説明

燃料電池モジュール

【課題】燃焼器からの熱エネルギの損失を良好に抑制し、熱自立の促進を図るとともに、小型化且つ低コスト化を可能にする。
【解決手段】燃料電池モジュール12は、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池22を複数積層した燃料電池スタック24、原燃料と水蒸気との混合ガスを改質する改質器46、水蒸気を前記改質器46に供給する蒸発器48、燃焼ガスとの熱交換により前記酸化剤ガスを昇温させる熱交換器50、前記燃焼ガスを発生させる排ガス燃焼器52及び起動用燃焼器54を備える。熱交換器50内には、排ガス燃焼器52が一体に設けられるとともに、起動用燃焼器54は、前記熱交換器50の一端に隣接して設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池を複数積層した燃料電池スタックを備える燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、固体電解質に酸化物イオン導電体、例えば、安定化ジルコニアを用いており、この固体電解質の両側にアノード電極及びカソード電極を配設した電解質・電極接合体(以下、MEAともいう)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持している。この燃料電池は、通常、電解質・電極接合体とセパレータとが所定数だけ積層された燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
この種の燃料電池スタックを組み込むシステムとして、例えば、特許文献1に開示された燃料電池システムが知られている。この燃料電池システムは、図9に示すように、固体電解質1の一方側に燃料極2を、他方側に空気極3を備え、前記空気極3に酸化性ガスとして空気を供給するとともに、前記燃料極2に燃料ガスを供給し、前記燃料ガスを前記空気と反応させて発電を行う固体電解質型燃料電池4を使用している。
【0004】
この燃料電池システムでは、さらに外部から導入される燃料ガスを起動時に改質、あるいは不完全燃焼させて還元性ガスとして燃料極2に供給する起動燃焼器5と、前記燃料極2側より排出される燃料極オフガスを燃焼させる排ガス燃焼器6と、前記排ガス燃焼器6から発生する熱で空気を加熱する熱交換器7とを備えている。
【0005】
これにより、起動時に燃料電池システムから多量に発生する一酸化炭素ガス等の未反応排出ガスを極力少なくでき、燃料極2と空気極3とを共に加熱することにより温度差による熱応力の発生を防止でき、燃料電池システムの耐久性を向上でき、また、前記燃料極2と前記空気極3を同時に効率よく加熱でき、起動時間を短縮できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−166439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の特許文献1では、2つの燃焼器である起動燃焼器5と排ガス燃焼器6とが、それぞれ個別に配置されている。このため、それぞれの燃焼器からの放熱が大きくなり、熱エネルギの損失が顕著になるという問題がある。しかも、燃焼用回路(配管等)が複雑化するとともに、部品点数が増加し、設備全体の大型化及び設備費の高騰が惹起されるという問題がある。
【0008】
ここで、起動燃焼器5と排ガス燃焼器6とを共用化させることが考えられる。その際、排ガス燃焼器6には、燃料極2側より排出される高温の燃料極オフガスが導入されており、前記燃料極オフガスの温度は、自己着火温度に到達している。
【0009】
このため、起動燃焼器5において、排ガス燃焼器6の機能を兼用しようとすると、燃料極オフガスと空気とを予め混合させて燃焼させる予混合燃焼が行われる際、前記燃料極オフガスの投入温度が自己着火温度を超えているため、予混合チャンバ内で燃焼が発生してしまう。これにより、起動燃焼器5と排ガス燃焼器6とを共用化させることができないという問題がある。
