説明

燃料電池システム

【課題】 燃料を無駄なく使用することができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】 燃料圧力Pが所定圧P1を下回った場合(時刻tA)、燃料電池3の放電量を減らすと共に(放電量a)、二次電池4の放電を開始し(放電量b)、燃料圧力Pが低下した状態で発電部の放電を減らし、燃料の消費が進んだ後に二次電池4の放電に切換えて使用機器に電力を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池(二次電池)及び燃料電池が外部負荷に接続される燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノート型パーソナルコンピュータ(PC)等の外部負荷の内部電源として、燃料電池と二次電池を組み合わせた電源システム、即ち、燃料電池システムが知られている。燃料電池は、発電部で燃料である水素と空気を電気化学反応させて電力を得るもので、燃料がカートリッジに収容されるものが知られている。
【0003】
燃料電池システムでは、燃料電池及び二次電池が外部負荷に装着され、カートリッジの燃料が消費されるまでは、燃料電池からの電力が外部負荷に供給される。燃料が消費された場合、二次電池からの電力が外部負荷に供給されて電力の供給が維持され、この間にカートリッジを交換して燃料電池からの電力の供給が行えるようにする。
【0004】
電池カートリッジの燃料の消費の状態は、発電部への水素の供給圧力(発電部の燃料圧力)を検出することで把握される。そして、電力を二次電池に切換える際に、燃料圧力が低下したことを検出して供給系統を燃料電池から二次電池に切換えることが従来から提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1で提案された技術では、発電部への燃料供給系統の圧力低下が検知された場合、燃料の残量が少なくなったと判断して燃料電池の運転を即座に停止し、電力の供給を二次電池に切換えるようになっている。このため、発電部が負圧になって水素濃度が欠乏することが防止され、燃料電池を不可逆的損傷から防止することができる。
【0006】
燃料電池システムの燃料電池は、外部負荷の要求電力が高い時には発電量が多くなって燃料消費量も多くなる。このため、燃料の残量が少ない状態や、燃料供給系統の一時的な能力低下により、燃料供給速度が遅くなると、燃料の圧力が一時的に低下して燃料電池の運転が強制的に停止して電力の供給が二次電池に切換えられてしまう場合がある。
【0007】
このため、カートリッジの内部に燃料が残っているにも拘らず、一旦燃料の供給圧力が低下すると、電力の供給が二次電池に切り換えられ、燃料がなくなったと判断され、カートリッジの交換が必要な状態になってしまう。従って、カートリッジの内部の燃料を完全に使い切ることが困難で、燃料の無駄が生じているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−288575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、燃料を無駄なく使用することができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の燃料電池システムの第1の態様は、燃料及び酸化剤の電気化学反応により発電を行い外部負荷に電力を供給する発電部と、前記発電部に前記燃料を供給する燃料供給部と、前記外部負荷に電力を供給する電池と、前記発電部及び前記電池に接続され、相互の放電状況を調整して前記外部負荷への電力の供給を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記発電部の内部の前記燃料の圧力の低下状況に応じて、前記発電部の放電を減らすと共に前記電池の放電を増加させて前記外部負荷に電力を供給することを特徴とする。
【0011】
かかる特徴によれば、発電部の内部の燃料の圧力の低下状況に応じて、発電部の放電を減らすと共に電池の放電を増加させて外部負荷に電力を供給するので、発電部の状況に応じて(例えば、燃料の供給圧力や残量に応じて)燃料電池を使用することができる。従って、燃料を無駄なく使用して電池への切り換えを行うことが可能になる。
【0012】
