説明

燃料電池

【課題】金属フレームを用いた積層補助器の結合性及びガスシール性を同時に確保することができる燃料電池を提供すること。
【解決手段】固体酸化物形燃料電池1においては、燃焼器7及び改質器9を構成するために、第1〜第5金属フレーム71〜75の間に第1〜第4ガスシール部76〜79を積層して配置し、それらを(燃料電池スタック5とともに)第1〜第8締結部材111〜118を用いて積層方向に押圧して締め付けて固定している。従って、第1〜第4ガスシール部76〜79は、締め付けられた際に、接触面において(各金属フレーム71〜75より)優先的に変形し、各金属フレーム71〜75との密着性が向上する。これにより、ガスシール性を維持しながらも、ロウ付けを不要とする積層構造を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤ガス及び燃料ガスを用いるとともに、例えばそれらのガスの予熱等を行う各種の補助器を備えた燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料電池として、電解質に固体酸化物を用いた固体酸化物形燃料電池(以下SOFCとも記す)が知られている。
このSOFCは、例えば板状の固体電解質体の各面に燃料極と空気極とを備えた燃料電池セルを、多数積層してスタック(燃料電池スタック)を形成し、燃料極に燃料ガスを供給するとともに、空気極に空気を供給し、燃料及び空気中の酸素を固体電解質体を介して化学反応させることによって電力を発生させるものである。
【0003】
この固体酸化物形燃料電池は、600〜1000℃という高温で動作させるので、固体酸化物形燃料電池の運転温度を維持するための構造が必要になっている。
例えば下記特許文献1には、燃料電池スタックを、外部から供給される空気を加熱するための熱交換層や、外部から供給される燃料ガス(主に都市ガス、天然ガスなど)を改質するための改質層などの補助層(積層補助器)で挟み込んで一体化する構造が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2では、積層補助器を、複数の板状の金属フレームを積層してロウ付けにて一体化した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−136315号公報
【特許文献2】特開2009−93923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記引用文献2の技術では、ロウ付けによって、金属フレーム同士の結合と金属フレーム間のガスシールとを同時に確保することは容易ではないという問題があった。
【0007】
つまり、金属フレーム同士をロウ付けする場合には、金属フレームの全面にわたってロウ付けする必要があるが、金属フレーム材は、製造工程上、通常は若干湾曲しているので、複数の金属フレームが密着するように完全にロウ付けすることは容易ではなかった。
【0008】
しかも、金属フレーム自体、複雑なガス流路を形成するために、複雑な形状に加工されているので、この点からも、金属フレーム同士の完全なロウ付けは容易ではなかった。
そのため、金属フレーム同士の確実な結合やガスシール性を確保することは容易では無いという問題があった。
【0009】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、金属フレームを用いた積層補助器の結合性及びガスシール性を同時に確保することができる燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、請求項1に記載の様に、燃料電池の発電反応にあたって、酸化剤ガス又は燃料ガスの予熱、発電後の残余燃料ガスの燃焼、燃料ガスを生成するための液体原料の気化、及び燃料ガスの改質の各機能のうち、少なくとも1種の機能を有し、複数の板状の金属フレームを積層してなる積層補助器を備えた燃料電池であって、前記積層補助器は、隣り合う二つの前記金属フレームの間に介在し、前記金属フレームとともに積層され前記金属フレームより強度が低い板状のガスシール部と、前記金属フレームと前記ガスシール部とを積層方向に締め付けて固定する締結部材と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明では、金属フレーム間にガスシール部を積層して配置し、それらを締結部材を用いて積層方向に押圧して締め付けて固定する。
