説明

燃料電池用拡散層及びその製造方法、ならびに燃料電池用膜−電極接合体及び燃料電池

【課題】燃料電池における拡散層の排水性を向上させること。
【解決手段】貫通孔を複数有する燃料電池用拡散層において、内径が不均一である各貫通孔の最小径の位置における断面積の総和を総断面積X、最小径が0.1μm〜10μmの範囲にある貫通孔の最小径の位置における断面積の総和をY1としたときに、Xに対するY1の割合を所定の範囲とすることにより、排水性に優れる燃料電池用拡散層、燃料電池用膜−電極接合体及び燃料電池を提供することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用拡散層及びその製造方法、ならびに当該燃料電池用拡散層を備える燃料電池用膜−電極接合体及び燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池として、イオン交換膜からなる電解質膜の一方の面に水素ガス等の燃料ガスが反応するアノード電極と、他方の面に酸素ガス等の酸化ガス(通常は、空気)が反応するカソード電極とを有する膜−電極接合体を備えた固体高分子電解質型燃料電池が知られている。膜−電極接合体の各電極はそれぞれ電解質膜上に形成され、触媒層と、触媒層上に形成され、ガス透過性を有する拡散層とを有する。この種の燃料電池(以下、燃料電池)において、膜−電極接合体を原料供給用の通路を設けたセパレータで挟持してセルを構成し、その通路から拡散層を通して各触媒層に燃料ガス及び酸化ガスをそれぞれ供給して反応させることにより、電気を出力する。
【0003】
燃料電池の発電時には、アノード電極に供給する原料を水素ガス、カソード電極に供給する原料を空気とした場合、アノード電極の触媒層(アノード触媒層)において、水素ガスから水素イオンと電子とが発生し、発生した電子は外部端子から外部回路を通じてカソード電極に到達する。カソード電極の触媒層(カソード触媒層)において、供給される空気中の酸素と、アノード電極において発生し電解質膜を通過した水素イオンと、外部回路を通じて空気極に到達した電子との反応により、水が生成する。このようにアノード電極及びカソード電極において化学反応が起こり、電荷が発生して電池として機能することになる。
【0004】
ところで、カソード電極の触媒層において生成した水が触媒層内部または触媒層/拡散層界面に停滞すると、拡散層を透過して来た酸化ガスの触媒への供給が妨げられる、いわゆるフラッディング現象が起こり、燃料電池の出力が低下してしまう。その為、この種の燃料電池のカソード電極側の拡散層は、触媒層で生成した水をセパレータ側へ排出する機能(排水性、水透過性)を備えることが必要である。触媒層で生成した水を拡散層の中を通過させて、セパレータ側へ排出する技術としては、例えば、下記特許文献1〜特許文献3において開示される技術がある。
【0005】
特許文献1は、触媒層における水等の生成物を排出するための複数個の貫通孔であって、平均直径が100nm〜1mmである貫通孔を有する燃料電池用拡散層を備える膜−電極接合体を開示する。触媒層で生成した水は貫通孔を利用して排出される。
【0006】
特許文献2は、多孔質基材からなる拡散層(ガス拡散部材)であって、基材の有する孔よりも大きな径の貫通孔(例えば、3.8mm)を有する拡散層を備える膜−電極接合体を開示する。大きな径(数ミリ程度)を有する貫通孔によって、触媒層で生成した水の排出を行う。
【0007】
特許文献3は、発泡焼結金属からなる拡散層であって、平均孔径が1μm〜150μmであり、毛細管現象によって水を吸引する三次元の網目状に連通した貫通孔(発泡空孔)と、平均孔径が0.2mm〜3mmである貫通孔とを有する拡散層を備える膜−電極接合体を開示する。触媒層で生成した水の排出を、毛細管現象を利用して発泡空孔により行う。触媒層へのガスの供給には、貫通孔が用いられる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−174621号公報
【特許文献2】特開2004−30959号公報
【特許文献3】特開2004−63097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、カソード電極の拡散層と触媒層との境界面およびその近辺は、特に、速やかに水が排出されることが望ましい。前記境界面およびその近辺に水が停滞すると、拡散層を透過して来たガス(酸化ガス)が触媒層へ浸入するのを遮断し、触媒層におけるガスの反応を妨げ、燃料電池の出力が低下してしまうからである。また、低温環境下(例えば、気温0℃以下)において、触媒層内部に停滞した水が凍結、体積膨張することにより、触媒層の構造破壊が発生したり、触媒層/拡散層界面に停滞した水が凍結、体積膨張することにより、触媒層/拡散層界面の層間剥離が発生したりするからである。
【0010】
しかし、上記特許文献1のように、平均直径が100nm〜1mmである複数の貫通孔を拡散層が有していても、貫通孔の直径の分布によっては十分に排水を行うことができなかった。
【0011】
また、上記特許文献2において、大きな貫通孔を有する拡散層は、強度を確保する為に、貫通孔同士の間隔(ピッチ)を、8mm〜12mm等、大きく設定する必要がある。ところで、触媒層において生成する水は、貫通孔の真下にのみ存在する訳ではなく、貫通孔同士の間の下側等の貫通孔の真下から離れた個所にも存在する。その為、離れた個所に存在する水が拡散層のセパレータ側へ排出される為には、水が貫通孔のある所まで触媒層中を移動しなければならない。水が貫通孔のある所まで移動するには、ある程度の時間がかかってしまう。その為、速やかな水の排出が出来ず問題であった。
【0012】
また、上記特許文献3において、触媒層で生成した水を、三次元の網目状に連通した貫通孔(発泡空孔)により毛細管現象を利用して排出するが、毛細管現象のみで水を拡散層のセパレータ側へ排出するのは時間がかかる。したがって、境界面近辺の水を速やかに排除することが出来ず問題であった。
【0013】
本発明は、排水性に優れる燃料電池用拡散層及びその製造方法、ならびにそれを備える燃料電池用膜−電極接合体及び燃料電池である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、内径が不均一な貫通孔を複数有する燃料電池用拡散層であって、各貫通孔の最小径の位置における断面積の総和を総断面積X、最小径が0.1μm〜10μmである貫通孔の最小径の位置における断面積の総和を総断面積Y1としたとき、前記Xに対する前記Y1の割合が60%以上である。
【0015】
また、前記燃料電池用拡散層において、最小径が0.1μm〜1μmである貫通孔の最小径の位置における断面積の総和を総断面積Y2としたとき、前記Xに対する前記Y2の割合が70%以上であることが好ましい。
【0016】
