説明

燃料電池電源ユニットの水分平衡を向上させるための方法および装置

燃料電池のカソード側からの排出ガスを供給ガスとして燃焼システムへ提供し、燃焼システムからの流出物中に存在する水の少なくとも一部を凝縮器内で凝縮し、その後、凝縮器からの流出物の非凝縮部分からの水蒸気を燃料電池のカソード側に供給されるガスへと移すことによって電源ユニットの水分平衡を向上させるための方法および装置を開示する。燃料電池のカソード側からの排出ガスからの水は、凝縮器内に捕捉されるか、または燃料電池のカソード側の供給ガスで再使用される。排出ガス中に存在する水蒸気を用いてシステムへ供給される空気を加湿することにより、システムから水が失われない。むしろ、システム内へ供給される空気がこの水によって加湿され、そうすることで、加湿器が高温で動作でき、かつ/またはより小さいラジエータおよびファンを使用でき、かつ/またはより少ない寄生電力を引き出すことができ、それにより、システム全体の効率が向上する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第11/595,203号の優先権を主張しており、米国特許出願第11/595,203号の一部継続出願である。
【0002】
技術分野
本発明は、燃料電池に関し、より具体的には、水蒸気改質燃料システムおよびこれらのシステムの水分平衡を向上させるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
可動式発電システムのニーズは、これまで、ガソリンまたはディーゼル燃料などの物質が燃料として供給される内燃機関によって動力がもたらされる発電機によって満たされてきた。これらのシステムは、多くの用途において信頼できかつ効率的であることが分かっているが、他の特定の用途には適さない。例えば、多くの軍事用途では、単一の燃料源が車両および補助電源システムの両方に給電するという要件が、既製の内燃機関ガソリン発電システムの使用を妨げている。また、内燃システムによって発生する騒音および振動に関連する問題が、特定の状況において、それらのシステムの使用を受け入れられなくする可能性がある。
【0004】
典型的な内燃システムの一つの代替物が、燃料電池に基づく発電システムである。特に興味深いものは、水蒸気改質システムと共に使用される高分子電解質膜(PEM)燃料電池である。PEM燃料電池と水蒸気改質システムとを組み合わせると、これらのシステムは、静かで、効率的で、様々な炭化水素燃料流によって動力がもたらされ得る可動式電源を形成する。
【0005】
一般的に言うと、燃料電池は、産出物として、水および電気を発生する。また、水蒸気改質器を加熱するために使用されるような燃焼プロセスは、水蒸気を発生する。しかしながら、水蒸気改質システムは投入物として水を使用する。したがって、燃料電池と水蒸気改質システムとを組み合わせる発電システムは、投入物として利用できる水を有さなければならないか、または燃料電池および改質燃焼器で形成される水の効率的な使用を行なわなければならない。高温環境におけるこれらの発電システムの動作は、水の効率的な使用および回収を要する。凝縮されて回収される水が前記プロセスへ供給される水を上回る、正の水分平衡を維持することは、高い大気温度(すなわち、>40℃)においては、ラジエータおよび凝縮器において達成されなければならない接近したアプローチ温度に起因して益々難しくなる。結果、高い大気温度で水分平衡に達するように構成されたシステムは、非常に大きなラジエータを有するとともに、ラジエータファン電力に関して、相当な寄生的不利益を有する。ある時点では、正の水分平衡を維持することはラジエータのサイズに関係なく不可能である。
【0006】
