説明

燃焼設備の金属回収方法

【課題】金属を多く含む重質油、ペトロコークス等の低品位の原料を燃焼設備で燃焼する際に、有価金属を高い濃度で効果的に回収する。
【解決手段】金属を多く含む原料を燃焼設備で燃焼して、その燃焼排ガスから金属を回収する方法であって、燃焼排ガス2を主分離器5に供給して高融点金属を主に含む流動媒体3と、ガス及びミスト状の低融点金属を主に含む排ガス4とに分離し、主分離器5で分離した排ガス4を冷却することで生成する固体粒子を排ガス4から分離することにより低融点金属を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を多く含む重質油、ペトロコークス、廃棄物等の低品位の原料を用いて高品位の生成ガスを製造する際に同時に有価金属を高い濃度で効果的に回収するようにした燃焼設備の金属回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、流動層ボイラ等の燃焼整備においては経済的な観点などから重質油やペトロコークスといった低品位の燃料を用いることが行われている。
【0003】
しかし、重質油やペトロコークスは、バナジウムV、ニッケルNi、ナトリウムNa、カリウムK等の金属を多く含有しており、よって燃焼後の排ガス中には低融点のバナジウムが多く含まれていることにより、飛灰がボイラチューブ等に付着して伝熱を妨げ、熱回収の効率を低下させるという問題を有していた。
【0004】
一方、重質油、ペトロコークス等の低品位の原料を用いてガス化することにより高品位の生成ガスを製造する燃焼設備が提案されるようになってきており、特許文献1では超重質油を部分酸化する燃焼設備を開示している。
【0005】
特許文献1の燃焼設備では、ガス化炉本体から排出される未反応物と気相からの析出物をポーラスフィルタで分離し、別置きの燃焼/ガス化炉へ導いて熱あるいは高カロリーガスとしてエネルギーを回収し、燃焼/ガス化炉の下方には前記燃焼/ガス化炉からの排ガスを通過させる水浴を設けて未燃分に含まれていた重金属類を分離することが示されている。
【特許文献1】特開平07−150148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示される超重質油或いは重質油、ペトロコークス等の低品位の原料にはバナジウム、ニッケル、ナトリウム、カリウム等の金属が多く含まれており、特許文献1では燃焼/ガス化炉からの排ガスを水浴に通過させることで未燃分に含まれていた重金属類を回収するとしているが、水浴は重金属やアルカリ金属類を主成分とする化合物を回収するのみであり、特定の有価金属を効果的に分離して回収することはできなかった。又、種々の金属が混在した状態で回収される化合物から特定の金属を取り出す作業は非常に大変であり、従って従来では燃焼設備において特定の有価金属を有効に回収することは行われていないのが現状である。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、金属を多く含む重質油、ペトロコークス、廃棄物等の低品位の原料を燃焼設備で燃焼する際或いはガス化する際に、有価金属を高い濃度で効果的に回収するようにした燃焼設備の金属回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の燃焼設備の金属回収方法は、金属を多く含む原料を燃焼設備で燃焼して、その燃焼排ガスから金属を回収する燃焼設備の金属回収方法であって、
前記燃焼排ガスを主分離器に供給して高融点金属を主に含む流動媒体と、ガス及びミスト状の低融点金属を主に含む排ガスとに分離し、
主分離器で分離した排ガスを冷却することで生成する固体粒子を排ガスから分離することにより低融点金属を回収する
ことを特徴とする。
【0009】
上記燃焼設備の金属回収方法において、排ガスを少なくとも2段階の異なる温度で冷却することで生成する夫々の固体粒子を排ガスから分離することにより少なくとも2種類の低融点金属を回収することができる。
【0010】
又、上記燃焼設備の金属回収方法において、排ガスから少なくとも2段階の異なる固体粒子径の固体粒子を分離することにより少なくとも2種類の低融点金属を回収することができる。
【0011】
又、上記燃焼設備の金属回収方法において、流動媒体の一部を外部に取り出し、取り出した流動媒体から流動媒体粒子を分離することにより高融点金属を回収することができる。
