説明

燃料電池車両の燃費表示装置および燃料電池車両の燃費表示方法

【課題】燃料電池車両の燃費に係る情報を適切に乗員に報知する。
【解決手段】制御装置22は、相対的に長い所定の第1時間区間での燃料電池13の水素消費量(区間水素消費量)と燃料電池車両10の走行に寄与したエネルギー(区間走行エネルギー)とに基づく区間車両効率を算出し、相対的に短い所定の第2時間区間で燃料電池車両10の走行に寄与したエネルギー(瞬時走行エネルギー)を区間車両効率によって除算することで第2時間区間での燃料電池13の水素消費量(瞬時水素消費量)を算出する。制御装置22は、第2時間区間における走行距離(瞬時走行距離)を瞬時水素消費量により除算して瞬時燃費を算出し、理想的な燃費である理想燃費に対する瞬時燃費の比率である瞬時燃費割合の大きさに応じた所定画像を、燃料電池車両10の走行時に表示装置23の表示画面に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は燃料電池車両の燃費表示装置および燃料電池車両の燃費表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両の車速が所定のしきい値を超えた状態での走行距離および燃料消費量に応じた燃料消費状況を表示することで、車両走行時の燃費の情報を乗員に報知する車両用燃料計が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−45180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車両の動力源としてのモータを備え、このモータの電源をなす燃料電池システムとして、反応ガスが供給されて電気化学反応により発電する燃料電池と、蓄電装置とを備える燃料電池車両では、車両の走行状態や燃料電池の発電状態や蓄電装置の蓄電状態等に応じて、モータと蓄電装置との間で電気エネルギーの授受が行われると共に、燃料電池の発電電力はモータまたは蓄電装置に供給されることになる。
このため、上記従来技術に係る車両用燃料計を燃料電池車両に搭載した場合に、単に、車両の車速が所定のしきい値を超えた状態での走行距離および燃料消費量に応じた燃料消費状況を表示するだけでは、蓄電装置の充放電を伴う燃料電池車両の燃費を適切に乗員に報知することが困難となる虞がある。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、燃料電池車両の燃費に係る情報を適切に乗員に報知することが可能な燃料電池車両の燃費表示装置および燃料電池車両の燃費表示方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示装置は、車両の動力源としてのモータ(例えば、実施の形態でのモータ16)と、該モータの作動状態を制御するモータ制御手段(例えば、実施の形態でのPDU15)と、前記モータの電源をなす燃料電池システムとして、反応ガス供給手段(例えば、実施の形態での空気供給装置18、水素タンク19aおよび水素供給弁19b)により反応ガスが供給されて電気化学反応により発電する燃料電池(例えば、実施の形態での燃料電池13)と、該燃料電池の発電電力および前記モータの回生電力により充電される蓄電装置(例えば、実施の形態での蓄電装置11)とを備える燃料電池車両の燃費表示装置であって、所定の第1時間区間での消費燃料量(例えば、実施の形態での区間水素消費量)に対して発生した走行エネルギー(例えば、実施の形態での区間走行エネルギー)の割合である第1区間車両効率(例えば、実施の形態での区間車両効率)を取得する第1区間車両効率取得手段(例えば、実施の形態での区間車両効率算出部55)と、前記第1時間区間よりも短い所定の第2時間区間において発生した走行エネルギーである第2区間走行エネルギー(例えば、実施の形態での瞬時走行エネルギー)を取得する第2区間走行エネルギー取得手段(例えば、実施の形態での瞬時走行エネルギー算出部52)と、少なくとも前記第1区間車両効率および前記第2区間走行エネルギーに基づいて前記第2時間区間での燃費である第2区間燃費(例えば、実施の形態での瞬時燃費)を取得する第2区間燃費取得手段(例えば、実施の形態での瞬時燃費算出部57)とを備えることを特徴としている。
【0006】
上記の燃料電池車両の燃費表示装置によれば、燃料電池での消費燃料量に対して発生した走行エネルギーの割合である第1区間車両効率、つまり相対的に長い時間区間である第1時間区間において燃料電池の発電で消費された燃料から発生した発電エネルギー(例えば、燃料電池からモータおよび蓄電装置に供給される電気エネルギー等)に対する実際に車両の走行に寄与した走行エネルギーの割合である車両効率を取得することにより、例えば相対的に短い時間における燃料電池の出力に対する蓄電装置による出力補助の有無や燃料電池およびモータからの蓄電装置に対する充電の有無等に拘わらずに、適切な燃費を表示することができる。
【0007】
さらに、請求項2に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示装置では、前記第1区間車両効率取得手段は、前記燃料電池システムの外部に排出される排出燃料量(例えば、実施の形態でのパージ量)に基づいて前記消費燃料量を算出することを特徴としている。
【0008】
上記の燃料電池車両の燃費表示装置によれば、燃料電池システムにおいて消費された燃料のうち、燃料電池での発電に寄与せずに外部に排出された排出燃料量を把握することにより、各種のエネルギーの発生に寄与した消費燃料量を精度良く算出することができる。
【0009】
さらに、請求項3に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示装置は、前記第2時間区間での前記燃料電池車両の状態に応じた所定の理想的な燃費である理想燃費を取得する理想燃費取得手段(例えば、実施の形態でのクルーズ燃費算出部58)と、前記第2区間燃費取得手段により取得された前記第2区間燃費と、前記理想燃費取得手段により取得された前記理想燃費との差異に係る状態量である第2区間燃費差異(例えば、実施の形態での瞬時燃費割合)を算出する第2区間燃費差異算出手段(例えば、実施の形態での瞬時燃費割合算出部59)と、前記第2区間燃費差異を表示する表示手段(例えば、実施の形態での表示装置23)とを備えることを特徴としている。
【0010】
上記の燃料電池車両の燃費表示装置によれば、第2区間燃費と理想燃費との差異(例えば、第2区間燃費と理想燃費と差分や、理想燃費に対する第2区間燃費の比率等)、つまり運転者の運転操作に応じた燃費の理想的な燃費からのずれの大きさを表示することにより、運転者に理想的な燃費に対する追従動作の実行を促すことができ、車両の燃費を向上させることができる。
【0011】
