説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池装置の外気温度が低温時においても、設置スペース、コストに影響しないで、消費電力を低減して配管に滞留した水の凍結を防止する。
【解決手段】燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行い、熱と電力を供給する燃料電池4と、前記燃料電池で発生する熱を吸収する水が循環する水循環経路13と、前記水循環経路13の水を排出するための循環水排水経路13aと、前記循環水排水経路13aを加熱する第1加熱手段13cと、を備え、前記第1加熱手段13cは、前記循環水排水経路13aの外周に巻かれているラインヒータであり、前記循環水排水経路の下流側が前記循環水排水経路の上流側より加熱量が大きくなるように設けられている、ことを特徴とする燃料電池装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば寒冷地方で使用される燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電を行なう燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新発電システムの一つとして、小容量分散発電が容易であり、NOXやSOXなどの有害物質の発生がなく、しかも低騒音というメリットを有する電解質膜と触媒とを利用した燃料電池装置が考えられている。
【0003】
こうした燃料電池装置は、例えば特許文献1などに開示されているように、燃料ガスである天然ガスなどから水素ガスを生成する改質装置と、この水素ガスと酸化剤としての酸素(気体)との電気化学的反応により発電を行なう燃料電池と、この燃料電池に酸素(気体)を供給する空気供給装置(空気ブロア)と、燃料電池で発生した電気エネルギーを商用電圧・周波数に変換する電力変換装置(インバータ)と、熱交換器を具備し燃料電池や改質装置で発生する熱を回収して他の排熱利用外部機器に熱を供給する熱回収装置と、本体(パッケージ)内を換気する送風装置(換気ファン)と、排熱を利用しない場合の冷却に使用する放熱装置(クーリングモジュール)とにより基本的に構成される。
【0004】
また、上記基本的な構成において、各々の構成要素を円滑に動作させるために、天然ガスを昇圧するブロアや、天然ガスの硫黄分を除去する脱硫器や、改質装置に水(蒸気)を送るポンプや、燃料電池の電解質膜を加湿するために、この燃料電池に水を送るポンプや、水中の不純物を除去する浄化装置や、水の電解質を除去するイオン交換装置や、燃料ガス、空気、水の流量を電磁弁で制御する制御部としてのコントローラなどの、様々な補助機器が配置され、配管や配線によって物理的および電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4013609号公報
【特許文献2】国際公開第2009/034997号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような燃料電池装置を家庭用の発電機として使用する場合、燃料電池装置は大きな設置スペースが必要となるため、屋外または屋外の収納小屋などに設置されることが一般的であり、また家庭で使用するお湯および電力の一部若しくは全部を賄うため、年間を通してお湯および電力使用量が極めて少ない夜間の就寝時は停止し、家庭でのお湯および電力使用量が増え始める早朝から運転することが一般的である。そのため、燃料電池装置の設置環境である外気温度は、設置場所により温度範囲は大きく、氷点下から40℃程度での運転となるが、冬場に多くみられるように早朝から運転を再開する時点においては、燃料電池装置の外気温度は氷点下のような低温となる場合があり、燃料電池装置内のさまざまな補助機器、配管が夜間の運転停止中に外気温度と同程度の温度まで低下している。
【0007】
燃料電池装置は低温起動時または運転時において、補助機器、配管内に滞留した水が凍結すると、水抜き栓の破損や、配管内や補助機器内の水が移送されないため、氷が溶けるまで運転ができず、運転の立ち上がりに長時間を要したり、水の粘度が上昇するため水の移送を行なう補助機器の電力消費や、補助機器自身の軸受けなどの駆動部の摩擦による損失が増加して、消費電力の上昇を招き、燃料電池の運転効率が著しく低下したり、能力不
