説明

燃料電池システム

【課題】複数の燃料ガス供給源から燃料電池に燃料ガスを適切に供給できる技術を提供する。
【解決手段】燃料電池システムであって、燃料電池と、燃料ガスを燃料電池に供給するための燃料ガス流路と、燃料ガス流路上に設けられ、第1のガス圧の燃料ガスを燃料ガス流路に導入するための第1のガス導入部と、燃料ガス流路上に設けられ、第1のガス圧の燃料ガスを減圧して燃料電池に供給する減圧弁と、減圧弁と燃料電池の間の燃料ガス流路上に設けられ、第1のガス圧より低い第2のガス圧の燃料ガスを燃料ガス流路に導入するための第2のガス導入部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池に、複数の燃料ガス供給源から燃料ガスを供給することがある。例えば、車両走行用の燃料電池を利用して、車両の外部の負荷に電力供給をする場合である。このような場合、車両走行用に車両に搭載した燃料ガスタンクから燃料ガスを燃料電池に供給する態様と、車両外部の燃料ガス供給源(例えば水素カードル)から燃料電池に燃料ガスを供給する態様とが想定される。車両外部の燃料ガス供給源から車両走行用の燃料電池に燃料ガスを供給する技術としては、例えば下記特許文献1の技術が知られている。
【0003】
しかし、かかる技術は、複数の燃料ガス供給源からの燃料ガスの供給に関して十分な工夫がされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−32896号公報
【特許文献2】特開平5−47400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、複数の燃料ガス供給源から燃料電池に燃料ガスを適切に供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために、以下の形態または適用例を取ることが可能である。
【0007】
[適用例1]
燃料電池システムであって、燃料電池と、燃料ガスを前記燃料電池に供給するための燃料ガス流路と、前記燃料ガス流路上に設けられ、第1のガス圧の燃料ガスを前記燃料ガス流路に導入するための第1のガス導入部と、前記燃料ガス流路上に設けられ、前記第1のガス圧の燃料ガスを減圧して前記燃料電池に供給する減圧弁と、前記減圧弁と前記燃料電池の間の前記燃料ガス流路上に設けられ、前記第1のガス圧より低い第2のガス圧の燃料ガスを前記燃料ガス流路に導入するための第2のガス導入部とを備える燃料電池システム。
【0008】
この燃料電池システムによると、異なる複数のガス圧の燃料ガスを燃料電池に供給して発電を行うことができる。その際、第2のガス導入部を減圧弁の下流側に備えるので、第1のガス導入部から供給される第1のガス圧の燃料ガスを、減圧弁により第2のガス圧より低いガス圧に減圧することによって、第1のガス圧と第2のガス圧のガス圧差に起因する差圧充填を回避し、第2のガス導入部からも燃料ガスを十分に燃料ガス流路に導入することができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1記載の燃料電池システムであって、さらに、前記第1のガス導入部と前記第2のガス導入部の間の前記燃料ガス流路上に設けられ、前記第1のガス導入部からの前記燃料ガスの前記燃料電池への供給を遮断する遮断弁を備える燃料電池システム。
【0010】
この燃料電池システムによると、第1のガス導入部からの燃料ガスを遮断して、第2のガス導入部からの燃料ガスのみを燃料電池に供給することができる。また、遮断弁を開状態にして、第1のガス導入部と第2のガス導入部の両方から、燃料ガスを燃料電池に供給することができる。このように、少なくとも2つの燃料ガスの供給態様を採ることができる。
【0011】
[適用例3]
前記燃料電池は車両走行用に車両に搭載された燃料電池である適用例1または適用例2のいずれか記載の燃料電池システム。
この燃料電池システムによると、車両走行用に車両に搭載された燃料電池を用いることができる。
【0012】
[適用例4]
適用例3記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池で発電した電力を、前記車両の外部の負荷に供給するための外部給電部を備える燃料電池システム。
この燃料電池システムによると、燃料電池で発電した電力を、外部の負荷に供給することができる。
【0013】
[適用例5]
適用例3または適用例4に記載の燃料電池システムであって、前記車両走行用に前記車両に搭載され前記第1のガス導入部に接続されたガスタンクから前記第1のガス圧の燃料ガスが供給される燃料電池システム。
