説明

燃料電池モジュール

【課題】熱エネルギの損失を抑制して熱自立の促進を図るとともに、低コスト化及び小型化に適し、しかも発電効率の向上を図ることを可能にする。
【解決手段】燃料電池モジュール12は、燃料電池スタック22、部分酸化改質器44、排ガス燃焼器46及び熱交換器48とを備える。燃料電池スタック22の一方に熱交換器48が配設され、且つ前記燃料電池スタック22の他方に部分酸化改質器44及び排ガス燃焼器46が配設され、前記部分酸化改質器44は、前記排ガス燃焼器46を囲繞して設けられる。燃料電池モジュール12は、燃焼ガスと酸化剤ガスとの温度差により熱電変換を行う第1熱電変換部76a及び第2熱電変換部76bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池スタックを備える燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、固体電解質に酸化物イオン導電体、例えば、安定化ジルコニアを用いており、この固体電解質の両側にアノード電極及びカソード電極を配設した電解質・電極接合体(以下、MEAともいう)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持している。この燃料電池は、通常、電解質・電極接合体とセパレータとが所定数だけ積層された燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
上記の燃料電池に供給される燃料ガスは、通常、改質装置によって炭化水素系の原燃料から生成される水素ガスが使用されている。改質装置では、一般的に、メタンやLNG等の化石燃料等の炭化水素系の原燃料に、例えば、部分酸化改質や水蒸気改質を施すことにより、改質ガス(燃料ガス)が生成されている。
【0004】
この場合、部分酸化改質器は、発熱反応であるため、比較的低温時に反応が開始されて起動性及び追従性に優れる一方、水蒸気改質器は、効率が高いという利点が得られる。
【0005】
例えば、特許文献1に開示されている燃料電池システムが知られている。この燃料電池システムは、図9に示すように、燃料処理システム1aを備えるとともに、前記燃料処理システム1aは、改質器2aとバーナ燃焼器3aとを備えている。
【0006】
燃料電池システムにおいて、流量計測器4aの指示値に基づいて空気供給装置5aが制御されるが、この流量計測器4aの指示値は、前記空気供給装置5aによって空気が供給されていない場合に、流量ゼロを示す値となるように補正されている。これにより、流量計測器4aの指示値が実際の供給流量を示すようになるので、空気供給装置5aによって供給される空気の供給流量を精度良く調節することが可能となる、としている。
【0007】
また、特許文献2に開示されている部分酸化改質装置では、図10に示すように、改質装置1bをハウジング2bとその内部の隔壁3b、3bとにより2重壁構造のものとしている。隔壁3b、3b間には、改質反応部4bが収容され、ハウジング2bと隔壁3bとの間の空間を原料ガス通路5bとすることで、前記改質反応部4bの周りに前記原料ガス通路5bが設けられている。
【0008】
改質反応部4bは、原料ガス通路5bにより断熱されることにより、前記改質反応部4b内の温度むらを低減している。原料ガス通路5bの原料ガスは、改質反応部4bでの反応熱により予熱されている。このため、自己熱回収により改質装置1bの熱効率を向上させ、原料ガスの予熱のための予熱器を原料ガス通路5bと改質反応部4bとの間に一体的に形成している。
【0009】
これにより、改質反応部4bにおいて、原料ガスから部分酸化を含む反応により水素リッチな改質ガスを生成する場合に、前記改質反応部4b内の温度むらを低減し、且つその熱効率を向上させるとともに、改質装置をシンプルでコンパクトな構造とする、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−218888号公報
【特許文献2】再公表WO01/047800号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の特許文献1では、流体の流量補正を行うものであり、温度による補正を考慮していない。このため、温度域によって体積変化が発生した際に、流入流体が流体制御域を超えるおそれがある。しかも、特許文献1では、固体高分子形燃料電池スタックを用いており、改質器2aから排出される改質ガスを冷却する必要がある。従って、熱エネルギの損失が多く、前記熱エネルギを効率的に活用することができないという問題がある。
【0012】
また、上記の特許文献2では、原料ガスを改質ガスにより熱交換しており、前記改質ガスの温度が低下している。さらに、固体高分子形燃料電池用改質器であるため、CO除去器に受け渡す際、改質ガスの温度を下げる必要があり、熱エネルギを効率的に活用することができないという問題がある。
【0013】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、熱エネルギの損失を抑制して熱自立の促進を図るとともに、低コスト化及び小型化に適し、しかも発電効率の向上を図ることが可能な燃料電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池スタックと、炭化水素を主体とする原燃料と酸化剤ガスとの混合ガスを改質して前記燃料ガスを生成するとともに、前記燃料電池スタックに前記燃料ガスを供給する部分酸化改質器と、前記燃料電池スタックから排出される前記燃料ガスである燃料排ガスと前記酸化剤ガスである酸化剤排ガスとを燃焼させ、燃焼ガスを発生させる排ガス燃焼器と、前記燃焼ガスとの熱交換により前記酸化剤ガスを昇温させるとともに、前記燃料電池スタックに前記酸化剤ガスを供給する熱交換器とを備える燃料電池モジュールに関するものである。
【0015】
この燃料電池モジュールでは、燃料電池スタックの一方に熱交換器が配設され、且つ前記燃料電池スタックの他方に部分酸化改質器及び排ガス燃焼器が配設され、前記部分酸化改質器は、前記排ガス燃焼器を囲繞して設けられるとともに、前記燃料電池モジュールは、燃焼ガスと酸化剤ガスとの温度差により熱電変換を行う熱電変換部を備えている。
【0016】
