説明

爆轟波発生装置

【課題】容易にスロート部を交換可能な爆轟波発生装置を提供する。
【解決手段】爆轟波発生装置1の爆轟波発生器7Aは、同軸多重構造の筒構成を有する燃焼筒9Aと、燃焼筒9Aの燃焼筒基部8側に形成された予混合室11a内に燃料を噴射する燃料噴射ノズル12および噴射された燃料に空気を供給し攪拌する空気噴射孔17a,17bを有する燃焼筒基部8と、予混合室11a内に突出させ、燃焼筒9Aで熱交換されて加熱された空気を冷却空気流通路24Aから噴出させ予混合室11a内の燃料−空気の混合気に旋回流を誘起させる空気噴出ノズル25A,25Bと、燃焼筒先端9f側に設けられ、スロート部29を形成した燃焼筒開口端部10Aと、点火器21と、を備えている。燃焼筒開口端部10Aは、燃焼筒9Aの冷却空気流通路23A,24Aと連通する冷却空気流通路23B,24Bを有し、フランジ9d,10eにより燃焼筒先端9fと着脱自在である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料と空気の混合気に着火することにより爆轟波を発生させ、その爆轟波により発生された衝撃波を被処理物に当てて、被処理物を高温高圧化して破砕燃焼処理するための爆轟波発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料と酸化剤との混合物に着火することにより爆轟波を発生させ、その爆轟波を利用して高圧の衝撃液圧を得る装置として、特許文献1に記載の衝撃液圧発生装置がある。この衝撃液圧発生装置は、一端部から他端部へ向け断面積が小さくなる燃焼室と、気体燃料であるプロパンと酸化剤である酸素の供給を受けて点火栓による点火を行う着火室と、着火室から分岐して延びた燃焼室の一端部へ連有する路程の等しい複数の誘導路と、燃焼室の最小断面積部である他端部の開口に接続された液圧室をと、を備えている。
また、特許文献2には、燃料として液体燃料を用い、液体燃料を予蒸発させてから酸化剤と混合して用いる特許文献1と同じ構造の爆轟発生装置が記載されている。
【0003】
特許文献3には、一端が閉塞され、他端が爆轟波を与える対象の容器に連通し、開放された円筒形の燃焼室を有するパルスデトネーション燃焼器清浄化装置の技術が記載されている。このパルスデトネーション燃焼器清浄化装置では、燃焼室の一端側から燃料と空気を供給し、燃焼室内周面の一端寄りに配した点火装置で燃料と空気の混合気に点火し、軸方向に多段に設けられた障害物により火炎が爆轟波へと加速する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−285549号公報
【特許文献2】特開2005−254198号公報
【特許文献3】特開2008−202906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2において燃焼室の冷却については、水冷ジャケットで冷却することが考えられており、燃料供給系と、酸化剤または空気供給系の他に、冷却系も設ける必要があり、より複雑な爆轟波発生装置となる。
また、爆轟波を被処理物、例えば、家庭ごみ、養殖牡蠣などの廃棄貝殻などに衝撃波を当てて加熱粉砕する処理の場合、被処理物に応じて当てる衝撃波のエネルギを調節するため、または、毎秒当たりの爆轟波の発生率に応じてスロート部の冷却を適正化するため、スロート部の絞り度合いを変える必要がある。また、スロート部が摩耗したときに、スロート部を容易に交換可能にする必要がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、円筒状の燃焼室の他端部側にスロート部を設けた爆轟波発生装置において、容易にスロート部を交換可能な爆轟波発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するため、本発明の爆轟波発生装置は、外周に空気供給と熱交換を兼ねた空気供給路を有する同軸多重構造の筒構成を有する燃焼筒と、燃焼筒の一端側に形成された予混合室内に燃料を噴射する燃料噴射ノズルおよび噴射された燃料に空気を供給し攪拌する空気噴射孔を有する燃焼筒基部と、さらに、燃焼筒の予混合室内に面した内周面から径方向内側に突出させ、燃焼筒で熱交換されて加熱された空気を空気供給路から噴出させ予混合室内の燃料−空気の混合気に旋回流を誘起させる空気噴出ノズルと、燃焼筒の他端側に設けられ、スロート部を形成した燃焼筒開口端部と、燃料−空気の混合気に着火する着火手段と、を備え、周期的に爆轟波を発生させて被処理物に高温高圧の衝撃波を当てる爆轟波発生装置であって、着火手段は、空気噴出ノズルよりも燃焼筒開口端部側に配置され、燃焼筒開口端部は、燃焼筒の空気供給路と連通する冷却用の空気流通路を有し、着脱手段により燃焼筒の他端と着脱自在であることを特徴とする。
