説明

燃料電池システム

【課題】小型な構成で確実に騒音を低減できかつ耐久性を向上できる、燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム10は、セルスタック14およびエアポンプユニット28を含む。エアポンプユニット28は、セルスタック14に空気を供給するためのエアポンプ34、エアポンプ34の電動モータ46に設けられる略円筒状の流路形成部材36を含む。流路形成部材36は、第1リング状部材48、第2リング状部材50a,50bおよび第3リング状部材52a,52bを一体的に設けることによって得られる。流路形成部材36の内周側には、屈曲した流路F1,F2が設けられる。エアポンプ34のポンプ部44に吸引される空気は、電動モータ46の本体46aの外周面に沿って流路形成部材36の流路F1,F2を流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は燃料電池システムに関し、より特定的には、燃料電池に空気を供給する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧縮部と電動モータとを有する空気ブロアを防音箱に収容する燃料電池装置が開示されている。特許文献1の燃料電池装置では、電動モータを冷却するために、圧縮部の駆動に伴って防音箱に吸入された空気を受けるように空気ブロアが防音箱に配置されている。また、圧縮部が加圧した空気を吐出する際には、当該空気の圧力変化に伴って騒音が生じる。つまり、圧縮部の駆動に伴って騒音が生じる。特許文献1の燃料電池装置では、圧縮部の駆動に伴う騒音が防音箱の外部に漏れることを抑制するために、防音箱における空気の流路が曲げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−84564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の燃料電池装置では、燃料電池の出力を大きくするために燃料電池への空気供給量を大きくすると、以下のような問題が生じることがわかった。
【0005】
燃料電池への空気供給量を大きくすると、圧縮部の駆動に伴う騒音も大きくなる。特許文献1の技術では、大きな騒音に対して十分な消音効果を得るためには大きな防音箱を用いる必要があり、装置が大きくなってしまう。
【0006】
また、燃料電池への空気供給量を大きくすると、電動モータの発熱量が大きくなる。このために特許文献1の技術のように単に防音箱に電動モータを配置しただけでは、電動モータを十分に冷却できないおそれがあった。圧縮部の駆動を停止させると電動モータを冷却する空気の流れも停止するので、圧縮部の駆動時に電動モータを十分に冷却できていなければ圧縮部の駆動停止直後に電動モータの温度が著しく上昇するおそれがあった。ひいては、電動モータの耐久性を低下させるおそれがあった。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、小型な構成で確実に騒音を低減できかつ耐久性を向上できる、燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、燃料電池と、燃料電池に空気を供給するための供給機構と、供給機構を駆動するためのモータと、モータの表面に設けられ、供給機構に与えられるべき空気が流れる流路を形成する流路形成部材とを備える、燃料電池システムが提供される。
【0009】
この発明では、供給機構の駆動に伴う騒音が流路形成部材に形成される流路を進むことによって当該流路で反射して下流側から上流側に伝播しにくくなる。つまり、供給機構の駆動に伴う騒音を流路形成部材の流路で減衰させることができる。これによって、騒音が流路形成部材の上流側に漏れることを抑制できる。このように騒音を流路形成部材の流路で減衰させることによって、大きな防音箱等を準備する必要がなく、小型な構成で確実に騒音を低減できる。また、供給機構に与えられるべき空気が流路形成部材の流路を流れることによって、当該空気および流路形成部材にモータの熱を効率よく吸収させることができ、モータを効率よく冷却できる。これによって供給機構の駆動停止直後であっても、モータの温度が上昇し過ぎることを防止できる。空気の流通によって十分に冷却された流路形成部材がモータに接しているので、供給機構の駆動停止後には、特に流路形成部材によってモータから熱を奪うことができ、モータの温度が上昇し過ぎることを防止できる。このようにモータを効率よく冷却できるので、モータひいては当該燃料電池システムの耐久性を向上できる。さらに、モータの熱を十分に吸収した空気を燃料電池に供給できるので、燃料電池に効率よく発電させることができる。
【0010】
好ましくは、流路形成部材の流路は屈曲した形状を有する。この場合、供給機構の駆動に伴う騒音が下流側により反射しやすくなり、騒音をより低減できる。
【0011】
また好ましくは、供給機構に与えられるべき全ての空気が流路を流れるように流路形成部材と供給機構とが接続部材によって接続される。この場合、流路形成部材の流路により多くの空気を流すことができ、モータをより効率よく冷却できる。また、供給機構の駆動に伴う騒音を効果的に流路形成部材の流路に与えることができ、騒音をより低減できる。
【0012】
さらに好ましくは、流路の下流側からの音を反射させるために流路に反射部材が設けられる。この場合、供給機構の駆動に伴う下流側からの騒音が流路形成部材の流路に設けられる反射部材によっても反射されるので、騒音が上流側により伝播しにくくなり、騒音をより低減できる。
【0013】
好ましくは、反射部材は、流路形成部材の流路の下流側に向かって流路に突出するように設けられる。この場合、上流側から下流側へと円滑に空気を流通させることができるとともに、下流側からの騒音をより反射させやすくなる。したがって、燃料電池への空気供給を円滑に行うことができるとともに、騒音をより一層低減できる。