そして、本発明の燃料電池システムの第2の態様は、第1の態様の燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記外部負荷への総電力量が一定になるように前記発電部の放電及び前記電池の放電を制御することを特徴とする。
【0013】
かかる特徴によれば、外部負荷への総電力量を一定にしているので、燃料電池から電池への切り換えの過渡時であっても安定した電力を外部負荷に供給することができる。
【0014】
また、本発明の燃料電池システムの第3の態様は、第1の態様もしくは第2の態様の燃料電池システムにおいて、前記発電部の内部の前記燃料の圧力を検出し検出情報を前記制御部に出力する圧力検出手段を備え、前記制御部は、前記燃料供給部からの供給が可能な燃料の下限値に対応した前記発電部の内部の前記燃料の圧力を所定圧力として設定し、前記圧力が前記所定圧力を下回った際に前記発電部の放電を減らすと共に前記電池の放電を増加させることを特徴とする。
【0015】
かかる特徴によれば、発電部の燃料の圧力を検出することにより、外部負荷に供給される電力の低下状況を検出することができる。
【0016】
また、本発明の燃料電池システムの第4の態様は、第1の態様から第3の態様のいずれかの燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記発電部の放電を減らすと共に前記電池の放電を増加させた後に、前記発電部の放電を停止させて前記電池の放電により前記外部負荷に電力を供給することを特徴とする。
【0017】
かかる特徴によれば、発電部の放電を減らして燃料の消費が進んだ後に、電池の放電に切換えて電力を供給することができる。
【0018】
また、本発明の第5の態様は、第4の態様の燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記所定圧力よりも低い停止所定圧力を設定し、前記圧力が前記停止圧力を下回った際に前記発電部の放電を停止させることを特徴とする。
【0019】
かかる特徴によれば、発電部の圧力が停止所定圧力を下回った際に発電部の放電を停止させるので、燃料を確実に使い切ることが可能になる。
【0020】
また、本発明の第6の態様は、第5の態様の燃料電池システムにおいて、前記停止所定圧力は大気圧を超える圧力であることを特徴とする。
【0021】
かかる特徴によれば、発電部が大気圧以下になることがなく、外気からの空気の侵入による水素濃度の欠乏をなくすことができ、燃料電池の不可逆的劣化を防止することができる。
【0022】
また、本発明の燃料電池システムの第7の態様は、第1の態様から第6の態様のいずれかの燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記発電部の放電を減らすと共に前記電池の放電を増加さる際に、前記発電部の放電及び前記電池の放電を徐々に変更することを特徴とする。
【0023】
かかる態様によれば、発電部の放電及び電池の放電を徐々に変更することで、放電の切り換えを円滑に行うことができる。この場合、圧力検出手段の検出状況に基づいて目標の放電状況になるように変更を行うことが好ましい。
【0024】
また、本発明の燃料電池システムの第8の態様は、第7の態様の燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記発電部の放電及び前記電池の放電を徐々に変更している過程で、前記圧力が上昇した際にその時の前記発電部の放電及び前記電池の放電の状態を維持することを特徴とする。
【0025】
かかる特徴によれば、圧力が上昇して発電部の能力が相対的に回復した場合に発電部の放電を維持することで、燃料をより有効に使用することができる。
【0026】
また、本発明の燃料電池システムの第9の態様は、第4の態様から第6の態様の燃料電池システムにおいて、前記電池の容量を検出する容量検出手段を備え、前記制御部は、前記電池の放電を増加させている際に、前記容量検出手段で検出された前記電池の容量が所定容量を下回った場合、前記電池の放電の増加を停止させると共に前記発電部の放電を増加さることを特徴とする。
【0027】
かかる特徴によれば、電池の容量が所定容量を下回った場合に電池の放電の増加を停止させると共に発電部の放電を増加させるので、電池の残量を確保した状態で燃料を使い切ることができる。電池の容量の所定容量(残量)は、例えば、数分程度放電が可能な容量に設定され、燃料交換の時間が十分に確保できる時間とされている。
【発明の効果】
【0028】
