説明

燃料電池システム

【課題】改質器に導入される液体燃料の流量と加熱器に導入される液体流量とを1つのポンプで容易に制御する。
【解決手段】燃料電池システム1は、改質器8で液体燃料を用いて改質ガスを生成し、PEFCスタックで改質ガスを用いて発電するものであって、改質器8の改質触媒を加熱するバーナ9と、液体燃料が流通すると共に、液体燃料を改質器8に導入する改質器ラインL12と液体燃料をバーナ9に導入するバーナラインL12とに分岐されてなる燃料流通ラインL1と、液体燃料ラインL1において改質器ラインL12とバーナラインL12との分岐点Tの上流側に設けられ、液体燃料を下流側に圧送するポンプ13と、を備えている。バーナラインL12には、オリフィス43が設けられており、これにより、バーナ9に導入される液体燃料の流量が制限される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料を用いて発電を行なう燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムとして、改質器で液体燃料を用いて改質ガスを生成し、燃料電池で改質ガスを用いて発電するものであって、改質器の改質触媒を加熱する加熱器と、改質器及び加熱器に導入される液体燃料が流通する燃料流通ラインと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−240952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年の燃料電池システムにおいては、低コスト化及び燃料電池システムの簡易化のため、液体燃料を1つのポンプで改質器及び加熱器に供給できるものが望まれている。しかし、この場合、上述したような燃料電池システムでは、例えば家庭用の燃料電池システムのように改質器及び加熱器に導入される液体燃料の流量が少ないと、改質器及び加熱器に導入される液体燃料の各流量を容易に制御することが難しいという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、改質器に導入される液体燃料の流量と加熱器に導入される液体流量とを1つのポンプで容易に制御することができる燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る燃料電池システムは、改質器で液体燃料を用いて改質ガスを生成し、燃料電池で改質ガスを用いて発電する燃料電池システムであって、改質器の改質触媒を加熱する加熱器と、液体燃料が流通すると共に、液体燃料を改質器に導入する改質器ラインと液体燃料を加熱器に導入する加熱器ラインとに分岐されてなる燃料流通ラインと、液体燃料ラインにおいて改質器ラインと加熱器ラインとの分岐点の上流側に設けられ、液体燃料を下流側に圧送するポンプと、を備え、加熱器ラインには、絞り手段が設けられていることを特徴とする。
【0006】
この燃料電池システムでは、加熱器ラインに設けられた絞り手段により加熱器に導入される液体燃料の流量を制限される。よって、加熱器の要する液体燃料の流量が改質器の要する液体燃料の流量よりも少ないことから、液体燃料の流量が好適に制御されることとなる。従って、例えば改質器に導入される液体燃料の流量と加熱器に導入される液体燃料の流量との比が所定値となるように、ポンプで圧送される液体燃料の流量を容易に制御することが可能となる。すなわち、改質器に導入される液体燃料の流量と加熱器に導入される液体流量とを1つのポンプで容易に制御することが可能となる。なお、絞り手段としては、例えば、オリフィス、バルブ及び管径を小さくしたものが挙げられる。
【0007】
また、液体燃料ラインにおいて分岐点の上流側且つポンプの下流側には、逆止め弁が液体燃料の流通の抵抗となるように設けられていることが好ましい。この場合、逆止め弁を液体燃料の流通に対し抵抗を得る抵抗部材とすることができ、改質器及び加熱器に導入される液体燃料を調圧し、これらの各流量を低コストで容易に制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、改質器に導入される液体燃料の流量と加熱器に導入される液体流量とを1つのポンプで容易に制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。燃料電池システムは、液体燃料を用いて発電を行なうものであり、例えば家庭用の電力供給源として採用される。ここでは、液体燃料としては、入手が容易であり且つ独立して貯蔵可能であるという観点から灯油を用いている。