【0014】
また好ましくは、流路に吸音部材がさらに設けられる。この場合、供給機構の駆動に伴う下流側からの騒音を流路形成部材の流路で減衰させつつ流路に設けられた吸音部材によって吸収することもできるので、騒音が上流側により伝播しにくくなり、騒音をより低減できる。
【0015】
さらに好ましくは、吸音部材は、貫通孔を有する板状部材、繊維状部材および金属発泡体の少なくともいずれか1つを含む。このような吸音部材によれば、簡単にかつ効率的に騒音を吸収できる。
【0016】
好ましくは、流路形成部材が収容部材に収容される。この場合、騒音をより低減できる。
【0017】
また好ましくは、収容部材は、流路形成部材を収容する第1収容部材と、第1収容部材を収容する第2収容部材とを含む。このように流路形成部材を収容する第1収容部材と第1収容部材を収容する第2収容部材との二重構造を採用することによって、騒音をより効果的に低減できる。
【0018】
さらに好ましくは、第1収容部材と前記第2収容部材との間に吸音部材が設けられる。この場合、騒音をより一層低減できる。
【0019】
この発明の上述の目的およびその他の目的、特徴、局面および利点は、添付図面に関連して行われる以下のこの発明の実施形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、小型な構成で確実に騒音を低減できかつ耐久性を向上できる燃料電池システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施形態の燃料電池システムの主な構成を示すシステム図である。
【図2】エアポンプユニットの横断面を示す図解図である。
【図3】図2のY−Y断面を示す図解図である。
【図4】図2のZ−Z断面を示す図解図である。
【図5】エアポンプおよび流路形成部材を右上前方からみた斜視図である。
【図6】ポンプ部内の構成を示す図解図である。
【図7】流路形成部材を右上前方からみた分解斜視図である。
【図8】流路形成部材を右上後方からみた分解斜視図である。
【図9】第2リング状部材の正面図である。
【図10】第3リング状部材の正面図である。
【図11】流路形成部材に形成される流路の形状を示す図解図である。
【図12】電動モータを前方下側からみた場合の流路の形状を示す図解図である。
【図13】流路形成部材の流路における騒音の進み方を示す図解図である。
【図14】反射部材を設けた場合の流路形成部材の流路における騒音の進み方を示す図解図である。
【図15】第1リング状部材、第2リング状部材および第3リング状部材の他の例を示す斜視図である。
【図16】図15に示す第2リング状部材の正面図である。
【図17】流路形成部材の変形例を右上前方からみた分解斜視図である。
【図18】流路形成部材の変形例を右上後方からみた分解斜視図である。
【図19】図17および図18に示す第2リング状部材の正面図である。
【図20】図17および図18に示す第3リング状部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
図1は、この発明の一実施形態の燃料電池システム10の主な構成を示すシステム図である。燃料電池システム10は、メタノール(メタノール水溶液)を改質せずにダイレクトに電気エネルギの生成(発電)に利用する直接メタノール型燃料電池システムである。燃料電池システム10は、可搬型に構成され、たとえば屋外コンサートの会場で音響機器等の電子機器に電力を供給するために用いられる。燃料電池システム10の発電による最大出力は1kW程度である。
【0023】
図1に示すように、燃料電池システム10は筐体12を含む。筐体12は、燃料電池セルスタック(以下、単にセルスタックという)14、水溶液タンク16および水タンク18を収容している。
【0024】
セルスタック14は、メタノールに基づく水素イオンと酸素(酸化剤)との電気化学反応によって発電できる複数の燃料電池(燃料電池セル)20を含む。複数の燃料電池20は積層され、隣り合う燃料電池20間にはセパレータ22が挟まれている。各燃料電池20は、たとえば固体高分子膜からなる電解質膜20aと、電解質膜20aを挟んで互いに対向するアノード(燃料極)20bおよびカソード(空気極)20cとを含む。
【0025】
水溶液タンク16は、セルスタック14の電気化学反応に適した濃度(たとえば、メタノールを約3wt%含む)のメタノール水溶液を収容している。水溶液タンク16は、パイプP1を介してセルスタック14のアノード入口I1に接続されている。パイプP1には、水溶液タンク16側から順に水溶液ポンプ24および水溶液フィルタ26が介挿されている。また、セルスタック14のアノード出口I2には、パイプP2を介して水溶液タンク16が接続されている。水溶液ポンプ24を駆動させることによって、水溶液タンク16内のメタノール水溶液がセルスタック14に供給されるとともにセルスタック14からのメタノール水溶液が水溶液タンク16に戻る。
上述したパイプP1〜P2は主として燃料の流路となる。
【0026】
セルスタック14のカソード入口I3には、パイプP3を介してエアポンプユニット28が接続されている。エアポンプユニット28には、パイプP4を介してエアフィルタ30が接続されている。エアポンプユニット28のエアポンプ34(後述)を駆動させることによって、酸素(酸化剤)を含む外部の空気がセルスタック14に供給される。
【0027】
セルスタック14のカソード出口I4には、パイプP5を介して水タンク18が接続されている。水タンク18は、水溶液タンク16に供給すべき水を収容している。水タンク18には、カソード出口I4からの排気ガスを外部に排出するためのパイプ(排気管)P6が接続されている。
上述したパイプP3〜P6は主として酸化剤の流路となる。
【0028】