この燃料電池システムによると、異なる複数のガス圧の燃料ガスを燃料電池に供給して発電を行うことができ、車両走行用に車両に搭載された第1のガスタンクを用いて発電をすることができる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、電力供給方法および装置、電力供給システム、非常電源装置、移動式発電装置、燃料電池の運転方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電力供給システム10の構成を説明する説明図である。
【図2】燃料電池システム30の構成を説明する説明図である。
【図3】水素供給態様Aについて説明する説明図である。
【図4】水素供給態様Bについて説明する説明図である。
【図5】水素供給態様Cについて説明する説明図である。
【図6】水素供給制御の流れを示したフローチャートである。
【図7】第2実施例における燃料電池システム30および水素供給態様Dを説明する説明図である。
【図8】水素供給態様Eについて説明する説明図である。
【図9】第3実施例における燃料電池システム30の構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
A.第1実施例:
(A1)電力供給システム:
図1は、本発明の一実施例である燃料電池システムを用いた電力供給システム10の概略構成を示す説明図である。電力供給システム10は、車両が備える車両走行用の燃料電池で発電した電力を、車両の外部にある負荷(外部負荷)に供給するためのシステムである。本実施例では、一般住宅や病院等の建物に備えられている負荷に、電力を供給する場合について説明をする。電力供給システム10は、車両20と、建物50と、低圧水素タンク40とを備える。車両20と低圧水素タンク40とは、車両20に水素を供給するための低圧水素導入路42で接続されている。車両20と建物50とは、車両20が発電した電力を送電するための外部給電部32で接続されている。
【0017】
車両20は、いわゆる燃料電池自動車であり、走行用の動力源として、燃料電池システム30を備える。燃料電池システム30で発電した電力は、車両20を走行させるための走行システムに送られ動力として用いられる(図示省略)。また、車両20は、車両全体の動作を制御する制御部28を備えており、制御部28は燃料電池システム30の動作を制御する。車両20は、複数本の高圧水素タンク310を備えており、燃料電池システム30と接続されている。高圧水素タンク310には、水素ガスが70MPaで充填されている。燃料電池330は、この高圧水素タンク310に充填されている水素ガスを燃料ガスとして、酸素を含む大気を酸化ガスとして用いて発電をする燃料電池である。
【0018】
燃料電池システム30は、高圧水素タンク310に水素ガスを充填するための高圧水素供給口21を備える。高圧水素タンク310に水素ガスを充填する際には、高圧水素供給口21に水素ステーション側の水素供給口が接続される。
【0019】
さらに、燃料電池システム30は、低圧水素タンク40から水素ガスを燃料電池システム30に導入するための低圧水素供給口25を備える。低圧水素供給口25には、上述したように、低圧水素タンク40から水素ガスを導入するための低圧水素導入路42が接続される。低圧水素タンク40は、高圧水素タンク310とは別に用意された水素タンクである。本実施例においては、低圧水素タンク40は、建物50に予め備えてある水素カードルとしての水素タンクであり、低圧水素タンク40の水素ガスは他の用途にも使用可能である。本実施例においては、低圧水素タンク40には20MPaで水素ガスが充填されている。
【0020】
燃料電池システム30は、走行中は高圧水素タンク310から供給される水素ガスによって発電を行うが、外部給電を行う場合は高圧水素タンク310および低圧水素タンク40から供給された水素ガスによって発電を行う。外部給電用に発電した電力は、燃料電池システム30が備える外部給電部32を介して、建物50が備える電力制御部52に供給される。本実施例においては、燃料電池システム30から外部給電部32を介して電力制御部52に供給される電力は直流である。電力制御部52は、建物50に備えられている負荷に応じて、車両20から供給された電力の一部を交流に変換するインバータや、必要に応じて再度直流に変換するためのコンバータ、さらには、建物の付加に応じて変圧するトランス等、車両20から供給された電力を建物50の負荷に合った電力に変換するための電気設備を備える。なお、燃料電池システム30で発電した直流電力を、燃料電池システム30の内部で交流に変換して、電力制御部52に供給する構成を採用してもよい。
【0021】
(A2)燃料電池システム30:
次に燃料電池システム30の構成について説明する。図2は、燃料電池システム30の構成を模式的に示した説明図である。上述したように、燃料電池システム30は、高圧水素タンク310と接続されている。高圧水素タンク310の水素ガスは、水素供給配管316を介して燃料電池330に供給される。また、高圧水素タンク310への水素ガスの充填は、水素ステーション側の高圧水素充填口と接続されている高圧水素供給口21、高圧水素供給路22、高圧水素充填口312、高圧水素充填配管314を介して行われる。