【0008】
特に、着脱手段は、階段断隔螺式の締結機構を有し、燃焼筒開口端部を燃焼筒他端に容易に締結できることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、燃焼筒開口端部を交換して被処理物に当てる衝撃波のエネルギを容易に変更可能であり、また、爆轟波の毎秒当たりの発生回数を増やす場合は、スロート部の絞り度合いを小さくした、スロート部の温度が上がり過ぎないような燃焼筒開口端部に容易に交換可能である。また、スロート部が摩耗した場合に、容易にスロート部を含む燃焼筒開口端部だけを交換することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、円筒状の燃焼室の端部側にスロート部を設けた爆轟波発生装置において、容易にスロート部を交換可能な爆轟波発生装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る爆轟波発生装置の全体概要図である。
【図2】爆轟波発生器の燃焼筒基部側を示す縦断面図である。
【図3】爆轟波発生器の作動行程の説明図であり、(a)は、燃料噴射行程の説明図、(b)は、燃料噴射行程終了直後の点火行程の説明図、(c)は、爆轟波が点火器から中心軸Lに沿って両側に進行する第1の爆轟波進行行程の説明図、(d)は、燃焼筒基部側に向かった爆轟波が反射して、反射衝撃波と爆轟波が2重になってスロート部に向かって進行する第2の爆轟波進行行程の説明図、(e)は、爆轟波がノズル部に達しスロート部で衝撃波を発生させ、強力な衝撃波を発生させる多重衝撃波発生行程の説明図、(f)は、強力な衝撃波がノズル部を通過して被処理物に向かう衝撃波送出行程の説明図、(g)は、加圧空気を流して燃焼筒基部や内筒などを冷却し、既燃ガスを排出する排気行程の説明図である。
【図4】単純な円筒管のモデルの爆轟波発生器における各行程のサイクルの圧力温度分布説明図であり、(a),(b)は、爆轟波進行行程の圧力温度分布説明図、(c),(d),(e),(f)は、排気行程の圧力温度分布説明図である。
【図5】変形例の爆轟波発生器の燃焼筒と燃焼筒開口端部の縦断面図である。
【図6】変形例の爆轟波発生器の燃焼筒と燃焼筒開口端部の図5におけるA矢視の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の好適な実施形態である爆轟波発生装置を例に、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
《爆轟波発生装置の全体概要》
まず、図1を参照しながら爆轟波発生装置の全体概要について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る爆轟波発生装置の全体概要図である。
爆轟波発生装置1は、燃料供給系3、空気供給系5、点火系6、爆轟波発生器7A、制御盤100を含んで構成される。
【0013】
(制御盤)
ここで、制御盤100は、図示省略するがマイクロコンピュータ、インターフェース回路などから構成されるECU(Electric Control Unit)101を有し、また、図示省略の運転開始ボタン、運転停止ボタン、運転開始ボタンまたは運転停止ボタンの操作によって燃料供給系3の後記する昇圧ポンプ36を駆動するモータ35への電源をオン/オフしたり、後記する空気供給系5のエアコンプレッサ51への電源をオン/オフしたり、後記する点火系6のイグナイタユニット61への電源をオン/オフしたりする、シーケンス制御コントローラや、モータコントローラやスイッチ回路などを含んでいる。
【0014】