【0011】
図1に示すように、燃料電池システム1は、脱硫器2、燃料処理システム(FPS)3、固体高分子形燃料電池(PEFC)スタック(燃料電池)4、インバータ5及びこれらを収容する筐体6を備えている。
【0012】
脱硫器2は、外部から導入された液体燃料を脱硫するものである。この脱硫器2には、ヒータ(不図示)が設けられており、これにより、脱硫器2は、液体燃料を例えば130℃〜180℃まで加熱する。FPS3は、液体燃料を改質して改質ガスを生成するためのものであり、改質器8及びバーナ(加熱器)9を有している。改質器8は、脱硫された液体燃料と水蒸気(水)とを改質触媒で水蒸気改質反応させて、水素を含有する改質ガスを生成する。バーナ9は、改質器8の改質触媒を加熱することで、水蒸気改質反応に必要な熱量を供給する。
【0013】
PEFCスタック4は、複数の電池セル(不図示)が積み重ねられて構成されており、FPS3で得られた改質ガスを用いて発電してDC電流を出力する。電池セルは、アノードと、カソードと、アノード及びカソード間に配置された固体高分子である電解質とを有しており、アノードに改質ガスを導入させると共に、カソードに空気を導入させることで、各電池セルにおいて電気化学的な発電反応が行われることになる。
【0014】
インバータ5は、出力されたDC電流をAC電流に変換する。筐体6は、その内部に脱硫器2、FPS3、PEFCスタック4及びインバータ5をモジュール化して収容する。
【0015】
また、燃料電池システム1は、液体燃料を流通させ、液体燃料を改質器8及びバーナ9に導入する液体燃料ラインL1を備えている。この液体燃料ラインL1は、金属性の配管からなり、脱硫器2を通過すると共に、改質器8に接続され液体燃料を改質器8に導入する改質器ラインL11と、バーナ9に接続され液体燃料をバーナ9に導入するバーナラインL12とに分岐点Tを介して分岐されている。改質器ラインL11の改質器8付近には、水蒸気を改質器8に導入するための水ラインL2が連結されている。
【0016】
次に、液体燃料ラインL1について図2に基づいて詳細に説明する。図2は、図1の燃料電池システムの液体燃料ラインを示す概略構成図である。図2に示すように、液体燃料ラインL1における分岐点Tの上流側には、上流側から下流側に向かって、ポンプ13、流量計41及び逆止め弁32がこの順に設けられている。
【0017】
ポンプ13は、液体燃料を液体燃料ラインの下流側に圧送するものであり、ここでは、定流量ポンプが用いられている。このように定流量ポンプを採用することで、改質器8及びバーナ9に導入される液体燃料の流量を安定化することができる。このポンプ13には、制御装置42が接続されている。
【0018】
制御装置42は、例えばCPU、ROM、及びRAM等により構成されている。この制御装置42は、流量計41から出力された流量信号に基づいてポンプ13の駆動を制御することにより、ポンプ13で圧送する液体燃料の流量を制御する。
【0019】
流量計41は、通過する液体燃料の流量を検出し、流量信号を制御装置42に出力する。逆止め弁32は、スプリング式のものであり、その弁体がスプリングで液体燃料の流通方向と反対の方向に付勢されている。つまり、逆止め弁32は、液体燃料の流通の抵抗となるように設けられている。
【0020】
液体燃料ラインL1においてポンプ13の下流側(ここでは、流量計41と逆止め弁32との間)からポンプ13の上流側には、液体燃料の一部を戻すためのスピルバックラインL3が設けられている。スピルバックラインL3は、第1スピルバックラインL31と、この第1スピルバックラインL31に並列に設けられた第2スピルバックラインL32とを有し、第1スピルバックラインL31には安全弁21が設けられ、第2スピルバックラインL32には、オリフィス22が設けられている。つまり、スピルバックラインL3には、安全弁21及びオリフィス22が当該ラインL3に対して互いに並列に設けられている。
【0021】