水タンク18は、パイプP7を介して水溶液タンク16に接続されている。パイプP7には水ポンプ32が介挿されている。水ポンプ32を駆動させることによって、水タンク18内の水が水溶液タンク16に供給される。
上述したパイプP7は水の流路となる。
【0029】
このように構成される燃料電池システム10において注目すべきは、エアポンプユニット28である。ついで、エアポンプユニット28について詳しく説明する。
図2はエアポンプユニット28の横断面(図3のX−X断面)を示す図解図である。図3は図2のY−Y断面を示す図解図である。図4は図2のZ−Z断面を示す図解図である。
【0030】
図2〜図4に示すように、エアポンプユニット28は、エアポンプ34、エアポンプ34に設けられる流路形成部材36、エアポンプ34および流路形成部材36を収容する収容部材38、収容部材38を収容する収容部材40、ならびに収容部材38と40との間に設けられる繊維状部材42を含む。
【0031】
図5はエアポンプ34および流路形成部材36を右上前方からみた斜視図である。図5に示すように、エアポンプ34は、セルスタック14に空気を供給するためのポンプ部44、およびポンプ部44を駆動するための電動モータ46を含む。
【0032】
図6はポンプ部44内の構成を示す図解図である。図6に示すように、ポンプ部44は、その内部に設けられる略まゆ状の回転子44a,44bを有するルーツブロア型に構成されている。回転子44a,44bは、電動モータ46によって駆動され、互いに噛み合うような位置関係を保ちつつも互いに接触することがないように回転する。このような回転子44a,44bの回転によって、加圧された空気がポンプ部44から吐出される。ポンプ部44からの空気の吐出圧力は20kPa程度である。また、ポンプ部44の最大出力(最大吐出量)は、150L/min程度であり、通常運転時におけるポンプ部44の出力は80L/min程度である。
【0033】
図5に戻って、ポンプ部44にはパイプP3が接続されており、ポンプ部44から吐出される(送り出される)空気がセルスタック14に与えられる。電動モータ46は、その内部に固定子や回転子等を有する本体46aを含む。本体46aは円柱状に形成されており、本体46aの外周面の70%程度は略円筒状の流路形成部材36によって覆われている。流路形成部材36は、第1リング状部材48、第2リング状部材50a,50bおよび第3リング状部材52a,52bを含む。
【0034】
図7は流路形成部材36を右上前方からみた分解斜視図である。図8は流路形成部材36を右上後方からみた分解斜視図である。また、図9は第2リング状部材50a,50bの正面図であり、図10は第3リング状部材52a,52bの正面図である。
【0035】
図7および図8に示すように、これらのリング状部材は、前方側から第1リング状部材48、第2リング状部材50a、第3リング状部材52a、第2リング状部材50bおよび第3リング状部材52bの順に配置されている。
【0036】
第1リング状部材48は、空隙G1が設けられた略C字の板状(Cリング状)に形成されている。第1リング状部材48において空隙G1の下側の位置には、矢印D1方向(流路形成部材36の軸方向)に延びる貫通孔54aが設けられている。また、第1リング状部材48において空隙G1の上側の位置には、矢印D1方向に延びる貫通孔54bが設けられている。
【0037】
図7〜図9に示すように、第2リング状部材50aは本体56を含む。本体56は、空隙G2が設けられた略C字の枠状に形成されている。本体56の外周面は、第2リング状部材50aを第1リング状部材48に繋げたときに第1リング状部材48の外周面と面一になるように形成されている。本体56の内周面には、空隙G2に対向する位置に矢印D1方向に延びる突起58が設けられている。図9に示すように、本体56の内周面には、空隙G2の下側から突起58の下側に向けて突起58に繋がることのないように流路形成部材36の周方向(矢印D2方向)に延びるリブ60aが設けられている。また、本体56の内周面には、空隙G2の上側から突起58の上側に向けて突起58に繋がることのないように矢印D2方向に延びるリブ60bが設けられている。図8に示すように、リブ60a,60bはそれぞれ、本体56の内周面において後寄りに設けられており、本体56の後端面と面一になっている。第2リング状部材50aは、このような突起58とリブ60a,60bとが設けられていることによって、突起58の下側と上側とに出口62aと62bとを有している。第2リング状部材50aと50bとは同様に構成されているので、第2リング状部材50bの説明は省略する。
【0038】
図7、図8および図10に示すように、第3リング状部材52aは本体64を含む。本体64は、第2リング状部材50aの本体56と同形状かつ同寸法に形成されている。本体64の内周面には、第2リング状部材50aの突起58と同様に、空隙G3に対向する位置に突起66が設けられている。図10に示すように、本体64の内周面には、空隙G3の下側から突起66の下側に向けて矢印D2方向延びるリブ68a、および空隙G3の上側から突起66の上側に向けて矢印D2方向に延びるリブ68bが設けられている。リブ68a,68bは突起66に繋がっている。リブ68aにおいて空隙G3の下側の位置には、第1リング状部材48の貫通孔54aと同様の貫通孔70aが設けられている。また、リブ68bにおいて空隙G3の上側の位置には、第1リング状部材48の貫通孔54bと同様の貫通孔70bが設けられている。第3リング状部材52aは、出口62a,62bに代えて貫通孔70a,70bが設けられていることを除けば第2リング状部材50aと同様に構成されている。第3リング状部材52aと52bとは同様に構成されているので、第3リング状部材52bの説明は省略する。
【0039】