従って、ガスシール部は、締結部材によって締め付けられた際に、接触面において(金属フレームより)優先的に変形し、金属フレームとの密着性が向上する。これにより、ガスシール性を維持しながらも、ロウ付けを不要とする積層構造を実現できる。つまり、本発明により、金属フレームを用いた積層補助器の結合性及びガスシール性を同時に確保することができる。
【0012】
ここで、前記酸化剤ガス又は燃料ガスの予熱としては、排ガスとの熱交換による予熱、及び/又は、燃料電池本体(積層補助器以外の発電を行う燃料電池スタック等の構成)からの予熱が挙げられる。
【0013】
(2)本発明では、請求項2に記載の様に、ガスシール部は、マイカ又はバーミキュライトから構成してもよい。
マイカ又はバーミキュライトは、ガスシール性や耐熱耐久性や加工性等が高く、ガスシール部の材料として好適である。なお、これ以外にも、セラミックス(ガラスを含む)を主成分とした材料は、高温で化学的に安定で、しかも、ガス透過性が低いので、ガスシール部の材料として採用することができる。
【0014】
(3)本発明では、請求項3に記載の様に、締結部材として、金属フレーム及びガスシール部を積層方向に貫通して挿通される貫通部材(例えばボルト)と、貫通部材の少なくとも一端に設けられて、金属フレームとガスシール部とを積層方向に締め付ける相手部材(例えばナット)と、を採用できる。
【0015】
この締結部材によって、金属フレームとガスシール部とを容易に且つ確実に固定することができる。
(4)本発明では、請求項4に記載の様に、燃料電池を、板状の燃料電池セルから構成された燃料電池スタックと積層補助器とを積層したものとし、締結部材として、積層補助器の積層方向における固定と燃料電池スタックの積層方向における固定とを兼用する部材を採用できる。
【0016】
この締結部材によって、燃料電池スタックと積層補助器を容易に且つ確実に一体に固定することができる。
(5)本発明では、請求項5に記載の様に、積層補助器として、燃料ガスを改質する改質触媒を有する改質器、又は、前記発電後の残余燃料ガスを燃焼させる燃焼触媒を有する燃焼器が挙げられる。
【0017】
従来の様に、ロウ付けよって積層補助器を製造する場合には、触媒を積層補助器の内部入れた状態でロウ付けすると、ロウ付けの際の加熱によって触媒が劣化する恐れがあるが、本発明では、締結部材によって積層補助器を固定するので、ロウ付けの際の加熱による劣化を防ぐことができる。
【0018】
(6)本発明では、請求項6に記載の様に、ガスシール部に、発電に用いられる酸化剤ガス及び/又は燃料ガスを分配するガス分配流路を設けてもよい。
これにより、金属フレームやガスシール部を3次元的に組み上げて、複雑なガスの流路を容易に形成することができる。また、ガスシール部のガス分配流路を利用して、積層補助器の平面方向における一端から他端にガスを流すことができる。更に、ガスの混合効果を高めたり、触媒に均一にガスがゆき渡るように、容易にガス分配流路を形成することができる。なお、ガスシール部にガス分配流路を設けることにより、金属フレームに設ける場合に比べて、その加工が容易であるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1の固体酸化物形燃料電池の平面図である。
【図2】図1のA方向から見た固体酸化物形燃料電池の側面図である。
【図3】固体酸化物形燃料電池セルを分解した状態を示す説明図である。
【図4】積層補助器を分解した状態を示す説明図である。
【図5】固体酸化物形燃料電池内部のガス流路を模式的に示す説明図である。
【図6】実施例2における積層補助器を分解した状態を示す説明図である。
【図7】実施例3の固体酸化物形燃料電池を模式的に示し、(a)はその平面図、(b)はその縦断面図である。
【図8】実施例4の固体酸化物形燃料電池を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明が適用された固体酸化物形燃料電池の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0021】
a)まず、本実施例の固体酸化物形燃料電池の概略構成について説明する。
図1及び図2に示すように、固体酸化物形燃料電池1は、燃料ガス(例えば水素)と酸化剤ガス(例えば空気)との供給を受けて発電を行う装置である。
【0022】