【0012】
又、上記燃焼設備の金属回収方法において、燃焼設備が流動層燃焼炉であり、その流動層燃焼炉から導出される燃焼排ガスを主分離器により流動媒体と排ガスとに分離し、主分離器で分離した流動媒体は金属を多く含む原料と共に流動層ガス化炉に供給し流動層により原料をガス化して生成ガスを取り出し、流動層ガス化炉の流動媒体は流動層燃焼炉に供給して循環するようにし、
流動層燃焼炉の流動媒体の一部を外部に取り出し、取り出した流動媒体から流動媒体粒子を分離することにより高融点金属を回収することができる。
【0013】
又、上記燃焼設備の金属回収装置において、流動層ガス化炉から取り出す生成ガスから金属を含むタールを分離し、分離したタールを流動層燃焼炉に供給することは好ましい。
【0014】
又、上記燃焼設備の金属回収方法において、金属を多く含む原料は重質油であってもよい。
【0015】
又、上記燃焼設備の金属回収方法において、金属を多く含む原料はペトロコークスであってもよい。
【0016】
又、上記燃焼設備の金属回収方法において、低融点金属がバナジウムであってもよい。
【0017】
又、上記燃焼設備の金属回収方法において、高融点金属がニッケルであってもよい。
【0018】
又、上記燃焼設備の金属回収方法において、原料と共に塩化物を供給することにより金属の融点を下げることができる。
【0019】
本発明の燃焼設備の金属回収装置は、金属を多く含む原料を燃焼設備で燃焼して、その燃焼排ガスから金属を回収する燃焼設備の金属回収装置であって、
燃焼設備からの燃焼排ガスを高融点金属を主に含む流動媒体と、ガス及びミスト状の低融点金属を主に含む排ガスとに分離する主分離器と、
主分離器で分離した排ガスを冷却する冷却器と、
冷却器の冷却により生成する固体粒子を排ガスから分離する粒子補集器と
を有することを特徴とする。
【0020】
上記燃焼設備の金属回収装置において、燃焼設備が流動層燃焼炉であってもよい。
【0021】
又、上記燃焼設備の金属回収装置において、排ガスを少なくとも2段階の異なる温度で冷却する冷却器と、各冷却器による冷却によって生成する固体粒子を排ガスから分離する粒子補集器を有していてもよい。
【0022】
又、上記燃焼設備の金属回収装置において、排ガスから少なくとも2段階の異なる固体粒子径の固体粒子を分離する分離器を有していてもよい。
【0023】
又、上記燃焼設備の金属回収装置において、流動媒体の一部を外部に取り出し、取り出した流動媒体から流動媒体粒子を分離する高融点金属回収手段を有していてもよい。
【0024】
又、上記燃焼設備の金属回収装置において、燃焼設備が流動層燃焼炉であり、その流動層燃焼炉から導出される燃焼排ガスを流動媒体と排ガスとに分離する主分離器と、主分離器で分離した流動媒体を金属を多く含む原料と共に供給して流動層により原料をガス化して生成ガスを取り出すと共に、流動媒体を流動層燃焼炉に供給して循環する流動層ガス化炉とを有すしていてもよい。
【0025】
又、上記燃焼設備の金属回収装置において、流動層燃焼炉の流動媒体の一部を外部に取り出し、取り出した流動媒体から流動媒体粒子を分離する高融点金属回収手段を有していてもよい。
【0026】
又、上記燃焼設備の金属回収装置において、流動層ガス化炉から取り出す生成ガスから金属を含むタールを分離し、分離したタールを流動層燃焼炉に供給するタール分離器を有していてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の燃焼設備の金属回収方法によれば、主分離器で分離した排ガスを冷却して生成する固体粒子を排ガスから分離することにより低融点金属を回収するようにしたので、目的の低融点金属を高い濃度で効果的に回収できるという優れた効果を奏し得る。
【0028】
又、排ガスを少なくとも2段階の異なる温度で冷却して生成する夫々の固体粒子を排ガスから分離することにより、少なくとも2種類の低融点金属を効果的に回収できる効果がある。
【0029】
又、主分離器で分離した排ガスから低融点金属の固体粒子径に応じた少なくとも2段階の異なる固体粒子径の固体粒子を分離することにより、少なくとも2種類の低融点金属を回収できる効果がある。
【0030】
又、流動媒体の一部を外部に取り出し、取り出した流動媒体から流動媒体粒子を分離するようにしたので、高融点金属を高い濃度で効果的に回収できる効果がある。
【0031】
