかるDC/DCコンバータ130の機能により、バッテリ60の充放電が実現される。DC/DCコンバータ130としては、例えば4つのパワー・トランジスタと専用のドライブ回路によって構成されたフルブリッジ・コンバータを採用することができる。
【0028】
バッテリ60とDC/DCコンバータ130の間には、車両補機やFC補機等の補機類120が接続されている。バッテリ60は、これら補機類120の電源となる。なお、車両補機とは、車両の運転時等に使用される種々の電力機器(照明機器、空調機器、油圧ポンプ等)をいい、FC補機とは、燃料電池40の運転に使用される種々の電力機器(燃料ガスや酸化ガスを供給するためのポンプ等)をいう。
【0029】
制御装置80は、CPU、ROM、RAM等により構成され、FC電圧を検出する電圧センサ140、FC電流を検出する電流センサ150、燃料電池40の温度を検出する温度センサ50、バッテリ60の充電状態を検出するSOCセンサ、アクセルペダルの開度を検出するアクセルペダルセンサ等から入力される各センサ信号に基づき、燃料電池システム100の各部を統合的に制御する。
【0030】
また、制御装置80は、初回起動時において、運転動作点(出力電流、出力電圧)のばらつきが少ない「安定領域」の探索を行う。このような「安定領域」を確定させることにより、燃料電池40のIV特性を高精度に推定することが可能となる。以下、制御装置80による安定領域探索機能について詳述する。
【0031】
まず、制御装置80は、電流センサ140及び電圧センサ150を用いて、燃料電池40の初回起動時における出力電流及び出力電圧を計測し、計測した出力電流及び出力電圧に基づいて、IV特性マップ(電流電圧特性分布図)を作成する。本実施形態においては、図2に示すように、「0〜600A」の範囲で出力電流を計測してIV特性マップを作成することとしている。ここで、電流センサ140及び電圧センサ150は、本発明における電流電圧計測手段として機能する。また、制御装置80は、本発明における分布図作成手段として機能する。
【0032】
また、制御装置80は、電流センサ140及び電圧センサ150を用いて計測した出力電流の範囲を複数の電流領域に分割し、各電流領域における出力電圧の平均値(電圧平均値)を算出する。すなわち、制御装置80は、本発明における電圧平均値算出手段としても機能する。また、制御装置80は、各電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる代表点を設定する。
【0033】
本実施形態における制御装置80は、図2に示すように、0〜600Aの範囲を「50A」毎に分割し、計12の電流領域(A25、A75、……、A575)を形成している。制御装置80は、例えば、150〜200Aの電流領域A175(中間電流値175A)において、この電流領域に含まれる電圧計測値(V1751、V1752、……、V175n)を全て加算し、この加算値を計測数(n)で除することにより電圧平均値V175Aveを算出する。そして、図3に示すように、この電流領域A175における中間電流値175A及び電圧平均値V175Aveからなる代表点P175をIV特性マップ上にプロットする。他の電流領域においても同様に代表点(P25、P75、……、P575)を設定する。
【0034】
また、制御装置80は、複数の電流領域(A25、A75、……、A575)のうち最小電流領域と最大電流領域とを特定する。そして、最小電流領域の中間電流値及び電圧平均値からなる最小代表点と、最大電流領域の中間電流値及び電圧平均値からなる最大代表点と、を結ぶ電流電圧直線を生成する。すなわち、制御装置80は、本発明における直線生成手段としても機能する。
【0035】
本実施形態における制御装置80は、図3に示すように、12の電流領域のうち「0〜50A」の電流領域A25を初期の(暫定的な)最小電流領域として特定する一方、「550〜600A」の電流領域A575を初期の(暫定的な)最大電流領域として特定することとする。そして、制御装置80は、最小電流領域A25における中間電流値25A及び電圧平均値V25Aveからなる最小代表点P25と、最大電流領域A575における中間電流値575A及び電圧平均値V575Aveからなる最大代表点P575と、を結ぶ初期の(暫定的な)電流電圧直線L1を生成する。
【0036】
また、制御装置80は、各電流領域の中間電流値(25A、75A、……、575A)において、各電流領域の電圧平均値(V25Ave、V75Ave、……、V575Ave)と電流電圧直線L1上の電圧値(V25L1、V75L1、……、V575L1)との差分(ΔV25(=V25Ave−V25L1)、ΔV75(=V75Ave−V75L1)、……、ΔV575(=V575Ave−V575L1))を算出し、これら差分の絶対値が第一の閾値T1以下であるか否かを判定する。例えば、制御装置80は、図3に示すように、電流領域A125の中間電流値125Aにおいて、電圧平均値V125Aveと電流電圧直線L1上の電圧値V125L1との差分ΔV125を算出し、この差分ΔV125の絶対値が第一の閾値T1以下であるか否かを判定する。
