説明

燃焼制御装置

【課題】燃焼炉をより安全に制御することができる燃焼炉の制御装置を提供する。
【解決手段】第1温度調整器1および第2温度調整器2という2つの温度調整器を設け、これらから出力される第1信号および第2信号に基づいて炉100の燃焼を制御する。これにより、一方の温度調整器に異常が生じた場合であっても炉100を安全に制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼炉の燃焼を制御する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、工業用燃焼炉においては、起動する際にプレパージや点火バーナおよび主バーナの監視が行われている。ここで、炉内温度が発火点(通常760℃)以上であることを検出した場合、実際の燃焼状態を問わず、自動的に発火したものとみなしてプレパージや点火バーナおよび主バーナの監視が不要となる場合がある。そこで、従来より、温度センサによる測定結果と所定の温度とを比較して結果を出力する温度調節器を設け、この温度調節器の比較結果に基づいてプレパージやバーナを制御することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。具体的には、温度調節器は、温度センサにより燃焼炉内の温度を測定し、この測定結果と発火点である760℃とを比較し、測定結果が760℃を超えた場合には信号を出力する。この信号が燃焼炉の制御装置に入力されると、この制御装置は、起動時のプレパージおよび点火バーナや主バーナの監視などを行わないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−257372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、温度センサや温度調節器に異常が生じてしまうと、燃焼炉内が炉内温度が発火点未満であるにも関わらず、誤って発火点以上である旨を示す信号を出力してしまうことがあった。このような場合、炉内に供給された燃料が燃焼せずに炉内に滞留してしまうので、異常燃焼などが起こってしまう恐れがあった。
【0005】
そこで、本願発明は、燃焼炉をより安全に制御することができる燃焼炉の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る燃焼炉の制御装置は、燃焼炉内の温度を測定し、当該温度と所定の温度とを比較し、この比較結果に応じて第1の信号を出力する第1温度監視部と、燃焼炉内の温度を測定し、当該温度と所定の温度とを比較し、この比較結果に応じて第2の信号を出力する第2温度監視部と、入力される第1の信号および第2の信号に基づいて、燃焼炉の燃焼を制御する制御部とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
上記燃焼炉の制御装置において、第1温度監視部は、燃焼炉内の温度が所定の温度を超えると第1の信号を出力し、第2温度監視部は、燃焼炉内の温度が所定の温度を超えると第2の信号を出力し、制御部は、第1の信号および第2の信号が入力されると、起動時の処理を省略するようにしてもよい。
【0008】
また、上記燃焼炉の制御装置において、制御部は、所定時間毎に、第1温度監視部および第2温度監視部の少なくとも一方に対して、第1の信号または第2の信号の出力と停止とを切り替える切替信号を出力し、第1の信号または第2の信号の出力と停止とが切り替わっているか否かに応じて第1温度監視部または第2温度監視部に異常が生じているか否かを診断する診断部を有するようにしてもよい。
ここで、診断部は、切替信号を出力した時点から、第1の信号または第2の信号の出力と停止とが切り替わった時点までの時間が所定時間を超えると、当該切替信号を出力した第1温度監視部または第2温度監視部に異常が生じていると診断するようにしてもよい。
さらに、制御部は、診断部により第1温度監視部または第2温度監視部に異常が生じていると診断されると、燃焼炉の運転を停止するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2つの温度監視部を設け、これらから出力される信号に基づいて燃焼炉の燃焼を制御するので、一方の温度監視部に異常が生じた場合であっても燃焼炉を安全に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係る燃焼制御装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明に係る燃焼制御装置の動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
<燃焼制御システムの構成>
図1に示すように、本実施の形態に係る燃料制御システムは、第1温度調節器1と、この第1温度調整器1と同等の構成を有する第2温度調節器2と、第1温度調節器1および第2温度調節器との間で信号をやりとりすることにより、炉100内の燃焼を制御するとともに、第1温度調節器1および第2温度調節器2の異常を診断する燃焼制御装置3とを備えている。
【0013】
第1温度調整器1は、炉100内の所定の位置に設けられた第1温度センサ11が接続された公知の温度調整器から構成される。このような第1温度調整器1は、第1温度センサ11により測定された炉100内の温度(以下、測定値という)と、発火点温度である予め定められた温度設定値(760℃)とを比較し、測定値が760℃以上となった場合に、この旨を示す信号(以下、「第1信号」という。)を燃焼制御装置3に出力する。また、第1信号を出力している際に燃料制御装置3からその第1信号の出力を切り替える旨の信号(以下、「第1切替信号」という。)が入力されると、第1温度調整器1は、その第1信号の出力を停止する。
【0014】