この固体酸化物形燃料電池1は、図2に示すように、発電単位である平板形の燃料電池セル3が複数個積層された燃料電池スタック5と、燃料電池スタック5の積層方向の一方の側(同図下側)に配置された2つの積層補助器7、9とを備えている。そして、この燃料電池スタック5と両積層補助器7、9とは、燃料電池スタック5及び両積層補助器7、9を積層方向に貫く複数の締結部材(第1〜第8締結部材)11〜18によって、一体に固定されている。なお、この締結部材11〜18は、後述するようにボルト(貫通部材)及びナットから構成されている。以下、各構成について説明する。
【0023】
・図3に分解して示すように、前記燃料電池セル3は、いわゆる燃料極支持膜形タイプの燃料電池セルであり、燃料ガス流路37側には、燃料極(アノード)39が配置されるとともに、燃料極39の図3上側の表面には薄膜の固体電解質体(固体酸化物体)41が形成される。その固体酸化物体41の空気流路45側の表面には、空気極(カソード)43が形成されている。なお、前記燃料電池スタック5は、複数個の燃料電池セル3が電気的に直列に接続されたものである。
【0024】
固体酸化物体41としては、YSZ、ScSZ、SDC、GDC、ペロブスカイト系酸化物等の材料が使用できる。また、燃料極37としては、Ni及びNiとセラミックとのサーメットが使用でき、空気極43としては、ペロブスカイト系酸化物、各種貴金属及び貴金属とセラミックとのサーメットが使用できる。
【0025】
空気極43と図3上方の金属製のインターコネクタ47との間には、その導通を確保するために集電体49が配置されている。なお、ここでは、燃料極39と固体酸化物体41と空気極43とをセル本体51と称する。
【0026】
詳しくは、燃料電池セル3は、上下一対の金属製のインターコネクタ47、47の間に、空気流路45側の金属製の四角枠状の空気極フレーム53と、セラミックス製の四角枠状の絶縁フレーム55と、セル本体51を接合して配置するとともにガス流路を遮断する金属製の四角枠状のセパレータ57と、燃料ガス流路37側の金属製の四角枠状の燃料極フレーム59とを備えている。なお、インターコネクタ47と各部材(絶縁フレーム55、燃料極フレーム59など)との間には、ガスシール性を確保するために、ロウ付けやガスシール材を適宜採用することができる。
【0027】
つまり、インターコネクタ(その外周縁部)47と空気極フレーム53と絶縁フレーム55とセパレータ(その外周縁部)57と燃料極フレーム59とにより、燃料電池セル3の枠部61が構成されており、この枠部61に、前記締結部材11〜18が貫挿される挿通孔63が形成されている。
【0028】
・図4に模式的に示すように、前記積層補助器7、9は、燃料電池スタック5の発電を補助する平板形の層であり、酸化剤ガス又は燃料ガスの予熱、発電後の残余燃料ガス(即ち発電に使用された燃料ガス以外の残りの燃料ガス)の燃焼、燃料ガスを生成するための液体原料の気化、及び燃料ガスの改質の各機能のうち、少なくとも1種の機能を有するものである。
【0029】
本実施例では、積層補助器7、9として、燃料電池スタック5の一方(図4下方)において、その上側に、発電後の残余燃料ガスの燃焼させる燃焼器7を備えるとともに、燃焼器7の下側に、燃料ガスの改質を行う改質器9を備えた例について説明する。
【0030】
前記燃焼器7及び改質器9は、図5に分解して示す様に、5枚の正方形の板状の金属フレーム(金属プレート)71〜75と、4枚の正方形の(例えばマイカからなる)板状のガスシール部(マイカプレート)76〜79とを交互に積層することにより一体に構成されている。なお、金属フレーム71〜75の材料としては、例えばステンレス鋼、好ましくは熱膨張係数がセラミックスと整合性が取れるステンレス鋼が挙げられる。より具体的には、燃料電池スタック5の構成部材として好適に使用されるフェライト系ステンレスであるSUS430、SUS444などが挙げられる。
【0031】
詳しくは、燃焼器7及び改質器9は、(図5の左側上方より)第1金属フレーム71、第1ガスシール部76、第2金属フレーム72、第2ガスシール部77、第3金属フレーム73、第3ガスシール部78、第4金属フレーム74、第4ガスシール部79、第5金属フレーム75の順番に積層されている。
【0032】
このうち、燃焼器7は、第1金属フレーム71、第1ガスシール部76、第2金属フレーム72、第2ガスシール部77、第3金属フレーム73から構成され、改質器9は、第3金属フレーム73(燃焼器7と共有)、第3ガスシール部78、第4金属フレーム74、第4ガスシール部79、第5金属フレーム75から構成されている。
【0033】