さらに、請求項4に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示装置は、少なくとも前記第1時間区間での前記消費燃料量および走行距離(例えば、実施の形態での区間走行距離)に基づいて前記第1時間区間での燃費である第1区間燃費(例えば、実施の形態での区間燃費)を取得する第1区間燃費取得手段(例えば、実施の形態での区間燃費算出部61)と、前記第1時間区間での所定の標準的な燃費である基準燃費を取得する基準燃費取得手段(例えば、実施の形態での基準燃費記憶部62)と、前記第1区間燃費取得手段により取得された前記第1区間燃費と、前記基準燃費取得手段により取得された前記基準燃費との差異に係る状態量である第1区間燃費差異(例えば、実施の形態での区間燃費割合)を算出する第1区間燃費差異算出手段(例えば、実施の形態での区間燃費割合算出部63)とを備え、前記表示手段は、前記燃料電池車両の走行停止状態において前記第1区間燃費差異を表示することを特徴としている。
【0012】
上記の燃料電池車両の燃費表示装置によれば、車両の走行停止状態においては、相対的に長い時間区間である第1時間区間での第1区間燃費と基準燃費との差異(例えば、第1区間燃費と理想燃費と差分や、基準燃費に対する第1区間燃費の比率等)、つまり運転者の運転操作の履歴に応じた燃費の標準的な燃費からのずれの大きさを表示することにより、運転者に運転操作の履歴の良否を的確に認識させることができる。
【0013】
さらに、請求項5に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示装置では、前記表示手段は、前記差異に応じた大きさを有する画像(例えば、実施の形態での球形画像Pa,Pb,Pc)を表示することを特徴としている。
【0014】
上記の燃料電池車両の燃費表示装置によれば、車両の走行状態においては第2区間燃費と理想燃費との差異を、また、車両の走行停止状態においては第1区間燃費と基準燃費との差異を、画像の大きさによって視覚的に表示することにより、運転者の運転操作に応じた燃費の理想的な燃費および標準的な燃費からのずれの大きさを運転者に容易に認識させることができる。
【0015】
また、請求項6に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示方法では、車両の電源をなす燃料電池システムとして、反応ガス供給手段(例えば、実施の形態での空気供給装置18、水素タンク19aおよび水素供給弁19b)により反応ガスが供給されて電気化学反応により発電する燃料電池(例えば、実施の形態での燃料電池13)と、蓄電装置(例えば、実施の形態での蓄電装置11)とを備える燃料電池車両の燃費表示方法であって、所定の第1時間区間での消費燃料量(例えば、実施の形態での区間水素消費量)に対して発生した走行エネルギー(例えば、実施の形態での区間走行エネルギー)の割合である第1区間車両効率(例えば、実施の形態での区間車両効率)を取得する第1区間車両効率取得ステップ(例えば、実施の形態でのステップS06)と、前記第1区間車両効率に基づいて燃費(例えば、実施の形態での瞬時燃費)を取得する燃費取得ステップ(例えば、実施の形態でのステップS08)とを含むことを特徴としている。
【0016】
上記の燃料電池車両の燃費表示方法によれば、燃料電池での消費燃料量に対して発生した走行エネルギーの割合である第1区間車両効率、つまり燃料電池で消費された燃料から発生した各種のエネルギー(例えば、燃料電池からモータおよび蓄電装置に供給される電気エネルギー等)のうち、実際に車両の走行に寄与した走行エネルギーに基づく車両効率を取得することにより、例えば燃料電池の出力に対する蓄電装置による出力補助の有無や、燃料電池およびモータからの蓄電装置に対する充電の有無等に拘わらずに、適切な燃費を表示することができる。
【0017】
さらに、請求項7に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示方法は、車両の動力源としてのモータ(例えば、実施の形態でのモータ16)と、該モータの作動状態を制御するモータ制御手段(例えば、実施の形態でのPDU15)と、前記モータの電源をなす燃料電池システムとして、前記燃料電池と、該燃料電池の発電電力および前記モータの回生電力により充電される前記蓄電装置とを備える燃料電池車両の燃費表示方法であって、前記第1時間区間よりも短い所定の第2時間区間において発生した走行エネルギーである第2区間走行エネルギー(例えば、実施の形態での瞬時走行エネルギー)を取得する第2区間走行エネルギー取得ステップ(例えば、実施の形態でのステップS02)と、少なくとも前記第1区間車両効率および前記第2区間走行エネルギーに基づいて前記第2時間区間での燃費である第2区間燃費(例えば、実施の形態での瞬時燃費)を取得する第2区間燃費取得ステップ(例えば、実施の形態でのステップS08)とを備えることを特徴としている。
【0018】
上記の燃料電池車両の燃費表示方法によれば、第1区間車両効率および第2区間走行エネルギーに基づいて、相対的に短い時間区間である第2時間区間での第2区間燃費を取得することにより、運転者による各種の運転操作毎に対応した、いわば瞬間的な燃費を表示することができ、各運転操作毎の良否を運転者に容易に認識させることができる。
【0019】
さらに、請求項8に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示方法では、前記第1区間車両効率取得ステップは、前記燃料電池システムの外部に排出される排出燃料量(例えば、実施の形態でのパージ量)に基づいて前記消費燃料量を算出することを特徴としている。
【0020】
上記の燃料電池車両の燃費表示方法によれば、燃料電池システムにおいて消費された燃料のうち、燃料電池での発電に寄与せずに外部に排出された排出燃料量を把握することにより、各種のエネルギーの発生に寄与した消費燃料量を精度良く算出することができる。
【0021】
さらに、請求項9に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示方法は、前記第2時間区間での前記燃料電池車両の状態に応じた理想的な燃費である理想燃費を取得する理想燃費取得ステップ(例えば、実施の形態でのステップS09)と、前記第2区間燃費取得ステップにより取得された前記第2区間燃費と、前記理想燃費取得ステップにより取得された前記理想燃費との差異に係る状態量である第2区間燃費差異(例えば、実施の形態での瞬時燃費割合)を算出する第2区間燃費差異算出ステップ(例えば、実施の形態でのステップS10)と、前記第2区間燃費差異を表示する表示ステップ(例えば、実施の形態でのステップS17)とを含むことを特徴としている。
【0022】
上記の燃料電池車両の燃費表示方法によれば、第2区間燃費と理想燃費との差異(例えば、第2区間燃費と理想燃費と差分や、理想燃費に対する第2区間燃費の比率等)、つまり運転者の運転操作に応じた燃費の理想的な燃費からのずれの大きさを表示することにより、運転者に理想的な燃費に対する追従動作の実行を促すことができ、車両の燃費を向上させることができる。
【0023】