【0010】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、燃焼器からの熱エネルギの損失を良好に抑制し、熱自立の促進を図るとともに、小型化且つ低コスト化が可能な燃料電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池を複数積層した燃料電池スタックと、炭化水素を主体とする原燃料と水蒸気との混合ガスを改質し、前記燃料電池スタックに供給される前記燃料ガスを生成する改質器と、水を蒸発させるとともに、水蒸気を前記改質器に供給する蒸発器と、燃焼ガスとの熱交換により前記酸化剤ガスを昇温させるとともに、前記燃料電池スタックに前記酸化剤ガスを供給する熱交換器と、前記燃料電池スタックから排出される前記燃料ガスである燃料排ガスと前記酸化剤ガスである酸化剤排ガスとを燃焼させ、前記燃焼ガスを発生させる排ガス燃焼器と、前記原燃料と前記酸化剤ガスとを燃焼させて前記燃焼ガスを発生させる起動用燃焼器とを備える燃料電池モジュールに関するものである。
【0012】
そして、この燃料電池モジュールでは、熱交換器内には、排ガス燃焼器が一体に設けられるとともに、起動用燃焼器は、前記熱交換器の一端に隣接して設けられている。
【0013】
また、この燃料電池モジュールでは、起動用燃焼器には、熱交換器に供給される前の酸化剤ガスを流通させて前記起動用燃焼器を冷却するための冷却通路が設けられることが好ましい。このため、酸化剤ガスは、熱交換器に供給される前に、起動用燃焼器を冷却するための冷却媒体として供給される。従って、起動用燃焼器内は、燃料ガスの自己着火温度以下に保つことができ、逆火を抑制するので、原燃料と酸化剤ガスとの予混合燃焼が図られ、前記起動用燃焼器の耐久性の向上が容易に図られる。
【0014】
さらに、この燃料電池モジュールでは、酸化剤ガスを熱交換器と起動用燃焼器とに分配する酸化剤ガス分配機構を備えることが好ましい。これにより、燃料電池スタックと、改質器、蒸発器、熱交換器及び排ガス燃焼器を含むFC周辺機器とを同時に昇温させることが可能になり、起動時間の短縮化を図ることができる。
【0015】
しかも、燃料電池スタックとFC周辺機器とは、それぞれ緻密な温度制御が遂行されるため、燃料電池モジュールの熱自立が促進される。ここで、熱自立とは、外部から熱を加えることなく自ら発生する熱のみで燃料電池の動作温度を維持することをいう。その上、燃料電池スタック又はFC周辺機器に熱不足が発生した際には、起動用燃焼器から熱を供給することが可能になる。
【0016】
さらにまた、この燃料電池モジュールでは、原燃料を改質器と起動用燃焼器とに分配する原燃料分配機構を備えることが好ましい。このため、燃料電池スタックとFC周辺機器とを同時に昇温させることができ、起動時間の短縮化を図ることが可能になる。
【0017】
しかも、燃料電池スタックとFC周辺機器とは、それぞれ緻密な温度制御が遂行されるため、燃料電池モジュールの熱自立が促進される。その上、燃料電池スタック又はFC周辺機器に熱不足が発生した際には、起動用燃焼器から熱を供給することができる。
【0018】
また、この燃料電池モジュールでは、改質器は、熱交換器の他端に隣接して設けられることが好ましい。従って、改質器、熱交換器、排ガス燃焼器及び起動用燃焼器は、略一体化されるため、燃料電池モジュールの放熱を最小限に抑制することが可能になる。これにより、熱エネルギの損失を抑制し、熱自立運転が良好に促進される。しかも、燃焼用回路(配管等)が簡素化され、部品点数も削減されるため、小型化及び低コスト化が図られる。
【0019】
さらに、この燃料電池モジュールでは、改質器と熱交換器との間には、壁部が配設されるとともに、前記壁部には、燃焼ガスを前記熱交換器から前記改質器に供給するための開口部が形成されることが好ましい。
【0020】
このため、改質器、熱交換器、排ガス燃焼器及び起動用燃焼器は、略一体化されるため、燃料電池モジュールの放熱を最小限に抑制することが可能になる。従って、熱エネルギの損失を抑制し、熱自立運転が良好に促進される。しかも、改質器と熱交換器との間に配管が不要となり、燃焼用回路(配管等)が簡素化され、部品点数も削減されるため、小型化及び低コスト化が図られる。
【0021】
さらにまた、この燃料電池モジュールは、固体酸化物形燃料電池モジュールであることが好ましい。これにより、特にSOFC等の高温型燃料電池に最適である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、熱交換器内には、排ガス燃焼器が一体に設けられるとともに、起動用燃焼器は、前記熱交換器の一端に隣接して設けられるため、前記熱交換器、前記排ガス燃焼器及び前記起動用燃焼器は、略一体化される。このため、燃料電池モジュールの放熱を最小化することができ、熱エネルギの損失を良好に抑制することが可能になる。
【0023】
