説明

燃料電池システム

【課題】エネルギーの有効利用を図り、燃料電池システムの効率向上を図る。
【解決手段】燃料電池システム1は、燃料電池スタック2と、空気を燃料電池スタック2に供給する空気供給流路11と、燃料電池スタック2から排出されたカソードオフガスを排出するカソードオフガス流路12と、空気供給流路11上に配置され空気を燃料電池スタック2に圧送するコンプレッサ10と、カソードオフガス流路12上に配置されコンプレッサ10と共通の回転軸18を有し燃料電池スタック2から排出された空気を駆動エネルギとするエキスパンダタービン17と、回転軸18上に配置された駆動モータ19と、コンプレッサ10から吐出される空気の一部を分岐し作動空気として用いて回転軸18を支持する空気動圧軸受部21と、空気動圧軸受部21を流通した空気をエキスパンダタービン17に供給する軸受空気排出供給流路23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料と酸化剤とを供給されて発電をする燃料電池を備える燃料電池システムでは、酸化剤としての酸素を含む空気をコンプレッサで圧縮して燃料電池に供給し、発電に供された後に燃料電池から排出された空気は、大気へ放出するのが一般的であった。
【0003】
これに対して、特許文献1,2には、燃料電池から排出される空気のエネルギーでタービン発電機を駆動し、電力として回収することで、エネルギーの有効利用を図る技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、コンプレッサとタービンとを共通の回転軸で連結し、前記回転軸を空気動圧軸受で支持した回転機械において、コンプレッサによって圧縮された空気を排出するための空気排出路から、圧縮空気の一部を前記回転機械の軸受部周囲に流通させる冷却流路を分岐し、冷却流路を流通する圧縮空気で軸受部の冷却を行う技術が開示されている。
さらに、特許文献3には、コンプレッサで圧縮された空気を空気動圧軸受に導入する軸受空気流路を、軸受ケーシング内に設けて、この軸受空気流路を前記冷却流路と兼用させる技術が開示されている。
【0005】
これら軸受空気流路あるいは冷却流路の目的は、回転軸が高速回転することで発生する摩擦熱による軸受部の温度上昇を抑制するため、軸受空気流路あるいは冷却流路を流通する圧縮空気を用いて軸受ケーシングおよび軸受部を冷却することと、この冷却により温度上昇した前記圧縮空気が保有する熱を回収することによりシステム効率の向上を図ることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−223851号公報
【特許文献2】特開2004−111127号公報
【特許文献3】特開昭63−49022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2に開示されたエネルギー回収技術では、タービンによるエネルギー回収が十分でなかった。
また、特許文献3に開示された技術では、軸受空気流路(冷却流路)を流通した高温の圧縮空気が保有するエンタルピーのみを回収利用しているだけであり、エネルギー回収としては不十分であり、改善の余地があった。
【0008】
そこで、この発明は、エネルギーの有効利用を図り、システム効率を維持向上させることができる燃料電池システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る燃料電池システムでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、燃料と酸化剤を供給されて発電をする燃料電池(例えば、後述する実施例における燃料電池スタック2)と、前記酸化剤としての酸素を含む空気を前記燃料電池に供給する空気供給流路(例えば、後述する実施例における空気供給流路11)と、前記燃料電池から排出された空気を排出する空気排出流路(例えば、後述する実施例におけるカソードオフガス流路12)と、前記空気供給流路上に配置され空気を前記燃料電池に圧送するコンプレッサ(例えば、後述する実施例におけるコンプレッサ10)と、前記空気排出流路上に配置され前記コンプレッサと共通の回転軸(例えば、後述する実施例における回転軸18)を有し前記燃料電池から排出された空気を駆動エネルギとするエキスパンダタービン(例えば、後述する実施例におけるエキスパンダタービン17)と、前記回転軸上に配置された電動機(例えば、後述する実施例における駆動モータ19)と、前記コンプレッサから吐出される空気の一部を分岐し作動空気として用いて前記回転軸を支持する空気動圧軸受部(例えば、後述する実施例における空気動圧軸受部21)と、前記空気動圧軸受部を流通した空気を導出させ前記エキスパンダタービンに供給する軸受空気排出供給流路(例えば、後述する実施例における軸受空気排出供給流路23)と、を備えることを特徴とする燃料電池システム(例えば、後述する実施例における燃料電池システム1)である。