さらに、請求10に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示方法は、少なくとも前記第1時間区間での前記消費燃料量および走行距離(例えば、実施の形態での区間走行距離)に基づいて前記第1時間区間での燃費である第1区間燃費(例えば、実施の形態での区間燃費)を取得する第1区間燃費取得ステップ(例えば、実施の形態でのステップS11)と、前記第1時間区間での所定の標準的な燃費である基準燃費を取得する基準燃費取得ステップ(例えば、実施の形態でのステップS12)と、前記第1区間燃費取得ステップにより取得された前記第1区間燃費と、前記基準燃費取得ステップにより取得された前記基準燃費との差異に係る状態量である第1区間燃費差異(例えば、実施の形態での区間燃費割合)を算出する第1区間燃費差異算出ステップ(例えば、実施の形態でのステップS13)とを備え、前記表示ステップは、前記燃料電池車両の走行停止状態において前記第1区間燃費差異を表示することを特徴としている。
【0024】
上記の燃料電池車両の燃費表示方法によれば、車両の走行停止状態においては、相対的に長い時間区間である第1時間区間での第1区間燃費と基準燃費との差異(例えば、第1区間燃費と理想燃費と差分や、基準燃費に対する第1区間燃費の比率等)、つまり運転者の運転操作の履歴に応じた燃費の標準的な燃費からのずれの大きさを表示することにより、運転者に運転操作の履歴の良否を的確に認識させることができる。
【0025】
さらに、請求項11に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示方法では、前記表示ステップは、前記差異に応じた大きさを有する画像(例えば、実施の形態での球形画像Pa,Pb,Pc)を表示することを特徴としている。
【0026】
上記の燃料電池車両の燃費表示方法によれば、車両の走行状態においては第2区間燃費と理想燃費との差異を、また、車両の走行停止状態においては第1区間燃費と基準燃費との差異を、画像の大きさによって視覚的に表示することにより、運転者の運転操作に応じた燃費の理想的な燃費および標準的な燃費からのずれを運転者に容易に認識させることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の請求項1に記載の燃料電池車両の燃費表示装置によれば、燃料電池の出力に対する蓄電装置による出力補助の有無や、燃料電池およびモータからの蓄電装置に対する充電の有無等に拘わらずに、実際に車両の走行に寄与した走行エネルギーに基づく適切な燃費を表示することができる。
【0028】
さらに、請求項2に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示装置によれば、燃料電池システムにおいて消費された燃料のうち、各種のエネルギーの発生に寄与した消費燃料量を精度良く算出することができる。
さらに、請求項3に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示装置によれば、運転者の運転操作に応じた燃費の理想的な燃費からのずれを表示することにより、運転者に理想的な燃費に対する追従動作の実行を促すことができ、車両の燃費を向上させることができる。
【0029】
さらに、請求項4に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示装置によれば、車両の走行停止状態においては、運転者の運転操作の履歴に応じた燃費の標準的な燃費からのずれを表示することにより、運転者に運転操作の履歴の良否を的確に認識させることができる。
さらに、請求項5に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示装置によれば、運転者の運転操作に応じた燃費の理想的な燃費および標準的な燃費からのずれを運転者に容易に視覚的に認識させることができる。
【0030】
また、請求項6に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示方法によれば、燃料電池の出力に対する蓄電装置による出力補助の有無や、燃料電池およびモータからの蓄電装置に対する充電の有無等に拘わらずに、実際に車両の走行に寄与した走行エネルギーに基づく適切な燃費を表示することができる。
【0031】
さらに、請求項7に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示方法によれば、第1区間車両効率および第2区間走行エネルギーに基づいて、相対的に短い時間区間である第2時間区間での第2区間燃費を取得することにより、運転者による各種の運転操作毎に対応した、いわば瞬間的な燃費を表示することができ、各運転操作毎の良否を運転者に容易に認識させることができる。
【0032】
さらに、請求項8に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示方法によれば、燃料電池システムにおいて消費された燃料のうち、各種のエネルギーの発生に寄与した消費燃料量を精度良く算出することができる。
さらに、請求項9に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示方法によれば、運転者の運転操作に応じた燃費の理想的な燃費からのずれの大きさを表示することにより、運転者に理想的な燃費に対する追従動作の実行を促すことができ、車両の燃費を向上させることができる。
【0033】
さらに、請求項10に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示方法によれば、車両の走行停止状態においては、運転者の運転操作の履歴に応じた燃費の標準的な燃費からのずれの大きさを表示することにより、運転者に運転操作の良否を的確に認識させることができる。
さらに、請求項11に記載の本発明の燃料電池車両の燃費表示方法によれば、運転者の運転操作に応じた燃費の理想的な燃費および標準的な燃費からのずれの大きさを運転者に容易に視認させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態に係る燃料電池車両の燃費表示装置および燃料電池車両の燃費表示方法について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による燃費表示装置1を搭載する燃料電池車両10は、例えば図1に示すように、蓄電装置11と、第1DC−DCコンバータ12と、燃料電池13と、第2DC−DCコンバータ14と、PDU(パワードライブユニット)15と、モータ16と、出力制御器17と、空気供給装置(A/P)18と、水素タンク19aおよび水素供給弁19bと、背圧弁20と、パージ弁21と、制御装置22と、表示装置23と、システム電圧センサ31と、第1電圧センサ32と、第1電流センサ33と、第2電圧センサ34と、第2電流センサ35と、パージ流量センサ36と、モータ回転数センサ37と、モータトルクセンサ38と、車輪速センサ39と、アクセル開度センサ40とを備えて構成されている。
【0035】
蓄電装置11は、例えば電気二重層コンデンサや電解コンデンサ等からなるキャパシタあるいはバッテリ等であって、双方向の第1DC−DCコンバータ12を介して第2DC−DCコンバータ14およびPDU15に対して並列に接続されている。