【0037】
すなわち、制御装置80は、本発明における差分判定手段としても機能する。かかる差分判定は、電流電圧直線L1に対する各電流領域の電圧平均値のばらつきを判定するものであり、暫定的に設定した電流電圧直線L1(及びこれに対応する最大・最小電流領域)の妥当性を検証するためのものである。第一の閾値T1は、燃料電池システム100の仕様・規模や使用条件等に応じて適宜設定するものとする。
【0038】
また、制御装置80は、各電流領域の中間電流値(25A、75A、……、575A)において、前述した差分(ΔV25、ΔV75、……、ΔV575)の絶対値が第一の閾値T1以下であると判定した場合に、各電流領域における電圧平均値(V25Ave、V75Ave、……、V575Ave)と電圧計測値との差分(絶対値)の積算値を算出する。例えば、制御装置80は、図4(A)に示す電流領域A575において、電圧平均値V575Aveと、この電流領域A575に含まれる全ての電圧計測値(V5751、V5752、……、V575n)との差分(ΔV5751、ΔV5752、……、ΔV575n)の絶対値を加算することにより、積算値ΣΔV575k(k=1、2、……、n)を算出する。図4(B)に示す電流領域A275においても同様に、電圧平均値V275Aveと全ての電圧計測値(V2751、V2752、……、V275n)との差分(ΔV2751、ΔV2752、……、ΔV275n)の絶対値を加算することにより、積算値ΣΔV275kを算出する。他の電流領域においても同様に積算値(ΣΔV25k、ΣΔV75k、……)を算出する。そして、これら積算値が第二の閾値T2以下であるか否かを判定する。
【0039】
すなわち、制御装置80は、本発明における積算値判定手段としても機能する。かかる積算値判定は、各電流領域の電圧平均値に対する電圧計測値のばらつきを判定するものであり、前述した差分判定と同様に、暫定的に設定した電流電圧直線L1の妥当性を検証するためのものである。第二の閾値T2は、燃料電池システム100の仕様・規模や使用条件等に応じて適宜設定するものとする。
【0040】
そして、制御装置80は、前述した積算値(ΣΔV25k、ΣΔV75k、……、ΣV575k)が第二の閾値T2以下であると判定した場合に、暫定的に設定した電流電圧直線L1に対応する最小電流領域A25の中間電流値(25A)から最大電流領域A575の中間電流値(575A)までの電流領域(25〜575A)を安定領域として設定する。すなわち、制御装置80は、本発明における安定領域設定手段としても機能する。
【0041】
一方、制御装置80は、何れかの電流領域において電圧平均値と電流電圧直線L1上の電圧値との差分(絶対値)が第一の閾値T1を超えるものと判定した場合、又は、何れかの電流領域において電圧平均値と電圧計測値との差分(絶対値)の積算値が第二の閾値T2を超えるものと判定した場合に、暫定的に設定した電流電圧直線L1(及びこれに対応する最大・最小電流領域)を更新する。
【0042】
具体的には、制御装置80は、前述した差分が第一の閾値T1を超える場合又は前述した積算値が第二の閾値T2を超える場合に、図5に示すように、直前の最小電流領域A25に隣接する電流領域A75を新たな最小電流領域とする一方、直前の最大電流領域A575に隣接する電流領域A525を新たな最大電流領域として特定する。そして、制御装置80は、新たな最小電流領域A75における新たな最小代表点P75(中間電流値75A、電圧平均値V75Ave)と、新たな最大電流領域A525における新たな最大代表点P525(中間電流値525A、電圧平均値V525Ave)と、を結ぶ新たな電流電圧直線L2を生成する。その後、制御装置80は、前述した差分判定及び積算値判定を再度実施し、双方において肯定的な判定が得られた場合に、新たな電流電圧直線L2に対応する新たな最小電流領域A75の中間電流値(75A)から新たな最大電流領域A525の中間電流値(525A)までの電流領域(75〜525A)を安定領域として設定する。
【0043】
一方、新たな電流電圧直線L2をもってしても前述した差分判定又は積算値判定において肯定的な判定が得られなかった場合には、制御装置80は、同様の手順で最小電流領域A75及び最大電流領域A525を更新(新たな最小電流領域A125及び最大電流領域A475を特定)し、新たな最小電流領域A125における新たな最小代表点P125と新たな最大電流領域A475における新たな最大代表点P475とを結ぶ新たな電流電圧直線L3を生成する。その後、制御装置80は、前述した差分判定及び積算値判定を再度実施し、双方において肯定的な判定が得られた場合に、新たな電流電圧直線L3に対応する新たな最小電流領域A125の中間電流値(125A)から新たな最大電流領域A475の中間電流値(475A)までの電流領域(125〜475A)を安定領域として設定する。