【0022】
水素供給配管316には、水素ガスが流れる方向を基準として、上流側から主止弁318、減圧弁320、高圧水素遮断弁322、調圧弁324が備えられている。また水素供給配管316は高圧水素遮断弁322と調圧弁324との間で分岐しており、分岐した水素供給配管316には、低圧水供給路26と接続された低圧水素導入口326と、低圧水素遮断弁328が備えられている。
【0023】
主止弁318は、高圧水素タンク310から燃料電池330へ流入する水素ガスの遮断および開放を制御する弁である。主止弁318は、車両20の電源スイッチであるキーのポジションに連動して開閉する弁である。本実施例では、車両20が備えるキーのキーポジションには、「電源オフ」、「車両走行」、「外部給電」の3つのポジションがある。
【0024】
減圧弁320は、高圧水素タンク310から供給される水素ガスのガス圧を減圧する弁である。本実施例においては、減圧後のガス圧が低圧水素タンク40のガス圧またはそれ以下になるように調整して減圧する。主止弁318や減圧弁320を始め、後述する種々の弁の制御は、制御部28が行う。燃料電池330の制御に必要なガス圧を測定するためのガス圧計が、水素供給配管316の各所に備えられている(図示省略)。
【0025】
高圧水素遮断弁322は、減圧弁320で減圧後の水素ガスを、調圧弁324の上流側で遮断または開放する弁である。一方、低圧水素遮断弁328は、低圧水素導入口326を介して低圧水素タンク40から導入される低圧水素ガスを調圧弁324の上流側で遮断または開放する弁である。これら2つの弁、すなわち高圧水素遮断弁322と低圧水素遮断弁328は、燃料電池330への水素ガスの供給の態様(以下、水素供給態様とも呼ぶ)によって開閉を制御する。水素供給態様については後で詳しく説明する。
【0026】
調圧弁324は、高圧水素遮断弁322、低圧水素遮断弁328を介して流入する水素ガスのガス圧を燃料電池330に適したガス圧に調圧して、燃料電池330に導入するための弁である。そして、適切なガス圧に調圧弁324で調圧された水素ガスが燃料電池330に流入する。
【0027】
燃料電池330は、水素と酸素との電気化学反応によって発電する燃料電池セル331を複数積層させた積層体である。本実施例では、燃料電池330は、電解質膜として、ナフィオン(デュポン社の登録商標)等の固体高分子からなる電解質膜を利用した固体高分子型燃料電池である。燃料電池330のアノードには、上述した調圧弁324を介して燃料ガスとしての水素ガスが供給される。燃料電池330のアノードから排出されたアノードオフガスは、循環配管332およびモータ336によって作動する循環ポンプ334によって、再度、水素供給配管316を介して燃料電池330に供給される。アノードから排出されたアノードオフガスには、発電時に生成された生成水が含まれるが、循環配管332を通過中に、気液分離器(図示省略)を通過することによって、生成水は除去され水素供給配管316に再び供給される。
【0028】
燃料電池330のカソードには、空気供給配管342を介して、酸化ガスとしての空気が供給される。その際、空気供給配管342の空気は、モータ346によって動作するエアポンプによって圧縮されて燃料電池330に供給される。燃料電池330のカソードから排出されたカソードオフガスは、カソードオフガス配管348を介して、車両20の外部に排気される。
【0029】
また、燃料電池330は、燃料電池330の温度を発電に適した温度に維持するために、ラジエータ350、冷却水循環配管352、ウォーターポンプ354、ウォーターポンプ354の動力源であるモータ356を備える。燃料電池330はその内部に冷却水を循環させることにより最適な温度を維持している。燃料電池330の冷却により温度上昇した冷却水は、冷却水循環配管352を介してラジエータ350で冷却され、再び燃料電池330の内部に流入する。ウォーターポンプ354およびモータ356は、冷却水を循環させるための動力として用いられる。
【0030】
燃料電池システム30は、このような構成により発電した電力を外部給電する。燃料電池330のアノードには、発電した電力を外部に送電するための送電用ケーブル362が接続されている。また、燃料電池330のカソードには送電用ケーブル364が接続されている。送電用ケーブル362と送電用ケーブル364とは、一対の外部給電部32として、建物50が備える電力制御部52に接続される。燃料電池システム30は発電した電力を、外部給電部32を介して電力制御部52に供給する。
【0031】
(A3)水素供給態様:
