説明

燃料電池システム

【課題】設置状態による漏液を未然に防止できる、小型で信頼性に優れる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】発電スタック5と、発電スタック5のアノード5aに燃料を供給する燃料供給部3と、発電スタック5のカソード5bに空気を供給する空気供給部6と、カソード5bで発生した水および水蒸気とカソード5bを経た気体とからなる気液混合流体から水を分離する気液分離部9を備えた燃料電池システム100であって、気液分離部9に保水体9cを設け、保水体9cで気液混合流体からカソード5bで発生した水と水蒸気を保水する構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カソードから発生した水および水蒸気とカソードを経た気体とからなる気液混合流体を排出し、カソードに空気を効率よく供給する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池システムとして、コージェネレーション用燃料電池システムに代表される定置型のものだけでなく、携帯用電子機器用燃料電池や電気自動車用燃料電池などの非定置型燃料電池システムも盛んに提案されている。例えば、ACアダプターからの充電を必要としないユビキタスモバイル電源として、特に直接型燃料電池が着目され、活発な研究開発が行われている。
【0003】
燃料を直接アノードへ供給し空気(酸素)を直接カソードへ供給する直接型燃料電池では、アノードにおいて燃料の酸化反応、カソードで酸素の還元反応が起こる。例えば、燃料としてメタノールを使用する直接メタノール型燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)の場合、以下の反応式、
アノードの反応式:CHOH+HO→CO+6H+e (1)
カソードの反応式:3/2O+6H+e→3HO (2)
で表される。
【0004】
すなわち、反応式(1)で示すように、アノードでの酸化反応には燃料と水とからなる燃料混合液体が必要となる。しかし、燃料電池システムの外部から燃料とともに水を供給する形態をとると、燃料と水の双方を貯蔵する大きなスペースが必要になり、結果として燃料電池システムのエネルギー密度が低下する。そこで、直接型燃料電池では、反応式(2)で示すように、カソードで生成する水および水蒸気の一部を回収して燃料と混合し、燃料混合液体として供給する循環型の燃料電池システムの一例が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
以下に、一般的な循環型の燃料電池システムの構成について、図6を用いて説明する。図6は、従来の循環型の燃料電池システムの一般的な構成を示す模式図である。
【0006】
図6に示すように、まず、メタノールなどの燃料が燃料タンク51から燃料供給手段52を介して循環タンク53へ供給される。このとき、燃料は燃料供給手段52または循環タンク53において、後述する手法で回収された水によって希釈調整されて燃料混合液体となる。つぎに、燃料混合液体は、燃料ポンプ54で発電スタック55のアノード入口60へ供給される。そして、アノード出口62からは使用されなかった燃料混合液体のほかに水蒸気や水および二酸化炭素からなる気液混合流体が排出される。さらに、使用されなかった燃料混合液体や気液混合流体は気液分離手段57に導かれた後、燃料混合液体は循環タンク53へ戻され、水蒸気や水などの気液混合流体は熱交換器58により冷却され液体の水になった後、循環タンク53へ戻される。
【0007】
一方、カソードに供給される空気は、空気供給手段56から発電スタック55のカソード入口61から導入される。そして、カソード出口63からは使用されなかった空気のほかに水(主に水蒸気)が排出される。これらは水回収手段59により分離され回収された一部の水は、燃料供給手段52へ戻されるとともに、残りの水や空気などは空気供給手段56に戻される。
【特許文献1】特開2004−349267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に示す燃料電池システムにおいて、熱交換器58のように水蒸気などを効率よく水に変換するための冷却装置が必要となるため、システムの小型化に課題がある。また、水回収手段59においては、空気と水を分離する方法などは具体的に記載されていない。そして、気液分離手段57、水回収手段59では、同時に空気や二酸化炭素などの気体を排気する必要があるため、燃料電池システムの設置位置が固定されないモバイル装置などにおいて、回収された水が、気体などの排気位置から、漏液するなどの課題があった。さらに、特にモバイル機器に燃料電池システムを導入する場合、回収された水が、その設置状態により、カソードに逆流し空気の流れを遮断し、電気の発生が阻害されるという課題もあった。