足となる場合がある。
【0008】
従来の燃料電池システムは、燃料電池の発電要求がない時に、温度検出手段が閾値以下(閾値は、凍結予防運転により凍結回避可能な温度)、例えば0℃以下の温度を検出した場合、凍結予防運転として燃料電池の発電をせずに、前記冷却水循環経路の循環ポンプおよび相互循環経路のポンプをそれぞれ循環動作させるとともに、加熱手段を作動し発生した熱を冷却水循環経路、相互循環経路、水回収経路に伝え、各経路内の水の凍結を予防するように制御装置で制御するものである。また、排水経路には排水経路および水抜き栓の近傍にその周囲温度を上げるためのパイプヒータなどの加熱装置を配設していた。
【0009】
しかし、従来の燃料電池システムでは、凍結を予防するために電力負荷からの要求がなくてもタンクの高温水を冷却水ポンプとタンク内の加熱装置を運転させてエネルギーを使用するため、ポンプと加熱装置の電力消費により、ランニングコストを増大させるという課題があった。また、水の循環する経路には凍結予防が可能であるが、各経路に設けた排水経路には加熱された水が循環できないため、排水経路の庫外近傍に設けた水抜き栓は凍結を予防できず、氷結して破損することがあるため、水抜き栓専用の加熱手段を水抜き栓の近傍に配置する必要があり、イニシャルコストを増大させるという課題があった。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、省スペースで凍結予防運転に係わるイニシャルコストとランニングコストを低減した燃料電池装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係わる燃料電池装置は、
燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行い、熱と電力を供給する燃料電池と、
前記燃料電池で発生する熱を吸収する水が循環する水循環経路と、
前記水循環経路の水を排出するための循環水排水経路と、
前記循環水排水経路の下流側の先端に配置した水抜き装置と、
前記排水経路を加熱する第1加熱手段と、
を備え、
前記第1加熱手段は、前記循環水排水経路の外周に巻かれているラインヒータであり、前記循環水排水経路の下流側が前記循環水排水経路の上流側より加熱量が大きくなるように備えたことを特徴とする。
【0012】
これによって、前記循環水排水経路の下流側の温度は、上流側の温度よりも高く設定できるので、外気温度の影響を受け易い循環水排水経路の滞留水の下流側の待機または運転中の凍結を防止すると共に、循環水排水経路の上流側の滞留水を加温し、対流により効率よく循環水排水経路と連通した水循環経路を加温できるので、水抜き装置の破損がなく、また水循環経路の凍結がないため、効率よく起動時の運転の立ち上がり時間を短縮できる。
【0013】
請求項2に係わる燃料電池は、請求項1において、
前記燃料電池を収納する筐体と、
前記筐体内の温度を検知する温度検知器と、
前記温度検知器が予め定められた第1温度以下の温度を検知した場合に前記ラインヒータを動作させる制御器と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
これによって、低外気温度での待機または運転中の水の凍結を抑制する温度を所定温度以上に上昇させないので、前記ラインヒータの消費電力を最小値に制御し、システムを効
率よく運転することができる。
【0015】
請求項3に係わる燃料電池は、請求項1または2において、
前記水循環経路に配置されている循環ポンプと、
前記水循環経路内の水を加熱する第2加熱手段と、
を備え、
前記制御器は、前記温度検知器が前記第1温度以下の温度を検知した場合に、前記第1加熱手段、前記循環ポンプ、および前記第2加熱手段を動作させることを特徴とする。
【0016】
これによって、前記第2加熱手段で凍結予防が可能な温度に加熱された循環水を早期に水循環経路全体に供給するので、急激な外気温度の低下時にも凍結を予防することができる。
【0017】
請求項4に係わる燃料電池は、請求項1から4において、
燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行い、熱と電力を供給する燃料電池と、