特に、A/F(空気/燃料ガス)が大きい燃料電池においても、供給される酸化剤ガス(空気)を有効に昇温させることができため、熱自立運転が確実に遂行される。
【0024】
さらに、熱交換器、排ガス燃焼器及び起動用燃焼器に配管が不要になり、燃焼用回路(配管等)が簡素化されるとともに、部品点数も削減されるため、小型化及び低コスト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成説明図である。
【図2】前記燃料電池システムを構成するFC周辺機器の概略斜視説明図である。
【図3】前記FC周辺機器の要部斜視説明図である。
【図4】前記FC周辺機器の要部分解斜視説明図である。
【図5】前記FC周辺機器を構成する改質器の一部断面正面図である。
【図6】前記FC周辺機器を構成する熱交換器及び排ガス燃焼器の一部断面正面図である。
【図7】前記FC周辺機器を構成する起動用燃焼器の一部断面側面図である。
【図8】前記燃料電池システムの起動から定常運転までの動作を説明するフローチャートである。
【図9】特許文献1に開示されている燃料電池システムの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る燃料電池システム10は、定置用の他、車載用等の種々の用途に用いられている。
【0027】
燃料電池システム10は、燃料ガス(水素ガスにメタン、一酸化炭素が混合した気体)と酸化剤ガス(空気)との電気化学反応により発電する燃料電池モジュール(SOFCモジュール)12と、前記燃料電池モジュール12に原燃料(例えば、都市ガス)を供給する原燃料供給装置(燃料ガスポンプを含む)14と、前記燃料電池モジュール12に前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給装置(空気ポンプを含む)16と、前記燃料電池モジュール12に水を供給する水供給装置(水ポンプを含む)18と、前記燃料電池モジュール12の発電量を制御する制御装置20とを備える。
【0028】
燃料電池モジュール12は、複数の固体酸化物形の燃料電池22が鉛直方向(又は水平方向)に積層される固体酸化物形の燃料電池スタック24を備える。燃料電池22は、例えば、安定化ジルコニア等の酸化物イオン導電体で構成される電解質26の両面に、カソード電極28及びアノード電極30が設けられた電解質・電極接合体(MEA)32を備える。
【0029】
電解質・電極接合体32の両側には、カソード側セパレータ34とアノード側セパレータ36とが配設される。カソード側セパレータ34には、カソード電極28に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス流路38が形成されるとともに、アノード側セパレータ36には、アノード電極30に燃料ガスを供給する燃料ガス流路40が形成される。なお、燃料電池22としては、従来より使用されている種々のSOFCを用いることができる。
【0030】
燃料電池スタック24には、各酸化剤ガス流路38の入口側に一体に連通する酸化剤ガス入口連通孔42a、前記酸化剤ガス流路38の出口側に一体に連通する酸化剤ガス出口連通孔42b、各燃料ガス流路40の入口側に一体に連通する燃料ガス入口連通孔44a、及び前記燃料ガス流路40の出口側に一体に連通する燃料ガス出口連通孔44bとが設けられる。
【0031】
燃料電池モジュール12は、炭化水素を主体とする原燃料(例えば、都市ガス)と水蒸気との混合ガスを改質し、燃料電池スタック24に供給される燃料ガスを生成する改質器46と、水を蒸発させるとともに、水蒸気を前記改質器46に供給する蒸発器48と、燃焼ガスとの熱交換により酸化剤ガスを昇温させるとともに、前記燃料電池スタック24に前記酸化剤ガスを供給する熱交換器50と、前記燃料電池スタック24から排出される前記燃料ガスである燃料排ガスと前記酸化剤ガスである酸化剤排ガスとを燃焼させ、前記燃焼ガスを発生させる排ガス燃焼器52と、前記原燃料と前記酸化剤ガスとを燃焼させて前記燃焼ガスを発生させる起動用燃焼器54とを備える。
【0032】
燃料電池モジュール12は、基本的には、燃料電池スタック24とFC周辺機器56とにより構成される。このFC周辺機器56は、改質器46、蒸発器48、熱交換器50、排ガス燃焼器52及び起動用燃焼器54を備えるとともに、後述するように、前記改質器46、前記熱交換器50、前記排ガス燃焼器52及び前記起動用燃焼器54間には、排ガス用の配管を設けていない。
【0033】
