説明

燃料電池

【課題】発電反応に伴ってMEAの燃料極側に発生するガス成分の除去性を高めることによって、燃料電池の発電反応の効率や経時的な安定性を向上させる。
【解決手段】燃料電池1は、膜電極接合体(MEA)12を備える起電部2と、燃料を収容する燃料収容部4と、燃料収容部4に収容された燃料を膜電極接合体12の燃料極7に供給する燃料供給機構3とを具備する。膜電極接合体12は、少なくとも電解質膜11を貫通するように設けられ、燃料極7側に生じたガス成分を空気極10側に逃がすガス抜き孔17を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体燃料を用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコンや携帯電話等の携帯用電子機器を長時間充電なしで使用可能とするために、携帯用電子機器の電源や充電器に燃料電池を用いることが試みられている。燃料電池は燃料と空気を供給するだけで発電することができ、燃料を補給すれば連続して長時間発電することが可能であるという特徴を有している。このため、燃料電池を小型化できれば、携帯用電子機器の電源や充電器として極めて有利なシステムといえる。
【0003】
直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)は小型化が可能であり、さらに燃料の取り扱いも容易であるため、携帯用電子機器の電源や充電器として有望視されている。DMFCにおける液体燃料の供給方式としては、気体供給型や液体供給型等のアクティブ方式、また燃料収容部内の液体燃料を電池内部で気化させて燃料極に供給する内部気化型等のパッシブ方式が知られている。
【0004】
これらのうち、内部気化型等のパッシブ方式はDMFCの小型化に対して有利である。パッシブ型DMFCにおいては、例えば燃料極、電解質膜および空気極を有する膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)を、箱状容器からなる燃料収容部上に配置した構造が提案されている(例えば特許文献1参照)。また、DMFCの燃料電池セルと燃料収容部とを流路を介して接続することも検討されている(特許文献2〜3参照)。
【0005】
燃料収容部から直接もしくは流路を介して導入された高濃度のメタノール燃料等を気化させて燃料極に供給する場合、MEAの燃料極側ではガス化した燃料を閉じ込めつつ、電池反応に基づいて生じる炭酸ガスや水蒸気等のガス成分を系外に放出する必要がある。このような点に対して、従来のパッシブ型等のDMFCでは燃料極側の容器側面にガス抜き孔を設け、ガス成分を系外に放出することが検討されている。
【0006】
しかしながら、DMFCの容器側面にガス抜き孔を設けた場合、発生したガス成分がMEAの周辺部から抜けていくことになるため、MEAの中央付近で生成したガス成分を十分に除去することができない。このため、DMFCの発電特性が不安定になるという問題が生じる。また、MEAの周辺部は中央付近に比べて温度が低くなるため、水蒸気の凝結によるガス抜き孔の閉塞が生じやすい。これによって、DMFCで経時的に安定した出力特性が得られなくなるという問題が生じる。
【特許文献1】国際公開第2005/112172号パンフレット
【特許文献2】特表2005−518646号公報
【特許文献3】特開2006−085952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、発電反応に伴ってMEAの燃料極側で発生するガス成分の除去性を高めることによって、発電反応の効率や経時的な安定性を向上させることを可能にした燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に係る燃料電池は、燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体を備える起電部と、液体燃料を収容する燃料収容部と、前記燃料収容部から前記燃料極に燃料を供給する燃料供給機構とを具備する燃料電池において、前記膜電極接合体は、少なくとも前記電解質膜を貫通するように設けられ、前記燃料極側に生じたガス成分を前記空気極側に逃がすガス抜き孔を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様に係る燃料電池は、発電反応に基づいて膜電極接合体の燃料極側に発生する炭酸ガスや水蒸気等のガス成分を、膜電極接合体に設けたガス抜き孔から効率よく系外に放出することができる。従って、発電反応の効率や経時的な安定性等を向上させた燃料電池を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施形態による燃料電池の構成を示す断面図である。図1に示す燃料電池1は、膜電極接合体(MEA)を備える起電部2と、起電部2に燃料を供給する燃料供給機構3と、液体燃料を収容する燃料収容部4とから主として構成されている。
【0011】
起電部2は、アノード触媒層5とアノードガス拡散層6とを有するアノード(燃料極)7と、カソード触媒層8とカソードガス拡散層9とを有するカソード(空気極/酸化剤極)10と、アノード触媒層5とカソード触媒層8とで挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜11とから構成される膜電極接合体(MEA)12を有している。アノード触媒層5やカソード触媒層8に含有される触媒としては、Pt、Ru、Rh、Ir、Os、Pd等の白金族元素の単体、白金族元素を含有する合金等が挙げられる。
【0012】