【0044】
制御装置80は、前述した手順で安定領域を探索し、最終的に確定した安定領域内において、電流センサ140及び電圧センサ150を用いて燃料電池40の出力電流及び出力電圧を計測し、計測した出力電流及び出力電圧に基づいてIV特性の推定(IV特性マップの作成)を行う。すなわち、制御装置80は、本発明における特性推定手段としても機能する。そして、制御装置80は、このように安定領域を用いて推定したIV特性に基づいて燃料電池40を制御する。
【0045】
次に、図6のフローチャート等を用いて、本実施形態に係る燃料電池システム1の電流電圧特性推定方法について説明する。
【0046】
まず、燃料電池システム1の制御装置80は、電流センサ140及び電圧センサ150を用いて、燃料電池40の初回起動時における出力電流及び出力電圧を所定時間計測し(電流電圧計測工程:S1)、計測した出力電流及び出力電圧に基づいて、図2に示すようなIV特性マップを作成する(分布図作成工程:S2)。なお、本実施形態における電流電圧計測工程S1においては、燃料電池40を起動した時点から所定時間経過するまで出力電流及び出力電圧を複数回ずつ計測することとしているが、所定数のサンプルが得られた時点(例えば各電流領域においてn個の計測値が得られた時点)で計測を終了することとしてもよい。
【0047】
次いで、制御装置80は、図2に示すように、計測した出力電流の範囲を複数の電流領域(A25、A75、……、A575)に分割し、各電流領域における電圧平均値(V25Ave、V75Ave、……、V575Ave)を算出する。そして、制御装置80は、図3に示すように、各電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる代表点(P25、P75、……、P575)をIV特性マップにプロットする(電圧平均値算出工程:S3)。
【0048】
次いで、制御装置80は、複数の電流領域(A25、A75、……、A575)から暫定的に最小電流領域A25及び最大電流領域A575を特定し、図3に示すように、最小電流領域A25における最小代表点P25(中間電流値25A、電圧平均値V25Ave)と、最大電流領域A575における最大代表点P575(中間電流値575A、電圧平均値V575Ave)と、を結ぶ電流電圧直線L1を生成する(直線生成工程:S4)。
【0049】
続いて、制御装置80は、各電流領域(A25、A75、……、A575)の中間電流値において、各電流領域の電圧平均値(V25Ave、V75Ave、……、V575Ave)と電流電圧直線L1上の電圧値(V25L1、V75L1、……、V575L1)との差分(ΔV25、ΔV75、……、ΔV575)を算出し、これら差分の絶対値が第一の閾値T1以下であるか否かを判定する(差分判定工程:S5)。
【0050】
差分判定工程S5において否定的な判定が得られた場合(何れかの電流領域における差分の絶対値が第一の閾値T1を超える場合)、制御装置80は、直線生成工程S4に戻って、暫定的に設定した電流電圧直線L1を更新する。すなわち、図5に示すように、直前の最小電流領域A25に隣接する電流領域A75を新たな最小電流領域とする一方、直前の最大電流領域A575に隣接する電流領域A525を新たな最大電流領域として特定し、新たな最小電流領域A75における最小代表点P75と新たな最大電流領域A525における最大代表点P525とを結ぶ新たな電流電圧直線L2を生成する。その後、制御装置80は、差分判定工程S5を再度実施する。
【0051】
一方、差分判定工程S5において肯定的な判定が得られた場合(全ての電流領域における差分の絶対値が第一の閾値T1以下である場合)、制御装置80は、各電流領域(A25、A75、……、A575)において、電圧平均値(V25Ave、V75Ave、……、V575Ave)と全ての電圧計測値との差分(絶対値)の積算値(ΣΔV25k、ΣΔV75k、……、ΣV575k)を算出し、これら積算値が第二の閾値T2以下であるか否かを判定する(積算値判定工程:S6)。
【0052】
積算値判定工程S6において否定的な判定が得られた場合(何れかの電流領域における積算値の絶対値が第二の閾値T2を超える場合)、制御装置80は、直線生成工程S4に戻って、暫定的に設定した電流電圧直線を更新し、差分判定工程S5及び積算値判定工程S6を再度実施する。一方、積算値判定工程S6において肯定的な判定が得られた場合(全ての電流領域における積算値の絶対値が第二の閾値T2以下である場合)、制御装置80は、そのときの電流電圧直線に対応する最小電流領域の中間電流値から最大電流領域の中間電流値までの電流領域を安定領域として設定する(安定領域設定工程:S7)。