また、この燃料電池モジュールでは、排ガス燃焼器から排出される燃焼ガスを、燃料電池スタック及び熱交換器に、順次、供給する燃焼ガス通路と、酸化剤ガスを前記熱交換器及び部分酸化改質器に供給する酸化剤ガス通路とを備えるとともに、熱電変換部は、前記燃焼ガス通路の前記熱交換器の下流側に、且つ、前記酸化剤ガス通路の前記熱交換器及び前記部分酸化改質器の上流側に設けられることが好ましい。
【0017】
このため、熱自立を妨げることがなく、燃焼ガスと酸化剤ガスとの温度差、すなわち、熱エネルギを電気エネルギとして回収することができ、発電効率を向上させることが可能になる。しかも、燃焼ガスの温度が低下されるため、廃熱の抑制が図られる一方、酸化剤ガスが昇温されるため、熱自立の促進が図られる。ここで、熱自立とは、燃料電池システムの運転に必要な熱の全量を外部から加えることなく、自ら発生する熱のみで前記燃料電池システムの動作温度を維持することをいう。
【0018】
さらに、この燃料電池モジュールでは、酸化剤ガス通路は、熱交換器に酸化剤ガスを供給する第1酸化剤ガス供給路部と、部分酸化改質器に前記酸化剤ガスを供給する第2酸化剤ガス供給路部とに分岐するとともに、分岐部位には、前記酸化剤ガスの分配量を調整する酸化剤ガス調整弁が配設されることが好ましい。
【0019】
従って、燃料電池スタックと、熱交換器を含むFC周辺機器(BOP)とを同時に昇温させることができ、起動時間の短縮化を図ることが可能になる。一方、アノード側を還元することができ、起動時間が短縮される。
【0020】
さらにまた、この燃料電池モジュールでは、熱電変換部は、酸化剤ガス通路に酸化剤ガス調整弁の上流側に位置して配置されることが好ましい。これにより、熱自立を妨げることがなく、燃焼ガスと酸化剤ガスとの温度差、すなわち、熱エネルギを電気エネルギとして回収することができ、発電効率を向上させることが可能になる。しかも、燃焼ガスの温度が低下されるため、廃熱の抑制が図られる一方、酸化剤ガスが昇温されるため、熱自立の促進が図られる。
【0021】
また、この燃料電池モジュールでは、熱電変換部は、少なくとも第1酸化剤ガス供給路部又は第2酸化剤ガス供給路部に酸化剤ガス調整弁の下流側に位置して配置されることが好ましい。このため、熱自立を妨げることがなく、燃焼ガスと酸化剤ガスとの温度差、すなわち、熱エネルギを電気エネルギとして回収することができ、発電効率を向上させることが可能になる。しかも、燃焼ガスの温度が低下されるため、廃熱の抑制が図られる一方、酸化剤ガスが昇温されるため、熱自立の促進が図られる。その上、酸化剤ガスは、酸化剤ガス調整弁の下流側で昇温されるため、前記酸化剤ガス調整弁の耐久性を損なうことがない。
【0022】
さらに、この燃料電池モジュールでは、熱電変換部は、燃焼ガスと酸化剤ガスとが互いに並行流に設定されるとともに、異なる熱電変換温度に設定された複数の熱電変換素子を備えることが好ましい。従って、例えば、並行流の上流側は、燃焼ガスと酸化剤ガスとの温度差が大きくなるため、高温型熱電変換素子を使用する一方、並行流の下流側は、前記温度差が小さくなるため、低温型熱電変換素子を使用することができる。これにより、温度差に応じて最適な熱電変換素子が用いられるため、効率的な熱電変換が確実に遂行可能になる。
【0023】
さらにまた、この燃料電池モジュールでは、熱電変換部は、燃焼ガスと酸化剤ガスとが互いに対向流に設定されるとともに、所定の熱電変換温度に設定された複数の熱電変換素子を備えることが好ましい。このため、熱電変換部内では、想定される温度差に応じて、最適な熱電変換温度に設定された熱電変換素子を用いることができる。従って、効率的な熱電変換が確実に遂行可能になる。
【0024】
また、この燃料電池モジュールでは、熱電変換部は、燃焼ガスと酸化剤ガスとが互いに交差する流れ又は対称の流れに設定されるとともに、所定の熱電変換温度に設定された複数の熱電変換素子を備えることが好ましい。これにより、熱電変換部内では、想定される温度差に応じて、最適な熱電変換温度に設定された熱電変換素子を用いることができる。このため、効率的な熱電変換が確実に遂行可能になる。
【0025】
さらに、この燃料電池モジュールでは、熱交換器は、燃料電池スタックの燃料電池積層方向一方に設けられるとともに、部分酸化改質器及び排ガス燃焼器は、前記燃料電池スタックの燃料電池積層方向他方に設けられることが好ましい。従って、燃料電池モジュールの放熱を最小限に抑制することができ、熱エネルギの損失を良好に抑制することが可能になる。換言すれば、熱自立運転が促進される。
【0026】
さらにまた、この燃料電池モジュールは、固体酸化物形燃料電池モジュールであることが好ましい。これにより、特にSOFC等の高温型燃料電池に最適である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、燃料電池スタックの一方に熱交換器が配置され、前記燃料電池スタックの他方に部分酸化改質器及び排ガス燃焼器が配置されている。このため、燃料電池スタックの放熱が最小化され、前記燃料電池スタックの温度分布の差が減少されている。従って、熱エネルギの損失を抑制することができ、熱自立運転の促進が容易に図られる。
【0028】
ここで、熱自立とは、燃料電池システムの運転に必要な熱の全量を外部から加えることなく、自ら発生する熱のみで前記燃料電池システムの動作温度を維持することをいう。
【0029】
しかも、部分酸化改質器は、排ガス燃焼器を囲繞して設けられている。これにより、燃料電池スタックから排出される燃料排ガスと酸化剤排ガスとを、自己着火温度を維持した状態で、排ガス燃焼器に導入させることが可能になる。このため、排ガス燃焼器は、燃焼安定性が良好に向上し、熱自立運転の促進が容易に図られる。
【0030】
その上、改質器として部分酸化改質器のみを設けており、水蒸気改質器を不要にすることができる。従って、水蒸気を供給するための水供給系が省略されるため、部品の削減が図られて、燃料電池モジュール全体の低コスト化及び小型化が良好に図られる。
【0031】
さらに、燃料電池モジュールは、燃焼ガスと酸化剤ガスとの温度差により熱電変換を行う熱電変換部を備えている。これにより、燃焼ガスと酸化剤ガスとの温度差、すなわち、熱エネルギを電気エネルギとして回収することができ、特に起動時間を損なうことがなく、発電効率を向上させることが可能になる。しかも、燃焼ガスの温度が低下されるため、廃熱の抑制が図られる一方、酸化剤ガスが昇温されるため、熱自立の促進が図られる。
