説明

燃料電池システム

【課題】経年変化に起因する出力電圧が低下することを抑制するのに有利な燃料電池システムを提供することを課題とする。
【解決手段】燃料電池システムは、カソード極10およびアノード極11を有する燃料電池と、燃料電池のカソード極10にカソード流体を供給するカソード流体通路と、燃料電池のアノード極11にアノード流体を供給するアノード流体通路とを有する。制御装置8は、燃料電池1の発電に関する発電条件を変化させる条件変化操作を実行して燃料電池1の電圧変化を求め、条件変化操作における電圧値の最大領域を求め、電圧値の最大領域に対応する発電条件を更新発電条件として設定する更新処理を定期的または不定期的に実行し、更新された更新発電条件に基づいて燃料電池1をそれ以降発電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池のスタックに供給されるカソードガスおよびアノードガスを加湿する加湿器と、コントロールユニットとを備える燃料電池システムが知られている(特許文献1)。このコントロールユニットは、スタックが発電運転しているときスタックの発電状態を検出する発電状態検出手段と、発電状態検出手段で検出された燃料電池の発電状態に応じてスタックの発電運転においてアノードガスおよびカソードガスの露点温度を制御する加湿制御手段とを備えている。
【特許文献1】特開2002−280029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら燃料電池システムの経年変化には必ずしも充分に対処できるものではない。本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、経年変化による燃料電池の出力電圧が低下することを抑制するのに有利な燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る燃料電池システムは、(i)カソード極およびアノード極を有する燃料電池と、(ii)燃料電池のカソード極にカソード流体を供給するカソード流体通路と、(iii)燃料電池のアノード極にアノード流体を供給するアノード流体通路と、(iv)燃料電池の発電に関する発電条件を変化させる条件変化操作を実行して燃料電池の電圧変化を求め、条件変化操作における電圧値の最大領域を求め、電圧値の最大領域に対応する発電条件を更新発電条件として更新する更新処理を実行し、更新処理以降において更新発電条件に基づいて燃料電池を発電させる制御装置とを具備する。電圧値の最大領域とは、条件変化操作における電圧値の最大値の他に、最大値に近い値(最大値の80%以上、90%以上の電圧値)を含む意味である。制御装置は、電圧値の最大領域に対応する発電条件を更新発電条件として更新する更新処理を実行することができる。
【0005】
カソード流体通路からカソード流体は、燃料電池のカソード極に供給される。アノード流体通路からアノード流体は、燃料電池のアノード極に供給される。これに基づいて燃料電池は発電する。燃料電池ステムは経年変化する。経年変化の要因としては、燃料電池を構成する構成要素の経年変化、カソード流体およびアノード流体等の通路を形成する配管の汚れ等が挙げられる。燃料電池を構成する構成要素の経年変化としては、アノード極やカソード極に担持されている触媒の経年変化、イオン伝導膜の経年変化等が挙げられる。
【0006】
制御装置は、更新処理にあたり、燃料電池の発電に関する発電条件を変化させる条件変化操作を実行して燃料電池の電圧変化を求める。更に制御装置は更新処理の条件変化操作における電圧値の最大領域を求める。
【0007】
そして制御装置は、電圧値の最大領域に対応する発電条件を更新発電条件として設定する更新処理を実行し、それ以降において、更新された発電条件に基づいて燃料電池を発電させる。このためシステムが経年変化したとしても、燃料電池の出力電圧が高く維持される。
【0008】
本発明に係る燃料電池システムは、次の好適態様を採用できる。
【0009】
・発電条件の変化は、燃料電池の電流値が所定値に固定されている状態で行うことが好ましい。上記した電流値としては、燃料電池システムにおいて常用される頻度が高い電流値を選択することが好ましい。または、燃料電池の内部における湿潤度が電圧変化に与える感度が高い電流値が存在する場合には、感度が高い電流値を選択することが好ましい。後者の場合、常用される頻度が高い電流値においても、同様な電圧特性が得られることが好ましい。燃料電池の内部における湿潤度は、MEAの湿潤度に相応する。
【0010】
・本発明によれば、制御装置は、燃料電池の発電に関する発電条件を変化させる条件変化操作を実行して燃料電池の電圧変化を求め、条件変化操作における電圧値の最大領域を求め、電圧値の最大領域に対応する発電条件を更新発電条件として更新する更新処理を実行し、更新処理以降において更新発電条件に基づいて燃料電池を発電させる。ここで、電圧の代替として電力を使用しても良い。この場合、制御装置は、燃料電池の発電に関する発電条件を変化させる条件変化操作を実行して燃料電池の電力変化を求め、条件変化操作における電力値の最大領域を求め、電力値の最大領域に対応する発電条件を更新発電条件として更新する更新処理を実行し、更新処理以降において更新発電条件に基づいて燃料電池を発電させることができる。
【0011】
・好ましくは、制御装置は更新処理を定期的または不定期的に実行させることが好ましい。定期的は、所定の時間間隔毎、または、システムの所定の起動回数毎を含む。所定の時間間隔は、燃料電池のスタックの構成部品の経年劣化等を考慮し、システムに応じて任意に設定され、例えば1週間〜3年の範囲内において適宜設定される。不定期的とは、不定の時間間隔毎にという意味である。システムが定期的または不定期的にメンテナンスされるときには、メンテナンス時とすることができる。不定の時間間隔は、燃料電池のスタックの構成部品の経年劣化等を考慮し、システムに応じて任意に設定され、例えば1週間〜3年の範囲内において適宜設定される。
【0012】
・好ましくは、条件変化操作において変化させる発電条件のパラメータとしては、燃料電池の内部の湿潤度を調整するパラメータであることが好ましい。従って、パラメータとしては、燃料電池の内部の湿潤度(加湿量)に影響を与えるパラメータ、カソード流体およびアノード流体の加湿状態量に関するパラメータを採用でき、例えば、カソード流体の利用率、アノード流体の利用率、燃料電池に対するカソード流体の入口温度、燃料電池に対するアノード流体の入口温度、燃料電池の運転温度(燃料電池を冷却する冷媒の温度で代用できる)のうちの少なくとも一つが採用できる。他のパラメータを固定させた状態で一つのパラメータを変化させれば、測定データの数が過剰にならず、更新処理を短時間で済ませ得る。
【0013】
但し、双方の利用率といった複数のパラメータ、双方の入口温度といった複数のパラメータを変化させても良い。例えば、カソード流体の利用率およびアノード流体の利用率の双方を変化させても良い。この場合、測定データの数が多くなり、更新処理に時間を必要とする。カソード流体をカソードガスとし、更新処理においてカソードガスの利用率、および、カソードガスの入口温度のうちの少なくとも一つを制御する場合には、アノード流体は活物質を有するメタノール、エタノール等の液体でも良い。
【0014】
ここで、ガスの利用率が低いときには、より多くのガス流量が燃料電池に供給されているため、単位時間当たりに供給される水分量に大きな変化がないと、ガスの単位体積(単位流量)あたりの水分量が減少し、燃料電池の内部の湿潤度が低くなる傾向がある。また、ガスの入口温度が低いときには、燃料電池に供給されるガスの単位体積(単位流量)あたりに含まれる水分量が減少するため、燃料電池の温度が一定な場合には、燃料電池のガスの湿度が低下し、燃料電池の内部の湿潤度が低くなる傾向がある。また、冷媒温度が低いときには、燃料電池に供給されるガスの単位体積(単位流量)あたりに含まれる水分量に大きな変化がないと、燃料電池中のガスの湿度が上昇し、燃料電池の内部の湿潤度が高くなる傾向がある。
【0015】
・ここで、利用率は、燃料電池に供給された流体の活物質のうち発電反応に使用される活物質の割合を意味する。例えば、アノード流体の利用率が80%である場合、燃料電池に供給されたアノード流体における水素(活物質)のうち80%の水素が発電反応に使用されることを意味する。例えば、カソード流体の利用率が40%である場合、燃料電池に供給されたカソード流体における酸素(活物質)のうち40%の酸素が発電反応に使用されることを意味する。燃料電池に供給されるガス状のカソード流体の入口温度が高いとき、ガス状のカソード流体が含有できる水蒸気量が多めであることを意味する。カソード流体の入口温度が低いとき、カソード流体が含有できる水蒸気量が少なめであることを意味する。アノード流体についても同様にある。
【0016】
・更新処理において、測定精度を確保するため、燃料電池の内部におけるフラッディングをできるだけ発生させないようにすることが好ましい。そこで好ましくは、制御装置は、更新処理に係る条件変化操作において、燃料電池の内部の湿潤度が低い側(乾燥している状態)から、燃料電池の内部の湿潤度が高い側に向けて発電条件を移行させるように発電条件を変化させる。フラッディングとは、燃料電池の内部の活物質が流れる流路の抵抗が、凝縮した水により異状に大きくなることをいう。
【0017】
・燃料電池が定常運転しているときには、一般的には、燃料電池の内部の湿潤度が高い。そこで、制御装置は、定常運転から更新処理に移行するにあたり、更新処理に係る条件変化操作において、燃料電池の内部の湿潤度が高い側から、燃料電池の内部の湿潤度が低い側に発電条件を変化させることもできる。この場合、更新処理の開始時に、燃料電池の内部の湿潤度が低い側に設定せずとも良いため、更新処理の時間を短縮できる。ここで、定常運転とは、システムの起動運転後、システムの各条件(特に燃料電池の内部の温度条件および/または湿度条件)が安定した状態から、システムの発電停止指令が発せられるまでの運転状態をいう。定常運転は、定格運転の他に、定格運転よりも低い発電出力が低い運転を含む。定格は、指定された条件のもとでシステムが連続運転できるように、製造者が保証する使用上の限界をいい、一般的には銘板またはカタログ等に記載されている。
【0018】
・好ましくは、制御装置は、条件変化操作において、前回の更新処理またはシステム設置時において電圧値が最大領域であった発電条件を始点とし、始点から燃料電池の内部の湿潤度が低い側へ発電条件を変化させる第1変化処理と、始点から燃料電池の内部の湿潤度が高い側へ発電条件を変化させる第2変化処理とを含む。好ましくは、制御装置は、第1変化処理および第2変化処理のうちの一方を実行し、その後、第1変化処理および第2変化処理のうちの他方を実行する。
【0019】
この場合、前回の更新処理またはシステム設置時において電圧値が最大領域であった発電条件が、更新処理における始点とされる。この始点とされる発電条件は、更新処理直前における燃料電池の定常運転(定格運転)における発電条件であることが多い。このため燃料電池が定常運転から更新処理に移行するにあたり、発電条件の急変が抑えられる。なお、発電条件の急変は、燃料電池の電圧を急激に低下させる要因となるおそれがあるため、できるだけ避けることが好ましい。
【0020】
・カソード流体の利用率が低い方が、燃料電池に供給されるカソード流体の流量が多めであり、燃料電池の内部の水詰まりを除去し易いため、燃料電池の内部の湿潤度を低下させ、フラッディングを抑制させ得る傾向がある。これに対してカソード流体の利用率が高い方が、燃料電池に供給されるカソード流体の流量が低めであり、燃料電池の内部の水詰まりを除去し難いため、燃料電池の内部の湿潤度が高くなる傾向がある。アノード流体についても同様である。そこで、好ましくは、制御装置は、条件変化操作において、カソード流体の利用率およびアノード流体の利用率のうちの少なくとも一方を、利用率が低い側(燃料電池の内部の湿潤度が低い側)から、利用率が高い側(燃料電池の内部の湿潤度が高い側)に向けて変更させる。これにより過剰なフラッディングを抑制して燃料電池の出力の過剰低下を抑制しつつ、発電条件を変更させるのに有利である。ガス状のカソード流体の利用率、アノード流体の利用率は低い方が、燃料電池の内部を乾燥気味にでき、フラッディングを抑制させ得る。そこで、好ましくは、制御装置は、条件変化操作において、カソード流体の利用率およびアノード流体の利用率のうちの少なくとも一方を、利用率が低い側から高い側に向けて変更させる。これにより過剰なフラッディングに起因する電圧低下を抑制しつつ、燃料電池の発電条件を変更させるのに有利である。
【0021】
カソード流体の利用率の調整は、燃料電池に供給される単位時間あたりのカソード流体の流量を調整することにより行い得、具体的には、カソード流体を燃料電池に供給する搬送部(例えばファン、ブロア、コンプレッサ)の駆動量およびカソード流体を流すカソード流体通路のバルブの開度のうちの少なくとも一つを調整することにより行い得る。アノード流体の利用率の調整は、燃料電池に供給される単位時間あたりのアノード流体の流量を調整することにより行い得、具体的には、アノード流体を燃料電池に供給する搬送部(例えばファン、ブロア、コンプレッサ)の駆動量およびアノード流体を流すアノード流体通路のバルブの開度のうちの少なくとも一つを調整することにより行い得る。
【0022】
・ガス状のカソード流体の入口温度およびガス状のアノード流体の入口温度が低い方が、カソード流体、アノード流体に含有される水蒸気量を少なくでき、燃料電池の内部を乾燥気味に維持でき、フラッディングを発生させにくい。これに対して、カソード流体の入口温度およびアノード流体の入口温度が高い方が、カソード流体、アノード流体に含有される水蒸気量を多くでき、燃料電池の内部の湿潤度を高めにし、フラッディングを発生させ易い。このため、好ましくは、制御装置は、条件変化操作において、カソード流体の入口温度およびアノード流体の入口温度のうちの少なくとも一方を、入口温度が低い側(燃料電池の内部の湿潤度が低い側)から、入口温度が高い側(燃料電池の内部の湿潤度が高い側)に向けて変更させる。この場合、カソード流体の入口温度の調整は、燃料電池のカソード極に供給される前のカソード流体の温度を調整することにより行い得る。アノード流体の入口温度の調整は、燃料電池のアノード極に供給される前のアノード流体の温度を調整することにより行い得る。なお、ヒータを併用して温度調整することもできる。
【0023】
・好ましくは、制御装置は、条件変化操作において発電条件を一定間隔毎に変更させる。この場合、燃料電池の出力の急激な変化を抑えることができる。上記した条件変化操作では、燃料電池の内部の湿潤度が低い状態(乾燥している状態)から、燃料電池の内部の湿潤度が高い状態に移行させることが好ましい。フラッディングは出力電圧の低下を誘発させるためである。
【0024】