図5に戻って、このような第1リング状部材48、第2リング状部材50a,50bおよび第3リング状部材52a,52bを、それぞれの外周面が面一になるように相互に固定することによって、側壁の一部を矢印D1方向に切り欠いた略円筒状の流路形成部材36が得られる。第1リング状部材48、第2リング状部材50a,50bおよび第3リング状部材52a,52bの一部は、流路形成部材36が電動モータ46の本体46aに取り付けられることによって本体46aの外周面に接する。詳しくは、図7および図8を参照して、第1リング状部材48においては、その内周面が本体46aの外周面に接する。第2リング状部材50a,50bにおいては、本体56の両端部、突起58における本体56とは反対側の面、リブ60a,60bにおける本体56とは反対側の面がそれぞれ本体46aの外周面に接する。第3リング状部材52a,52bにおいても、第2リング状部材50a,50bと同様の部分が本体46aの外周面に接する。第1リング状部材48、第2リング状部材50a,50bおよび第3リング状部材52a,52bの材質、ひいては流路形成部材36の材質としては、たとえばアルミニウムや銅等が用いられる。
【0040】
流路形成部材36の第3リング状部材52bにおいて、貫通孔70aには両端開口の円筒状に形成される金属パイプ72aの一方端が嵌入されており、貫通孔70bには両端開口の円筒状に形成される金属パイプ72bの一方端が嵌入されている。金属パイプ72a,72bの他方端は、ポンプ部44に接続されている。このように流路形成部材36とポンプ部44とを金属パイプ72a,72bで接続することによって、流路形成部材36の流路F1,F2(後述)とポンプ部44内の空間とが金属パイプ72a,72b内の外部に開放されていない空間を介して繋げられる。金属パイプ72a,72bの材質としては、たとえばアルミニウムやステンレス等が用いられる。
【0041】
図2〜図4に戻って、収容部材38,40はそれぞれ、略直方体の箱状に形成されている。収容部材38,40の材質としては、たとえばアルミニウムやステンレス等が用いられる。図2および図3に示すように、エアポンプ34は4つのボルト74によって収容部材38の底面に固定されている。収容部材38,40の上面には、パイプP4が嵌通されている。また、図3および図4に示すように、収容部材38,40の側面には、ポンプ部44に接続されるパイプP3が嵌通されている。繊維状部材42は、たとえばグラスウールやスチールウール等からなり、収容部材38と40との間に詰められている。
【0042】
図11は、流路形成部材36によって形成される流路F1,F2の形状を示す図解図である。図11に示すように、このようなエアポンプユニット28において、電動モータ46に取り付けられた流路形成部材36の内周側には、電動モータ46の本体46aを挟む流路F1とF2とがそれぞれ本体46aの下側と上側とに外部に露出することのないように形成される。ポンプ部44の駆動に伴ってポンプ部44に吸引される(与えられるべき)空気は、流路F1,F2および金属パイプ72a,72bを介してポンプ部44に流入する。
【0043】
流路F1,F2はそれぞれ、矢印D1方向から矢印D2方向への直角な屈曲と、矢印D2方向から矢印D1方向への直角な屈曲とを繰り返して蛇行するように延びている。つまり、流路F1,F2は、直角な屈曲を繰り返すサーペンタイン状を呈している。
【0044】
図12は、本体46aを前方下側からみた場合の流路F1の形状を示す図解図である。図12には、流路F1のみが示されている。図12をも参照して、本体46aの下側に形成される流路F1は、湾曲部C1〜C4および直進部S1〜S5によって構成されている。さらに図7をも参照して、図7には、流路形成部材36の流路F1に対応する部分に一点鎖線の経路が示されている。当該経路において湾曲部C1〜C4に対応する部分および直進部S1〜S5に対応する部分には、符号C1〜C4およびS1〜S5が付されている。
【0045】
図7、図11および図12を参照して、湾曲部C1〜C4および直進部S1〜S5は、上流側から直進部S1、湾曲部C1、直進部S2、湾曲部C2、直進部S3、湾曲部C3、直進部S4、湾曲部C4および直進部S5の順に繋がっている。湾曲部C1〜C4は本体46aに沿って矢印D2方向に延びており、直進部S1〜S5は本体46aに沿って矢印D1方向に延びている。つまり、湾曲部C1〜C4と直進部S1〜S5とは互いに直交する方向に延びている。なお、本体46aの上側に形成される流路F2の形状は、流路F1の形状と上下対称であるので、流路F2の説明は省略する。
【0046】
この実施形態では、エアポンプ34のポンプ部44が供給機構に相当し、エアポンプ34の電動モータ46がモータに相当し、金属パイプ72a,72bが接続部材に相当する。収容部材は収容部材38と収容部材40とを含み、収容部材38が第1収容部材に相当し、収容部材40が第2収容部材に相当する。繊維状部材42が第1収容部材と前記第2収容部材との間に設けられる吸音部材に相当する。
【0047】
ついで、燃料電池システム10の基本的な動作について説明する。
上述した水溶液ポンプ24、水ポンプ30およびエアポンプ34等の補機類は、筐体12に収容されている図示しないコントローラによって制御される。コントローラは、たとえば図示しない二次電池の蓄電率が所定値未満になることを契機として、当該二次電池からの電力によって水溶液ポンプ24およびエアポンプ34の駆動を開始させ、セルスタック14に発電を開始させる。
【0048】
図1を参照して、水溶液タンク16内のメタノール水溶液は、水溶液ポンプ24の駆動によってパイプP1に流入し、水溶液ポンプ24、水溶液フィルタ26およびアノード入口I1を介してセルスタック14に含まれる各燃料電池20のアノード20bにダイレクトに供給される。
【0049】
一方、エアポンプ34のポンプ部44の駆動によって、外部の空気が筐体12内に取り込まれ、エアフィルタ30、パイプP4、エアポンプユニット28、パイプP3およびカソード入口I3を介してセルスタック14に含まれる各燃料電池20のカソード20cに供給される。
