説明

燃料電池用ガス遮断弁

【課題】燃料電池用ガス遮断弁において、圧縮荷重を大きくすることなく、シール性を高く維持するとともに高シール性をできるだけ長期間継続する。
【解決手段】遮断弁は、弁座54cを備えたシール面54bを有するボディー50と、第1流路と第2流路を連通、遮断する弁体61と、弁体61に取り付けられ弁座54cに当接してシールするシール部材70と、を備えている。シール部材70は、環状に形成され、シール部材70の基部71は、弁体61に固定され、シール部材70の先端部72は、相対する2つの面72a,72bが先細となるように傾斜する形状に形成されるとともに、先端部72が弁座54cに接触した時点に2つの面72a,72bのなす角の断面2等分線L1とシール面54bとのなす角θ1が鋭角または鈍角となるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用ガス遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用ガス遮断弁の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図3に示されているように、燃料電池用ガス遮断弁(弁装置48)においては、弁本体(本体部52)に、凸状に形成された弁座66が設けられ、弁体68に、弁座66が当接する弾性部材76が設けられている。弾性部材76の当接面は平面である。弾性部材76はシール部材である。
【0003】
また、他の一形式として、特許文献2に示されているものが知られている。特許文献2の図1に示されているように、燃料電池用ガス遮断弁(燃料電池用排気排水弁1)においては、弁本体に、凸状に形成された弁座(シート部3)が設けられ、弁体(バルブホルダ4)に、弁座が当接するシールゴム2が設けられている。シールゴム2の当接面は平面である。シールゴム2はシール部材である。
【0004】
さらに、他の一形式として、特許文献3に示されているものが知られている。特許文献3の図1に示されているように、燃料電池用ガス遮断弁(バルブ)においては、弁体1に弁座が設けられ、弁本体(バルブボディ2)に、弁座に当接する複数の環状突起6が形成されたゴム状弾性体5が設けられている。弁体1の弁座は平面である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−273704号公報
【特許文献2】特開2008−116024号公報
【特許文献3】特開2007−327614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2に記載の燃料電池用ガス遮断弁においては、閉弁時にアクチュエータによる押圧力がシール部材の圧縮方向に加わり続けるため、燃料電池システムのような高温高湿環境下で使用されると、圧縮永久歪等によりシール部材の平面に窪みが発生(突起形状の転写)するなどの問題が起こる可能性がある。また、弁の開閉を繰り返す中で環状の突起(シール先端面)をまたぐように窪みと重なった場合にはシール不良が起こる。さらに、シール部材の当接面が平らな場合には、部品精度のバラツキを吸収しながら相手弁座との当接を確実に行う必要があるため、圧縮荷重を大きくする必要がある。よって、アクチュエータ等の大型化・推力増大が必要となる。
【0007】
また、特許文献3に記載の燃料電池用ガス遮断弁においては、ゴム状弾性体5の表面に複数の環状突起を持つため、個々の突起間の高さ精度が異なる場合においては、シール面と当接する際の面圧が不均一になる可能性があり、シール不良を起こす可能性がある。さらに、シール不良を改善するため、全ての突起を圧縮するのに必要荷重を大幅に増加すると、アクチュエータの推力の増大、大型化が必要となる。
【0008】
本発明は、上述した各問題を解消するためになされたもので、燃料電池用ガス遮断弁において、圧縮荷重を大きくすることなく、シール性を高く維持するとともに高シール性をできるだけ長期間継続することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、弁座を備えたシール面を有するボディーと、第1流路と第2流路を連通、遮断する弁体と、弁体に取り付けられ弁座に当接してシールするシール部材と、弁体を駆動させて第1流路と第2流路との間の流通状態を切り替えるアクチュエータと、を備えた燃料電池用ガス遮断弁であって、シール部材は、環状に形成され、シール部材の基部は、弁体に固定され、シール部材の先端部は、相対する2つの面が先細となるように傾斜する形状に形成されるとともに、先端部が弁座に接触した時点に2つの面のなす角の断面2等分線とシール面とのなす角が鋭角または鈍角となるように形成されていることである。
【0010】
また請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、シール部材の先端部は非対称に形成されるとともに、シール面はシール部材の環状先端を含む平面に対して水平に形成されることである。
【0011】
また請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、シール部材の先端部は対称に形成されるとともに、シール面はシール部材の環状先端を含む平面に対して傾斜するように形成されることである。
【0012】
また請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項3の何れか一項において、シール部材の先端部は、2つの面の断面2等分線とシール面とのなす角のうち圧力が小さい流路側のなす角が鋭角となるように形成されていることである。
【0013】
また請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項4の何れか一項において、2つの面は、これらいずれかの面とシール部材の環状先端を含む平面とのなす角が鋭角となるように形成されていることである。