本発明の燃料電池システムは、燃料を無駄なく使用して電池への切り換えを行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1には本発明の一実施例に係る燃料電池システムを使用機器に接続した状態の全体構成図である。
【図2】表示手段の説明図である。
【図3】燃料供給部の断面図である。
【図4】燃料圧力と放電量の関係を表すタイムチャートである。
【図5】燃料圧力と放電量の関係を表すタイムチャートである。
【図6】燃料圧力と放電量の関係を表すタイムチャートである。
【図7】他の実施例に係る燃料電池システムを使用機器に接続した状態の全体構成図である。
【図8】燃料圧力及び二次電池の容量と放電量の関係を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<実施例1>
図1から図4に基づいて本発明の一実施例に係る燃料電池システムを説明する。
【0031】
図1には本発明の一実施例に係る燃料電池システムを使用機器に接続した状態を説明する全体構成、図2には警告を発するための表示手段の説明、図3には燃料供給部の内部構成を説明する断面、図4には燃料圧力と発電部及び二次電池の放電量との関係の経時変化の説明を示してある。
【0032】
図1から図3に基づいて燃料電池システムの概略構成を説明する。
【0033】
図1に示すように、電力を使用するための使用機器1(例えば、携帯電話やノート型PC等)には制御部2を介して燃料電池3及び電池としての二次電池4が接続され、制御部2の制御により使用機器1には燃料電池3もしくは二次電池4から電力が供給される。制御部2には表示手段5が接続され、表示手段5は燃料電池3の燃料の交換時期に対する警報を表示するようになっている。
【0034】
本実施例の燃料電池システムでは、通常運転時には燃料電池3から電力の供給を実施し、燃料電池3からの電力供給量の低下に伴い、二次電池4から電力が供給されるようになっている。表示手段5は、二次電池4からの供給に切換えられた時に燃料の交換を使用者に促すために、音声や点灯手段により交換時期を表示するものである。
【0035】
即ち、図2に示すように、燃料電池3の本体部に警報を音声で知らせるスピーカー6が設けられる。また、燃料電池3の本体部に警報を点灯表示で知らせる点灯ランプ7a、7bが設けられている。例えば、点灯ランプ7aは燃料電池3の容量の状況を色違いの点灯(もしくは点灯・消灯)で表示し、点灯ランプ7bは二次電池4の容量の状況を色違いの点灯(もしくは点灯・消灯)で表示するようになっている。使用者は、スピーカー6からの音声、点灯ランプ7a、7bの状況により燃料電池3の燃料の交換時期を判断する。
【0036】
尚、表示手段5は、スピーカー6もしくは点灯ランプ7a、7bのいずれかを設けて一方の手段により燃料の交換時期を知らせることも可能である。また、一つの点灯ランプで点灯、点滅、消灯等の点灯状況を変えることで燃料の交換時期を知らせることも可能である。また、スピーカー6や点灯ランプ7a、7b以外の表示手段、例えば、画像表示手段等を用いることも可能である。
【0037】
図1に示すように、燃料電池3は発電部11と発電部11に燃料を供給する燃料供給部12とで構成されている。発電部11は、アノード極とカソード極に挟持された固体高分子膜からなり、アノード極とカソード極を外部回路で接続することで電気化学的な発電が可能となる。発電部11での発電に必要な燃料は燃料供給部12に貯蔵される。
【0038】
燃料としては、水素、メタノール、エタノール、ボロハイドライド水溶液等が挙げられる。燃料供給部12には燃料そのものが貯蔵されていても、燃料前駆体が貯蔵されていてもよい。そして、燃料供給部12の中、もしくは、燃料供給部12の外部に備えられた燃料改質部で改質した燃料が発電部11に供給される。燃料前駆体の例としては、水素化アルミニウムや水素化ホウ素ナトリウム等の水素化金属、アルミニウム等の金属、メタノール、水等が挙げられる。
【0039】
図3には燃料供給部12の内部構成を示してある。本実施例の燃料供給部12は液体燃料を発電部11に供給する形式の構成である。
【0040】
燃料供給部12の筐体13の内部には袋状の燃料収容部14が収容され、燃料収容部14には燃料15が充填されている。燃料収容部14は可撓性材料で形成され、燃料15の残量に従って体積が変化する。燃料収容部14を構成する材料としては、PE、PP、PVDC、PET、PVDF、PPE、シリコーンゴム等を適用することができる。