また、前記燃料電池用拡散層において、前記燃料電池用拡散層は多孔質基材及び表面層を備え、前記多孔質基材が有する基材貫通孔は、前記表面層が有する表面層貫通孔と比較して相対的に大きな最小径を有することが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記燃料電池用拡散層の製造方法であって、導電性材料、撥水性樹脂及び溶媒を含むペーストであって、全固形分中の前記撥水性樹脂の割合が30重量%以下であるペーストを多孔質基材表面に塗布した後、乾燥させて表面層を形成する工程を含む。
【0018】
また、本発明は、前記燃料電池用拡散層の製造方法であって、導電性材料、撥水性樹脂及び溶媒を含むペーストを前記多孔質基材表面に塗布して塗膜を形成した後、加熱手段及び亀裂形成手段のうち少なくとも1つにより前記塗膜に亀裂を発生させて前記表面層を形成する工程を含む。
【0019】
また、本発明は、前記燃料電池用拡散層の製造方法であって、導電性材料、撥水性樹脂、造孔剤及び溶媒を含むペーストを前記多孔質基材表面に塗布した後、前記造孔剤により気泡を発生させて前記表面層を形成する工程を含む。
【0020】
また、本発明は、前記燃料電池用拡散層の製造方法であって、撥水性樹脂、繊維状物質及び溶媒を含むペーストを前記多孔質基材表面に塗布した後、乾燥させて前記表面層を形成する工程を含む。
【0021】
また、本発明は、電解質膜と、前記電解質膜の両面に形成された触媒層と、前記触媒層の表面上に形成された拡散層とを有する燃料電池用膜−電極接合体であって、前記拡散層が前記燃料電池用拡散層である。
【0022】
また、本発明は、電解質膜と、前記電解質膜の両面に形成された触媒層と、前記触媒層の表面上に形成された拡散層とを有する燃料電池用膜−電極接合体を備える燃料電池であって、前記拡散層が前記燃料電池用拡散層である。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、貫通孔を複数有する燃料電池用拡散層において、内径が不均一である各貫通孔の最小径の位置における断面積の総和を総断面積X、最小径が0.1μm〜10μmの範囲にある貫通孔の最小径の位置における断面積の総和をY1としたときに、Xに対するY1の割合を所定の範囲とすることにより、排水性に優れる燃料電池用拡散層、燃料電池用膜−電極接合体及び燃料電池を提供することが出来る。
【0024】
また、本発明では、そのような排水性に優れる燃料電池用拡散層の製造方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<燃料電池用拡散層、膜−電極接合体及び燃料電池>
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池用拡散層を備える燃料電池の概略構成図である。燃料電池1は、電解質膜11の一方の表面に酸素ガス等の酸化ガス(通常は、空気)が反応するカソード電極12Aを有し、他方の表面に水素ガス等の燃料ガスが反応するアノード電極12Bを有する膜−電極接合体10と、膜−電極接合体10のカソード電極12Aの表面に配置されるカソード側セパレータ20Aと、膜−電極接合体10のアノード電極12Bの表面に配置されるアノード側セパレータ20Bとを備える。膜−電極接合体10は、膜−電極アッセンブリ(Membrane-Electrode Assembly、MEA)とも称される。この膜−電極接合体10において、燃料ガスおよび酸化ガスが反応して電気が取り出される。
【0026】
膜−電極接合体10の電解質膜11は、通常、側鎖にスルホン酸基やカルボン酸基等のイオン交換基を有する高分子膜からなる。電解質膜11は、特定のイオンと強固に結合し、陽イオンまたは陰イオンを選択的に透過する性質を有する。電解質膜11としては、例えば、パーフルオロスルホン酸重合体からなる膜である、ジャパンゴアテックス(株)のゴアセレクト(Goreselect、登録商標)、デュポン社(Du Pont社)のナフィオン(Nafion、登録商標)、旭化成(株)のアシプレックス(Aciplex、登録商標)、旭硝子(株)のフレミオン(Flemion、登録商標)等を用いることができる。電解質膜11の膜厚は例えば、10μm〜200μm、好ましくは20μm〜50μmの範囲である。本実施形態においては、電解質膜11の中を、プロトンが水分子を伴って移動する。
【0027】
電解質膜11の表面に形成される電極12(カソード電極12A、アノード電極12B)は、触媒層13(カソード側触媒層13A、アノード側触媒層13B)と、拡散層14(カソード側拡散層14A、アノード側拡散層14B)とを有する。触媒層13は、電解質膜11の表面上に形成される。触媒層13において燃料ガスまたは酸化ガスが反応する。触媒層13は、白金、金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム等の貴金属触媒を、カーボンで担持した触媒担持カーボンと、触媒担持カーボンを電解質膜11と接着等する樹脂とを含む。
【0028】
カーボンとしては、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等が使用される。触媒層で使用される樹脂としては、上記ナフィオン(登録商標)等のパーフルオロスルホン酸系の固体高分子電解質の他、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(FEP)等のフッ素原子を含むポリマー、あるいはこれらの共重合体、これらのモノマー単位とエチレンやスチレン等の他のモノマーとの共重合体、さらには、これらのブレンド等を用いることができる。触媒層13の膜厚は例えば、1μm〜100μm、好ましくは1μm〜20μmの範囲である。
【0029】
拡散層14は、触媒層13の表面上に配置される。拡散層14は、ガス透過性および水透過性を有する。拡散層14は基材16(カソード側基材16A、アノード側基材16B)と表面層15(カソード側表面層15A、アノード側表面層15B)とを有する。表面層15は、触媒層13の表面上に配置され、基材16は、表面層15の表面上に配置される。なお本実施形態においては、カソード電極12Aの拡散層14Aおよびアノード電極12Bの拡散層14Bのそれぞれが少なくとも2層からなることが好ましいが、このとき少なくともカソード電極12Aの拡散層14Aが表面層15Aおよび基材16Aの2層の構造を備えれば良い。
【0030】
表面層15は、導電性を有する。導電性は、カーボンブラック等の粉末状の導電性材料や、炭素繊維等の繊維状の導電性材料により付与される。また表面層15は、撥水性を有する。撥水性は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等のフッ素系樹脂等の撥水性を有する撥水性樹脂により付与される。表面層15の膜厚は例えば、10μm〜200μm、好ましくは20μm〜100μmの範囲である。表面層15の膜厚が10μm未満であると多孔質の基材16の表面を均一に覆うことが困難となり、平滑な表面とならない場合があり、200μmを超えると後述する水の排出効率が低下する場合がある。
【0031】