さらに、制御盤100には、後記する各種センサ(空気圧センサSPA1,SPA2、圧力センサSPF、空気流量センサSFAなど)からのデータを表示する図示しない表示装置、爆轟波発生器7Aに1秒間に発生させる爆轟波の回数、つまり、爆轟波発生率を操作者が設定できる、図示しないパルスレート設定ダイヤル、爆轟波の強度を操作者が設定できる図示しない爆発力設定ダイヤルなどの爆轟波発生率設定手段、爆轟波エネルギ設定手段が設けられ、その設定信号がECU101に入力される。
ECU101は、後記する各種センサ(空気圧センサSPA1,SPA2、圧力センサSPF、空気流量センサSFAなど)からの信号を入力され、爆轟波発生率設定手段で設定された爆轟波発生率に対応するように、燃料供給系3の後記する流量調節弁41、空気供給系5の流量調節弁53、点火系6のイグナイタユニット61を制御する。
【0015】
(燃料供給系)
燃料供給系3は、燃料タンク31、燃料供給元管32、フィルタ33、流量調節弁34、モータ35、昇圧ポンプ36、圧力ヘッダ37、圧力調整弁38、戻り配管39、燃料噴射供給管40、流量調節弁41、逆止弁42含んで構成される。
燃料タンク31に貯留された液体燃料、例えば、灯油は、燃料供給元管32に直列に配されたフィルタ33、並行に配置された逆止弁を有する流量調節弁34、モータ35に駆動される昇圧ポンプ36を経て、圧力ヘッダ37に所定の圧力にて蓄圧貯留される。フィルタ33には、図示省略の差圧センサが設けられ、その信号がECU101に入力されて、ECU101がフィルタ33や昇圧ポンプ36の異常(燃料供給量低)を検出し、前記した制御盤100の表示装置に警告表示できるようになっている。
【0016】
モータ35は、制御盤100の前記した運転開始ボタン、運転停止ボタンを操作員が操作することにより、シーケンス制御で自動的に電源のオン/オフを制御され、電源オン状態では、ほぼ定速回転のモータである。従って、爆轟波発生率設定手段で設定された爆轟波発生率に応じて、ECU101は、流量調節弁34を制御して、単位時間当たりに圧力ヘッダ37に充填する燃料の量を制御することにより、後記する圧力センサSPFと圧力調整弁38による圧力ヘッダ圧の目標圧力への圧力制御と協調動作させる。
【0017】
圧力ヘッダ37には、ヘッダ圧を検出する圧力センサSPFが設けられ、そのヘッダ圧信号は制御盤100のECU101に出力される。ECU101は、圧力ヘッダ37と燃料タンク31とを接続する戻り配管39の途中に配置された圧力調整弁38により圧力ヘッダ圧を、所定の圧力、例えば、ゲージ圧表示で0.785MPa(約8kgf/cm2)に制御する。
【0018】
また、圧力ヘッダ37は、流量調節弁41と逆止弁42を直列に配した燃料噴射供給管40により、爆轟波発生器7Aの後記する燃料噴射ノズル12に連通するように構成されており、ECU101に流量調節弁41が開閉制御されて、爆轟波発生器7Aの後記する予混合室11aに燃料を噴射可能になっている。
このようにECU101が圧力ヘッダ圧をほぼ一定に維持制御し、流量調節弁41の開のタイミングや開時間を制御することで、爆轟波発生器7A内に所定タイミングで所要量の燃料を噴射するように制御できる。
なお、流量調節弁41として、自動車用エンジンで使用されているような高速開閉が可能な燃料インジェクタを用いても良い。その場合、弁のシフト量で流量調節しても良いが、燃料インジェクタを複数個並列に配置し、開制御する燃料インジェクタの個数で流量制御するようにしても良い。このようにすれば、高速応答の流量調節弁41が実現できる。
【0019】
(空気供給系)
空気供給系5は、蓄圧タンク51a付きのエアコンプレッサ51、空気供給管52、空気供給管52に設けられた空気流量センサSFA、空気圧センサSPA1、流量調節弁53、逆止弁54含んで構成される。
【0020】
エアコンプレッサ51の蓄圧タンク51aには、空気圧センサSPA2が設けられ、その信号がエアコンプレッサ51の図示しないコントローラに入力され、蓄圧タンク51aの空気圧をエアコンプレッサ51側で所定の範囲に維持する。
空気流量センサSFAの空気流量信号および空気圧センサSPA1の圧力信号は、制御盤100のECU101に出力され、流量調節弁53の開度は、空気流量センサSFAの空気流量信号および空気圧センサSPA1の圧力信号にもとづきECU101により制御される。