・燃料電池の運転温度は、燃料電池を冷却する冷却路が設けられている場合には、冷却路を流れる冷媒の温度で代用できる。冷媒の温度が高い方が、燃料電池の運転温度が高くなり、燃料電池の内部を乾燥気味にでき、過剰のフラッディングを抑制させるのに有利である。そこで、好ましくは、制御装置は、条件変化操作において、燃料電池を冷却する冷媒の温度を高い側から低い側に向けて変更させる。これにより更新処理においてフラッディングの影響を抑制しつつ発電条件を変更させるのに有利である。
【0025】
・更新処理を実行している途中において燃料電池の電圧が所定電圧よりも低下するとき、フラッディングが発生しているおそれがある。そこで、制御装置は、好ましくは、更新処理を実行している途中において燃料電池の電圧が所定電圧よりも低下するとき、更新処理を停止または中断し、燃料電池の内部の湿潤度を停止時または中断時よりも低下させるリセット処理を実行する。リセット処理によりフラッディングが抑えられる。その後、制御装置は更新処理を再開させる。
【0026】
・好ましくは、制御装置は、更新処理を連続して複数回実行することができる。この場合、更新処理における異常なノイズを低減しやすい。この場合、制御装置は、好ましくは、前の更新処理と後の更新処理との間において、前の更新処理直後における燃料電池の内部の湿潤度を、前の更新処理よりも乾き方向に向けて低下させるリセット処理を実行することが好ましい。前の更新処理直後における燃料電池の内部に過剰に水が残留していれば、後の更新処理に影響を与える。そこで制御装置はリセット処理を実行し、前の更新処理直後における燃料電池の内部の湿潤度を乾き方向に向けて低下させることが好ましい。『更新処理を連続して複数回実行する』とは、更新処理と更新処理との間に通常の発電運転を行わず、連続して更新処理を行うことを意味する。
【0027】
・好ましくは、制御装置は、条件変化操作において発電条件のパラメータを一定間隔α1毎に変更させる粗変更操作を実行する。粗変更操作により燃料電池の電圧値の最大領域が認識されないとき、変更範囲内において発電条件のパラメータを一定間隔α1よりも狭い間隔α2(α2<α1)毎に変更させる細変更操作を実行する。粗変更操作が実行されるため、更新処理に要する時間を短縮するのに有利である。しかし粗変更操作における一定間隔α1が粗過ぎるときには、燃料電池の電圧値の最大領域が認識されないおそれがある。この場合、制御装置は、変更範囲内において発電条件を一定間隔α1よりも狭い間隔α2(α2<α1)毎に変更させる細変更操作を実行する。この場合、間隔α2が小さいので、燃料電池の電圧値の最大領域が認識され易くなる。
【0028】
・前の粗変更操作において燃料電池の内部に過剰に水が残留していれば、後の細変更操作における出力電圧に影響を与えるおそれがある。そこで制御装置は、粗変更操作と細変更操作との間において、燃料電池の内部の湿潤度を、粗変更操作終了時よりも乾き方向に向けて低下させるリセット処理を実行する。
【0029】
・更新処理において頂点電圧が発見されないときには、制御装置は、パラメータを変化させた範囲内において最も高い電圧を、燃料電池の電圧値の最大領域として認識することができる。この場合、電圧の頂点が発見されるまで、出力電圧が高い方向に、パラメータを変化させる範囲を制御装置は拡大させることができる。
【0030】
・燃料電池の発電により電気負荷が駆動される。しかし更新処理では、発電条件を変更させるため、電気負荷で消費できないほどの余剰の電力が発電されるおそれがある。そこで、燃料電池で発生した余剰の電力を温水として蓄積するための貯湯槽が設けられている場合には、制御装置は、更新処理を実行するとき、燃料電池で発生した余剰の電力を貯湯槽に温水として蓄積させる蓄積操作を実行する。この場合、余剰の電力で温水を生成し、その温水を貯湯槽に温水エネルギとして貯蔵させる。
【0031】
・燃料電池の発電により電気負荷が駆動される。しかし更新処理では、発電条件を変更させるため電力の安定性は充分ではないおそれがある。従って、電気負荷で消費される電力が不足すれるおそれがある。そこで、燃料電池と商業電源とを系統連系させる系統連系部が設けられている場合には、制御装置は、更新処理を実行するとき、不足する電力を系統連系部を介して商業電源から供給することが好ましい。
【0032】
・好ましくは、制御装置は、発電条件を記憶する記憶部を有する。この場合、制御装置は、更新処理を所定時間毎に定期的または不定期的に実行し、電圧値の最大領域に対応する更新発電条件を記憶部に記憶させることが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、制御装置は、電圧値の最大領域に対応する発電条件を更新発電条件として設定する更新処理を実行し、それ以後の発電運転において更新発電条件に基づいて燃料電池を発電させる。このため燃料電池システムが経年変化しているときであっても、最適な状態またはそれに近い状態でシステムを発電運転でき、燃料電池の出力電圧を高く維持することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(実施形態1)
図1は本実施形態に係る燃料電池システムの概念を模式的に示す。本システムは、図1に示すように、カソード極10、アノード極11、イオン伝導膜12(プロトン伝導膜)を備える膜電極接合体(MEA)を有する燃料電池を組み付けたスタック1と、カソード流体としてのカソードガス(空気等の酸素含有ガス)を燃料電池のカソード極10にカソードガス搬送源20により供給するカソード流体通路としてのカソードガス通路2と、アノード流体としてのアノードガス(水素含有ガス)をアノードガス供給源としての改質器30からスタック1のアノード極11に供給するアノード流体通路としてのアノードガス通路3と、制御装置8とを備えている。イオン伝導膜12は,固体高分子型(例えば炭化フッ素系または炭化水素系)、無機材料が例示される。膜電極接合体はシート型でも良いし、チューブ型でも良い。更に、カソードガスのオフガスをカソード極10から加湿器23の吸湿路25を介して排出させるカソード用の第1排出路22と、アノードガスのオフガスをアノード極11から排出させるアノード用の第2排出路32とが設けられている。
【0035】
カソードガス通路2および第1排出路22には加湿器23が設けられている。加湿器23は、燃料電池のカソード極10に向かうカソードガスを加湿させる加湿路24と、スタック1のカソード極10から第1排出路22に排出されたオフガスから水分を吸湿させてオフガスの水分を低減させる吸湿路25と、加湿路24および吸湿路25を仕切る水分保持部材26とを備えている。水分保持部材26は水分を保持可能であり、且つ、伝熱可能である。カソードガス通路2に設けられているカソードガス搬送源20は、カソードガスをスタック1のカソード極10に向けて搬送させるものであり、例えばファン、ブロア、コンプレッサが例示される。第1排出路22には、加湿器23を迂回する迂回路27が設けられている。迂回路27は、カソードオフガスを加湿器23の吸湿路25に流さないでスタック1の外部に排出させる。迂回路27には迂回弁28が設けられている。加湿器23の吸湿路25を流れるカソードガスの流量をV1とする。迂回路27を流れるカソードガスの流量をV2とする。迂回弁28はV1/V2の比率を可変に制御する。スタック1における発電反応により、スタック1は発熱すると共に水を生成させる。このため、スタック1のカソード極10の出口から第1排出路22に排出されたカソードオフガスは、スタック1のカソード極10に供給されるカソードガスよりも高温高湿である。従って、V1/V2の比率を変化させれば、カソードオフガスから加湿器23への伝熱量を調整でき、加湿器23のハウジングの温度を調整でき、加湿器23の加湿路24を流れるカソードガスの温度を調整でき、ひいてはスタック1のカソード極10に供給されるカソードガスの入口温度Tcを調整できる。燃料電池の膜電極接合体(MEA)はシート型でも良いし、チューブ型でも良い。
【0036】
スタック1で発電された出力電圧に基づいて、作動される電気負荷が設けられている。スタック1の内部には、これを冷却させる冷媒が流れる冷却路14が形成されている。スタック1の冷却路14は第1循環路41(冷媒循環路)に連通している。第1循環路41は加熱装置45および第1ポンプ51(第1搬送源)をもつ。第1ポンプ51が駆動すると、第1循環路41の冷媒はスタック1の冷却路14に流れ、スタック1が冷却される。冷媒としては冷却水等の冷却液とされている。第1循環路41は、冷媒の入口温度を検知する入口温度センサ41iと、冷媒の出口温度を検知する出口温度センサ41pとをもつ。
【0037】
アノードガス供給源としては、改質器30が設けられている。改質器30は、例えば、気相状または液相状の燃料原料を改質させてアノードガスを生成させる改質部と、改質部を高温に加熱させる燃焼部とをもつ。改質器30の改質部の出口からスタック1のアノード極11に向けてアノードガスを供給するアノードガス通路3が形成されている。アノードガス通路3には、アノードガスの温度を調整する第1熱交換器61が設けられている。第2ポンプ52(第2搬送源)が設けられている第2循環路42が配置されている。第2循環路42およびアノードガス通路3には第1熱交換器61が設けられている。第1熱交換器61は、アノードガス通路3を流れる高温のアノードガスの熱を第2循環路42の冷媒に伝達させる。すなわち第2ポンプ52が駆動すると、第2循環路42の冷媒は循環するため、第1熱交換器61はアノードガスを流れるアノードガスの熱を第2循環路42の冷媒に伝達させる。
【0038】
第3ポンプ53(第2搬送源)が設けられている第3循環路43が貯湯槽46に繋がるように配置されている。第1循環路41および第3循環路43には第2熱交換器62が配置されている。第2循環路42および第3循環路43には第3熱交換器63が配置されている。第1ポンプ51および第3ポンプ53が駆動すると、第1循環路41の冷媒はスタック1の冷却路14を介して循環すると共に、第3循環路43の冷媒は循環する。このため第2熱交換器62は、第1循環路41の冷媒の熱を第3循環路43の冷媒に伝達させる。第2ポンプ52および第3ポンプ53が駆動すると、第2循環路42の冷媒は循環すると共に第3循環路43の冷媒は循環する。このため、第3熱交換器63は、第2循環路42の冷媒の熱を第3循環路43の冷媒に伝達させる。このように第3循環路43を循環する冷媒(水)は加熱される。第3循環路43の熱は貯湯槽46に温水として貯められる。上記した冷媒としては冷却水等の冷却液が挙げられる。
【0039】
スタック1は、直流を交流に変換する変換器70、系統連系部71を介して商用電源72および電気負荷に接続されている。スタック1が発電した電力により変換器70を介して電気負荷(図略)が駆動される。スタック1で発生した余剰の電力が発生する場合には、制御装置8はスイッチング素子90をオンして電気ヒータ92を発熱させ、第3循環路43または貯湯槽46の温水を加熱する。
【0040】
スタック1の発電時について説明する。発電開始前に、加熱装置45により第1循環路41の冷媒を加熱すると共に、第1ポンプ51を駆動させる。このようにして第1循環路41の加熱された冷媒によりスタック1を予め暖める。スタック1の発電にあたり、燃料搬送源34により燃料原料が改質器30に供給される。燃料原料は気相または液相状をなしており、炭化水素系、アルコール系が例示され。具体的には天然ガス、バイオガス、LPG、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、ガソリン、灯油等が例示される。改質水搬送源36により改質用の水が蒸発部37に供給され、蒸発部37で形成された水蒸気は改質器30に供給される。これにより改質器30では燃料原料が水蒸気改質されてアノードガス(水素含有ガス)が形成される。アノードガスの組成が安定すると、アノードガスは、アノードガス通路3から第1熱交換器61で余分の水蒸気および熱を低下させた後、入口11iからスタック1のアノード極11に供給される。更に、カソードガス搬送源20の駆動によりカソードガスはカソードガス通路2から加湿器23の加湿路24に供給され、加湿路24で加湿された後、入口10iからスタック1のカソード極10に供給される。これによりスタック1は発電する。発電反応を経た後のアノードオフガスは、第2排出路32を介して、改質器30の燃焼部に供給され、燃焼され、再利用される。発電反応を経た後のカソードオフガスは、第1排出路22から排出され、加湿器23の吸湿路25を通過し、外気に放出される。
【0041】
スタック1は発電反応により発熱すると共にスタック1の内部において水を生成する。このため、カソードオフガスは加湿器23の吸湿路25を介して水分保持部材26に水分および熱を与える。これにより加湿器23のハウジングは昇温される。このため、加湿器23の加湿路24に供給されるカソードガスは、加湿器23により加湿および加熱される。カソードガスの温度が高い方が、カソードガスが保持できる水蒸気量は増加する。定常運転時には、スタック1の発電に伴いスタック1は発熱する。そこで、スタック1を冷却すべく、制御装置8は第1ポンプ51を駆動させ、スタック1の冷却路14に冷媒を流し、スタック1を冷却させ適温域に保持する。
【0042】
ここで、カソードガス搬送源20の単位時間あたりの駆動量を調整することにより、スタック1のカソード極10に供給するカソードガスの流量を調整させ、カソードガスの利用率を調整させ得る。具体的にはカソードガス搬送源20がファンやブロアであるときには、これらの単位時間あたりの回転数を変化させることによりカソードガスの利用率を変化させ得る。ここで、スタック1のカソード極10に供給されるカソードガスの単位時間あたりの流量を増加すれば、カソードガスの利用率を減少させ得る。これに対して、スタック1のカソード極10に供給するカソードガスの単位時間あたりの流量を減少させれば、カソードガスの利用率を増加させ得る。これがカソードガスの利用率調整処理である。
【0043】
また、燃料搬送源34の単位時間あたりの駆動量を調整することと、改質水搬送源36の単位時間当たりの駆動量を調整することにより、スタック1のアノード極11に供給されるアノードガスの流量を調整でき、アノードガスの利用率を調整させ得る。具体的には燃料搬送源34がファンやブロアであるときには、これらの単位時間あたりの回転数を調整することによりアノードガスの利用率を調整させ得る。改質水搬送源36がポンプであるときには、この単位時間あたりの回転数を調整させることによりアノードガスの利用率を調整させ得る。ここで、スタック1の定常運転において、スタック1のアノード極11に供給するアノードガスの単位時間当たりの流量を増加すれば、アノードガスの利用率を減少させ得る。スタック1のアノード極11に供給するアノードガスの単位時間あたりの流量を減少させれば、アノードガスの利用率を増加させ得る。これがアノードガスの利用率調整処理である。
【0044】