FC周辺機器56では、熱交換器50内には、排ガス燃焼器52が一体に設けられるとともに、起動用燃焼器54は、前記熱交換器50の一端に隣接して設けられる。改質器46は、熱交換器50の他端に隣接して設けられる。
【0034】
図2〜図4に示すように、熱交換器50は、立位姿勢に配置されており、後述するように、酸化剤ガスを鉛直下方向から鉛直上方向に流通させる。改質器46は、立位姿勢に配置されており、改質ガスを鉛直下方向から鉛直上方向に流通させる。熱交換器50の一方の側部(一端)には、起動用燃焼器54が直接装着されるとともに、前記熱交換器50の他方の側部(他端)には、改質器46が直接装着される。改質器46、熱交換器50(排ガス燃焼器52を含む)及び起動用燃焼器54は、水平方向(矢印A方向)に積層される。
【0035】
図2に示すように、熱交換器50及び改質器46の下方には、蒸発器48と、都市ガス(原燃料)中に含まれる硫黄化合物を除去するための脱硫器58とが配設される。
【0036】
改質器46は、都市ガス(原燃料)中に含まれるエタン(C)、プロパン(C)及びブタン(C10)等の高級炭化水素(C2+)を、主としてメタン(CH)、水素、COを含む燃料ガスに水蒸気改質するための予備改質器であり、数百℃の作動温度に設定される。
【0037】
燃料電池22は、作動温度が数百℃と高温であり、アノード電極30では、燃料ガス中のメタンが改質されて水素、COが得られ、この水素、COが電解質26の前記アノード電極30側に供給される。
【0038】
図1に示すように、脱硫器58の入口には、原燃料供給装置14を構成する原燃料通路60aが接続されるとともに、前記脱硫器58の出口には、原燃料供給路60bが接続される。この原燃料供給路60bは、改質器46の改質ガス供給室62aに接続される。
【0039】
図3及び図5に示すように、改質ガス供給室62aは、複数の改質管路64の下端側に連通するとともに、前記改質管路64の上端側に改質ガス排出室62bが連通する。改質ガス排出室62bには、燃料ガス通路66の一端が連通するとともに、前記燃料ガス通路66の他端が燃料電池スタック24の燃料ガス入口連通孔44aに連通する(図1参照)。各改質管路64には、改質用にペレット状の触媒(図示せず)が充填されている。
【0040】
各改質管路64間には、加熱空間68が形成される。この加熱空間68には、排ガス配管70aの一端が開口される一方、図1に示すように、前記排ガス配管70aの他端は、蒸発器48の加熱路72の入口に接続される。蒸発器48の加熱路72の出口には、排気配管70bが接続される。
【0041】
蒸発器48の入口には、水供給装置18を構成する水通路74aが接続され、この水通路74aを流通する水は、加熱路72に沿って流通する排ガスにより加熱され、水蒸気が発生する。蒸発器48の出口には、水蒸気通路74bの一端が接続されるとともに、前記水蒸気通路74bの他端は、原燃料供給路60bに対して脱硫器58の下流の位置に合流する。
【0042】
図4及び図6に示すように、熱交換器50は、下部側に酸化剤ガス供給室76aが設けられるとともに、上部側に酸化剤ガス排出室76bが設けられる。酸化剤ガス供給室76aと酸化剤ガス排出室76bとには、複数の酸化剤ガス管路78の両端が連通する。
【0043】
酸化剤ガス供給室76aには、第1酸化剤ガス供給路80aの一端が配設される。酸化剤ガス排出室76bには、酸化剤ガス通路82の一端が配設されるとともに、前記酸化剤ガス通路82の他端は、燃料電池スタック24の酸化剤ガス入口連通孔42aに接続される(図1参照)。
【0044】
熱交換器50の内部には、複数の酸化剤ガス管路78が収容された空間からなるとともに、排ガス燃焼器52を構成する燃焼室84が形成される。燃焼室84は、燃料ガス(具体的には、燃料排ガス)と酸化剤ガス(具体的には、酸化剤排ガス)との燃焼反応により、酸化剤ガスを昇温させる熱源として機能する。
【0045】
燃焼室84には、酸化剤ガス排出室76b側から酸化剤排ガス通路86の一端と燃料排ガス通路88の一端とが配置される。図1に示すように、酸化剤排ガス通路86の他端は、燃料電池スタック24の酸化剤ガス出口連通孔42bに接続されるとともに、燃料排ガス通路88の他端は、前記燃料電池スタック24の燃料ガス出口連通孔44bに接続される。
【0046】