アノード触媒層5にはメタノールや一酸化炭素等に対して強い耐性を有し、かつメタノールから水素を引き抜く脱水素反応を生じさせやすいPt−RuやPt−Mo等のPt合金を用いることが好ましい。カソード触媒層8にはPt、Pt−Ni等のPt合金、Pd、Pd−Pt等のPd合金を用いることが好ましい。ただし、触媒はこれらに限定されるものではなく、触媒活性を有する各種の物質を使用することができる。触媒は炭素材料等の導電性担持体を使用した担持触媒、あるいは無担持触媒のいずれであってもよい。
【0013】
アノード触媒層5に積層されるアノードガス拡散層6は、アノード触媒層5に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、アノード触媒層5の集電機能を有するものである。カソード触媒層8に積層されるカソードガス拡散層9は、カソード触媒層8に酸化剤を均一に供給する役割を果たすと同時に、カソード触媒層8の集電機能を有するものである。アノードガス拡散層6やカソードガス拡散層9は、例えばカーボンペーパーのような導電性を有する多孔質基材で構成されている。
【0014】
電解質膜11を構成するプロトン伝導性材料としては、例えばスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸重合体のようなフッ素系樹脂(ナフィオン(商品名、デュポン社製)やフレミオン(商品名、旭硝子社製)等)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂等の有機系材料、あるいはタングステン酸やリンタングステン酸等の無機系材料が挙げられる。ただし、プロトン伝導性の電解質膜11はこれらに限られるものではない。
【0015】
上記したMEA12をアノード集電体13とカソード集電体14とで挟み込むことによって、起電部2が構成されている。アノードガス拡散層6はアノード集電体13と積層され、カソードガス拡散層9はカソード集電体14と積層されている。集電体13、14としては、例えばAuのような導電性金属材料からなるメッシュや多孔質膜等が用いられる。集電体13、14は燃料や酸化剤(空気)等を流通させる貫通孔を有している。起電部2はOリング等のシール部材15でシールされており、これによりMEA12からの燃料漏れや酸化剤漏れが防止されている。
【0016】
起電部2は図2や図3に示すように、電解質膜11を介して配置されたアノード(燃料極)7とカソード(空気極)10とで構成される単セル(単電池)16を複数有している。複数の単セル16、16…は電解質膜11の平面内に分離して配置され、かつ集電体13、14により電気的に接続されている。複数の単セル16、16…は直列に接続されている。そして、MEA12は後に詳述するように、少なくとも電解質膜11を貫通するように設けられたガス抜き孔17を有している。このガス抜き孔17は発電反応に伴ってアノード7側に発生するガス成分をカソード10側に逃がすものである。
【0017】
上述した起電部2は燃料拡散室18を形成する容器19上に配置されている。容器19は上部が開口された箱状の形状等を有している。このような容器19の開口部側にMEA12のアノード7が位置するように起電部2が配置されている。容器19内には燃料拡散材20が配置されている。燃料拡散材20は板状の多孔質材料等で形成されており、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等からなる樹脂製多孔質板が用いられる。燃料拡散材20と燃料拡散室18とは、アノード7の面方向に燃料を分散並びに拡散させつつ供給する燃料供給部21を構成するものである。
【0018】
そして、燃料拡散材20が配置された容器19上に起電部2と保湿層22とを積層し、さらにその上から例えばステンレス製のカバープレート23を被せて全体を保持することによって、第1の実施形態の燃料電池(DMFC)1の発電ユニットが構成されている。保湿層22はカソード触媒層8で生成された水の一部が含浸されて水の蒸散を抑制すると共に、カソード触媒層8への空気の均一拡散を促進するものである。カバープレート23は空気導入用の開口部を有している。なお、保湿層22とカバープレート23との間には必要に応じて表面層が配置される。表面層は空気の取入れ量を調整するものであり、空気の取入れ量に応じて個数や大きさ等が調整された複数の空気導入口を有する。
【0019】
燃料拡散材20は容器19に設けられた燃料注入部24と接している。燃料注入部24は配管のような液体燃料の流路25を介して燃料収容部4と接続されている。燃料収容部4にはMEA12に応じた液体燃料が収容されている。液体燃料としては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。液体燃料は必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料はエタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料であってもよい。燃料収容部4にはMEA12に応じた液体燃料が収容される。
【0020】
さらに、流路25にはポンプ26が介在されている。ポンプ26は燃料を循環させる循環ポンプではなく、あくまでも燃料収容部4から燃料供給部21に液体燃料を送液する燃料供給ポンプである。燃料供給部21からMEA12に供給された燃料は発電反応に使用され、その後に循環して燃料収容部4に戻されることはない。この実施形態の燃料電池1は燃料を循環しないことから、従来のアクティブ方式とは異なるものであり、装置の小型化等を損なうものではない。また、液体燃料の供給にポンプ26を使用しており、従来の内部気化型のような純パッシブ方式とも異なる。図1に示す燃料電池1は例えばセミパッシブ型と呼称される方式を適用したものである。
【0021】