【0050】
エアポンプユニット28では、ポンプ部44の駆動によってパイプP4からの空気が収容部材38内に取り込まれる。図5に示すように、パイプP4からの空気は、流路形成部材36の貫通孔54a,54bから流路形成部材36に流入する。そして、流路形成部材36に流入した空気は、流路F1,F2および金属パイプ72a,72bを介してポンプ部44に与えられ、ポンプ部44から吐出される。金属パイプ72a,72bの一方端と他方端とが流路形成部材36とポンプ部44とに嵌入(隙間なく挿入)されているので、流路形成部材36とポンプ部44との間における空気漏れが防止される。したがって、ポンプ部44に吸引される(与えられるべき)全ての空気が流路形成部材36の流路F1,F2を流れる。言い換えれば、セルスタック14に供給される空気と同量の空気が流路形成部材36の流路F1,F2を流れる。
【0051】
加圧された空気がポンプ部44から吐出される際には、当該空気の圧力変化(減圧)に伴って騒音が生じる。このような騒音は、金属パイプ72a,72bを介してポンプ部44の上流側の流路形成部材36に伝播し(図5参照)、流路形成部材36の蛇行する流路F1,F2(図11参照)で減衰される。
【0052】
図13は、流路形成部材36の流路F1における騒音の進み方を示す図解図である。図7、図8および図13を参照して、流路F1を上流側に向かって矢印D1方向に進む騒音は、特に、第1リング状部材48においては後面、第2リング状部材50a,50bにおいてはリブ60aの後面、第3リング状部材52a,52bにおいてはリブ68aの後面に衝突し、その進行方向を変える。また、流路F1を上流側に向かって矢印D2方向に進む騒音は、特に、第2リング状部材50a,50bにおいては本体56の内周面かつ空隙G2近傍の部分、第3リング状部材52a,52bにおいては突起66に衝突し、その進行方向を変える。
【0053】
このように、ポンプ部44の駆動に伴う騒音は、流路F1を形成する壁と衝突することによってその進行方向が変えられる。進行方向が変えられた騒音の一部は、図13に破線で示すように下流側に反射する。そして、下流側に反射した騒音が上流側から進んでくる騒音と衝突することによって、これらが減衰される。これによって、ポンプ部44の駆動に伴う騒音は、流路F1を下流側から上流側に進むにつれて小さくなる。流路F2においても同様であり、騒音は、流路F2を下流側から上流側に進むにつれて小さくなる。したがって、流路形成部材36ひいてはエアフィルタ30からの騒音の漏れが抑制される。
【0054】
また、図11に示すように、ポンプ部44に吸引される空気が、流路F1,F2を本体46aの外周面に沿って流れることによって、当該空気が本体46aの熱を吸収する。また、当該空気によって冷却される流路形成部材36も本体46aの熱を吸収する。これによって本体46aひいては電動モータ46が冷却される。
【0055】
図1に戻って、各燃料電池20のアノード20bでは、メタノール水溶液の供給に伴って二酸化炭素および水素イオンが生成される。生成された水素イオンは、電解質膜20aを介してカソード20cに流入し、そのカソード20cに供給された空気中の酸素と電気化学反応する。これによって、水分(水および水蒸気)および電気エネルギが生成される。つまり、各燃料電池20ひいてはセルスタック14において発電が行われる。セルスタック14の温度は各種反応に伴って発生する熱によって上昇し、セルスタック14の出力はその温度上昇に伴って上昇する。燃料電池システム10は、セルスタック14が約60℃で定常的に発電可能な通常運転に移行する。セルスタック14からの電力は、二次電池の充電や外部の電子機器の駆動等に利用される。
【0056】
各燃料電池20のアノード20bで生成された二酸化炭素および未反応メタノールを含むメタノール水溶液は、セルスタック14のアノード出口I2およびパイプP2を介して水溶液タンク16に還流される。
【0057】
セルスタック14のカソード出口I4からは、各カソード20cで生成された水分、クロスオーバーによって各カソード20cに移動した水分(水および水蒸気)、各カソード20cで生成された二酸化炭素、および未反応の空気等を含む排気ガスが排出される。カソード出口I4からの排気ガスは、パイプP5を介して水タンク18に与えられる。排気ガスに含まれる水は、水タンク18に回収される。水が回収された後の排気ガスは、パイプP6を介して外部へ排出される。
【0058】
なお、ポンプ部44の駆動に伴う騒音は、ポンプ部44の下流側にも伝播する。しかし、ポンプ部44の駆動に伴う騒音がパイプP6から外部に漏れることはほとんどない。これは、セルスタック14内の複雑な形状の流路で騒音が十分に減衰されるためである。
【0059】
このような燃料電池システム10によれば、ポンプ部44の駆動に伴う騒音が流路形成部材36に形成されている流路F1,F2を進むことによって流路F1,F2で反射して下流側から上流側に伝播しにくくなる。つまり、ポンプ部44の駆動に伴う騒音を流路F1,F2で減衰させることができる。したがって、ポンプ部44の駆動に伴う騒音が流路形成部材36の上流側のエアフィルタ30から外部に漏れることを抑制できる。具体的には、流路形成部材36を用いなければ通常運転時のエアフィルタ30からの騒音は70dB程度であるのに対し、流路形成部材36を用いることによって通常運転時のエアフィルタ30からの騒音を60dB程度に抑えることができる。このようにポンプ部44の駆動に伴う騒音を流路F1,F2で減衰させることによって、小型な構成で確実に騒音を低減できる。
【0060】