なお、各金属フレーム71〜75及び各ガスシール部76〜79の周縁部には、同図に示す様に、各締結部材11〜18が挿通される挿通孔63を形成する開口81が、それぞれ8箇所にあけられている。
【0034】
そして、前記燃焼器7においては、第1ガスシール部76と第2金属フレーム72と第3ガスシール部77の中央に、それぞれ正方形の開口部83〜85が設けられており、(各フレームの積層時に)この開口部83〜85が重なり合って中空の内部室87が形成される。また、第1ガスシール部76と第3ガスシール部77には、前記周縁部の開口81と内部室87とを連通するために、図示するようなガス流路となる切り欠き89が複数形成されている。
【0035】
この内部室87には、発電後の残余燃料ガスと同様な残余空気(即ち発電に使用された空気以外の残った空気)とを混合して燃焼させるために、燃焼触媒(例えば、Pt触媒、Pd触媒など)91が例えば100cc充填されている。これにより、燃料電池セル3の通過ガスの中に含まれている未燃ガスが燃焼されて無害化される。
【0036】
一方、前記改質器9においては、第3ガスシール部78と第4金属フレーム74と第4ガスシール部79との中央には、それぞれ正方形の開口部93〜95が設けられており、(各フレームの積層時に)この開口部93〜95が重なり合って中空の内部室97が形成される。また、第3ガスシール部78と第4ガスシール部77にも、前記周縁部の開口81と内部室97とを連通するために、図示するようなガス流路99となる切り欠きが複数形成されている。
【0037】
この内部室97には、改質触媒(例えば、Ni触媒、Ru触媒、Rh触媒、Pt触媒など)101が例えば100cc充填されている。これにより、外部から供給される炭化水素ガス(主に都市ガス、天然ガス)を改質する機能、即ち、水素リッチの燃料ガスに改質する機能を有する。
【0038】
・また、本実施例では、上述した様に、燃料電池スタック5と積層補助器7、9とは、第1〜第8締結部材11〜18によって一体に固定されており、この第1〜第8締結部材11〜18は、前記図4に示す様に、燃料電池スタック5と燃焼器7と改質器9とをそれぞれ貫通する第1〜第8ボルト111〜118と、その第1〜第8ボルト111〜118の先端(同図上側)に螺合する第1〜第8ナット121〜128とから構成されている。
【0039】
この第1〜第8ナット121〜128のうち、第3ナット123には、燃焼ガス(排ガス)を燃料電池スタック5内の挿通孔63から外部に排出するための燃焼ガス排出管131が設けられ、第4ナット124には、空気を燃料電池スタック5内の他の挿通孔63に導入するための空気導入管133が設けられ、第5ナット125には、燃料ガスを燃料電池スタック5内の更に他の挿通孔63に導入するための燃料ガス導入管135が設けられている。なお、その他のナット121、122、126〜128は、袋ナットである。
【0040】
更に、第1〜第8ボルト111〜118と改質器9との間、及び第1〜第8ナット121〜128と燃料電池5との間には、各挿通孔63と外部との間の電気的絶縁及びガスシールを行うために、(例えばマイカ等からなる)シール部材137、139が配置されている。
【0041】
b)次に、上述した締結部材11〜18による固体酸化物形燃料電池1の固定及びガス流路の形成について説明する。
前記図4に示すように、第1〜第8ボルト111〜118と第1〜第8ナット121〜128は、燃料電池スタック5と燃焼器7と改質器9とを分離可能に一体に結束して固定するための締結部材である。
【0042】
詳しくは、第1〜第8ボルト111〜118と第1〜第8ナット121〜128によって、複数の燃料電池セル3からなる燃料電池スタック5が一体に構成され、且つ、複数の金属フレーム71〜73及び複数のガスシール部76、77からなる燃焼器7が一体に構成され、且つ、同様に複数の金属フレーム73〜75及び複数のガスシール部78、79からなる改質器9が一体に構成される。
【0043】
従って、この第1〜第8ボルト111〜118及び第1〜第8ナット121〜128によって、固体酸化物形燃料電池1を積層方向に締め付けると、燃料電池スタック5と燃焼器7と改質器9とを一体に固定できる。逆に、第1〜第8ボルト111〜118及び第1〜第8ナット121〜128による固定を緩めると、燃焼器7と改質器9と燃料電池スタック5とを分離することができる。
【0044】
なお、第1〜第8ボルト111〜118及び第1〜第8ナット121〜128から構成される締結部材としては、一端に頭部を有するボルトの両端にナットを取り付ける構成としてもよい。