【0041】
尚、燃料収容部14は袋状のものに限らず、ベローズ、シリンジ等を適用することも可能である。
【0042】
燃料収容部14は圧縮ばね16及び押板17により加圧され、加圧荷重により燃料15が送り出される。押板17を介して圧縮ばね16の加圧荷重を加えているので、燃料15の残量に拘わらず全体に均一に安定して燃料を送り出すことができる。筐体13の端部には発電部11(図1参照)に接続される接続部18が設けられ、接続部18には弁体19が設けられている。弁体19は、接続部18が発電部11に接続された時にだけ開弁し、常時は閉弁状態とされている。
【0043】
尚、圧縮ばね16に代えて、圧縮気体、ゴム等の弾性体を用いることも可能である。
【0044】
図1に示すように、発電部11には内部の燃料の圧力(燃料圧力)を検出する圧力検出手段21が接続され、圧力検出手段21で検出された発電部11の内部の燃料圧力の情報は制御部2に出力される。制御部2は、発電部11で発生した電力を制御すると共に、二次電池4への充電を制御する。
【0045】
尚、圧力伝達部を介して発電部11の内部の燃料圧力を圧力検出手段21で検出することも可能である。
【0046】
発電部11で発生した電力が使用機器1に対して過剰であった場合、二次電池4に対して充電が実施される。また、ノイズのように一時的に使用機器1の負荷が上昇する場合、発電部11の応答速度が低く電力の供給が間に合わないため、二次電池4から電力を供給する。二次電池4としては、キャパシター、リチウムイオンバッテリー、ニッケル水素電池等を使用することができる。また、二次電池4に代えて電池として一次電池を用いることも可能である。
【0047】
上述した燃料電池システムの動作を説明する。
【0048】
燃料15の残量が十分にある場合、発電部11のみによって使用機器1に電力を供給する(通常運転)。ノイズのように使用機器1の要求電力が一時的に上昇する場合、燃料電池3の電気化学反応では応答速度が遅く対応できないため、二次電池4に蓄積されている電力で不足分を補う。
【0049】
燃料15の残量が低下した場合、圧力検出手段21で検出された発電部11の燃料圧力Pに応じて発電部11の放電と二次電池4の放電を併用して使用機器1に電力を供給する。制御部2には燃料供給部12からの供給が可能な燃料の下限値に対応した燃料圧力が所定圧P1として設定され、また、所定圧P1よりも低い値の停止所定圧力がP2として設定されている。
【0050】
そして、制御部2の制御により、燃料圧力Pが所定圧P1を下回った際に、発電部11の放電を減らすと共に二次電池の放電を増加させるようになっている。また、燃料圧力Pが停止所定圧力P2を下回った際に、発電部11の放電を停止させるようになっている。即ち、図4に示した状況で電力の供給が制御される。
【0051】
図4に示すように、通常運転時は燃料電池3の放電(放電量c)により使用機器1に電力が供給される。圧力検出手段21の検出情報が読み込まれ、圧力検出手段21で検出された発電部11の燃料圧力Pが所定圧P1を下回っているか否かが判断される。燃料圧力Pが所定圧P1を下回った場合(時刻tA)、燃料電池3の放電量を減らすと共に(放電量a)、二次電池4の放電を開始(増加)する(放電量b)。
【0052】
燃料電池3の放電量aと二次電池4の放電量bの合計の放電量は、通常運転時の燃料電池3の放電量cと同じにされている。これにより、発電部11の燃料圧力Pが低下した状態であっても使用機器1に供給される総電力量が一定にされ、燃料電池3から二次電池4への電力の切り換えの過渡時であっても安定した電力を使用機器1に供給することができる。
【0053】
時刻tA以降の運転時には、燃料圧力Pが停止所定圧力P2を下回っているか否かが判断され、停止所定圧力P2を下回っていない場合(時刻tBまでの間)、放電量aの燃料電池3と放電量bの二次電池4により使用機器1に電力が供給される。燃料圧力Pが停止所定圧力P2を下回った場合(時刻tB)、燃料電池3の放電量をゼロにする(燃料電池3を停止する)と共に、二次電池4の放電量を増加して放電量cとする。
【0054】
即ち、使用機器1への電力の供給を二次電池4のみで行い、二次電池4で電力を供給している間に(時刻tCまでの間に)、燃料の交換を行うことができる。
【0055】