【0036】
第1DC−DCコンバータ12は、例えば、蓄電装置11の端子電圧VEに対する昇圧動作およびシステム電圧VSに対する降圧動作可能な双方向のチョッパ型電力変換回路を備えて構成され、負荷に印加する電圧および負荷に通電する電流を断続するチョッピング動作、つまりチョッパ型電力変換回路に具備されるスイッチング素子のオン/オフ動作(スイッチング動作)によって、蓄電装置11から取り出される出力電流IEの電流値を制御しており、このスイッチング動作は制御装置22から入力される制御パルスのデューティ、つまりオン/オフの比率に応じて制御されている。
つまり、第1DC−DCコンバータ12は、燃料電池13の発電あるいはモータ16の回生動作に係るシステム電圧VSを降圧して蓄電装置11を充電可能であると共に蓄電装置11の端子電圧VEを昇圧してPDU15に印加可能である。
【0037】
また、第1DC−DCコンバータ12は、燃料電池車両10の運転状態に応じて蓄電装置11から出力電流IEの取り出しを禁止する。この場合において、例えば制御装置22から第1DC−DCコンバータ12に入力される制御パルスのデューティが0%に設定されると、第1DC−DCコンバータ12に具備されるスイッチング素子がオフ状態に固定され、蓄電装置11とPDU15とが電気的に遮断される。また、この場合において、例えば制御パルスのデューティが0%〜100%の間の適宜値に設定されると、第1DC−DCコンバータ12の出力電力がゼロとなるようにして、第1DC−DCコンバータ12に具備されるスイッチング素子のオン/オフ動作が制御される。
このため、蓄電装置11の端子電圧VEを検出する第1電圧センサ32および蓄電装置11の充電電流および放電電流を検出する第1電流センサ33から出力される各検出信号は制御装置22に入力されている。
【0038】
燃料電池13は、陽イオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜を、アノード触媒およびガス拡散層からなる燃料極(アノード)と、カソード触媒およびガス拡散層からなる酸素極(カソード)とで挟持してなる電解質電極構造体を、更に一対のセパレータで挟持してなる燃料電池セルを多数組積層して構成され、燃料電池セルの積層体は一対のエンドプレートによって積層方向の両側から挟み込まれている。
【0039】
燃料電池13のカソードには、酸素を含む酸化剤ガス(反応ガス)である空気がエアーコンプレッサー等を具備する空気供給装置18から供給され、アノードには、水素を含む燃料ガス(反応ガス)が、例えば高圧の水素タンク19aから水素供給弁19bを介して供給されている。
そして、アノードのアノード触媒上で触媒反応によりイオン化された水素は、適度に加湿された固体高分子電解質膜を介してカソードへと移動し、この移動に伴って発生する電子が外部回路に取り出され、直流の電気エネルギーとして利用される。このときカソードにおいては、水素イオン、電子及び酸素が反応して水が生成される。
【0040】
なお、水素供給弁19bは、例えば空気式の比例圧力制御弁であって、空気供給装置18から供給される空気の圧力を信号圧として、水素供給弁19bを通過した水素が水素供給弁19bの出口で有する圧力が信号圧に応じた所定範囲の圧力となるように設定されている。
また、エアーコンプレッサー等を具備する空気供給装置18は、例えば車両の外部から空気を取り込んで圧縮し、この空気を反応ガスとして燃料電池13のカソードに供給する。また、空気供給装置18を駆動するモータ(図示略)の回転数は、制御装置22から入力される制御指令に基づき、例えばパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータを具備する出力制御器17により制御されている。
【0041】
そして、燃料電池13の水素排出口13aから排出された未反応の排出ガスは、制御装置22により開閉制御される排出制御弁(図示略)を介して希釈ボックス(図示略)へ導入され、希釈ボックスにより水素濃度が所定濃度以下に低減されてから、パージ弁21を介して外部(大気中等)へ排出される。
【0042】
なお、燃料電池13の水素排出口13aから排出された未反応の排出ガスの一部は、例えば循環ポンプ(図示略)およびエゼクタ(図示略)等を備える循環流路(図示略)へと導入されており、水素タンク19aから供給された水素と、燃料電池13から排出された排出ガスとが混合されて燃料電池13に再び供給されている。
そして、燃料電池13の空気排出口13bから排出された未反応の排出ガスは、制御装置22により弁開度が制御される背圧弁20を介して外部(大気中等)へ排出される。
【0043】
第2DC−DCコンバータ14は、例えば、燃料電池13の出力電圧VFに対する昇圧動作および降圧動作可能な双方向のチョッパ型電力変換回路を備えて構成され、負荷に印加する電圧および負荷に通電する電流を断続するチョッピング動作、つまりチョッパ型電力変換回路に具備されるスイッチング素子のオン/オフ動作(スイッチング動作)によって、燃料電池13から取り出される出力電流IFの電流値を制御しており、このスイッチング動作は制御装置22から入力される制御パルスのデューティ、つまりオン/オフの比率に応じて制御されている。
【0044】
例えば、第2DC−DCコンバータ14は、燃料電池車両10の運転状態に応じて燃料電池13の出力電圧VFに対する昇圧動作を実行する。この場合、制御パルスのデューティが0%〜100%の間の適宜値に設定され、1次側電流とされる燃料電池13の出力電流IFを制御パルスのデューティに応じて適宜に制限し、制限して得た電流を2次側電流として出力する。
また、第2DC−DCコンバータ14は、燃料電池車両10の運転状態に応じて燃料電池13とPDU15とを直結状態に設定する。この場合において、制御パルスのデューティが100%とされ、スイッチング素子がオン状態に固定されると、燃料電池13の出力電圧VFと、PDU15の入力電圧であるシステム電圧VSとが同等の値となる。
そして、燃料電池13の出力電圧VFを検出する第2電圧センサ34および燃料電池13の出力電流IFを検出する第2電流センサ35から出力される各検出信号は制御装置22に入力されている。
そして、燃料電池システムを構成する燃料電池13および蓄電装置11は、モータ16の電源とされている。
【0045】
PDU15は、例えばパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータを備えており、制御装置22から出力される制御指令に応じてモータ16の駆動および回生動作を制御する。このPWMインバータは、例えばトランジスタのスイッチング素子を複数用いてブリッジ接続してなるブリッジ回路を具備し、例えばモータ16の駆動時には、制御装置22から入力されるパルス幅変調信号に基づき、第1および第2DC−DCコンバータ12,14から出力される直流電力を3相交流電力に変換してモータ16へ供給する。一方、モータ16の回生時には、モータ16から出力される3相交流電力を直流電力に変換して第1DC−DCコンバータ12を介して蓄電装置11へ供給し、蓄電装置11を充電する。