前記燃料電池で発生する熱を吸収する水が循環する水循環経路と、
前記水循環経路の水を排出するための循環水排水経路と、
前記循環水排水経路を加熱する第1加熱手段と、
を備え、
前記第1加熱手段は、前記循環水排水経路の外周に巻かれているラインヒータであり、前記ラインヒータを覆う断熱材が、前記循環水排水経路の上流側には設けられず、前記循環水排水経路の下流側には設けられている、
燃料電池システム。
【0018】
これによって、外気温度の影響を受けやすい前記循環水排水経路の下流部の前記ラインヒータを断熱するので、前記循環水排水経路の下流部でのヒータの放熱を抑制し、より効率よくシステムを運転することができる。
【0019】
請求項5に係わる燃料電池は、請求項1から4において、
前記燃料電池から排出される排ガス中に含まれる水蒸気を凝縮させて発生する凝縮水を貯める凝縮水タンクと、
前記凝縮水タンクの水を排水するための凝縮水排水経路と、
前記凝縮水排水経路の下流側の先端に配置した水抜き装置と、
前記凝縮水排水経路を加熱する第3加熱手段と、
を備え、
前記第3加熱手段は、前記凝縮水排水経路の外周に巻かれているラインヒータであり、前記凝縮水排水経路の下流側が前記凝縮水排水経路の上流側より加熱量が大きくなるように設けられていることを特徴とする。
【0020】
これによって、前記凝縮水排水経路の下流側の温度は、上流側の温度よりも高く設定できるので、外気温度の影響を受け易い凝縮水排水経路の滞留水の下流側の待機または運転中の凍結を防止すると共に、凝縮水排水経路の上流側の滞留水を加温し、対流により効率よく凝縮水排水経路と連通した凝縮水経路を加温できるので、水抜き装置の破損がなく、また凝縮水経路の凍結がないため、効率よく起動時の運転の立ち上がり時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、簡単な構成でありながら、前記循環水排水経路の下流側の温度は、上流側の温度よりも高く設定できるので、外気温度の影響を受け易い循環水排水経路の滞留水の下流側の待機または運転中の凍結を防止すると共に、循環水排水経路の上流側の滞留水を加
温し、対流により効率よく循環水排水経路と連通した水循環経路を加温できるので、水抜き装置の破損がなく、また水循環経路の凍結がないため、効率よく起動時の運転の立ち上がり時間の短縮が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1に係わる燃料電池装置の構成を示す模式図
【図2】同実施の形態1に係わる燃料電池装置のフローチャート
【図3】従来技術の一例を示す模式図
【図4】従来技術の一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1の発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行い、熱と電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池で発生する熱を吸収する水が循環する水循環経路と、前記水循環経路の水を排出するための循環水排水経路と、前記循環水排水経路の下流側の先端に配置した水抜き装置と、前記循環水排水経路を加熱する第1加熱手段と、を備え、前記第1加熱手段は、前記循環水排水経路の外周に巻かれているラインヒータであり、前記循環水排水経路の下流側が前記循環水排水経路の上流側より加熱量が大きくなるようにしたことを特徴とする。
【0024】
かかる構成とすることにより、本発明の燃料電池装置は、簡単な構成でありながら、前記循環水排水経路の下流側の温度は、上流側の温度よりも高く設定できるので、外気温度の影響を受け易い循環水排水経路の滞留水の下流側の待機または運転中の凍結を防止すると共に、循環水排水経路の上流側の滞留水を加温し、対流により効率よく循環水排水経路と連通した水循環経路を加温できるので、水抜き装置の破損がなく、また水循環経路の凍結がないため、効率よく起動時の運転の立ち上がり時間を短縮することができる。
【0025】
第2の発明は、請求項1において、前記燃料電池を収納する筐体と、前記筐体内の温度を検知する温度検知器と、前記温度検知器が予め定められた第1温度以下の温度を検知した場合に前記ラインヒータを動作させる制御器と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