ポンプ26の種類は特に限定されるものではないが、少量の液体燃料を制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能という観点から、ロータリーベーンポンプ、電気浸透流ポンプ、ダイアフラムポンプ、しごきポンプ等を使用することが好ましい。ロータリーベーンポンプはモータで羽を回転させて送液するものである。電気浸透流ポンプは電気浸透流現象を起こすシリカ等の焼結多孔体を用いたものである。ダイアフラムポンプは電磁石や圧電セラミックスによりダイアフラムを駆動して送液するものである。しごきポンプは柔軟性を有する燃料流路の一部を圧迫し、燃料をしごき送るものである。これらのうち、駆動電力や大きさ等の観点から、電気浸透流ポンプや圧電セラミックスを有するダイアフラムポンプを使用することがより好ましい。
【0022】
ポンプ26の送液能力は燃料電池1の主たる対象物が小型電子機器であることから、10μL/分〜1mL/分の範囲であることが好ましい。送液能力が1mL/分を超えると一度に送液される液体燃料の量が多くなりすぎて、全運転期間に占めるポンプ26の停止時間が長くなる。このため、MEA12への燃料の供給量の変動が大きくなり、その結果として出力の変動が大きくなる。これを防止するためのリザーバをポンプ26と燃料供給部21との間に設けてもよいが、そのような構成を適用しても燃料供給量の変動を十分に抑制することはできず、さらに装置サイズの大型化等を招いてしまう。
【0023】
一方、ポンプ26の送液能力が10μL/分未満であると、装置立ち上げ時のように燃料の消費量が増える際に供給能力不足を招くおそれがある。これによって、燃料電池1の起動特性等が低下する。このような点から10μL/分〜1mL/分の範囲の送液能力を有するポンプ26を使用することが好ましい。ポンプ26の送液能力は10〜200μL/分の範囲であることがより好ましい。このような送液量を安定して実現する上でも、ポンプ26には電気浸透流ポンプやダイアフラムポンプを適用することが好ましい。
【0024】
この実施形態の燃料電池1においては、ポンプ26を用いて燃料収容部4から燃料供給部21に液体燃料が間欠的に送液される。ポンプ26で送液された液体燃料は燃料拡散材20内を速やかに面方向に展開し、燃料拡散室18を介してMEA12のアノード(燃料極)7の全面に対して均一に供給される。すなわち、複数の単セル16、16…の各アノード(燃料極)7の平面方向に対して均一に燃料が供給され、これにより発電反応が生起される。燃料供給用(送液用)のポンプ26の運転動作は、燃料電池1の出力、温度情報、電力供給先である電子機器の運転情報等に基づいて制御することが好ましい。
【0025】
なお、燃料電池1の安定性や信頼性を高めるために、ポンプ26と直列に燃料遮断バルブを配置してもよい。燃料遮断バルブには、電磁石、モータ、形状記憶合金、圧電セラミックス、バイメタル等をアクチュエータとして、開閉動作を電気信号で制御することが可能な電気駆動バルブが適用される。燃料遮断バルブは状態保持機能を有するラッチタイプのバルブであることが好ましい。また、燃料収容部4や流路25には燃料収容部4内の圧力を外気とバランスさせるバランスバルブを装着してもよい。燃料収容部4から燃料供給機構3でMEA12に燃料を供給する場合、ポンプ26に代えて燃料遮断バルブのみを配置した構成とすることも可能である。この際の燃料遮断バルブは流路25による液体燃料の供給を制御するために設けられるものである。
【0026】
上述したように、燃料供給部21から放出された燃料はMEA12のアノード(燃料極)7に供給される。MEA12内において、燃料はアノードガス拡散層6を拡散してアノード触媒層5に供給される。液体燃料としてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層5で下記の式(1)に示すメタノールの内部改質反応が生じる。なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、カソード触媒層8で生成した水や電解質膜11中の水をメタノールと反応させて式(1)の内部改質反応を生起させる。あるいは、水を必要としない他の反応機構により内部改質反応を生じさせる。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- …(1)
【0027】
この反応で生成した電子(e-)は集電体13を経由して外部に導かれ、いわゆる電気として携帯用電子機器等を動作させた後、集電体14を経由してカソード(空気極)10に導かれる。式(1)の内部改質反応で生成したプロトン(H+)は電解質膜11を経てカソード10に導かれる。カソード10には酸化剤として空気が供給される。カソード10に到達した電子(e-)とプロトン(H+)は、カソード触媒層8で空気中の酸素と下記の式(2)にしたがって反応し、この反応に伴って水が生成する。
6e-+6H++(3/2)O2 → 3H2O …(2)
【0028】
上述した燃料電池1の発電反応において、発電する電力を増大させるためにはアノード触媒層5やカソード触媒層8で触媒反応を円滑に行わせると共に、MEA12の電極全体に均一に燃料を供給し、電極全体をより有効に発電に寄与させることが重要となる。複数の単セル16、16…を有するMEA12に対して燃料を均一に供給するためには、(a)ポンプ26の供給量自体が適量に制御されていること、(b)供給する燃料の面内拡散が均一であること、(c)発電反応により生成される炭酸ガスや水蒸気等のガス成分を速やかに除去し、供給された燃料を均一に反応部に到達させること、等が肝要である。
【0029】
ポンプ26の流量はポンプ入り口にかかる背圧に影響されるため、ポンプ26と流路25を介して接続された燃料拡散室18の内部圧力が増加するとポンプ26の流量が減少する。炭酸ガスや水蒸気等のガス成分はMEA12のアノード(燃料極)7側で発生するため、発電反応により生じるガス成分は燃料拡散室18の内部圧力の増加要因となる。さらに、ガス成分自体は供給された燃料が反応部に到達することを阻害する要因となる。すなわち、MEA12に対する燃料の均一供給性や供給量を高めるためには、発電反応で燃料極7側に生じたガス成分を速やかに系外に放出する必要がある。