ここで、液体燃料ラインL1にあっては、逆止め弁32の下流側の分岐点Tにより、上述したように、改質器ラインL11とバーナラインL12とに分岐されている。バーナラインL12には、複数(ここでは2つ)のオリフィス(絞り手段)43,43が設けられている。このオリフィス43は、その管径が例えば1mm以下とされており、ここでは、0.2mmとされている。
【0022】
このように構成された燃料電池システム1では、まず、例えば外部の燃料タンク内の液体燃料がポンプ(不図示)により筐体6内に導入される。続いて、導入された液体燃料がポンプ13で圧送されつつ、その流量が流量計41から出力された流量信号に基づいて制御装置42で制御される。そして、圧送された液体燃料が、逆止め弁32により調圧され、分岐点Tで改質器ラインL11とバーナラインL12とに分岐され、改質器8とバーナ9とのそれぞれに導入される。
【0023】
ここで、燃料電池システム1においては、上述したように、バーナラインL12に設けられたオリフィス43,43によりバーナ9に導入される液体燃料の流量が制限される。よって、バーナ9の要する液体燃料の流量が改質器8の要する液体燃料の流量よりも少ないことから、液体燃料の流量が好適に制御されることとなる。これにより、制御装置42によるポンプ13の駆動制御の容易化が可能となり、例えば改質器8に導入される液体燃料の流量とバーナ9に導入される液体燃料の流量との比が所定値となるように、ポンプ13で圧送される液体燃料の流量を容易に制御することができる。すなわち、改質器8に導入される液体燃料の流量とバーナ9に導入される液体流量とを1つのポンプ13で容易に制御することができる。
【0024】
また、上述したように、バーナラインL12に複数のオリフィス43,43が設けられているため、バーナ9に導入される液体燃料の圧力変動を抑制することができる。
【0025】
また、液体燃料ラインL1において分岐点Tの上流側且つポンプ13の下流側には、逆止め弁32が液体燃料の流通の抵抗となるように設けられている。そのため、逆止め弁32を液体燃料の流通に対し抵抗を得る抵抗部材とすることができ、改質器8及びバーナ9に導入される液体燃料を調圧し、これらの各流量を低コストで容易に制御することが可能となる。よって、改質器8に導入される液体燃料の流量とバーナ9に導入される液体流量とを1つのポンプ13で一層容易に制御することができる。
【0026】
また、上述したように、ポンプ13の下流側からポンプ13の上流側に液体燃料の一部を戻すスピルバックラインL3を備えており、スピルバックラインL3には、安全弁21及びオリフィス22が当該ラインL3に対して互いに並列に設けられている。よって、ポンプ13で圧送された液体燃料の一部が、安全弁21を介してポンプ13の上流側に戻されると共にオリフィス22を介してポンプ13の上流側に戻されるため、ポンプ13で圧送された液体燃料の圧力変動及び流量変動を抑制することができる。
【0027】
ところで、燃料電池システムが本実施形態のような家庭用のものである場合、改質器8及びバーナ9に導入される液体燃料の流量が極微量(例えば2cc/分)とされ、さらに、その許容される流量変動幅は極めて狭いもの(例えば±5%)となっている。そのため、家庭用の燃料電池システム1の液体燃料ラインL1には、極小な径の配管が特に望まれる。
【0028】
極小な径の配管を容易に成形できる観点から、配管は樹脂性のものが好ましいが、液体燃料への樹脂成分の溶出が懸念される。これに対して、金属性の配管を液体燃料ラインL1に用いると、樹脂性の配管の場合に比して、配管成分が液体燃料に溶出するのを防ぐことができる。しかし、極微量な流量を金属性の配管径の調整で制御することは、現実的には製造上困難である。そのため、従来の燃料電池システムにおいては、高価な高精度機器及び複雑な流量制御システムが要されていた。
【0029】
これに対し、燃料電池システム1では、上述したように、改質器8に導入される液体燃料の流量とバーナ9に導入される液体流量とを1つのポンプ13で容易に制御することができる。よって、配管の径が極小なものであっても、燃料電池システムの低コスト化及び流量制御システムの簡易化が可能となる。すなわち、燃料電池システム1は、家庭用の燃料電池システムの分野において、特に画期的なものであるといえる。
【0030】
なお、本実施形態では、絞り手段として、オリフィス43を設けたが、これに代えて、例えばバルブ(例えば、ニードルバルブ)を設けてもよく、また、一部の管径を小さくしたもの(径を小さくした配管)を設ける場合もある。
【0031】