【0032】
ここで、燃焼ガスとは、排ガス燃焼器で生成されるガスであって、他のガス等の被加熱体と熱交換を行って熱エネルギを与えることができる加熱媒体をいい、熱エネルギを放出した後には、排ガスという。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池モジュールが組み込まれる燃料電池システムの概略構成説明図である。
【図2】前記燃料電池モジュールを構成する第1及び第2熱電変換部の要部分解斜視説明図である。
【図3】前記燃料電池システムの動作を説明するフローチャートである。
【図4】前記燃料電池モジュールを構成する部分酸化改質器の最適マップの説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池モジュールが組み込まれる燃料電池システムの概略構成説明図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池モジュールを構成する熱電変換部の要部分解斜視説明図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る燃料電池モジュールを構成する熱電変換部の要部分解斜視説明図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る燃料電池モジュールを構成する熱電変換部の要部分解斜視説明図である。
【図9】特許文献1に開示されている燃料電池システムの説明図である。
【図10】特許文献2に開示されている部分酸化改質装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に示すように、燃料電池システム10は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池モジュール12を組み込んでおり、前記燃料電池システム10は、定置用の他、可搬用や車載用等の種々の用途に用いられている。
【0035】
燃料電池システム10は、燃料ガス(例えば、水素ガスにメタン、一酸化炭素が混合した気体)と酸化剤ガス(空気)との電気化学反応により発電する燃料電池モジュール(SOFCモジュール)12と、前記燃料電池モジュール12に炭化水素を主体とする原燃料(例えば、都市ガス)を供給する原燃料供給装置(燃料ガスポンプを含む)14と、前記燃料電池モジュール12に前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給装置(空気ポンプを含む)16と、前記燃料電池モジュール12の発電量を制御する制御装置18とを備える。
【0036】
燃料電池モジュール12は、複数の固体酸化物形の燃料電池20が鉛直方向(矢印A方向)に積層される固体酸化物形の燃料電池スタック22を備える。燃料電池20は、例えば、安定化ジルコニア等の酸化物イオン導電体で構成される電解質24の両面に、カソード電極26及びアノード電極28が設けられた電解質・電極接合体(MEA)30を備える。
【0037】
電解質・電極接合体30の両側には、カソード側セパレータ32とアノード側セパレータ34とが配設される。カソード側セパレータ32には、カソード電極26に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス流路36が形成されるとともに、アノード側セパレータ34には、アノード電極28に燃料ガスを供給する燃料ガス流路38が形成される。なお、燃料電池20としては、従来より使用されている種々のSOFCを用いることができる。
【0038】
燃料電池スタック22には、各酸化剤ガス流路36の入口側に一体に連通する酸化剤ガス入口連通孔40a、前記酸化剤ガス流路36の出口側に一体に連通する酸化剤ガス出口連通孔40b、各燃料ガス流路38の入口側に一体に連通する燃料ガス入口連通孔42a、及び前記燃料ガス流路38の出口側に一体に連通する燃料ガス出口連通孔42bが設けられる。
【0039】
燃料電池モジュール12は、原燃料と酸化剤ガスとの混合ガスを改質する部分酸化改質器(POX)44と、燃料電池スタック22から排出される燃料ガスである燃料排ガスと酸化剤ガスである酸化剤排ガスとを燃焼させ、燃焼ガスを発生させる排ガス燃焼器46と、前記燃焼ガスとの熱交換により酸化剤ガスを昇温させるとともに、前記燃料電池スタック22に前記酸化剤ガスを供給する熱交換器48とを備える。
【0040】
燃料電池モジュール12は、基本的には、燃料電池スタック22とFC周辺機器50とにより構成される。このFC周辺機器50は、部分酸化改質器44、排ガス燃焼器46及び熱交換器48を備えるとともに、前記部分酸化改質器44は、前記排ガス燃焼器46を囲繞して設けられる。部分酸化改質器44は、円柱状(又は角柱状)の外形形状を有しており、排ガス燃焼器46は、前記部分酸化改質器44を収容するリング形状(又は角柱状)に構成される。
【0041】
原燃料供給装置14は、原燃料を部分酸化改質器44に供給する原燃料通路51を備える。酸化剤ガス供給装置16は、酸化剤ガスを熱交換器48から燃料電池スタック22に供給する酸化剤ガス通路53を備える。
【0042】
燃料電池スタック22の一方に、より好ましくは、燃料電池積層方向(矢印A方向)一方(上方)に、熱交換器48が配設されるとともに、前記燃料電池スタック22の他方に、より好ましくは、燃料電池積層方向(矢印A方向)他方(下方)に、部分酸化改質器44及び排ガス燃焼器46が配設される。
【0043】
燃料電池積層方向は、重力方向と一致している。換言すれば、熱交換器48は、燃料電池スタック22の重力方向上部に配設されるとともに、部分酸化改質器44及び排ガス燃焼器46は、前記燃料電池スタック22の重力方向下部に配設される。
【0044】
部分酸化改質器44は、都市ガス(原燃料)中に含まれるエタン(C)、プロパン(C)及びブタン(C10)等の高級炭化水素(C2+)を、主として水素、COを含む燃料ガスに部分酸化改質するための予備改質器であり、数百℃の作動温度に設定される。
【0045】