次に、燃料電池システム30が外部給電を目的として発電を行う際の、燃料電池330への水素ガスの供給の態様(水素供給態様)について説明する。燃料電池システム30は、水素供給態様A〜Cの3つの態様を採ることが可能である。
[水素供給態様A]
図3は、水素供給態様Aについて説明する説明図である。なお、図3には、水素供給態様の説明に必要な構成のみを示し、その他の構成については図示を省略した。水素供給態様Aは、燃料電池330に低圧水素タンク40からの低圧水素ガスのみを供給する供給態様である。そのため、制御部28の制御により、高圧水素遮断弁322を「閉」にして、低圧水素遮断弁328を「開」にする。すなわち、高圧水素タンク310からの高圧水素ガスは高圧水素遮断弁322の手前(上流側)で遮断されている。本実施例においては、高圧水素タンク310から高圧水素ガスは高圧水素遮断弁322によって遮断するとしたが、主止弁318を「閉」にすることによって遮断するとしてもよく、いずれの態様を採用してもよい。また、主止弁318の開閉の制御を、上記説明した車両20が備えるキーのキーポジションに連動して行うとしてもよい。例えば、キーポジションが「電源オフ」の場合には主止弁318を「閉」、「車両走行」と「外部給電」の場合には主止弁318を「開」にする制御を行うとしてもよい。
【0032】
水素供給態様Aにおいては、低圧水素タンク40の低圧水素ガスが、低圧水素導入路42(図1参照)、低圧水素供給口25、低圧水供給路26、低圧水素導入口326、低圧水素遮断弁328を介して水素供給配管316に流入し、調圧弁324で適切なガス圧に調圧された後、燃料電池330に供給される。燃料電池330は、低圧水素タンク40から供給された水素ガスと、空気として供給された酸素によって発電をして外部給電する。
【0033】
[水素供給態様B]
図4は、水素供給態様Bについて説明する説明図である。水素供給態様Bは、燃料電池330に高圧水素タンク310からの高圧水素ガスのみを供給する供給態様である。そのため、制御部28の制御により、高圧水素遮断弁322を「開」にして、低圧水素遮断弁328を「閉」にする。また、主止弁318は「開」の状態とする。
【0034】
水素供給態様Bにおいては、高圧水素タンク310の高圧水素ガスが、主止弁318を通過し、減圧弁320において、低圧水素タンク40のガス圧、又はそれより低いガス圧(例えば20MPa)まで減圧される。そして減圧弁320で減圧後の水素ガスは高圧水素遮断弁322を通過し、調圧弁324で適切なガス圧に調圧された後、燃料電池330に供給される。燃料電池330は、高圧水素タンク310から供給された水素ガスと、空気として供給された酸素によって発電をして外部給電する。
【0035】
[水素供給態様C]
図5は、水素供給態様Cについて説明する説明図である。水素供給態様Cは、燃料電池330に、高圧水素タンク310と低圧水素タンク40との両方から水素ガスを供給する供給態様である。そのため、制御部28の制御により、高圧水素遮断弁322を「開」、低圧水素遮断弁328を「開」にする。また、主止弁318は「開」の状態とする。
【0036】
高圧水素タンク310から水素ガスが調圧弁324に流入する態様は、上記説明した水素供給態様Bと同じである。低圧水素タンク40から水素ガスが調圧弁324に流入する態様は、上記説明した水素供給態様Aと同じである。そして、調圧弁324の手前(上流側)で、高圧水素タンク310から流入する水素ガスと低圧水素タンク40から流入する水素ガスが合流する。その際、高圧水素タンク310からの高圧水素ガスは減圧弁320で低圧水素タンク40の低圧水素ガスのガス圧、又はそれより低いガス圧に減圧された後に、低圧水素タンク40からの低圧水素ガスと合流する。
【0037】
調圧弁324の手前(上流側)で合流した高圧水素タンク310と低圧水素タンク40とに基づく水素ガスは、調圧弁324で適切なガス圧に調圧された後、燃料電池330に供給される。燃料電池330は、高圧水素タンク310および低圧水素タンク40から供給された水素ガスと、空気として供給された酸素によって発電をして外部給電する。
【0038】
上記説明した水素供給態様の選択に関しては、高圧水素タンク310は車両走行用にも用いられるため、優先的に低圧水素タンク40からの水素ガスを供給するのが好適である。換言すれば、優先的に水素供給態様Aを選択する方が好適である。このような水素供給態様の選択を実現するために、本実施例においては、水素供給態様A〜Cの選択は、車両20の制御部28が制御(水素供給制御)する。制御部28は、高圧水素タンク310および低圧水素タンク40のガス圧に基づいて水素供給制御を行う。図6は、制御部28が行う水素供給制御の流れを示したフローチャートである。水素供給制御を開始すると、燃料電池システム30に低圧水素タンク40が接続されているかを確認する(ステップS102)。具体的には、低圧水素導入口326近傍の水素供給配管316に備えるガス圧計(図示省略)の値によって低圧水素タンク40の接続の有無を判断する。ガス圧計の値により、低圧水素タンク40が接続されていると判断した場合には(ステップS102:YES)、制御部28は、優先的に低圧水素タンク40を使用するために、水素供給態様Aを選択する。