【0009】
本発明は上述した課題を解決するためなされたもので、設置状態による漏液を未然に防止できる、小型で信頼性に優れた燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、発電スタックと、発電スタックのアノードに燃料を供給する燃料供給部と、発電スタックのカソードに空気を供給する空気供給部と、カソードで発生した水および水蒸気とカソードを経た気体とからなる気液混合流体から水を分離する気液分離部を備えた燃料電池システムであって、気液分離部に保水体を設け、保水体で気液混合流体からカソードで発生した水と水蒸気を保水する構成を有する。
【0011】
この構成により、燃料電池の設置状態にかかわらず、漏液の生じない信頼性に優れた燃料電池システムを実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、冷却手段を備えず、保水体により、カソードからの排出される水や水蒸気を保水し、小型で、漏液などの発生しにくい信頼性に優れた燃料電池システムを構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第1の発明は、発電スタックと、発電スタックのアノードに燃料を供給する燃料供給部と、発電スタックのカソードに空気を供給する空気供給部と、カソードで発生した水および水蒸気とカソードを経た気体とからなる気液混合流体から水を分離する気液分離部を備えた燃料電池システムであって、気液分離部に保水体を設け、保水体で気液混合流体からカソードで発生した水と水蒸気を保水する構成を有する。
【0014】
この構成により、燃料電池の設置状態にかかわらず、漏液の生じない信頼性に優れた小型の燃料電池システムを実現できる。
【0015】
本発明の第2の発明は、第1の発明において、気液分離部に、水および水蒸気と気体とを分離し、気体を排出する気液分離膜をさらに設けた構成を有する。これにより、保水体で回収できない水蒸気の気液分離部内での結露による水を分離し、耐漏液性をさらに向上できる。
【0016】
本発明の第3の発明は、第1の発明と第2の発明において、発電スタックのアノードの排出側に、発電スタックのアノードで発生する気液混合液体を回収するとともに、気液混合液体から気体と液体を分離する気液分離膜を備えた捕集部を設け、液体を燃料供給部に供給する構成を有する。これにより、アノードで発生する気液混合液体の液体を回収し、漏液を防止するとともに、別に水を供給するタンクなどを必要としないため小型化を容易に実現できる。
【0017】
本発明の第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明において、気液分離部を燃料供給部と接続し、保水体で保水した液体を燃料供給部に供給する構成を有する。これにより、回収した水を効率よく捕集部を経由して循環させ、最適な比率でアノードに燃料を供給できる。
【0018】
本発明の第5の発明は、第1から第3のいずれかの発明において、気液分離部に排出ポンプを設け、保水体で保水した液体を排出する構成を有する。これにより、過剰な液体を排出し、カソードへの逆流を防止して燃料電池の発電効率の低下を防止できる。
【0019】
本発明の第6の発明は、第5の発明において、排出ポンプを、捕集部と接続し、保水体で保水した液体を供給する構成を有する。これにより、回収した水を効率よく捕集部を経由して循環させ、最適な比率でアノードに燃料を供給できる。
【0020】
本発明の第7の発明は、第1から第6の発明において、気液分離部の気液分離膜を第1気液分離膜、捕集部の気液分離膜を第2気液分離膜とし、気液分離部と捕集部を第2気液分離膜を介して接続して、捕集部で発生する気体と気液分離部で発生する気体を第1気液分離膜を介して排出する構成を有する。これにより、多量の液体が回収される捕集部の漏液を、第1気液分離膜と第2気液分離膜との2重構成により確実に防止できる。
【0021】
本発明の第8の発明は、第7の発明において、第1気液分離膜の面積が、第2気液分離膜の面積より広い構成を有する。これにより、空気供給部から導入される小さい圧力でも確実に気体と水蒸気を排出するとともに、第1気液分離膜の圧力損失を低減し、十分な空気をカソードに供給することができる。
【0022】
本発明の第9の発明は、第7の発明または第8の発明において、第1気液分離膜の通気度が、第2気液分離膜の通気度より高い構成を有する。これにより、捕集部で回収された液体を第2気液分離膜で確実に防止するとともに、第1気液分離膜での圧力損失を低減して空気をカソードに効率よく供給することができる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら、同一部分には同一符号を付して説明する。なお、本発明は、本明細書に記載された基本的な特徴に基づく限り、以下に記載の内容に限定されるものではない。
【0024】