【0014】
また請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項5の何れか一項において、シール部材の基部は、先端部より幅広の台状に形成され、先端部の両側面のうち少なくとも一方側に段部が形成されていることである。
【0015】
また請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項6の何れか一項において、弁体には、シール部材の基部が固定される面から反対側の面まで貫通する複数の貫通孔が形成され、シール部材の基部は、貫通孔を貫通する連結部を介して反対側の面に設けられ貫通孔より大きく弁体より小さい抜け防止部材に連結されて弁体に固定されていることである。
【0016】
また請求項8に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項7の何れか一項において、ボディーおよび弁体の何れか一方に形成された定寸部を備え、定寸部は、他方の該定寸部に対向する部分と当接することで、シール部材の潰し代を規定するように形成されたことである。
【0017】
また請求項9に係る発明の構成上の特徴は、請求項8において、定寸部をボディーに形成した場合、定寸部に1つ以上の切り欠き部を設けたことである。
【0018】
また請求項10に係る発明の構成上の特徴は、請求項9において、切り欠き部の少なくとも1つは、第1流路に流体が流入する流入口に対向する位置に配置されていることである。
【発明の効果】
【0019】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、シール部材の先端部は、相対する2つの面が先細となるように傾斜する形状に形成されている。よって、燃料電池用ガス遮断弁が閉弁される際において、アクチュエータが駆動されて弁体がボディーに近づいて、先端部が弁座に接触すると、それ以降は、細長に形成された先端部は弁体の移動方向に沿って圧縮される。このとき、比較的小さい押圧力で先端部を圧縮変形することができ、シール部材の反力を小さく抑制することができる。また、その先端部は、先端部が弁座に当接した時点に2つの面のなす角の断面2等分線とシール面とのなす角が鋭角または鈍角となるように形成されている。よって、燃料電池用ガス遮断弁が閉弁される際において、先端部は圧縮されながら、当接している先端はシール面に沿って倒れる方向に力が加わるので、先端部は倒れる方向に傾く。このように、閉弁時においては、シール部材は、圧縮されるだけでなく、傾くことにより、シール部材と弁座との間をシールすることができるので、比較的小さい押圧力でもシール性を確保することができる。ひいては、アクチュエータの小型化、省力化を図ることができる。
【0020】
また、圧縮永久歪などによってシール部材が傾倒しても、当初のシール位置からずれるもののシール部材は弁座に確実に当接するためシール性は低下することはないので、シール性を長期間維持することができる。
【0021】
以上のことから、圧縮荷重を大きくすることなく(アクチュエータを大型化することなく)、シール性を高く維持するとともに高シール性をできるだけ長期間継続することができる。
【0022】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、請求項1において、シール部材の先端部は非対称に形成されるとともに、シール面はシール部材の環状先端を含む平面に対して水平に形成される。これにより、シール部材の先端部は、先端部が弁座に当接した時点に2つの面のなす角の断面2等分線とシール面とのなす角が鋭角または鈍角となるように形成することが簡単かつ確実に達成できる。
【0023】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、請求項1において、シール部材の先端部は対称に形成されるとともに、シール面はシール部材の環状先端を含む平面に対して傾斜するように形成される。これにより、シール部材の先端部は、先端部が弁座に当接した時点に2つの面のなす角の断面2等分線とシール面とのなす角が鋭角または鈍角となるように形成することが簡単かつ確実に達成できる。
【0024】
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、請求項1乃至請求項3の何れか一項において、シール部材の先端部は、2つの面の断面2等分線とシール面とのなす角のうち圧力が小さい流路側のなす角が鋭角となるように形成されている。これにより、シール部材は圧力が小さい側に向かう吸引力が作用する。よって、この作用によりシール部材はより弁座に押し付けられるので(シール面圧をより高くできるので)、より良好なシール性を確保することができる。
【0025】
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、請求項1乃至請求項4の何れか一項において、2つの面は、これらいずれかの面とシール部材の環状先端を含む平面とのなす角が鋭角となるように形成されている。これにより、シール部材を型で形成する場合、その型からシール部材(環状)を抜き出す際に、引っかかることなくスムーズに行うことができる。よって、シール部材に初期亀裂が発生することなく、品質よいシール部材を製造することができる。
【0026】
上記のように構成した請求項6に係る発明においては、請求項1乃至請求項5の何れか一項において、シール部材の基部は、先端部より幅広の台状に形成され、先端部の両側面
のうち少なくとも一方側に段部が形成されている。これにより、先端部を先細形状とすることで、上述したように圧縮荷重を大きくすることなくシール性を高く維持することができ、さらに先端部より幅広の基部によりシール部材を弁体に確実に固定することができる。
【0027】