図1に示すように、流量調節弁53、逆止弁54を経た加圧空気は、爆轟波発生器7Aの後記する加圧空気入口13へ導かれる。
そして、ECU101は、空気圧センサSPA1の圧力信号、空気流量センサSFAの空気流量信号、圧力センサSPFからのヘッダ圧信号にもとづいて、空燃比として適切な空気量を算出し、爆轟波発生器7Aの後記する燃焼室11に燃料噴射行程における所要量の空気を噴射するように制御できる。
【0021】
(点火系)
点火系6は、制御盤100から電源を供給され、ECU101に制御されるイグナイタユニット61と、点火器(着火手段)21から構成される。イグナイタユニット61は、例えば、イグニッションコイルの一次側を通る直流電流を、トランジスタを介して流し、トランジスタにより一次側電流を遮断してイグニッションコイルの二次側に高電圧を発生させ、高電圧コード63を介して、後記する燃焼室11内に保持固定してある点火器21に伝え、点火器21に火花放電を起こさせる。
イグナイタユニット61における高電圧の発生タイミングはECU101から入力される点火信号により制御される。
点火器21を爆轟波発生器7A内に設ける位置についての説明は、後記する。
【0022】
《爆轟波発生器》
次に、図1、図2を参照しながら爆轟波発生器7Aの構造について説明する。図2は、爆轟波発生器の燃焼筒基部側を示す縦断面図である。
爆轟波発生器7Aは、燃焼筒基部8、燃焼筒9A、燃焼筒開口端部10Aから主に構成されている。爆轟波発生器7Aは、中心軸L沿って燃焼室11を有する全体がほぼ円筒状の高温高圧に耐える筒体である燃焼筒9Aの燃焼筒基部8側を燃焼筒基部8で閉じ、燃焼筒先端9fにスロート部29を有する燃焼筒開口端部10Aを脱着可能に接続して、開口端としたものである。以下に、各部の詳細な構造と作用を説明する。
ここで、燃焼筒9Aの燃焼筒基部8側が特許請求の範囲に記載の「燃焼筒の一端側」に対応し、燃焼筒9Aの燃焼筒先端9f側が特許請求の範囲に記載の「燃焼筒の他端側」に対応し、燃焼筒先端9fが特許請求の範囲に記載の「燃焼筒の他端」に対応する。
(燃焼筒基部)
燃焼筒基部8は、図2に示すように、主に、円盤フランジ状の入口基板14、中間基板15、燃焼筒取り付け基板16、および中間基板15の内部にほぼ格納される円環カラー17から構成される。
(燃焼筒基部−入口基板)
図2において、入口基板14の中心部に燃料噴射ノズル12が、その多数の噴射孔12aを下方に向けて取り付けられている。入口基板14の中心部の上面には燃料噴射ノズル12の噴射孔12aに連通する燃料入口ノズル12bが取り付けられ、燃料噴射供給管40(図1参照)と接続される。
【0023】
図2において入口基板14の中心部から径方向外側に外れた位置に、中心軸Lに並行方向に空気通路孔14bが設けられ、その上面の加圧空気入口13に加圧空気入口ノズル13aが取り付けられ、空気供給管52(図1参照)と接続される。
入口基板14の図2における下面側には内径D1、外径D2の環状溝形状の位置決め凹部14cが形成されており、その位置決め凹部14cの径方向外方側が空気室18の一部を構成し、空気通路孔14bと連通している。また、入口基板14の径方向外端近傍に周方向に複数のボルト孔14aが設けられている。
【0024】
(燃焼筒基部−中間基板)
中間基板15は、環状体の形状であり、前記した位置決め凹部14cの外径D2と同一値の内径の円盤状の内部空所を有している。また、中間基板15の径方向外端近傍に周方向に数のボルト孔15aが設けられている。
燃焼筒取り付け基板16は、中心部に内径D1の空所を形成したほぼ環状体の形状であり、図2における上面側には、外径D3の浅い環状溝形状の位置決め凹部16cが形成されている。
【0025】
(燃焼筒基部−円環カラー)
そして、入口基板14の位置決め凹部14cの内径D1と同一値の内径であり、燃焼筒取り付け基板16の位置決め凹部16cの外径D3と同一値の外径の、ほぼ環状体の円環カラー17が、入口基板14の位置決め凹部14cと燃焼筒取り付け基板16の位置決め凹部16cとで位置決めされて、入口基板14と燃焼筒取り付け基板16との図2における上下方向の間に挟みこまれて固定される。