【0030】
そこで、第1の実施形態の燃料電池1においては、MEA12にガス抜き孔17を設けている。ガス抜き孔17は図2や図3に示すように、MEA12の各単セル16、16…の部分にそれぞれ設けられている。すなわち、各単セル16、16…の燃料極7、電解質膜11および空気極10を貫通するように、複数のガス抜き孔17が設けられている。燃料極7側に発生したガス成分は複数のガス抜き孔17を介して空気極10側に逃がされ、さらには系外に放出される。ガス抜き孔17は単セル16内の任意の位置に任意の数で設けられるため、MEA12の面内から均一にガス成分を除去することができる。
【0031】
このように、MEA12の各部で発生するガス成分(反応生成物)を、MEA12の面内に対して均一に除去することによって、供給された燃料をMEA12全体に均一に到達させることができる。さらに、ガス成分の除去と同時に燃料拡散室18の内部圧力が低下し、ポンプ入り口にかかる背圧が低減されるため、ポンプ26による液体燃料の流量を十分に保つことができる。また、ガス抜き孔17を単セル16内に設けているため、水蒸気の凝結によるガス抜き孔17の閉塞を抑制することができる。これらによって、MEA12の各単セル16、16…に対して燃料が安定して均一かつ十分に供給されるため、MEA12全体で効率的にかつ継続的に発電反応を生起させることが可能となる。
【0032】
ガス抜き孔17の孔径は50μm以上2mm以下とすることが好ましい。ガス抜き孔17の孔径が50μm以下であると、水蒸気の凝集による閉塞等が生じ、十分なガス抜き効果を達成することが困難となる。一方、ガス抜き孔17の孔径が2mm以上の場合には、空気極10側に直接透過する燃料の量が多くなり、局部的な加熱状態が生じやすくなるため、出力の安定性等が低下するおそれがある。また、ガス抜き孔17の数はMEA12の面積やガス発生量等を考慮して適宜に設定することができる。
【0033】
MEA12の電極部分にガス抜き孔17を開ける場合、電解質膜11に比べて燃料極7や空気極10に孔径が同等以上の貫通孔を設けるようにしてもよい。例えば図4に示すように、電解質膜11および空気極10に比べて燃料極7に孔径の大きい貫通孔を設ける。これによって、電解質膜11を通じた燃料極7と空気極10との間の短絡を防止することができる。孔径の大きい貫通孔は燃料極7に設けてもよい。
【0034】
燃料極7側に孔径が大きい貫通孔を設ける場合、図5に示すように、空気極10の貫通孔の径を電解質膜11の貫通孔の径と同等もしくはそれより大きくし、集電体14の孔径を空気極10の貫通孔の径と同等もしくはそれより大きくすることが好ましい。貫通孔は電解質膜11から空気極10、集電体14の孔径が順に大きくなるように設定することがより好ましい。電解質膜11の貫通孔の孔径をD1、空気極10の貫通孔の孔径をD2、集電体14の貫通孔の孔径をD3としたときにD1≦D2≦D3とすることによって、ガス抜き孔17の圧力損失が低減されるため、ガス成分を速やかに排出することができる。
【0035】
ところで、集電体14上には保湿層22が積層されている。保湿層22は透気性を有する部材で構成されているため、そのままの状態でもガス抜き孔17を通過したガス成分を系外に排出することができる。ただし、ガス成分の系外への放出性を高める上で、保湿層22のガス抜き孔17に対応する位置に貫通孔27を形成することが好ましい。この際、貫通孔の孔径は図5と同様に、電解質膜11から空気極10、集電体14、保湿層22の順に大きくなるように設定することが好ましい。
【0036】
保湿層22に設けるガス抜き部(図6では貫通孔27)は、図7に示すように肉薄部28であってもよい。このように、保湿層22のガス抜き孔17に対応する部分の透気抵抗度を他の部分より低下させることによって、ガス成分の放出性を高めることができる。従って、保湿層22のガス抜き孔17に対応する部分に透気抵抗度の低い配置することによっても、貫通孔27や肉薄部28と同様な効果を得ることができる。
【0037】
この実施形態の燃料電池1ではガス抜き孔17の形成位置に基づいて水蒸気の凝結によるガス抜き孔17の閉塞を抑制している。ただし、ガス抜き孔17はMEA12が水分を吸収して膨張することで閉塞するおそれがある。そこで、ガス抜き孔17の内壁面を固定して孔径を維持するような構成を採用することができる。ガス抜き孔17の孔径維持手段としては、例えば図8に示すようなハトメ29が挙げられる。また、ガス抜き孔17の周囲を焼き固めることによっても、孔径の収縮を抑制することができる。
【0038】
例えば、針状物でMEA12にガス抜き孔17を形成する際に、針状物に加熱機構を接続しておくことによって、針状物でガス抜き孔17の形成とその周囲の焼き固めとを同時に実施することができる。ガス抜き孔17の周囲の焼き固めに代えて、樹脂等でガス抜き孔17の内壁面を含む周囲を固めてもよい。このような孔径維持手段をガス抜き孔17に適用することによって、MEA12の膨張によるガス抜き孔17の閉塞を防止することができる。上記したような孔径維持手段は、後述する電解質膜11のみにガス抜き孔17を形成する場合にも適用可能である。
【0039】
第1の実施形態の燃料電池1においては、平面的に配置されかつ電気的に接続された複数の単セル16、16…を備えるMEA12の燃料極7に、ポンプ26を用いて電池反応に必要な量の液体燃料を間欠的に送液している。送液された液体燃料は燃料拡散材20で平面内に均一に拡散されるため、安定した出力を得ることができる。また、送液する液体燃料は高濃度の燃料であり、発電に見合った液体燃料を少量ずつ送り込むため、液体燃料の送液系は省スペース化することができる。その上で、MEA12に外部に通じるガス抜き孔17を設けているため、反応により発生する炭酸ガスや水蒸気等のガス成分を系外に逃がして、燃料極7側の内部圧力を低圧状態に保つことができる。