基材16は、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト、金属多孔質体等の導電性多孔質材料に、撥水処理を施したものからなる。例えば、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維等の導電性材料と、フッ素樹脂等の撥水性樹脂と、水と、界面活性剤とを含む液状混合物を、カーボンペーパーに所定量、含浸させ、含浸後のカーボンペーパーを乾燥することによって基材16を製造することが出来る。基材16の厚みは例えば、50μm〜600μm、好ましくは100μm〜300μmの範囲である。
【0032】
拡散層14は、一方の表面から他方の表面へ、すなわちセパレータ20側から触媒層13側へ貫通した「貫通孔(貫通細孔)」を複数個有する。図2にカソード電極側の触媒層13A及び拡散層14Aの一部の断面模式図を示す。拡散層14Aにおいて、表面層15Aが有する表面層貫通孔31及び基材16Aが有する基材貫通孔32により、表面層15A及び基材16A、すなわち拡散層14Aを貫通する貫通孔30が形成される。基材16Aの基材貫通孔32の大部分は、表面層15の表面層貫通孔31と比較して相対的に大きな径を有する。また、表面層15の表面層貫通孔31は図3に示すように内径が不均一である。
【0033】
この貫通孔30の中をガスや水が通過し、水を図1のセパレータ20(カソード側セパレータ20A、アノード側セパレータ20B、図2においては図示せず)側へ排出することができる。本発明者らは、内径が不均一である各貫通孔30の最小径の位置における断面積の総和を総断面積X、最小径が0.1μm〜10μmである貫通孔の最小径の位置における断面積の総和を総断面積Y1としたとき、Xに対するY1の割合を60%以上とすることにより、排水性が向上することを見出した。
【0034】
拡散層14に形成される貫通孔30において、孔径(最小径)が0.1μm未満であると排水機能を発揮することが難しくなる。また本実施形態においては、通常、孔径(最小径)が100μmを超えるような貫通孔は形成されない。また、前記総和Y1の割合が60%以上であることにより、すべての貫通孔に対して生成水の排出に有効な貫通孔の割合が多くなるため、拡散層14全体として水の排出速度が速くなる。これにより、触媒層において水が生成してウェットな環境となっても、拡散層の水の排出能力が高いため、燃料電池の性能が維持される。また、拡散層の水の排出能力が高いため、低温環境下(例えば、気温0℃以下)における触媒層内部及び触媒層/拡散層界面での水の凍結が低減され、低温起動時の電池性能の低下及び低温環境下使用時の電池の耐久性低下が抑制される。一方、従来の拡散層のように、平均直径が100nm〜1mmである複数の貫通孔を拡散層が有していても、貫通孔の最小径が10μm以上のものが多く分布するものでは十分に排水を行うことができない。
【0035】
前記総和Y1の割合は、前記総断面積Xに対して60%以上であるが、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。これにより、すべての貫通孔に対して生成水の排出に有効な貫通孔の割合がさらに多くなるため、拡散層14全体として水の排出速度がより速くなる。
【0036】
また、最小径が0.1μm〜1μmである貫通孔の最小径の位置における断面積の総和を総断面積Y2としたとき、Xに対するY2の割合が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。これにより、すべての貫通孔に対して生成水の排出に有効な貫通孔の割合がさらに多くなるため、拡散層14全体として水の排出速度がより速くなる。
【0037】
ここで、貫通孔30の最小径とは、各貫通孔30において最も小さい径(直径)のことである。本実施形態において、基材貫通孔32は表面層貫通孔31と比較して相対的に大きな径を有するため、通常、各貫通孔30は表面層15において最小径を示すことになる。例えば、貫通孔30の最小径とは、図3の表面層15の断面模式図に示されるように、内径が不均一な表面層貫通孔31における最も小さい孔径のことをいい、図3において矢印の示す個所が各表面層貫通孔31、すなわち各貫通孔30の最小径の位置である。また、各貫通孔30の最小径の位置における「断面積」とは、各貫通孔30の最小径の位置における半径から算出した断面積であり、「断面積の総和」とは拡散層14に存在する総ての貫通孔30の前記「断面積」を合計したものである。
【0038】
各貫通孔30の最小径、およびその位置における断面積は、細孔分布測定装置(パームポロメータ、PMI社製)により測定することができ、その測定結果より、前記総断面積X、前記総和Y1,Y2及び前記総断面積Xに対する前記総和Y1,Y2の割合を計算することができる。
【0039】
上記の通り、通常、基材16は複数個の基材貫通孔32を有し、基材貫通孔32は、表面層15の表面層貫通孔31と比較して相対的に大きな最小径を有するが、基材貫通孔32の最小径は1μm〜70μmの範囲にあることが好ましい。また、各基材貫通孔32の最小径の位置における断面積の総和である総断面積に対して、最小径が10μm以上の基材貫通孔の最小径の位置における断面積の総和が80%以上の割合を占めることが好ましく、90%以上の割合を占めることがより好ましい。基材貫通孔32が表面層貫通孔31と比較して相対的に大きな径を有することにより、表面層貫通孔31により触媒層13側から押し出された水をセパレータ20側へ効率的に排出することができる。
【0040】
また、本実施形態において、前記総断面積Xは、拡散層14が触媒層13と接する面の総面積Zに対して、10%〜95%の範囲の割合を占めることが好ましい。この総断面積Xの総面積Zに対する割合が、10%未満であると、触媒層13へ充分なガスを供給することが出来ない。また触媒層13で発生した水を充分排出することが出来ない場合がある。その為、燃料電池の出力密度が低下してしまう。これに対して、総断面積Xの総面積Zに対する割合が95%を超えると、拡散層14は空隙が多くなり、拡散層14の強度が不足してしまう場合がある。
【0041】
図1において、膜−電極接合体10のカソード電極12Aの表面上に配置されるカソード側セパレータ20Aは、カソード側の拡散層14Aに酸化ガスを供給するための酸化ガス流路21Aを備える。酸化ガス流路21Aは、凹部形状を有する。酸化ガスが酸化ガス流路21Aに沿って流れる間、酸化ガスの一部が拡散層14Aの基材16A側表面より内部へ浸入し、触媒層13Aまで至る。一方、アノード電極12Bの表面上に配置されるアノード側セパレータ20Bは、アノード側の拡散層14Bに燃料ガスを供給するための燃料ガス流路21Bを備える。燃料ガス流路21Bは、凹部形状を有する。燃料ガスが燃料ガス流路21Bに沿って流れる間、燃料ガスの一部が拡散層14Bの基材16B側表面より内部へ浸入し、触媒層13Bまで至る。
【0042】
これらのセパレータ20(20A,20B)は導電性を有し、膜−電極接合体10で発生した電気(電子)を集電する集電部としての機能を備える。セパレータの材料としては、例えば、カーボンを圧縮成形した成形カーボン等を用いることが出来る。成形カーボンを用いると、ガス不透過性を確保出来る。
【0043】