したがって、水蒸気改質システムおよび燃料電池を有する、電力を発生するための電源ユニットが、該電源ユニットに利用できる水を節約できるようにする方法および装置の必要性が存在する。また、水蒸気改質システムおよび燃料電池を有する、電力を発生させるための電源ユニットの効率を向上させる必要性もある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、電源ユニットの水分平衡を向上させるための方法および装置を提供する。本明細書中で使用される「電源ユニット」とは、水(水蒸気改質または自己熱改質のいずれかに基づく)を利用する燃料改質器と燃料電池とを有する、電力を生成するためのシステムである。本発明を適用することができる特定のタイプの燃料電池としては、PEM(高分子電解質膜)タイプの燃料電池だけでなく、SOFC(固体酸化物型燃料電池)、リン酸燃料電池、および他のタイプの燃料電池も挙げられる。水蒸気改質システムは、水蒸気改質反応を行なって合成ガスを生成するためのシステムと、熱を生成して水蒸気改質反応を促進させるための燃焼加熱システムとを含む。自己熱改質(ATR)においては、空気が改質混合物に加えられ、また、結果として生じる酸化反応が改質反応を支援するために必要な熱を提供する。1つのATR構成では、改質物がアノードに直接提供され、かつ、アノード中の未使用燃料が、排出アノードガスバーナ(waste anode gas burner)で熱を生成するために使用される。カソードおよびアノード排出ガスバーナからの水の回収は、カソードおよび水蒸気改質システムにおけるメインバーナ排出ガスからの水の回収に類似している。以下の説明は、PEM燃料電池を有する水蒸気改質システムの一例について扱うが、改質技術または燃料電池技術の選択に関して限定するものと見なされるべきではない。
【0008】
PEM燃料電池は、水素を含むガスが供給されるアノード側と、酸素を含むガスが供給されるカソード側とを含む。そのような燃料電池内では、アノード側に供給される水素とカソード側に供給される酸素とが組み合わされて、電気および水が生成される。本発明は、様々な構造の電源ユニットおよび電源ユニットの構成要素と共に使用するのに適している。したがって、当業者が本発明を作製または使用できるようにするために、水蒸気改質システム、燃焼システム、および燃料電池の構造および動作の更なる精密さは必要ない。
【0009】
本発明は、燃料電池のカソード側からの排出ガスを水蒸気改質システムの燃焼システムへの供給ガスとして利用することにより、電源ユニットにおける水分平衡を向上させる。改質反応に熱をもたらすべく燃焼を支援するため、蒸気を生成するためなどにこの排出ガスが利用されると、システムは、燃焼システムからの流出物中に存在する水の少なくとも一部を凝縮器内で凝縮し、その後、凝縮器からの流出物の非凝縮部分からの水蒸気を、燃料電池のカソード側へ供給されるガスへと移す。このようにして、燃料電池のカソード側からの排出ガスからの水は、凝縮器内に捕捉されるか、または燃料電池のカソード側の供給ガスで再利用される。燃料電池のカソード側のための供給ガスは一般に空気である。排出ガス中に存在する水蒸気を用いて、システムへ供給される空気を加湿することにより、この水がシステムから失われない。むしろ、システム内へ供給されるべき空気がこの水を用いて加湿され、また、この水により、凝縮器が高温で動作でき、かつ/またはより小さいラジエータおよびファンを使用でき、かつ/またはより少ない寄生電力を引き出すことができ、それにより、システム全体の効率が向上する。
【0010】
本発明の好ましい態様において、本発明の利点は、燃焼器およびカソードの両方からの流出物を凝縮器へと送り込むことにより達成される。「流出物」とは、凝縮器内へと送られる、水を含む任意のガスのことである。したがって、両方の流出物が凝縮器へ提供されることが好ましいが、水分平衡における少なくとも何らかの向上は、いずれかの流出物のみを凝縮器へ送り込むことにより達成される。したがって、本発明は、燃焼器からの流出物が凝縮器へ提供される態様、カソードからの流出物が凝縮器へ送られる態様、および両方が同時にまたは連続して凝縮器へ送られる態様を包含するように理解されるべきである。
【0011】
同様に、本発明の利点は、加湿器内に移された湿気の一部が入口空気流へと移されるときに達成される。入口空気流は、カソードへ供給する空気および/または燃焼器へ供給する空気を提供してもよい。したがって、加湿器の排出物が最初にカソードの入口へと送られた後に連続して燃焼器の入口へ送られることが好ましいが、水分平衡における少なくとも何らかの向上は、前述したように、加湿器の排出物がカソードの入口だけへ、燃焼器の入口だけへ、またはこれらの両方へ連続してまたは同時に送られる場合に達成される。本発明は、そのような組み合わせの全てを含むように理解されるべきである。