【0040】
従来の容器側面に設けたガス抜き孔では、発生するガスが周辺部から抜けるため、電極中央部での反応生成物の除去が不十分となり、安定した発電特性を得ることができない。さらに、周辺部では温度が中央部に比べて低くなるため、水蒸気の凝結による閉塞を生じやすく、経時的に安定した出力特性が得られない。このような点に対して、ガス抜き孔17をMEA12に設けることで、生成するガス成分を速やかに除去することが可能になる。さらに、ガス抜き孔17を温度の高い位置に存在させることができるため、水蒸気の凝結による閉塞を生じにくくし、出力の安定性を高めることが可能となる。
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態による燃料電池について、図9および図10を参照して説明する。図9および図10は第2の実施形態の燃料電池の起電部2を示している。なお、図9および図10では燃料供給部、流路、燃料供給ポンプ、燃料収容部等の図示を省略したが、第2の実施形態の燃料電池はこれら各要素を具備しており、各要素の具体的な構成は前述した第1の実施形態の燃料電池1と同様である。
【0042】
第2の実施形態の燃料電池において、ガス抜き孔17はMEA12の各単セル16、16…間に相当する部分、具体的には電解質膜11のみが存在する部分に設けられている。ガス抜き孔17は単セル16、16…間に相当する部分に設けてもよく、これによっても生成するガス成分を速やかに除去することが可能になる。ガス抜き孔17は温度が高いMEA12の中央付近に存在するため、水蒸気の凝結による閉塞を生じにくくし、出力の安定性を高めることが可能となる。MEA12の温度分布等によっては、図11に示すようにガス抜き孔17を単セル16の周囲に相当する電解質膜11の部分に形成してもよい。図10に示すガス抜き孔17と図11に示すガス抜き孔17は組合せてもよい。
【0043】
MEA12の各単セル16、16…間に相当する部分にガス抜き孔17を形成する場合、炭酸ガス等のガス成分と共に燃料が系外に排出させるおそれがある。そこで、ガス抜き孔17の周囲や上部(空気極10側)に触媒フィルタを設置することができる。これによって、ガス成分と共に流動する燃料の酸化反応を促進し、燃料の系外への流出を抑制することができる。触媒フィルタとしては、触媒層と同様な触媒を多孔質状態に成形したものを使用することができる。触媒フィルタ30はガス抜き性を阻害しないような透気性を有することが好ましい。なお、触媒フィルタは第1の実施形態に適用してもよい。
【0044】
図12はガス抜き孔17の上部に円柱状の触媒フィルタ30を配置した構成を示している。この際、保湿層22に円形の貫通孔27を形成し、その中に触媒フィルタ30を配置する。これによって、触媒フィルタ30の配置位置を安定させることができる。図13は電解質膜11のガス抜き孔17にハトメ29を設け、その中に触媒フィルタ30を配置した構成を示している。触媒フィルタ30は図14に示すように、保湿層22に肉薄部28を設けるための穴内に配置してもよい。このように、触媒フィルタ30はガス抜き孔17の近傍の種々の位置に配置することができる。
【0045】
なお、上述した各実施形態では燃料を面方向に分散させつつ供給する燃料供給部21として燃料拡散室18内に配置した燃料拡散材20を適用しているが、燃料供給部の構成はこれに限られるものではない。燃料供給部21は例えば図15および図16に示すように、燃料注入口31と複数の燃料排出口32とを細管33のような燃料通路で接続した燃料分配板34で構成することも可能である。燃料通路は燃料分配板34内に形成した細管33に代えて燃料流通溝等で構成してもよい。この場合、燃料流通溝を有する流路板を複数の燃料排出口を有する拡散板で覆うことによって、燃料供給部21が構成される。
【0046】
図15および図16に示す燃料供給部21は、液体燃料が流入する少なくとも1個の燃料注入口31と、液体燃料もしくはその気化成分を排出する複数個の燃料排出口32とを有する燃料分配板34を備えている。燃料分配板34の内部には、液体燃料の通路として機能する細管33が形成されている。細管33の一端(始端部)には燃料注入口31が設けられている。細管33は途中で複数に分岐しており、これら分岐した細管33の各終端部に燃料排出口32がそれぞれ設けられている。細管33は例えば内径が0.05〜5mmの貫通孔であることが好ましい。
【0047】
燃料注入口31から燃料分配板34内に導入された液体燃料は、複数に分岐した細管33を介して複数の燃料排出口32にそれぞれ導かれる。このような燃料供給部21を使用することによって、燃料注入口31から燃料分配板34内に注入された液体燃料を方向や位置に係わりなく、複数の燃料排出口32に均等に分配することができる。従って、MEAの面内における発電反応の均一性をより一層高めることが可能となる。さらに、細管33で燃料注入口31と複数の燃料排出口32とを接続することによって、燃料電池の特定箇所により多くの燃料を供給するような設計が可能となる。これはMEAの発電度合いの均一性の向上等に寄与する。
【0048】
燃料排出口32から放出された燃料は、燃料極7での発電反応を経て水と炭酸ガスとになる。発電反応で生じた炭酸ガス等はガス抜き孔17を通って系外に排出される。従って、ガス抜き孔17が燃料排出口32の近くに形成されていると、未反応の燃料までガス抜き孔17から空気極10側、さらに系外に排出されるおそれがある。そこで、ガス抜き孔17は平面視したときに燃料排出口32と実質的に重複しない位置に形成することが好ましい。これによって、燃料の利用効率を高めて発電反応を向上させると共に、未反応の燃料の空気極10や系外への流出を抑制することが可能となる。燃料排出口32が複数個存在する場合、ガス抜き孔17は平面視したときに近接する2つの燃料排出口32を結ぶ線の実質的に中間に相当する位置に形成することが好ましい。