燃料電池20は、作動温度が数百℃と高温であり、アノード電極28では、燃料ガス中のメタンが改質されて水素、COが得られ、この水素、COが電解質24の前記アノード電極28側に供給される。
【0046】
部分酸化改質器44は、内部に部分酸化触媒(図示せず)が充填されるとともに、起動時に着火させるための図示しないイグナイターやグロー等の着火装置を設ける。部分酸化改質器44には、脱硫後の原燃料が導入される混合ガス入口52aと、前記原燃料が部分酸化改質された改質ガス(燃料ガス)が導出される燃料ガス出口52bとが設けられる。
【0047】
排ガス燃焼器46は、内部に燃焼室54を有するとともに、前記燃焼室54には、酸化剤排ガス入口56、燃料排ガス入口58及び燃焼ガス出口60が連通する。燃焼室54には、起動時に還元ガス(燃料ガス)と酸化剤ガスとの混合ガスを着火させるための図示しないイグナイターやグロー等の着火装置が配設される。
【0048】
熱交換器48の内部には、複数の酸化剤ガス管路(図示せず)が収容された昇温空間が形成されるとともに、前記酸化剤ガス管路を流通する酸化剤ガスが、前記昇温空間に供給される高温の燃焼ガスにより昇温される。熱交換器48には、酸化剤ガス管路の入口及び出口に連通する酸化剤ガス供給口62a及び酸化剤ガス排出口62bと、昇温空間に連通する燃焼ガス供給口64a及び燃焼ガス排出口64bとが設けられる。
【0049】
燃料電池スタック22の燃料ガス入口連通孔42aと部分酸化改質器44の燃料ガス出口52bとは、燃料ガス通路66を介して連通する。燃料電池スタック22の酸化剤ガス出口連通孔40bと排ガス燃焼器46の酸化剤排ガス入口56とは、酸化剤排ガス通路68を介して連通するとともに、前記燃料電池スタック22の燃料ガス出口連通孔42bと前記排ガス燃焼器46の燃料排ガス入口58とは、燃料排ガス通路70を介して連通する。燃料電池スタック22の酸化剤ガス入口連通孔40aと熱交換器48の酸化剤ガス排出口62bとは、酸化剤ガス通路72を介して連通する。
【0050】
排ガス燃焼器46の燃焼ガス出口60には、燃焼ガス通路74aの一端が連通するとともに、前記燃焼ガス通路74aの他端が燃料電池スタック22に連通する。燃料電池スタック22には、燃焼ガスを導出するための燃焼ガス通路74bの一端が連通し、前記燃焼ガス通路74bの他端が熱交換器48の燃焼ガス供給口64aに連通する。熱交換器48の燃焼ガス排出口64bには、燃焼ガス通路74cの一端が連通するとともに、前記燃焼ガス通路74cの他端には、第1熱電変換部76a及び第2熱電変換部76bが直列的に設けられる。
【0051】
第1熱電変換部76aは、酸化剤ガス通路53を構成する第1酸化剤ガス供給路部53aに配置される一方、第2熱電変換部76bは、前記酸化剤ガス通路53を構成する第2酸化剤ガス供給路部53bに配置される。第1酸化剤ガス供給路部53aと第2酸化剤ガス供給路部53bとには、酸化剤ガス通路53に設けられる酸化剤ガス調整弁78により酸化剤ガスが分配供給される。
【0052】
原燃料供給装置14は、都市ガス(原燃料)中に含まれる硫黄化合物を除去するための脱硫器80を備えるとともに、前記脱硫器80が原燃料通路51の途上に配設される。この原燃料通路51は、部分酸化改質器44の混合ガス入口52aに接続される。
【0053】
酸化剤ガス供給装置16は、酸化剤ガスを酸化剤ガス通路53から熱交換器48と部分酸化改質器44とに、すなわち、第1酸化剤ガス供給路部53aと第2酸化剤ガス供給路部53bとに、分配する酸化剤ガス調整弁78を備える。第1酸化剤ガス供給路部53aは、熱交換器48の酸化剤ガス供給口62aに連通する。第2酸化剤ガス供給路部53bは、原燃料通路51に対し、脱硫器80と部分酸化改質器44との間に位置して連通する。
【0054】
図2に示すように、第1熱電変換部76aは、被加熱体である酸化剤ガスを流通させる第1通路部材82と、加熱媒体である燃焼ガスを流通させる第2通路部材84と、前記第1通路部材82及び前記第2通路部材84間に配設されて異なる熱電変換温度に設定されたそれぞれ複数の熱電変換素子86a、86b及び86cとを備える。
【0055】
第1通路部材82は、ボックス形状を有し、酸化剤ガス入口82aと酸化剤ガス出口82bとの間で蛇行する酸化剤ガス蛇行流路82cを設ける。酸化剤ガス蛇行流路82cは、第1通路部材82内に交互に且つ千鳥状に配置される仕切板82dにより形成される。
【0056】
第2通路部材84は、ボックス形状を有し、燃焼ガス入口84aと燃焼ガス出口84bとの間で蛇行する燃焼ガス蛇行流路84cを設ける。燃焼ガス蛇行流路84cは、第2通路部材84内に交互に且つ千鳥状に配置される仕切板84dにより形成される。燃焼ガス蛇行流路84cと酸化剤ガス蛇行流路82cとは、互いに並行流に設定される。
【0057】
熱電変換素子86a、86b及び86cは、第1通路部材82と第2通路部材84とに両端が挟持されるとともに、各両端に温度差を生じさせることにより起電力を発生させる機能を有する。酸化剤ガス蛇行流路82c及び燃焼ガス蛇行流路84cの上流側に配置される複数(図2には、3個配置されるが、個数は任意に設定可能である。以下、同様)の熱電変換素子86aは、高温の熱電変換温度に設定された高温型熱電変換素子である。
【0058】
酸化剤ガス蛇行流路82c及び燃焼ガス蛇行流路84cの中流側に配置される複数の熱電変換素子86bは、中温の熱電変換温度に設定された中温型熱電変換素子である。酸化剤ガス蛇行流路82c及び燃焼ガス蛇行流路84cの下流側に配置される複数の熱電変換素子86cは、低温の熱電変換温度に設定された低温型熱電変換素子である。
【0059】
なお、第2熱電変換部76bは、上記の第1熱電変換部76aと同様に構成されており、同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0060】
このように構成される燃料電池システム10の動作について、図3のフローチャートに沿って、以下に説明する。
【0061】
先ず、燃料電池システム10の起動時には、酸化剤ガス調整弁78の開度が設定される。具体的には、部分酸化改質に必要な空気(酸化剤ガス)及び原燃料、例えば、都市ガス(CH、C、C、C10を含む)等が投入されるように、原燃料供給装置14が駆動されるとともに、酸化剤ガス調整弁78の開度が調整される(ステップS1)。部分酸化改質の制御は、空燃比(O/C)(投入空気中の酸素モル数/投入原燃料中のカーボンモル数)により行われ、部分酸化改質器44には、空気と原燃料とが最適空燃比量で導入される。