【0045】
また、第1〜第8ボルト111〜118のうち、第1、第7ボルト111、117は、単に燃料電池スタック5と燃焼器7と改質器9とを固定するためのみに使用されるボルトである。
【0046】
一方、その他の第2〜第6ボルト112〜116及び第8ボルト118は、燃料電池スタック5と燃焼器7と改質器9との固定を行うとともに、(その周囲の挿通孔63を利用して)ガスを流通させる流路として用いられる。
【0047】
即ち、後に詳述する様に、第2、第5、第6ボルト112、115、116が貫挿される挿通孔63は、燃料ガスの流路として用いられ、第4、第8ボルト114、118が貫挿される挿通孔63は、空気の流路として用いられ、第3ボルト113が貫挿される挿通孔63は、燃焼ガスの流路として用いられる。
【0048】
c)次に、本実施例におけるガスの流路について説明する。
<空気の流路>
前記図4に示す様に、空気は、空気導入管133から第4ボルト114の周囲の挿通孔63に導入され、その後、この挿通孔63から、燃料電池スタック5の各燃料電池セル3の空気流路45に導入され、発電に利用される。
【0049】
そして、発電後の残余空気は、各燃料電池セル3から第8ボルト118の周囲の挿通孔63に排出され、その後、この挿通孔63から燃焼器7内に導入される。
<燃料ガスの流路>
燃料ガスは、燃料ガス導入管135から第5ボルト115の周囲の挿通孔63に導入され、その後、挿通孔63から、改質器9内に導入されて、燃料ガスの改質が行われる。
【0050】
改質された燃料ガスは、改質器9から第2ボルト112の周囲の挿通孔63に導入され、その後、この挿通孔63から燃料電池スタック5の各燃料電池セル3の燃料ガス流路37に導入され、発電に利用される。
【0051】
そして、発電後の残余燃料ガスは、各燃料電池セル3から第6ボルト116の周囲の挿通孔63に排出され、その後、この挿通孔63から燃焼器7内に導入される。
<燃焼ガスの流路>
燃焼器7に導入された発電後の残余燃料ガスと残余空気とは、燃焼器7内で燃焼され、その燃焼ガス(排ガス)は、第3ボルト113の周囲の挿通孔63に排出され、その後、この挿通孔63から燃焼ガス排出管131を介して外部に排出される。
【0052】
d)本実施例の効果について説明する。
本実施例では、燃焼器7及び改質器9を構成するために、第1〜第5金属フレーム71〜75の間に第1〜第4ガスシール部76〜79を積層して配置し、それらを(燃料電池スタック5とともに)第1〜第8締結部材111〜118を用いて積層方向に押圧して締め付けて固定している。
【0053】
従って、第1〜第4ガスシール部76〜79は、締め付けられた際に、接触面において(各金属フレーム71〜75より)優先的に変形し、各金属フレーム71〜75との密着性が向上する。これにより、ガスシール性を維持しながらも、ロウ付けを不要とする積層構造を実現できる。つまり、本実施例により、複数の金属フレーム76〜79を用いた積層補助器7、9の結合性及びガスシール性を同時に確保することができる。
【実施例2】
【0054】
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
本実施例では、前記実施例1とは、燃焼器及び改質器を構成する金属フレーム及びガスシール部の構成が異なるので、異なる点を詳細に説明する。
【0055】
図6に分解して示す様に、本実施例の固体酸化物形燃料電池においては、燃焼器201及び改質器203は、5枚の金属フレーム205〜209と、4枚のガスシール部211〜214とを交互に積層することにより一体に構成されている。
【0056】
詳しくは、燃焼器201は、第1金属フレーム205、第1ガスシール部211、第2金属フレーム206、第2ガスシール部212、第3金属フレーム207から構成され、改質器203は、第3金属フレーム207(燃焼器201と共有)、第3ガスシール部213、第4金属フレーム208、第4ガスシール部214、第5金属フレーム209から構成されている。
【0057】
特に本実施例では、燃焼器201の内部室215を構成する、第1ガスシール部211、第2金属フレーム206、第2ガスシール部212には、図示する様に、ガス分配流路が設けられている。
【0058】
つまり、第2金属フレーム206の各辺に沿って、各挿通孔217から平面方向の両側に伸びるスリット219が設けられ、第1ガスシール部211及び第2ガスシール部212の角部(同図左下側)には、それぞれ一対の切り欠き221、223が設けられている。