ここで、本実施形態に係る膜−電極接合体10を備える燃料電池1において、燃料ガスおよび酸化ガスが反応して電気が発生する機構、および電気の発生に伴う水の生成機構について説明する。
【0044】
図1に示される燃料電池1において、外部より燃料ガスがアノード側セパレータ20Bの燃料ガス流路21Bに供給される。燃料ガスは、通常、適度に加湿された状態で供給される。燃料ガス流路21Bに沿って流れる燃料ガスの内、一部がアノード側の拡散層14Bの基材16B側表面より内部へ浸入する。なおその他の未反応の燃料ガスは、そのまま燃料ガス流路21Bに沿って流れ、オフガスとして燃料電池1の外部へ排出される。内部に浸入した燃料ガスは、基材16Bから表面層15Bの方へ向けて拡散しつつ移動し、触媒層13Bへ到達する。触媒層13Bへ到達した燃料ガス(例えば、水素ガス)は、触媒層13Bにおいて反応し、プロトンと、電子とを生じる。生成したプロトンは、電解質膜11の中を、アノード電極12B側から、カソード電極12A側へ向けて移動する。なおプロトンは、電解質膜11中を、水分子を伴って移動する。生成した電子は、導電性を有するアノード側セパレータ20Bの中へ移動し、その後、燃料電池1の外部の回路(図示せず)を通る。
【0045】
一方、外部より酸化ガスがカソード側セパレータ20Aの酸化ガス流路21Aに供給される。酸化ガス流路21Aに沿って流れる酸化ガスの内、一部がカソード側の拡散層14Aの基材16A側表面より内部へ浸入する。なおその他の未反応の酸化ガスは、そのまま酸化ガス流路21Aに沿って流れ、オフガスとして燃料電池1の外部へ排出される。内部へ浸入した酸化ガスは、基材16Aから表面層15Aの方へ向けて拡散しつつ移動し、触媒層13Aへ到達する。なお拡散層14Aを移動する際、酸化ガスは、拡散層14Aの有する貫通孔30の中を通る。触媒層13Aへ到達した酸化ガス(例えば、酸素ガス)は、触媒層13Aにおいて、電解質膜11中を移動してきたプロトンと反応する。この反応には電子が必要であり、上記アノード電極12Bで生成した電子が、外部の回路(図示せず)を通り、カソード側セパレータ20Aの中を通ってカソード電極12Aの触媒層13Aへ供給される。このように、膜−電極接合体10における燃料ガスおよび酸化ガスの反応により、電子がアノード電極12Bからカソード電極12Aへ流れる為、電気が発生する。また、カソード電極12Aの触媒層13Aにおいて、酸素ガスがプロトンと電子と反応すると水が生成する。
【0046】
ここで、カソード電極12Aの触媒層13Aにおいて生成した水が、拡散層14Aのセパレータ20A側へ排出される機構について、図2を用いて説明する。図2のカソード電極12Aにおいて、一番下側に、触媒層13Aが配置され、触媒層13Aの上側に、2層からなる拡散層14Aが配置される。拡散層14Aは、触媒層13A側に配置される表面層15Aと、セパレータ20A(図2においては図示せず)側に配置される基材16Aとからなる。表面層15Aは、表面層貫通孔31を有し、基材16Aは、表面層15Aの表面層貫通孔31よりも大径の基材貫通孔32を有する。なお説明の便宜上、表面層貫通孔31および基材貫通孔32を簡略化した形状で示し、かつ拡大して示した。また図2中の破線c−cは、触媒層13Aと拡散層14A(表面層15A)との境界面の位置を示す。
【0047】
発電中、カソード電極12Aの触媒層13Aにおいて生成した水が、触媒層13Aと拡散層14Aとの境界面およびその近辺に存在すると、表面層15Aの表面層貫通孔31から基材16Aの基材貫通孔32側に押し出される。図2において示される矢印は、押し出される水の流れの向きを示す。貫通孔30の最小径(ほとんどの場合、表面層貫通孔31の最小径)が0.1μm〜10μmの範囲であると、貫通孔30は、水を押し出しやすくなる。また、このような最小径を有する貫通孔30において、前記総和Y1が、前記総断面積Xに対して60%以上であると、上記境界面に存在する水を連続的に押し出すことが可能となる。
【0048】
本実施形態においては、表面層貫通孔31の長さは、表面層15Aの厚み、すなわち20μm〜100μm程度であり、通常の単層からなる拡散層(通常100μm〜1000μm程度)の有する貫通孔と比較して、短い。したがって、本実施形態における貫通孔30によれば、効率よく触媒層13Aで生成した水を少なくとも基材16A側まで押し出して排出することができる。表面層15Aの表面層貫通孔31により押し出された水は、基材16Aへ達し、基材16Aの基材貫通孔32の内部へ浸入する。基材貫通孔32へ浸入した水は、凝集しつつ基材貫通孔32を通り、基材16Aのセパレータ20A側の表面へ滲出する。表面へ滲出した水は、カソード側セパレータ20Aの酸化ガス流路21Aに入り、酸化ガスの流れに押されて酸化ガス流路21Aに沿って、オフガスと共に燃料電池1の外部へ排出される。
【0049】
なお本実施形態において、拡散層14Aにおける最小径が0.1μm〜10μmの範囲にある貫通孔30により、前記総和Y1を60%以上とすると、触媒層13Aから拡散層14Aへの水の排出量と、拡散層14Aから触媒層13Aへのガスの供給量とのバランスを保つことが出来る。このような排水機構を有する拡散層14を備える膜−電極接合体10を利用して発電を行えば、触媒層13Aに水が停滞して水浸(フラッディング)するのを防止して、燃料電池1の出力の低下を防止出来る。その為、本実施形態に係る膜−電極接合体10を利用した燃料電池1は、境界面に酸化ガス等のガスを安定して供給することが出来、供給されたガスを触媒層において安定して反応させることが出来る。その為、安定した出力密度を確保し易い。
【0050】
<燃料電池用拡散層の製造方法>
本実施形態に係る燃料電池用拡散層は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0051】
(1)多孔質基材上への表面層形成時に使用するペーストにおいて、全固形分中の撥水性樹脂の割合を制御して、貫通孔の径を制御する方法
具体的には、導電性材料、撥水性樹脂、溶媒及び必要に応じて繊維状物質を含むペーストにおいて、全固形分中の撥水性樹脂の割合を制御する。すなわち、全固形分(導電性材料+撥水性樹脂+繊維状物質)中の撥水性樹脂の割合を30重量%以下、好ましくは20重量%以下とする。また、固形分濃度は5〜30重量%の範囲であることが好ましい。このペーストを多孔質基材表面に塗布して塗膜を形成する。その後、基材の表面上に塗布された塗膜を、例えば10〜30℃、好ましくは15〜25℃で2〜6時間乾燥し、更にその後、340〜380℃で2〜6時間焼成して、多孔質基材の表面上に表面層を形成する。
【0052】
本方法において、表面層の表面層貫通孔は、各材料(導電性材料、撥水性樹脂及び繊維状物質)のストラクチャによって生じる。全固形分中の撥水性樹脂の割合を30重量%以下とすることにより、カーボンの隙間を埋めるバインダ量が減少するために表面層の構造が変わり、貫通孔の分布が変化するため、拡散層において前記総断面積Xに対する、最小径が0.1μm〜10μmである貫通孔の最小径の位置における断面積の総和Y1の割合を60%以上、好ましくは70%以上とすることができる。また、前記総断面積Xに対する、最小径が0.1μm〜1μmの範囲にある貫通孔の最小径の位置における断面積の総和Y2の割合を70%以上とすることができる。