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記空気排出流路における前記燃料電池と前記エキスパンダタービンとの間に、一端が大気に開放された大気開放流路(例えば、後述する実施例における大気開放流路25)が接続され、該大気開放流路に開閉弁(例えば、後述する実施例における開閉弁26)を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記エキスパンダタービンの入口の空気圧力を検出するタービン入口圧センサ(例えば、後述する実施例におけるタービン入口圧センサ27)と、前記エキスパンダタービンの出口の空気圧力を検出するタービン出口圧センサ(例えば、後述する実施例におけるタービン出口圧センサ28)と、制御部(制御装置30)と、を備え、前記制御部は、前記コンプレッサを駆動開始する際に、前記電動機を駆動開始するとともに前記開閉弁を開き、前記タービン入口圧センサにより検出された入口の空気圧力が前記タービン出口圧センサにより検出された出口の空気圧力よりも大きくなったときに前記開閉弁を閉じることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記空気排出流路上に設けられ前記燃料電池のカソード圧力を調整する圧力調整弁(例えば、後述する実施例における圧力調整弁16)と、前記軸受空気排出供給流路を流通する空気の流量を検出する空気流量センサ(例えば、後述する実施例における空気流量センサ24)と、前記エキスパンダタービンの入口の空気圧力を検出するタービン入口圧センサ(例えば、後述する実施例におけるタービン入口圧センサ27)と、前記エキスパンダタービンの出口の空気圧力を検出するタービン出口圧センサ(例えば、後述する実施例におけるタービン出口圧センサ28)と、制御部(例えば、後述する実施例における制御装置30)と、を備え、前記制御部は、前記燃料電池のカソード圧力を低下させる際に、前記圧力調整弁を開き、前記空気流量センサにより検出された空気流量が所定値より少なく、且つ前記タービン入口圧センサにより検出された入口の空気圧力が前記タービン出口圧センサにより検出された出口の空気圧力よりも小さくなったときに前記開閉弁を開くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、コンプレッサが駆動されている間、常に、コンプレッサで昇圧された空気の一部が空気動圧軸受部に供給され、さらに軸受空気排出供給流路を通ってエキスパンダタービンへ供給されるので、この空気が有するエネルギーをエキスパンダタービンの駆動エネルギーとして回収することができる。その結果、燃料電池システムの発電効率が向上する。
また、コンプレッサの駆動開始時には、燃料電池から排出される空気がエキスパンダタービン17に供給されるよりも先に、空気動圧軸受部を流通した空気をエキスパンダタービンに供給することができるので、エキスパンダタービンを回転駆動するまでのタイムラグを短縮することができる。
また、カソード圧力を低下させる際にも、空気動圧軸受部を流通した空気がエキスパンダタービンに供給されるので、エキスパンダタービンの入口における動圧を上昇させて排気速度を大きくすることができ、減圧応答を早めることができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、開閉弁を開くことにより、エキスパンダタービンの入口側に大気圧を導入することが可能となる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、コンプレッサを駆動開始する際に、開閉弁を開くことによりエキスパンダタービンの入口側に大気圧を導入して、エキスパンダタービンを回転駆動するまでのタイムラグをより一層短縮することができる。そして、エキスパンダタービンの入口の空気圧力がエキスパンダタービンの出口の空気圧力よりも大きくなったときに開閉弁を閉じることにより、無用な大気導入を防止することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、燃料電池のカソード圧力を低下させる際に、空気動圧軸受部を流通する空気流量が所定値より少なく、且つエキスパンダタービンの入口の空気圧力がエキスパンダタービンの出口の空気圧力よりも小さくなったときに開閉弁を開くことにより、燃料電池から排出される空気および空気動圧軸受部を流通した空気を、エキスパンダタービンに通さずに、大気開放流路を介して排出することができ、減圧応答性をより一層改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明に係る燃料電池システムの実施例における構成図である。