円環カラー17には、周方向に中心軸Lの周りに1方向に噴出空気の旋回流を形成するように、円環カラー17の外周面から内周面に貫通し、中心軸Lに対して周方向にねじりの位置関係にある、例えば、特許第37208344号公報の図2に示されている「小孔9」よりも中心軸L近傍手前側に向けて配設された空気噴射孔17a,17bが設けられている。
【0026】
また、図2における円環カラー17の上面および上面側の内周面、並びに、図2における円環カラー17の下面および下面側の外周面には空気通路溝17cが、空気室18から円環カラー17の内周面側に連通し、入口基板14、燃焼筒取り付け基板16を冷却するようになっている。
【0027】
なお、空気噴射孔17aは、図2における下向きに、空気噴射孔17bは、図2における上向きに、噴射孔12aから微小液滴で霧状に噴射される燃料を、上下方向から挟んで攪拌するように配置されている。
このような配置により、噴射孔12aから噴射された燃料の液滴が効率的に空気と均一に混合するとともに、攪拌されてより微細な燃料液滴にするとともに、後記する排気行程において燃料噴射ノズル12を効率的に冷却するように構成されている。
ちなみに、空気噴射孔17a,17b、空気通路溝17cから噴出される空気量は、理想状態の空燃比に必要な空気量の、例えば、30%を賄う量である。
【0028】
(燃焼筒基部−燃焼筒取り付け基板)
円環カラー17の外周面と、中間基板15の内径D2の内周面、および入口基板14の位置決め凹部14cの外径D2の溝壁面との間に形成される環状の空気室18は、燃焼筒取り付け基板16に周方向に多数配列され、中心軸L方向に穿かれた空気通路孔16bと連通している。
燃焼筒取り付け基板16の図2における下面側には、燃焼筒9Aの内筒9aを位置決めする溝部16d、中筒9cを位置決めする段差部16e、外筒を位置決めする段差部16fが設けられ、溶接によって燃焼筒取り付け基板16と内筒9a、中筒9c、外筒9bそれぞれとが接続固定されている。また、燃焼筒取り付け基板16の径方向外端近傍に周方向に複数のボルト孔16aが設けられている。
【0029】
燃焼筒基部8は、円環カラー17を入口基板14と燃焼筒取り付け基板16の上下間に挟み込み、ボルト孔14a,19a,15b,19a,16aが連通するように入口基板14、ガスケット19、中間基板15、ガスケット19、燃焼筒取り付け基板16の順に重ね合わせ、締結ボルト20を挿通させてボルトナット締結することにより組み立てられる。
ちなみに、ガスケット19は、ボルト孔14a,15b,16aに対応した位置にボルト孔19aを有している。
【0030】
(燃焼筒)
燃焼筒9Aは、内筒9aの外周側に所定の距離を離間して、中筒9cを内筒9aと同軸に配置して冷却空気流通路(空気供給路)24Aを形成し、さらに、中筒9cの外周側に所定の距離を離間して、冷却空気流通路(空気供給路)23Aを形成し、外筒9bを内筒9aと同軸に配置した、同軸の直管のほぼ3重筒状体として構成され、その燃焼筒基部8側(一端側)の端部が前記したように燃焼筒取り付け基板16に固定溶接されている。
図1に示すように燃焼筒先端9f側(他端側)の外筒先端9bFにフランジ9dが設けられている。
なお、燃焼筒先端9f側の内筒9aと中筒9cとの離間距離、中筒9cと外筒9bとの離間距離を確保するため、周方向に離散的にスペーサ部材を溶接固定すると良い。
【0031】
内筒9aの燃焼筒基部8側(一端側)には、冷却空気流通路24Aの空気を燃焼室11の燃焼筒基部8側の空間である予混合室11a内に吐出させるための小孔の空気噴出ノズル25A,25Bを内周面からノズル先を突出させて、周方向に多数の配置してある。図2における上段側の空気噴出ノズル25Aは、中心軸L方向の下方側に傾け、さらに、前記した空気噴射孔17aと同様の周方向の向きに傾けて配置されている。図2における下段側の空気噴出ノズル25Bは、中心軸Lに垂直な平面内で、前記した空気噴射孔17aと同様の周方向の向きに傾けて配置されている。
この空気噴出ノズル25A,25Bにより燃料を、冷却空気流通路24B(図1参照)冷却空気流通路24Aを経由する間に後記するスロート部内筒10aや内筒9aを冷却して加熱された高温空気で一様に混合する。この空気噴出ノズル25A,25Bから噴射される空気量は理想状態の空燃比に必要な空気の残り、例えば、70%程度である。
【0032】