図4に示すように、改質器46と熱交換器50との間には、壁板(壁部)90が配設される。改質器46のフランジ部92と熱交換器50のフランジ部94との間に、壁板90が挟持されるとともに、これらが複数のボルト96及びナット97により一体的に固定される。壁板90には、熱交換器50の燃焼室84に発生した燃焼ガスを、改質器46の加熱空間68に供給するための開口部98が形成される。
【0047】
図7に示すように、起動用燃焼器54は、内部ケーシング100を介して燃焼室102が形成されるとともに、前記内部ケーシング100の外方には、前記燃焼室102を冷却するための冷却通路104が形成される。冷却通路104の上部には、酸化剤ガス供給装置16を構成する第1酸化剤ガス通路106aが接続される一方、前記冷却通路104の下部には、第2酸化剤ガス通路106bが接続される(図1参照)。
【0048】
燃焼室102は、排ガス燃焼器52を構成する燃焼室84に対応して矩形状の火炎領域Sが設定される(図4参照)。この燃焼室102には、予混合燃料通路108が接続されるとともに、前記予混合燃料通路108には、図1に示すように、第2酸化剤ガス供給路80bと原燃料分岐通路110とが接続される。図4に示すように、起動用燃焼器54と熱交換器50とは、それぞれに設けられたフランジ部92、94が複数のボルト96及びナット97により一体的に固定される。
【0049】
図1に示すように、酸化剤ガス供給装置16は、酸化剤ガスを第2酸化剤ガス通路106bから熱交換器50と起動用燃焼器54とに、すなわち、第1酸化剤ガス供給路80aと第2酸化剤ガス供給路80bとに、分配する酸化剤ガス用調整弁(酸化剤ガス分配機構)112を備える。
【0050】
原燃料供給装置14は、原燃料を改質器46と起動用燃焼器54とに、すなわち、原燃料供給路60bと原燃料分岐通路110とに、分配する原燃料用調整弁(原燃料分配機構)114を備える。
【0051】
このように構成される燃料電池システム10の動作について、図8のフローチャートに沿って、以下に説明する。
【0052】
燃料電池システム10の起動時には、空気(酸化剤ガス)及び原燃料が起動用燃焼器54に供給される(ステップS1)。具体的には、酸化剤ガス供給装置16では、空気ポンプの駆動作用下に第1酸化剤ガス通路106aに空気が供給される。この空気は、起動用燃焼器54の冷却通路104を通って第2酸化剤ガス通路106bに導入された後、酸化剤ガス用調整弁112の開度調整作用下に、第2酸化剤ガス供給路80bから予混合燃料通路108に供給される。
【0053】
一方、原燃料供給装置14では、燃料ガスポンプの駆動作用下に原燃料通路60aの上流に、例えば、都市ガス(CH、C、C、C10を含む)等の原燃料が供給される。原燃料は、原燃料用調整弁114の開度調整作用下に、原燃料分岐通路110に導入される。この原燃料は、予混合燃料通路108に供給されて空気と混合されるとともに、起動用燃焼器54内の燃焼室102に供給される。
【0054】
このため、燃焼室102内には、原燃料と空気との混合ガスが供給され、この混合ガスが着火されることにより、燃焼が開始される。従って、起動用燃焼器54に直接接続されている熱交換器50には、図4に示すように、前記起動用燃焼器54の火炎領域Sから排ガス燃焼器52を構成する燃焼室84に燃焼ガスが供給される。
【0055】
燃焼室84に供給された燃焼ガスは、熱交換器50を加温するとともに、壁板90に形成された開口部98を介して改質器46の加熱空間68に移動する。これにより、改質器46が加温される。加熱空間68には、排ガス配管70aが配設されており、この排ガス配管70aは、蒸発器48の加熱路72に連通している。このため、燃焼ガスは、蒸発器48を昇温させた後、排気配管70bから排出される。
【0056】
次いで、ステップS2に進んで、蒸発器48が設定温度T1以上であり、且つ改質器46が設定温度T2以上であるか否かが判断される。設定温度T1は、例えば、150℃であり、設定温度T2は、例えば、550℃である。蒸発器48が設定温度T1未満である際、又は改質器46が設定温度T2未満である際、ステップS3に進む(ステップS2中、NO)。
【0057】
ステップS3では、酸化剤ガス用調整弁112の開度が調整されて第2酸化剤ガス供給路80bへの空気供給量が増加されるとともに、原燃料用調整弁114の開度が調整されて原燃料分岐通路110への原燃料供給量が増加される。従って、起動用燃焼器54による燃焼量が増加して発生する熱量が増加する。なお、水供給装置18では、蒸発器48に供給される水量が調整される。
【0058】