また、ポンプ部44に吸引される空気が本体46aの外周面に沿うように流路F1,F2を流れることによって、当該空気および流路形成部材36に電動モータ46の熱を効率よく吸収させることができ、電動モータ46を効率よく冷却できる。これによってポンプ部44の駆動停止直後であっても、電動モータ46の温度が上昇し過ぎることを防止できる。空気の流通によって十分に冷却された流路形成部材36が本体46aに接しているので、ポンプ部44の駆動停止後には、特に流路形成部材36によって本体46aから熱を奪うことができ、電動モータ46の温度が上昇し過ぎることを防止できる。具体的には、流路形成部材36を用いなければ、通常運転時の電動モータ46の温度は70℃程度になり、ポンプ部44の駆動停止直後の電動モータ46の温度は100℃程度になってしまう。これに対し、流路形成部材36を用いることによって通常運転時の電動モータ46の温度を50℃程度に保つことができ、ポンプ部44の駆動停止直後であっても電動モータ46の温度を80℃程度に抑えることができる。このように電動モータ46を効率よく冷却できるので、電動モータ46ひいては燃料電池システム10の耐久性を向上できる。
【0061】
さらに、電動モータ46の熱を十分に吸収した空気をセルスタック14に供給できるので、セルスタック14に効率よく発電させることができ、通常運転に迅速に移行させることができる。
【0062】
流路F1,F2が屈曲した形状を有することによって、ポンプ部44の駆動に伴う騒音が下流側により反射しやすくなり、騒音をより低減できる。
【0063】
ポンプ部44に与えられるべき全ての空気が流路F1,F2を流れるように金属パイプ72a,72bを用いて流路形成部材36とポンプ部44とを接続することによって、流路F1,F2により多くの空気を流すことができ、電動モータ46をより効率よく冷却できる。また、ポンプ部44の駆動に伴う騒音を効果的に流路F1,F2に与えることができ、騒音をより低減できる。
【0064】
エアポンプ34および流路形成部材36を収容部材38に収容することによって、騒音をより低減できる。収容部材38と40との二重構造を採用することによって、騒音をより効果的に低減できる。収容部材38と40との間に繊維状部材42を設けることによって、騒音をより一層低減できる。
【0065】
騒音をさらに低減させるためには、図7に破線で示すように、第2リング状部材50a,50bおよび第3リング状部材52a,52bにそれぞれ板状の反射部材76を設けてもよい。つまり、流路F1,F2に反射部材76を設けてもよい。なお、図7には、リブ60a,68a側(流路F1)に設けられる反射部材76が破線で示されているが、リブ60b,68b側(流路F2)にも同様に反射部材76が設けられることはいうまでもない。
【0066】
図14は、反射部材76を設けた場合の流路F1における騒音の進み方を示す図解図である。図14に示すように、第2リング状部材50a,50bおよび第3リング状部材52a,52bのそれぞれにおいて、複数(ここでは2つ)の反射部材76は、流路F1を挟んで上流側と下流側とに離れた位置から下流側に向かって突出するように流路F1に設けられている。流路F1に反射部材76を設けることによって、ポンプ部44の駆動に伴う騒音が反射部材76によっても図14に破線で示すように下流側に反射される。なお、流路F2においても同様に反射部材76によって騒音が反射されることはいうまでもない。
【0067】
このような反射部材76を流路F1,F2に設けることによって、下流側からの騒音を反射部材76によっても反射させることができ、騒音をより低減できる。反射部材76が流路F1,F2の下流側に向かって突出するように流路F1,F2に設けられることによって、上流側から下流側へと円滑に空気を流通させることができるとともに、下流側からの騒音をより反射させやすくなる。したがって、セルスタック14への空気供給を円滑に行うことができるとともに、騒音をより一層低減できる。
【0068】
なお、第2リング状部材50a,50bおよび第3リング状部材52a,52bにおける反射部材76の数は任意に設定できる。また、反射部材76は、第2リング状部材50a,50bおよび第3リング状部材52a,52bの全てに設けずともよく、任意のリング状部材にのみ反射部材76を設けることができる。さらに、反射部材の形状は、板状に限定されず、ポンプ部44の駆動に伴う騒音を効率よく反射させることができれば任意に設定できる。
【0069】
第1リング状部材、第2リング状部材の本体および第3リング状部材の本体の形状は上述の実施形態に限定されない。たとえば図15に示す第1リング状部材78、第2リング状部材80および第3リング状部材82を、流路形成部材に用いてもよい。
【0070】
図15に示すように、第1リング状部材78は、略C字の板状に形成されており、略四角板状の外形を有している。第1リング状部材78には、上述の第1リング状部材48と同様に、貫通孔54c,54dが設けられている。第1リング状部材78は、外形が異なることを除けば上述の第1リング状部材48と同様に構成されている。
【0071】
図16は、第2リング状部材80の正面図である。図15および図16に示すように、第2リング状部材80は本体56aを含む。本体56aは、略C字の枠状に形成されている。本体56aの外周面は、第2リング状部材80を第1リング状部材78に繋げたときに第1リング状部材78の外周面と面一になるように形成されている。本体56aの内周面には、上述の第2リング状部材50aと同様に、突起58a、リブ60c,60dおよび出口62c、62dが設けられている。第2リング状部材80は、外形が異なることを除けば上述の第2リング状部材50aと同様に構成されている。
【0072】
図15に示すように、第3リング状部材82は本体64aを含む。本体64aは、第2リング状部材80の本体56aと同形状かつ同寸法に形成されている。第3リング状部材82の本体64aの内周面には、上述の第3リング状部材52aと同様に、突起66a、リブ68c,68dが設けられ、リブ68c,68dにはそれぞれ貫通孔70c,70dが設けられている。第3リング状部材82は、外形が異なることを除けば上述の第3リング状部材52aと同様に構成されている。