また、第2循環路42を流れる冷媒の温度を調整して第1熱交換器61の熱交換量を調整すれば、スタック1のアノード極11に供給される直前のアノードガスの入口温度Taを調整させることができる。ここで、スタック1の定常運転において、第2循環路42を流れる冷媒の温度を低下させ、第1熱交換器61の熱交換量を増加させるためには、第2ポンプ52および/または第3ポンプ53の単位時間あたりの回転数を増加させれば良い。第2循環路42を流れる冷媒の温度を高めて、第1熱交換器61の熱交換量を減少させるためには、第2ポンプ52および/または第3ポンプ53の単位時間あたりの回転数を減少させれば良い。これがアノードガスの入口温度調整処理である。
【0045】
また、迂回弁28の開度を調整すれば、V1/V2の比率を調整でき、加湿器23のハウジングの温度を調整でき、ひいてはスタック1のカソード極10に供給されるカソードガスの入口温度を調整させることができる。ここで、スタック1の定常運転において、V1を増加させれば、加湿器23のハウジングの温度を高め、ひいてはスタック1のカソード極10に供給される直前のカソードガスの入口温度を高めることができる。V1を減少させれば、加湿器23のハウジングの温度を低め、ひいてはスタック1のカソード極10に供給される直前のカソードガスの入口温度を低めることができる。これがカソードガスの入口温度調整処理である。
【0046】
更に、加熱装置45の発熱量を調整すれば、第1循環路41の冷媒の温度を調整でき、スタック1の冷却を流れる冷媒の温度を調整できる。ここで、加熱装置45の発熱量を増加すれば、第1循環路41の冷媒の温度を高めにでき、スタック1の冷却を流れる冷媒の温度を高めにできる。これに対して加熱装置45の発熱量を減少すれば、第1循環路41の冷媒の温度を低めにでき、スタック1の冷却を流れる冷媒の温度を低めにできる。上記した操作がスタックの冷媒温度調整処理である。更にまた、第1ポンプ51および/または第3ポンプ53の単位時間あたりの回転数を調整すれば、第1循環路41の冷媒の温度を調整でき、スタック1の冷却を流れる冷媒の温度を調整できる。ここで、スタック1の定常運転において、第1ポンプ51および/または第3ポンプ53の単位時間あたりの回転数を増加すれば、第1循環路41の冷媒の温度を低めにでき、スタック1の冷却を流れる冷媒の温度を低めにできる。これに対して第1ポンプ51および/または第3ポンプ53の単位時間あたりの回転数を減少すれば、第1循環路41の冷媒の温度を高めにでき、スタック1の冷却を流れる冷媒の温度を高めにできる。上記した操作がスタックの冷媒温度調整処理である。
【0047】
制御装置8は、入力処理回路および出力処理回路の他に、CPU82および記憶部84をもつ。記憶部84はRAMおよびROMを有しており、設定された発電条件のデータを所定のエリアに記憶する。制御装置8は、燃料搬送源34、改質水搬送源36、カソードガス搬送源20、迂回弁28、第1ポンプ51、第2ポンプ52、第3ポンプ53、加熱装置45等を制御し、スタック1の定常運転の他に、燃料電池更新処理を実行する。
【0048】
ところで、燃料電池システムは経年変化する。経年変化の要因としては、燃料電池のスタック1を構成する構成要素の経年変化、カソードガス、アノードガス等の通路を形成する配管の汚れ、異物蓄積等が挙げられる。スタック1を構成する構成要素の経年変化としては、アノード極11やカソード極10に担持されている触媒の経年変化、イオン伝導膜12の経年変化等が挙げられる。このため燃料電池システムが据え付けられた設置時期に対して、燃料電池システムの最適な発電条件が変化するおそれがある。
【0049】
そこで本実施形態によれば、制御装置8は、燃料電池システムの設置後において更新処理(最適化処理)を実行する。更新処理によれば、燃料電池のスタック1の発電に関する発電条件のパラメータを変化させる条件変化操作を実行してスタック1の電圧変化を求める。この場合、制御装置8は、所定の発電条件のパラメータを一定間隔α毎に均等に変更させることが好ましい。場合によっては、不定間隔毎に変更させても良い。更新処理では発電条件の他のパラメータは、固定または実質的に固定させておくことが好ましい。この場合、更新処理に要する時間を短縮できる。但し、電圧の最大値が得られる限り、他のパラメータを変更させても良い。
【0050】
上記した更新処理は定期的または不定期的に実行されることが好ましい。定期的とは、所定の時間間隔毎にという意味である。所定の時間間隔は、燃料電池のスタック1の構成部品の経年劣化等を考慮し、システムに応じて任意に設定され、例えば3週間〜3年の範囲内において適宜設定される。更新処理は例えば半年、毎1年毎に実行される。従って、制御装置8はタイマー機能を有することが好ましい。不定期的とは、不定の時間間隔毎にという意味である。システムが定期的にメンテナンスされるときには、メンテナンス時とすることができる。
【0051】
そして制御装置8は、更新処理において、発電条件を変化させる条件変化操作を実行し、スタック1の出力電圧値の最大値に対応する発電条件を検出する。そして、更新発電条件として、制御装置8の記憶部84の所定のエリアに記憶させると共に設定する。制御装置8は、記憶部84に格納されている更新発電条件を基本条件とし、更新処理以降についてはこの基本条件に基づいて、スタック1を発電させる。このため燃料電池システムに経年変化があったとしても、経年変化に対応してスタック1の出力電圧を高く維持できる。
【0052】
ところで、上記した更新処理において、スタック1の出力電圧値を良好に検出するためには、スタック1の内部におけるフラッディングをできるだけ発生させないようにすることが好ましい。仮に、更新処理においてフラッディングが発生するとしても、フラッディングの程度はできるだけ少ない方が好ましい。このため上記した条件変化操作を開始するにあたり、スタック1の内部の湿潤度が低い状態(乾き気味)が更新処理の始点となるようにセットする。そして始点から、スタック1の内部が湿潤度が高い状態に向けて順に移行させることが好ましい。この場合、更新処理の途中において電圧値が過剰に低下すれば、それ以降におけるパラメータ変化を中止しても良い。
【0053】
これと逆に、場合によっては、更新処理において上記した条件変化操作では、スタック1の内部の湿潤度が高い状態を更新処理の始点とし、始点から、スタック1の内部が乾燥する状態に向けて移行させることにしても良い。その理由としては、スタック1が定常運転されているときには、一般的には、スタック1の内部が乾燥している状態よりも、スタック1の内部の湿潤度が高い状態である。このため、スタック1の定常運転状態から更新処理に速やかに移行させ易いためである。
【0054】
更新処理において、始点から終点に向かう間に、電圧値が所定電圧(システムに応じて実験またはシミュレーション等に基づいて設定されており、例えば0.2〜0.4ボルト内の任意値)よりも急激に低下したら、制御装置8は、それ以降の操作を中止しても良い。この場合、制御装置8は、始点から中止点までの間における最大電圧値に対応する値を記憶部84に格納させ、以降の定常運転をその値に基づいて行う。
【0055】
図2は制御装置が実行する更新処理のフローチャートの一例を示す。先ず制御装置8は、更新処理が必要な時刻か否かを読み込み(ステップS102)、必要であれば(ステップS102のYES)、発電条件のパラメータを変更させる範囲を規定する上限値および下限値を設定し(ステップS106)、スタック1の電流値を固定した状態で、発電条件をこれの始点からαぶん変化させ(ステップS108)、電圧値を読み込み(ステップS110)、その電圧値を記憶部84に格納させる(ステップS114)。上記した電流値としては、燃料電池システムにおいて常用される頻度が高い電流値、または、スタック1の内部における湿潤度が電圧変化に与える感度が高い電流値を選択する。
【0056】
更新処理が終了でなければ(ステップS116のNO)、ステップS108に戻り、上記した操作を実行する。更新処理が終了であれば(ステップS114のYES)、上限値および下限値内における電圧値の最大値Vmを抽出し(ステップS118)、電圧値の最大値Vmに対応する発電条件のパラメータの値を設定し(ステップS120)、記憶部84の記憶させ(ステップS122)、メインルーチンにリターンする。最大値Vmを抽出する場合には、制御装置8は、電圧値の二つのデータを比較し、大きいデータを選択するステップを全部のデータについて繰り返すことにより、最大値Vmを抽出できる。
【0057】
(実施形態2A)
図3は実施形態2Aの概念を模式的に示す。本実施形態は上記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1および図2を準用する。図3の横軸はカソードガスの利用率を示し、縦軸は電圧値(V)を示す。本実施形態によれば、図3における特性線A1は、燃料電池システムを設置した直後の発電特性を示し、頂点電圧を有する山形特性を示す。図3はあくまでも特性の概念図を示し、細部の特性まで示すものではない。システムの設置直後では、制御装置8は、カソードガスの利用率(パラメータ)を、上限値max(1)と下限値min(1)との範囲内において一定間隔α3毎に均等に変更させる。変更は、スタック1の電流値が固定されている状態で行う。上記した電流値としては、燃料電池システムにおいて常用される頻度が高い電流値、または、スタック1の内部における湿潤度が電圧変化に与える感度が高い電流値を選択する。
【0058】
他のパラメータは、制御装置4に予め設定されている値とする。これを1回目の更新処理として取り扱うことができる。他のパラメータは、カソードガスの入口温度、アノードガスの利用率、アノードガスの入口温度、スタック1を流れる冷媒の温度を含む。
【0059】
上記した図3に示す特性線A1によれば、カソードガスの利用率がa1付近のとき、スタック1の出力電圧は最大値Vm(頂点電圧)を示す。従って、燃料電池システムが設置されている状態では、制御装置8は、定常運転(定格運転)において、カソードガスの利用率をa1付近に基づいてスタック1を発電させる。なお、利用率a1は、システムの出荷時に制御装置8に予め設定されていても良い。
【0060】
ところで、燃料電池ステムは経年変化する。経年変化の要因としては、燃料電池のスタック1を構成する構成要素の経年変化、カソードガス、アノードガス等の通路を形成する配管の汚れ、異物蓄積等が挙げられる。スタック1を構成する構成要素の経年変化としては、アノード極11やカソード極10に担持されている触媒の経年変化、イオン伝導膜12の経年変化等が挙げられる。このため燃料電池システムが据え付けられた設置時期に対して、燃料電池システムの最適な発電条件が変化するおそれがある。一般的には、経年変化によりフラッディングが発生し易くなる。
【0061】
そこで本実施形態によれば、制御装置8は、燃料電池システムの設置後において所定時間(例えば2週間から5年の範囲内の任意時間)経過すると、定常運転(定格運転)を中断し、2回目の更新処理を移行する。移行時には、カソードガスの利用率などを急変させることなく、徐々に変化させることが好ましい。この更新処理では、カソードガスの利用率を上限値max(2)と下限値min(2)との範囲内において変化させ、スタック1の電圧変化を求める。この場合、制御装置8は、カソードガスの利用率を一定間隔α3毎に均等に自動的に変更させる。更新処理では他の発電条件のパラメータは、定常運転(定格運転)の値に固定させておくことが好ましい。この場合、測定データの数が過剰にならず、更新処理に要する時間が短縮される。但し、他のパラメータを微小量であれば変化させもよいが、その変更した値に固定させておくことが好ましい。
【0062】
このような更新処理はスタック1が定常運転(例えば定格運転)しているときにおいて、定常運転を中断して実行される。この更新処理において、発電特性は、一般的には、図3における特性線A2のようになると考えられる。ここで、システムの経年変化により、スタック1の内部においてフラッディングが発生し易くなるため、一般的には、カソードガスの利用率がやや低下したa2(a2<a1)付近のとき、スタック1の出力電圧(頂点電圧)は最大値Vmを示す。
【0063】
なお、本実施形態によれば、万一、山形特性が得られないときには、上限値max(2)と下限値min(2)との範囲内において、スタック1の出力電圧値が最大となる最大値Vmを求め、そのときにおけるカソードガスの利用率を新しい利用率として更新する。
【0064】
制御装置8は、出力電圧値の最大値Vmに対応するカソードガスの利用率a2を、制御装置8の記憶部84の所定のエリアに記憶させる。次回の更新処理まで、制御装置8は、その利用率a2をそれ以降の定常運転(定格運転)におけるカソードガスの利用率の基本条件として設定し、利用率a2に基づいてスタック1を発電させる。このため燃料電池システムに経年変化があったとしても、スタック1の出力電圧を高く維持できる。
【0065】
ところで上記した更新処理において、スタック1の出力電圧値を良好に検出するためには、スタック1の内部においてフラッディングをできるだけ発生させないようにすることが好ましい。仮に、更新処理においてフラッディングが発生するとしても、その程度はできるだけ少ない方が好ましい。このため上記した条件変化操作では、スタック1の内部の湿潤度が低い状態(乾き気味)から、スタック1の内部が湿潤度が高い状態に向けて移行させる。その理由としては、フラッディングができるだけ抑制されるため更新処理に要する時間を短縮できるためである。フラッディングがいったん発生すると、フラッディングは出力電圧の大きな低下を誘発させるため、測定データにノイズが入り易くなる。
【0066】
ここで、一般的には、カソードガスの利用率が低いことは、スタック1に供給されるカソードガスの単位時間あたりの流量が多めであり、発電で生成される水が増加するものの、燃料電池の内部の水詰まりを飛ばして除去し易いため、MEAの内部の湿潤度が抑えられる。これに対して、カソードガスの利用率が高いことは、スタック1に供給されるカソードガスの単位時間あたりの流量が少なめであり、燃料電池の内部の水詰まりを飛ばす性質が低下するため、燃料電池の内部の湿潤度が高められる。
【0067】
従って、制御装置8は、2回目の更新処理において、カソードガスの利用率の上限値max(2)と下限値min(2)とに間において、利用率が低い側(下限値min(2),燃料電池の内部の湿潤度が低い状態,乾燥状態)を始点とし、利用率が高い側(上限値max(2),燃料電池の内部の湿潤度が高い状態)を終点とする。そして制御装置8は、始点から終点に向けて、すなわち矢印H方向(図3参照)に向けて、カソードガスの利用率をα3ずつ均等間隔で変化させつつ、スタック1を発電させる。この場合、上記したカソードガスの利用率の調整処理を実行することにより、カソードガスの利用率を変化させれば良い。α3はシステムに応じて適宜設定される任意値である。
【0068】