なお、モータ16は、例えば界磁として永久磁石を利用する永久磁石式の3相交流同期モータとされており、PDU15から供給される3相交流電力により駆動制御されると共に、車両の減速時において駆動輪W側からモータ16側に駆動力が伝達されると、モータ16は発電機として機能して、いわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。
【0046】
制御装置22は、例えば、車両の運転状態や、燃料電池13のアノードに供給される反応ガスに含まれる水素の濃度や、燃料電池13のアノードから排出される排出ガスに含まれる水素の濃度や、燃料電池13の発電状態、例えば各複数の燃料電池セルの端子間電圧や、燃料電池13の出力電圧VFや、燃料電池13から取り出される出力電流IFや、燃料電池13の内部温度等に基づき、燃料電池13に対する発電指令として、空気供給装置18から燃料電池13へ供給される反応ガスの圧力および流量に対する指令値および背圧弁20の弁開度に対する指令値を出力し、燃料電池13の発電状態を制御する。
【0047】
また、制御装置22は、PDU15に具備されるPWMインバータの電力変換動作を制御しており、例えばモータ16の駆動時においては、運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度ACを検出するアクセル開度センサ37から出力される検出信号と、モータ回転数センサ36から出力される検出信号とに基づき、例えば予め設定されたアクセル開度ACと回転数NMとトルク指令との所定の対応関係を示すトルク指令マップ等を参照して、モータ16から出力されるトルクに対する指令値であるトルク指令を算出する。そして、このトルク指令に応じたトルクをモータ16から出力させるために必要となる目標モータ出力を算出し、この目標モータ出力に応じて、PMWインバータの各スイッチング素子をパルス幅変調(PWM)によりオン/オフ駆動させる各パルスからなるスイッチング指令(つまり、パルス幅変調信号)を設定する。
【0048】
そして、制御装置22からPDU15にスイッチング指令が入力されると、モータ16の各相のステータ巻線(図示略)への通電が順次転流させられることで各U相,V相,W相の印加電圧の大きさ(つまり振幅)および位相が制御され、トルク指令に応じた各U相,V相,W相の相電流がモータ16の各相へと通電される。
このため、制御装置22には、例えばPDU15に対する入力電圧とされるシステム電圧VSを検出するシステム電圧センサ31から出力される検出信号と、モータ16の回転数(モータ回転数)NMを検出するモータ回転数センサ37から出力される検出信号と、モータ16のトルク(モータトルク)TMを検出するモータ回転数センサ38から出力される検出信号と、運転者のアクセル操作量に係るアクセル開度ACを検出するアクセル開度センサ40から出力される検出信号とが入力されている。
【0049】
また、制御装置22は、例えば蓄電装置11の充電電流および放電電流を所定期間毎に積算して積算充電量および積算放電量を算出し、これらの積算充電量および積算放電量を初期状態あるいは充放電開始直前の残容量に加算あるいは減算することで蓄電装置11の残容量SOCを算出する。
【0050】
そして、制御装置22は、目標モータ出力および蓄電装置11の残容量SOCに応じて第2DC−DCコンバータ14の電力変換動作を制御する制御パルスを出力し、燃料電池13から取り出される出力電流IFの電流値を制御すると共に、第1DC−DCコンバータ12の電力変換動作を制御する制御パルスを出力し、蓄電装置11の充電および放電を制御する。
このため、制御装置22には、蓄電装置11の端子電圧VEを検出する第1電圧センサ32および蓄電装置11の充電電流および放電電流を検出する第1電流センサ33から出力される各検出信号が入力されている。
【0051】
そして、制御装置22は、例えば図2に示すように、瞬時走行距離算出部51と、瞬時走行エネルギー算出部52と、区間走行エネルギー算出部53と、区間水素消費量算出部54と、区間車両効率算出部55と、瞬時水素消費量算出部56と、瞬時燃費算出部57と、クルーズ燃費算出部58と、瞬時燃費割合算出部59と、区間走行距離算出部60と、区間燃費算出部61と、基準燃費記憶部62と、区間燃費割合算出部63と、燃費割合選択部64と、フィルタ処理部65とを備えて構成され、表示装置23における燃料電池車両10の燃費の表示を制御する。
【0052】
瞬時走行距離算出部51は、例えばモータ回転数センサ37から出力されるモータ回転数NMの検出信号と、例えば車輪速センサ39から出力される車輪速NWの検出信号等に基づき算出される燃料電池車両10の車速Vとに基づき、相対的に短い時間区間であって、現在時刻に対する瞬間的な時間区間である所定の第2時間区間での燃料電池車両10の走行距離である瞬時走行距離を算出する。
【0053】
瞬時走行エネルギー算出部52は、例えばモータ回転数センサ37から出力されるモータ回転数NMの検出信号と、例えば車輪速センサ39から出力される車輪速NWの検出信号等に基づき算出される燃料電池車両10の車速Vと、例えばモータトルクセンサ38から出力されるモータトルクTMの検出信号とに基づき、第2時間区間において発生した燃料電池車両10の走行エネルギーである瞬時走行エネルギーを算出する。
【0054】
区間走行エネルギー算出部53は、例えば現在時刻から過去に遡る相対的に長い時間区間である所定の第1時間区間に亘って瞬時走行エネルギー算出部52により算出された瞬時走行エネルギーの履歴を積算することによって、この第1時間区間において発生した燃料電池車両10の走行エネルギーである区間走行エネルギーを算出する。
【0055】
区間水素消費量算出部54は、例えば第2電流センサ35から出力される燃料電池13の出力電流IFの検出信号と、例えばパージ流量センサ36から出力されるパージ量、つまり燃料電池車両10の外部に排出される未反応の水素の排出量の検出信号とに基づき、所定の第1時間区間に亘って燃料電池13の発電に消費された水素消費量である区間水素消費量を算出する。
【0056】
区間車両効率算出部55は、区間走行エネルギー算出部53により算出された区間走行エネルギーと、区間水素消費量算出部54により算出された区間水素消費量とに基づき、例えば区間走行エネルギーを区間水素消費量により除算することによって、所定の第1時間区間での平均的なエネルギー効率である区間車両効率を算出する。
【0057】
瞬時水素消費量算出部56は、区間車両効率算出部55により算出された区間車両効率と、瞬時走行エネルギー算出部52により算出された瞬時走行エネルギーとに基づき、例えば瞬時走行エネルギーを区間車両効率により除算することによって、所定の第2時間区間において燃料電池車両10の走行エネルギーを発生させるために消費された平均的な水素消費量である瞬時水素消費量を算出する。
【0058】