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の実施の形態1における燃料電池システムの模式図で、図1(b)は、図1(a)の気液分離部9を詳細に説明する断面模式図である。
【0025】
図1(a)に示すように、燃料電池システム100は、アノード5aとカソード5bを有する発電スタック5、アノード5aに燃料を供給する燃料供給部3、カソード5bに空気を供給する、例えば空気ポンプからなる空気供給部6、アノード5aから排出される気液混合液体を回収する捕集部8およびカソード5bから排出される気液混合流体を分離回収する気液分離部9で構成されている。ここで、燃料供給部3は、例えばメタノールなどの燃料を保管する燃料タンク1と、燃料タンク1から燃料を発電スタック5のアノード5aのアノード入口10に供給する燃料ポンプ2から構成されている。捕集部8は、液体回収部8aと気液分離膜8bから構成され、発電スタック5のアノード5aでの反応によりアノード出口12から排出される水、少量の燃料(メタノール)と二酸化炭素を気液分離膜8bで分離し、少なくとも二酸化炭素は外部へ排気している。このとき、燃料タンク1内の燃料が、例えば発電スタック5に最適な比率でメタノールと水が混合されていない場合、捕集部8の液体回収部8aの液体を燃料ポンプ2に循環して、例えば燃料ポンプ2で燃料と最適な比率で混合してアノード5aに供給する。なお、燃料タンク1の燃料が、最適な比率で混合されて供給される場合には、捕集部8の液体回収部8aの液体を循環させなくてもよく、液体を回収して廃棄する構成としてもよい。
【0026】
また、空気ポンプなどからなる空気供給部6から、発電スタック5のカソード入口11に空気などが供給され、カソード5bにおいて反応式(2)にしたがって反応する。その後、カソード出口13から排出される、主に水蒸気と空気や少量の水(液体)からなる気液混合流体を気液分離部9に導入し、少なくとも水と空気などの気体に分離して、それぞれ排出する構成である。このとき、設置位置が固定されないモバイル機器の用途においては、排出された水を回収タンク(図示せず)で回収して廃棄する構成としてもよい。設置位置が固定される用途においては、燃料電池システム100より下方に排出する構成としてもよい。さらに、後述するように、燃料供給部3の燃料ポンプ2や捕集部8の液体回収部8aと接続し、これらに水を供給する構成としてもよい。
【0027】
以下、本実施の形態の発明のポイントである気液分離部9について、図1(b)を用いて詳細に説明する。
【0028】
図1(b)に示すように、気液分離部9は、カソードから排出される、主に水蒸気と空気や少量の水(液体)からなる気液混合流体を導入する導入口9aと、水などを排出する排出口9bおよび、導入口9aから導入される水蒸気や水を、例えば液化などして、捕獲する保水体9cで構成されている。さらに、気液分離部9の一部には、捕獲されなかった水蒸気や空気を排気する、例えば網目構造の開口部9dを設けている。ここで、保水体9cは、例えば多孔質のセラミック体や繊維質のフェルト体などの吸水性に優れた材料で構成され、水蒸気や水を捕獲して保水する。そして、保水体9cで保水できない水分は排出口9bから排出される。
【0029】
なお、図1(b)では、開口部9dが気液分離部9の鉛直上方に設けられているように示しているが、燃料電池システムの用途や設置位置により、必ずしもこの方向に設けられるものではない。例えば、開口部9dが気液分離部9の側面に設けられる場合もある。
【0030】
本実施の形態によれば、保水体で水蒸気などを吸収して保水するため、熱交換器などを必要としない。その結果、小型の燃料電池システム100を実現できる。また、気液分離部9内からカソード出口13に水が逆流して、空気の流れを阻害することがないため、安定したカソードでの反応により信頼性の高い燃料電池システムを実現できる。さらに、保水体で水蒸気などを吸収して保水するため、気液分離部の設置場所が、特に重力による落下で水を回収する場合のような場所に制限されない。そのため、例えば発電スタックと同じ平面上に気液分離部を設けることにより、薄型化が容易となる。
【0031】
以下に、本発明の実施の形態1における気液分離部の構成の別の例について、図2を用いて説明する。
【0032】
図2は、図1(a)の気液分離部9の別の例の気液分離部19の構成を示す断面模式図である。
【0033】
図2に示すように、気液分離部19は、気液分離膜9eをさらに設けている点で、図1(b)の気液分離部9とは異なる。
【0034】
すなわち、図2に示すように、気液分離膜9eにより導入口9aから導入された水蒸気の一部が保水体9c以外の気液分離部19の壁面で結露する結露液9fが漏液することを気液分離膜9eにより防止するものである。これにより、燃料電池システムの設置位置や部品配置構成の自由度が向上する。
【0035】