第2温度調整器2は、炉100内の所定の位置に設けられた第2温度センサ21が接続された公知の温度調整器から構成される。このような第2温度調整器2は、第2温度センサ21による測定値と、発火点温度である予め定められた温度設定値(760℃)とを比較し、測定値が760℃以上となった場合に、この旨を示す信号(以下、「第2信号」という。)を燃焼制御装置3に出力する。また、第2信号を出力している際に燃料制御装置3からその第2信号の出力を切り替える旨の信号(以下、「第2切替信号」という。)が入力されると、第2温度調整器2は、その第2信号の出力を停止する。
【0015】
ここで、第1温度センサ11および第2温度センサ21は、炉100内において、それぞれ同等の温度を検出することができるよう、それぞれ異なる位置に配設されている。
【0016】
燃焼制御装置3は、第1信号および第2信号に基づいて、所定の動作モードを設定する設定部31と、この設定部31により設定された動作モードに基づいて炉100の各種動作を制御する燃焼制御部32と、第1温度調整器1および第2温度調整器2の正常に動作しているか否かを診断する診断部33とを備えている。このような燃焼制御装置3は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路からなり、制御メモリに記憶された動作プログラムを読み込んで実行することにより、上記ハードウェアと動作プログラムを協働させ、設定部31、燃焼制御部32および診断部33とを実現する。
【0017】
ここで、設定部31は、第1信号および第2信号の両方が入力されると、760℃モードを設定する。一方、第1温度調整器1および第2温度調整器2の少なくとも一方から信号が入力されないと、通常モードを設定する。これらの設定した760℃モードまたは通常モードに関する情報は、燃焼制御部32および診断部33に入力される。
【0018】
燃焼制御部32は、炉100の点火、消火、プレパージ、温度制御など、炉100内の燃焼状態を制御する。このような燃焼制御部32は、設定部31により760℃モードが設定されると、起動時のプレパージおよび点火バーナや主バーナの監視など、通常は行われるが、炉100内の温度が760℃以上のときには省略できる動作を行わない。一方、設定部31により通常モードが設定されると、燃焼制御部32は、上述した起動時のプレパージおよび点火バーナや主バーナの監視など、760℃モードのときに行われない動作を行う。
【0019】
診断部33は、所定時間間隔で第1温度調整器1および第2温度調整器2が正常に動作しているか否かを診断する。
【0020】
<診断動作>
次に、燃焼制御装置3の診断部33による診断動作について、図2を参照して説明する。
【0021】
第1温度調整器1からの第1信号が入力され(第1信号:ON)、第2温度調整器2からの第2信号が入力される(第2信号:ON)と、設定部31は、760℃モードを設定する(760℃モード:ON)。
【0022】
760℃モードが設定されてから所定時間(例えば60分)が経過すると、診断部33は、第1温度調整器1または第2温度調節器2が正常に動作しているか否かを診断する。なお、以下においては、始めに第1温度調整器1から診断する場合を例に説明するが、第2温度調節器2から診断したり、第1温度調整器1と第2温度調節器2の両方を同時に診断したりするようにしてもよい。
【0023】
まず、診断部33は、第1温度調整器1に対して第1切替信号を出力する(第1切替信号:ON)。第1温度調整器1は、第1切替信号が入力されると、第1信号の出力を停止する。そこで、診断部33は、第1切替信号を出力した時点から、第1信号の出力と停止とが切り替わった時点、すなわち第1信号の入力が停止した時点までが所定時間(例えば10秒)内であるか否かを確認する。すなわち、図2の符号aで示す時間が、10秒以内であるか否かを確認する。
【0024】
第1切替信号を出力してから10秒以内に第1信号の入力が停止しない場合、診断部33は、第1温度調整器1に異常が発生していると診断する。このように、診断部33により異常が発生していると診断されると、燃焼制御部32は、炉100への燃料等の供給を遮断する。これにより、第1温度調整器1に異常が生じても、炉100がロックアウトされるので、異常燃焼などが生じるのを防ぐことができる。
【0025】
一方、第1切替信号を出力してから10秒以内に第1信号の入力が停止すると、診断部33は、第1温度調整器1が正常に動作していると診断する。なお、このような診断部33による診断動作が行われている場合、設定部31は、第1信号や第2信号の入力が停止しても760℃モードの設定を解除しない。これにより、診断部33により診断動作が行われている間であっても、炉100の運転を通常通り行うことができる。
【0026】
このように、第1温度調整器1が正常に動作していると診断すると、診断部33は、第1切替信号の出力を停止した後(第1切替信号:OFF)、所定時間経過(例えば60分)経過すると、第2温度調整器1に第2切替信号を出力する(第2切替信号:ON)。この場合も、診断部33は、第2切替信号を出力した時点から、第2信号の入力が停止した時点までが所定時間(例えば10秒)内であるか否かを確認する。すなわち、図2の符号bで示す時間が、10秒以内であるか否かを確認する。
【0027】
第2切替信号を出力してから10秒以内に第2信号の入力が停止しない場合、診断部33は、第2温度調整器2に異常が発生していると診断する。このように、診断部33により異常が発生していると診断されると、燃焼制御部32は、機械や装置への燃料等の供給を遮断する。
【0028】