【0053】
なお、ペーストは必要に応じて界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩等のアニオン系界面活性剤、アンモニウム塩、アルキルアミン塩等のカチオン系界面活性剤、アルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン系界面活性剤が挙げられる。ペースト中の界面活性剤の含有量は例えば導電性材料に対して2〜30重量%である。なお、界面活性剤は、ペーストにおける上記固形分には含まれないものとする。
【0054】
導電性材料、撥水性樹脂は上述したものと同様のものが挙げられる。繊維状物質は、炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、金属繊維等から選択される少なくとも1つが挙げられ、繊維状物質の繊維径は0.01〜1μmの範囲、繊維長は1〜100μmの範囲が好ましい。
【0055】
溶媒としては、撥水性樹脂及び界面活性剤を溶解し、導電性材料及び繊維状物質を良好に分散することができればよく特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒等の有機溶媒や水が取り扱い性等の点から好ましい。
【0056】
ペーストの塗布は、スプレー法、スクリーン印刷法、ロールコート法、ダイコート法等の塗工法により行うことができる。
【0057】
(2)多孔質基材上への表面層形成後、多数の亀裂を発生させて、貫通孔を形成する方法
亀裂は、加熱手段及び亀裂形成手段のうち少なくとも1つにより形成する。具体的には、導電性材料、撥水性樹脂、溶媒、必要に応じて界面活性剤を含むペーストを多孔質基材表面に塗布して塗膜を形成する。その後、基材の表面上に塗布された塗膜を、例えば10〜30℃、好ましくは15〜25℃で2〜6時間乾燥し、更にその後、340〜380℃で2〜6時間焼成して、多孔質基材の表面上に表面層を形成する。
【0058】
本方法において、表面層の表面層貫通孔は、オーブン等の加熱手段を使用した乾燥、焼成工程において塗膜が収縮する際に生じる亀裂によって生じる。亀裂は、ニードルパンチやレーザー加工等の亀裂形成手段により形成してもよい。上記ペーストにおいて、例えば、全固形分(導電性材料+撥水性樹脂)中の撥水性樹脂の割合は10〜50重量%の範囲とすればよい。また、固形分濃度は5〜30重量%の範囲であることが好ましい。上記ペーストにより形成した塗膜の乾燥、焼成工程等において特定の条件で塗膜が収縮することによる亀裂を生じさせることにより、拡散層において前記総断面積Xに対する、最小径が0.1μm〜10μmである貫通孔の最小径の位置における断面積の総和Y1の割合を60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上とすることができる。
【0059】
導電性材料、撥水性樹脂、溶媒及び界面活性剤は上述したものと同様のものが挙げられる。
【0060】
(3)多孔質基材上への表面層形成時に使用するペーストにおいて、造孔剤を添加し、造孔剤の熱分解や発泡等により貫通孔を形成する方法
具体的には、導電性材料、撥水性樹脂、造孔剤、溶媒、必要に応じて繊維状物質、必要に応じて界面活性剤を含むペーストを多孔質基材表面に塗布して塗膜を形成する。その後、基材の表面上に塗布された塗膜を、例えば10〜30℃、好ましくは15〜25℃で2〜6時間乾燥し、更にその後、340〜380℃で2〜6時間焼成して、多孔質基材の表面上に表面層を形成する。
【0061】
本方法において、表面層の表面層貫通孔は、乾燥、焼成工程における造孔剤の熱分解あるいは発泡等により生じる。上記ペーストにおいて、例えば、全固形分(導電性材料+撥水性樹脂+造孔剤+繊維状物質)中の撥水性樹脂の割合は10〜50重量%の範囲とすればよい。造孔剤の割合は10〜150重量%の範囲とすることが好ましく、50〜100重量%の範囲とすることがより好ましい。また、固形分濃度は5〜30重量%の範囲であることが好ましい。上記ペーストにより形成した塗膜の乾燥、焼成工程において造孔剤の使用量、粒径、加熱温度等によって熱分解や発泡等を制御することにより、拡散層において前記総断面積Xに対する、最小径が0.1μm〜10μmである貫通孔の最小径の位置における断面積の総和Y1の割合を60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上とすることができる。また、前記総断面積Xに対する、最小径が0.1μm〜1μmの範囲にある貫通孔の最小径の位置における断面積の総和Y2の割合を50%以上とすることができる。
【0062】
導電性材料、撥水性樹脂、繊維状物質、溶媒及び界面活性剤は上述したものと同様のものが挙げられる。
【0063】
造孔剤としては、加熱等により気泡を発生するものであればよく特に制限はないが、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、p,p−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)等の発泡剤、熱分解して気泡を発生するパラフィン、ポリ乳酸等の樹脂等が挙げられる。
【0064】
(4)多孔質基材上への表面層形成時に使用するペーストにおいて、繊維状物質を添加し、繊維状物質同士のストラクチャ構造により貫通孔を形成する方法
具体的には、撥水性樹脂、繊維状物質、溶媒、必要に応じて界面活性剤を含むペーストを多孔質基材表面に塗布して塗膜を形成する。その後、基材の表面上に塗布された塗膜を、例えば10〜30℃、好ましくは15〜25℃で2〜6時間乾燥し、更にその後、340〜380℃で2〜6時間焼成して、多孔質基材の表面上に表面層を形成する。
【0065】
本方法において、表面層の表面層貫通孔は、繊維状物質と繊維状物質との間に生じる隙間により生じる。上記ペーストにおいて、例えば、全固形分(撥水性樹脂+繊維状物質)中の繊維状物質の割合は50〜90重量%の範囲とすればよい。また、固形分濃度は5〜30重量%の範囲であることが好ましい。繊維状物質同士のストラクチャ構造を撥水性樹脂量により制御することにより、拡散層において前記総断面積Xに対する、最小径が0.1μm〜10μmである貫通孔の最小径の位置における断面積の総和Y1の割合を60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上とすることができる。また、前記総断面積Xに対する、最小径が0.1μm〜1μmの範囲にある貫通孔の最小径の位置における断面積の総和Y2の割合を70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上とすることができる。
【0066】
撥水性樹脂、繊維状物質、溶媒及び界面活性剤は上述したものと同様のものが挙げられる。
【0067】