このため、燃料の残量が少なくなったと予想される状態である燃料圧力Pが低下した状態で、発電部11の放電を減らして燃料の消費が進んだ後に、二次電池4の放電に切換えて使用機器1に電力を供給することができる。従って、燃料供給部12の燃料を略使い切ることができ、燃料を無駄なく使用して二次電池4への切り換えを行うことが可能になる。
【0056】
所定圧P1と停止所定圧力P2の関係を説明する。
【0057】
所定圧P1は、燃料供給部12からの供給が可能な燃料の下限値に対応した燃料圧力Pminが所定圧P1として設定されている。所定圧P1は燃料圧力Pminよりも低い値に設定することも可能であり、燃料圧力Pminは所定圧P1以上であればよい。また、停止所定圧力P2は大気圧P0以上の圧力値に設定されている。即ち、
燃料圧力Pmin≧所定圧P1>停止所定圧力P2≧大気圧P0
とされている。
【0058】
このため、発電部11に対する燃料の供給能力が確実に低下してから発電部11による発電を停止することができる。また、発電部11の内部が大気圧以下になると外気からの空気進入により、水素が酸素と直接反応して水素濃度が欠乏してしまう可能性が高いが、停止所定圧力P2を大気圧P0以上とすることで、燃料電池3の不可逆的な劣化を確実に防止しながら、燃料を有効に電気エネルギーに変換することができる。
【0059】
図5、図6に基づいて燃料圧力と放電量の関係の他の実施例を説明する。
【0060】
図5に示すように、通常運転時は燃料電池3の放電(放電量c)により使用機器1に電力が供給される。圧力検出手段21の検出情報が読み込まれ、圧力検出手段21で検出された発電部11の燃料圧力Pが所定圧P1を下回っているか否かが判断される。燃料圧力Pが所定圧P1を下回った場合(時刻tA)、燃料電池3の放電量を減らすと共に(放電量a)、二次電池4の放電を開始(増加)する(放電量b)。
【0061】
時刻tA以降の運転時には、燃料圧力Pが停止所定圧力P2を下回っているか否かが判断され、停止所定圧力P2を下回っていない場合(時刻tBまでの間)、放電量aの燃料電池3と放電量bの二次電池4により使用機器1に電力が供給される。この状態で燃料圧力Pが所定圧P1以上になった場合(時刻tB)、燃料電池3の放電量を増加して放電量cとし、二次電池4の放電量をゼロにする(二次電池4を停止する)。
【0062】
この状態は、使用機器1の負荷が一時的に非常に大きくなった場合や、何らかの不具合により(例えば、圧縮ばね16、押板17が筐体13の一部に干渉した場合)、発電部11の燃料の圧力が低下した場合が考えられる。時刻tA以降に一時的に発電部11の放電量を減らすことにより、少ない燃料供給量で圧力低下の可能性を低くする。
【0063】
不具合が解消されて、燃料圧力Pが所定圧P1以上になった場合(時刻tB)、発電部11への燃料供給能力が回復したと判断し、通常運転に移行することができる。このため、機械的な原因により燃料の供給能力が一時的に低下した場合でも、燃料の供給を再開して燃料を無駄なく使用することができる。
【0064】
図6に示すように、通常運転時は燃料電池3の放電(放電量c)により使用機器1に電力が供給される。圧力検出手段21の検出情報が読み込まれ、圧力検出手段21で検出された発電部11の燃料圧力Pが所定圧P1を下回っているか否かが判断される。燃料圧力Pが所定圧P1を下回った場合(時刻tA)、燃料電池3の放電量を減らすと共に(放電量a)、二次電池4の放電を開始(増加)する(放電量b)。
【0065】
この時、燃料電池3の放電量を徐々に放電量aに向けて減少させると共に、二次電池4の放電を徐々に放電量bに向けて増加させる。燃料電池3の放電量の単位時間当たりの減少割合と、二次電池4の放電量の単位時間当たりの増加割合は等しい割合に設定されて、目標の放電量になるようにフィードバック制御される。このため、燃料電池3と二次電池4の放電の切り換えを円滑に行うことができる。
【0066】
時刻tA以降の運転時には、燃料圧力Pが所定圧P1と停止所定圧力P2の間で常時検出され、燃料圧力Pが上昇した時に(時刻ta)その時の発電部11の放電量a及び二次電池4の放電量bの状態を維持する。これにより、燃料圧力Pが上昇して発電部11の能力が相対的に回復した場合に発電部11の放電を維持することで、燃料をより有効に使用することができる。
【0067】
例えば、前述したように、燃料供給量が何らかの理由により十分でなく、発電部11の発電量より低下し、発電部11の内部の燃料圧力Pが低下している場合、燃料圧力Pは徐々に低下して所定圧P1に達する。この時、制御部2は発電部11の発電量を徐々に低下させ、それに合わせて二次電池4の放電量を増加させる。この時、発電部11は通常運転をするのに必要な燃料の供給量が得られていないので、燃料圧力Pは低下の傾向を保ったままである。