【図2】実施例においてコンプレッサ駆動開始時の開閉弁の開閉制御を示すフローチャートである。
【図3】実施例においてカソード圧力減圧時の開閉弁の開閉制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明に係る燃料電池システムの実施例を図1から図3の図面を参照して説明する。なお、この実施例における燃料電池システムは、燃料電池車両に搭載される態様である。
図1は、実施例における燃料電池システム1の概略構成を示した図である。
燃料電池スタック(燃料電池)2は、例えば固体ポリマーイオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜をアノードとカソードとで両側から挟み込んで形成されたセルを複数積層して構成されており、アノードに燃料として水素(燃料)を供給し、カソードに酸化剤として酸素を含む空気(酸化剤)を供給すると、アノードで触媒作用により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜を通過してカソードまで移動して、カソードで空気中の酸素と電気化学反応を起こして発電し、水が生成される。
【0019】
図示しない水素タンクから供給される水素は、水素供給流路3、エゼクタ4を通って燃料電池スタック2のアノードに供給される。燃料電池スタック2で消費されなかった未反応の水素は、燃料電池スタック2からアノードオフガスとして排出され、アノードオフガス流路5を通ってエゼクタ4に戻され、水素タンクから供給される新鮮な水素と合流し再び燃料電池スタック2のアノードに供給される。
【0020】
空気はコンプレッサ10によって加圧され、空気供給流路11を通って燃料電池スタック2のカソードに供給され、この空気中の酸素が酸化剤として発電に供された後、燃料電池スタック2からカソードオフガスとして排出され、カソードオフガス流路(空気排出流路)12を通って排出される。なお、以下の説明では、燃料電池スタック2に供給される空気を供給空気と称す。
【0021】
空気供給流路11においてコンプレッサ10よりも下流には加湿器15が設けられている。加湿器15は、空気供給流路11とカソードオフガス流路12との間に設けられており、カソードオフガス中の水分を膜を介して供給空気に移動させることによって供給空気を加湿する、いわゆる膜加湿器で構成されている。
【0022】
カソードオフガス流路12において加湿器15よりも下流には、その上流側から順に、圧力調整弁16、エキスパンダタービン17が設けられている。
圧力調整弁16は、その開度調整により、燃料電池スタック2内のカソードの空気圧力(以下、カソード圧力と略す)を調整するものである。
コンプレッサ10とエキスパンダタービン17は共通の回転軸18によって連結されており、回転軸18は駆動モータ19(電動機)によって回転駆動される。コンプレッサ10は、駆動モータ19と、カソードオフガスの有するエネルギーによって作動するエキスパンダタービン17とによって駆動される。
【0023】
回転軸18は駆動モータ19の出力軸と一体に形成されており、モータケーシング20から突き出た回転軸18の一端にコンプレッサ10が連結され、他端にエキスパンダタービン17が連結されている。回転軸18は、モータケーシング20内に設けられた空気動圧軸受部21によってモータケーシング20に回動可能に支持されている。
【0024】
また、モータケーシング20には、コンプレッサ10により圧縮された空気を空気動圧軸受部21に導入するための軸受空気導入流路22と、空気動圧軸受部21を流通した空気を導出させエキスパンダタービン17に供給するための軸受空気排出供給流路23とが形成されている。軸受空気導入流路22はコンプレッサ10と加湿器15との間の空気供給流路11に接続されている。軸受空気排出供給流路23は圧力調整弁16とエキスパンダタービン17との間のカソードオフガス流路12に接続されている。これにより、コンプレッサ10で圧縮された空気の一部(以下、この空気を軸受空気という)が空気動圧軸受部21の作動空気として、軸受空気導入流路22を介して空気動圧軸受部21に供給され、空気動圧軸受部21を流通した軸受空気が軸受空気排出供給流路23を介してカソードオフガス流路12に排出可能となっている。
【0025】