【0053】
その後、制御装置80は、以上の工程群を経て確定(最終的に設定)した安定領域内において、電流センサ140及び電圧センサ150を用いて燃料電池40の出力電流及び出力電圧を計測し、計測した出力電流及び出力電圧に基づいてIV特性の推定(IV特性マップの作成)を行う(特性推定工程:S8)。そして、制御装置80は、このように安定領域を用いて推定したIV特性に基づいて燃料電池40を制御する。
【0054】
以上説明した実施形態に係る燃料電池システム1においては、計測した出力電流の範囲を分割した複数の電流領域における電圧平均値を算出し、最小電流領域における電圧平均値を含む最小代表点と最大電流領域における電圧平均値を含む最大代表点とを結ぶ電流電圧直線を生成する。そして、この電流電圧直線に対する各電流領域の電圧平均値のばらつきが比較的少ない場合、及び、各電流領域の電圧平均値に対する電圧計測値のばらつきが比較的少ない場合に安定領域を確定させ、この安定領域内におけるデータを用いて燃料電池の電流電圧特性を推定することができる。従って、ばらつきの多い安定領域外における電流電圧特性データを採用することなく、精度良く、電流電圧特性の推定を行うことができる。
【0055】
また、以上説明した実施形態に係る燃料電池システム1においては、二重のばらつき判定、すなわち、(1)電流電圧直線に対する各電流領域の電圧平均値のばらつき判定、及び、(2)各電流領域の電圧平均値に対する電圧計測値のばらつき判定、の何れか一方において所定の条件が満たされなかった場合に、最小電流領域及び最大電流領域を更新して、新たな電流電圧直線を生成することができる。このように所定の条件が満たされるまで電流電圧直線を更新することができるので、安定領域を徐々に最適なものに近付けることができる。
【0056】
なお、以上の実施形態においては、出力電流の変化方向について言及しなかったが、出力電流の変化方向が増加側である場合と、出力電流の変化方向が減少側である場合と、に分けてIV特性を推定することもできる。図7は、出力電流の変化方向とIV特性の関係を例示した図であり、電流増加方向のIV特性を太実線で示し、電流減少方向のIV特性を細実線で示している。図7に示すように、出力電流の増加側と減少側とではヒステリシスが異なることが知られている。制御装置80は、かかるヒステリシスの相違を考慮して、燃料電池40の出力電流を計測する際に出力電流の変化方向を検出し、検出した変化方向に応じてIV特性を推定することができる。
【0057】
具体的には、制御装置80は、計測した出力電流の変化方向が増加側である場合の第一のIV特性マップと、計測した出力電流の変化方向が減少側である場合の第二のIV特性マップと、を作成し、これら2種類のIV特性マップ毎に、電圧平均値の算出(代表点の設定)、電流電圧直線の生成、差分判定及び積算値判定を別々に行って、電流増加方向の安定領域(第一の安定領域)と、電流減少方向の安定領域(第二の安定領域)と、を設定する。そして、制御装置80は、電流センサ140及び電圧センサ150を用いて燃料電池40の出力電流及び出力電圧を計測し、計測した出力電流の変化方向が増加側である場合に、第一の安定領域内でIV特性の推定を行う。一方、制御装置80は、計測した出力電流の変化方向が減少側である場合に、第二の安定領域内でIV特性の推定を行う。このようにすると、電流増加時と電流減少時におけるヒステリシスの相違に対応することができるので、IV特性の推定精度をさらに向上させることができる。
【0058】
また、以上の実施形態においては、安定領域を探索する際に、二種類のばらつき判定(差分判定及び積算値判定)を行い、双方で所定の条件が満たされた場合に安定領域を確定させた例を示したが、積算値判定を省略し、差分判定のみで所定の条件が満たされた場合に安定領域を確定させることもできる。また、差分判定を省略し、積算値判定のみで所定の条件が満たされた場合に安定領域を確定させてもよい。このようにすると、安定領域の探索を迅速に行うことが可能となる。
【0059】
また、以上の実施形態においては、本発明に係る燃料電池システムを燃料電池自動車に搭載した例を示したが、燃料電池自動車以外の各種移動体(ロボット、船舶、航空機等)に本発明に係る燃料電池システムを搭載することもできる。また、本発明に係る燃料電池システムを、建物(住宅、ビル等)用の発電設備として用いられる定置用発電システムに適用してもよい。さらには、携帯型の燃料電池システムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