上記のように構成した請求項7に係る発明においては、請求項1乃至請求項6の何れか一項において、弁体には、シール部材の基部が固定される面から反対側の面まで貫通する複数の貫通孔が形成され、シール部材の基部は、貫通孔を貫通する連結部を介して反対側の面に設けられ貫通孔より大きく弁体より小さい抜け防止部材に連結されて弁体に固定されている。これにより、開弁時にシール部材に弁体から引き剥がす力が加わってもシール部材が容易に剥がれないようになっている。また、そのようにシール部材が剥がれない構造をなす弁体を小径に形成することができる。
【0028】
上記のように構成した請求項8に係る発明においては、請求項1乃至請求項7の何れか一項において、ボディーおよび弁体の何れか一方に形成された定寸部を備え、定寸部は、他方の該定寸部に対向する部分と当接することで、シール部材の潰し代を規定するように形成された。これにより、シール部材の潰し代を確実に管理することができる。
【0029】
上記のように構成した請求項9に係る発明においては、請求項8において、定寸部をボディーに形成した場合、定寸部に1つ以上の切り欠き部を設けた。これにより、開弁時に切り欠き部が弁体とボディーとの間の流体の流路として機能するので、その流路断面積を拡大することにより、流体流量の増大を図ることができ、安定した流量−弁開度特性を得ることができる。また、ボディー側に切り欠き部を形成できるので、より大きい流路断面積を得ることができる。
【0030】
上記のように構成した請求項10に係る発明においては、請求項9において、切り欠き部の少なくとも1つは、第1流路に流体が流入する流入口に対向する位置に配置されている。これにより、開弁時に、流入口から流入した流体は切り欠き部に向かって流れ、切り欠き部を通って第2流路に流出するので、流体の流れが乱れるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による燃料電池用ガス遮断弁の第1の実施形態を適用した燃料電池システムの概要を示す概要図である。
【図2】図1に示す閉弁状態の遮断弁を示す断面図である。
【図3】図1に示す開弁状態の遮断弁を示す断面図である。
【図4】図2に示す遮断弁のA方向から見た図である。なお、弁体は省略している。
【図5】図3に示す開弁状態の遮断弁を示す(シール部材とシール面との関係を示す)部分拡大断面図である。
【図6】(a)はシール部材、連結部および抜け防止部材を示す部分拡大断面図であり、(b)は弁体単体の底面図である。
【図7】(a)は、タイプ1を示す断面図であり、(b)は、タイプ2を示す断面図であり、(a)は、タイプ3を示す断面図であり、(c)はタイプ1〜タイプ3の反力−圧縮量特性を示す図である。
【図8】(a)は、弁座に接触した時点のシール部材を示す断面図であり、(b)は、接触時点以降に圧縮されたシール部材を示す断面図であり、(c)は、さらに閉弁されて倒れたシール部材を示す断面図である。
【図9】(a)は、本実施形態により切り欠き部を設けた遮断弁の開弁時の流量−開度特性を示す図であり、(b)は切り欠き部がない場合の流量−開度特性を示す図である。
【図10】切り欠き部の断面積を変えた場合の流量−開度特性を示す図である。
【図11】本発明による燃料電池用ガス遮断弁の第2の実施形態を示す部分拡大断面図である。
【図12】本発明による燃料電池用ガス遮断弁の第3の実施形態を示す部分拡大断面図である。
【図13】本発明による燃料電池用ガス遮断弁の第4の実施形態を示す部分拡大断面図であり、(a)は、切り欠き部をボディーに設けたものの断面図であり、(b)は、切り欠き部を弁体に設けたものの断面図である。
【図14】本発明による燃料電池用ガス遮断弁の第5の実施形態を示す部分拡大断面図である。
【図15】本発明による燃料電池用ガス遮断弁の第6の実施形態を示す部分拡大断面図である。
【図16】本発明による燃料電池用ガス遮断弁の第7の実施形態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1)第1の実施形態
以下、本発明による燃料電池用ガス遮断弁の第1の実施形態について説明する。図1はこの燃料電池用ガス遮断弁を使用した燃料電池システムの概要を示す概要図である。この燃料電池システムは、燃料電池10、水素供給源21、空気圧送装置22、および第1乃至第4遮断装置23〜26を備えている。
【0033】
燃料電池10は、燃料が供給される燃料流路11と酸化剤ガスが供給される酸化剤流路12を有している。燃料流路11は、燃料極に燃料を供給するものであり、酸化剤流路12は、酸化剤極に酸化剤ガスを供給するものである。燃料極と酸化剤極との間には電解質が介装されている。本第1の実施形態では、燃料は水素ガスであり、酸化剤ガスは空気である。燃料電池10は、水素ガスと空気が化学反応して発電するものである。
【0034】
水素供給源21は、燃料電池10の燃料流路11に燃料である水素を供給するものである。本第1の実施形態では、水素供給源21は水素タンクである。なお、改質器でもよい。
【0035】
燃料電池10の燃料流路11に水素を導入する導入口11aは、燃料供給管31を介して水素供給源21に接続されている。燃料供給管31の途中には、燃料供給管31を開閉する第1遮断装置23が設けられている。燃料電池10の燃料流路11から燃料オフガスを導出する導出口11bには、オフガス排出管32が接続されている。オフガス排出管32の途中には、オフガス排出管32を開閉する第2遮断装置24が設けられている。
【0036】
空気圧送装置22は、燃料電池10の酸化剤流路12に空気を圧送するものである。本第1の実施形態では、空気圧送装置22はコンプレッサである。
【0037】
燃料電池10の酸化剤流路12に酸化剤を導入する導入口12aは、酸化剤供給管33を介して空気圧送装置22の吐出口22aに接続されている。酸化剤供給管33の途中には、酸化剤供給管33を開閉する第3遮断装置25が設けられている。燃料電池10の酸化剤流路12から酸化剤オフガスを導出する導出口12bは、オフガス排出管34を介して大気に開放されている。オフガス排出管34の途中には、オフガス排出管34を開閉する第4遮断装置26が設けられている。