そして、蒸発器48が設定温度T1以上であり、且つ改質器46が設定温度T2以上であると判断されると(ステップS2中、YES)、ステップS4に進む。このステップS4では、酸化剤ガス用調整弁112の開度が調整されて第2酸化剤ガス供給路80bへの空気供給量が減少されるとともに、原燃料用調整弁114の開度が調整されて原燃料分岐通路110への原燃料供給量が減少される。これにより、起動用燃焼器54による燃焼量が減少して発生する熱量が削減される。なお、水供給装置18では、蒸発器48に供給される水量が調整される。
【0059】
このため、酸化剤ガス供給装置16では、酸化剤ガス用調整弁112を介して第1酸化剤ガス供給路80aに供給される空気流量が増加し、熱交換器50の酸化剤ガス供給室76aに空気が導入される。
【0060】
図6に示すように、酸化剤ガス供給室76aに導入された空気は、複数の酸化剤ガス管路78内を下端側から上端側に移動する間に、燃焼室84に導入された燃焼ガスにより加熱(熱交換)される。加熱された空気は、一旦酸化剤ガス排出室76bに供給された後、酸化剤ガス通路82を介して燃料電池スタック24の酸化剤ガス入口連通孔42aに供給される(図1参照)。
【0061】
燃料電池スタック24では、加熱された空気は、酸化剤ガス流路38を流通した後、酸化剤ガス出口連通孔42bから酸化剤排ガス通路86に排出される。酸化剤排ガス通路86は、図6に示すように、排ガス燃焼器52を構成する燃焼室84に開口しており、前記燃焼室84に空気が導入される。
【0062】
また、原燃料供給装置14では、図1に示すように、原燃料用調整弁114を介して原燃料通路60aから脱硫器58に供給される原燃料流量が増加される。脱硫器58で脱硫された原燃料は、原燃料供給路60bを流通して改質器46の改質ガス供給室62aに供給される。一方、水供給装置18から供給される水は、蒸発器48で蒸発された後、原燃料供給路60bを流通して改質ガス供給室62aに供給される。
【0063】
図5に示すように、改質ガス供給室62aに供給された原燃料と水蒸気との混合ガスは、複数の改質管路64内を下端側から上端側に移動する。その間に、混合ガスは、加熱空間68に導入された燃焼ガスにより加熱されるとともに、ペレット状の触媒を介して水蒸気改質され、C2+の炭化水素が除去(改質)されてメタンを主成分とする改質ガスが得られる。この改質ガスは、加熱された燃料ガスとして、一旦改質ガス排出室62bに供給された後、燃料ガス通路66を介して燃料電池スタック24の燃料ガス入口連通孔44aに供給される(図1参照)。
【0064】
燃料電池スタック24では、加熱された燃料ガスは、燃料ガス流路40を流通した後、燃料ガス出口連通孔44bから燃料排ガス通路88に排出される。燃料排ガス通路88は、図6に示すように、排ガス燃焼器52を構成する燃焼室84に開口しており、前記燃焼室84に燃料ガスが導入される。
【0065】
上記のように、燃料電池スタック24は、加熱された空気及び加熱された燃料ガスが流通することにより、昇温される。そして、燃料電池スタック24が、設定温度T3(例えば、650℃)以上であると判断されると(ステップS5中、YES)、ステップS6に進む。このステップS6では、排ガス燃焼器52において燃焼が開始されたか否かが判断される。
【0066】
排ガス燃焼器52を構成する燃焼室84には、図6に示すように、酸化剤排ガス通路86を介して空気が供給されるとともに、燃料排ガス通路88を介して燃料ガスが供給されている。従って、起動用燃焼器54による昇温作用下に、排ガス燃焼器52内が燃料ガスの自己着火温度を超えると、燃焼室84で空気と燃料ガスとによる燃焼が開始される(ステップS6中、YES)。
【0067】
排ガス燃焼器52における燃焼が開始されると、ステップS7に進んで、酸化剤ガス用調整弁112の開度及び原燃料用調整弁114の開度が調整され、起動用燃焼器54への空気及び原燃料の供給が停止される。
【0068】
次いで、ステップS8に進んで、燃料電池スタック24が発電可能な状態であるか否かが判断される。具体的には、燃料電池22のOCV(開回路電圧)が測定され、前記OCVが所定の値に至った際、燃料電池スタック24の発電が可能であると判断する(ステップS8中、YES)。これにより、燃料電池スタック24は、発電が開始される(ステップS9)。
【0069】
燃料電池スタック24の発電時は、上記の起動時と同様に、空気が酸化剤ガス流路38を流通する一方、燃料ガスが燃料ガス流路40を流通する。従って、各燃料電池22のカソード電極28に空気が供給されるとともに、アノード電極30に燃料ガスが供給され、化学反応により発電が行われる。