【0073】
図15および図16に示すように、第2リング状部材80において本体56aの内周側には、湾曲されかつ多数の貫通孔が形成された2つの板状部材84が突起58aおよび空隙G2を挟んで上下に配置されている。板状部材84は、たとえばアルミニウムやステンレス等からなる。板状部材84と本体56aの内周面との間には、たとえばスチールウールからなる繊維状部材86が詰められている。第3リング状部材82についても同様であり、本体64aの内周側には2つの板状部材84が配置されており、板状部材84と本体64aの内周面との間には繊維状部材86が詰められている。この場合、板状部材84および繊維状部材86が流路形成部材の流路に設けられる吸音部材として機能する。
【0074】
このように第2リング状部材80および第3リング状部材82において流路の一部に板状部材84および繊維状部材86を設けることによって、騒音を屈曲した流路で減衰させつつ板状部材84および繊維状部材86によって吸収することもできる。詳しくは、騒音を板状部材84の多数の貫通孔を通過させることによって吸収した後に、さらに繊維状部材86によって騒音を吸収できる。このように簡単にかつ効率的に騒音を吸収できるので、騒音が上流側により伝播しにくくなり、騒音をより低減できる。
【0075】
繊維状部材86に代えてたとえば、銅やステンレス等からなり、連続気泡を有する無塵性の金属発泡体を吸音部材として第2リング状部材80および第3リング状部材82の内周面側に配置してもよい。上述の板状部材84は、スチールウールからなる繊維状部材86の位置ずれを防止するとともに、ポンプ部44の駆動に伴って繊維状部材86を構成する繊維が下流側に流れることを防止する機能も有している。吸音部材として無塵性の金属発泡体を用いる場合、当該金属発泡体をたとえば本体56a,64aの内周面に貼り付けることができ、かつ金属発泡体の一部が下流側に流れることもない。したがって、この場合、板状部材84を省略してもよい。
【0076】
なお、流路に設けられる吸音部材は、貫通孔を有する板状部材、繊維状部材および金属発泡体から任意に選択できかつ任意に組み合わせることができる。
【0077】
また、第1収容部材と第2収容部材との間に設けられる吸音部材は、上述の繊維状部材42に限定されず、金属発泡体であってもよいし、繊維状部材と金属発泡体との組み合わせであってもよい。
【0078】
なお、流路形成部材に用いる第2リング状部材および第3リング状部材の数は、上述の流路形成部材36のように2つずつに限定されない。第2リング状部材と第3リング状部材とを1つずつ用いて流路形成部材を構成してもよいし、3つ以上の第2リング状部材と第3リング状部材とを用いて流路形成部材を構成してもよい。より多くの第2リング状部材および第3リング状部材を用いて流路形成部材の流路の屈曲を増やすほど、騒音を低減できる。また、より多くの第2リング状部材および第3リング状部材を用いて流路形成部材の流路を長くするほど、電動モータ46を効率よく冷却できる。流路形成部材によって電動モータ46をどの程度覆うかは、求められる騒音低減の程度および電動モータ46の冷却の程度に応じて任意に設定できる。
【0079】
また、流路形成部材は、別体の第1リング状部材、第2リング状部材および第3リング状部材によって構成されるものに限定されず、一体物であってもよい。
【0080】
また、流路形成部材に形成される流路の数は、上述の流路形成部材36のように2つに限定されない。流路形成部材に形成される流路の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0081】
また、流路形成部材に形成される流路の形状は、上述の実施形態に限定されない。たとえば、連続した山形を呈するように屈曲を繰り返しつつ延びる流路(たとえば鋸歯状に延びる流路)を流路形成部材に形成してもよい。騒音を効果的に低減させるためには、流路形成部材の流路が90・以下の角度で屈曲していることが好ましい。さらに、流路形成部材の流路は、必ずしも屈曲していなくてもよく、騒音を効果的に低減できるならばたとえば螺旋状であってもよい。このように騒音を効果的に低減できる任意の形状を、流路形成部材の流路の形状として採用できる。
【0082】
さらに、流路形成部材に形成される流路は、上述の流路F1,F2のように本体46aの外周面に空気を直接流すものに限定されない。つまり、上述の流路F1,F2のように、その壁が本体46aの外周面を含むものに限定されない。たとえば、流路形成部材の内部を屈曲しながら延びるように流路形成部材に流路を設け、流路形成部材の内部で空気を流すようにしてもよい。
【0083】
具体的には、図17および図18に示すような流路形成部材36aを用いることができる。流路形成部材36aは、第1リング状部材88、第2リング状部材90a,90bおよび第3リング状部材92a,92bを含む。
【0084】
図17は流路形成部材36aを右上前方からみた分解斜視図である。図18は流路形成部材36aを右上後方からみた分解斜視図である。また、図19は第2リング状部材90a,90bの正面図であり、図20は第3リング状部材92a,92bの正面図である。
【0085】
第1リング状部材88は、Oリング状に構成されている点を除いて第1リング状部材48と同様に構成されている。第2リング状部材90aと第2リング状部材90bとは同様に構成されている。第2リング状部材90a,90bは、電動モータ46の本体46aの外周面に接触する内周部材94を有しかつOリング状に形成されている点を除いて、第2リング状部材50a,50bと同様に構成されている。第3リング状部材92aと第3リング状部材92bとは同様に構成されている。第3リング状部材92a,92bは、電動モータ46の本体46aの外周面に接触する内周部材96を有しかつOリング状に形成されている点を除いて、第3リング状部材52a,52bと同様に構成されている。