<膜−電極接合体及び燃料電池の製造方法>
本実施形態に係る膜−電極接合体及び燃料電池は、例えば以下のようにして製造することができる。電解質膜の両面に、触媒として白金を担持したカーボン等を含むカソード側触媒層及びアノード側触媒層をスプレー法、転写法、浸漬法、スクリーン印刷法等により形成し、その後、各触媒層の表面上に上記拡散層を、熱プレス等により積層して、膜−電極接合体を得ることができる。更に、この膜−電極接合体を、1組のセパレータにより挟持して、燃料電池(単セル)とすることができる。
【0068】
本実施形態に係る燃料電池は、1つの燃料電池(単セル)を複数個集合させて、直列に接続することにより、必要とする電流、電圧を得ることができる。また、1つの燃料電池(単セル)を複数個集合させて、並列に接続してもよい。
【0069】
本実施形態に係る燃料電池は、例えば、携帯電話、携帯用パソコン等のモバイル機器用小型電源、自動車用電源、家庭用電源等として用いることができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
〔実施例1〕
(拡散層の製造(1))
(基材の製造)
60重量部のカーボンブラック(電気化学工業製、デンカブラック)と、ノニオン系界面活性剤(カーボンブラックに対して10重量%)と、40重量部(PTFEとして)のフッ素樹脂(PTFE、体積平均粒径0.2〜0.3μm、)の分散物と、600重量部の水とを混合して液状混合物を得た。この液状混合物の中に、カーボンペーパー(400mm×400mm、厚み200μm)を、ディッピングして、カーボンペーパーに液状混合物を含浸させた。液状混合物を含浸した後のカーボンペーパーを、常温25℃で6時間乾燥することにより、基材を得た。基材の貫通孔の平均孔径(最小径)は20μmであった。
【0072】
(表面層(1)の製造)
48重量部のカーボンブラック(電気化学工業製、デンカブラック)と、ノニオン系界面活性剤(カーボンブラックに対して10重量%)と、32重量部の炭素繊維(繊維径:0.15μm、繊維長:10μm〜20μm)と、20重量部(PTFEとして)のフッ素樹脂(PTFE、体積平均粒径0.2〜0.3μm、)の分散物と、600重量部の水とを混合することより、混合ペースト1を調製した。この混合ペースト1を、上記基材の一方の表面上に、塗工機(ダイコータ)により塗布した。その後、基材の表面上に塗布された塗膜を、常温25℃で6時間乾燥し、更にその後、350℃で5時間焼成して、基材の表面上に表面層(1)を形成した。表面層(1)の表面層貫通孔は、各材料(カーボンブラック、炭素繊維及びPTFE)のストラクチャによって生じたものである。表面層(1)の厚みは、50μmであった。表面層(1)の厚みは、膜厚測定装置(ミツトヨ製、ダイヤルゲージ)を使用して測定した。
【0073】
得られた拡散層における各貫通孔の最小径と、各貫通孔の最小径の位置の断面積の総和(総断面積X)との関係を測定した。測定結果は図4に示した。この測定は、細孔分布測定装置(パームポロメータ、PMI社製)を用い、付属の説明書の手順に従って80℃の測定条件で行った。この方法においては、表面層と基材とを積層した状態で、拡散層における各貫通孔の最小径の測定が行われる。表面層の表面層貫通孔の孔径よりも、基材の基材貫通孔の孔径の方が総じて大きい為、貫通孔の最小径は表面層貫通孔の最小径により決まることになる。
【0074】
〔実施例2〕
〈拡散層の製造(2))
(基材の製造)
基材を上記実施例1と同様にして製造した。その基材の一方の表面に以下に示す表面層(2)を形成した。
【0075】
(表面層(2)の製造)
60重量部のカーボンブラック(電気化学工業製、デンカブラック)と、ノニオン系界面活性剤(カーボンブラックに対して10重量%)と、40重量部(PTFEとして)のフッ素樹脂(PTFE、体積平均粒径0.2〜0.3μm、)の分散物と、600重量部の水とを混合することより、混合ペースト2を調製した。この混合ペースト2を、上記基材の一方の表面上に、塗工機(ダイコータ)により塗布した。その後、基材の表面上に塗布された塗膜を、常温25℃で6時間乾燥し、更にその後、350℃で5時間焼成して、基材の表面上に表面層(2)を形成した。表面層(2)の表面層貫通孔は、乾燥、焼成工程において塗膜が収縮する際に生じる亀裂によって生じたものである。表面層(2)の厚みは、50μmであった。
【0076】
得られた拡散層における各貫通孔の最小径と、各貫通孔の最小径の位置の断面積の総和(総断面積X)との関係を、上記実施例1と同様にして測定した。測定結果は図4に示した。
【0077】
〔実施例3〕
(拡散層の製造(3))
(基材の製造)
基材を上記実施例1と同様にして製造した。その基材の一方の表面に以下に示す表面層(3)を形成した。
【0078】
(表面層(3)の製造)
36重量部のカーボンブラック(電気化学工業製、デンカブラック)と、ノニオン系界面活性剤(カーボンブラックに対して10重量%)と、24重量部の炭素繊維(繊維径:0.15μm、繊維長:10μm〜20μm)と、40重量部(PTFEとして)のフッ素樹脂(PTFE、体積平均粒径0.2〜0.3μm、)の分散物と、造孔剤として50重量部の発泡剤(アゾジカルボンアミド、ADCA)と、600重量部の水とを混合することより、混合ペースト3を調製した。この混合ペースト3を、上記基材の一方の表面上に、塗工機(ダイコータ)により塗布した。その後、基材の表面上に塗布された塗膜を、常温25℃で6時間乾燥し、更にその後、350℃で5時間焼成して、基材の表面上に表面層(3)を形成した。表面層(3)の表面層貫通孔は、発泡剤のADCAが焼成時において熱分解することにより生じたものである。表面層(3)の厚みは、50μmであった。
【0079】
得られた拡散層における各貫通孔の最小径と、各貫通孔の最小径の位置の断面積の総和(総断面積X)との関係を、上記実施例1と同様にして測定した。測定結果は図4に示した。
【0080】
〔実施例4〕
(拡散層の製造(4))
(基材の製造)
基材を上記実施例1と同様にして製造した。その基材の一方の表面に以下に示す表面層(4)を形成した。
【0081】
(表面層(4)の製造)
80重量部の炭素繊維(繊維径:0.15μm、繊維長:10μm〜20μm)と、ノニオン系界面活性剤(炭素繊維に対して10重量%)と、20重量部(PTFEとして)のフッ素樹脂(PTFE、体積平均粒径0.2〜0.3μm、)の分散物と、600重量部の水とを混合することより、混合ペースト4を調製した。この混合ペースト4を、上記基材の一方の表面上に、塗工機(ダイコータ)により塗布した。その後、基材の表面上に塗布された塗膜を、常温25℃で6時間乾燥し、更にその後、350℃で5時間焼成して、基材の表面上に表面層(4)を形成した。表面層(4)の表面層貫通孔は、炭素繊維と炭素繊維との間に生じる隙間によるものである。表面層(4)の厚みは、50μmであった。
【0082】
得られた拡散層における各貫通孔の最小径と、各貫通孔の最小径の位置の断面積の総和(総断面積X)との関係を、上記実施例1と同様にして測定した。測定結果は図4に示した。
【0083】