【0039】
制御部28は、水素供給態様Aによって燃料電池330に水素ガスを供給しながら、低圧水素タンク40の水素ガス残量を監視する。具体的には、上述した低圧水素導入口326近傍のガス圧計を確認することによって、低圧水素タンク40のガス圧が所定の規定値以下になっていないかを確認する。制御部28は低圧水素タンク40のガス圧が規定値以下になるまでは水素供給態様Aを継続し(ステップS106:NO)、低圧水素タンク40のガス圧が規定値以下になると(ステップS106:YES)、制御部28は、水素供給態様を水素供給態様Cに変更する(ステップS108)。後に水素ガス供給源を高圧水素タンク310のみ(水素供給態様B)に切り替える際に、途中で燃料電池330への水素供給が途切れないようにするためである。
【0040】
制御部28は、予め定めた所定期間、水素供給態様Cによって燃料電池330に水素ガスを供給した後、水素供給態様を水素供給態様Bに切り替え、水素供給源を高圧水素タンク310のみとする(ステップS110)。一方、ステップS102において、燃料電池システム30に低圧水素タンク40が接続されていないと判断した場合には(ステップS102)、水素供給源を高圧水素タンク310にするため、水素供給態様Bを選択し、燃料電池システム30に水素ガスを供給する(ステップS110)。
【0041】
制御部28は、上記説明したステップS102〜ステップS110の処理を、キーポジションが「電源オフ」になり外部給電を終了するまで、または、高圧水素タンク310および低圧水素タンク40の水素ガスが無くなることによって外部給電を終了とするまで繰り返し行う(ステップS112)。制御部28はこのようにして水素供給制御を行う。
【0042】
本実施例においては上述したように、制御部28が制御部28により水素供給態様を選択するとしたが、それに限らず、ユーザが、車両に備えられた水素供給態様を選択する選択スイッチにより選択するとしてもよい。その他、車両20の制御部28と電力制御部52とが制御線で接続されており、電力制御部52において水素供給態様を選択可能としてもよい。また、高圧水素タンク310は車両走行用にも用いるため、ユーザおよび制御部28が水素供給態様を選択する際には、優先的に低圧水素タンク40からの水素ガスを供給して、すなわち、優先的に水素供給態様Aによって燃料電池330に水素ガスを供給するのが好適である。
【0043】
以上説明したように、電力供給システム10は、異なる2種類のガス圧の水素ガスを用いて、燃料電池330で発電をすることが可能である。また、低圧水素ガスを水素供給配管316に導入する部分、すなわち低圧水素導入口326および低圧水素遮断弁328が、減圧弁320の下流側に位置して設置されている。したがって、高圧水素タンク310からの水素ガスを減圧弁320によって、低圧水素タンク40のガス圧、又はそれより低くなるように減圧することにより、水素供給態様Cにおいて、高圧水素タンク310に基づく水素ガスが低圧水素遮断弁328を介して低圧水素タンク40に流入することを回避することができる。その結果、高圧水素タンク310および低圧水素タンク40の両方から、適切に水素ガスを調圧弁324の上流側で合流させ、燃料電池330に供給することができる。延いては、水素供給態様Cにおいて、適切に水素ガスを燃料電池330に供給することが可能であるので、水素ガスの供給態様として3種類(水素供給態様A〜C)の態様を採ることが可能である。
【0044】
電力供給システム10は、車両走行用の燃料電池330を用いて発電し、電力を外部に供給することができ、その際に、車両20に搭載した高圧水素タンク310以外の水素ガス(本実施例では低圧水素タンク40の水素ガス)を用いることができるので、高圧水素タンク310に充填してある水素ガスの量に関わりなく、連続して燃料電池330に水素ガスを供給することが可能であり、結果として、外部負荷への連続給電が可能である。
【0045】
さらに、高圧水素タンク310以外に発電に用いる水素ガスとして、低圧水素ガスを用いることができるので、一般に流通している水素カードルの水素タンクを用いることができる。このように一般に流通している低圧水素タンクを用いて発電が可能であるため、燃料電池車(本実施例では車両20)を電源車として使用することが可能である。
【0046】
電力供給システム10は、制御部28が水素供給制御によって水素供給態様を制御している。従って、燃料電池システム30に低圧水素タンク40が接続されている場合には、水素供給態様の切替の際に水素ガスの供給が途切れることがない。結果として、燃料電池330への水素ガスの連続供給を安定して行うことができる。