【0012】
好ましくは、凝縮器からの流出物中の水の非凝縮部分に由来する水をカソード側に供給されるガスへと移すことは、デシカントホイール(desiccant wheel)またはナフィオン膜などの水蒸気透過膜によって行なわれるがそれに限定されるものではない。これらの同じ構造、デシカントホイール、水蒸気透過膜、またはナフィオン膜は、本発明の幾つかの態様では、カソード排出ガス中に存在する水を使用してPEM燃料電池のカソード側に供給されるガスを加湿するための第2の加湿器として利用されてもよい。
【0013】
本発明の好ましい態様において、好ましくは、システムは、PEM燃料電池のカソード側からの排出ガスを燃焼システムへ供給する前に、熱回収型熱交換器内で、燃焼システムからの流出ガスを用いて、PEM燃料電池のカソード側からの排出ガスを加熱するように構成されるがそれに限定されるものではない。この形態は、廃熱を使用して、反応および水の捕捉を促進するための熱をもたらす燃焼器へ供給される空気を予熱することにより、流出ガス中の水を凝縮する前に、燃焼システムからの流出ガスを冷却することにより、合成ガス形成反応を支援する。
【0014】
好ましくは、本発明は、異なる動作状態が予期される様式で様々なガスを送るため、およびシステムで使用される様々な機器を保護するために、一連の逆止弁を使用する。例えば、本発明の好ましい態様は、好ましくは、燃焼システムからの逆流を防止するために、PEM燃料電池のカソード側からの排出ガスを水蒸気改質システムの燃焼システムへ連絡する際に逆止弁を提供するがこれに限定されるものでない。更なる例として、本発明の好ましい態様は、好ましくはPEM燃料電池のカソード側からの排出ガスの加圧を防止するために、PEM燃料電池のカソード側からの排出ガスを凝縮器の入口へ連絡する際に逆止弁を提供するがこれに限定されるものでない。更に他の例として、本発明の好ましい態様は、好ましくは酸素を含むガスの流れがPEM燃料電池のカソード側の入口を迂回できるように、加湿器の出口をPEM燃料電池のカソード側の出口に連絡する逆止弁を提供するがこれに限定されるものでない。最後の例として、本発明の好ましい態様は、好ましくは起動ブロワを損傷させる可能性がある高温燃焼ガスの逆流を防止するように、加湿器の出口を起動燃焼器に連続する起動ブロワに連絡する逆止弁を提供するがこれに限定されるものでない。
【0015】
本発明の態様の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて解釈されるときに更に容易に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の1つの態様による燃料電池システムの一般的な概略図である。
【図2】本発明の他の態様による燃料電池システムの一般的な概略図である。
【図3】本発明の他の態様による燃料電池システムの一般的な概略図である。
【図4】加湿ユニットが加湿ユニットの加湿終了時に5℃露点に近づくと仮定した、本発明の好ましい態様の加湿器を伴うおよび伴わない、凝縮器温度に応じた電源ユニットシステムからの水分損失を示すグラフである。図4に示されるように、48℃で水分平衡を達成したユニットは、本発明の加湿ユニットの作用により、70℃を超えた辺りで水分平衡を得ることができる。この利点は、水分平衡が達成される最大温度を高めることによって実現することができ、またはラジエータサイズ、ノイズ、および/または寄生電力消費量を減少させるために使用できる。
【図5】水蒸気改質ではなく自己熱改質(ATR)に基づく、本発明の他の態様による燃料電池システムの一般的な概略図である。
【図6】流入空気が、凝縮器排出ガスからの非凝縮水の移動によって加湿された後に、燃料電池のカソードおよび水蒸気改質燃焼器に同時に供給される、本発明の他の態様による燃料電池システムの一般的な概略図である。
【図7】SOFC燃料電池を用いた自己熱改質(ATR)に基づく、本発明の他の態様による燃料電池システムの一般的な概略図である。