2回目の更新処理から所定時間経過すると、更新処理が実行される。従って、定常運転における利用率は、3回目の更新処理の始点となる利用率に移行する。移行時には、カソードガスの利用率を急変させないように、制御装置8は利用率を徐々に変化させることが好ましい。この場合においても、制御装置8は、同様に、上限値max(3)と下限値min(3)との範囲内において、下限値min(3)を始点とし、上限値max(3)を終点とし、始点から終点に向けて、カソードガスの利用率をα3ずつ矢印H方向(図3参照)に均等間隔で変化させる。これにより、上限値max(3)と下限値min(3)との範囲内において、出力電圧値の最大値Vmに対応するカソードガスの利用率を検出し、そのカソードガスの利用率を記憶部84に格納する。3回目の更新処理においては、特性線A3が得られると考えられる。そしてそれ以降の定常運転(定格運転)については、そのカソードガスの利用率に基づいてスタック1を発電させる。以降の更新処理についても制御装置8は同様に実行する。
【0069】
なお、本実施形態によれば、3回目の更新処理において、万一、山形特性が得られないときには、上限値max(3)と下限値min(3)との範囲内において、スタック1の出力電圧値が最大となる最大値Vmを求め、そのときにおけるカソードガスの利用率を新しい利用率として設定する。
【0070】
3回目の更新処理についても、制御装置8は、同様に、上限値max(3)と下限値min(3)との範囲内において、矢印H方向(図3参照)に向けて、すなわち、カソードガスの利用率が低い側(燃料電池の内部の湿潤度が低い状態)から、カソードガスの利用率が高い側(燃料電池の内部の湿潤度が高い状態)に向けてカソードガスの利用率を変化させることにより、出力電圧値の最大値Vmに対応するカソードガスの利用率を検出し、その利用率を記憶部84に格納する。以降の更新処理についても同様とする。
【0071】
前述したように、システムの経年変化等によりフラッディングが発生し易くなる。このため更新処理におけるフラッディングを抑えるべく、上記した更新処理において、更新処理の回数nが増加するにつれて、カソードガスの利用率を低下させる方向(カソードガスの流量を増加させる方向,フラッディングを抑制させる方向)に移行させる。このため、図3から理解できるように、回数nが増加するにつれて、制御装置8は、利用率の上限値max(n)および下限値min(n)の双方を低下させる方向に設定する。この場合、測定データの数が減少するため更新処理に要する時間が短縮され、且つ、更新処理におけるフラッディングが抑制され、最大値Vmを発見し易い利点が得られる。
【0072】
例えば、1回目の更新処理における上限値をmax(1)および下限値をmin(1)とするとき、2回目以降の更新処理については、更新処理の回数をnとするとき、利用率について、n回目の上限値max(n)=max(1)−(n−1)×γ1にできる。且つ、n回目の下限値min(n)=min(1)−(n−1)×γ2にできる。γ1=γ2、γ1≒γ2とすることができる。なお、カソードガスの利用率の上限値max(n)と下限値min(n)とについては、異常な数値とならないように閾値が予め設定されている。
【0073】
更新処理において、始点から終点に向かう間に、電圧値が所定電圧(システムに応じて実験またはシミュレーション等に基づいて設定されており、例えば0.3ボルト)よりも急激に低下したら、制御装置8は、それ以降の操作を中止しても良い。この場合、制御装置8は、始点から中止点までの間における最大電圧値に対応する利用率を記憶部84に格納させ、以降の定常運転をその利用率に基づいて行う。
【0074】
なお本実施形態によれば、更新処理において、他のパラメータを固定させまたは実質的に固定させた状態でカソードガスの利用率を変化させているため、データの数の過剰化が抑えられ、更新処理を短時間で済ませ得る。本明細書において、『他のパラメータを実質的に固定』とは、更新処理における最大電圧値が良好に得られる範囲内において、他のパラメータを微小量変化させる場合を含む意味である。
【0075】
(実施形態2B)
図4は実施形態2Bを示す。本実施形態は上記した実施形態2Aと基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。実施形態2Aとは異なり、本実施形態によれば、更新処理において、スタック1の内部の湿潤度が高い状態から、スタック1の内部の湿潤度が低い状態(乾き状態)に向けて、カソードガスの利用率をα4ずつ均等間隔で移行させる。
【0076】
その理由としては、スタック1が定常運転(定格運転)されているときには、一般的には、スタック1の内部が乾燥している状態よりも、スタック1の内部の湿潤度が高い状態である。このため、システムが定常運転から更新処理の始点に移行させるとき、パラメータ(カソードガスの利用率)の急変が回避されためである。従って、パラメータの急変に基づく電圧低下が抑制される。更に、更新処理の開始時において、実際のスタック1の定常運転に近い状態でデータが良好に得られやすいためである。
【0077】
そこで上記した更新処理において、カソードガスの利用率が高い側(燃料電池の内部の湿潤度が高い状態)を始点とし、カソードガスの利用率が低い側(燃料電池の内部の湿潤度が低い状態)を終点とし、始点から終点に向けて、矢印L方向(図4参照)に向けて、カソードガスの利用率をα4ずつ均等間隔で変化させつつ、スタック1を発電させる。この場合、上記したカソードガスの利用率の調整処理を実行する。このように制御装置8はカソードガスの利用率を変化させることにより、出力電圧値の最大値Vmに対応する利用率を検出し、その利用率を記憶部84に格納する。そして次回の更新処理まで、その利用率を定常運転(定格運転)におけるカソードガスの利用率の基本条件とし、スタック1を発電させる。
【0078】
なお、更新処理では他の発電条件のパラメータは、固定させておくことが好ましい。測定データの数の過剰化が抑えられ、更新処理が短時間で済むためである。
【0079】
2回目の更新処理についても、制御装置8は、同様に、上限値max(2)を始点とし、下限値min(2)を終点とし、始点から終点までの範囲内において、矢印L方向(図4参照)に向けて、カソードガスの利用率を変化させる。これにより出力電圧値の最大値Vmに対応する利用率を検出し、その利用率を記憶部84に格納する。そしてその利用率に基づいてスタック1を発電させる。
【0080】
3回目の更新処理についても、制御装置8は、同様に、上限値max(3)を始点とし、下限値min(3)を終点とし、始点から終点に向けて、すなわち、矢印L方向(図4参照)に向けて、カソードガスの利用率を変化させる。これにより、制御装置8は、出力電圧値の最大値Vmに対応する利用率を検出し、その利用率を記憶部84に格納する。そしてその発電条件に基づいてスタック1を発電させる。万一、山形特性が得られないときには、始点と終点との範囲内において、スタック1の出力電圧値が最大となる最大値Vmを求め、そのときにおけるカソードガスの利用率を新しい利用率として設定する。
【0081】
前述したように、システムの経年変化の影響などによりフラッディングが発生し易くなる。このため、上記した更新処理において、更新処理の回数nが増加するにつれて、カソードガスの利用率を低下させる方向(カソードガスの流量が増加する方向,フラッディングを抑制する方向)に移行させる。このため、回数nが増加するにつれて、上限値max(n)および下限値min(n)の双方を低下させる方向に設定する。この場合、更新処理における測定データの数の過剰化が抑制され、更新処理に要する時間が短縮される。且つ、最大値Vmを発見し易い。
【0082】
例えば、1回目の更新処理における上限値をmax(1)および下限値をmin(1)とするとき、2回目以降の更新処理については、更新処理の回数をnとするとき、n回目の上限値max(n)=max(1)−(n−1)×γ1にでき、且つ、n回目の下限値min(n)=min(1)−(n−1)×γ2にできる。γ1=γ2、γ1≒γ2とすることができる。
【0083】
更新処理において、始点から終点に向かう間に、電圧値が所定電圧(システムに応じて実験またはシミュレーション等に基づいて設定されており、例えば0.3ボルト)よりも急激に低下したら、制御装置8は、それ以降の操作を中止しても良い。この場合、制御装置8は、始点から中止点までの間における最大電圧値に対応する利用率を記憶部84に格納させ、以降の定常運転をその利用率に基づいて行う。なお本実施形態によれば、他のパラメータを固定または実質的に固定させた状態でアノードガスの利用率を変化させているため、測定データの数の過剰化が抑制され、更新処理を短時間で済ませ得る。
【0084】
(実施形態2C)
図5は実施形態2Cを示す。本実施形態は上記した実施形態2A,2Bと基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。制御装置8は、システム設置時において電圧値が最大値Vmであったカソードガスの利用率a1を、更新処理の始点とする。制御装置8は、始点(a1)から利用率を減少させる方向に向けて、すなわち、始点(a1)から利用率を矢印L1方向(図5参照)に向けてα5ずつ均等間隔で減少させる利用率減少処理(第1変化処理)を実行する。
【0085】
次に、制御装置8は、カソードガスの利用率を始点(a1,図5参照)に復帰させ、利用率a1(図5参照,始点)から、利用率を増加させる方向に向けて、すなわち、利用率をa1から矢印H1方向(図5参照)にα5ずつ均等間隔で増加させる利用率増加処理(第2変化処理)を実行する。
【0086】
逆にしても良い。すなわち、制御装置8は、利用率増加処理を実行し、次に利用率減少処理を実行しても良い。
【0087】
スタック1の定常運転時(更新処理していないとき)には、一般的には、電圧値が最大領域であったカソードガスの利用率a1に基づいて、制御装置8はスタック1を発電させている。このため制御が定常運転から更新処理の始点に移行するにあたり、更新処理はカソードガスの利用率a1から開始されるため、利用率が急変されることが抑制される。ひいてはカソードガスの加湿条件、発電条件を急変させることが抑制される利点が得られる。更に制御装置8は定常運転から更新処理に短時間に移行できる利点が得られる。発電条件のパラメータの急変は、スタック1の電圧の低下を発生させることがあるので、できるだけ避けることが好ましい。なお本実施形態によれば、他のパラメータを固定または実質的に固定させた状態で利用率を変化させているため、測定データの数の過剰化が抑えられ、更新処理を短時間で済ませ得る。
【0088】
(実施形態2D)
図6は実施形態2Dの概念を模式的に示す。本実施形態は上記した実施形態2A,2Bと基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。更新処理の回数nが増加したとしても、上限値maxおよび下限値minは固定値とされている。
【0089】
(実施形態3A)
図7は実施形態3Aの概念を模式的に示す。本実施形態は上記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1および図2を準用する。図7の横軸はアノードガスの利用率を示し、縦軸はスタック1の電圧値(V)を示す。図7はあくまでも特性の概念図を示し、細部の特性まで示すものではない。本実施形態によれば、図4における特性線B1は山形特性を示し、燃料電池システムを設置した直後の発電特性を模式的に示す。設置直後では、アノードガスの利用率がb1付近のとき、スタック1の出力電圧は最大値Vmを示す。前述したように燃料電池ステムは経年変化する。このため燃料電池システムが据え付けられた設置時期に対して、燃料電池システムの最適な利用率が変化するおそれがある。
【0090】
そこで本実施形態によれば、制御装置8は、燃料電池システムの設置後から所定時間経過すると、定常運転(定格運転)から定期的または不定期的に更新処理に移行させる。移行にあたり、アノードガスの利用率を急激に変化させず、徐々に変化させることが好ましい。更新処理では、アノードガスの利用率を上限値max(n)と下限値min(n)との範囲内において変化させる条件変化操作を実行し、スタック1の電圧変化を求める。この場合、制御装置8は、カソードガスの利用率を一定間隔α7毎に均等に変更させる。更新処理では他の発電条件のパラメータは、固定させておくことが好ましい。他のパラメータを調整する場合でも、急変を避けるため、微小量に留めることが好ましい。
【0091】
制御装置8は、アノードガスの利用率を変化させる条件変化操作において、スタック1の出力電圧値の最大値Vmを求める。燃料電池システムの設置直後から所定期間(例えば1年)経過したときの発電特性は、図7における特性線B2のようになると考えられる。一般的には、経年変化により、スタック1の内部においてフラッディングが発生し易くなるため、カソードガスの利用率がやや低下したb2付近(b2<b1)のとき、スタック1の出力電圧は最大値Vmを示す。万一、山形特性が得られないときには、上限値max(2)と下限値min(2)との範囲内において、スタック1の出力電圧値が最大となる最大値Vmを求め、そのときにおけるカソードガスの利用率を新しい利用率として設定する。
【0092】
そして制御装置8は、出力電圧値の最大値Vmに対応するアノードガスの利用率を、記憶部84に記憶させる。制御装置8は、この利用率をアノードガスの利用率の基本条件として設定し、その利用率に基づいて、それ以降の定常運転(定格運転)においてスタック1を発電させる。このためシステムが経年変化したとしても、アノードガスの利用率は適切化されているため、スタック1の出力電圧を高く維持できる。
【0093】
上記した更新処理において、スタック1の出力電圧値を良好に検出するためには、スタック1の内部におけるフラッディングをできるだけ発生させないようにすることが好ましい。仮に、更新処理においてフラッディングが発生するとしても、フラッディングの程度はできるだけ少ない方が好ましい。このため上記した条件変化操作を開始するにあたり、制御装置8は、スタック1の内部の湿潤度が低い状態(乾き気味)にスタック1をセットし、湿潤度が低い状態から、スタック1の内部が湿潤度が高い状態に向けて移行させることが好ましい。
【0094】
ここで、アノードガスの利用率が低いことは、スタック1に供給されるアノードガスの単位時間あたりの流量が多めであり、燃料電池の内部の水詰まりを飛ばして除去し易いため、MEAの内部の湿潤度が低めに抑えられる。これに対して、アノードガスの利用率が高いことは、スタック1に供給されるアノードガスの単位時間あたりの流量が少なめであり、燃料電池の内部の水詰まりを飛ばして除去する性質が低下するため、燃料電池のMEAの内部の湿潤度が高められる。
【0095】