【0068】
発電部11の発電量が徐々に低下していくことにより、燃料供給量に見合った発電量になった時に燃料圧力Pは平行を保つ。その後、更に発電量が減少すると、燃料の供給量は発電量に対して多くなるので、燃料圧力Pは上昇し始める。圧力検出手段21により燃料圧力Pの上昇が検出されると、発電部11の発電量をその状態で保つ。
【0069】
これにより、二次電池4の負荷を急激に増大させることがないので、燃料をより有効に使用して二次電池4の劣化を防ぐことが可能になる。
【0070】
図7、図8に基づいて本発明の他の実施例に係る燃料電池システムを説明する。
【0071】
図7には本発明の他の実施例に係る燃料電池システムを使用機器に接続した状態を説明する全体構成、図8には燃料圧力及び二次電池の容量と発電部及び二次電池の放電量との関係の経時変化の説明を示してある。
【0072】
図7に示す燃料電池システムは、図1に示した燃料電池システムに対し、二次電池4の容量を検出する容量検出手段31が備えられている。その他の構成は図1に示した燃料電池システムと同一である。容量検出手段31の検出情報は制御部2に送られる。二次電池4の放電を増加させている際に、容量検出手段31で検出された二次電池4の容量が所定容量Qを下回った場合、二次電池4の放電の増加を停止させると共に、発電部11の放電を増加させるようになっている。
【0073】
これにより、二次電池4の残量を確保した状態で燃料を使い切ることができる。二次電池4の容量の所定容量Q(残量)は、例えば、数分程度放電が可能な容量に設定され、燃料電池3の燃料を交換する時間が十分に確保できる時間とされている。このため、使用機器1への電力の供給を確実にした状態で燃料を無駄なく消費することができる。
【0074】
図8に示すように、通常運転時は燃料電池3の放電(放電量c)により使用機器1に電力が供給される。圧力検出手段21の検出情報が読み込まれ、圧力検出手段21で検出された発電部11の燃料圧力Pが所定圧P1を下回っているか否かが判断される。燃料圧力Pが所定圧P1を下回った場合(時刻tA)、燃料電池3の放電量を減らすと共に(放電量a)、二次電池4の放電を開始(増加)する(放電量b)。
【0075】
同時に、容量検出手段31の検出情報が読み込まれ、容量検出手段31で検出された二次電池4の容量が所定容量Qを下回っているか否かが判断される。二次電池4の容量が所定容量Qを下回った場合(時刻tV)、二次電池4の放電を停止させると共に、燃料電池3の放電量を通常運転時の放電量に(放電量c)に増加させる。この場合、二次電池4の放電量bを維持することも可能である。
【0076】
燃料圧力Pが停止所定圧力P2を下回っているか否かが判断され、停止所定圧力P2を下回っていない場合(時刻tBまでの間)、放電量cの燃料電池3により使用機器1に電力が供給される。燃料圧力Pが停止所定圧力P2を下回った場合(時刻tB)、燃料電池3の放電量をゼロにする(燃料電池3を停止する)と共に、二次電池4の放電量を増加して放電量cとする。
【0077】
時刻tBからは二次電池4の放電により使用機器1に電力の供給が行われ、燃料電池3の燃料を交換する時間が十分に確保できる数分の間(時刻tCまでの間)、使用機器1への電力の供給が維持される。
【0078】
このため、燃料の残量が少なくなったと予想される状態である燃料圧力Pが低下した状態で、発電部11の放電を減らして燃料の消費が進んだ後に、二次電池4の放電に切換えて使用機器1に電力を供給することができる。従って、燃料供給部12の燃料を略使い切ることができ、燃料を無駄なく使用して二次電池4への切り換えを行うことが可能になる。
【0079】
従って、燃料の交換のための時間を確保して使用機器1への電力の供給を確実にした状態で燃料を無駄なく消費することができる。
【0080】
上述した燃料電池システムは、発電部11の燃料圧力が変動して二次電池4の放電が開始されても、燃料を使用できる範囲で燃料電池3の放電を維持するので、燃料供給部12の燃料を無駄なく使い切ることができる。このため、燃料を無駄にすることなく、しかも、使用機器1に対し安定した状態で電力の供給を維持して燃料の交換(カートリッジの交換)が可能になる。
【0081】