【0070】
反応に使用された空気(未反応の空気を含む)は、酸化剤排ガスとして酸化剤排ガス通路86に排出される。また、反応に使用された燃料ガス(未反応の燃料ガスを含む)は、燃料排ガスとして燃料排ガス通路88に排出される。酸化剤排ガス及び燃料排ガスは、排ガス燃焼器52に送られて燃焼される。
【0071】
この場合、本実施形態では、燃料電池モジュール12は、燃料電池スタック24、改質器46、蒸発器48、熱交換器50、排ガス燃焼器52及び起動用燃焼器54を備えている。そして、熱交換器50内には、排ガス燃焼器52が一体に設けられるとともに、起動用燃焼器54は、前記熱交換器50の一端に隣接して設けられている。
【0072】
このため、図2及び図3に示すように、熱交換器50、排ガス燃焼器52及び起動用燃焼器54は、略一体化される。従って、燃料電池モジュール12の放熱を最小化することができ、熱エネルギの損失を良好に抑制することが可能になるという効果が得られる。
【0073】
特に、A/F(空気/燃料ガス)が大きい燃料電池22においても、供給される酸化剤ガス(空気)を有効に昇温させることができため、熱自立運転が確実に遂行される。
【0074】
さらに、FC周辺機器56では、熱交換器50、排ガス燃焼器52及び起動用燃焼器54は、互いに配管を介して接続されておらず、燃焼用回路(配管等)が簡素化される。しかも、燃料電池モジュール12は、全体として部品点数も削減されるため、小型化及び低コスト化が図られる。
【0075】
また、図4及び図7に示すように、起動用燃焼器54には、熱交換器50に供給される前の空気(酸化剤ガス)を流通させて前記起動用燃焼器54を冷却するための冷却通路104が設けられている。
【0076】
このため、空気は、熱交換器50に供給される前に、起動用燃焼器54を冷却するための冷却媒体として供給される。従って、起動用燃焼器54内の燃焼室102は、燃料ガスの自己着火温度以下に保つことができ、逆火を抑制するので、原燃料と酸化剤ガスとの予混合燃焼が図られ、前記起動用燃焼器54の耐久性の向上が容易に図られる。
【0077】
さらに、燃料電池モジュール12は、図1に示すように、空気を熱交換器50と起動用燃焼器54とに分配する酸化剤ガス用調整弁(酸化剤ガス分配機構)112を備えている。これにより、燃料電池スタック24と、改質器46、蒸発器48、熱交換器50及び排ガス燃焼器52を含むFC周辺機器56とを同時に昇温させることが可能になり、起動時間の短縮化を図ることができる。
【0078】
しかも、燃料電池スタック24とFC周辺機器56とは、それぞれ緻密な温度制御が遂行されるため、燃料電池モジュール12の熱自立が促進される。その上、燃料電池スタック24又はFC周辺機器56に熱不足が発生した際には、起動用燃焼器54から熱を供給することが可能になる。
【0079】
さらにまた、燃料電池モジュール12は、原燃料を改質器46と起動用燃焼器54とに分配する原燃料用調整弁(原燃料分配機構)114を備えている。このため、燃料電池スタック24とFC周辺機器56とを同時に昇温させることができ、起動時間の短縮化を図ることが可能になる。
【0080】
しかも、燃料電池スタック24とFC周辺機器56とは、それぞれ緻密な温度制御が遂行されるため、燃料電池モジュール12の熱自立が促進される。その上、燃料電池スタック24又はFC周辺機器56に熱不足が発生した際には、起動用燃焼器54から熱を供給することができる。
【0081】
また、図2及び図3に示すように、改質器46は、熱交換器50の他端に隣接して設けられている。従って、改質器46、熱交換器50、排ガス燃焼器52及び起動用燃焼器54は、略一体化されるため、燃料電池モジュール12の放熱を最小限に抑制することが可能になる。これにより、熱エネルギの損失を抑制し、熱自立運転が良好に促進される。しかも、燃焼用回路(配管等)が簡素化され、部品点数も削減されるため、小型化及び低コスト化が図られる。
【0082】
さらに、図4に示すように、改質器46と熱交換器50との間には、壁板90が配設されるとともに、前記壁板90には、燃焼ガスを前記熱交換器50から前記改質器46の加熱空間68に供給するための開口部98が形成されている。
【0083】