【0062】
原燃料供給装置14では、原燃料通路51に供給された原燃料が、脱硫器80で脱硫された後、部分酸化改質器44の混合ガス入口52aに供給される。一方、酸化剤ガス供給装置16では、酸化剤ガス通路53に供給された空気は、酸化剤ガス調整弁78を介して第1酸化剤ガス供給路部53aと第2酸化剤ガス供給路部53bとそれぞれ所定の量ずつ分配される。第2酸化剤ガス供給路部53bに分配された空気は、原燃料通路51で原燃料に混合されて部分酸化改質器44の混合ガス入口52aに供給される。
【0063】
部分酸化改質器44内では、図示しない着火装置により着火され、前記部分酸化改質器44による部分酸化改質が開始される。例えば、O/C=0.5に設定されると、2CH+O→4H+2COとなる部分酸化反応が発生する。この部分酸化反応は、発熱反応であり、部分酸化改質器44から高温(約600℃)の還元ガス(燃料ガス)が発生する。
【0064】
高温の還元ガスは、燃料ガス通路66を介して燃料電池スタック22の燃料ガス入口連通孔42aに供給される。燃料電池スタック22では、高温の還元ガスは、燃料ガス流路38を流通した後、燃料ガス出口連通孔42bから燃料排ガス通路70に排出される。還元ガスは、燃料排ガス通路70に連通する燃料排ガス入口58から排ガス燃焼器46の燃焼室54に導入される。
【0065】
一方、酸化剤ガス供給装置16では、第1酸化剤ガス供給路部53aに供給された空気が、酸化剤ガス供給口62aから熱交換器48内に導入される。空気は、複数の酸化剤ガス管路内を移動する間に、昇温空間に導入された燃焼ガス(後述する)により加熱(熱交換)される。加熱された空気は、酸化剤ガス通路72を介して燃料電池スタック22の酸化剤ガス入口連通孔40aに供給される。
【0066】
燃料電池スタック22では、加熱された空気は、酸化剤ガス流路36を流通した後、酸化剤ガス出口連通孔40bから酸化剤排ガス通路68に排出される。酸化剤排ガス通路68は、排ガス燃焼器46を構成する燃焼室54に開口しており、前記燃焼室54に空気が導入される。従って、燃焼室54内には、燃料排ガス及び酸化剤排ガスが導入され、燃料ガスの自己着火温度を超えると、燃焼室54で空気と燃料ガスとによる燃焼が開始されるが、もし、自己着火温度を超えない場合においては、図示しない着火装置により着火される(ステップS2)。
【0067】
燃焼室54に発生した燃焼ガスは、燃焼ガス出口60から燃焼ガス通路74aを通って燃料電池スタック22に供給され、前記燃料電池スタック22を昇温させる。さらに、燃焼ガスは、燃焼ガス通路74bを通って熱交換器48の燃焼ガス供給口64aに導入される。
【0068】
このため、燃焼ガスは、熱交換器48内の昇温空間に供給され、複数の酸化剤ガス管路内を移動する酸化剤ガスを昇温させる。その後、燃焼ガスは、燃焼ガス排出口64bから燃焼ガス通路74cを通って第1熱電変換部76a及び第2熱電変換部76bに、順次、供給される。
【0069】
図2に示すように、第1熱電変換部76a及び第2熱電変換部76bでは、第1通路部材82の酸化剤ガス入口82aから酸化剤ガス蛇行流路82cに外部空気である酸化剤ガスが供給される一方、第2通路部材84の燃焼ガス入口84aから燃焼ガス蛇行流路84cに燃焼ガスが供給される。従って、酸化剤ガス蛇行流路82cと燃焼ガス蛇行流路84cとの間に配設されている複数の熱電変換素子86a、86b及び86cは、それぞれの両端に温度差が発生し、熱エネルギが電気エネルギとして回収される。
【0070】
上記のように、燃料電池スタック22は、加熱された空気、加熱された燃料ガス及び燃焼ガスが流通することにより、昇温される。一方、部分酸化改質器44は、排ガス燃焼器46により昇温され、前記部分酸化改質器44が所定の運転可能状態になったか否かが判断される(ステップS3)。
【0071】
具体的には、図4に示すように、部分酸化改質器44の温度と空燃比とから、高効率な反応が得られる高効率範囲がマップとして設定されている。このため、部分酸化改質器44の温度T1が700℃≦T1≦900℃で、且つ0.45≦O/C≦0.55であると、すなわち、部分酸化改質器44の改質状態がOKであると判断される。
【0072】
部分酸化改質器44の改質状態がOKであると判断されると(ステップS3中、YES)、ステップS4に進む。このステップS4では、燃料電池スタック22の温度(スタック温度)がT2(例えば、650℃)以上であるか否かが判断される。スタック温度が、T2以上であると判断されると(ステップS4中、YES)、ステップS5に進む。
【0073】
ステップS5では、燃料電池スタック22が発電可能な状態であるか否かが判断される。具体的には、燃料電池20のOCV(開回路電圧)が測定され、前記OCVが所定の値に至った際、燃料電池スタック22の発電が可能であると判断する(ステップS5中、YES)。これにより、燃料電池スタック22は、発電が開始される(ステップS6)。
【0074】
燃料電池スタック22の発電時は、上記の起動時と同様に、空気が酸化剤ガス流路36を流通する一方、燃料ガスが燃料ガス流路38を流通する。従って、各燃料電池20のカソード電極26に空気が供給されるとともに、アノード電極28に燃料ガスが供給され、化学反応により発電が行われる。
【0075】
反応に使用された空気(未反応の空気を含む)は、酸化剤排ガスとして酸化剤排ガス通路68に排出される。また、反応に使用された燃料ガス(未反応の燃料ガスを含む)は、燃料排ガスとして燃料排ガス通路70に排出される。酸化剤排ガス及び燃料排ガスは、排ガス燃焼器46に送られて燃焼される。排ガス燃焼器46内では、燃料ガスの自己着火温度を超えると、燃焼室54で空気と燃料ガスとによる燃焼が開始される。
【0076】
一方、ステップS3において、部分酸化改質器44の改質状態がNGであると判断されると(ステップS3中、NO)、ステップS7に進む。ステップS7では、部分酸化改質器44の温度が調整されるとともに、前記部分酸化改質器44に供給される原燃料及び空気(O/C)が調整される。
【0077】