40…燃料電池、80…制御装置(分布図作成手段、電圧平均値算出手段、直線生成手段、差分判定手段、積算値判定手段、安定領域設定手段、特性推定手段)、140…電流センサ、150…電圧センサ、100…燃料電池システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池の初回起動時における出力電流及び出力電圧を計測する電流電圧計測手段と、
前記電流電圧計測手段で計測した出力電流及び出力電圧に基づいて前記燃料電池の電流電圧特性分布図を作成する分布図作成手段と、
前記電流電圧計測手段で計測した出力電流の範囲を複数の電流領域に分割し、前記各電流領域における電圧平均値を算出する電圧平均値算出手段と、
前記複数の電流領域のうち最小電流領域と最大電流領域とを特定し、前記最小電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる最小代表点と、前記最大電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる最大代表点と、を結ぶ電流電圧直線を生成する直線生成手段と、
前記各電流領域の中間電流値において、前記各電流領域の電圧平均値と、前記直線生成手段で生成した前記電流電圧直線上の電圧値と、の差分が第一の閾値以下であるか否かを判定する差分判定手段と、
前記差分判定手段で前記差分が前記第一の閾値以下であると判定した場合に、前記最小電流領域の中間電流値から前記最大電流領域の中間電流値までの電流領域を安定領域として設定する安定領域設定手段と、
前記安定領域設定手段で設定した前記安定領域内において計測した前記燃料電池の出力電流及び出力電圧に基づいて前記燃料電池の電流電圧特性を推定する特性推定手段と、
を備える、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記差分判定手段で前記差分が前記第一の閾値以下であると判定した場合に、前記各電流領域において電圧平均値と電圧計測値との差分の積算値を算出し、この積算値が第二の閾値以下であるか否かを判定する積算値判定手段を備え、
前記安定領域設定手段は、前記積算値判定手段で前記積算値が前記第二の閾値以下であると判定した場合に、前記最小電流領域の中間電流値から前記最大電流領域の中間電流値までの電流領域を安定領域として設定するものである、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記直線生成手段は、前記差分判定手段で前記差分が前記第一の閾値を超えるものと判定した場合、又は、前記積算値判定手段で前記積算値が前記第二の閾値を超えるものと判定した場合に、直前の前記最小電流領域に隣接する電流領域を新たな最小電流領域とする一方、直前の最大電流領域に隣接する電流領域を新たな最大電流領域として特定し、前記新たな最小電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる新たな最小代表点と、前記新たな最大電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる新たな最大代表点と、を結ぶ新たな電流電圧直線を生成するものである、
請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記分布図作成手段は、出力電流の変化方向が増加側である場合の第一の電流電圧特性分布図と、出力電流の変化方向が減少側である場合の第二の電流電圧特性分布図と、を作成するものであり、
前記電圧平均値算出手段は、前記第一の電流電圧特性分布図に対応する第一の電圧平均値と、前記第二の電流電圧特性分布図に対応する第二の電圧平均値と、を算出するものであり、
前記直線生成手段は、前記第一の電圧平均値に対応する第一の電流電圧直線と、前記第二の電圧平均値に対応する第二の電流電圧直線と、を生成するものであり、
前記差分判定手段は、前記第一の電圧平均値及び前記第一の電流電圧直線に対応する第一の差分判定と、前記第二の電圧平均値及び前記第二の電流電圧直線に対応する第二の差分判定と、を行うものであり、
前記安定領域設定手段は、前記第一の差分判定に基づく第一の安定領域と、前記第二の差分判定に基づく第二の安定領域と、を設定するものである、
請求項1から3の何れか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
燃料電池と、
前記燃料電池の初回起動時における出力電流及び出力電圧を計測する電流電圧計測手段と、
前記電流電圧計測手段で計測した出力電流及び出力電圧に基づいて前記燃料電池の電流電圧特性分布図を作成する分布図作成手段と、
前記電流電圧計測手段で計測した出力電流の範囲を複数の電流領域に分割し、前記各電流領域における電圧平均値を算出する電圧平均値算出手段と、