【0038】
第3遮断装置25(第4遮断装置26)は、図2、図3に示すように、遮断弁40(燃料電池用ガス遮断弁)である。図2は、遮断弁40の閉状態を示す断面図であり、図3は
、遮断弁40の開状態を示す断面図である。遮断弁40は、ボディー50、および弁体61を備えている。
【0039】
ボディー50は、第1ボディー51と第2ボディー52と仕切壁53とが連結し構成されている。第1ボディー51には、第1流路41と第2流路42とを連通する弁穴54aが形成された環状の段部54が形成されている。弁穴54aの第2流路42側の開口周縁にはシール面54bが形成されている。第1流路41と第2流路42は弁穴54aを境に分けられる。シール面54bには、シール部材70の先端部72が当接する弁座54cが備えられている。
【0040】
段部54には、定寸部54dが備えられている。定寸部54dは、該定寸部54dと対向する部分である弁体61の周縁に当接するようになっている。定寸部54dは、弁体61の周縁と当接することで、シール部材70の潰し代が規定されるように形成されている。
【0041】
定寸部54dには、切り欠き部54eが形成されている。切り欠き部54eは1つ以上形成されるのが好ましい。本実施形態では、図4に示すように、切り欠き部54eは3つ形成されている。これら切り欠き部54eは所定間隔で配置されているので、弁体61を当接時の姿勢を安定させることができる。このうちの少なくとも1つ(54e1)は、図2、図3に示すように、第1流路41に流体が流入する第1入出口41a(流入口)に対向する位置に配置されている。
【0042】
第1流路41は流体が流入または流出する第1入出口41aを有しており、第2流路42は流体が流入または流出する第2入出口42aを有している。遮断弁40を第3遮断装置25に使用する場合には、第1入出口41aを燃料電池10の導入口12aに連通させ、第2入出口42aを空気圧送装置22の吐出口に連通させる。また、遮断弁40を第4遮断装置26に使用する場合には、第1入出口41aを燃料電池10の導出口12bに連通させ、第2入出口42aを大気に開放させる。
【0043】
弁体61は、第2流路42側に配設され弁座54cに当接して閉状態をなし一方離間されて開状態をなすものである。弁体61は、円板状に形成されており、弁座54cに当接する面(上面)の周縁部に環状のシール部材70が取り付けられている。シール部材70の先端部72と弁座54cが当接することでシール性を確保している。
【0044】
シール部材70は、耐久性のあるゴムや熱可塑性樹脂などの弾性材(例えばEPDM(エチレンプロピレンゴム))で環状に形成されている。図5に示すように、シール部材70の基部71は、弁体61の上面に固定され、シール部材70の先端部72は、相対する2つの面72a,72bが先細となるように傾斜する形状に形成されている。先端部72が弁座54cに接触した時点に2つの面72a,72bのなす角の断面2等分線L1(図5で破線で示す)とシール面54bとのなす角θ1が鋭角または鈍角となるように形成されている。本実施形態では、なす角θ1は鋭角である。なお、面72aに沿った直線をL2、面72bに沿った直線をL3とする。また、シール面54bに鉛直な直線をL4(図5で一点破線で示す)とする。
【0045】
さらに、先端部72は非対称に形成されている。具体的には、先端部72は、弁体61の上面(シール面54bに平行である)に対して非平行に形成されている。すなわち、シール面54bに鉛直な直線に対して断面2等分線L1が平行ではない。また、シール部材70の環状先端を含む平面S1は、シール面54bと平行になるように形成されている。これにより、シール部材70は、全周に亘ってシール面54bに均一に接触(当接)することができる。また、先端部72は、2つの面72a,72bの断面2等分線L1とシー
ル面54bとのなす角のうち圧力が小さい流路側のなす角θ1が鋭角となるように形成されている。また、2つの面72a,72bは、これらいずれかの面72a,72bとシール部材70の環状先端を含む平面S1とのなす角θ2,θ3が鋭角となるように形成されている。
【0046】
シール部材70の基部71は、先端部72より幅広の台状に形成され、先端部72の両側面のうち少なくとも一方側(本実施形態では外周側(正圧側))に段部71aが形成されている。
【0047】
図6(a)に示すように、シール部材70は、連結部73を介して弁体61の下面に設けられた抜け防止部材74に連結されて弁体61に固定されている。図6(b)に示すように、弁体61には、周方向に所定間隔に複数の貫通孔61aが形成されている。貫通孔61aは、シール部材70の基部71が固定される面(上面)から反対側の面(下面)まで貫通している。
【0048】
連結部73は貫通孔61aと同径に形成されている。連結部73の直径(基部71の径方向の幅)は、基部71の幅(径方向)より小さくその幅の半分より大きくなるように形成されている。抜け防止部材74は、貫通孔61aの孔径より大きく弁体61より小さく形成されるのが好ましい。シール部材70が引っ張られても抜け防止部材74によって抜けることはない。本実施形態では、環状に形成されている。連結部73および抜け防止部材74は、いずれもシール部材70と同一の材料で形成されている。また、シール部材70、連結部73および抜け防止部材74は、一体成型で形成され、弁体61とともにインサート成型で形成される。
【0049】
基部71の径方向における連結部73との接触する面積の比は高ければ高いほどシール部材70を安定して固定させることができ、引っ張り強度も高くすることができる。また、連結部73の直径をある程度の大きさを確保すると、基部71の幅は大きくなる。この場合、段部71aを設けずに、先端部72を先細にしようとすると、先端部72は比較的高くなる。そこで、先端部72を先細に形成し、かつ、固定の安定性、および引っ張り強度を高く維持するために、段部71aを設けるようにした。すなわち、連結部73を比較的大径に形成し、それに応じて基部71の幅を大きく形成するが、段部71aを設けることで、先端部72を先細に形成することができる。