かかる構成とすることにより、本発明の燃料電池システムは、簡単な構成でありながら、低外気温度での待機または運転中の水の凍結を抑制する温度を所定温度以上に上昇させないので、前記ラインヒータの消費電力を最小値に制御し、システムを効率よく運転することができる。
【0027】
第3の発明は、請求項1、2において、前記水循環経路に配置されている循環ポンプと、前記水循環経路内の水を加熱する第2加熱手段と、を備え、前記制御器は、前記温度検知器が前記第1温度以下の温度を検知した場合に、前記第1加熱手段、前記循環ポンプ、および前記第2加熱手段を動作させることを特徴とする。
【0028】
かかる構成とすることにより、本発明の燃料電池システムは、簡単な構成でありながら、前記第2加熱手段で凍結予防が可能な温度に加熱された循環水を早期に水循環経路全体に供給するので、急激な外気温度の低下時にも凍結を予防することができる。
【0029】
第4の発明は、請求項1から3において、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行い、熱と電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池で発生する熱を吸収する水が循環する水循環経路と、前記水循環経路の水を排出するための循環水排水経路と、前記循環水排水経路を加熱する第1加熱手段と、を備え、前記第1加熱手段は、前記循環水排水経路の外周に巻かれているラインヒータであり、前記ラインヒータを覆う断熱材が、前記循環水排水経路の上流側には設けられず、前記循環水排水経路の下流側に設けられたことを特徴とす
る。
【0030】
かかる構成とすることにより、本発明の燃料電池システムは、簡単な構成でありながら、外気温度の影響を受けやすい前記循環水排水経路の下流部の前記ラインヒータを断熱するので、前記循環水排水経路の下流部でのヒータの放熱を抑制し、より効率よくシステムを運転することができる。
【0031】
第5の発明は、請求項1から4において、前記燃料電池から排出される排ガス中に含まれる水蒸気を凝縮させて発生する凝縮水を貯める凝縮水タンクと、前記凝縮水タンクの水を排出するための凝縮水排水経路と、前記凝縮水排水経路の下流側の先端に配置した水抜き装置と、前記凝縮水排水経路を加熱する第3加熱手段と、を備え、前記第3加熱手段は、前記凝縮水排水経路の外周に巻かれているラインヒータであり、前記凝縮水排水経路の下流側が前記凝縮水排水経路の上流側より加熱量が大きくなるように設けられたことを特徴とする。
【0032】
かかる構成とすることにより、本発明の燃料電池システムは、簡単な構成でありながら、前記凝縮水排水経路の下流側の温度は、上流側の温度よりも高く設定できるので、外気温度の影響を受け易い凝縮水排水経路の滞留水の下流側の待機または運転中の凍結を防止すると共に、凝縮水排水経路の上流側の滞留水を加温し、対流により効率よく凝縮水排水経路と連通した凝縮水経路を加温できるので、水抜き装置の破損がなく、また凝縮水経路の凍結がないため、効率よく起動時の立ち上がり時間を短縮することができる。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における燃料電池装置のシステム構成図である。改質器1は、原料供給手段2から供給される原料をバーナ3の熱による改質反応で水素リッチガスに変換させる。燃料電池4は、改質器1で発生し水素供給経路5を介して供給される水素リッチガスと酸化剤ガスとしての空気とを反応させて発電し、水素極4aと空気極4bとを有している。排水素経路6は、燃料電池4の水素極4aとバーナ3とを接続する。図1に示す通り、燃料電池4、改質器1などのデバイスや水素供給経路5などの経路は、筐体100内に配置されている。
【0034】
燃料電池4の空気極4bには、空気供給手段7と、凝縮器8および水回収経路9が接続されている。水回収経路9には、排空気経路10が接続されるとともに、改質水供給ポンプ11を備えた改質水供給経路12を介して改質器1に接続されている。
【0035】