【0086】
図17および図18に示すように、これらのリング状部材は、前方側から第1リング状部材88、第2リング状部材90a、第3リング状部材92a、第2リング状部材90bおよび第3リング状部材92bの順に配置され、一体化される。
【0087】
このような流路形成部材36aによれば、流路形成部材36aの内部に、屈曲しながら延びる流路を設けることができ、空気は本体46aの外周面に接触することなく流路形成部材36aの内部を流れる。
【0088】
なお、上述の実施形態では、供給機構としてルーツブロア型のポンプ部44を用いる場合について説明したが、供給機構はこれに限定されない。供給機構として、たとえばダイヤフラム型やピストン型等のポンプ部を用いるようにしてもよい。
【0089】
上述の実施形態では、モータとして電動モータ46を用いる場合について説明したが、モータはこれに限定されない。
【0090】
上述の実施形態では、供給機構であるポンプ部44とモータである電動モータ46とが一体的に設けられたエアポンプ34を用いる場合について説明したが、供給機構とモータとは分離されていてもよい。
【0091】
接続部材は、上述の金属パイプ72a,72b(金属製のパイプ)に限定されない。接続部材として、たとえば合成樹脂製のパイプを用いるようにしてもよい。
【0092】
上述の実施形態では、収容部材38と40とを含む二重構造の収容部材を用いる場合について説明したが、収容部材はこれに限定されない。1つの収容部材によって構成される収容部材を用いてもよい。
【0093】
上述の実施形態では、収容部材38にエアポンプ34および流路形成部材36を収容する場合について説明したが、流路形成部材36のみを収容する(覆う)収容部材を用いてもよい。
【0094】
上述の実施形態では、燃料としてメタノールを、燃料水溶液としてメタノール水溶液を用いたが、これに限定されず、燃料としてエタノール等のアルコール系燃料、燃料水溶液としてエタノール水溶液等のアルコール系水溶液を用いてもよい。
【0095】
上述の実施形態では、直接メタノール型燃料電池システムについて説明したが、この発明はこれに限定されない。この発明は、改質器搭載型燃料電池システムや水素ガスを燃料として燃料電池に供給する水素型燃料電池システムにも適用できる。
【0096】
この発明は、自動二輪車等の輸送機器、またはパーソナルコンピュータ等の電子機器に搭載される燃料電池システムにも適用できる。また、据え付け(固定)タイプの燃料電池システムにも適用できる。
【符号の説明】
【0097】
10 燃料電池システム
14 燃料電池セルスタック
20 燃料電池(燃料電池セル)
28 エアポンプユニット
34 エアポンプ
36,36a 流路形成部材
38,40 収容部材
42,86 繊維状部材
44 ポンプ部
46 電動モータ
48,78,88 第1リング状部材
50a,50b,80,90a,90b 第2リング状部材
52a,52b,82,92a,92b 第3リング状部材
72a,72b 金属パイプ
76 反射部材
84 板状部材
F1,F2 流路
C1〜C4 湾曲部
S1〜S5 直進部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池に空気を供給するための供給機構と、
前記供給機構を駆動するためのモータと、
前記モータの表面に設けられ、前記供給機構に与えられるべき空気が流れる流路を形成する流路形成部材とを備える、燃料電池システム。
【請求項2】
前記流路は屈曲した形状を有する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記供給機構に与えられるべき全ての空気が前記流路を流れるように前記流路形成部材と前記供給機構とを接続する接続部材をさらに含む、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記流路の下流側からの音を反射させるために前記流路に設けられる反射部材をさらに含む、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記反射部材は、前記流路の下流側に向かって前記流路に突出するように設けられる、請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記流路に設けられる吸音部材をさらに含む、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記吸音部材は、貫通孔を有する板状部材、繊維状部材および金属発泡体の少なくともいずれか1つを含む、請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記流路形成部材を収容する収容部材をさらに含む、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記収容部材は、前記流路形成部材を収容する第1収容部材と、前記第1収容部材を収容する第2収容部材とを含む、請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記第1収容部材と前記第2収容部材との間に設けられる吸音部材をさらに含む、請求項9に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−62142(P2010−62142A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180392(P2009−180392)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】