【0050】
また、先端部72の高さを変更して得た実験データを図7に示す。3つのタイプを示す。タイプ1は、図7(a)に示すように、先細の形状であるが段部はないものである。タイプ2は、図7(b)に示すように、先細の形状であり段部を有するものである。タイプ3は、図7(c)に示すように、先細の形状であり段部を有するものである。タイプ1〜3の高さは、順に高くなっている。タイプ1〜3は同一の幅である。タイプ1〜3の反力−圧縮量特性を図7(d)に示す。図7(d)から明らかなように、同じ幅であれば、高さが高いほど同一圧縮量である場合の反力は小さくなる。
【0051】
なお、貫通孔61aを例えば0.8mmに設定した場合、シール部材70の基部71の幅は1.0〜2.0mmの範囲が好ましく、本実施形態では1.4mmに設定され、シール部材70の高さは、1.0〜2.0mmの範囲が好ましく、1.8mmに設定されている。また、シール部材70のゴム硬度は、Hs40〜70の範囲が好ましく、Hs50に設定されている。
【0052】
弁体61の中央部には、図2、図3に示すように、弁軸62の一端(下端)が固定されている。弁軸62は弁体61に対して直交している。弁軸62の他端(上端)は、仕切壁53を貫通しており、その他端にはダイヤフラム取付部63が固定されている。弁軸62
は、仕切壁53に形成された弁軸挿通孔53aにシール部材53bを介して摺動可能かつ気密に保持されている。
【0053】
遮断弁40は、アクチュエータ80を備えている。アクチュエータ80は、弁軸62を駆動させて第1流路41と第2流路42との間の流通状態を切り替えるものである。アクチュエータ80は、ダイヤフラム81、ばね82、変圧室R1、大気圧室R2を備えている。ダイヤフラム81は、第2ボディー52と仕切壁53で形成された空間を区画して変圧室R1と大気圧室R2を形成する。ダイヤフラム81の外周縁は第2ボディー52の内壁に固定され、ダイヤフラム81の内周縁はダイヤフラム取付部63の外周端に固定されている。ダイヤフラム81は、ゴム、樹脂などの弾性材で形成されている。
【0054】
ばね82は、ダイヤフラム取付部63と仕切壁53と間に介装されている。ばね82は、その付勢力によって弁軸62を閉弁方向(弁体61を弁座54cに近づける方向)に付勢している。変圧室R1は、入出口R1aを介して圧力供給源(例えば空気圧送装置22)に接続され、圧力が供給されるようになっている。大気圧室R2は、入出口R2aを介して大気に開放されている。
【0055】
変圧室R1へ圧力(圧縮空気)が供給されると、ばね82の付勢力に抗して弁軸62が開弁方向(弁体61を弁座54cから遠ざける方向)に移動される。逆に、変圧室R1への圧力の供給が解除されると、ばね82の付勢力により弁軸62は閉弁方向に移動される。
【0056】
次に、このように構成された燃料電池用ガス遮断弁の閉弁時の作動について図8を参照しながら説明する。開弁状態にある遮断弁40が閉弁される際において、アクチュエータ80が駆動されて(すなわち変圧室R1に供給されている圧力の供給が停止さればね82の付勢力によって)弁体61がボディー50のシール面54bに近づいて、先端部72が弁座54cに接触する(図8(a))。
【0057】
接触時点以降は、細長に形成された先端部72は弁軸62の移動方向(弁軸の軸方向)に沿って圧縮される(図8(b))。このとき、比較的小さい押圧力で先端部72を圧縮変形することができ、シール部材70の反力を小さく抑制することができる。なお、図8(b)で破線は接触時点の先端部72の輪郭を示している。
【0058】
さらに、弁軸62が閉弁方向に移動されると、先端部72は、先端部72が弁座54cに当接した時点に2つの面72a,72bのなす角の断面2等分線L1とシール面54bとのなす角θ1が鋭角または鈍角となるように形成されているので、先端部72は圧縮されながら、当接している先端はシール面54bに沿って倒れる方向に力が加わるので、先端部72は倒れる方向に傾く(図8(c))。
【0059】
このように、遮断弁40が閉弁されると、燃料電池10の酸化剤流路12内では、封じ込まれた空気が消費されたり、温度が低下したりするので、第3および第4遮断装置25,26の第1流路41は負圧となる。一方、第2流路42は大気に開放されるので、正圧となる。よって、第1流路41と第2流路42との間には差圧が生じる。シール部材70の先端部72の倒れ方向、量は、閉弁時にその差圧によって倒れ方向の反対側に吸い込まれないように設定されている。すなわち、先端部72の高さ、幅、材質(硬度)が適切に設定されている。
【0060】
さらに、遮断弁40の開弁について説明する。定寸部54dに切り欠き部54eを設けることで、封止状態から開弁開始して、弁の開度が大きくなる過程において、切り欠き部54eを流体流路として機能させることができる。よって、切り欠き部54eを設けない
場合と比較して、流量を多くすることができる。
【0061】
また、図9(a)に示すように、乱れのない流量−開度特性を得ることができる。これは、切り欠き部54eがない場合、開弁直後しばらくの間、弁体61と定寸部54dとの間が小さく、流体流れの妨げとなるが(図9(b)に示すように流量−開度特性に乱れが生じる)、切り欠き部54eがある場合、開弁直後しばらくの間、弁体61と定寸部54dとの間に切り欠き部54eによってより広い流路を確保できるためである。よって、弁体61の形状とボディー50の形状の組み合わせの影響で生じる流量の乱れを解消することが可能となる。
【0062】
