説明

燃料電池用ガスケット

【課題】本発明は、シール性能が良好で、反力を低く抑えることが出来ると共に、ガスケットが倒れるという問題を解決した燃料電池用ガスケットを提供することを目的とする。
【解決手段】セパレータ間に介在して密封するガスケットであって、環状の内周面側つば部と環状の外周面側つば部とに連結された環状のシール部とよりなる燃料電池用ガスケットにおいて、前記シール部が、両方向に突出する断面略三角形状のリップよりなる内側シールと、前記内側シールの外側に位置し、両方向に突出する断面略三角形状のリップとよりなる外側シールとを有し、前記内側シールと前記外側シールとが環状の連結部により連結されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用ガスケットに関する。
また、本発明は、燃料電池のセパレータ間を密封するシールとして用いて有用な燃料電池用ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料電池用ガスケットとしては、ゴム等の弾性体よりなり、セパレータに一体成形される一体成形型のガスケット、およびセパレータ間に挟み込まれる非接着のガスケットが知られている。
このうち、非接着タイプのガスケットとしては、平板状のものが知られている。
しかしこの種ガスケットは、ゴムの逃げがないため、反力が高くなり、その結果高い締付力を必要とする問題が有った。
【0003】
この点を改善するために、第4図に示す燃料電池用ガスケットが提案された。
円形断面のシール部500の内周側に内周面つば部103を、外周側に外周面つば部104を設ける構成としている。
しかし、反力を十分低くすることが困難なばかりでなく、この種燃料電池用ガスケットが装着され圧縮されたときに、ガスケットが倒れ、安定したシール性能が確保できない問題を惹起していた。
【0004】
そこで、ガスケットの倒れ防止として、第5図に示す形状のガスケットが提案された。
断面横長の長方形状を呈する平ガスケット600の中央部に、断面三角形状の主リップ700を設け、反対側の面に、副リップ800と、その内外周端に倒れ防止用突起900、900を設ける態様としている。
しかし、倒れ防止には一定の効果はあるが、密封性能が十分でなく、かつ反力を十分低く抑えることも困難であった。
【0005】
そこで、シール性能の向上と、反力を低く抑える目的で、第6図に示す形状の燃料電池用ガスケットが提案された。
すなわち、環状の内周面つば部300と環状の外周面つば部400とに連結された環状のシール部500とよりなり、このシール部500が、両方向に突出する断面略三角形状のリップ106、106よりなるシール111を備えている。
そして、内外周面つば部300、400とシール部500とが、内外周面つば部300、400の肉厚よりも薄い内周側ジョイント部109と外周側ジョイント部110とにより連結されている。
【0006】
この種燃料電池用ガスケットは、シール性能が良好で、反力を低く抑えることが出来るが、倒れる問題を惹起した。
すなわち、第7図に示す様に、セパレータ1、1間に装着され圧縮されると、倒れてしまい、安定したシール性能が確保できない問題を招来した。
【特許文献1】特開2001−108103号公報
【特許文献2】特開2006−4851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、シール性能が良好で、反力を低く抑えることが出来ると共に、ガスケットが倒れるという問題を解決した燃料電池用ガスケットを提供することを目的とする。
また、本発明は、製造が容易で、良好な密封性能を発揮する燃料電池用ガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の燃料電池用ガスケットは、セパレータ間に介在して密封するガスケットであって、環状の内周面つば部と環状の外周面つば部とに連結された環状のシール部とよりなる燃料電池用ガスケットにおいて、前記シール部が、両方向に突出する断面略三角形状のリップよりなる内側シールと、前記内側シールの外側に位置し、両方向に突出する断面略三角形状のリップとよりなる外側シールとを有し、前記内側シールと前記外側シールとが環状の連結部により連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明の燃料電池用ガスケットによれば、ガスケットの倒れを確実に防止し、安定したシール性能が長期間維持出来る。
また、請求項2記載の発明の燃料電池用ガスケットによれば、装着安定性が良く、両方の被密封面に対し、均等の密封性能を発揮することができる。
【0010】
更に、請求項3記載の発明の燃料電池用ガスケットによれば、反力を低く抑えることが出来る。
更に、請求項4記載の発明の燃料電池用ガスケットによれば、ガスケットの倒れをより確実に防止し、安定したシール性能が長期間維持出来る。
更に、請求項5記載の発明の燃料電池用ガスケットによれば、反力を低く抑え、安定したシール性能が長期間維持出来る。
【0011】
更に、請求項6記載の発明の燃料電池用ガスケットによれば、安定したシール性能を維持出来る。
更に、請求項7記載の発明の燃料電池用ガスケットによれば、装着安定性が良く、両方の被密封面に対し、均等の密封性能を発揮することができる。
【0012】
更に、請求項8記載の発明の燃料電池用ガスケットによれば、取り付ミスを防止できる。更に、請求項9記載の発明の燃料電池用ガスケットによれば、相手面に対する傷つきも無く、反力を低く抑えることが出来る。
【0013】
更に、請求項10記載の発明の燃料電池用ガスケットによれば、最適なシール面圧を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
第1図乃至3図に基づき発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0015】
第1図において、セパレータ間に介在して密封するガスケットであって、環状の内周面つば部3と環状の外周面つば部4とに連結された環状のシール部5とより構成されている。