また、気液分離膜9eで水蒸気を結露させ、気液分離膜9eを透過して外部に排気される水蒸気の量を大幅に低減できる。これにより、排気される水蒸気の外部での結露を未然に防止し、燃料電池システムを用いた機器や装置の信頼性を大幅に向上させることができる。
【0036】
ここで、気液分離膜9eとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素樹脂で作られた多孔質体のシート、またはこれらフッ素樹脂をコートしたカーボン繊維などで作られたクロス、ペーパーや不織布状のシートを用いることができる。
【0037】
本実施の形態によれば、気液分離部に気液分離膜を設けることにより、さらに漏水や漏液および水蒸気などの排出を低減できる燃料電池システム100を実現できる。
【0038】
(実施の形態2)
図3(a)は、本発明の実施の形態2における燃料電池システム200の模式図で、図3(b)は、図3(a)の気液分離部を詳細に説明する断面模式図である。なお、図1(a)と同じ構成要素には同じ符号を付し説明する。また、実施の形態1で説明した気液分離部19を例に説明する。
【0039】
図3(a)に示すように、燃料電池システム200は、アノード5aとカソード5bを有する発電スタック5、アノード5aに燃料を供給する燃料供給部3、カソード5bに空気を供給する、例えば空気ポンプからなる空気供給部6、アノード5aから排出される気液混合液体を回収する捕集部8およびカソード5bから排出される気液混合流体を分離回収する気液分離部19で構成されている。ここで、燃料供給部3は、例えばメタノールなどの燃料を保管する燃料タンク1と、燃料タンク1から燃料を発電スタック5のアノード5aのアノード入口10に供給する燃料ポンプ2から構成されている。捕集部8は、液体回収部8aと気液分離膜8bから構成され、発電スタック5のアノード5aでの反応によりアノード出口12から排出される水、少量の燃料(メタノール)と二酸化炭素を気液分離膜8bで分離し、少なくとも二酸化炭素は外部へ排気している。このとき、燃料タンク1内の燃料が、発電スタック5で最適な比率で、例えばメタノールと水が混合されていない場合、捕集部8の液体回収部8aの液体を燃料ポンプ2に循環して、例えば燃料ポンプ2で燃料と最適な比率で混合してアノード5aに供給する。なお、燃料タンク1の燃料が、最適な比率で混合されて供給される場合には、捕集部8の液体回収部8aの液体を循環させなくてもよく、液体を回収して廃棄する構成としてもよい。
【0040】
また、空気ポンプなどからなる空気供給部6から、発電スタック5のカソード入口11に空気などが供給され、カソード5bにおいて反応式(2)にしたがって反応する。その後、カソード出口13から排出される、主に水蒸気と空気や少量の水(液体)からなる気液混合流体を気液分離部19に導入し、少なくとも水と空気などの気体に分離する。
【0041】
ここで、気液分離部19は、図3(b)に示すようにカソードから排出される、主に水蒸気と空気や少量の水(液体)からなる気液混合流体を導入する導入口9aと、水などを排出する排出口9bおよび、導入口9aから導入される水蒸気や水を、捕獲する保水体9cで構成されている。さらに、気液分離部19の一部には、捕獲されなかった水蒸気を捕獲し、空気と分離して排気する、気液分離膜9eを備えている。
【0042】
以下、本実施の形態の発明のポイントである排出ポンプを備える燃料電池システム200について、図3を用いて説明する。
【0043】
すなわち、図3に示すように、気液分離部19の排出口9bと捕集部8の液体回収部8aを排出ポンプ15を介して接続し、気液分離部19の保水体9cに保水された水を液体回収部8aに、必要に応じて供給する構成としたものである。ここで、排出ポンプ15として、例えば圧電体や静電力を用いたダイアフラム方式のポンプを用いることができる。
【0044】
本実施の形態によれば、燃料や水などを密閉系とした燃料電池システムとすることができるため、漏液が生じにくく、設置位置や配置位置が制限されない設計自由度の優れた燃料電池システムを実現できる。また、気液分離部で、例えば保水体で保水しきれない量の液体が生じても、排出ポンプで強制的に液体回収部に移動できるので、さらに気液分離部の液体のカソードへの逆流による発電性能の低下を防止できる。
【0045】
以下、本発明の実施の形態2における燃料電池システムの構成の別の例について、図4を用いて説明する。
【0046】
図4に示すように、気液分離部19と燃料供給部3の燃料ポンプ2とを接続し、気液分離部19で保水された水を燃料ポンプ2で吸い出す構成とした点で、図3とは異なる。すなわち、図3(a)の排出ポンプ15を、燃料供給部3の燃料ポンプ2で兼用したものである。
【0047】
本実施の形態によれば、上記と同様の効果が得られるとともに、排出ポンプを別途設ける必要がないため、さらに小型化や薄型化した燃料電池システム300を実現できる。
【0048】