【図8】SOFC燃料電池を用いた水蒸気改質に基づく、本発明の他の態様による燃料電池システムの一般的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい態様の詳細な説明
本発明の原理の理解を促すため、ここで、添付の図面に示される態様を参照するとともに、態様を説明するために特定の言語が使用される。それにもかかわらず、本発明の範囲をそれによって限定しようとするものでないことが理解される。これは、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲に関して評価されるべきだからである。例示されたデバイスにおける変更および更なる改良、および本明細書中に示された本発明の原理のそのような更なる適用は、本発明が関連する当業者が一般に想起できると考えられる。
【0018】
本発明の1つの形態は、改質器排出ガスと流入するカソード空気とを結合する加湿器を提供する。図1に示されるようなPEMタイプの燃料電池で使用する際には、入口空気が加湿器1でシステム内に入り、この加湿器1において、水が、凝縮器2からの流出物中の水の非凝縮部分から、PEM燃料電池のカソード側3へ供給されるガスへと移される。加湿器1からの入口空気は、PEM燃料電池のカソード側3へも供給され、そこで、アノード側へ供給される水素と反応して水および電気を生成する。PEM燃料電池のカソード側3からの排出ガスは、水蒸気改質システム4の燃焼システムへと供給される。水蒸気改質システム4の燃焼システムからの流出物は、その後、凝縮器2内で凝縮され、かつ、流出ガス中の任意の残留水蒸気は、加湿器1へと供給され、そこで、前述したようにシステム内に流入する入口空気へと移される。これらの同じ構成要素を使用する別の態様が図6に示されている。図6に示される配置はあまり好ましくないが、なお本発明によって企図されると見なされるべきである。
【0019】
本発明の他の形態が図2に示されている。この態様は図1に示される態様と類似するが、この態様では、燃料電池3から出る流出ガスからの水蒸気を、燃料電池のカソード3へ供給されるガスへと移すために、第2の加湿器5が介挿されている。図1に示される態様と同様、第2の加湿器5も、改質器排出ガスと流入するカソード空気とを結合する。図2に示されるように、入口空気が加湿器1でシステム内に入り、この加湿器1において、水が、凝縮器2からの流出物中の水の非凝縮部分から、第2の加湿器5へ流入するガスへと移される。加湿された入口空気は、その後、燃料電池のカソード3から出る流出ガスからの水蒸気を燃料電池へ供給されるガスへと移すべく、介挿された第2の加湿器へと流入する。加湿器5から出る入口空気は、その後、PEM燃料電池のカソード側3へ供給され、そこで、アノード側へ供給される水素と反応して水および電気を生成する。燃料電池のカソード側3から出る排出ガスは、その後、既に説明したように第2の加湿器へ流入する。排出ガスは、第2の加湿器から出た後、水蒸気改質システムの燃焼システムへと供給される。水蒸気改質システム4の燃焼システムからの流出物は、その後、凝縮器2内で凝縮され、かつ、流出ガス中の任意の残留水蒸気は、加湿器1へと供給され、そこで、前述したようにシステム内に流入する入口空気へと移される。
【0020】
本発明の更に他の態様が図3に示されている。図3は、入口空気が加湿器1でシステム内に入り、この加湿器1において、水が、凝縮器2からの流出物中の水の非凝縮部分から、PEM燃料電池のカソード側3に供給されるガスへと移されることを示している。起動動作中、空気は、バイパス弁20を介してブロワ21へ供給され、起動燃焼器22へと流入する。この加熱された流出物は、その後、主燃焼器30を通って送られ(通常の動作に備えて主燃焼器30を暖めるため)、主水蒸気改質器32を通った後、レキュペレータ31を介して凝縮器2へと至り、そこで水が水タンク6内に収集される。さらに、流出ガス中の任意の残留水蒸気は、加湿器1へと供給され、そこで、その一部が図1および図2の説明の場合と同様にシステムに流入する入口空気へと移される。
【0021】