このうち、第1ガスシール部211の一対の切り欠き221は、隣接する各辺に垂直に配置されて、三角形状の小開口部222側(詳しくは斜めのバリヤ224によって区分された小さい領域)に開口するように構成されている。なお、第2ガスシール部212も同様な構成であり、同様な小開口部226が設けられている。
この構成によって、第2金属フレーム206の隣り合うスリット219同士は、第1ガスシール部211の一対の切り欠き221及び小開口部222と、第2金属フレーム206の内部室215を構成する開口部220と、第2ガスシール部212の一対の切り欠き223及び小開口部226とによって構成される空間に連通している。
【0059】
また、改質器203の内部室225を構成する、第3ガスシール部213、第4金属フレーム208、第4ガスシール部214にも、図示する様に、ガス分配流路が設けられている。
【0060】
つまり、第4金属フレーム208には、各挿通孔217から平面方向の両側に伸びるスリット229が設けられ、第3ガスシール部213及び第4ガスシール部214には、前記スリット229と内部室225とを立体的に連通する切り欠き231、233が設けられている。また、第3ガスシール部213及び第4ガスシール部214には、他の挿通孔217と内部室225とを立体的に連通する他のスリット235、237も形成されている。
【0061】
ここで、第3ガスシール部213の4個の切り欠き231は、(同図上方の)辺と垂直に伸びて開口部224側に開口するように構成され、スリット235は、開口部224とは(同図下方の)辺に平行なバリヤ226によって開口部224と区分されている(なお、第4ガスシール部214も同様な構成である)。
【0062】
本実施例では、上述の様に、第1〜第4ガスシール部211〜214及び第2、第4金属フレーム206、208には、ガス分配流路となるスリット219、229、235、237や切り欠き221、223、231、233が設けられているので、第1〜第4ガスシール部211〜214及び第2、第4金属フレーム206、208を3次元的に組み上げて、複雑なガスの流路を容易に形成することができる。
【0063】
また、第1〜第4ガスシール部211〜214のガス分配流路を利用して、燃焼器201や改質器203の平面方向における一端から他端にガスを流すことができる。更に、ガスの混合効果を高めたり、触媒に均一にガスがゆき渡るようにすることができる。
【実施例3】
【0064】
次に、実施例3について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
本実施例は、前記実施例1とは、固体酸化物形燃料電池の固定方法が異なる。
図7に示す様に、本実施例の固体酸化物形燃料電池301は、燃料電池スタック303の積層方向(図7(b)の上下方向)の両側に、それぞれ積層補助部305、307を備えている。
【0065】
なお、各積層補助部305、307は、それぞれ3個の積層補助器から構成されており、これらの積層補助器としては、酸化剤ガス又は燃料ガスの予熱器、発電後の残余燃料ガスの燃焼器、燃料ガスを生成するための液体原料の気化器、及び燃料ガスの改質器等を採用できる。
【0066】
この固体酸化物形燃料電池301の四方の側方(積層方向と垂直の方向)には、断面がコの字状の固定具309がそれぞれ嵌め込まれており、この固定具309の上部313には、複数のボルト311が配置されている。
【0067】
つまり、固定部309の上部313と下部315とで固体酸化物形燃料電池301の上下を挟んだ状態で、ボルト311を締め付けると、ボルト311の先端が固体酸化物形燃料電池301を積層方向に押圧することによって、固体酸化物形燃料電池301を一体に固定できるように構成されている。
【0068】
即ち、本実施例では、固定具309とボルト311が万力にように機能して、固体酸化物形燃料電池301を一体に固定するので、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例4】
【0069】
次に、実施例4について説明するが、前記実施例3と同様な内容の説明は省略する。
本実施例は、前記実施例3とは、固体酸化物形燃料電池の固定方法が異なる。
図8に示す様に、本実施例の固体酸化物形燃料電池401は、燃料電池スタック403の積層方向(同図上下方向)の両側に、それぞれ積層補助部405、407を備えている。