瞬時燃費算出部57は、瞬時水素消費量算出部56により算出された瞬時水素消費量と、瞬時走行距離算出部51により算出された瞬時走行距離とに基づき、例えば瞬時走行距離を瞬時水素消費量により除算することによって、所定の第2時間区間における燃料電池車両10の平均的な燃費である瞬時燃費を算出する。
【0059】
クルーズ燃費算出部58は、例えばモータ回転数センサ37から出力されるモータ回転数NMの検出信号と、例えば車輪速センサ39から出力される車輪速NWの検出信号等に基づき算出される燃料電池車両10の車速Vとに基づき、所定の第2時間区間における理想的な燃費である理想燃費を算出する。この理想燃費は、例えば燃料電池車両10の車速Vが適宜の車速を維持するクルーズ走行状態であると仮定されて算出され、さらに、例えば走行路の状態(例えば、傾斜や路面状態等)や外界の状態(例えば、風速等の気象状態)や燃料電池13の発電状態等に応じた所定の算出幅を有するように設定される。
【0060】
瞬時燃費割合算出部59は、瞬時燃費算出部57により算出された瞬時燃費と、クルーズ燃費算出部58により算出された理想燃費とに基づき、例えば瞬時燃費を理想燃費により除算することによって、所定の第2時間区間における理想燃費に対する運転者の運転操作に応じた瞬時燃費の比率である瞬時燃費割合を算出する。
【0061】
区間走行距離算出部60は、例えば所定の第1時間区間に亘って瞬時走行距離算出部51により算出された瞬時走行距離の履歴を積算することによって、この第1時間区間での走行距離である区間走行距離を算出する。
【0062】
区間燃費算出部61は、区間水素消費量算出部54により算出された区間水素消費量と、区間走行距離算出部60により算出された区間走行距離とに基づき、例えば区間走行距離を区間水素消費量により除算することによって、所定の第1時間区間における燃料電池車両10の平均的な燃費である区間燃費を算出する。
【0063】
基準燃費記憶部62は、例えば所定の第1時間区間において燃料電池車両10が走行する適宜の区域毎に対応して、燃料電池車両10の複数の実際の走行状態に基づく標準的な燃費である基準燃費の情報を予め記憶しており、燃料電池車両10に搭載されたナビゲーション装置(図示略)等から出力される位置情報に対応する基準燃費の情報を検索して出力する。
【0064】
区間燃費割合算出部63は、区間燃費算出部61により算出された区間燃費と、基準燃費記憶部62から出力された基準燃費とに基づき、例えば区間燃費を基準燃費により除算することによって、所定の第1時間区間における基準燃費に対する運転者の運転操作に応じた区間燃費の比率である区間燃費割合を算出する。
【0065】
燃費割合選択部64は、例えばモータ回転数センサ37から出力されるモータ回転数NMの検出信号と、例えば車輪速センサ39から出力される車輪速NWの検出信号等に基づき算出される燃料電池車両10の車速Vとに基づき、燃料電池車両10は走行状態であるか否か、あるいは、走行停止状態であるか否かを判定し、走行状態であると判定した場合には、瞬時燃費割合算出部59により算出された瞬時燃費割合を選択し、走行停止状態であると判定した場合には、区間燃費割合算出部63により算出された区間燃費割合を選択して、燃費割合として出力する。
【0066】
そして、フィルタ処理部65は、燃費割合選択部64から出力された燃費割合に対して、急激な変動を抑制するための一次遅れのフィルタ処理を実行する。
【0067】
表示装置23は、例えば燃費表示用の表示画面を運転操作中の運転者の視野範囲内に含まれるインストルメントパネルの上部に備え、制御装置22のフィルタ処理部65を介して燃費割合選択部64から入力される燃費割合の大きさに応じて、例えば形状および色等が変化する所定画像を表示画面上に表示する。
例えば図3(a)および図4の時刻t0から時刻t1に示すように、燃料電池車両10の車速Vが適宜の車速を維持するクルーズ状態においては、瞬時燃費算出部57により算出される瞬時燃費は、クルーズ燃費算出部58により算出される理想燃費とほぼ同等になり、瞬時燃費割合はほぼ100%の値となる。このとき、表示装置23は、所定画像として、例えば所定の最小半径を有する所定の色(例えば、青色等)の球形画像Paを表示画面上に表示する。
【0068】
そして、例えば図3(b)および図4の時刻t3から時刻t4に示すように、燃料電池車両10の加速状態においては、瞬時燃費算出部57により算出される瞬時燃費は、クルーズ燃費算出部58により算出される理想燃費に比べて、より小さくなることから、瞬時燃費割合は100%未満の値となる。このとき、表示装置23は、所定画像として、例えば瞬時燃費割合の減少に伴い、所定の最大半径に向かい増大傾向に変化する半径を有する所定の色(例えば、赤色等)の球形画像Pbを表示画面上に表示する。
【0069】
そして、例えば図3(c)および図4の時刻t2から時刻t3に示すように、燃料電池車両10の走行停止状態においては、この走行停止状態に到る以前の燃料電池車両10の走行状態での所定の第1時間区間の区間燃費割合に対し、この区間燃費割合の減少に伴い、所定の最小半径から所定の最大半径の間で増大傾向に変化する半径を有する所定の色(例えば、黄色等)の球形画像Pcを表示画面上に表示する。
【0070】
本発明の実施形態による燃料電池車両10の燃費表示装置1は上記構成を備えており、次に、この燃費表示装置1の動作、つまり燃費表示方法について添付図面を参照しながら説明する。
【0071】
先ず、例えば図5に示すステップS01においては、モータ回転数NMおよび車速VおよびモータトルクTM等の車両状態量を取得する。
そして、ステップS02においては、取得した車両状態量に基づき、相対的に短い時間区間であって、現在時刻に対する瞬間的な時間区間である所定の第2時間区間での瞬時走行距離および瞬時走行エネルギーを算出する。
そして、ステップS03においては、現在時刻から過去に遡る相対的に長い時間区間である所定の第1時間区間に亘って、各瞬時走行距離および瞬時走行エネルギーを積算して、区間走行距離および区間走行エネルギーを算出する。
【0072】
そして、ステップS04においては、燃料電池13の出力電流IFおよび外部に排出される未反応の水素のパージ量等の燃料電池13の状態量を取得する。
そして、ステップS05においては、取得した燃料電池13の状態量に基づき、所定の第1時間区間に亘って燃料電池13の発電に消費された区間水素消費量を算出する
【0073】
そして、ステップS06においては、区間走行エネルギーを区間水素消費量により除算することによって、区間車両効率を算出する。
そして、ステップS07においては、瞬時走行エネルギーを区間車両効率により除算することによって、瞬時水素消費量を算出する。
そして、ステップS08においては、瞬時走行距離を瞬時水素消費量により除算することによって、瞬時燃費を算出する。
【0074】
そして、ステップS09においては、取得した車両状態量に基づき、所定の第2時間区間における理想的な燃費である理想燃費を算出する。
そして、ステップS10においては、瞬時燃費を理想燃費により除算することによって、瞬時燃費割合を算出する。
【0075】
また、ステップS11においては、区間走行距離を区間水素消費量により除算することによって、区間燃費を算出する。