【0047】
本実施例と特許請求の範囲との対応関係としては、高圧水素タンク310の水素ガスが特許請求の範囲に記載の第1のガス圧の燃料ガスに対応し、高圧水素タンク310と水素供給配管316との接続部分が特許請求の範囲に記載の第1のガス導入部に対応し、低圧水素タンク40の水素ガスが特許請求の範囲に記載の第2のガス圧の燃料ガスに対応し、低圧水素供給口25が第2のガス導入部に対応する。また、高圧水素充填口312または高圧水素遮断弁322が特許請求の範囲に記載の遮断弁に対応する。
【0048】
B.第2実施例:
次に第2実施例について説明をする。第2実施例における電力供給システム10の構成は、燃料電池システム30の備える弁が第1実施例と異なるのみであるので、電力供給システム10の構成についての説明は省略する。また、第2実施例における燃料電池システム30においては、水素供給態様として水素供給態様Dおよび水素供給態様Eの2種類の態様を採る。以下説明する。
【0049】
図7は、第2実施例における、燃料電池システム30の構成および第2実施例における水素供給態様Dを説明する説明図である。第2実施例における燃料電池システム30は、第1実施例における高圧水素遮断弁322および低圧水素遮断弁328に代えて、三方弁329を備える。三方弁329は、水素供給配管316における低圧水素導入口326に分岐する部分に備えられている。三方弁329は図示するように、低圧水素導入口326を介して三方弁329に流入する低圧水素ガスを、下流側に流すように流路を構成する流路構成1と、減圧弁320を介して三方弁329に流入する高圧水素タンク310に基づく水素ガスを下流側に流すように流路を構成する流路構成2との2種類の流路構成を採ることができる。なお、三方弁329は、低圧水素ガスと高圧水素タンク310に基づく水素ガスの両方を同時に下流側に流す流路構成は採らない。
【0050】
[水素供給態様D]
第2実施例における水素供給態様の1つである水素供給態様Dについて、図7によって説明する。水素供給態様Dは、燃料電池330に低圧水素タンク40からの低圧水素ガスのみを供給する供給態様である。そのため、制御部28の制御により、三方弁329を流路構成1の状態にする。また、主止弁318は「開」の状態とする。すなわち、高圧水素タンク310からの高圧水素ガスは三方弁329の手前(上流側)で遮断されている。
【0051】
水素供給態様Dにおいては、低圧水素タンク40の低圧水素ガスが、低圧水素導入路42、低圧水素供給口25、低圧水供給路26、低圧水素導入口326、三方弁329を介して水素供給配管316に流入し、調圧弁324で適切なガス圧に調圧された後、燃料電池330に供給される。燃料電池330は、低圧水素タンク40から供給された水素ガスと、空気として供給された酸素によって発電をして外部給電する。
【0052】
[水素供給態様E]
図8は、水素供給態様Eについて説明する説明図である。水素供給態様Eは、燃料電池330に高圧水素タンク310からの高圧水素ガスのみを供給する供給態様である。そのため、制御部28の制御により、三方弁329を流路構成2の状態にする。また、主止弁318は「開」の状態とする。すなわち、低圧水素タンク40からの低圧水素ガスは三方弁329の手前(上流側)で遮断されている。
【0053】
水素供給態様Eにおいては、高圧水素タンク310の高圧水素ガスが、主止弁318を通過し、減圧弁320において、低圧水素タンク40のガス圧より低いガス圧(例えば20MPa)まで減圧される。そして減圧弁320で減圧後の水素ガスは三方弁329を通過し、調圧弁324で適切なガス圧に調圧された後、燃料電池330に供給される。燃料電池330は、高圧水素タンク310から供給された水素ガスと、空気として供給された酸素によって発電をして外部給電する。
【0054】
以上説明したように、第2実施例における電力供給システム10は、第1実施例における高圧水素遮断弁322および低圧水素遮断弁328を、三方弁329に置き換えた構成を採ることにより、燃料電池システム30の構成を、より簡易にすることができる。さらに、高圧水素タンク310と低圧水素タンク40との両方の水素ガスを同時に用いて発電を行うことを禁止則としている場合には、第2実施例においては三方弁329を用いることによって、禁止則に反する水素供給態様を採れないようにすることができる。
【0055】
C.第3実施例:
次に第3実施例について説明する。図9は、第3実施例における燃料電池システム30の構成を説明する説明図である。第3実施例における電力供給システム10の構成は、第1実施例における燃料電池システム30が備えている減圧弁320、高圧水素遮断弁322(第3実施例においては高圧側水素遮断弁とも呼ぶ)、低圧水素遮断弁328、低圧水素導入口326、低圧水供給路26からなるユニット、つまり、車両20の外部から水素ガスを燃料電池システム30に供給するためのユニット(以下、外部水素供給ユニットとも呼ぶ)を複数備える。第3実施例においては、外部水素供給ユニットa、外部水素供給ユニットb、外部水素供給ユニットcの3つの外部水素供給ユニットを備える。