尚、上述した実施例では、発電部11の燃料圧力に基づいて使用機器1の電力の低下を評価しているが、電流・電圧等を検出して使用機器1の電力の低下を評価することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、燃料電池システムの産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 使用機器
2 制御部
3 燃料電池
4 二次電池
5 表示手段
6 スピーカー
7 点灯部
11 発電部
12 燃料供給部
13 筐体
14 燃料収容部
15 燃料
16 圧縮ばね
17 押板
18 接続部
19 弁体
21 圧力検出手段
31 容量検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料及び酸化剤の電気化学反応により発電を行い外部負荷に電力を供給する発電部と、
前記発電部に前記燃料を供給する燃料供給部と、
前記外部負荷に電力を供給する電池と、
前記発電部及び前記電池に接続され、相互の放電状況を調整して前記外部負荷への電力の供給を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記発電部の内部の前記燃料の圧力の低下状況に応じて、前記発電部の放電を減らすと共に前記電池の放電を増加させて前記外部負荷に電力を供給する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記制御部は、前記外部負荷への総電力量が一定になるように前記発電部の放電及び前記電池の放電を制御する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記発電部の内部の前記燃料の圧力を検出し検出情報を前記制御部に出力する圧力検出手段を備え、
前記制御部は、
前記燃料供給部からの供給が可能な燃料の下限値に対応した前記発電部の内部の前記燃料の圧力を所定圧力として設定し、
前記圧力が前記所定圧力を下回った際に前記発電部の放電を減らすと共に前記電池の放電を増加させる
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池システムにおいて、
前記制御部は、前記発電部の放電を減らすと共に前記電池の放電を増加させた後に、前記発電部の放電を停止させて前記電池の放電により前記外部負荷に電力を供給する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池システムにおいて、
前記制御部は、前記所定圧力よりも低い停止所定圧力を設定し、前記圧力が前記停止圧力を下回った際に前記発電部の放電を停止させる
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料電池システムにおいて、
前記停止所定圧力は大気圧を超える圧力である
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の燃料電池システムにおいて、
前記制御部は、前記発電部の放電を減らすと共に前記電池の放電を増加さる際に、前記発電部の放電及び前記電池の放電を徐々に変更する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池システムにおいて、
前記制御部は、前記発電部の放電及び前記電池の放電を徐々に変更している過程で、前記圧力が上昇した際にその時の前記発電部の放電及び前記電池の放電の状態を維持する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項9】
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の燃料電池システムにおいて、
前記電池の容量を検出する容量検出手段を備え、
前記制御部は、
前記電池の放電を増加させている際に、前記容量検出手段で検出された前記電池の容量が所定容量を下回った場合、前記電池の放電の増加を停止させると共に前記発電部の放電を増加させる
ことを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−186669(P2010−186669A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30801(P2009−30801)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】