〔比較例1〕
(拡散層の製造(5))
(基材の製造)
基材を上記実施例1と同様にして製造した。その基材の一方の表面に以下に示す表面層(5)を形成した。
【0084】
(表面層(5)の製造)
36重量部のカーボンブラック(電気化学工業製、デンカブラック)と、ノニオン系界面活性剤(カーボンブラックに対して10重量%)と、24重量部の炭素繊維(繊維径:0.15μm、繊維長:10μm〜20μm)と、40重量部(PTFEとして)のフッ素樹脂(PTFE、体積平均粒径0.2〜0.3μm、)の分散物と、600重量部の水とを混合することより、混合ペースト5を調製した。この混合ペースト5を、上記基材の一方の表面上に、塗工機(ダイコータ)により塗布した。その後、基材の表面上に塗布された塗膜を、常温25℃で6時間乾燥し、更にその後、350℃で5時間焼成して、基材の表面上に表面層(5)を形成した。表面層(5)の表面層貫通孔は、各材料(カーボンブラック、炭素繊維及びPTFE)のストラクチャによって生じたものである。表面層(5)の厚みは、50μmであった。
【0085】
得られた拡散層における各貫通孔の最小径と、各貫通孔の最小径の位置の断面積の総和(総断面積X)との関係を、上記実施例1と同様にして測定した。測定結果は図4に示した。
【0086】
〔比較例2〕
(拡散層の製造(6))
48重量部のカーボンブラック(電気化学工業製、デンカブラック)と、ノニオン系界面活性剤(カーボンブラックに対して10重量%)と、32重量部の炭素繊維(繊維径:0.15μm、繊維長:10μm〜20μm)と、20重量部(PTFEとして)のフッ素樹脂(PTFE、体積平均粒径0.2〜0.3μm、)の分散物と、600重量部の水とを混合することより、混合ペースト6を調製した。この混合ペースト6に、カーボンペーパー(400mm×400mm、厚み200μm)をディッピングして、カーボンペーパーに混合ペースト6を含浸させ、撥水処理を行った。その後、基材を、常温25℃で6時間乾燥し、更にその後、350℃で5時間焼成して、拡散層を得た。
【0087】
得られた拡散層における各貫通孔の最小径と、各貫通孔の最小径の位置の断面積の総和(総断面積X)との関係を、上記実施例1と同様にして測定した。測定結果は図4に示した。
【0088】
図4は、実施例1〜実施例4および比較例1、比較例2における拡散層の貫通孔の最小径と、各貫通孔の最小径の位置における断面積の総和(総断面積X)との関係を示すグラフである。縦軸(線形軸)に示される総断面積の累計(%)とは、累積した総断面積の総断面積Xに対する割合(%)を示す。これに対して、横軸(対数軸)は、貫通孔の最小径(μm)を示す。
【0089】
図4において、横軸の最小径が0.1μmにおける実施例1の総断面積の累計(%)は、約75%となっている。これは、実施例1の拡散層の有する貫通孔の内、最小径が0.1μm以上の貫通孔の最小径の位置における断面積の総和が、総断面積Xに対して約75%を占めることを示す。また、総断面積Xに対する最小径が10μm以上の貫通孔の最小径の位置における断面積の総和Wの割合はほぼ0%であった。
【0090】
図4において、横軸の最小径が0.1μmにおける実施例2の総断面積の累計(%)は、約93%となっている。これは、実施例2の拡散層の有する貫通孔の内、最小径が0.1μm以上の貫通孔の最小径の位置における断面積の総和が、総断面積Xに対して約93%を占めることを示す。また、総断面積Xに対する最小径が10μm以上の貫通孔の最小径の位置における断面積の総和Wの割合は約38%であった。
【0091】
図4において、横軸の最小径が0.1μmにおける実施例3の総断面積の累計(%)は、約93%となっている。これは、実施例3の拡散層の有する貫通孔の内、最小径が0.1μm以上の貫通孔の最小径の位置における断面積の総和が、総断面積Xに対して約93%を占めることを示す。また、総断面積Xに対する最小径が10μm以上の貫通孔の最小径の位置における断面積の総和Wの割合は約20%であった。
【0092】
図4において、横軸の最小径が0.1μmにおける実施例4の総断面積の累計(%)は、約100%となっている。これは、実施例4の拡散層の有する貫通孔の内、最小径が0.1μm以上の貫通孔の最小径の位置における断面積の総和が、総断面積Xに対して約100%を占めることを示す。また、総断面積Xに対する最小径が10μm以上の貫通孔の最小径の位置における断面積の総和Wの割合はほぼ0%であった。
【0093】
図4において、横軸の最小径が0.1μmにおける比較例1の総断面積の累計(%)は、約55%となっている。これは、比較例1の拡散層の有する貫通孔の内、最小径が0.1μm以上の貫通孔の最小径の位置における断面積の総和が、総断面積Xに対して約55%を占めることを示す。また、総断面積Xに対する最小径が10μm以上の貫通孔の最小径の位置における断面積の総和Wの割合はほぼ0%であった。
【0094】
図4において、比較例2の貫通孔は、0.6〜70μmの範囲に貫通孔が存在し、横軸の最小径が0.1μmにおける総断面積の累計(%)は、約97%となっている。これは、比較例2の拡散層の有する貫通孔の内、最小径が0.1μm以上の貫通孔の最小径の位置における断面積の総和が、総断面積Xに対して約97%を占めることを示す。しかし、総断面積Xに対する最小径が10μm以上の貫通孔の最小径の位置における断面積の総和Wの割合は約88%であった。なお、比較例2の拡散層の有する貫通孔の平均孔径(最小径)は20μmであった。
【0095】
なお、実施例1〜実施例4および比較例1,2において、貫通孔の最小径が0.1μm以上の場合の総断面積の累計(%)の結果を図5に示す。また図5において、最小径が0.1μm〜1μmの範囲にある貫通孔の最小径の位置における断面積の総和(Y2)を併せて示す。
【0096】
図5において示されるように、実施例1は、最小径が0.1μm〜1μmの範囲の貫通孔の総断面積の累計と、最小径が0.1μm以上の貫通孔の総断面積の累計とが略等しいことが解る。なお、実施例4においても、同様のことが言える。また、実施例2と、実施例3と、実施例4との間において、最小径が0.1μm以上の貫通孔の総断面積の累計の値は、約93%〜約100%の間であり、略等しいと見ることが出来る。しかし、最小径が0.1〜1μmの貫通孔の総断面積の累計においては、それぞれ大きく値が異なる。この場合、実施例2においては、総断面積の累計が約4%であり、最小径が0.1μm以上の貫通孔の総断面積の累計の値(93%)と大きな差がある。また実施例3においては、最小径が0.1〜1μmの貫通孔の総断面積の累計の場合の約半分の値である56%である。実施例4においては、上述した通り、略等しい。
【0097】
〔膜−電極接合体および燃料電池の製造〕
電解質膜(パーフルオロスルホン酸系固体高分子電解質膜、ナフィオン、登録商標、デュポン社製)の両面に、触媒として白金を担持したカーボンを含む触媒層を形成し、その後、触媒層の表面上に実施例1で製造した拡散層を、熱プレスすることにより積層して、膜−電極接合体を得た。更に、この膜−電極接合体を、カーボンを圧縮成形して製造した1組のセパレータで挟持して、燃料電池(単セル)とした。