図3に示されるように、主燃焼器30、主水蒸気改質器32、およびレキュペレータ31は、図1および図2の水蒸気改質システム4を形成する。通常(起動後)の動作中、バイパス弁20および40が閉じられ、それにより、入口空気が、加湿器1からPEM燃料電池のカソード側3へと送られ、そこで、アノード側7へ供給される水素と反応して水および電気を生成する。その後、空気は、逆止弁50を通って流れ、レキュペレータ31、燃焼器30、改質器32を通って、再びレキュペレータ31を通り抜けた後、凝縮器2に流入する。逆止弁50は、主燃料プロセッサブロワ41が動作することなく起動ブロワ21が動作している期間にわたって閉じており、それにより、レキュペレータ31から主燃料プロセッサブロワ41への高温ガスの逆流が防止される。
【0022】
逆止弁20は、PEM燃料電池のカソード側3からの排出ガスを主燃焼システム30へ連絡するためにこれらの間に介挿されており、それにより、ブロワ21を破損させる可能性がある燃焼システム30からの逆流を防止する。逆止弁60は、PEM燃料電池のカソード側3からの排出ガスを凝縮器2の入口へ連絡するためにこれらの間に介挿されており、それにより、PEM燃料電池のカソード側3からの排出ガスの加圧を防止する。逆止弁60は、燃料電池内のブロワ(図示せず)が主燃料プロセッサブロワ41よりも多くのガスを移動させている場合に開く。逆止弁40は、加湿器1の出口をPEM燃料電池のカソード側3の出口へ連絡し、それにより、酸素を含むガスの流れがPEM燃料電池のカソード側3の入口を迂回できるようにする。逆止弁40は、主燃料プロセッサブロワ41が燃料電池ブロワ(図示せず)が提供するよりも多くのガスを移動させる場合に開く。
【0023】
図4に示されるように、システムからの水分損失は凝縮器の温度の関数である。加湿ユニットが加湿ユニットの加湿終了時に5℃露点に近づくと仮定する。この場合、48℃で水分平衡を達成したユニットは、本発明の好ましい態様に示される加湿ユニットの作用により、70℃を超えた辺りで水分平衡を得ることができる。この利点は、水分平衡が達成される最大温度を高めることによって実現することができ、またはラジエータサイズ、ノイズ、および寄生電力を減少させるために使用できる。クーラント温度を45℃から約70℃へと上げることにより、ラジエータでの出口温度アプローチが約5℃から約30℃へと増加し、それにより、熱を退けるラジエータの能力が非常に高められる。これにより、高温で水分平衡を達成できる。
【0024】
幾つかの用途では、水蒸気改質ではなく自己熱改質(ATR)に基づく燃料プロセッサを利用することが望ましい。ATR燃料プロセッサでは、改質物を形成するために燃料、蒸気、および空気を混合して反応させる。改質反応を支援するための熱は、燃料の不完全燃焼によってもたらされる。これらのシステムは、空気を改質反応に加えなければならないため、低圧で動作し、精製されていない改質物を燃料電池のアノードへ直接送達する傾向がある。アノードのCO中毒を防止するためには、COを低レベルまで減少させなければならず、これは一般に水性ガスシフト(WGS)反応および選択的酸化(PROX)反応を使用して達成される。これらの反応を提供するシステムは協働してATR燃料プロセッサを構成する。
【0025】
ATR燃料プロセッサを使用する燃料電池電源システムにおける本発明の適用例が図5に示されている。酸素含有ガス(一般的には、空気または濃縮空気)が加湿器1に流入し、この加湿器において、凝縮されていない水蒸気が、排出ガスから、流入するガス流へと輸送される。加湿された空気の一部は、ATR燃料プロセッサ8へと送達され、そこで、リザーバ6から気化器9へ水が供給されるときに生成される蒸気および燃料と混合される。燃料、空気、および蒸気がATR燃料プロセッサ8内で反応して、水素濃度の高い改質物が形成され、この改質物は、その後、PEM燃料電池のアノード7に流入する。
【0026】