水循環経路13は、燃料電池4で発生する熱を冷却するために設けられている。加熱装置14は燃料電池システムでの供給電力が家庭での使用電力を超えたときに消費し、水循環タンク23の中に投入し、直接水を加熱している。水循環経路13には、水循環タンク23の出口側と燃料電池4の間に熱交換器15が配設され、燃料電池4とタンク23の間に配設された水循環ポンプ16によって冷却水が循環する構成となっている。循環水排水経路13aは、水循環経路の下端に接続されている。先端に循環水の水抜き装置13bが配設されている。第1加熱手段13cは、循環水排水経路13aに巻き付けたラインヒータで構成され、循環水排水経路の下流側が上流側よりも加熱量が密に巻き付けられている。第2加熱手段13dは、水循環経路13の中で最も低位置に取り付けた、燃料電池4と水循環ポンプ16の経路に巻きつけたラインヒータで構成されている。凝縮水循環経路17は、水回収経路9と水循環経路13との間を連通し、凝縮水循環ポンプ18によって双方の経路の水を循環させ、本実施の形態では水浄化器19を備えている。
【0036】
凝縮水排水経路17aは、凝縮水循環経路の下端に接続され、先端に凝縮水抜き栓17bが配設されている。第3加熱手段17cは、凝縮水排水経路17aに巻き付けたライン
ヒータで構成され、循環水排水経路の下流側が上流側よりも加熱量が密に巻き付けられている。第4加熱手段17dは、凝縮水循環経路17で最も低位置に取り付けた、凝縮水タンク31と凝縮水循環ポンプ18の間の経路に巻きつけたラインヒータで構成されている。
【0037】
さらに燃料電池装置は、温度検知器20は、制御器21とを備えている。なお、この温度検知器20は、経路内の水の凍結を防止のために温度を検知する場所として有効であれば、燃料電池システム内外を問わず、いずれの箇所であっても構わないが、凍結の始まりを確実に検知するために、温度検知器20は、各経路内の残留水温が最も低くなる位置に設けるのが好ましい。本実施の形態では、水循環経路13内の下方の水温を検知できる位置に取付けられている。
【0038】
つぎに、本実施の形態1における動作を説明する。発電運転を行う場合、原料供給手段2より炭化水素などの原料を改質器1に供給し、バーナ3で加熱され改質水供給ポンプで水循環経路13から分岐した水との改質反応によって水素リッチガスを発生させ、水素供給経路5を介して燃料電池4の水素極4aに供給する。一方、燃料電池4の空気極4bには空気供給手段7から酸化剤ガスとしての空気が供給される。燃料電池4内では、水素極4aに供給された水素と空気極4bに供給された空気中の酸素とを反応させ発電を行うものである。燃料電池4の水素極4aで大半の水素は反応に消費されるが、反応に使われなかった排水素は排水素経路6からバーナ3に供給され、改質反応の加熱燃料として再利用される。
【0039】
燃料電池4の空気極4bで発生した水素と酸素との反応生成水は、水蒸気となって空気とともに排出され、凝縮器8で水分を凝縮し水回収経路9に回収される。水分を分離された空気は、排空気経路10から外部へ排出され、水回収経路9で回収された水は、凝縮水循環経路17の凝縮水循環ポンプ18により、水浄化器19を介して水循環タンク23に送られ、水循環ポンプ16により水循環経路13に再利用され、また、改質水供給経路12の改質水供給ポンプ11によって改質器1へ供給し改質反応の原料として再利用される。
【0040】
燃料電池4で発生した電力は家庭などの電力負荷へ供給される。一方、燃料電池4の発電反応で発生する熱は、水循環ポンプ16による水循環経路13内の水の循環で熱交換器15に伝えられ、家庭の給湯、暖房などの熱源として供給されるものである。
【0041】
つぎに、本実施の形態1における凍結予防運転の動作について説明する。燃料電池4の発電要求がない時に、温度検知器20が閾値以下(閾値は、凍結予防運転により凍結回避可能な温度)、例えば0℃以下の温度を検出した場合、水循環経路13の凍結予防運転として加熱装置14と水循環ポンプ16を運転せずに、循環水経路よりも下方に配置された、循環水排水経路に排水経路の下流側が上流側より加熱量が大きくなるように構成した第1加熱手段13cにより、循環水排水経路13aの水抜き装置13bを最下端として、水抜き装置13bの凍結を優先的に予防すると共に、循環水排水経路13aの上流側の経路内の水の凍結を予防している。さらに、循環水排水経路13aで加熱された経路内の水は、循環水排水経路13aより必然的に上方に配置された水循環経路13に対流により熱が移動することができる。
【0042】