さらに、切り欠き部54eの形状や断面積を変えることで、開度に応じた流量(圧力)の特性をコントロールすることが可能となる。例えば、少ない開度で大流量流したり、開度を広げていっても流量の変化を少なくしたりすることができる。図10に示すように、曲線f1は断面積が大きいものであり、曲線f2は断面積が小さいものである。図10から明らかなように、同じ開度であれば、断面積が大きいほうが流量が多くなっている。よって、切り欠き部54eの断面積を調整することで、開度毎の流量を調整することができる。
【0063】
上述した説明から明らかなように、本第1の実施形態においては、シール部材70の先端部72は、相対する2つの面72a,72bが先細となるように傾斜する形状に形成されている。よって、燃料電池用ガス遮断弁40が閉弁される際において、アクチュエータ80が駆動されて弁体61がボディー50に近づいて、先端部72が弁座54cに接触すると、それ以降は、細長に形成された先端部72は弁体61の移動方向に沿って圧縮される(図8(b))。このとき、比較的小さい押圧力で先端部72を圧縮変形することができ、シール部材70の反力を小さく抑制することができる。また、その先端部72は、先端部72が弁座54cに当接した時点に2つの面72a,72bのなす角の断面2等分線L1とシール面54bとのなす角θ1が鋭角または鈍角となるように形成されている。よって、燃料電池用ガス遮断弁40が閉弁される際において、先端部72は圧縮されながら、当接している先端はシール面54bに沿って逃げるので、先端部72は逃げる方向に傾く。このように、閉弁時においては、シール部材70は、圧縮されるだけでなく、傾くことにより、シール部材70と弁座54cとの間をシールすることができるので、比較的小さい押圧力でもシール性を確保することができる。ひいては、アクチュエータの小型化、省力化を図ることができる。
【0064】
また、圧縮永久歪などによってシール部材70が傾倒しても、当初のシール位置からずれるもののシール部材70は弁座に確実に当接するためシール性は低下することはないので、シール性を長期間維持することができる。
【0065】
以上のことから、大型のアクチュエータにより圧縮荷重を大きくすることなく、シール性を高く維持するとともに高シール性をできるだけ長期間継続することができる。
【0066】
さらに、圧縮時に先端部72の倒れ方向が定寸部54dや先端部72の形状で負圧に対応できるように自動調整されるため(定寸部54dや先端部72の形状により)、負圧に対しても十分な対応が可能である。また、先端部72が細く、リップ状でないため、相手シール面積を最小限に抑えることができるため、省スペース化が可能である。また、使用時の応力集中を緩和できる形状であるため、繰り返し圧縮時のヘタリ発生を抑制することが可能である。また、燃料電池10内の負圧化でシール部材70に負圧力がかかった場合でも、シール面圧を十分に確保できるため、良好なシール性を得ることが可能である。
【0067】
また、シール部材70の先端部72は非対称に形成されるとともに、シール面54bは
シール部材70の環状先端を含む平面S1に対して水平に形成される。これにより、シール部材70の先端部72は、先端部72が弁座54cに当接した時点に2つの面72a,72bのなす角の断面2等分線L1とシール面54bとのなす角θ1が鋭角または鈍角となるように形成することが簡単かつ確実に達成できる。
【0068】
また、シール部材70の先端部72は、2つの面72a,72bの断面2等分線L1とシール面54bとのなす角θ1のうち圧力が小さい流路(本実施形態では第1流路41)側のなす角が鋭角となるように形成されている。これにより、シール部材70は圧力が小さい側に向かう吸引力が作用する。よって、この作用によりシール部材70はより弁座に押し付けられるので(シール面圧をより高くできるので)、より良好なシール性を確保することができる。
【0069】
また、2つの面72a,72bは、これらいずれかの面72a,72bとシール部材70の環状先端を含む平面S1とのなす角が鋭角となるように形成されている。これにより、シール部材70を型で形成する場合、その型からシール部材70(環状)を抜き出す際に、引っかかることなくスムーズに行うことができる。よって、シール部材70に初期亀裂が発生することなく、品質よいシール部材70を製造することができる。
【0070】
また、シール部材70の基部71は、先端部72より幅広の台状に形成され、先端部72の両側面72a,72bのうち少なくとも一方側に段部71aが形成されるのが好ましい。これにより、先端部72を先細形状とすることで、上述したように圧縮荷重を大きくすることなくシール性を高く維持することができ、さらに先端部72より幅広の基部71によりシール部材を弁体に確実に固定することができる。
【0071】
また、図6に示すように、弁体61(弁体61)には、シール部材70の基部71が固定される面から反対側の面まで貫通する複数の貫通孔61aが形成され、シール部材70の基部71は、貫通孔61aを貫通する連結部73を介して反対側の面に設けられ貫通孔61aより大きく弁体61より小さい抜け防止部材74に連結されて弁体61に固定されている。これにより、開弁時にシール部材70に弁体61から引き剥がす力が加わってもシール部材70が容易に剥がれないようになっている。また、連結部73、抜け防止部材74は弁体61の輪郭(外郭)内に配置されているので、そのようにシール部材70が剥がれない構造をなす弁体61を小径に形成することができる。
【0072】
また、図2に示すように、ボディー50に形成された定寸部54dを備え、定寸部54dは、弁体61の該定寸部54dに対向する部分(周縁部)と当接することで、シール部材70の潰し代を規定するように形成された。これにより、シール部材70の潰し代を確実に管理することができる。
【0073】