従って上記した更新処理において、アノードガスの利用率が低い側(燃料電池の内部の湿潤度が低い状態)から、アノードガスの利用率が高い側(燃料電池の内部の湿潤度が高い状態)に向けて、すなわち矢印H方向(図7参照)に向けて、アノードガスの利用率をα7ずつ変化させつつ、スタック1を発電させる。この場合、上記したアノードガスの利用率の調整処理を実行すれば良い。
【0096】
2回目の更新処理についても、制御装置8は、同様に、上限値max(2)と下限値min(2)との範囲内において、アノードガスの利用率を矢印H方向(図7参照)に向けてα7ずつ変化させる。これにより出力電圧値の最大値Vmに対応する利用率を検出し、その利用率を記憶部84に格納する。そしてその利用率をアノードガスの利用率の基本条件として設定し、それ以降、スタック1を発電させる。
【0097】
3回目の更新処理についても、制御装置8は、同様に、上限値max(3)と下限値min(3)との範囲内において、アノードガスの利用率を矢印H方向(図7参照)に向けてα7ずつ変化させる。これにより出力電圧値の最大値Vmに対応する利用率を検出し、その利用率を記憶部84に格納する。
【0098】
但し、図7から理解できるように、システムの経年変化に伴いフラッディングし易くなる。このためアノードガスの利用率を低下する方向に移行させる必要がある。このため、更新処理の回数nが増加するにつれて、上限値max(n)および下限値min(n)の双方を低下させる方向(フラッディングを抑制する方向)に設定する。この場合、測定データの数が過剰とならず、更新処理に要する時間が短縮され、且つ、最大値Vmを発見し易い。
【0099】
例えば、1回目の更新処理における上限値をmax(1)および下限値をmin(1)とするとき、2回目以降の更新処理については、更新処理の回数をnとするとき、n回目の上限値max(n)=max(1)−(n−1)×γ3にでき、且つ、n回目の下限値min(n)=min(1)−(n−1)×γ4にできる。γ3=γ4、γ3≒γ4とすることができる。
【0100】
更新処理において、始点から終点に向かう間に、電圧値が所定電圧(システムに応じて実験またはシミュレーション等に基づいて設定されており、例えば0.3ボルト)よりも急激に低下したら、制御装置8は、それ以降の操作を中止しても良い。この場合、制御装置8は、始点から中止点までの間における最大電圧値に対応する利用率を記憶部84に格納させ、以降の定常運転をその利用率に基づいて行う。なお本実施形態によれば、他のパラメータを定常運転(定格運転)の値に固定させた状態で、アノードガスの利用率を変化させているため、更新処理を短時間で済ませ得る。
【0101】
(実施形態3B)
図8は実施形態3Bの概念を模式的に示す。本実施形態は上記した実施形態3Aと基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。実施形態3Aと異なり、本実施形態によれば、更新処理において上記した条件変化操作では、スタック1の内部の湿潤度が高い状態から、スタック1の内部の湿潤度が低いに向けて移行させる。その理由としては、スタック1が定常運転されているときには、一般的には、スタック1の内部が乾燥している状態よりも、スタック1の内部の湿潤度が高い状態である。このためアノードガスの利用率を急変させることなく、定常運転から更新処理への移行が円滑となるため。
【0102】
そこで上記した更新処理において、アノードガスの利用率が高い側(燃料電池の内部の湿潤度が高い状態)から、アノードガスの利用率が低い側(燃料電池の内部の湿潤度が低い状態)に向けて、矢印L方向(図8参照)に向けて、アノードガスの利用率をα8ずつ変化させつつ、スタック1を発電させる。この場合、上記したアノードガスの利用率の調整処理を実行する。更新処理では他の発電条件のパラメータは、固定させておく。
【0103】
このように制御装置8は出力電圧値の最大値Vmに対応する利用率を検出する。そのアノードガスの利用率を記憶部84に格納する。そしてその利用率を定常運転(定格運転)の基本条件として設定する。次回の更新処理についても同様とする。
【0104】
ここで、制御装置8は、更新処理の回数nが増加するにつれて、上限値max(n)および下限値min(n)を低下させる方向(フラッディングを抑制する方向)に設定する。この場合、測定データの数が抑えられ、更新処理に要する時間が短縮され、且つ、最大値Vmを発見し易い。
【0105】
例えば、1回目の更新処理における上限値をmax(1)および下限値をmin(1)とするとき、2回目以降の更新処理については、更新処理の回数をnとするとき、n回目の上限値max(n)=max(1)−(n−1)×γ3にでき、且つ、n回目の下限値min(n)=min(1)−(n−1)×γ4にできる。γ3=γ4、γ3≒γ4とすることができる。なお本実施形態によれば、他のパラメータを固定させた状態でアノードガスの利用率を変化させているため、更新処理を短時間で済ませ得る。
【0106】
(実施形態3C)
図9は実施形態3Cの概念を模式的に示す。本実施形態は上記した実施形態3A,3Bと基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。図9に示すように、システム設置時において電圧値が最大値Vmであったアノードガスの利用率はb1(図9参照)とされている。定常運転(定格運転)では、アノードガスの利用率はb1とされている。定常運転から更新処理に移行するにあたり、制御装置8は、利用率b1を始点とし、利用率を減少させる方向に順に利用率をα9ずつ順に矢印L1方向(図9参照)に減少させる利用率減少処理(第1変化処理)を実行する。次に、制御装置8は利用率をb1に復帰させ、その後、利用率b1を始点とし、利用率を増加させる方向に順に利用率をα9ずつ順に矢印H1方向(図9参照)に増加させる利用率増加処理(第2変化処理)を実行する。
【0107】
あるいは逆にしても良い。すなわち、利用率増加処理を実行した後に、利用率減少処理を実行してもよい、
一般的には、スタック1の定常運転(定格運転)時には、電圧値が最大値Vmを示す利用率b1に基づいて、制御装置8はスタック1を発電させている。このため、定常運転から更新処理に移行するにあたり、アノードガスの利用率b1を始点とするため、利用率を急変させることが抑制される。ひいては加湿条件、発電条件を急変させることが抑制される。なお、発電条件の急変はスタック1の電圧の低下を発生させることがあるので、避けることが好ましい。なお本実施形態によれば、他のパラメータを定常運転(定格運転)時における値、あるいは、その付近の値として固定させた状態で、アノードガスの利用率を変化させている。このため測定データの数の過剰化が抑制され、更新処理を短時間で済ませ得る。
【0108】
(実施形態3D)
図10は実施形態3Dの概念を模式的に示す。本実施形態は上記した実施形態3A,3Bと基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。図10に示すように、更新処理の回数nが増加したとしても、上限値maxおよび下限値minは固定値とされている。
【0109】
(実施形態4A)
図11は実施形態4Aの概念を模式的に示す。本実施形態は上記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。図11における特性線C1は、燃料電池システムを設置した直後の発電特性を示す。図11はあくまでも特性の概念図を示し、細部の特性まで示すものではない。システムの設置直後では、カソードガスの入口温度がc1付近のとき、スタック1の出力電圧は最大値Vmを示す。制御装置8は、燃料電池システムの設置後において定期的または不定期的に更新処理を実行する。更新処理では、スタック1に供給される直前のカソードガスの入口温度Tcを変化させる条件変化操作を実行し、スタック1の電圧変化を求める。この場合、制御装置8は、カソードガスの入口温度を一定間隔α11毎に均等に変更させる。このような更新処理はスタック1が定常運転(例えば定格運転)しているときにおいて実行される。
【0110】
更に制御装置8は、2回目の更新処理において、上限値min(2)と下限値max(2)との間において、カソードガスの入口温度を変化させる条件変化操作を実行し、スタック1の出力電圧値の最大値Vmを求める。図11における特性線C2が得られる。
【0111】
そして制御装置8は、出力電圧値の最大値Vmに対応するカソードガスの入口温度c2を、制御装置8の記憶部84に記憶させる。制御装置8は、この入口温度c2を定常運転(定格運転)の基本条件として設定し、それ以降、入口温度c2に基づいてスタック1を発電させる。このため燃料電池システムに経年変化があったとしても、カソードガスの入口温度は適切化されているため、スタック1の出力電圧を高く維持できる。
【0112】
上記した更新処理における条件変化操作では、スタック1の内部の湿潤度が低い状態(乾き気味)から、スタック1の内部が湿潤度が高い状態に向けて移行させる。従って上記した更新処理において、カソードガスの入口温度が低い側(燃料電池の内部の湿潤度が低い状態)から、カソードガスの入口温度が高い側(燃料電池の内部の湿潤度が高い状態)に向けて、矢印H方向(図11参照)に向けてカソードガスの入口温度を変化させつつ、スタック1を発電させる。この場合、上記したカソードガスの入口温度調整処理を実行すれば良い。
【0113】
次回の更新処理についても、同様に、カソードガスの入口温度を矢印H方向(図11参照)に向けて変化させることにより、出力電圧値の最大領域に対応する発電条件を検出し、その更新発電条件を記憶部84に格納する。
【0114】
経年変化に伴いフラッディングが発生するおそれがある。そこで、更新処理の回数nが増加するにつれて、制御装置8は、カソードガスの入口温度について、上限値max(n)および下限値min(n)の双方を低下させる方向(すなわち更新処理におけるフラッディングを抑制する方向)に設定する。この場合、測定データの数の過剰化が避けられ、更新処理に要する時間が短縮され、且つ、最大値Vmを発見し易い。
【0115】
例えば、1回目の更新処理における上限値をmax(1)および下限値をmin(1)とするとき、2回目以降の更新処理については、更新処理の回数をnとするとき、n回目の上限値max(n)=max(1)−(n−1)×δ1にでき、且つ、n回目の下限値min(n)=min(1)−(n−1)×δ2にできる。δ1=δ2、δ1≒δ2とすることができる。
【0116】
更新処理において、始点から終点に向かう間に、電圧値が所定電圧(システムに応じて実験またはシミュレーション等に基づいて設定されており、例えば0.3ボルト)よりも急激に低下したら、制御装置8は、それ以降の操作を中止しても良い。この場合、制御装置8は、始点から中止点までの間における最大電圧値に対応する入口温度を記憶部84に格納させ、以降の定常運転をその入口温度に基づいて行う。なお本実施形態によれば、他のパラメータを固定させた状態でカソードガスの入口温度Tcを変化させているため、更新処理を短時間で済ませ得る。
【0117】
(実施形態4B)
図12は実施形態4Bの概念を模式的に示す。本実施形態は上記した実施形態4Aと基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。実施形態4Aとは異なり、本実施形態によれば、更新処理において、スタック1の内部の湿潤度が高い状態から、スタック1の内部が乾燥する方向に向けて移行させる。その理由としては、スタック1が定常運転されているときには、一般的には、スタック1の内部が乾燥している状態(湿潤度が低い状態)よりも、スタック1の内部の湿潤度が高い状態であるため、システムを定常運転から更新処理に円滑に移行させ易いためである。ここで、カソードガスの入口温度が高いことは、スタック1に供給されるカソードガスに含まれる水蒸気量が多めであり、MEAの内部の湿潤度が高くなり易い。
【0118】
そこで上記した更新処理において、カソードガスの入口温度が高い側(燃料電池の内部の湿潤度が高い状態)から、カソードガスの入口温度が低い側(燃料電池の内部の湿潤度が低い状態)に向けて、すなわち矢印L方向(図12参照)に向けて、カソードガスの入口温度をα12ずつ変化させつつ、スタック1を発電させ、出力電圧値の最大値Vmに対応する入口温度を検出する。他のパラメータは実質的に固定させておく。制御装置8は、そのカソードガスの入口温度を記憶部84に格納する。そしてその入口温度を定常運転(定格運転)の基本条件としてスタック1を発電させる。なお、経年変化によりフラッディングし易くなる。そこで、制御装置8は更新処理の回数nが増加するにつれて、上限値max(n)および下限値min(n)の双方を低下させる方向(更新処理におけるフラッディングを抑える方向)に設定する。
【0119】
(実施形態4C)
図13は実施形態4Cの概念を模式的に示す。本実施形態は上記した実施形態4A,4Bと基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。本実施形態によれば、更新処理において上記した条件変化操作では、次のように行う。すなわち、システム設置時において電圧値が最大領域であったカソードガスの入口温度c1(図13参照)を始点とし、入口温度c1を低下させる方向に順に利用率をα13ずつ順に矢印L1方向(図13参照)に低下させる入口温度低下処理を実行する。次に、入口温度をc1に復帰させ、入口温度c1を始点とし、カソードガスの入口温度を高める方向に順に利用率をα13ずつ順に矢印H1方向(図13参照)に増加させる入口温度増加処理を実行する。なお、逆にしても良い。すなわち、入口温度増加処理を実行した後、入口温度低下処理を実行することにしても良い。
【0120】
スタック1の定常運転(定格運転)時には、電圧値が最大値Vmであったカソードガスの入口温度c1に基づいて、制御装置8はスタック1を発電させていることが多い。このためシステムが定常運転から更新処理に移行するとき、カソードガスの入口温度c1が始点とされ、カソードガスの入口温度が急変することが抑制される利点が得られる。ひいてはカソードガスの加湿条件、発電条件を急変させることが抑制される。なお、発電条件の急変は、スタック1の電圧の低下を発生させることがあるので、避けることが好ましい。
【0121】
(実施形態4D)
図14は実施形態4Dの概念を模式的に示す。本実施形態は上記した実施形態4A,4Bと基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。更新処理の回数nが増加したとしても、上限値maxおよび下限値minは固定値とされている。
【0122】
(実施形態5A)