また、ステップS4において、スタック温度がT2未満であると判断されると(ステップS4中、NO)、ステップS8に進む。ステップS8では、排ガス燃焼器46の温度が設定温度T3(例えば、900℃)以上であるか否かが判断される。排ガス燃焼器46の温度が、設定温度T3以上であると判断されると(ステップS8中、YES)、ステップS4に戻される。一方、排ガス燃焼器46の温度が、設定温度T3未満であると判断されると(ステップS8中、NO)、ステップS2に戻される。
【0078】
この場合、第1の実施形態では、燃料電池スタック22の一方に、熱交換器48が配置されるとともに、前記燃料電池スタック22の他方に、部分酸化改質器44及び排ガス燃焼器46が配置されている。このため、燃料電池スタック22の放熱が最小化され、前記燃料電池スタック22の温度分布の差が減少されている。従って、熱エネルギの損失を抑制することができ、熱自立運転の促進が容易に図られるという効果が得られる。
【0079】
ここで、熱自立とは、燃料電池システム10の運転に必要な熱の全量を外部から加えることなく、自ら発生する熱のみで前記燃料電池システム10の動作温度を維持することをいう。
【0080】
しかも、部分酸化改質器44は、排ガス燃焼器46を囲繞して設けられている。これにより、燃料電池スタック22から排出される燃料排ガスと酸化剤排ガスとを、自己着火温度を維持した状態で、排ガス燃焼器46に導入させることが可能になる。このため、排ガス燃焼器46は、燃焼安定性が良好に向上し、熱自立運転の促進が容易に図られる。
【0081】
その上、改質器として部分酸化改質器44のみを設けており、水蒸気改質器を不要にすることができる。従って、水蒸気を供給するための水供給系が省略されるため、部品の削減が図られて、燃料電池モジュール12全体の低コスト化及び小型化が良好に図られる。
【0082】
さらに、第1の実施形態では、燃料電池モジュール12は、燃焼ガスと酸化剤ガスとの温度差により熱電変換を行う第1熱電変換部76a及び第2熱電変換部76bを備えている。図2に示すように、第1熱電変換部76a及び第2熱電変換部76bは、被加熱体である酸化剤ガスを流通させる第1通路部材82と、加熱媒体である燃焼ガスを流通させる第2通路部材84と、前記第1通路部材82及び前記第2通路部材84間に配置されてそれぞれ異なる熱電変換温度に設定された複数の熱電変換素子86a、86b及び86cとを備えている。
【0083】
これにより、第1熱電変換部76a及び第2熱電変換部76bは、燃焼ガスと酸化剤ガスとの温度差、すなわち、熱エネルギを電気エネルギとして回収することができ、特に起動時間を損なうことがなく、発電効率を向上させることが可能になる。しかも、燃焼ガスの温度が低下されるため、廃熱の抑制が図られる一方、酸化剤ガスが昇温されるため、熱自立の促進が図られる。なお、少なくとも第1熱電変換部76a又は第2熱電変換部76bのいずれか一方のみを備えていてもよい。
【0084】
ここで、燃焼ガスとは、排ガス燃焼器46で生成されるガスであって、他のガス等の被加熱体と熱交換を行って熱エネルギを与えることができる加熱媒体をいい、熱エネルギを放出した後には、排ガスという。
【0085】
また、燃料電池モジュール12では、排ガス燃焼器46から排出される燃焼ガスを、燃料電池スタック22及び熱交換器48に、順次、供給する燃焼ガス通路74a〜74cと、酸化剤ガスを前記熱交換器48及び部分酸化改質器44に供給する酸化剤ガス通路53とを備えるとともに、第1熱電変換部76a及び第2熱電変換部76bは、前記燃焼ガス通路74cの前記熱交換器48の下流側に、且つ、前記酸化剤ガス通路53の前記熱交換器48及び前記部分酸化改質器44の上流側に設けられている。
【0086】
このため、熱自立を妨げることがなく、燃焼ガスと酸化剤ガスとの温度差、すなわち、熱エネルギを電気エネルギとして回収することができ、発電効率を向上させることが可能になる。しかも、燃焼ガスの温度が低下されるため、廃熱の抑制が図られる一方、酸化剤ガスが昇温されるため、熱自立の促進が図られる。
【0087】
さらに、酸化剤ガス通路53は、熱交換器48に酸化剤ガスを供給する第1酸化剤ガス供給路部53aと、部分酸化改質器44に前記酸化剤ガスを供給する第2酸化剤ガス供給路部53bとに分岐するとともに、分岐部位には、前記酸化剤ガスの分配量を調整する酸化剤ガス調整弁78が配設されている。
【0088】
従って、燃料電池スタック22と、熱交換器48を含むFC周辺機器(BOP)50とを同時に昇温させることができ、起動時間の短縮化を図ることが可能になる。一方、アノード側を還元することができ、起動時間が短縮される。
【0089】
さらにまた、少なくとも第1熱電変換部76a又は第2熱電変換部76bは、第1酸化剤ガス供給路部53a又は第2酸化剤ガス供給路部53bに酸化剤ガス調整弁78の下流側に位置して配置されている。これにより、熱自立を妨げることがなく、燃焼ガスと酸化剤ガスとの温度差、すなわち、熱エネルギを電気エネルギとして回収することができ、発電効率を向上させることが可能になる。
【0090】
しかも、燃焼ガスの温度が低下されるため、廃熱の抑制が図られる一方、酸化剤ガスが昇温されるため、熱自立の促進が図られる。その上、酸化剤ガスは、酸化剤ガス調整弁78の下流側で昇温されるため、前記酸化剤ガス調整弁78の耐久性を損なうことがない。
【0091】
また、図2に示すように、第1熱電変換部76a及び第2熱電変換部76bでは、燃焼ガス蛇行流路84cを流通する燃焼ガスと、酸化剤ガス蛇行流路82cを流通する酸化剤ガスとが、互いに並行流に設定されるとともに、異なる熱電変換温度に設定された複数の熱電変換素子86a、86b及び86cを備えている。
【0092】
このため、例えば、並行流の上流側は、燃焼ガスと酸化剤ガスとの温度差が大きくなるため、高温型の熱電変換素子86aを使用する一方、並行流の下流側は、前記温度差が小さくなるため、低温型の熱電変換素子86cを使用することができる。従って、温度差に応じて最適な熱電変換素子86a、86b及び86cが用いられるため、効率的な熱電変換が確実に遂行可能になる。
【0093】
さらに、燃料電池モジュール12では、熱交換器48は、燃料電池スタック22の燃料電池積層方向一方に設けられるとともに、部分酸化改質器44及び排ガス燃焼器46は、前記燃料電池スタック22の燃料電池積層方向他方に設けられている。これにより、燃料電池モジュール12の放熱を最小限に抑制することができ、熱エネルギの損失を良好に抑制することが可能になる。換言すれば、熱自立運転が促進される。