又、流動層ガス化炉から取り出される生成ガスから金属を含むタールを分離し、分離したタールを流動層燃焼炉に供給するようにしたので、タール中の金属を排ガスから回収することができると共に、タールの処理が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。
【0033】
図1は本発明を実施する燃焼設備である流動層ガス化炉の一例を示すもので、流動層ガス化炉はチャーを燃焼させて流動媒体(砂等)を加熱する流動層燃焼炉1と、流動層燃焼炉1から導出される燃焼排ガス2を流動媒体3と排ガス4とに分離する主分離器5と、主分離器5で分離した流動媒体3を導入すると共に原料6が供給され、水蒸気、空気、二酸化炭素等のガス化剤7が供給されて流動層8を形成する流動層ガス化炉9とを有している。流動層ガス化炉9に供給された原料6は高温の流動媒体3と共にガス化剤7による流動層8により流動攪拌されてガス化され、生成ガス10は外部に取り出される。一方、流動層ガス化炉9で原料をガス化する際に生成したチャーは流動媒体3と共に流動層燃焼炉1の下部に供給されて循環し、チャーは流動層燃焼炉1内で燃焼することにより流動媒体3を加熱する。
【0034】
流動層ガス化炉9には、重質油或いはペトロコークス等のような低品位の原料6を供給しており、重質油或いはペトロコークス等にはバナジウム、ニッケル、ナトリウム、カリウム等の金属が多く含まれている。
【0035】
流動層ガス化炉9にて上記重質油或いはペトロコークス等の原料6をガス化して高品位の生成ガス10を製造するには、通常、流動層ガス化炉9のガス化温度は800〜900℃に保持しており、又、流動層ガス化炉9におけるガス化温度を800〜900℃に保持するためには、流動層燃焼炉1の温度を900〜1000℃に保持して流動媒体3の加熱を行うようにしている。
【0036】
流動層燃焼炉1から排出される900〜1000℃の燃焼排ガス2はサイクロン5aからなる主分離器5に導かれて流動媒体3を分離するようにしており、このサイクロン5aでは10μm以上の粒子径の固体粒子を分離するようにしている。
【0037】
前記主分離器5で流動媒体3が分離された排ガス4は、第1の冷却器11により800℃に冷却された後、サブミクロンの粒子を補集するフィルタ等の第1の粒子補集器12に導かれ、更に、第2の冷却器13により600℃に冷却された後、サブミクロンを補集するバグフィルタ又は電気集塵器による第2の粒子補集器14に導くようにしている。第1及び第2の冷却器11,13は蒸気発生器とすることができる。
【0038】
一方、流動層ガス化炉9で生成される生成ガス10は、サイクロンによる分離器15によって流動媒体等の粒子16が分離された後、スクラバ、電気集塵器等のタール分離器17によってタール18が分離され、タール18が分離された生成ガス10はそのまま燃料として使用されたり、或いはガス精製装置により精製されて化学原料の製造等に利用される。
【0039】
前記分離器15で分離された流動媒体等の粒子16は流動層ガス化炉9に戻され、又、タール分離器17で分離されるタール18には金属が含まれており、この金属を含有するタール18はデカンタ、蒸発器等のタール濃縮器19により濃縮され、濃縮された金属を含むタール18は流動層燃焼炉1に供給して燃焼するようにしている。
【0040】
又、主分離器5で分離されて流動層ガス化炉9と流動層燃焼炉1との間を循環する流動媒体3中には酸化ニッケルNiO等の高融点金属が徐々に濃縮されるようになるので、流動媒体3の一部を、例えば流動層燃焼炉1の下部から外部に取り出し、取り出した流動媒体3から高融点金属20を分離する高融点金属回収手段21を備えている。尚、前記流動媒体3は、主分離器5から流動層ガス化炉9へ供給する位置で外部に取り出すようにしてもよい。高融点金属回収手段21としては、流動媒体3の粒子と高融点金属20の粒子との粒子径差を用いて分離するようにした粒子径差分離方法、或いは流動媒体3の粒子と高融点金属20の粒子との比重差を利用して分離する比重差分離方法を用いることができる。
【0041】
以下に上記流動層ガス化炉から金属を回収する方法を説明する。
【0042】
ガス化温度が800〜900℃に保持された流動層ガス化炉9に、重質油又はペトロコークスによる原料6を供給すると、原料6は流動媒体3による加熱とガス化剤7による流動攪拌によってガス化され、流動層ガス化炉9から生成ガス10が取り出される。生成ガス10はサイクロンによる分離器15に導かれて流動媒体等の粒子16が分離された後、タール分離器17に導かれてタール18が分離され、高品位の燃料として用いられたり或いはガス精製装置に供給されて精製される。