【0049】
上述した各実施形態の燃料電池は、各種の液体燃料を使用した場合に効果を発揮し、液体燃料の種類や濃度は限定されるものではない。ただし、燃料を面方向に分散させつつ供給する燃料供給部21は特に燃料濃度が濃い場合に有効である。このため、各実施形態の燃料電池1は濃度が80%以上のメタノールを液体燃料として用いた場合に、その性能や効果を特に発揮することができる、従って、各実施形態はメタノール濃度が80%以上のメタノール水溶液や純メタノールを液体燃料として用いた燃料電池に好適である。
【0050】
さらに、上述した各実施形態は本発明をセミパッシブ型の燃料電池に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。MEAに設けられるガス抜き孔は純パッシブ型の燃料電池に対しても適用可能である。このように、本発明はパッシブ型やセミパッシブ型等の燃料電池に適用することができ、これらの場合に発電反応により生じるガス成分の除去に伴う効果を得ることができる。
【0051】
ところで、上述した各実施形態の燃料電池1においては、MEA12にガス抜き孔17を設けているため、アノード(燃料極)7側で発生した炭酸ガスや水蒸気等のガス成分に加えて、メタノール等の燃料自体もカソード(空気極)10側に流出するおそれがある。メタノール等の燃料がカソード10側に流出する、いわゆるクロスオーバーが起こると、カソード10側で未反応のメタノール等の燃料が酸化反応を起こし、カソード触媒層8の触媒活性を低下させたり、また前述した式(2)による発電反応を阻害する。これらは燃料電池1の出力電圧を低下させる要因となる。
【0052】
このような点に対して、カソード触媒層8の単位面積当たりの触媒量を1mg/cm2以上とすることが有効である。カソード触媒層8の触媒量を1mg/cm2以上とすることによって、カソード10側で未反応のメタノール等が酸化反応を起こした場合においても、発電反応を進行させるのに十分な触媒量を確保することができる。これによって、MEA12にガス抜き孔17を設けた燃料電池1の出力電圧を維持することが可能となる。
【0053】
さらに、カソード触媒層8はメタノール等の酸化反応性(酸化活性)が低いPdやPd合金を触媒として含むことが好ましい。触媒としてPdやPd合金を含むカソード触媒層8によれば、カソード10側における未反応のメタノール等の酸化反応が抑制されるため、メタノール等の酸化反応に基づく触媒活性の低下、またカソード10側での発電反応の低下を防止することができる。これによって、MEA12にガス抜き孔17を設けた燃料電池1の出力電圧を良好に保つことが可能となる。
【0054】
カソード触媒層8に適用するPd合金としては、Pt、Ir、CoおよびNiから選ばれる少なくとも1種を含み、残部がPdからなる合金が挙げられる。これらのうちでも、特にPd−Pt合金を適用することが好ましい。このようなPd合金、もしくはPd単体を含むカソード触媒層8は、上述した1mg/cm2以上の触媒量と組合せて適用することが特に効果的である。これらによって、MEA12にガス抜き孔17を設けた燃料電池1の出力電圧をより良好に保つことが可能となる。
【実施例】
【0055】
次に、本発明の燃料電池の具体例およびその評価結果について述べる。なお、本発明の目的は簡素化かつ小型化された燃料電池であるので、先にも述べたようにシステムが極めて複雑で小型化が困難な従来の希釈燃料循環型の燃料電池は比較対象外とし、小型化の可能性がある液体供給型の燃料電池と比較する。
【0056】
(実施例1)
図3に起電部(MEA)の平面構成を示した燃料電池を以下のようにして作製した。まず、予め中央部に開口径が1mmの孔を形成したカーボンペーパー上にPt−Ru系触媒層(10mm×60mm)を塗布して燃料極を形成した。次いで、カーボンペーパー上にPtブラック触媒層(10mm×60mm)を塗布して空気極を形成した。これらを1組とする単セルを3組形成し、各単セルの触媒層が電解質膜と接するようにして、パーフルオロスルホン酸膜からなる電解質膜を挟持した。これらを120℃×5分間の条件下で、100kg/cm2の圧力でホットプレス接合してMEAを作製した。さらに、図3に示したように各セルの中央部に開口径が0.2mmの貫通孔をガス抜き孔として形成した。
【0057】
上記したMEAを集電体で挟み込んで起電部を形成し、この起電部と燃料拡散材とを容器に組み込んで、発電面積が18cm2の発電ユニットを作製した。燃料拡散材としては、平均孔径が10μm、気孔率が30%のポリエチレン製多孔質板を用いた。そして、発電ユニットと燃料収容部とを燃料供給ポンプを介して接続し、実施例1の液体燃料電池を作製した。この燃料電池に液体燃料としてメタノールをポンプで間欠的に供給して発電を行った。酸化剤ガスは自発的に取り込まれる空気を使用した。
【0058】
(実施例2)
図10に起電部(MEA)の平面構成を示した燃料電池を以下のようにして作製した。まず、カーボンペーパー上にPt−Ru系触媒層(10mm×60mm)を塗布して燃料極を形成した。次いで、カーボンペーパー上にPtブラック触媒層(10mm×60mm)を塗布して空気極を形成した。これらを1組とする単セルを3組形成し、各単セルの触媒層が電解質膜と接するようにして、パーフルオロスルホン酸膜からなる電解質膜を挟持した。これらを120℃×5分間の条件下で、100kg/cm2の圧力でホットプレス接合してMEAを作製した。さらに、図10に示した配置で電解質膜に開口径が1mmの貫通孔をガス抜き孔として形成した。