また、定寸部54dを弁座54c(ボディー50)に形成した場合、定寸部54dに1つ以上の切り欠き部54eを設けた。これにより、開弁時に切り欠き部54eが弁体61とボディー50との間の流体の流路として機能するので、その流路断面積を拡大することにより、流体流量の増大を図ることができ、安定した流量−弁開度特性(流量−開度特性)を得ることができる。また、ボディー50側に切り欠き部54eを形成できるので、より大きい流路断面積を得ることができる。
【0074】
また、図2に示すように、切り欠き部54eの少なくとも1つ(54e1)は、第1流路41に流体が流入する流入口41aに対向する位置に配置されている。これにより、開弁時に、流入口41aから流入した流体は切り欠き部54e1に向かって流れ、切り欠き部54e1を通って第2流路42に流出するので、流体の流れが乱れるのを抑制することができる。
【0075】
2)第2の実施形態
次に、第2の実施形態について図11を参照して説明する。第2の実施形態においては、シール部材170の先端部172は対称に形成されるとともに、シール面154bはシール部材170の環状先端を含む平面S1に対して傾斜するように形成される。この場合、先端部172の2つの面172a,172bは、上記72a,72bと同様な面であるが、2つの面172a,172bの断面2等分線L1は対称軸である。なお、第1の実施形態と同一の構成については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0076】
このように、先端部172は、シール面154bに対して傾けて形成されている。先端部172は、2つの面172a,172bの断面2等分線L1とシール面154bとのなす角のうち圧力が小さい流路側のなす角θ1が鋭角となるように形成されている。
【0077】
したがって、シール部材170の先端部172は、先端部172が弁座54cに当接した時点に2つの面172a,172bのなす角の断面2等分線L1とシール面154bとのなす角が鋭角または鈍角となるように形成することが簡単かつ確実に達成できる。
【0078】
3)第3の実施形態
次に、第3の実施形態について図12を参照して説明する。第3の実施形態においては、切り欠き部61bを弁体61に設けた。すなわち、定寸部54dをボディー50に形成した場合、定寸部54dに当接する弁体61の部位に1つ以上の切り欠き部61bを設けた。これにより、開弁時に切り欠き部61bが弁体61とボディー50との間の流体の流路として機能するので、その流路断面積を拡大することにより、流体流量の増大を図ることができ、安定した流量−弁開度特性を得ることができる。なお、切り欠き部をボディー50と弁体61の両方に設けるようにしてもよい。
【0079】
4)第4の実施形態
次に、第4の実施形態について図13を参照して説明する。第4の実施形態においては、定寸部61cを弁体61に設けた。定寸部61cは、シール面54bであって弁穴54aの開口周縁に当接するようになっている。定寸部61cの高さは、シール部材70の高さに潰れ代を加算した値に設定される。したがって、弁体61に形成された定寸部61cを備え、定寸部61cは、ボディー50の該定寸部61cに対向する部分と当接することで、シール部材70の潰し代を規定するように形成された。これにより、シール部材70の潰し代を確実に管理することができる。
【0080】
また、図13(a)において、定寸部61cを弁体61に形成した場合、定寸部61cに当接するボディー50の部位(弁穴54aの開口周縁)に1つ以上の切り欠き部54fを設けた。これにより、開弁時に切り欠き部54fが弁体61とボディー50との間の流体の流路として機能するので、その流路断面積を拡大することにより、流体流量の増大を図ることができ、安定した流量−弁開度特性を得ることができる。また、ボディー50側に切り欠き部54fを形成できるので、より大きい流路断面積を得ることができる。
【0081】
また、定寸部61cを弁体61に形成した場合、定寸部61cに1つ以上の切り欠き部61c1を設けた。これにより、開弁時に切り欠き部61c1が弁体61とボディー50との間の流体の流路として機能するので、その流路断面積を拡大することにより、流体流量の増大を図ることができ、安定した流量−弁開度特性を得ることができる。
【0082】
5)第5の実施形態
次に、第5の実施形態について図14を参照して説明する。上述した第1の実施形態では、弁体61がアクチュエータ80側に近づく方向に移動すると、遮断弁40が閉弁され
、遠ざかる方向に移動すると、開弁されるように構成されている。第5の実施形態においては、弁体160がアクチュエータ180側に近づく方向に移動すると、遮断弁40が開弁され、遠ざかる方向に移動すると、閉弁されるように構成されている。
【0083】
具体的には、ばね82が、仕切壁53とダイヤフラム取付部63との間ではなく、仕切壁53に対向する第2ボディー52とダイヤフラム取付部63との間に介装されている。よって、ばね82は弁体160を下方(アクチュエータ180から遠ざかる方向)に付勢する。変圧室R1と大気圧室R2は、第1の実施形態と上下逆の配置になる。また、弁体160には、その下面周縁部にシール部材が下向きに固定されている。さらに、第1流路41は、負圧側に配設されるので、第1の実施形態と第2流路42を入れ替えて配置されている。なお、第1の実施形態と同一の構成については同一符号を付してその説明を省略する。
この第5の実施形態においても、上述した第1の実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0084】
6)第6の実施形態
次に、第6の実施形態について図15を参照して説明する。上述した第5の実施形態では、定寸部54dをボディー50側に設けたが、第4の実施形態と同様に、定寸部161cを弁体160側に設けるようにしてもよい。この場合、定寸部161cに当接するボディーの部位(弁穴54aの開口周縁)に1つ以上の切り欠き部154fを設けるのが好ましい。
【0085】