【0043】
このとき、流動層ガス化炉9から導出される生成ガスには、800〜900℃で気化されたり或いはミストとなった低融点金属、飛散した金属、タール中に含まれる金属も含まれている。又、前記原料6と共に塩化物27(塩化アンモニウムNHCl、塩化水素HCl等)を供給すると、融点1984℃のNiOあるいは融点1455℃のニッケルNiはNiCl(昇華温度973℃)に変化して気化することにより生成ガス10に含まれるようにすることもできる。
【0044】
生成ガス10に同伴するこれらの金属種は、前記タール分離器17でタール18と共に分離され、続いてタール濃縮器19により濃縮された後、流動層燃焼炉1に供給されてタール燃焼し、低融点金属については気化或いはミスト化される。
【0045】
上記したようにタール分離器17にてタール18を除去することにより、タール18及び金属種が除去された高品位の生成ガス10を取り出すことができるようになると共に、分離したタール18は流動層燃焼炉1に供給して燃焼することによりタールの処理が可能である。
【0046】
一方、金属種の中で流動層ガス化炉9でガス化されなかったものに関しては流動媒体3及びチャーと共に流動層燃焼炉1に供給されて循環する。
【0047】
ここで、本発明者らは、燃焼炉排ガス中に含まれる金属の粒度分布を測定し、ニッケルNi等の高融点金属は10μm以上の粗粒子に多く存在し、低融点金属は0.1〜1μmの微粒子に存在するという知見を得ている。その結果から、例えば流動媒体(砂)に50〜500μmを用いた場合、流動媒体(砂)、高融点金属種であるニッケルNi、低融点金属である炭酸ナトリウムNaCO、炭酸カリウムKCO、五酸化バナジウムVには分離回収するのに有効な粒子径の差が存在する。
【0048】
流動層燃焼炉1から導出される900〜1000℃の燃焼排ガス2は、10μm以上の粒子径の固体粒子を分離するサイクロン5aからなる主分離器5に導くようにしたので、サイクロン5aでは、固体粒子径が50〜500μmの流動媒体3と、固体粒子径が10μm以上の高融点金属である酸化ニッケルNiOを分離して流動層ガス化炉9に供給するようになる。従って、高融点金属である酸化ニッケルNiOは流動媒体3と共に流動層燃焼炉1と流動層ガス化炉9の間を循環するようになり、これによって流動媒体3に対する高融点金属の濃度は徐々に濃縮されるようになる。
【0049】
主分離器5によって10μm以上の固体粒子が分離された排ガス4は、第1の冷却器11により800℃に冷却されて第1の粒子補集器12に導かれることによりサブミクロンの粒子が補集される。ここで、排ガス4は第1の冷却器11で800℃に冷却されるので、融点が851℃の炭酸ナトリウムNaCO及び、融点が891℃の炭酸カリウムKCOのような低融点金属22は析出し、この低融点金属22は第1の粒子補集器12により捕集されて効果的に回収される。
【0050】
排ガス4は、続いて第2の冷却器13により600℃に冷却されて第2の粒子補集器14に導かれることによりサブミクロンの粒子が補集される。ここで、排ガス4は第2の冷却器13で600℃に冷却されているので、融点が690℃の五酸化バナジウムVのような低融点金属23は析出し、この低融点金属23は第2の粒子補集器14により捕集されて効果的に回収される。
【0051】
このようにして、五酸化バナジウムVのような有価金属である低融点金属23が高い濃度で効果的に回収される。
【0052】
又、前記原料6と共に塩化物27(塩化アンモニウムNHCl、塩化水素HCl等)を供給すると、融点1984℃のNiOあるいは融点1455℃のニッケルNiはNiCl(昇華温度973℃)に変化して気化することにより生成ガス10に含まれるようにすることもできる。従って、排ガス4の冷却温度を所定温度に設定することによってNiClの形でニッケルを取り出すこともできる。
【0053】
又、主分離器5で分離されて流動層ガス化炉9と流動層燃焼炉1の間を循環する流動媒体3中に含まれる酸化ニッケルNiO等の高融点金属は濃縮されるようになるので、この流動媒体の一部を外部に取り出して高融点金属回収手段21に供給する。高融点金属回収手段21においては粒子径差分離方法或いは比重差分離方法によって流動媒体3を分離し、これにより、酸化ニッケルNiO等の高融点金属20が高い濃度で効果的に回収される。