【0059】
上記したMEAを集電体で挟み込んで起電部を形成し、この起電部と燃料拡散材とを容器に組み込んで、発電面積が18cm2の発電ユニットを作製した。燃料拡散材としては、平均孔径が10μm、気孔率が30%のポリエチレン製多孔質板を用いた。そして、発電ユニットと燃料収容部とを燃料供給ポンプを介して接続し、実施例2の液体燃料電池を作製した。この燃料電池に液体燃料としてメタノールをポンプで間欠的に供給して発電を行った。酸化剤ガスは自発的に取り込まれる空気を使用した。
【0060】
(比較例1)
起電部に貫通孔(ガス抜き孔)を形成しない以外は、実施例1と同様にして起電部を形成した。この起電部を燃料室の側面に0.1mmの孔を形成した容器に組み込んで、発電面積が18cm2の発電ユニットを作製した。そして、発電ユニットと燃料収容部とを燃料供給ポンプを介して接続し、比較例1の液体燃料電池を作製した。この燃料電池に液体燃料としてメタノールをポンプで間欠的に供給して発電を行った。酸化剤ガスは自発的に取り込まれる空気を使用した。
【0061】
実施例1〜2および比較例1による各燃料電池の時間−出力特性を図17に示す。図17から明らかなように、実施例1および実施例2の燃料電池はいずれも燃料の間欠的な注入により周期的な出力の変動を繰り返しながら経時的に安定した出力特性が得られている。これに対し、比較例1では各セルに対する燃料の拡散が不均一であるため、出力レベルが低く、さらに経時的にはガス抜き孔の閉塞により出力密度が低下することが分かる。
【0062】
(実施例3)
上述した実施例1および実施例2の燃料電池において、カソード触媒層のPt量(触媒量)を、それぞれ0.5mg/cm2、1mg/cm2、1.8mg/cm2、2.2mg/cm2に変化させる以外は、実施例1および実施例2と同様にして燃料電池を作製した。これら各燃料電池の出力電圧を、MEAにガス抜き孔を形成しない以外は同様にして作製した燃料電池の出力電圧と比較し、ガス抜き孔の形成に基づく出力損失(%)を測定、評価した。これらの結果を図18に示す。
【0063】
図18から明らかなように、カソードの触媒量を0.5mg/cm2とした燃料電池はガス抜き孔の形成に基づく出力損失が大きいのに対して、カソードの触媒量を1.0mg/cm2以上とした燃料電池はいずれも出力損失が小さいことが分かる。このように、カソードの触媒量を1mg/cm2以上とすることによって、MEAにガス抜き孔を設けた場合においても、燃料電池の出力電圧を維持することが可能となる。
【0064】
さらに、上述した各燃料電池の負荷電流特性を測定した。その結果を図19に示す。図19において、試料1はPt量(触媒量)を0.5mg/cm2とした燃料電池、試料2はPt量(触媒量)を1mg/cm2とした燃料電池、試料3はPt量(触媒量)を1.8mg/cm2とした燃料電池、試料4はPt量(触媒量)を2.2mg/cm2とした燃料電池である。試料5はカソード触媒としてPtに代えてPd−50at.%Pt合金(触媒量:2.0mg/cm2)を用いた燃料電池である。
【0065】
図19から明らかなように、カソードの触媒量を1.0mg/cm2以上とした燃料電池はいずれも負荷電流に対する出力低下が少なく、良好な負荷電流特性を有していることが分かる。さらに、カソード触媒としてPd−Pt合金を用いた燃料電池(試料5)は出力低下がほとんど起こらず、さらに良好な負荷電流特性を有していることが分かる。このように、カソード触媒としてはPdやPd合金が有効である。
【0066】
なお、本発明は液体燃料を使用した各種の燃料電池に適用することができる。また、燃料電池の具体的な構成や燃料の供給状態等も特に限定されるものではなく、MEAに供給される燃料の全てが液体燃料の蒸気、全てが液体燃料、または一部が液体状態で供給される液体燃料の蒸気等、種々形態に本発明を適用することができる。実施段階では本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。さらに、上記実施形態に示される複数の構成要素を適宜に組合せたり、また実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除する等、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施形態による燃料電池の構成を示す図である。
【図2】図1に示す燃料電池の起電部を示す断面図である。
【図3】図2に示す起電部の平面図である。
【図4】図2に示す起電部のガス抜き孔の構成例を示す断面図である。
【図5】図2に示す起電部のガス抜き孔の他の構成例を示す断面図である。
【図6】図2に示すガス抜き孔上の保湿層の構成例を示す断面図である。
【図7】図2に示すガス抜き孔上の保湿層の他の構成例を示す断面図である。
【図8】図2に示すガス抜き孔に孔径維持手段を付加した状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態による燃料電池の起電部を示す断面図である。
【図10】図9に示す起電部の平面構成の一例を示す図である。
【図11】図9に示す起電部の平面構成の他の例を示す図である。
【図12】図9に示すガス抜き孔に触媒フィルタを付加した状態の構成例を示す断面図である。
【図13】図9に示すガス抜き孔に触媒フィルタを付加した状態の他の構成例を示す断面図である。
【図14】図9に示すガス抜き孔に触媒フィルタを付加した状態のさらに他の構成例を示す断面図である。
【図15】本発明の燃料電池に用いられる燃料供給部の他の例を示す斜視図である。
【図16】図15に示す燃料供給部の平面図である。
【図17】実施例1、2による燃料電池の時間−出力特性を示す図である。
【図18】実施例3による燃料電池の触媒量と出力損失との関係を示す図である。