このため、改質器46、熱交換器50、排ガス燃焼器52及び起動用燃焼器54は、略一体化されるため、燃料電池モジュール12の放熱を最小限に抑制することが可能になる。従って、熱エネルギの損失を抑制し、熱自立運転が良好に促進される。しかも、改質器46と熱交換器50との間に配管が不要になり、燃焼用回路(配管等)が簡素化され、部品点数も削減されるため、小型化及び低コスト化が図られる。
【0084】
さらにまた、燃料電池モジュール12は、固体酸化物形燃料電池モジュールである。これにより、特にSOFC等の高温型燃料電池に最適である。
【符号の説明】
【0085】
10…燃料電池システム 12…燃料電池モジュール
14…原燃料供給装置 16…酸化剤ガス供給装置
18…水供給装置 20…制御装置
22…燃料電池 24…燃料電池スタック
26…電解質 28…カソード電極
30…アノード電極 38…酸化剤ガス流路
40…燃料ガス流路 46…改質器
48…蒸発器 50…熱交換器
52…排ガス燃焼器 54…起動用燃焼器
56…FC周辺機器 58…脱硫器
60a…原燃料通路 60b…原燃料供給路
62a…改質ガス供給室 62b…改質ガス排出室
64…改質管路 66…燃料ガス通路
68…加熱空間 70a…排ガス配管
70b…排気配管 72…加熱路
74a…水通路 74b…水蒸気通路
76a…酸化剤ガス供給室 76b…酸化剤ガス排出室
78…酸化剤ガス管路 80a、80b…酸化剤ガス供給路
82、106a、106b…酸化剤ガス通路
84、102…燃焼室 86…酸化剤排ガス通路
88…燃料排ガス通路 90…壁板
98…開口部 104…冷却通路
108…予混合燃料通路 110…原燃料分岐通路
112…酸化剤ガス用調整弁 114…原燃料用調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池を複数積層した燃料電池スタックと、
炭化水素を主体とする原燃料と水蒸気との混合ガスを改質し、前記燃料電池スタックに供給される前記燃料ガスを生成する改質器と、
水を蒸発させるとともに、水蒸気を前記改質器に供給する蒸発器と、
燃焼ガスとの熱交換により前記酸化剤ガスを昇温させるとともに、前記燃料電池スタックに前記酸化剤ガスを供給する熱交換器と、
前記燃料電池スタックから排出される前記燃料ガスである燃料排ガスと前記酸化剤ガスである酸化剤排ガスとを燃焼させ、前記燃焼ガスを発生させる排ガス燃焼器と、
前記原燃料と前記酸化剤ガスとを燃焼させて前記燃焼ガスを発生させる起動用燃焼器と、
を備える燃料電池モジュールであって、
前記熱交換器内には、前記排ガス燃焼器が一体に設けられるとともに、
前記起動用燃焼器は、前記熱交換器の一端に隣接して設けられることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池モジュールにおいて、前記起動用燃焼器には、前記熱交換器に供給される前の前記酸化剤ガスを流通させて該起動用燃焼器を冷却するための冷却通路が設けられることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池モジュールにおいて、前記酸化剤ガスを前記熱交換器と前記起動用燃焼器とに分配する酸化剤ガス分配機構を備えることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記原燃料を前記改質器と前記起動用燃焼器とに分配する原燃料分配機構を備えることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記改質器は、前記熱交換器の他端に隣接して設けられることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項6】
請求項5記載の燃料電池モジュールにおいて、前記改質器と前記熱交換器との間には、壁部が配設されるとともに、
前記壁部には、前記燃焼ガスを前記熱交換器から前記改質器に供給するための開口部が形成されることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記燃料電池モジュールは、固体酸化物形燃料電池モジュールであることを特徴とする燃料電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−221932(P2012−221932A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90341(P2011−90341)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】