ここで、軸受空気導入流路22が空気供給流路11から分岐する分岐点から、軸受空気排出供給流路23がカソードオフガス流路12に合流する合流点までの距離は、軸受空気導入流路22、空気動圧軸受部21、軸受空気排出供給流路23を通る流路の方が、空気供給流路11、燃料電池スタック2、カソードオフガス流路12を通る流路よりも短く設定し、前者の流路抵抗が後者の流路抵抗よりも小さくなるように設定する。
軸受空気排出供給流路23には、軸受空気の流量を検出する空気流量センサ24が設けられている。
【0026】
カソードオフガス流路12において圧力調整弁16とエキスパンダタービン17との間からは、先端が大気に開放されている大気開放流路25が分岐しており、大気開放流路25には開閉弁26が設けられている。なお、通常、この開閉弁26は閉じている。
カソードオフガス流路12において圧力調整弁16とエキスパンダタービン17の間には、エキスパンダタービン17の入口のカソードオフガス圧力(以下、タービン入口圧という)を検出するタービン入口圧センサ27が設けられている。
カソードオフガス流路12においてエキスパンダタービン17の直ぐ下流には、エキスパンダタービン17の出口のカソードオフガス圧力(以下、タービン出口圧という)を検出するタービン出口圧センサ28が設けられている。
空気流量センサ24と、タービン入口圧センサ27と、タービン出口圧センサ28は、それぞれ検出値に応じた電気信号を制御装置(制御部)30に出力する。
【0027】
制御装置30は、これらセンサ24,27,28の出力に基づいて、開閉弁26の開閉制御を実行する。また、制御装置30は、要求発電量に応じて、モータ19の回転数制御、圧力調整弁16の開度制御等を実行する。
【0028】
この燃料電池システム1では、コンプレッサ10が駆動されている間、常に、コンプレッサ10で昇圧された圧縮空気の一部が軸受空気として軸受空気導入流路22を通って空気動圧軸受部21に供給され、さらに軸受空気排出供給流路23を通ってカソードオフガス流路12に排出され、燃料電池スタック2のカソードから排出されたカソードオフガスと合流して、エキスパンダタービン17へ供給される。
【0029】
この軸受空気は、軸受空気導入流路22、空気動圧軸受部21、軸受空気排出供給流路23を流通する間に、回転軸18が高速回転することにより生じる摩擦熱を奪って、空気動圧軸受部21およびモータケーシング20を冷却する。
また、軸受空気は、燃料電池スタック2から排出されたカソードオフガスとともにエキスパンダタービン17へ供給されるので、軸受空気が有するエネルギーをエキスパンダタービン17の駆動エネルギーとして回収することができる。その結果、燃料電池システム1の発電効率が向上する。
【0030】
ところで、燃料電池システム1の始動時などのコンプレッサ10の駆動開始時には、供給空気が、燃料電池スタック2に供給され、カソードオフガスとして燃料電池スタック2から排出されてエキスパンダタービン17に導入されるまでに時間がかかり、しかも、カソードオフガスの運動エネルギーが小さいため、エキスパンダタービン17を回転駆動するまでにタイムラグが生じる(以下、これをターボラグという)。
【0031】
しかしながら、この実施例の燃料電池システム1では、コンプレッサ10の駆動開始時においても、コンプレッサ10で圧縮した空気の一部が軸受空気として、軸受空気導入流路22、空気動圧軸受部21、軸受空気排出供給流路23を通ってエキスパンダタービン17の直ぐ上流のカソードオフガス流路12に排出されるので、燃料電池スタック2をから排出されたカソードオフガスがエキスパンダタービン17に供給されるよりも先に、この軸受空気をエキスパンダタービン17に供給することができる。その結果、前記ターボラグを短縮することができ、エキスパンダタービン17を迅速に回転駆動することができる。よって、駆動モータ19の消費電力を低減することができ、燃料電池システム1の発電効率が向上する。
【0032】
さらに、この燃料電池システム1では、前記ターボラグのさらなる改善のため、コンプレッサ10の始動直後に大気開放流路25の開閉弁26を開弁する。
コンプレッサ10を駆動すると、コンプレッサ10と共通の回転軸18を有するエキスパンダタービン17も回転するため、始動直後はエキスパンダタービン17のポンプ作用により、エキスパンダタービン17の入口側の圧力がエキスパンダタービン17の出口側の圧力よりも小さくなり、この圧力差がエキスパンダタービン17の回転抵抗となってしまう。
【0033】
そこで、この実施例では、コンプレッサ10の始動時であって、エキスパンダタービン17の入口側の圧力がエキスパンダタービン17の出口側の圧力以下の間は、開閉弁26を開くことによりエキスパンダタービン17の入口側に大気圧を導入することで前記圧力差を低減する。これと同時に、前述の如く、軸受空気がエキスパンダタービン17の上流に導入されるので、前記ターボラグをより一層短縮することができる。よって、さらに燃料電池システム1の発電効率が向上する。