そして、ステップS12おいては、所定の第1時間区間において燃料電池車両10が走行した区域に対して予め記憶されている標準的な燃費である基準燃費を取得する。
そして、ステップS13においては、区間燃費を基準燃費により除算することによって、区間燃費割合を算出する。
【0076】
そして、ステップS14においては、取得した車両状態量に基づき、燃料電池車両10は走行停止状態であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS15に進み、このステップS15においては、燃費割合に瞬時燃費割合を設定して、ステップS17に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS16に進み、このステップS16においては、燃費割合に区間燃費割合を設定して、ステップS17に進む。
そして、ステップS17においては、燃費割合の大きさに応じて、例えば大きさおよび色等が変化する所定の画像を表示画面上に表示し、一連の処理を終了する。
【0077】
上述したように、本発明の実施形態による燃料電池車両10の燃費表示装置1および燃料電池車両10の燃費表示方法によれば、燃料電池車両10の走行状態において表示装置23に表示される燃費の情報として、瞬時走行エネルギーおよび区間車両効率に基づく瞬時燃費を算出することにより、例えば燃料電池13の出力に対する蓄電装置11による出力補助の有無や、燃料電池13およびモータ16からの蓄電装置11に対する充電の有無等に拘わらずに、適切な燃費の情報を表示することができる。
【0078】
つまり、単に、相対的に短い時間区間である第2時間区間において、燃料電池13の出力電流IFおよびパージ量等から直接的に(つまり、区間車両効率を介さずに)算出される燃料電池13の水素消費量と、燃料電池車両10の走行距離とに基づき燃費を算出する場合には、蓄電装置11の放電電力による燃料電池13の出力に対する出力補助(アシスト)に加えて、例えば蓄電装置11とモータ16との間の電気エネルギーの授受や燃料電池13の発電電力による蓄電装置11の充電等の燃料電池システムの各動作が統括的に考慮されていないことから、燃費の算出結果に対する信頼性が低下することになる。例えば車両の加速状態において、蓄電装置11によるアシスト量が増大することに伴い、燃料電池13での水素消費量の増大が抑制されると、車両全体としてのエネルギー消費が増大することにも拘わらずに、燃費の算出結果が過剰に良好な値となってしまうという問題が生じる。
【0079】
このような問題に対して、本発明の実施形態では、先ず、相対的に長い時間区間である所定の第1時間区間での燃料電池13の水素消費量(つまり区間水素消費量)と燃料電池車両10の走行に寄与した走行エネルギーとに基づく区間車両効率を算出することにより、蓄電装置11によるアシストに加えて、蓄電装置11とモータ16との間の電気エネルギーの授受や燃料電池13の発電電力による蓄電装置11の充電等の燃料電池システムの各動作が統括的に考慮された車両のエネルギー効率を取得する。
そして、この区間車両効率によって瞬時走行エネルギーを除算することにより、相対的に短い時間区間である第2時間区間であっても、蓄電装置11によるアシストに加えて、蓄電装置11とモータ16との間の電気エネルギーの授受や燃料電池13の発電電力による蓄電装置11の充電等の燃料電池システムの各動作が統括的に考慮された水素消費量、つまり瞬時水素消費量を算出する。
【0080】
しかも、本発明の実施形態によれば、第1時間区間の時間幅を適宜に変更することによって、瞬時水素消費量に反映される燃料電池システムの各動作や燃料電池車両10の走行履歴等を変更することができる。これにより、例えばモータ16の出力が適宜の出力を維持する状態であっても、例えば頻繁に加速および減速を交互に繰り返す走行状態では瞬時燃費が低下し、例えば加速および減速の実行が抑制される走行状態では瞬時燃費が増大するように、容易に設定することができる。
【0081】
また、本発明の実施形態では、燃料電池車両10の走行状態においては、瞬時燃費の理想燃費に対する割合、つまり運転者の運転操作に応じた燃費の理想的な燃費からのずれの大きさを視覚的に表示することにより、運転者に理想的な燃費に対する追従動作の実行を促すことができ、車両の燃費を向上させることができる。
また、燃料電池車両10の走行停止状態においては、区間燃費の基準燃費に対する割合、つまり走行停止状態に到る以前の燃料電池車両10の走行状態での運転者の運転操作に応じた燃費の標準的な燃費からのずれの大きさを視覚的に表示することにより、運転者に運転操作の履歴の良否を的確に認識させることができる。
しかも、表示装置23の表示画面は運転中の運転者の視野範囲内に配置され、この表示画面上には、運転者の運転操作に応じた燃費の理想燃費または基準燃費からのずれの大きさに応じて、大きさや色等が変化する所定の画像が表示されることから、燃料電池車両10の走行時等において、たとえ運転者が表示画面を注視していない状態であっても、ずれの大きさを運転者に容易に視認させることができる。
【0082】
なお、上述した実施の形態においては、各センサ31,…,40の検出信号を制御装置22に入力するとしたが、これに限定されず、制御装置22において各検出値を推定してもよい。
また、区間水素消費量算出部54は、燃料電池13の出力電流IFおよび外部に排出される未反応の水素の排出量に基づき区間水素消費量を算出するとしたが、これに限定されず、例えば水素タンク19aの内部圧力および温度等に基づき区間水素消費量を算出してもよい。
【0083】
なお、上述した実施の形態においては、理想燃費に対する瞬時燃費の比率、または、基準燃費に対する区間燃費の比率に応じた所定画像を表示装置23の表示画面上に表示するとしたが、これに限定されず、理想燃費と瞬時燃費との差異に係る状態量として、例えば理想燃費と瞬時燃費との差分、または、基準燃費と区間燃費との差異に係る状態量として、例えば基準燃費と区間燃費との差分に応じた所定画像を表示装置23の表示画面上に表示してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池車両の構成図である。
【図2】図1に示す制御装置の構成図である。
【図3】図3(a)〜(c)は表示装置の表示画面の一例を示す図である。
【図4】燃料電池車両の車速と燃費割合の時間変化の一例を示すグラフ図である。
【図5】図1に示す燃費表示装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0085】
1 燃費表示装置
10 燃料電池車両
11 蓄電装置
13 燃料電池
15 PDU(モータ制御手段)
16 モータ
17 出力制御器(出力制御手段)
18 空気供給装置(反応ガス供給手段)
19a 水素タンク(反応ガス供給手段)
19b 水素供給弁(反応ガス供給手段)
23 表示装置(表示手段)
52 瞬時走行エネルギー算出部(第2区間走行エネルギー取得手段)
55 区間車両効率算出部(第1区間車両効率取得手段)
57 瞬時燃費算出部(第2区間燃費取得手段)