そして、シール部5は、両方向(図上上下)に突出する断面略三角形状のリップ6、6よりなる内側シール11と、内側シール11の外側に位置し、両方向に突出する断面略三角形状のリップ7、7とよりなる外側シール12とより構成されている。
【0016】
そして、内側シール11と外側シール12とは、環状の連結部8により連結されている。。
この連結部8は、内側シール11と外側シール12の中央部に位置し、二本のリップ6、7が同一断面形状であるするため、ガスケット断面形状において、線対称となっている。
内外周面つば部3、4とシール部5とが、内外周面つば部3、4の肉厚よりも薄い内周側ジョイント部9と外周側ジョイント部10とにより連結されている。
【0017】
このため、シール部5の自由度が増すとともに、シール部5の逃げを確保できるため、反力を低く抑えることが出来る。
また、リップ6、7の断面の頂角αが50〜70度、好ましくは55〜65度であるため、安定したシール性能が長期間維持出来る。
更に、リップ6、7の頂部を円弧形状としているため、損傷する危険性が少なく、安定したシール性能が維持できる。
【0018】
燃料電池用ガスケットの材質は、シリコーンゴム、EPDM,フッ素ゴム等のゴム状弾性材が適宜選択して用いられる。
また、リップ6、7は、内外周面つば部3、4の面より、内外周面つば部3、4の肉厚の略半分突出している構成としている。
このことにより、最適のシール面圧を確保できる。
【0019】
第2図は、本発明を実施するための、更なる最良の形態を示すものである。
第1図のものと相違する点は、連結部80の肉厚をより厚くしている。
具体的には、連結部8は、内外周面つば部3、4の肉厚よりも厚い肉厚としている。
このことにより、ガスケット装着時の倒れをより効果的に防止できる。
そして、第3図は、第2図に示したガスケットをセパレータ1、1間に装着した状態を示した図である。
図から明らかな様に、装着時の、ガスケットの倒れが確実に防止されている。
【0020】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】燃料電池用ガスケットにかかる発明の実施の形態を示す断面図である。
【図2】燃料電池用ガスケットにかかる発明の他の実施の形態を示す断面図である。
【図3】図2の燃料電池用ガスケットの装着状態を示す断面図である。
【図4】燃料電池用ガスケットにかかる従来技術を示す断面図である。
【図5】燃料電池用ガスケットにかかる従来技術を示す断面図である。
【図6】燃料電池用ガスケットにかかる従来技術を示す断面図である。
【図7】図6の燃料電池用ガスケットの装着状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1‥‥セパレータ
3‥‥内周面側つば部
4‥‥外周面側つば部
5‥‥シール部
6、7‥‥リップ
8‥‥連結部
9‥‥内周側ジョイント部
10‥‥外周側ジョイント部
11‥‥内側シール
12‥‥外側シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータ(1)、(1)間に介在して密封するガスケットであって、環状の内周面つば部(3)と環状の外周面つば部(4)とに連結された環状のシール部(5)とよりなる燃料電池用ガスケットにおいて、前記シール部(5)が、両方向に突出する断面略三角形状のリップ(6)、(6)よりなる内側シール(11)と、前記内側シール(11)の外側に位置し、両方向に突出する断面略三角形状のリップ(7)、(7)とよりなる外側シール(12)とを有し、前記内側シール(11)と前記外側シール(12)とが環状の連結部(8)により連結されていることを特徴とする燃料電池用ガスケット。
【請求項2】
前記連結部(8)が前記内側シール(11)と前記外側シール(12)の中央部位置することを特徴とする請求項1記載の燃料電池用ガスケット。
【請求項3】
前記内外周面つば部(3)、(4)と前記シール部(5)とが、前記内外周面つば部(3)、(4)の肉厚よりも薄い内周側ジョイント部(9)と外周側ジョイント部(10)とにより連結されていることを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池用ガスケット。
【請求項4】
前記連結部(8)が前記内外周面つば部(3)、(4)の肉厚よりも厚い肉厚であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の燃料電池用ガスケット。
【請求項5】
前記リップ(6)、(7)の断面の頂角(α)が50〜70度であることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の燃料電池用ガスケット。
【請求項6】
前記リップ(6)、(7)の頂部が円弧形状であることを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載の燃料電池用ガスケット。
【請求項7】
前記二本のリップ(6)、(7)が同一断面形状であることを特徴とする請求項1〜6いずれか一項に記載の燃料電池用ガスケット。
【請求項8】
前記燃料電池用ガスケットが対称形状であることを特徴とする請求項1〜7いずれか一項に記載の燃料電池用ガスケット。
【請求項9】
前記燃料電池用ガスケットの材質がゴム状弾性材であることを特徴とする請求項1〜8いずれか一項に記載の燃料電池用ガスケット。
【請求項10】
前記リップ(6)、(7)は、前記内外周面つば部(3)、(4)の面より、前記内外周面つば部(3)、(4)の肉厚の略半分突出していることを特徴とする請求項1〜9いずれか一項に記載の燃料電池用ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−335093(P2007−335093A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161904(P2006−161904)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】