この第6の実施形態においても、上述した第4および第5の実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0086】
7)第7の実施形態
次に、第7の実施形態について図16を参照して説明する。上述した第1の実施形態において、第1流路41と第2流路42が入れ替わった場合には、シール部材70にかかる差圧による作用の方向が逆転するため、図16に示すように、シール部材70の形状を左右反転したシール部材270とすればよい。
【0087】
なお、上述した各実施形態においては、アクチュエータとして、ダイヤフラムを備えたものを使用したが、電動モータで駆動するものを使用するようにしてもよい。電動モータとしてステッピングモータを使用することで、弁の開度を自由に制御することが可能であるため、流体の流量コントロールが容易である。また、遮断弁40を第2遮断装置24に使用してもよい。また、上述した各実施形態においては、2つの面72a,72bは、断面直線形状であるが、断面曲線形状でもよい。
【0088】
また、定寸部および切り欠き部を設ける場合には、上述したシール部材70を設けない遮断弁にも適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
10…燃料電池、11…燃料流路、12…酸化剤流路、12a…導入口、12b…導出口、21…水素供給源、22…空気圧送装置(圧力供給源)、23〜26…第1〜第4遮断装置、31…燃料供給管、32,34…オフガス排出管、33…酸化剤供給管、40…遮断弁、41…第1流路、42…第2流路、50…ボディー、51…第1ボディー、52…第2ボディー、53…仕切壁、54…段部、54a…弁穴、54b…シール面、54c…弁座、54d…定寸部、54e,54e1…切り欠き部、61…弁体、61a…貫通孔、70…シール部材、71…基部、72…先端部、72a,72b…2つの面、73…連結部、74…抜け防止部材、80…アクチュエータ、81…ダイヤフラム、82…ばね、
R1…変圧室、R2…大気圧室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座を備えたシール面を有するボディーと、
第1流路と第2流路を連通、遮断する弁体と、
前記弁体に取り付けられ前記弁座に当接してシールするシール部材と、
前記弁体を駆動させて前記第1流路と前記第2流路との間の流通状態を切り替えるアクチュエータと、を備えた燃料電池用ガス遮断弁であって、
前記シール部材は、弾性材で環状に形成され、
前記シール部材の基部は、前記弁体に固定され、
前記シール部材の先端部は、相対する2つの面が先細となるように傾斜する形状に形成されるとともに、前記先端部が前記弁座に接触した時点に前記2つの面のなす角の断面2等分線と前記シール面とのなす角が鋭角または鈍角となるように形成されていることを特徴とする燃料電池用ガス遮断弁。
【請求項2】
請求項1において、前記シール部材の先端部は非対称に形成されるとともに、前記シール面は前記シール部材の環状先端を含む平面に対して水平に形成されることを特徴とする燃料電池用ガス遮断弁。
【請求項3】
請求項1において、前記シール部材の先端部は対称に形成されるとともに、前記シール面は前記シール部材の環状先端を含む平面に対して傾斜するように形成されることを特徴とする燃料電池用ガス遮断弁。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項において、前記シール部材の先端部は、前記2つの面の断面2等分線と前記シール面とのなす角のうち圧力が小さい流路側のなす角が鋭角となるように形成されていることを特徴とする燃料電池用ガス遮断弁。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項において、前記2つの面は、これらいずれかの面と前記シール部材の環状先端を含む平面とのなす角が鋭角となるように形成されていることを特徴とする燃料電池用ガス遮断弁。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項において、前記シール部材の基部は、前記先端部より幅広の台状に形成され、前記先端部の両側面のうち少なくとも一方側に段部が形成されていることを特徴とする燃料電池用ガス遮断弁。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一項において、前記弁体には、前記シール部材の基部が固定される面から反対側の面まで貫通する複数の貫通孔が形成され、
前記シール部材の基部は、前記貫通孔を貫通する連結部を介して前記反対側の面に設けられ前記貫通孔より大きく前記弁体より小さい抜け防止部材に連結されて前記弁体に固定されていることを特徴とする燃料電池用ガス遮断弁。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか一項において、
前記ボディーおよび前記弁体の何れか一方に形成された定寸部を備え、
前記定寸部は、他方の該定寸部に対向する部分と当接することで、前記シール部材の潰し代を規定するように形成されたことを特徴とする燃料電池用ガス遮断弁。
【請求項9】
請求項8において、前記定寸部を前記ボディーに形成した場合、前記定寸部に1つ以上の切り欠き部を設けたことを特徴とする燃料電池用ガス遮断弁。
【請求項10】
請求項9において、前記切り欠き部の少なくとも1つは、前記第1流路に流体が流入する流入口に対向する位置に配置されていることを特徴とする燃料電池用ガス遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−132974(P2011−132974A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290501(P2009−290501)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】