(実施の形態3)
図5(a)は、本発明の実施の形態3における燃料電池システム400の模式図で、図5(b)は、図5(a)の一体化気液分離部を詳細に説明する断面模式図である。なお、図1(a)と同じ構成要素には同じ符号を付し説明する。ここで、一体化気液分離部とは、アノードから排出される気液を分離する捕集部とカソードから排出される気液を分離する気液分離部を一体化した構成からなる。
【0049】
まず、図5(a)に示すように、燃料電池システム400は、アノード5aとカソード5bを有する発電スタック5、アノード5aに燃料を供給する燃料供給部3、カソード5bに空気を供給する、例えば空気ポンプからなる空気供給部6およびアノード5aから排出される気液混合液体を回収する捕集部8とカソード5bから排出される気液混合流体を分離回収する気液分離部19とからなる一体化気液分離部30で構成されている。ここで、燃料供給部3は、例えばメタノールなどの燃料を保管する燃料タンク1と、燃料タンク1から燃料を発電スタック5のアノード5aのアノード入口10に供給する燃料ポンプ2から構成されている。
【0050】
また、空気ポンプなどからなる空気供給部6から、発電スタック5のカソード入口11に空気などが供給され、カソード5bにおいて反応式(2)にしたがって反応する。その後、カソード出口13から排出される、主に水蒸気と空気や少量の水(液体)からなる気液混合流体が一体化気液分離部30に導入される。
【0051】
以下、本実施の形態の発明のポイントである一体化気液分離部30について、図5(b)を用いて説明する。
【0052】
図5(b)に示すように、一体化気液分離部30は、少なくとも液体回収部8aと第2気液分離膜18bからなる捕集部8と、少なくとも保水体9cと第1気液分離膜19eからなる気液分離部19から構成されている。そして、捕集部8と気液分離部19は、捕集部8の第2気液分離膜18bを介して接続されている。さらに、気液分離部19の保水体9cで保水された液体を捕集部8の液体回収部8aに供給するように排出ポンプ15を介して気液分離部19の排出口9bと接続されている。
【0053】
そして、一体化気液分離部30は、捕集部8において、発電スタック5のアノード5aでの反応によりアノード出口12から排出される水、少量の燃料(メタノール)と二酸化炭素が導入口12aから導入され、水や少量の燃料が液体回収部8aで回収され、必要に応じて排出口12bから燃料ポンプ2に供給される。同時に、捕集部8の第2気液分離膜18bで二酸化炭素が分離され、気液分離部19に注入される。
【0054】
また、気液分離部19において、カソード出口13から排出される、主に水蒸気と空気や少量の水(液体)からなる気液混合流体が気液分離部19に導入され、保水体9cで少なくとも水と空気などの気体が分離される。そして、分離された保水体9cに保水された液体は排出口9bと排出ポンプ15を介して液体回収部8aに供給される。同時に、空気などの気体は第1気液分離膜19eを介して外部に排出される。つまり、捕集部8の液体回収部8aで多量に保有される液体は、第1気液分離膜19eと第2気液分離膜18bとにより2重に漏液などが防止される。
【0055】
ここで、第1気液分離膜19eおよび第2気液分離膜18bとしては、撥水性樹脂材料を多孔質膜に形成した、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素樹脂で作られた多孔質体のシート、またはこれらフッ素樹脂をコートしたカーボン繊維などで作られたクロス、ペーパーや不織布状のシートを用いることができる。
【0056】
なお、第1気液分離膜の面積は、第2気液分離膜の面積より広い方が好ましい。これにより、空気供給部から小さい圧力での空気の供給を可能とし、効率よく気体を外部に放出できる。また、燃料ポンプから高い圧力で排出される二酸化炭素などによる圧力を分散して小さくし、気液分離部19の導入口9aから逆流することを防止できる。
【0057】
また、第1気液分離膜の通気度は、第2気液分離膜の通気度より高い方が望ましい。具体的には、第2気液分離膜の通気度は、JIS P 8117 ガーレー試験法で測定した場合、12sec/100ml以下の範囲が好ましく、第1気液分離膜の通気度は、10sec/100ml以下の範囲が好ましい。これにより、捕集部8の液体回収部8aの液体の漏液を確実に防止できる。
【0058】
本実施の形態によれば、多量の液体が回収される捕集部からの漏液を、第1気液分離膜と第2気液分離膜との2重の構成により、確実に防止し信頼性に優れた燃料電池システムを実現できる。
【0059】