【0094】
さらにまた、燃料電池モジュール12は、固体酸化物形燃料電池モジュールである。このため、特にSOFC等の高温型燃料電池に最適である。
【0095】
図5に示されるように、燃料電池システム10aは、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池モジュール12aを備える。なお、第1の実施形態に係る燃料電池モジュール12と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0096】
燃料電池モジュール12aは、熱電変換部76を備えるとともに、前記熱電変換部76は、酸化剤ガス通路53に酸化剤ガス調整弁78の上流側に位置して配置される。この熱電変換部76には、酸化剤ガス通路53を介して酸化剤ガスが供給される一方、燃焼ガス通路74cを介して燃焼ガスが供給される。熱電変換部76は、第1の実施形態の第1熱電変換部76a(及び第2熱電変換部76b)と同様に構成される。
【0097】
このように構成される第2の実施形態では、熱自立を妨げることがなく、燃焼ガスと酸化剤ガスとの温度差、すなわち、熱エネルギを電気エネルギとして回収することができ、発電効率を向上させることが可能になる。しかも、燃焼ガスの温度が低下されるため、廃熱の抑制が図られる一方、酸化剤ガスが昇温されるため、熱自立の促進が図られる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
さらに、熱電変換部76は、酸化剤ガス通路53に酸化剤ガス調整弁78の上流側に位置して配置されるため、単一の前記熱電変換部76のみを設けることができる。従って、構成が簡素化するとともに、経済的であるという利点が得られる。
【0099】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池モジュールを構成する熱電変換部100の要部分解斜視説明図である。
【0100】
熱電変換部100は、第1及び第2の実施形態に係る第1熱電変換部76a及び第2熱電変換部76b(熱電変換部76)の少なくともいずれかに代えて使用することができる。なお、以下に説明する第4以降の実施形態においても同様である。
【0101】
熱電変換部100は、酸化剤ガスを流通させる第1通路部材102と、燃焼ガスを流通させる第2通路部材104と、前記第1通路部材102及び前記第2通路部材104間に配置されて所定の熱電変換温度に設定された複数の熱電変換素子106とを備える。
【0102】
第1通路部材102は、酸化剤ガス入口102aと酸化剤ガス出口102bとの間で蛇行する酸化剤ガス蛇行流路102cを有する。酸化剤ガス蛇行流路102cは、第1通路部材102内に交互に且つ千鳥状に配置される仕切板102dにより形成される。
【0103】
第2通路部材104は、燃焼ガス入口104aと燃焼ガス出口104bとの間で蛇行する燃焼ガス蛇行流路104cを有する。燃焼ガス蛇行流路104cは、第2通路部材104内に交互に且つ千鳥状に配置される仕切板104dにより形成される。燃焼ガス蛇行流路104cと酸化剤ガス蛇行流路102cとは、互いに対向流に設定される。
【0104】
このように構成される第3の実施形態では、熱電変換部100は、燃焼ガスと酸化剤ガスとが互いに対向流に設定されるとともに、所定の熱電変換温度に設定された複数の熱電変換素子106を備えている。このため、熱電変換部100内では、想定される温度差に応じて、最適な熱電変換温度に設定された熱電変換素子106を用いることができる。従って、効率的な熱電変換が確実に遂行可能になるという効果が得られる。
【0105】
図7は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池モジュールを構成する熱電変換部110の要部分解斜視説明図である。
【0106】
熱電変換部110は、酸化剤ガスを流通させる第1通路部材112と、燃焼ガスを流通させる第2通路部材114と、前記第1通路部材112及び第2通路部材114間に配置されて所定の熱電変換温度に設定された複数の熱電変換素子116とを備える。
【0107】
第1通路部材112は、酸化剤ガス入口112aと酸化剤ガス出口112bとの間で蛇行する酸化剤ガス蛇行流路112cを有する。酸化剤ガス蛇行流路112cは、第1通路部材112内に交互に且つ千鳥状に配置される仕切板112dにより形成される。
【0108】
第2通路部材114は、燃焼ガス入口114aと燃焼ガス出口114bとの間で蛇行する燃焼ガス蛇行流路114cを有する。燃焼ガス蛇行流路114cは、第2通路部材114内に交互に且つ千鳥状に配置される仕切板114dにより形成される。燃焼ガス蛇行流路114cと酸化剤ガス蛇行流路112cとは、互いに交差する流れに設定される。
【0109】
このように構成される第4の実施形態では、熱電変換部110は、燃焼ガスと酸化剤ガスとが互いに交差する流れに設定されるとともに、所定の熱電変換温度に設定された複数の熱電変換素子116を備えている。これにより、熱電変換部110内では、想定される温度差に応じて、最適な熱電変換温度に設定された熱電変換素子116を用いることができる。このため、効率的な熱電変換が確実に遂行可能になるという効果が得られる。
【0110】
図8は、本発明の第5の実施形態に係る燃料電池モジュールを構成する熱電変換部120の要部分解斜視説明図である。
【0111】
熱電変換部120は、酸化剤ガスを流通させる第1通路部材122と、燃焼ガスを流通させる第2通路部材124と、前記第1通路部材122及び第2通路部材124間に配置されて所定の熱電変換温度に設定された複数の熱電変換素子126とを備える。
【0112】
第1通路部材122は、酸化剤ガス入口122aと酸化剤ガス出口122bとの間で蛇行する酸化剤ガス蛇行流路122cを有する。酸化剤ガス蛇行流路122cは、第1通路部材122内に交互に且つ千鳥状に配置される仕切板122dにより形成される。
【0113】