58 クルーズ燃費算出部(理想燃費取得手段)
59 瞬時燃費割合算出部(第2区間燃費差異算出手段)
61 区間燃費算出部(第1区間燃費取得手段)
62 基準燃費記憶部(基準燃費取得手段)
63 区間燃費割合算出部(第1区間燃費差異算出手段)
ステップS02 第2区間走行エネルギー取得ステップ
ステップS06 第1区間車両効率取得ステップ
ステップS08 燃費取得ステップ、第2区間燃費取得ステップ
ステップS09 理想燃費取得ステップ
ステップS10 第2区間燃費差異算出ステップ
ステップS11 第1区間燃費取得ステップ
ステップS12 基準燃費取得ステップ
ステップS13 第1区間燃費差異算出ステップ
ステップS17 表示ステップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の動力源としてのモータと、該モータの作動状態を制御するモータ制御手段と、前記モータの電源をなす燃料電池システムとして、反応ガス供給手段により反応ガスが供給されて電気化学反応により発電する燃料電池と、該燃料電池の発電電力および前記モータの回生電力により充電される蓄電装置とを備える燃料電池車両の燃費表示装置であって、
所定の第1時間区間での消費燃料量に対して発生した走行エネルギーの割合である第1区間車両効率を取得する第1区間車両効率取得手段と、
前記第1時間区間よりも短い所定の第2時間区間において発生した走行エネルギーである第2区間走行エネルギーを取得する第2区間走行エネルギー取得手段と、
少なくとも前記第1区間車両効率および前記第2区間走行エネルギーに基づいて前記第2時間区間での燃費である第2区間燃費を取得する第2区間燃費取得手段と
を備えることを特徴とする燃料電池車両の燃費表示装置。
【請求項2】
前記第1区間車両効率取得手段は、前記燃料電池システムの外部に排出される排出燃料量に基づいて前記消費燃料量を算出することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の燃費表示装置。
【請求項3】
前記第2時間区間での前記燃料電池車両の状態に応じた所定の理想的な燃費である理想燃費を取得する理想燃費取得手段と、
前記第2区間燃費取得手段により取得された前記第2区間燃費と、前記理想燃費取得手段により取得された前記理想燃費との差異に係る状態量である第2区間燃費差異を算出する第2区間燃費差異算出手段と、
前記第2区間燃費差異を表示する表示手段と
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池車両の燃費表示装置。
【請求項4】
少なくとも前記第1時間区間での前記消費燃料量および走行距離に基づいて前記第1時間区間での燃費である第1区間燃費を取得する第1区間燃費取得手段と、
前記第1時間区間での所定の標準的な燃費である基準燃費を取得する基準燃費取得手段と、
前記第1区間燃費取得手段により取得された前記第1区間燃費と、前記基準燃費取得手段により取得された前記基準燃費との差異に係る状態量である第1区間燃費差異を算出する第1区間燃費差異算出手段とを備え、
前記表示手段は、前記燃料電池車両の走行停止状態において前記第1区間燃費差異を表示することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池車両の燃費表示装置。
【請求項5】
前記表示手段は、前記差異に応じた大きさを有する画像を表示することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の燃料電池車両の燃費表示装置。
【請求項6】
車両の電源をなす燃料電池システムとして、反応ガス供給手段により反応ガスが供給されて電気化学反応により発電する燃料電池と、蓄電装置とを備える燃料電池車両の燃費表示方法であって、
所定の第1時間区間での消費燃料量に対して発生した走行エネルギーの割合である第1区間車両効率を取得する第1区間車両効率取得ステップと、
前記第1区間車両効率に基づいて燃費を取得する燃費取得ステップと
を含むことを特徴とする燃料電池車両の燃費表示方法。
【請求項7】
車両の動力源としてのモータと、該モータの作動状態を制御するモータ制御手段と、前記モータの電源をなす燃料電池システムとして、前記燃料電池と、該燃料電池の発電電力および前記モータの回生電力により充電される前記蓄電装置とを備える燃料電池車両の燃費表示方法であって、
前記第1時間区間よりも短い所定の第2時間区間において発生した走行エネルギーである第2区間走行エネルギーを取得する第2区間走行エネルギー取得ステップと、
少なくとも前記第1区間車両効率および前記第2区間走行エネルギーに基づいて前記第2時間区間での燃費である第2区間燃費を取得する第2区間燃費取得ステップと
を備えることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池車両の燃費表示方法。
【請求項8】
前記第1区間車両効率取得ステップは、前記燃料電池システムの外部に排出される排出燃料量に基づいて前記消費燃料量を算出することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の燃料電池車両の燃費表示方法。
【請求項9】
前記第2時間区間での前記燃料電池車両の状態に応じた理想的な燃費である理想燃費を取得する理想燃費取得ステップと、
前記第2区間燃費取得ステップにより取得された前記第2区間燃費と、前記理想燃費取得ステップにより取得された前記理想燃費との差異に係る状態量である第2区間燃費差異を算出する第2区間燃費差異算出ステップと、
前記第2区間燃費差異を表示する表示ステップと
を含むことを特徴とする請求項7に記載の燃料電池車両の燃費表示方法。
【請求項10】
少なくとも前記第1時間区間での前記消費燃料量および走行距離に基づいて前記第1時間区間での燃費である第1区間燃費を取得する第1区間燃費取得ステップと、
前記第1時間区間での所定の標準的な燃費である基準燃費を取得する基準燃費取得ステップと、
前記第1区間燃費取得ステップにより取得された前記第1区間燃費と、前記基準燃費取得ステップにより取得された前記基準燃費との差異に係る状態量である第1区間燃費差異を算出する第1区間燃費差異算出ステップとを備え、
前記表示ステップは、前記燃料電池車両の走行停止状態において前記第1区間燃費差異を表示することを特徴とする請求項9に記載の燃料電池車両の燃費表示方法。
【請求項11】
前記表示ステップは、前記差異に応じた大きさを有する画像を表示することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の燃料電池車両の燃費表示方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−209063(P2007−209063A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22060(P2006−22060)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】