【0034】
図2のフローチャートを参照して、コンプレッサ10の駆動開始時における開閉弁26の開閉制御を説明する。図2のフローチャートに示す開閉弁26の開閉制御ルーチンは、制御装置30によって実行される。
駆動モータ19を駆動開始してコンプレッサ10を駆動開始した場合には、まず、ステップS01において開閉弁26を開く。これにより、エキスパンダタービン17よりも上流のカソードオフガス流路12に、大気開放流路25を介して大気圧を導入する。
次に、ステップS02に進み、タービン入口圧センサ27により検出されたタービン入口圧とタービン出口圧センサ28により検出されたタービン出口圧とを比較し、タービン入口圧がタービン出口圧よりも大きいか否かを判定する。
【0035】
ステップS02における判定結果が「NO」(タービン入口圧≦タービン出口圧)である場合には、ステップS01に戻り、開閉弁26を開弁状態に保持する。
ステップS02における判定結果が「YES」(タービン入口圧>タービン出口圧)である場合には、ステップS03に進み、開閉弁26を閉じ、エキスパンダタービン17よりも上流のカソードオフガス流路12への大気導入を終了する。これにより、無用な大気導入を防止することができる。
このように開閉弁26を開閉制御することで、ターボラグをより一層短縮することができる。
【0036】
また、燃料電池システム1の運転状況により燃料電池スタック2のカソード圧力の減圧要求があったときには、駆動モータ19の印加電圧を下げて駆動モータ19の回転数を減少させるとともに、圧力調整弁16の開度を大きくすることで減圧するのであるが、圧力調整弁16を全開状態にしても、エキスパンダタービン17における圧損が影響し、エキスパンダタービン17がない場合と比べて排気速度が小さくなり、減圧応答が遅くなってしまう。このとき、燃料電池スタック2のアノード側の減圧応答も同様に遅くしないとセル内の固体高分子電解質膜に掛かる差圧を一定内に維持することができなくなり、固体高分子電解質膜の発電効率が下がる虞がある。
【0037】
しかしながら、この燃料電池システム1では、コンプレッサ10が駆動中は常に、コンプレッサ10で圧縮した空気の一部が軸受空気として、軸受空気導入流路22、空気動圧軸受部21、軸受空気排出供給流路23を通ってエキスパンダタービン17の直ぐ上流のカソードオフガス流路12に排出されるため、燃料電池スタック2のカソード圧力の減圧要求があったときにも軸受空気がエキスパンダタービン17の上流に供給されるので、タービン入口における動圧が上昇し、排気速度を大きくすることができる。その結果、減圧応答を早めることができる。よって、発電効率が下がる虞がない。
また、減圧要求により駆動モータ19の回転数を減少させて回転軸18の回転数を減少させると、エキスパンダタービン17はその慣性によっても減速を妨げている。
【0038】
そこで、この実施例では、燃料電池スタック2のカソード圧力の減圧要求があって、駆動モータ19の印加電圧を下げて駆動モータ19の回転数を減少させるとともに、圧力調整弁16の開度を大きくするように制御しているときに、軸受空気の流量が所定値よりも減少し、且つ、タービン入口圧がタービン出口圧よりも小さくなったときには、開閉弁26を開いて、燃料電池スタック2から排出されるカソードオフガスおよび軸受空気を、エキスパンダタービン17に通さずに、大気開放流路25を介して排出する。これにより、減圧応答性を一層改善することができる。
【0039】
図3のフローチャートを参照して、カソード圧力減圧時における開閉弁26の開閉制御を説明する。図3のフローチャートに示す開閉弁26の開閉制御ルーチンは、制御装置30によって実行される。
燃料電池スタック2のカソード圧力の減圧要求があった場合、ステップS101において、要求された減圧量に応じて、駆動モータ19の印加電圧を下げて駆動モータ19の回転数を減少させる。これにより、コンプレッサ10およびエキスパンダタービン17の回転数が減少する。
次に、ステップS102に進み、要求された減圧量に応じて、圧力調整弁16の開度制御を実行する。この開度制御における最大開度は全開である。
【0040】
次に、ステップS103に進み、空気流量センサ24により検出された軸受空気流量が予め設定した所定値よりも小さく、且つ、タービン入口圧センサ27により検出されたタービン入口圧がタービン出口圧センサ28により検出されたタービン出口圧よりも小さいか否かを判定する。