【0054】
図2は本発明を実施する流動層ガス化炉の他の例を示すものであり、基本的な構成は前記図1の形態と同様であるため図1の形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0055】
図2では、流動層燃焼炉1からの例えば900〜1000℃の燃焼排ガス2を導くようにした主分離器5に、50μm以上の粒子径の固体粒子を分離するようにしたサイクロン5bを用いている。更に、主分離器5にて分離された排ガス4は、サイクロンからなる分離器24に導いて10μm以上の粒子径の固体粒子を分離するようにしている。更に、分離器24を経た排ガス4は蒸気発生器等の冷却器25によって所定の温度に冷却した後、サブミクロンの粒子を補集するようにしたバグフィルタ、電気集塵器等の分離器26に導くようにしている。
【0056】
図2の形態では、流動層燃焼炉1からの燃焼排ガス2はサイクロン5bからなる主分離器5によって50μm以上の粒子径を有する流動媒体3及び50μm以上の粒子径を有する酸化ニッケルNiO等の高融点金属が分離される。
【0057】
主分離器5によって50μm以上の固体粒子が分離された排ガス4は、サイクロンによる分離器24によって10μm以上の固体粒子を分離するようにしているので、前記したように固体粒子径が10μm以上を有する酸化ニッケルNiO等の高融点金属20は分離器24にて効果的に補集される。
【0058】
更に、分離器24を経た排ガス4は、冷却器25により低融点金属の融点以下に冷却されることにより排ガス4中の低融点金属は析出し、サブミクロンの粒子となって分離器26により分離される。従って、排ガス4を冷却器25により目的の低融点金属の融点以下に冷却して分離器26にて粒子を捕集することにより、目的のバナジウムVのような有価金属である低融点金属23を高い濃度で効果的に回収することができる。
【0059】
又、サイクロン5bによる主分離器5で分離された流動媒体3及び粒子径が50μm以上の酸化ニッケルNiO等の高融点金属は流動層ガス化炉9と流動層燃焼炉1の間を循環する際に濃縮されるので、流動媒体3の一部を外部に取り出して高融点金属回収手段21に供給し、高融点金属回収手段21により流動媒体3を分離することにより、酸化ニッケルNiO等の有価金属である高融点金属20を高い濃度で効果的に回収することができる。
【0060】
図2に示したように、主分離器5からの排ガス4から粒子径に応じて酸化ニッケルNiO等の高融点金属及び五酸化バナジウムVのような低融点金属を分離する方法は、既存の燃焼設備に対しても比較的容易に適用することができる。
【0061】
尚、上記形態では、重質油又はペトロコークスを原料として用いた場合について説明したが、これら以外の金属を多く含む原料も適用できること、五酸化バナジウムV及び酸化ニッケルNiOを回収する場合について例示したが、他の金属も同様に回収できること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明を実施する流動層ガス化炉の一例を示す概略図である。
【図2】本発明を実施する流動層ガス化炉の他の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0063】
1 流動層燃焼炉
2 燃焼排ガス
3 流動媒体
4 排ガス
5 主分離器
6 原料
7 ガス化剤
8 流動層
9 流動層ガス化炉
10 生成ガス
11 第1の冷却器
12 第1の粒子補集器
13 第2の冷却器
14 第2の粒子補集器
17 タール分離器
18 タール
20 高融点金属
21 高融点金属回収手段
22 低融点金属
23 低融点金属
24 分離器
26 分離器
27 塩化物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を多く含む原料を燃焼設備で燃焼して、その燃焼排ガスから金属を回収する燃焼設備の金属回収方法であって、
前記燃焼排ガスを主分離器に供給して高融点金属を主に含む流動媒体と、ガス及びミスト状の低融点金属を主に含む排ガスとに分離し、
主分離器で分離した排ガスを冷却することで生成する固体粒子を排ガスから分離することにより低融点金属を回収する
ことを特徴とする燃焼設備の金属回収方法。
【請求項2】