また、図2に示すように、STEP1、2で温度検知器20により検知した温度が2℃未満ならば、STEP4で第1加熱手段13cをONし、2℃以上ならばSTEP3に移る。さらにSTEP5で検知温度が0℃未満になれば、STEP7で第2加熱手段13dと水循環ポンプ16もONする。
【0043】
このように、本実施の形態1の凍結予防運転では、加熱装置14と水循環ポンプ16の運転をせず、水循環排水経路と凝縮水排水経路の水抜き栓の凍結予防のための加熱手段を利用して、経路内の水の対流により水循環経路と凝縮水経路のいずれかも凍結予防することができ、第1加熱手段13cと第3加熱手段17cのいずれかを加熱することのみにより、最小限のエネルギーと最小限のコストで経路内の水の凍結を予防することができ、システムのランニングコストとイニシャルコストを抑えることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように本発明にかかる燃料電池装置は、省スペースで凍結防止運転に係わるランニングコストを低減した燃料電池システムを提供することが可能となり、家庭用および業務用燃料電池コージェネレーションシステムへ適用できるものである。
【符号の説明】
【0045】
4 燃料電池
13 水循環経路
13a 循環水排水経路
13b 水抜き装置
13c 第1加熱手段
13d 第2加熱手段
16 水循環ポンプ
17 凝縮水循環経路
17a 凝縮水排水経路
17b 凝縮水抜き栓
17c 第3加熱手段
17d 第4加熱手段
20 温度検知器
21 制御器
100 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行い、熱と電力を供給する燃料電池と、
前記燃料電池で発生する熱を吸収する水が循環する水循環経路と、
前記水循環経路の水を排出するための循環水排水経路と、
前記循環水排水経路の下流側の先端に配置した水抜き装置と、
前記排水経路を加熱する第1加熱手段と、
を備え、
前記第1加熱手段は、前記循環水排水経路の外周に巻かれているラインヒータであり、前記循環水排水経路の下流側が前記循環水排水経路の上流側より加熱量が大きくなるように設けられている、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池を収納する筐体と、
前記筐体内の温度を検知する温度検知器と、
前記温度検知器が予め定められた第1温度以下の温度を検知した場合に前記ラインヒータを動作させる制御器と、
を備えている請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記水循環経路に配置されている循環ポンプと、
前記水循環経路内の水を加熱する第2加熱手段と、
を備え、
前記制御器は、前記温度検知器が前記第1温度以下の温度を検知した場合に、前記第1加熱手段、前記循環ポンプ、および前記第2加熱手段を動作させる、
請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行い、熱と電力を供給する燃料電池と、
前記燃料電池で発生する熱を吸収する水が循環する水循環経路と、
前記水循環経路の水を排出するための循環水排水経路と、
前記循環水排水経路を加熱する第1加熱手段と、
を備え、
前記第1加熱手段は、前記循環水排水経路の外周に巻かれているラインヒータであり、
前記ラインヒータを覆う断熱材が、前記循環水排水経路の上流側には設けられず、前記循環水排水経路の下流側には設けられている、
燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃料電池から排出される排ガス中に含まれる水蒸気を凝縮させて発生する凝縮水を貯める凝縮水タンクと、
前記凝縮水タンクの水を排水するための凝縮水排水経路と、
前記凝縮水排水経路を加熱する第3加熱手段と、
を備え、
前記第3加熱手段は、前記凝縮水排水経路の外周に巻かれているラインヒータであり、前記凝縮水排水経路の下流側が前記凝縮水排水経路の上流側より加熱量が大きくなるように設けられている、
燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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