なお、気液分離膜に撥水性を付与することが好ましい。具体的には、気体の透過性を高めつつ液体の透過性を抑制するために、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素樹脂材料を多孔質体膜に形成したシート、またはこれらフッ素樹脂材料をコートしたカーボン繊維などで作られたクロス、ペーパーや不織布状のシートなどが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の燃料電池システムは、メタノール、ジメチルエーテルなどの燃料を水素に改質せずに燃料として直接用い、かつ任意の設置位置で利用される携帯電話や携帯情報端末(PDA)、ノートPC、ビデオカメラなどの携帯用小型電子機器用の電源として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】(a)本発明の実施の形態1における燃料電池システムの模式図(b)図1(a)の気液分離部を詳細に説明する断面模式図
【図2】図1(a)の気液分離部の別の例の気液分離部の構成を示す断面模式図
【図3】(a)本発明の実施の形態2における燃料電池システムの模式図(b)図3(a)の気液分離部を詳細に説明する断面模式図
【図4】本発明の実施の形態2における燃料電池システムの構成の別の例を示す模式図
【図5】(a)本発明の実施の形態3における燃料電池システムの模式図(b)図5(a)の一体化気液分離部を詳細に説明する断面模式図
【図6】従来の循環型の燃料電池システムの一般的な構成を示す模式図
【符号の説明】
【0062】
1 燃料タンク
2 燃料ポンプ
3 燃料供給部
5 発電スタック
5a アノード
5b カソード
6 空気供給部
8 捕集部
8a 液体回収部
8b,9e 気液分離膜
9,19 気液分離部
9a,12a 導入口
9b,12b 排出口
9c 保水体
9d 開口部
9f 結露液
10 アノード入口
11 カソード入口
12 アノード出口
13 カソード出口
15 排出ポンプ
18b 第2気液分離膜
19e 第1気液分離膜
30 一体化気液分離部
100,200,300,400 燃料電池システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電スタックと、前記発電スタックのアノードに燃料を供給する燃料供給部と、
前記発電スタックのカソードに空気を供給する空気供給部と、前記カソードで発生した水および水蒸気と前記カソードを経た気体とからなる気液混合流体から水を分離する気液分離部を備えた燃料電池システムであって、
前記気液分離部に保水体を設け、前記保水体で前記気液混合流体から前記カソードで発生した水と水蒸気を保水することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記気液分離部に、前記水および水蒸気と前記気体とを分離し、前記気体を排出する気液分離膜をさらに設けたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記発電スタックのアノードの排出側に、前記発電スタックの前記アノードで発生する気液混合液体を回収するとともに、前記気液混合液体から気体と液体を分離する気液分離膜を備える捕集部を設け、前記液体を前記燃料供給部に供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記気液分離部を前記燃料供給部と接続し、前記保水体で保水した液体を前記燃料供給部に供給すること特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記気液分離部に排出ポンプを設け、前記保水体で保水した液体を排出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記排出ポンプを、前記捕集部と接続し、前記保水体で保水した液体を供給することを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記気液分離部の気液分離膜を第1気液分離膜、前記捕集部の前記気液分離膜を第2気液分離膜とし、
前記気液分離部と前記捕集部を前記第2気液分離膜を介して接続して、前記捕集部で発生する気体と前記気液分離部で発生する気体を前記第1気液分離膜を介して排出することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記第1気液分離膜の面積が、前記第2気液分離膜の面積より広いことを特徴とする請求項7に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記第1気液分離膜の通気度が、前記第2気液分離膜の通気度より高いことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−311166(P2008−311166A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159797(P2007−159797)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】