第2通路部材124は、燃焼ガス入口124aと燃焼ガス出口124bとの間で蛇行する燃焼ガス蛇行流路124cを有する。燃焼ガス蛇行流路124cは、第2通路部材124内に交互に且つ千鳥状に配置される仕切板124dにより形成される。燃焼ガス蛇行流路124cと酸化剤ガス蛇行流路122cとは、互いに対称の流れに設定される。
【0114】
このように構成される第5の実施形態では、熱電変換部120は、燃焼ガスと酸化剤ガスとが互いに対称の流れに設定されるとともに、所定の熱電変換温度に設定された複数の熱電変換素子126を備えている。これにより、熱電変換部120内では、想定される温度差に応じて、最適な熱電変換温度に設定された熱電変換素子126を用いることができる。このため、効率的な熱電変換が確実に遂行可能になるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0115】
10…燃料電池システム 12、12a…燃料電池モジュール
14…原燃料供給装置 16…酸化剤ガス供給装置
18…制御装置 20…燃料電池
22…燃料電池スタック 24…電解質
26…カソード電極 28…アノード電極
30…電解質・電極接合体 36…酸化剤ガス流路
38…燃料ガス流路 40a…酸化剤ガス入口連通孔
40b…酸化剤ガス出口連通孔 42a…燃料ガス入口連通孔
42b…燃料ガス出口連通孔 44…部分酸化改質器
46…排ガス燃焼器 48…熱交換器
50…FC周辺機器 51…原燃料通路
53、72…酸化剤ガス通路 53a、53b…酸化剤ガス供給路部
66…燃料ガス通路 68…酸化剤排ガス通路
70…燃料排ガス通路 74a〜74c…燃焼ガス通路
76、76a、76b、100、110、120…熱電変換部
78…酸化剤ガス調整弁 80…脱硫器
82、84、102、104、112、114、122、124…通路部材
86a〜86c、106、116、126…熱電変換素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池スタックと、
炭化水素を主体とする原燃料と酸化剤ガスとの混合ガスを改質して前記燃料ガスを生成するとともに、前記燃料電池スタックに前記燃料ガスを供給する部分酸化改質器と、
前記燃料電池スタックから排出される前記燃料ガスである燃料排ガスと前記酸化剤ガスである酸化剤排ガスとを燃焼させ、燃焼ガスを発生させる排ガス燃焼器と、
前記燃焼ガスとの熱交換により前記酸化剤ガスを昇温させるとともに、前記燃料電池スタックに前記酸化剤ガスを供給する熱交換器と、
を備える燃料電池モジュールであって、
前記燃料電池スタックの一方に前記熱交換器が配設され、且つ前記燃料電池スタックの他方に前記部分酸化改質器及び前記排ガス燃焼器が配設され、前記部分酸化改質器は、前記排ガス燃焼器を囲繞して設けられるとともに、
前記燃料電池モジュールは、前記燃焼ガスと前記酸化剤ガスとの温度差により熱電変換を行う熱電変換部を備えることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池モジュールにおいて、前記排ガス燃焼器から排出される前記燃焼ガスを、前記燃料電池スタック及び前記熱交換器に、順次、供給する燃焼ガス通路と、
前記酸化剤ガスを前記熱交換器及び前記部分酸化改質器に供給する酸化剤ガス通路と、
を備えるとともに、
前記熱電変換部は、前記燃焼ガス通路の前記熱交換器の下流側に、且つ、前記酸化剤ガス通路の前記熱交換器及び前記部分酸化改質器の上流側に設けられることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池モジュールにおいて、前記酸化剤ガス通路は、前記熱交換器に前記酸化剤ガスを供給する第1酸化剤ガス供給路部と、
前記部分酸化改質器に前記酸化剤ガスを供給する第2酸化剤ガス供給路部と、
に分岐するとともに、
分岐部位には、前記酸化剤ガスの分配量を調整する酸化剤ガス調整弁が配設されることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池モジュールにおいて、前記熱電変換部は、前記酸化剤ガス通路に前記酸化剤ガス調整弁の上流側に位置して配置されることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項5】
請求項3記載の燃料電池モジュールにおいて、前記熱電変換部は、少なくとも前記第1酸化剤ガス供給路部又は前記第2酸化剤ガス供給路部に前記酸化剤ガス調整弁の下流側に位置して配置されることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記熱電変換部は、前記燃焼ガスと前記酸化剤ガスとが互いに並行流に設定されるとともに、
異なる熱電変換温度に設定された複数の熱電変換素子を備えることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記熱電変換部は、前記燃焼ガスと前記酸化剤ガスとが互いに対向流に設定されるとともに、
所定の熱電変換温度に設定された複数の熱電変換素子を備えることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記熱電変換部は、前記燃焼ガスと前記酸化剤ガスとが互いに交差する流れ又は対称の流れに設定されるとともに、
所定の熱電変換温度に設定された複数の熱電変換素子を備えることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記熱交換器は、前記燃料電池スタックの燃料電池積層方向一方に設けられるとともに、
前記部分酸化改質器及び前記排ガス燃焼器は、前記燃料電池スタックの燃料電池積層方向他方に設けられることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記燃料電池モジュールは、固体酸化物形燃料電池モジュールであることを特徴とする燃料電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−89500(P2013−89500A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229933(P2011−229933)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】