ステップS103における判定結果が「NO」である場合、すなわち、軸受空気流量が前記所定値以上である場合、あるいは、タービン入口圧がタービン出口圧以上である場合には、ステップS102に戻り、圧力調整弁16の開度制御を継続する。
【0041】
ステップS103における判定結果が「YES」である場合、すなわち、軸受空気流量が前記所定値よりも小さく、且つ、タービン入口圧がタービン出口圧よりも小さい場合には、ステップS104に進み、開閉弁26を開き、燃料電池スタック2から排出されるカソードオフガスおよび軸受空気を、エキスパンダタービン17に通さずに、大気開放流路25を介して大気に排出する。これにより、減圧応答性を一層改善することができる。
【0042】
次に、ステップS105に進み、カソード圧力減圧要求が終了したか否かを判定する。
ステップS105における判定結果が「NO」である場合には、ステップS104に戻り、開閉弁26の開弁状態を保持する。
ステップS105における判定結果が「YES」である場合には、ステップS106に進み、開閉弁26を閉じる。
【符号の説明】
【0043】
1 燃料電池システム
2 燃料電池スタック(燃料電池)
10 コンプレッサ
11 空気供給流路
12 カソードオフガス流路(空気排出流路)
16 圧力調整弁
17 エキスパンダタービン
18 回転軸
19 駆動モータ(電動機)
21 空気動圧軸受部
23 軸受空気排出供給流路
24 空気流量センサ
25 大気開放流路
26 開閉弁
27 タービン入口圧センサ
28 タービン出口圧センサ
30 制御装置(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と酸化剤を供給されて発電をする燃料電池と、
前記酸化剤としての酸素を含む空気を前記燃料電池に供給する空気供給流路と、
前記燃料電池から排出された空気を排出する空気排出流路と、
前記空気供給流路上に配置され空気を前記燃料電池に圧送するコンプレッサと、
前記空気排出流路上に配置され前記コンプレッサと共通の回転軸を有し前記燃料電池から排出された空気を駆動エネルギとするエキスパンダタービンと、
前記回転軸上に配置された電動機と、
前記コンプレッサから吐出される空気の一部を分岐し作動空気として用いて前記回転軸を支持する空気動圧軸受部と、
前記空気動圧軸受部を流通した空気を導出させ前記エキスパンダタービンに供給する軸受空気排出供給流路と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記空気排出流路における前記燃料電池と前記エキスパンダタービンとの間に、一端が大気に開放された大気開放流路が接続され、該大気開放流路に開閉弁を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記エキスパンダタービンの入口の空気圧力を検出するタービン入口圧センサと、
前記エキスパンダタービンの出口の空気圧力を検出するタービン出口圧センサと、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記コンプレッサを駆動開始する際に、前記電動機を駆動開始するとともに前記開閉弁を開き、前記タービン入口圧センサにより検出された入口の空気圧力が前記タービン出口圧センサにより検出された出口の空気圧力よりも大きくなったときに前記開閉弁を閉じることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記空気排出流路上に設けられ前記燃料電池のカソード圧力を調整する圧力調整弁と、
前記軸受空気排出供給流路を流通する空気の流量を検出する空気流量センサと、
前記エキスパンダタービンの入口の空気圧力を検出するタービン入口圧センサと、
前記エキスパンダタービンの出口の空気圧力を検出するタービン出口圧センサと、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記燃料電池のカソード圧力を低下させる際に、前記圧力調整弁を開き、前記空気流量センサにより検出された空気流量が所定値より少なく、且つ前記タービン入口圧センサにより検出された入口の空気圧力が前記タービン出口圧センサにより検出された出口の空気圧力よりも小さくなったときに前記開閉弁を開くことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−8445(P2013−8445A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138313(P2011−138313)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】