図15は実施形態5Aを示す。本実施形態は上記した実施形態1,2と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。図15における特性線D1は、燃料電池システムを設置した直後の発電特性を示す。図15はあくまでも特性の概念図を示し、細部の特性まで示すものではない。システムの設置直後では、アノードガスの入口温度Taがd1付近のとき、スタック1の出力電圧は最大値Vmを示す。本実施形態によれば、制御装置8は、燃料電池システムの設置後において定期的または不定期的に更新処理を実行する。更新処理では、アノードガスの入口温度を変化させる条件変化操作を実行してスタック1の電圧変化を求める。この場合、制御装置8は、アノードガスの入口温度を一定間隔α15毎に均等に、矢印H方向(図15参照)変更させる。このような更新処理はスタック1が定常運転(例えば定格運転)しているときにおいて実行される。
【0123】
更に制御装置8は、2回目の更新処理において、下限値min(2)を始点とし、上限値max(2)を終点とし、始点から終点までの間において、アノードガスの入口温度を変化させる条件変化操作において、スタック1の出力電圧値の最大値Vmを求める。
【0124】
そして制御装置8は、出力電圧値の最大値Vmに対応するカソードガスの入口温度d2を、制御装置8の記憶部84に記憶させる。制御装置8は、この入口温度d2を基本条件として設定し、それ以降、入口温度d2に基づいてスタック1を発電させる。このため燃料電池システムに経年変化があったとしても、入口温度d2は適切化されているため、スタック1の出力電圧を高く維持できる。
【0125】
上記した更新処理における条件変化操作では、スタック1の内部の湿潤度が低い状態(乾き気味)から、スタック1の内部が湿潤度が高い状態に向けて移行させる。従って上記した更新処理において、アノードガスの入口温度が低い側(燃料電池の内部の湿潤度が低い状態)から、アノードガスの入口温度が高い側(燃料電池の内部の湿潤度が高い状態)に向けて、矢印H方向(図15参照)に向けて、アノードガスの入口温度を変化させつつ、スタック1を発電させる。この場合、上記したカソードガスの入口温度調整処理を実行すれば良い。
【0126】
3回目の更新処理においても同様に、下限値min(3)を始点とし、上限値max(3)を終点とし、始点から終点までの間において、アノードガスの入口温度を変化させる条件変化操作において、スタック1の出力電圧値の最大値Vmを求める。そしてその入口温度を基本条件とし、それ以降について、その入口温度に基づいてスタック1を発電させる。
【0127】
経年変化に伴いフラッディングが発生し易くなる。そこで、更新処理の回数nが増加するにつれて、制御装置4は、アノードガスの入口温度について上限値max(n)および下限値min(n)の双方を低下させる方向(更新処理におけるフラッディングを抑える方向)に設定する。この場合、更新処理に要する時間が短縮される。例えば、1回目の更新処理における上限値をmax(1)および下限値をmin(1)とするとき、2回目以降の更新処理については、更新処理の回数をnとするとき、n回目の上限値max(n)=max(1)−(n−1)×δ3にでき、且つ、n回目の下限値min(n)=min(1)−(n−1)×δ4にできる。δ3=δ4、δ3≒δ4とすることができる。
【0128】
(実施形態5B)
図16は実施形態5Bを示す。本実施形態は上記した実施形態5Aと基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。実施形態5Aと異なり、本実施形態によれば、更新処理に係る条件変化操作では、スタック1の内部の湿潤度が高い状態から、スタック1の内部が乾燥する状態に向けて移行させる。
【0129】
そこで上記した更新処理において、アノードガスの入口温度が高い側(燃料電池の内部の湿潤度が高い状態)から、アノードガスの入口温度が低い側(燃料電池の内部の湿潤度が低い状態)に向けて、矢印L方向(図16参照)に向けて、アノードガスの入口温度を変化させつつ、スタック1を発電させる。そして、制御装置8は、出力電圧値の最大値Vmに対応する入口温度を検出し、入口温度を記憶部84に格納する。それ以降については、その入口温度に基づいてスタック1を発電させる。次回の更新処理についても同様とする。
【0130】
制御装置8は、更新処理の回数nが増加するにつれて、アノードガスの入口温度について、上限値max(n)および下限値min(n)を低下させる方向に設定する。フラッディングを抑えるためである。なお本実施形態によれば、他のパラメータを固定させた状態でアノードガスの入口温度を変化させているため、更新処理を短時間で済ませ得る。
【0131】
(実施形態5C)
図17は実施形態5Cの概念を模式的に示す。本実施形態は上記した実施形態5A,5Bと基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。本実施形態によれば、更新処理において上記した条件変化操作では、次のように行う。すなわち、制御装置8は、システム設置時において電圧値が最大値Vmであったアノードガスの入口温度d1を始点とし、入口温度d1を低下させる方向に順に利用率をα17ずつ順に矢印L1方向(図17参照)に低下させる入口温度低下処理(第1変化処理)を実行する。次に、制御装置8は、入口温度をd1に復帰させ、入口温度d1を始点とし、アノードガスの入口温度を高める方向に順に利用率をα17ずつ順に矢印H1方向に増加させる入口温度増加処理(第2変化処理)を実行する。制御装置8は、二つの処理の順序を逆に実行しても良い。
【0132】
スタック1の定常運転時には、電圧値が最大値Vmであったカソードガスの入口温度d1に基づいて、制御装置8はスタック1を発電させている。このため、定常運転から更新処理を移行するにあたり、制御装置8は、カソードガスの入口温度d1を始点とする。このため、カソードガスの入口温度を急変させることが抑制される。ひいてはカソードガスの加湿条件、発電条件を急変させることが抑制される利点が得られる。なお、発電条件の急変はスタック1の電圧の低下を発生させることがあるので、避けることが好ましい。
【0133】
(実施形態5D)
図18は実施形態5Dの概念を模式的に示す。本実施形態は上記した実施形態5A,5Bと基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。更新処理の回数nが増加したとしても、上限値maxおよび下限値minは固定値とされている。
【0134】
(実施形態6A)
図19は実施形態6Aの概念を模式的に示す。本実施形態は上記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。図19における特性線E1は、燃料電池システムを設置した直後の発電特性を示す。図19はあくまでも特性の概念図を示し、細部の特性まで示すものではない。システムの設置直後では、スタック1の冷却路14に流す冷媒の温度がe1付近のとき、スタック1の出力電圧は最大値Vmを示す。本実施形態によれば、制御装置8は、燃料電池システムの設置後において定期的または不定期的に、定常運転を中断して更新処理に移行する。更新処理では、スタック1の冷却路14を流れる冷媒(電気絶縁性が高い冷却水等の冷却液)の温度を始点から終点に向けて変化させ、スタック1の電圧変化を求める。この場合、制御装置8は、冷媒の温度を一定間隔α19毎に均等に変更させる。1回目の更新において、始点はmax(1)であり、終点はmin(1)である。他のパラメータは固定または実質的に固定されている。
【0135】
燃料電池システムの設置直後から所定期間(例えば1年)経過したときの発電特性は、図19における特性線E2のようになると考えられる。そして制御装置8は、出力電圧値の最大値Vmに対応する冷媒の温度e2を、制御装置8の記憶部84に記憶させる。制御装置8は、この冷媒温度e2を基本条件として設定し、以降の定常運転(定格運転)については、この冷媒温度e2に基づいて、スタック1を発電させる。このため燃料電池システムに経年変化があったとしても、スタック1を冷却させる冷媒の温度e2は適切化されており、スタック1の出力電圧を高く維持できる。
【0136】
上記した更新処理においては、図19から理解できるように、制御装置8は、冷媒の温度が高い側(燃料電池の内部の湿潤度が低い状態,MEAの乾燥ぎみの状態)を始点とし、冷媒の温度が低い側(燃料電池の内部の湿潤度が高い状態)を終点とする。2回目の更新において、始点はMEAが相対的に乾燥ぎみであるmax(2)であり、終点は燃料電池の内部の湿潤度が相対的に高いmin(2)である。そして制御装置8は更新処理おいて、始点から終点に向けて、すなわち矢印L方向(図19参照)に向けてスタック1の冷却路14に流れる冷媒の温度をα19ずつ均等間隔で変化させつつ、スタック1を発電させる。この場合、上記したカソードガスの入口温度調整処理を実行すれば良い。
【0137】
次回の更新処理についても、同様に、冷媒の温度を始点から終点に向けて変化させることにより、出力電圧値の最大値Vmに対応する冷媒の温度を検出し、その冷媒の温度を記憶部84に格納する。そしてそれ以降については、その冷媒温度に基づいてスタック1を発電させる。3回目の更新において、始点はMEAが相対的に乾燥ぎみであるmax(3)であり、終点は燃料電池の内部の湿潤度が相対的に高いmin(3)である。
【0138】
システムの経年変化に伴い、フラッディングが発生するおそれがある。そこで制御装置8は、図19から理解できるように、更新処理の回数nが増加するにつれて、冷媒の温度については、上限値max(n)および下限値min(n)の双方を昇温させる方向(更新処理においてフラッディングを抑える方向)に設定する。例えば、冷媒の温度について、1回目の更新処理における上限値をmax(1)および下限値をmin(1)とするとき、2回目以降の更新処理については、更新処理の回数をnとするとき、n回目の上限値max(n)=max(1)+(n−1)×η1にでき、且つ、n回目の下限値min(n)=min(1)+(n−1)×η2にできる。η1=η2、η≒η2とすることができる。
【0139】
(実施形態6B)
図20は実施形態6Bの概念を模式的に示す。本実施形態は上記した実施形態6Aと基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。本実施形態によれば、更新処理において上記した条件変化操作では、制御装置8は、スタック1の内部の湿潤度が高い状態を始点とし、スタック1の内部が乾燥する状態を終点とし、始点から終点に向けて移行させる。ここで、スタック1の冷却路14に流れる冷媒の温度が低いことは、スタック1の内部の湿潤度が高くなり易い。これに対して、スタック1の冷却路14に流れる冷媒の温度が高いことは、スタック1の内部の温度が高くなり、スタック1の内部の湿潤度が低めとなり易い。
【0140】
そこで制御装置8は、上記した更新処理において、制御装置8は、スタック1の冷却路14に流れる冷媒の温度が低い側(燃料電池の内部の湿潤度が相対的に高い状態)から、冷媒の温度が高い側(燃料電池の内部の湿潤度が相対的に低い状態)に向けて、矢印H方向(図20参照)に向けてスタック1の冷却路14に流れる冷媒の温度を変化させつつ、スタック1を発電させる。次回の更新処理についても、同様に、スタック1の冷却路14に流れる冷媒の温度を変化させることにより、出力電圧値の最大値Vmに対応する冷媒温度を検出して記憶部84に格納する。そしてそれ以降については、その冷媒温度に基づいてスタック1を発電させる。
【0141】
なお、1回目の更新において、始点は燃料電池の内部の湿潤度が相対的に高いmin(1)である。終点は燃料電池の内部の湿潤度が相対的に低いmax(1)である。2回目の更新において、始点はmin(2)であり、終点はmax(2)である。3回目の更新において、始点はmin(3)であり、終点はmax(3)である。
【0142】
経年変化に伴いフラッディングが発生するおそれがある。そこで、更新処理の回数nが増加するにつれて、制御装置8は、冷媒温度について、上限値max(n)および下限値min(n)の双方を昇温させる方向(フラッディングを抑える方向)に設定する。この場合、更新処理に要する時間が短縮され、且つ、最大値Vmを発見し易い。
【0143】
例えば、1回目の更新処理における上限値をmax(1)および下限値をmin(1)とするとき、2回目以降の更新処理については、更新処理の回数をnとするとき、冷媒の温度について、n回目の上限値max(n)=max(1)+(n−1)×η1にでき、且つ、n回目の下限値min(n)=min(1)+(n−1)×η2にできる。η1=η2、η≒η2とすることができる。なお本実施形態によれば、他のパラメータを固定させた状態でスタック1の冷却路14に流れる冷媒の温度を変化させているため、更新処理を短時間で済ませ得る。
【0144】
(実施形態6C)
図21は実施形態6Cの概念を模式的に示す。本実施形態は上記した実施形態6A,6Bと基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。本実施形態によれば、更新処理において上記した条件変化操作では、次のように行う。すなわち、図21に示すように、システム設置時において電圧値が最大値Vmであった冷媒の温度e1を始点とし、温度e1を上昇させる方向(燃料電池の内部の湿潤度を相対的に低下させる方向)に、温度をα21ずつ矢印H1方向(図21参照)に増加させる温度増加処理(第1変化処理)を実行する。
【0145】
次に、制御装置8は冷媒の温度をe1に復帰させ、その後、温度e1を始点とし、冷媒の温度を低下させる方向(燃料電池の内部の湿潤度を相対的に高める方向)に順にα21ずつ順に矢印L1方向(図21参照)に減少させる温度減少処理(第2変化処理)を実行する。
【0146】
逆にしても良い。すなわち、温度減少処理を実行し、次に、温度増加処理を実行しても良い。
【0147】
スタック1の定常運転時には、電圧値が最大領域であったスタック1の冷却路14は流れる冷媒の温度e1に基づいて、制御装置8はスタック1を発電させている。このためシステムが定常運転から更新処理に移行するにあたり、冷媒の温度e1が始点とされるため、冷媒の温度を急変させることが抑制される。ひいては加湿条件、発電条件を急変させることが抑制される利点が得られる。発電条件の急変はスタック1の電圧の低下を発生させることがあるので、避けることが好ましい。
【0148】
(実施形態6D)
図22は本実施形態の概念を模式的に示す。上記した実施形態6A,6Bと基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1、図2を準用する。更新処理の回数nが増加したとしても、上限値maxおよび下限値minは固定値とされている。
【0149】
(実施形態7)