【0070】
なお、各積層補助部405、407は、前記実施例3と同様に、それぞれ3個の積層補助器から構成されている。
この固体酸化物形燃料電池401は、上下をプレート409、411で挟まれた状態で容器413内に収容されている。
【0071】
特に本実施例では、固体酸化物形燃料電池401は、上部のプレート409上に載置された押圧部材415を介して、積層方向に加重(プレス)されるように構成されている。
なお、このプレス方式では、油圧、空気圧、バネにより加重が加わるようにすることができる。
【0072】
本実施例においても、前記実施例3と同様な効果を奏する。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
【0073】
(1)例えば、前記各実施例の積層補助器としては、酸化剤ガス又は燃料ガスの予熱器、発電後の残余燃料ガスの燃焼器、燃料ガスを生成するための液体原料の気化器、及び燃料ガスの改質器等を採用できる。
【0074】
(2)また、本発明は、固体酸化物形燃料電池以外に、例えば溶融炭酸塩形、リン酸形等の燃料電池に適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1、301、401…固体酸化物形燃料電池
3…燃料電池セル
5、303、403…燃料電池スタック
7…燃焼器
9、203…改質器
11、12、13、14、15、16、17、18…締結部材
63、217…挿通孔
71、72、73、74、75、205、206、207、208、209…金属フレーム
76、77、78、79、211、212、213、214…ガスシール部
89、221、223、231、233…切り欠き
91…燃焼触媒
101…改質触媒
111、112、123、124、125、126、127、128、311…ボルト
121、122、123、124、125、126、127、128…ナット
219、229、235、237…スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の発電反応にあたって、酸化剤ガス又は燃料ガスの予熱、発電後の残余燃料ガスの燃焼、燃料ガスを生成するための液体原料の気化、及び燃料ガスの改質の各機能のうち、少なくとも1種の機能を有し、複数の板状の金属フレームを積層してなる積層補助器を備えた燃料電池であって、
前記積層補助器は、隣り合う二つの前記金属フレームの間に介在し、前記金属フレームとともに積層され前記金属フレームより強度が低い板状のガスシール部と、
前記金属フレームと前記ガスシール部とを積層方向に締め付けて固定する締結部材と、
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記ガスシール部は、マイカ又はバーミキュライトからなることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記締結部材は、
前記金属フレーム及び前記ガスシール部を積層方向に貫通して挿通される貫通部材と、
前記貫通部材の少なくとも一端に設けられて、前記金属フレームと前記ガスシール部とを積層方向に締め付ける相手部材と、
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記燃料電池は、板状の燃料電池セルから構成された燃料電池スタックと前記積層補助器とを積層したものであり、
前記締結部材は、前記積層補助器の積層方向における固定と前記燃料電池スタックの積層方向における固定とを兼用する部材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記積層補助器は、前記燃料ガスを改質する改質触媒を有する改質器、又は、前記発電後の残余燃料ガスを燃焼させる燃焼触媒を有する燃焼器であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記ガスシール部に、前記発電に用いられる酸化剤ガス及び/又は燃料ガスを分配するガス分配流路を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−228171(P2011−228171A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97935(P2010−97935)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】