排ガスを少なくとも2段階の異なる温度で冷却することで生成する夫々の固体粒子を排ガスから分離することにより少なくとも2種類の低融点金属を回収する請求項1に記載の燃焼設備の金属回収方法。
【請求項3】
排ガスから少なくとも2段階の異なる固体粒子径の固体粒子を分離することにより少なくとも2種類の低融点金属を回収する請求項1又は2に記載の燃焼設備の金属回収方法。
【請求項4】
流動媒体の一部を外部に取り出し、取り出した流動媒体から流動媒体粒子を分離することにより高融点金属を回収する請求項1〜3のいずれか1つに記載の燃焼設備の金属回収方法。
【請求項5】
燃焼設備が流動層燃焼炉であり、その流動層燃焼炉から導出される燃焼排ガスを主分離器により流動媒体と排ガスとに分離し、主分離器で分離した流動媒体は金属を多く含む原料と共に流動層ガス化炉に供給し流動層により原料をガス化して生成ガスを取り出し、流動層ガス化炉の流動媒体は流動層燃焼炉に供給して循環するようにし、
流動層燃焼炉の流動媒体の一部を外部に取り出し、取り出した流動媒体から流動媒体粒子を分離することにより高融点金属を回収する請求項1〜3のいずれか1つ記載の燃焼設備の金属回収方法。
【請求項6】
流動層ガス化炉から取り出す生成ガスから金属を含むタールを分離し、分離したタールを流動層燃焼炉に供給する請求項5に記載の燃焼設備の金属回収方法。
【請求項7】
金属を多く含む原料が重質油である請求項1〜6のいずれか1つに記載の燃焼設備の金属回収方法。
【請求項8】
金属を多く含む原料がペトロコークスである請求項1〜6のいずれか1つに記載の燃焼設備の金属回収方法。
【請求項9】
低融点金属がバナジウムである請求項1〜8のいずれか1つに記載の燃焼設備の金属回収方法。
【請求項10】
高融点金属がニッケルである請求項1〜8のいずれか1つに記載の燃焼設備の金属回収方法。
【請求項11】
原料と共に塩化物を供給することにより金属の融点を下げるようにした請求項1〜10のいずれか1つに記載の燃焼設備の金属回収方法。
【請求項12】
金属を多く含む原料を燃焼設備で燃焼して、その燃焼排ガスから金属を回収する燃焼設備の金属回収装置であって、
燃焼設備からの燃焼排ガスを高融点金属を主に含む流動媒体と、ガス及びミスト状の低融点金属を主に含む排ガスとに分離する主分離器と、
主分離器で分離した排ガスを冷却する冷却器と、
冷却器の冷却により生成する固体粒子を排ガスから分離する粒子補集器と
を有することを特徴とする燃焼設備の金属回収装置。
【請求項13】
燃焼設備が流動層燃焼炉である請求項12に記載の金属回収装置。
【請求項14】
排ガスを少なくとも2段階の異なる温度で冷却する冷却器と、各冷却器による冷却によって生成する固体粒子を排ガスから分離する粒子補集器を有する請求項12又は13に記載の燃焼設備の金属回収装置。
【請求項15】
排ガスから少なくとも2段階の異なる固体粒子径の固体粒子を分離する分離器を有する請求項12〜14のいずれか1つに記載の燃焼設備の金属回収装置。
【請求項16】
流動媒体の一部を外部に取り出し、取り出した流動媒体から流動媒体粒子を分離する高融点金属回収手段を有する請求項12〜15いずれか1つに記載の燃焼設備の金属回収装置。
【請求項17】
燃焼設備が流動層燃焼炉であり、その流動層燃焼炉から導出される燃焼排ガスを流動媒体と排ガスとに分離する主分離器と、主分離器で分離した流動媒体を金属を多く含む原料と共に供給して流動層により原料をガス化して生成ガスを取り出すと共に、流動媒体を流動層燃焼炉に供給して循環する流動層ガス化炉とを有する請求項12に記載の燃焼設備の金属回収装置。
【請求項18】
流動層燃焼炉の流動媒体の一部を外部に取り出し、取り出した流動媒体から流動媒体粒子を分離する高融点金属回収手段を有する請求項17に記載の燃焼設備の金属回収装置。
【請求項19】
流動層ガス化炉から取り出す生成ガスから金属を含むタールを分離し、分離したタールを流動層燃焼炉に供給するタール分離器を有する請求項17又は18に記載の燃焼設備の金属回収装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−224154(P2008−224154A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65151(P2007−65151)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】