ATR燃料プロセッサ8へ送達されない流入する酸素含有ガスの一部は、燃料電池加湿器5へと送達され、燃料電池加湿器5では、水蒸気がこのガス流へと移される。ガスは、その後、燃料電池のカソード3へと流入し、そこでは、水を形成するための水素の酸化によって酸素濃度が使い果たされる。その後、カソード排出ガスは、水の一部が燃料電池のカソード3に入るガス流へと移される加湿器5を再び通り過ぎた後、酸化器(図示せず)へと流入し、この酸化器において、燃料電池のアノード7からの排出ガスと組み合わされ、反応してアノード排出ガスが十分に酸化される。アノード排出ガスの酸化の間に発せられるエネルギーは、蒸気を生成するために自己熱燃料プロセッサ8からの熱(Q)と共に気化器9で使用されてもよい。あるいは、アノード7からの排出ガスの酸化に由来するエネルギーは、圧縮膨張器を駆動させるために使用されてもよい。いずれの場合にも、アノード排出ガス流およびカソード排出ガス流の反応は、水素の酸化によって水を形成し、かつ、その排出ガス流が凝縮器2に流入し、この凝縮器において、水の一部が凝縮されて水タンク6内に収集される。凝縮器2からの排出ガスは、その後、加湿器1に流入し、この加湿器において、非凝縮水の一部が流入空気へと移される。
【0027】
本発明の更に他の態様が図7に示されている。この態様において、本発明は、ATR改質器12およびSOFC燃料電池を有するシステムに適用される。図7を参照すると、空気がナフィオン膜加湿器1を介してシステム内に流入し、加湿器1では、水が排出ガスから流入空気へと移される。加湿された空気は、その後、熱交換器11内で加熱された後、ATR改質器12とSOFCカソード3との間で分配される。水をリザーバ6から気化器9へと供給して、ATR 12で使用するための蒸気を形成する。空気、燃料、および蒸気がATR 12内で反応して、水素濃度の高い混合物が形成される。SOFCはCOに対して耐性があるため、燃料電池のアノード7へ混合物を供給する前に、選択的酸化反応器のための水性ガスシフトは必要とされない。燃料電池内では、酸素がカソード3からアノード7へと通過して、水が形成される。カソード3およびアノード7から出るガスは、組み合わされて排出アノードガスバーナ10内で燃焼され、それにより、更なる熱および水がもたらされる。この燃焼からの熱は、熱交換器11内で流入空気を予熱するため、および気化器9内で蒸気を生成するために使用される。その後、ガス流は、液体の水を回収してリザーバ6を補充するために凝縮器2内で冷却される。最後に、排出ガスが加湿器1を通って排出され、加湿器では、凝縮されない水蒸気の一部が流入空気へと移される。
【0028】
本発明の他の態様が図8に示されている。この態様において、本発明は、SOFC燃料電池および水蒸気改質を利用するシステムに適用される。図8は、加湿器1を通ってシステムに流入する空気を示しており、加湿器では、空気が排出ガス流から水蒸気を獲得する。この加湿された空気は、その後、最初にレキュペレータ31内でSOFC温度付近まで加熱された後、熱交換器11内で加熱され、カソード3に流入する。水が、水リザーバ6から引き出されて気化器9内で気化され、その後、燃料と混合されて、水蒸気改質反応器13内で改質されることにより、水素およびCOを含有する改質物が生成される。改質物は、アノード7に流入し、このアノードにおいてカソードからくる酸素と反応し、それにより、このプロセスにおいて電気および水が生成される。アノード7およびカソード3からの流出物は、その後、更なる熱および水を生成する廃アノードバーナ10内で組み合わされる。高温ガスは、流入するカソード空気に熱交換器11内で熱を伝達し、改質器13内での水蒸気改質反応を支援するために熱を供給し、気化器9内で蒸気を生成し、かつレキュペレータ31内の流入空気に初期予熱を提供するために使用される。最後に、液体の水が凝縮器2内の蒸気から回収されてリザーバ6へ送達される。その後、冷却された空気が加湿器1を通って排出され、この加湿器において、存在する水蒸気の一部が流入する空気流へと移される。
【0029】
結語
図面および前述の説明において本発明を例示して詳しく説明してきたが、それらは、その性質において例示的であって限定的でないと見なされるべきである。特定の態様のみを例示して説明してきたが、本明細書中で説明された本発明の精神の範囲内に入る全ての変更、等価物、および改良が保護されることが望まれる。本明細書中で提供される任意の実験、実験例、または実験結果は、本発明の例示となるべく意図されており、本発明の範囲を制限しまたは限定するものと見なされるべきではない。また、任意の理論、動作機構、証拠、または本明細書中で述べられた所見は、本発明の理解を更に促すように意図されており、そのような理論、動作機構、証拠、または所見のいずれにも本発明を限定しようとするものではない。