前記複数の電流領域のうち最小電流領域と最大電流領域とを特定し、前記最小電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる最小代表点と、前記最大電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる最大代表点と、を結ぶ電流電圧直線を生成する直線生成手段と、
前記各電流領域において電圧平均値と電圧計測値との差分の積算値を算出し、この積算値が所定の閾値以下であるか否かを判定する積算値判定手段と、
前記積算値判定手段で前記積算値が前記閾値以下であると判定した場合に、前記最小電流領域の中間電流値から前記最大電流領域の中間電流値までの電流領域を安定領域として設定する安定領域設定手段と、
前記安定領域設定手段で設定した前記安定領域内において計測した前記燃料電池の出力電流及び出力電圧に基づいて前記燃料電池の電流電圧特性を推定する特性推定手段と、
を備える、
燃料電池システム。
【請求項6】
燃料電池の電流電圧特性を推定する方法であって、
前記燃料電池の初回起動時における出力電流及び出力電圧を計測する電流電圧計測工程と、
前記電流電圧計測工程で計測した出力電流及び出力電圧に基づいて前記燃料電池の電流電圧特性分布図を作成する分布図作成工程と、
前記電流電圧計測手段で計測した出力電流の範囲を複数の電流領域に分割し、前記各電流領域における電圧平均値を算出する電圧平均値算出工程と、
前記複数の電流領域のうち最小電流領域と最大電流領域とを特定し、前記最小電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる最小代表点と、前記最大電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる最大代表点と、を結ぶ電流電圧直線を生成する直線生成工程と、
前記各電流領域の中間電流値において、前記各電流領域の電圧平均値と、前記直線生成工程で生成した前記電流電圧直線上の電圧値と、の差分が第一の閾値以下であるか否かを判定する差分判定工程と、
前記差分判定工程で前記差分が前記第一の閾値以下であると判定した場合に、前記最小電流領域の中間電流値から前記最大電流領域の中間電流値までの電流領域を安定領域として設定する安定領域設定工程と、
前記安定領域設定工程で設定した安定領域内において計測した前記燃料電池の出力電流及び出力電圧に基づいて前記燃料電池の電流電圧特性を推定する特性推定工程と、
を備える、
電流電圧特性推定方法。
【請求項7】
前記差分判定工程で前記差分が前記第一の閾値以下であると判定した場合に、前記各電流領域において電圧平均値と電圧計測値との差分の積算値を算出し、この積算値が第二の閾値以下であるか否かを判定する積算値判定工程を備え、
前記安定領域設定工程は、前記積算値判定工程で前記積算値が前記第二の閾値以下であると判定した場合に、前記最小電流領域の中間電流値から前記最大電流領域の中間電流値までの電流領域を安定領域として設定するものである、
請求項6に記載の電流電圧特性推定方法。
【請求項8】
燃料電池の電流電圧特性を推定する方法であって、
前記燃料電池の初回起動時における出力電流及び出力電圧を計測する電流電圧計測工程と、
前記電流電圧計測工程で計測した出力電流及び出力電圧に基づいて前記燃料電池の電流電圧特性分布図を作成する分布図作成工程と、
前記電流電圧計測手段で計測した出力電流の範囲を複数の電流領域に分割し、前記各電流領域における電圧平均値を算出する電圧平均値算出工程と、
前記複数の電流領域のうち最小電流領域と最大電流領域とを特定し、前記最小電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる最小代表点と、前記最大電流領域における中間電流値及び電圧平均値からなる最大代表点と、を結ぶ電流電圧直線を生成する直線生成工程と、
前記各電流領域において電圧平均値と電圧計測値との差分の積算値を算出し、この積算値が所定の閾値以下であるか否かを判定する積算値判定手段と、
前記積算値判定工程で前記積算値が前記閾値以下であると判定した場合に、前記最小電流領域の中間電流値から前記最大電流領域の中間電流値までの電流領域を安定領域として設定する安定領域設定工程と、
前記安定領域設定工程で設定した安定領域内において計測した前記燃料電池の出力電流及び出力電圧に基づいて前記燃料電池の電流電圧特性を推定する特性推定工程と、
を備える、
電流電圧特性推定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−70893(P2011−70893A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220551(P2009−220551)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】