【0056】
外部水素供給ユニットaには、ガス圧が20MPaの水素タンク40aから、低圧水供給路26aを介して水素ガスが供給される。水素供給配管316まで水素ガスを供給するか否かは低圧水素遮断弁328aの開閉によって制御する。また外部水素供給ユニットaが備える減圧弁320aは、上流側から流入する水素ガスを20MPaに減圧して下流に流す。
【0057】
外部水素供給ユニットbには、ガス圧が15MPaの水素タンク40bから、低圧水供給路26bを介して水素ガスが供給される。水素供給配管316まで水素ガスを供給するか否かは低圧水素遮断弁328bの開閉によって制御する。また外部水素供給ユニットbが備える減圧弁320bは、上流側から流入する水素ガスを15MPaに減圧して下流に流す。
【0058】
外部水素供給ユニットcには、ガス圧が10MPaの水素タンク40cから、低圧水供給路26cを介して水素ガスが供給される。水素供給配管316まで水素ガスを供給するか否かは低圧水素遮断弁328cの開閉によって制御する。また外部水素供給ユニットcが備える減圧弁320cは、上流側から流入する水素ガスを10MPaに減圧して下流に流す。
【0059】
このような構成を採る燃料電池システム30においては、種々の水素供給態様を採ることが可能である。例えば、高圧水素タンク310と水素タンク40aの水素ガスのみを燃料電池330に供給する場合には、主止弁318を「開」、高圧側水素遮断弁322aを「開」、低圧水素遮断弁328aを「開」、高圧側水素遮断弁322bおよび高圧側水素遮断弁322cを共に「開」、低圧水素遮断弁328bおよび低圧水素遮断弁328cを共に「閉」にすることで実現することができる。
【0060】
また他の態様として、水素タンク40bと水素タンク40cの水素のみを燃料電池330に供給する場合には、主止弁318を「開」、高圧側水素遮断弁322aを「閉」、低圧水素遮断弁328aを「閉」、高圧側水素遮断弁322bを「閉」、低圧水素遮断弁328bと高圧側水素遮断弁322cと低圧水素遮断弁328cとを共に「開」にすることで実現することができる。このように、燃料電池システム30が備える弁の開閉の組み合わせにより、種々の水素供給態様を採ることが可能である。
【0061】
また、第3実施例においては、外部水素供給ユニットを3つ備えるとして説明したが、それに限ることなく、2つ、4つ、5つなど、構成上可能な範囲で、任意の数の外部水素供給ユニットを備えた燃料電池システム30を採用することが可能である。
【0062】
以上説明したように、第3実施邸における燃料電池システム30は外部水素供給ユニットを複数備えるので、異なる複数種類のガス圧の水素ガスを燃料電池システム30に供給することができる。また、各外部水素供給ユニットが備える高圧側水素遮断弁322a〜cおよび低圧水素遮断弁328a〜cの、弁の開閉の種々の組み合わせにより、多くの水素供給態様を採ることができる。したがって、外部水素供給ユニットを増減させることにより、多種類のガス圧の、多数の水素ガス供給源から、燃料電池システム30に水素ガスを供給することが可能である。結果として、上記実施例よりさらに連続して燃料電池330に水素ガスを供給することが可能である。また、第3実施例では、低圧水素タンク40a〜cは、それぞれガス圧の異なる水素タンクとしたが、そのうちの2つ以上が同じガス圧の水素タンクであるとしてもよいことは勿論である。その他、本実施例では、外部水素供給ユニットを直列に接続したが、水素供給配管316に対して並列に接続するとしてもよい。このようにしても、本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0063】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0064】
(D1)変形例1:
上記実施例では、燃料電池システム30は車両20に搭載されている車両走行用の燃料電池システム30としたが、それに限ることなく、当初から種々の負荷への電力供給を目的として製造された発電機(非常用発電機や自家発電機、作業用発電機など)であるとしてもよい。上記実施例で説明した高圧水素ガスも、車両20に当初から備わっている高圧水素タンク310から供給されるものではなく、燃料電池システム30の外部から接続した高圧水素タンクから供給されるとしてもよいし、直接的に水素ステーションと接続して供給されるとしてもよい。また、低圧水素ガスの供給源も水素タンクに限られるものではない。例えば、水素吸蔵合金等の水素吸蔵材料や、金属水素化物等の金属水素貯蔵材料を用いてもよい。このように燃料電池システム30を当初から発電機として適用することで、種々の態様で蓄えられている水素ガス供給源から水素ガスの供給を受けて発電をすることができる。