【0030】
したがって、本明細書本文および添付図面の内容は、本発明の範囲およびその内容を限定するように解釈されるべきではない。むしろ、本発明の範囲は、添付の請求項に関連して評価されるべきである。請求項を読み取る際に、「1つ(a)、「1つ(an)」、「少なくとも1つ」、および「少なくとも一部」などの用語が使用される場合には、請求項でそれと反対のことが具体的に述べられていない限り、その1つの項目だけに請求項を限定しようとする意図はない。また、「少なくとも一部」および/または「一部」という用語が使用される場合、請求項は、それと反対のことが具体的に述べられていない限り、その項目の一部および/または全部を含んでもよい。同様に、「投入物」または「産出物」という用語が電気デバイスまたは流体処理ユニットと関連して使用される場合には、文脈において必要に応じて単数または複数、および1つまたはそれ以上の信号チャンネルまたは流体ラインを包含することが理解されるべきである。最後に、この明細書中で引用された全ての公報、特許、および特許出願は、それぞれが参照により組み入れられかつその全体が本明細書中に記載されるべく具体的かつ個別に示唆されるように、本開示内容と矛盾しない程度まで参照により本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.流出物中に存在する水の少なくとも一部を凝縮器内で凝縮する工程と、
b.凝縮器からの流出物中の水の非凝縮部分からの水を入口空気流へ移す工程と
を特徴とする、
燃焼器と、水素を含むガスが供給されるアノード側および酸素を含むガスが供給されるカソード側を有する燃料電池とを備える燃料処理システムを有する電源ユニットの水分平衡を向上させるための方法。
【請求項2】
燃料電池のカソード側、燃焼器、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される燃料処理システムの一部に供給される空気へ入口空気流を送る工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
燃料処理システムが自己熱改質を利用する、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
燃料処理システムが水蒸気改質を利用する、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項5】
カソードへの空気供給、改質反応への空気注入、排出アノードガスバーナ(waste anode gas burner)への空気注入、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される機能を実行するためにシステムの部分へ加湿された入口空気流を送る工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
加湿された入口空気流が、カソードに供給される空気、および改質反応へ注入される空気へと送られ、かつカソードからの空気がアノード排出ガスバーナへと送られる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
加湿された入口空気流が、カソードに供給される空気へと送られ、続いて排出アノードガスバーナへと送られる、請求項5記載の方法。
【請求項8】
加湿された空気流が、カソードに供給される空気へと送られ、続いて燃焼器に供給される空気へと送られる、請求項5記載の方法。
【請求項9】
流出物が、燃焼器から、カソードから、およびこれらの組み合わせから提供される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
カソード排出ガスが燃焼器への投入物として提供され、かつ燃焼器排出ガスが流出物として提供される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
流出物が燃焼器からおよびカソードから同時に提供される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