一方、第2切替信号を出力してから10秒以内に第2信号の入力が停止すると、診断部33は、第2温度調整器2が正常に動作していると診断する。このように、第2温度調整器2が正常に動作していると診断すると、診断部33は、第2切替信号の出力を停止し(第2切替信号:OFF)、所定時間経過する毎に上述したような診断動作を第1温度調整器1および第2温度調節器に対して交互に行う。このように、所定時間毎に第1温度調整器1と第2温度調整器2とを診断するので、異常が生じた場合であってもその対応を迅速に行うことができる。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1温度調整器1および第2温度調整器2という2つの温度調整器を設け、これらから出力される第1信号および第2信号に基づいて炉100の燃焼を制御するので、一方の温度調整器に異常が生じた場合であっても炉100を安全に制御することができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、第1の信号または第2の信号が出力されている際に第1の切替信号または第2の切替信号を出力する場合を例に説明したが、第1の信号または第2の信号が出力されていない際に第1の切替信号または第2の切替信号を出力するようにしてもよい。この場合、診断部33は、第1の切替信号または第2の切替信号を出力した時点から第1の信号または第2の信号が入力された時点までの時間が所定の時間以内のとき、第1の切替信号または第2の切替信号を出力した第1温度調整器1または第2温度調整器2が正常に動作していると診断する。
【0031】
また、本実施の形態では、第1の切替信号または第2の切替信号を出力した時点から第1の信号または第2の信号の入力または停止を検出した時点までの時間に基づいて、第1温度調整器1または第2温度調整器2が正常に動作しているか否かを診断する場合について説明したが、この診断するタイミングは上述した場合に限定されず、適宜自由に設定することができる。例えば、第1の切替信号または第2の切替信号の出力を停止した時点から第1の信号または第2の信号の入力または停止を検出した時点までの時間に基づいて、診断するようにしてもよい。または、第1の切替信号または第2の切替信号の出力を継続している時間と、第1の信号または第2の信号の出力または停止が継続している時間とを比較することにより診断するようにしてもよい。
【0032】
また、第1温度調整器1および第2温度調整器2と燃料制御装置3との配置関係は適宜自由に設定することができる。例えば、同一筐体内に配設したり、有線または無線により遠隔配置したりするようにしてもよい。
【0033】
また、本実施の形態では、設定値を発火温度である760℃にした場合を例に説明したが、その設定値は発火温度であるならば760℃に限定されず、環境や燃料などに応じて適宜自由に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、所定の閾値に基づいて装置の動作状態を制御する各種装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…第1温度調整器、2…第2温度調整器、3…燃料制御装置、11…第1温度センサ、12…第2温度センサ、31…設定部、32…燃焼制御部、33…診断部、100…炉。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炉内の温度を測定し、当該温度と所定の温度とを比較し、この比較結果に応じて第1の信号を出力する第1温度監視部と、
前記燃焼炉内の温度を測定し、当該温度と所定の温度とを比較し、この比較結果に応じて第2の信号を出力する第2温度監視部と、
入力される前記第1の信号および前記第2の信号に基づいて、前記燃焼炉の燃焼を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする燃焼炉の燃焼制御装置。
【請求項2】
前記第1温度監視部は、前記燃焼炉内の温度が前記所定の温度を超えると前記第1の信号を出力し、
前記第2温度監視部は、前記燃焼炉内の温度が前記所定の温度を超えると前記第2の信号を出力し、
前記制御部は、前記第1の信号および前記第2の信号が入力されると、起動時の処理を省略する
ことを特徴とする請求項1記載の燃焼炉の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、所定時間ごとに、前記第1温度監視部および前記第2温度監視部の少なくとも一方に対して、前記第1の信号または前記第2の信号の出力と停止とを切り替える切替信号を出力し、前記第1の信号または前記第2の信号の出力と停止とが切り替わっているか否かに応じて前記前記第1温度監視部または前記第2温度監視部に異常が生じているか否かを診断する診断部を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の燃焼炉の制御装置。
【請求項4】
前記診断部は、前記切替信号を出力した時点から、前記第1の信号または前記第2の信号の出力と停止とが切り替わった時点までの時間が所定時間を超えると、当該切替信号を出力した前記第1温度監視部または前記第2温度監視部に異常が生じていると診断する
ことを特徴とする請求項3記載の燃焼炉の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記診断部により前記第1温度監視部または前記第2温度監視部に異常が生じていると診断されると、前記燃焼炉の運転を停止する
ことを特徴とする請求項3または4記載の燃焼炉の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−208879(P2011−208879A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77237(P2010−77237)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】