図23は実施形態7を示す。本実施形態は前記した実施形態1〜6と基本的には共通の構成、および共通の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。燃料電池システムの経年変化に対処すべく、制御装置8は、1回の更新にあたり、更新処理を複数回連続的に実行する。この場合、更新処理におけるデータが平均化され、突発的な異状データを低減させやすい。すなわち、制御装置8は、第1更新処理(前の更新処理)を実行し(ステップS202)、終了すれば(ステップS204のYES)、第1更新処理に引き続いて、スタック1の内部の湿潤度を乾き方向に向けて相対的に低下させるリセット処理を実行する(ステップS206)。その理由としては、スタック1のMEAに過剰に水が残留していれば、後の更新処理における出力電圧の測定に影響を与えるためである。
【0150】
このように制御装置8がリセット処理を所定時間実行すれば、前の更新処理直後におけるスタック1の内部の湿潤度を乾き方向に向けて低下させる。ここで、所定時間は、スタック1のMEAが乾燥気味になるように、システムに応じて実験またはシュミレーション等により予め設定されている(例えば1分間〜3時間の範囲内の任意値)。リセット処理が終了した後(ステップS208のYES)、制御装置8は、第2更新処理(後の更新処理)を実行し(ステップS210)、終了すれば(ステップS212のYES)、メインルーチンにリターンする。なお本実施形態によれば、第1更新処理と第2更新処理とのデータを平均化した新たな発電条件とすることができる。通常データからかけ離れた異状データがあったときには、異状データを取り除いた後に、平均化させて、新たな発電条件とすることができる。
【0151】
このように第2更新処理の前にリセット処理が実施される。このためスタック1のMEAにおける過剰のフラッディングが出力電圧のデータに影響を与えることが抑えられる。ここで、リセット処理としては、次の(i)〜(iii)のうちの少なくとも一つが例示される。
(i)迂回弁28の開度を制御し、スタック1から排出された高温高湿のカソードオフガスが加湿器23の迂回路27を流れる流量を増加させ、加湿器23の保有する水分量を低下させ、カソードガスの加湿度を低下させ、カソードガスに含まれている水蒸気を低減させる。
(ii)加熱装置45を加熱させ、スタック1の冷却路14を流れる冷媒の温度を上昇させ、スタック1の内部を乾燥方向に移行させる。
(iii)ポンプ51,52,53の回転数を制御し、スタック1の冷却路14を流れる冷媒の温度を上昇させ、スタック1の内部を乾燥方向に移行させる。
【0152】
(実施形態8)
本実施形態は前記した各実施形態と基本的には共通の構成、および共通の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。制御装置8は、更新処理の条件変更範囲の下限値と上限値との間において、発電条件を一定間隔α1毎に変更させる粗変更操作を実行する。発電条件としては、カソードガスの利用率、アノードガスの利用率、カソードガスの入口温度、アノードガスの入口温度、スタック1の冷却路14を流れる冷媒の温度のうちの少なくとも一つである。ここで、間隔α1が小さい方が出力電圧値の最大値Vmを発現させるのに有利であるものの、データの数が増加し、測定に時間がかかる。これに対して、間隔α1が大きい方が出力電圧値の最大値Vmを発現させにくいものの、データの数が少なくなり、測定時間が短縮される利点が得られる。
【0153】
ところで、制御装置8が粗変更操作を実行したとしても、スタック1の電圧値の最大値Vmを認識できないとき、変更範囲内において発電条件を一定間隔α1よりも狭い間隔α2(α2<α1)毎に変更させる細変更操作を実行する。粗変更操作が実行されるため、粗変更操作において出力電圧値の最大値Vmが検知されれば、更新処理に要する時間を短縮するのに有利である。
【0154】
しかし粗変更操作における一定間隔α1が粗過ぎるときには、スタック1の電圧値の最大領域が認識されないおそれがある。そこで、スタック1の電圧値の最大領域が良好に認識されない場合には、制御装置8は、変更範囲内において発電条件を一定間隔α1よりも狭い間隔α2(α2<α1)毎に変更させる細変更操作を実行する。細変更操作は、更新処理の条件変化範囲の下限値と上限値との間において実行する。この場合、スタック1の電圧値の最大領域が認識され易くなる。
【0155】
図24は制御装置8が実行するフローチャートの一例を示す。フローチャートはこれに限定されるものではない。先ず、制御装置8は、発電条件のパラメータを変化させる範囲の下限値および上限値を設定し(ステップS302)、その下限値および上限値で規定される設定範囲を分割数mで均等分割し(ステップS304)、発電条件の始点から終点に向けて発電条件をα1ずつ変化させる(ステップS306)。更に制御装置8は、その発電条件における電圧値を読み込み(ステップS308)、その電圧値を記憶部84に記憶させる(ステップS310)、範囲が終了でなければ(ステップS312のNO)、ステップS306に戻り、これらの操作を繰り返す。範囲が終了すれば(ステップS312のYES)、範囲内における電圧値の最大値Vmを抽出する処理を行う(ステップS314)。この場合、制御装置8は、電圧値の二つのデータを比較し、大きいデータを選択するステップを全部のデータについて繰り返すことにより、最大値Vmを抽出できる。最大値Vmが存在すれば(ステップS316のYES)、その電圧値の最大値Vmに対応する発電条件のパラメータを最適値として設定し(ステップS318)、最適値を記憶部84に記憶させる(ステップS320)。
【0156】
電圧値の最大値Vmが存在しなければ(ステップS316のNO)、発電条件のパラメータを変化させる範囲の下限値および上限値を変更させる。この場合、電圧値が最も高かった発電条件のパラメータを、下限値および上限値のうちの一方とする。電圧値が2番目に高かった発電条件のパラメータを、下限値および上限値のうちの他方とする(ステップS322)。分割数mを増加させ(ステップS324)、mが異常値か否かを判定し(ステップS326)、mが異常値でなければ(ステップS326のNO)、ステップS304に戻り、再び、上記した操作を繰り返す。なお、mが異常値であれば(ステップS326のYES)、測定データ数が膨大な数となり、不適切となるため、メインルーチンにリターンする。この場合、制御装置8は、記憶部84に格納されている値を最適値として取り扱うことができる。ステップS324において、分割数mを1.1よりも大きい倍数にでき、例えば分割数mを1.5倍、1.8倍、2倍としても良い。ステップS324において分割数mを増加させているが、分割数は同一でも良いし、減少させても良い。今回の下限値および上限値で規定される範囲は、前回の下限値および上限値で規定される範囲よりも狭いためである。
【0157】
従ってこの制御装置は、条件変化操作において発電条件のパラメータを一定間隔α1毎に変更させる粗変更操作を実行し、粗変更操作により燃料電池の電圧値の最大領域が認識されないとき、電圧値が最も高かった発電条件のパラメータを下限値および上限値のうちの一方とし、且つ、電圧値が2番目に高かった発電条件のパラメータを下限値および上限値のうちの他方とする下限値および上限値変更操作を実行し、上限値変更操作を実行した後における変更範囲内において発電条件のパラメータを一定間隔α2(α2<α1)毎に変更させる変更操作を実行する。場合によっては、α2=α1とすることもできる。
【0158】
なお、上記した制御に代えて、電圧値の最大値Vmが存在しなければ(ステップS316のNO)、発電条件のパラメータを変化させる範囲の下限値および上限値を変更させることなく、分割数mを増加させることにより、α2<α1としても良い。そして、再び、変更範囲内において発電条件のパラメータを一定間隔α2(α2<α1)毎に変更させる変更操作を実行する。なお、mが異常値か否かを判定し、mが異常値でなければ、ステップS304に戻り、再び、上記した操作を繰り返す。なお、mが異常値であれば(ステップS326のYES)、測定データ数が膨大な数となり、不適切となるため、メインルーチンにリターンすることにしても良い。
【0159】
(実施形態9)
本実施形態は前記した実施形態8と基本的には共通の構成、および共通の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。実施形態8によれば、前の粗変更操作が実行される結果、スタック1の内部に過剰に水が残留しており、フラッディング状態であれば、そのフラッディングは後の細変更操作に影響を与えるおそれがある。そこで制御装置8は、粗変更操作と細変更操作との間において、前の更新処理直後におけるスタック1の内部の湿潤度を乾き方向に向けて一旦低下させるリセット処理を所定時間実行する。所定時間は、スタック1の内部が乾燥気味になるように、実験またはシミュレーション等により予め設定されており、例えば30秒〜60分間の範囲の任意値とすることができる。このため細変更操作は、スタック1の内部が過剰に湿潤している状態ではなく、スタック1の内部が乾燥気味の状態において実行できる。従って過剰の湿潤状態が出力電圧のデータに影響を与えることが抑えられる。リセット処理は、カソードガスの加湿度を低下させる操作、スタック1の温度を上昇させる操作のうちの少なくとも一つを実行することにより行い得る。
【0160】
(実施形態10)
図25は実施形態10を示す。本実施形態は前記した各実施形態と基本的には共通の構成、および共通の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図25は制御装置が実行する更新処理のフローチャートの一例を示す。先ず制御装置8は、更新処理が必要な時刻か否かを読み込み(ステップS102)、必要であれば(ステップS102のYES)、発電条件のパラメータを変化させる上限値および下限値を設定し、更に始点を設定し(ステップS106)、その始点から発電条件をα1ぶん変化させ(ステップS108)、電圧値Vを読み込み(ステップS110)、電圧値Vと閾電圧値Vc(所定値)とを比較する(ステップS112)。電圧値Vが閾電圧値Vcよりも高いとき(ステップS112のYES)、その電圧値Vを適切と判定し、記憶部84に格納させる(ステップS114)。更新処理が終了でなければ(ステップS116のNO)、ステップS108に戻り、上記した操作を実行する。
【0161】
更新処理が終了であれば(ステップS118のYES)、上限値および下限値内において電圧値の最大値Vmを抽出し(ステップS118)、最大値Vmに対応する発電条件のパラメータの値を最適値として設定し(ステップS120)、その最適値を記憶部84の記憶させ(ステップS122)、メインルーチンにリターンする。
【0162】
電圧値Vが閾電圧値Vcよりも低いとき(ステップS112のNO)、過剰なフラッディングが発生していると推定される。そこで制御装置8はリセット処理を所定時間実行し、スタック1の内部のフラッディングを解消させた後、ステップS104に戻り、必要があれば、更新処理を最初から再開する。メインルーチンに戻っても良い。ここで、閾電圧値Vcは、スタック1の電圧がフラッディングにより異常に低いことを意味し、燃料電池システムに応じて実験またはシミュレーション等により予め設定されている(例えば0.2〜0.4ボルトの範囲の任意値)。
【0163】
(実施形態11)
本実施形態は前記した各実施形態と基本的には共通の構成、および共通の作用効果を有するため、図1および図2を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。図1から理解できるように、スタック1で発生した余剰の電力を温水として蓄積するための貯湯槽46が設けられている。第3循環路43または貯湯槽46の温水を加熱させる電気ヒータ92が設けられている。スタック1は変換器70、系統連系部71を介して商用電源72および電気負荷に接続されている。スタック1が発電した電力により変換器70、系統連系部71を介して電気負荷が作動される。
【0164】
しかし上記した更新処理では、発電条件を設定範囲内において大きく変更させるため、現在作動している電気負荷で消費できないほどの余剰の電力が発電されるおそれがある。そこで、制御装置8は、更新処理を実行するとき、スタック1で発生した余剰の電力が発生するとき、スイッチング素子90をオンして電気ヒータ92を発熱させ、第3循環路43または貯湯槽46の温水を加熱して熱エネルギとして貯湯槽46に蓄積させる蓄積操作を実行する(処理1)が実行される。このように、更新処理において発生した余剰の電力は貯湯槽46に温水エネルギとして貯蔵される。このような余剰の電力を温水エネルギとして蓄積することは、上記した各実施形態について適用できる。余剰の電力を商用電源72に給電させない場合に有利である。上記した更新処理は発電条件を変動させるため、発生する電力の変動が誘発され易い。このため、1日のうちで、消費電力の変動が最も少ない時間帯(例えば夜間または不在時)を選択して実行することができる。
【0165】
(実施形態12)
本実施形態は前記した各実施形態と基本的には共通の構成、および共通の作用効果を有するため、図1および図2を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。スタック1の発電により電気負荷(図略)が駆動される。しかし更新処理では、前述したように、発電条件を変更させるため、電気負荷で消費できないほどの余剰の電力が発電されるおそれがある。そこで制御装置8は、系統連系部71のスイッチング素子を作動させる。そして、スタック1で発生した余剰の電力を商業電源72側に供給する(処理2)。処理1および処理2を併用させても良い。また、更新処理では、前述したように、発電条件を変更させるため、スタック1で発電される電力が変動し、電気負荷が消費する電力が不足するおそれがある。そこで制御装置8は、更新処理において、系統連系部71のスイッチング素子を作動させ、不足する電力を商業電源72から電気負荷に供給する(処理3)。
【0166】
(実施形態13)
図26および図27は実施形態13を示す。本実施形態は前記した各実施形態と基本的には共通の構成、および共通の作用効果を有するため、図1を準用する。以下、相違する部分を中心として説明する。更新処理にあたり、発電条件のパラメータをmaxとminとの測定範囲内において変化させ、出力電圧値の最大値Vmを求める。このとき図26に示すように出力電圧値の特性の一次関数的であり、山形特性の頂点電圧が見いだせないおそれがある。
【0167】
この場合、制御装置8は、出力電圧値が高くなる側(頂点電圧が存在すると予想される側)に当該測定範囲を拡大させる。この場合、出力電圧値を微分して出力電圧値の傾きを求め、出力電圧値が高くなる側を求めることができる。制御装置8は、拡大した測定範囲において、発電条件のパラメータを変化させ、出力電圧値の特性の頂点電圧を見出す。制御装置8は、頂点電圧が見出されるまで、または、測定範囲が異常となるまで、出力電圧値が高くなる側(頂点電圧が存在すると予想される側)に当該測定範囲を拡大させる。
【0168】