カソード排出ガス中に存在する水を使用して、燃料電池のカソード側へ供給されるガスを更に加湿する工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
流出物中の水の非凝縮部分から水を移す工程が、デシカントホイール(desiccant wheel)、水蒸気透過膜、およびナフィオン膜からなる群より選択されるデバイスによって実行される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
燃料電池のカソード側からの排出ガスを燃焼システムへ供給する前に、熱回収型熱交換器内で、燃焼システムからの流出ガスを用いて燃料電池のカソード側からの排出ガスを加熱する工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
a.流出物中に存在する水の少なくとも一部を凝縮するための凝縮器と、
b.凝縮器からの流出物中の水の非凝縮部分からの水を入口空気流へ移すための加湿器と
によって特徴付けられる、
燃焼加熱システムを含む水蒸気改質システムと、水素を含むガスが供給されるアノード側および酸素を含むガスが供給されるカソード側を有する燃料電池とを有する電源ユニットの水分平衡を向上させるための装置。
【請求項16】
燃料電池がPEM燃料電池である、請求項15記載の装置。
【請求項17】
入口空気流が、カソードに供給される空気へと送られ、カソード排出ガスが燃焼器へと送られ、かつ燃焼器排出ガスが凝縮器へと送られる、請求項15記載の装置。
【請求項18】
凝縮器が、燃焼器、カソード、またはこれらの組み合わせから排出ガスを受け取る、請求項15記載の装置。
【請求項19】
凝縮器が燃焼器からおよびカソードから排出ガスを受け取る、請求項18記載の装置。
【請求項20】
カソード排出ガス中に存在する水を使用して、燃料電池のカソード側に供給されるガスを加湿するための第2の加湿器を更に備える、請求項15記載の装置。
【請求項21】
流出物中の水の非凝縮部分から水を移すための加湿器が、デシカントホイール、水蒸気透過膜、およびナフィオン膜からなる群より選択される、請求項15記載の装置。
【請求項22】
燃料電池のカソード側からの排出ガスを燃焼システムへ供給する前に、燃焼システムからの流出ガスを用いて燃料電池のカソード側からの排出ガスを加熱するための熱回収型熱交換器を更に備える、請求項15記載の装置。
【請求項23】
燃焼システムからの逆流を防止するための、燃料電池のカソード側からの排出ガスに関係する逆止弁を更に備える、請求項15記載の装置。
【請求項24】
燃料電池のカソード側からの排出ガスの加圧を防止する、燃料電池のカソード側の排気側と凝縮器への入口との間の逆止弁を更に備える、請求項15記載の装置。
【請求項25】
酸素を含むガスの流れが燃料電池のカソード側の入口を迂回するようにする、加湿器の出口と燃料電池のカソード側の出口との間の逆止弁を更に備える、請求項15記載の装置。
【請求項26】
起動ブロワへの高温燃焼ガスの逆流を防止するための、加湿器の出口と起動燃焼器に連続する起動ブロワとの間の逆止弁を更に備える、請求項15記載の装置。
【請求項27】
カソード排出ガスからの水蒸気をカソード入口空気流へと移すための第2の加湿器を更に備える、請求項15記載の装置。
【請求項28】
デシカントホイール、水蒸気透過膜、およびナフィオン膜からなる群より選択されるトランスファーデバイスを更に備える、請求項15記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−509734(P2010−509734A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536417(P2009−536417)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/083622
【国際公開番号】WO2008/060881
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(506283798)バッテル メモリアル インスティチュート (19)
【Fターム(参考)】