【0098】
実施例2〜実施例4および比較例1,2において製造した拡散層を用いて、同様にして膜−電極接合体および燃料電池を製造した。
【0099】
〔出力電圧の測定〕
上記実施例1に係る燃料電池の出力(出力電圧)を測定した。測定条件としては、電流密度を1.0(A/cm)に設定し、燃料電池の温度を60℃に保ち、燃料電池へ供給する水素ガスの流量を必要流量の1.2倍、空気の流量を必要流量の1.5倍とし、水素ガスのガス露点を45℃、空気のガス露点を55℃に設定した。結果は、図6に示した。また実施例2〜実施例4および比較例1,2に係る燃料電池においても同様にして、出力電圧を測定した。結果は、図6に示した。
【0100】
図6において示されるように、0.1μm以上の断面積の累計(%)の総断面積に対する割合(%)が大きい程、燃料電池の出力電圧が大きくなることが確かめられた。
【0101】
〔低温サイクル試験〕
上記実施例1に係る燃料電池を、−20℃の環境下にある燃料電池を起動して発電を行い、燃料電池の温度が60℃に達した後、発電を停止し、燃料電池が−20℃になるまで放置する工程を、合計20回繰り返し行った(低温サイクル試験)。その後、燃料電池の出力(出力電圧)を、上記出力電圧の測定条件と同じ条件で、測定した。低温サイクル試験を行った後、燃料電池の出力が、試験を行う前と比較してどの程度、低下したかを求めた。結果は図7に示した。また同様にして、実施例2〜実施例4および比較例1に係る燃料電池においても、低温サイクル試験を行い、どの程度、出力が低下するかを調べた。結果は図7に示した。
【0102】
図7において示されるように、0.1μm以上の断面積の累計(%)の総断面積に対する割合(%)が大きい程、燃料電池の出力電圧の低下(性能の低下)が小さくなることが確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】膜−電極接合体を備える燃料電池の概略構成図を示す。
【図2】カソード電極の一部の断面を表し、表面層貫通孔と基材貫通孔とを示す説明図である。
【図3】表面層の貫通孔の最小径の位置を表す説明図を示す。
【図4】各実施例等における拡散層の貫通孔の最小径と、最小径の位置における断面積の総和(総断面積)との関係を示すグラフである。
【図5】各実施例等の拡散層の貫通孔における断面積の累計(%)を表すグラフである。
【図6】各実施例等の燃料電池の出力電圧と、断面積の累計(%)との関係を表すグラフである。
【図7】各実施例等の燃料電池の出力低下と、断面積の累計(%)との関係を表すグラフである。
【符号の説明】
【0104】
1 燃料電池、10 膜−電極接合体、11 電解質膜、12A カソード電極、12B アノード電極、13A カソード側触媒層、13B アノード側触媒層、14A カソード側拡散層、14B アノード側拡散層、15A カソード側表面層、15B アノード側表面層、16A カソード側基材、16B アノード側基材、20A カソード側セパレータ、20B アノード側セパレータ、21A 酸化ガス流路、21B 燃料ガス流路、30 貫通孔、31 表面層貫通孔、32 基材貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径が不均一な貫通孔を複数有する燃料電池用拡散層であって、
各貫通孔の最小径の位置における断面積の総和を総断面積X、最小径が0.1μm〜10μmである貫通孔の最小径の位置における断面積の総和を総断面積Y1としたとき、前記Xに対する前記Y1の割合が60%以上であることを特徴とする燃料電池用拡散層。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池用拡散層であって、
最小径が0.1μm〜1μmである貫通孔の最小径の位置における断面積の総和を総断面積Y2としたとき、前記Xに対する前記Y2の割合が70%以上であることを特徴とする燃料電池用拡散層。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池用拡散層であって、
前記燃料電池用拡散層は多孔質基材及び表面層を備え、
前記多孔質基材が有する基材貫通孔は、前記表面層が有する表面層貫通孔と比較して相対的に大きな最小径を有することを特徴とする燃料電池用拡散層。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用拡散層の製造方法であって、
導電性材料、撥水性樹脂及び溶媒を含むペーストであって、全固形分中の前記撥水性樹脂の割合が30重量%以下であるペーストを多孔質基材表面に塗布した後、乾燥させて表面層を形成する工程を含むことを特徴とする燃料電池用拡散層の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用拡散層の製造方法であって、
導電性材料、撥水性樹脂及び溶媒を含むペーストを前記多孔質基材表面に塗布して塗膜を形成した後、加熱手段及び亀裂形成手段のうち少なくとも1つにより前記塗膜に亀裂を発生させて前記表面層を形成する工程を含むことを特徴とする燃料電池用拡散層の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用拡散層の製造方法であって、
導電性材料、撥水性樹脂、造孔剤及び溶媒を含むペーストを前記多孔質基材表面に塗布した後、前記造孔剤により気泡を発生させて前記表面層を形成する工程を含むことを特徴とする燃料電池用拡散層の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用拡散層の製造方法であって、
撥水性樹脂、繊維状物質及び溶媒を含むペーストを前記多孔質基材表面に塗布した後、乾燥させて前記表面層を形成する工程を含むことを特徴とする燃料電池用拡散層の製造方法。
【請求項8】
電解質膜と、前記電解質膜の両面に形成された触媒層と、前記触媒層の表面上に形成された拡散層とを有する燃料電池用膜−電極接合体であって、
前記拡散層が請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用拡散層であることを特徴とする燃料電池用膜−電極接合体。
【請求項9】
電解質膜と、前記電解質膜の両面に形成された触媒層と、前記触媒層の表面上に形成された拡散層とを有する燃料電池用膜−電極接合体を備える燃料電池であって、
前記拡散層が請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用拡散層であることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−311269(P2007−311269A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141037(P2006−141037)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100780)アイシン化工株式会社 (171)
【Fターム(参考)】