本実施形態のように、絞り手段にオリフィス43を用いる場合には、配管の構成を簡易にすることができると共に低コスト化が可能となる。さらに、この場合、生産性や商品性を向上することができる。また、径の異なるオリフィスを複数重ね合わせることにより流量を所望に制御でき、圧力変動も容易に軽減することが可能となる。
【0032】
一方、絞り手段にバルブを用いた場合には、例えば配管にゴミ等の異物が詰まったときに、その異物を容易に除去することができ、メンテナンス性を向上することができる。また、この場合、バルブの開度を調整することで流量を所望に制御することが可能となる。一部の管径を小さくしたものを用いた場合には、流量制御が可能になるのに加え、その管長により圧力変動を軽減することができる。
【0033】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0034】
例えば、上記実施形態では、液体燃料として灯油を用いたが、ガソリン、ナフサ、軽油、メタノール、エタノール、DME(ジメチルエーテル)、バイオマスを利用したバイオ燃料を用いてもよい。なお、この場合には、脱硫器(脱硫方法)及び改質器(改質方法)は、用いる液体燃料の特性に応じたものとされる。
【0035】
また、上記実施形態では、改質器8において液体燃料を水蒸気改質したが、オートサーマル改質(ATR)してもよく、要は、改質器の改質触媒を加熱するために加熱器(加熱器ライン)が設けられていればよい。また、上記実施形態では、PEFCスタック4を備えた燃料電池システム1としたが、固体酸化物形燃料電池(SOFC)スタックを備えた燃料電池システムとしてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、ポンプ13に定流量ポンプを採用したが、例えば電磁ポンプ等の定流量ポンプ以外の種々のポンプを採用してもよい。なお、上記実施形態のようにポンプ13に定流量ポンプを採用すると、場合によっては、スピルバックラインL3を不要とすることもできる。また、上記実施形態では、バーナラインL12に2つのオリフィス43,43を設けたが、1つ若しくは3つ以上のオリフィスを設けてもよい。複数のオリフィスを設ける場合、バーナ9に導入される液体燃料の圧力変動を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
【図2】図1に示す燃料電池システムの液体燃料ラインを示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0038】
1…燃料電池システム、2…脱硫器、4…PEFCスタック(燃料電池)、8…改質器、9…バーナ(加熱器)、13…ポンプ、43…オリフィス(絞り手段)、32…逆止め弁、L1…液体燃料ライン、L11…改質器ライン、L…12バーナライン(加熱器ライン)、T…分岐点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質器で液体燃料を用いて改質ガスを生成し、燃料電池で前記改質ガスを用いて発電する燃料電池システムであって、
前記改質器の改質触媒を加熱する加熱器と、
前記液体燃料が流通すると共に、前記液体燃料を前記改質器に導入する改質器ラインと前記液体燃料を前記加熱器に導入する加熱器ラインとに分岐されてなる燃料流通ラインと、
前記液体燃料ラインにおいて前記改質器ラインと前記加熱器ラインとの分岐点の上流側に設けられ、前記液体燃料を下流側に圧送するポンプと、を備え、
前記加熱器ラインには、絞り手段が設けられていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記液体燃料ラインにおいて前記分岐点の上流側且つ前記ポンプの下流側には、逆止め弁が前記液体燃料の流通の抵抗となるように設けられていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−70626(P2009−70626A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235854(P2007−235854)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(500561595)荏原バラード株式会社 (68)
【Fターム(参考)】