【0065】
(D2)変形例2:
上記実施例では、燃料電池330における燃料ガスとして燃料電池に直接に水素ガス供給する態様について説明したが、それに限ることなく、水素原子を含む燃料を改質して水素を供給する構成を採用するとしてもよい。例えば、改質燃料(天然ガス、プロパンなどの炭化水素等)を水や酸素(空気)と共に改質器に供給して、加熱することによって、水素が生成される。このようにして生成した水素を燃料電池330に供給するとしてもよい。この場合は、燃料の供給源としての水素タンクに代えて、天然ガスタンクやプロパンガスタンクを適用することで、実現することができる。このようにしても、上記実施例と同様、異なる種々のガス圧の燃料ガス供給源から燃料ガスの供給を受けて発電することができる。また、上記実施例では燃料電池として固体高分子型の燃料電池を採用したが、それに限ることなく、固体酸化物型、溶融炭酸塩型、リン酸型、アルカリ水溶液型など、種々の燃料電池を採用することができる。
【0066】
(D3)変形例3:
上記実施例で説明した燃料電池システム30は、一般の乗用車に搭載しているとしてもよいし、バスに搭載されているものとしてもよい。特にバス等の大型車に適用することで、発電量が多くなり、外部に給電可能な電力量も増すため、電力がより安定に供給可能となり、さらに有用となる。
【符号の説明】
【0067】
10…電力供給システム
20…車両
21…高圧水素供給口
22…高圧水素供給路
25…低圧水素供給口
26…低圧水供給路
26a〜c…低圧水供給路
28…制御部
30…燃料電池システム
32…外部給電部
40…低圧水素タンク
40a〜c…水素タンク
42…低圧水素導入路
50…建物
52…電力制御部
310…高圧水素タンク
312…高圧水素充填口
314…高圧水素充填配管
316…水素供給配管
318…主止弁
320…減圧弁
320a〜c…減圧弁
322…高圧水素遮断弁
322a〜c…高圧側水素遮断弁
324…調圧弁
326…低圧水素導入口
328…低圧水素遮断弁
328a〜c…低圧水素遮断弁
329…三方弁
330…燃料電池
331…燃料電池セル
332…循環配管
334…循環ポンプ
336…モータ
342…空気供給配管
346…モータ
348…カソードオフガス配管
350…ラジエータ
352…冷却水循環配管
354…ウォーターポンプ
356…モータ
362…送電用ケーブル
364…送電用ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって、
燃料電池と、
燃料ガスを前記燃料電池に供給するための燃料ガス流路と、
前記燃料ガス流路上に設けられ、第1のガス圧の燃料ガスを前記燃料ガス流路に導入するための第1のガス導入部と、
前記燃料ガス流路上に設けられ、前記第1のガス圧の燃料ガスを減圧して前記燃料電池に供給する減圧弁と、
前記減圧弁と前記燃料電池の間の前記燃料ガス流路上に設けられ、前記第1のガス圧より低い第2のガス圧の燃料ガスを前記燃料ガス流路に導入するための第2のガス導入部と
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムであって、さらに、
前記第1のガス導入部と前記第2のガス導入部の間の前記燃料ガス流路上に設けられ、前記第1のガス導入部からの前記燃料ガスの前記燃料電池への供給を遮断する遮断弁を備える
燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池は車両走行用に車両に搭載された燃料電池である請求項1または請求項2のいずれか記載の燃料電池システム。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池システムであって、さらに、
前記燃料電池で発電した電力を、前記車両の外部の負荷に供給するための外部給電部を備える燃料電池システム。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の燃料電池システムであって、
前記車両走行用に前記車両に搭載され前記第1のガス導入部に接続されたガスタンクから前記第1のガス圧の燃料ガスが供給される燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−51097(P2013−51097A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188094(P2011−188094)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】