【図19】実施例3による燃料電池の出力電圧の負荷電流特性を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1…燃料電池、2…起電部、3…燃料供給機構、4…燃料収容部、5…アノード触媒層、6…アノードガス拡散層、7…アノード(燃料極)、8…カソード触媒層、9…カソードガス拡散層、10…カソード(空気極)、11…電解質膜、12…MEA、13…アノード集電体、14…カソード集電体、16…単セル、17…ガス抜き孔、18…燃料拡散室、19…容器、20…燃料拡散材、21…燃料供給部、22…保湿層、24…燃料注入部、25…流路、26…ポンプ、27…貫通孔、28…肉薄部、29…ハトメ、30…触媒フィルタ、31…燃料注入口、32…燃料排出口、33…細管、34…燃料分配板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体を備える起電部と、
液体燃料を収容する燃料収容部と、
前記燃料収容部から前記燃料極に燃料を供給する燃料供給機構とを具備する燃料電池において、
前記膜電極接合体は、少なくとも前記電解質膜を貫通するように設けられ、前記燃料極側に生じたガス成分を前記空気極側に逃がすガス抜き孔を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、
前記起電部は前記電解質膜を介して配置された前記燃料極と前記空気極とで構成される単セルを複数有し、前記複数の単セルは前記電解質膜の平面内に分離して配置され、かつ電気的に接続されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池において、
前記ガス抜き孔は前記単セルの部分に前記燃料極、前記電解質膜および前記空気極を貫通するように設けられていることを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池において、
前記燃料極または前記空気極に設けられた貫通孔の径は前記電解質膜に設けられた貫通孔の径と同等もしくはそれより大きいことを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
請求項2記載の燃料電池において、
前記ガス抜き孔は前記単セル間に相当する前記電解質膜の部分に設けられていることを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
請求項2記載の燃料電池において、
前記ガス抜き孔は前記単セルの周囲に相当する前記電解質膜の部分に設けられていることを特徴とする燃料電池。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の燃料電池において、
前記燃料供給機構は、前記燃料収容部と流路を介して接続され、前記燃料極の面方向に前記燃料を分散させつつ供給する燃料供給部を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項8】
請求項7記載の燃料電池において、
前記燃料供給機構は、さらに前記流路に設けられた燃料供給ポンプを備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項9】
請求項7または請求項8記載の燃料電池において、
前記燃料供給部は、前記燃料収容部から前記流路を介して流入した液体燃料を面方向に拡散させつつ気化させる燃料拡散材と、前記燃料拡散材と前記燃料極との間に設けられた燃料拡散室とを備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項10】
請求項7または請求項8記載の燃料電池において、
前記燃料供給部は、前記燃料収容部から前記流路を介して前記液体燃料が流入する燃料注入口と、前記燃料注入口と燃料通路を介して接続された複数の燃料排出口とを有する燃料分配板を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項11】
請求項10記載の燃料電池において、
前記ガス抜き孔は平面視したときに前記燃料排出口と実質的に重複しない位置に設けられていることを特徴とする燃料電池。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項記載の燃料電池において、
前記ガス抜き孔はその内壁面を固定して孔径を維持する孔径維持手段を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれか1項記載の燃料電池において、
前記ガス抜き孔の近傍には触媒フィルタが配置されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のいずれか1項記載の燃料電池において、
さらに、前記膜電極接合体の前記空気極上に積層された保湿層を具備し、前記保湿層は前記ガス抜き孔に対応する位置に設けられた貫通孔または薄肉部を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項15】
請求項1ないし請求項14のいずれか1項記載の燃料電池において、
前記燃料はメタノール濃度が80%以上のメタノール水溶液または純メタノールであることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−243800(P2008−243800A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6449(P2008−6449)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000221339)東芝電子エンジニアリング株式会社 (238)
【Fターム(参考)】