図27は制御装置8が実行するフローチャートの一例を示す。先ず制御装置8は、更新処理が必要な時刻か否か読み込み(ステップS402)、必要であれば(ステップS404のYES)、発電条件のパラメータを変化させるための上限値maxと下限値minとの測定範囲を設定する(ステップS406)。更に制御装置8は、上限値maxと下限値minとの測定範囲において、発電条件をα1ぶん変化させ(ステップS408)、そのときの電圧値Vを読み込み(ステップS410)、記憶部84のエリアに格納させる(ステップS412)。測定範囲が終了でなければ(ステップS414のNO)、ステップS408に戻り、上記した操作を実行する。測定範囲が終了であれば(ステップ414のYES)、制御装置8は、電圧値の頂点を抽出する処理を実行する(ステップS416)。頂点は、上昇する電圧値が下降し始める点の電圧値である。従って、電圧を微分して電圧の傾きを求めることにより、傾きの上昇および下降が交差する部位を頂点電圧として求めることができる。
【0169】
頂点有りのとき(ステップS418のあり)、電圧値の頂点を最大値Vmとして設定する(ステップS430)。頂点なしのとき(ステップS418のなし)、電圧値が高い側に測定範囲を拡大させる(ステップS420)。具体的には、電圧値が高い側に測定範囲が拡大する方向に、下限値minの値を更に移動させる。測定範囲が拡大し過ぎか否か判定し(ステップS422)、測定範囲が適切であれば(ステップS422のNO)、ステップS408に戻る。測定範囲が拡大し過ぎであれば、測定範囲において電圧の最高値をVmとして設定し(ステップS424)、最高値Vmに対応する発電条件のパラメータの値を求め(ステップS426)、その値を記憶部84に最適値(更新発電条件)として記憶させ(ステップS428)、メインルーチンにリターンする。図26は下限値min側に頂点電圧が存在する場合であるため、下限値min側に発電条件を拡大させるが、これに限らず、上限値max側に頂点電圧が存在する場合でも良い。この場合には、制御装置8は上限値max側に範囲を発電条件を拡大させる。
【0170】
(その他)
燃料電池システムは図1に示すものに限定されるものではなく、請求項1の内容を満足する限り、細部構成については必要に応じて変更される。熱交換器61〜63は必要に応じて設ければ良い。改質器30に代えて、水素ガス等のアノードガスを貯蔵するタンクや貯蔵合金等の貯蔵装置を採用しても良い。カソード流体をカソードガスとし、更新処理においてカソードガスの利用率、カソードガスの入口温度を制御するときには、燃料電池に供給されるアノード流体は活物質を有するメタノール等の液体でも良い。加湿器は上記した構造に限定されず、超音波振動子等の加湿部によりガスを加湿させる構造でも良い。場合によっては加熱装置45を廃止しても良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。特徴はその特徴が記載されている実施形態に限定されるものではなく、各実施形態における特有の特徴を他の実施形態に併用させても良い。
【0171】
本明細書から次の技術的思想も把握できる。
[付記項1]カソード極およびアノード極を有する燃料電池と、燃料電池の前記カソード極にカソード流体を供給するカソード流体通路と、燃料電池のアノード極にアノード流体を供給するアノード流体通路と、燃料電池の発電に関する発電条件を変化させる条件変化操作を実行して燃料電池の電圧変化を求め、条件変化操作における燃料電池の電圧値の最大領域を求め、電圧値の最大領域に対応する発電条件を最適発電条件(例えば最適加湿条件)として設定する最適化処理(例えば更新処理)を実行し、最適化処理以降において設定された発電条件に基づいて燃料電池を発電させる制御装置とを具備する燃料電池システム。制御装置は、最適化処理以降において設定された発電条件に基づいて燃料電池を発電させる。
[付記項2]カソード極およびアノード極を有する燃料電池と、燃料電池の前記カソード極にカソード流体を供給するカソード流体通路と、燃料電池のアノード極にアノード流体を供給するアノード流体通路と、燃料電池の発電に関する発電条件を変化させる条件変化操作を実行して燃料電池の電力変化を求め、条件変化操作における燃料電池の電力値の最大領域を求め、電力値の最大領域に対応する発電条件を最適発電条件(例えば最適加湿条件)として設定する最適化処理(例えば更新処理)を実行し、最適化処理以降において設定された発電条件に基づいて燃料電池を発電させる制御装置とを具備する燃料電池システム。制御装置は、最適化処理以降において設定された発電条件に基づいて燃料電池を発電させる。電力値の最大領域とは、条件変化操作における電力値の最大値の他に、最大値に近い値(最大値の80%以上、90%以上の電力値)を含む意味である。制御装置は、電力値の最大領域に対応する発電条件を更新発電条件として更新する更新処理を実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明は例えば定置用、車両用、電気機器用、電子機器用、携帯用、可搬用の燃料電池システムに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】実施形態1に係り、燃料電池システムを示す図である。
【図2】実施形態1に係り、制御装置が実行するフローチャートである。
【図3】実施形態2Aに係り、カソードガスの利用率と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図4】実施形態2Bに係り、カソードガスの利用率と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図5】実施形態2Cに係り、カソードガスの利用率と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図6】実施形態2Dに係り、カソードガスの利用率と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図7】実施形態3Aに係り、アノードガスの利用率と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図8】実施形態3Bに係り、アノードガスの利用率と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図9】実施形態3Cに係り、アノードガスの利用率と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図10】実施形態3Dに係り、アノードガスの利用率と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図11】実施形態4Aに係り、カソードガスの入口温度と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図12】実施形態4Bに係り、カソードガスの入口温度と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図13】実施形態4Cに係り、カソードガスの入口温度と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図14】実施形態4Dに係り、カソードガスの入口温度と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図15】実施形態5Aに係り、アノードガスの入口温度と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図16】実施形態5Bに係り、アノードガスの入口温度と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図17】実施形態5Cに係り、アノードガスの入口温度と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図18】実施形態5Dに係り、アノードガスの入口温度と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図19】実施形態6Aに係り、冷媒の温度と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図20】実施形態6Bに係り、冷媒の温度と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図21】実施形態6Cに係り、冷媒の温度と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図22】実施形態6Dに係り、冷媒の温度と電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図23】実施形態7に係り、制御装置が実行するフローチャートである。
【図24】実施形態8に係り、制御装置が実行するフローチャートである。
【図25】実施形態10に係り、制御装置が実行するフローチャートである。
【図26】実施形態13に係り、発電条件のパラメータと電圧との概念関係を模式的に示すグラフである。
【図27】実施形態13に係り、制御装置が実行するフローチャートである。
【符号の説明】
【0174】
1はスタック、10はカソード極、11はアノード極、12はイオン伝導膜、14は冷却路、2はカソードガス通路、20はカソードガス搬送源、23は加湿器、24は加湿路、25は吸湿路、27は迂回路、28は迂回弁、30は改質器、34は燃料搬送源、36は改質水搬送源、41は第1循環路、42は第2循環路43は第3循環路、45は加熱装置、51は第1ポンプ、52は第2ポンプ、53は第3ポンプ、61は第1熱交換器、62は第2熱交換器、63は第3熱交換器、8は制御装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード極およびアノード極を有する燃料電池と、
前記燃料電池の前記カソード極にカソード流体を供給するカソード流体通路と、
前記燃料電池の前記アノード極にアノード流体を供給するアノード流体通路と、
前記燃料電池の発電に関する発電条件を変化させる条件変化操作を実行して前記燃料電池の電圧変化を求め、前記条件変化操作における前記燃料電池の電圧値の最大領域を求め、前記電圧値の前記最大領域に対応する発電条件を更新発電条件として更新する更新処理を実行し、前記更新処理以降において前記更新発電条件に基づいて前記燃料電池を発電させる制御装置とを具備する燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1において、前記条件変化操作における前記発電条件は、前記燃料電池の内部の湿潤度に影響を与えるパラメータである燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2において、前記条件変化操作において変化させる前記発電条件のパラメータは、前記カソード流体の利用率、前記アノード流体の利用率、前記燃料電池に対する前記カソード流体の入口温度、前記燃料電池に対する前記アノード流体の入口温度、前記燃料電池の運転温度のうちの少なくとも一つである燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記制御装置は、前記条件変化操作において、前記燃料電池の内部の湿潤度が低い側から、前記燃料電池の内部の湿潤度が高い側に前記発電条件を移行させるように前記発電条件を変化させる燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1〜3のうちの一項において、前記制御装置は、前記条件変化操作において、前記燃料電池の内部の湿潤度が高い側から、前記燃料電池の内部の湿潤度が低い側に前記発電条件を移行させるように前記発電条件を変化させる燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1〜3のうちの一項において、前記制御装置は、前記条件変化操作において、前回の更新処理またはシステム設置時において電圧値が最大領域であった発電条件を始点とし、前記始点から前記燃料電池の内部の湿潤度が低い側へ発電条件を変化させる第1変化処理と、前記始点から前記燃料電池の内部の湿潤度が高い側へ発電条件を変化させる第2変化処理とを含み、
前記第1変化処理および前記第2変化処理のうちの一方を実行し、その後、前記第1変化処理および前記第2変化処理のうちの他方を実行する燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1〜6のうちの一項において、前記制御装置は、前記更新処理を実行している途中において前記燃料電池の電圧が所定電圧よりも低下するとき、前記更新処理を停止または中断し、前記燃料電池の内部の湿潤度を停止時または中断時よりも低下させるリセット処理を実行し、その後、前記更新処理を再開させる燃料電池システム。
【請求項8】
請求項1〜7のうちの一項において、前記制御装置は、前記更新処理を連続して複数回実行し、前の前記更新処理と後の前記更新処理との間において、前の前記更新処理直後において、前記燃料電池の内部の湿潤度を、前の前記更新処理よりも低下させるリセット処理を実行する燃料電池システム。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のうちの一項において、前記制御装置は、前記条件変化操作において発電条件のパラメータを一定間隔α1毎に変更させる粗変更操作を実行し、前記粗変更操作により前記燃料電池の電圧値の最大領域が認識されないとき、前記変更範囲内において前記発電条件のパラメータを一定間隔α1よりも狭い間隔α2(α2<α1)毎に変更させる細変更操作を実行する燃料電池システム。
【請求項10】
請求項9において、前記制御装置は、前記粗変更操作と前記細変更操作との間において、前記燃料電池の内部の湿潤度を前記粗変更操作終了時よりも乾き方向に向けて低下させるリセット処理を実行する燃料電池システム。
【請求項11】
請求項1〜10のうちの一項において、前記燃料電池で発生した余剰の電力を温水として蓄積するための貯湯槽が設けられており、前記制御装置は、前記更新処理を実行するとき、前記燃料電池で発生した余剰の電力を前記貯湯槽に温水として蓄積させる蓄積操作を実行する燃料電池システム。
【請求項12】
請求項1〜11のうちの一項において、前記制御装置は、前記発電条件を記憶する記憶部を有しており、前記制御装置は、前記更新処理を所定時間毎に定期的または不定期的に実行し、前記電圧値の最大領域に対応する前記更新発電条件を前記記憶部に記憶させる燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−9878(P2010−9878A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166434(P2008−166434)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】