前記した点火器21は、図2における空気噴出ノズル25A,25Bの位置よりも下方(燃焼筒開口端部10A側)に点火器支持構造22を介して内筒9aに取り付けられる。
なお、点火器21まで高電圧を供給する爆轟波発生器7A内部のケーブル64は、例えば、ステンレス鋼チューブ内に絶縁材としての酸化マグネシウム用い、銅などの導電材をステンレス鋼チューブと酸化マグネシウムで離間させて挿入する形式である。
入口基板14の図2における下面側から点火器21を配した位置までの中心軸Lに沿った燃焼室11の区間、例えば、約200mmの区間を、燃焼室11中でも、燃料と空気の混合を促進する領域として予混合室11aと称する。約200mmの区間があれば、まず最初の約100mmの区間で燃料噴射ノズル12から噴射された燃料の霧滴と、空気噴射孔17a,17bからの必要量の約30%の空気で攪拌混合された燃料−空気の混合気体を、さらに、次に約100ミリの区間で、空気噴出ノズル25A,25Bから噴出させる必要量の残り約70%の空気により均一に攪拌混合でき、点火器21の強力な放電火花で点火したときに、直ちにデフラグレーション(Deflagration)から爆轟(Detonation)に移行させて(Direct Initiation)、爆轟波を生じさせることができる。
【0033】
なお、内筒9aの空気噴出ノズル25A,25Bの配置された位置よりも中心軸Lの図2における下方側(燃焼筒下端側)には、周方向に多数、また、中心軸Lに沿って多段に中心軸Lに直角に向くように空気漏洩小孔(冷却空気孔)27を穿ち、内筒9aを空気冷却する。空気漏洩小孔27は、入口基板14の図2おける下面から所定距離(図1参照)の領域LFに配置する。これは、燃焼室11内の燃料−空気の混合気に着火する時点までに燃料−空気の混合気が達する最大前面位置である。これは、爆轟波が伝播する過程で燃料−空気の混合気が未燃のままスロート部から外部へ押し出され、未燃のまま放出されてしまうことを抑制するために予め計算によって算出設定するものである。
【0034】
(燃焼筒開口端部)
図1に示すように燃焼筒開口端部10Aは、フランジ10eに一端側を溶接固定されたスロート部外筒10bの内周側に所定の距離を離間して、スロート部中筒10cをスロート部外筒10bと同軸に配置して冷却空気流通路(冷却用の空気流通路)23Bを形成し、さらに、スロート部中筒10cの内周側に所定の距離を離間して、スロート部内筒10aをスロート部中筒10cと同軸に配置し冷却空気流通路(冷却用の空気流通路)24Bを形成した、同軸のほぼ3重筒状体として構成され、それらスロート部内筒10a、スロート部外筒10bの先端側(図1における下端側)が端板10dに固定溶接されている。
燃焼筒開口端部10Aのスロート部内筒10aは、図1における下端側(先端側)が狭まり、スロート部29を形成した後、開口10aO有する開口端となっている。
なお、スロート部内筒10aとスロート部中筒10cとの離間距離、スロート部中筒10cとスロート部外筒10bとの離間距離を確保するため、周方向に離散的にスペーサ部材を溶接固定すると良い。
【0035】
図1に示すように、フランジ9dとフランジ10eをボルトナット締結すると、内筒先端9aFの端面とスロート部内筒10aの燃焼筒先端9f側の端面同士が当接し、中筒先端9cFの端面とスロート部中筒10cの燃焼筒先端9f側の端面同士が当接し、外筒先端9bFの端面とスロート部外筒10bの燃焼筒先端9f側の端面同士が当接する。そして、冷却空気流通路23A,23Bが連通し、同時に冷却空気流通路24A,24Bが連通し、端板10dの中心軸L方向手前で途切れているスロート部中筒10cの連通部10fにおいて、冷却空気流通路23A,23Bを通過した空気が、冷却空気流通路24B,24Aと図1において上方に戻り、スロート部内筒10a、内筒9aを冷却して、一部は内筒9aの空気漏洩小孔27から燃焼室11内に噴出し、内筒9aの壁面が高温になるのを抑制し、大部分は空気噴出ノズル25A,25Bから予混合室11aに加熱された空気として噴射される。
フランジ9d,10eの間には適切なシールガスケットを介設する。
【0036】
なお、特に、入口基板14、中間基板15、燃焼筒取り付け基板16、円環カラー17、内筒9a、スロート部内筒10aの部材としては耐熱ステンレス鋼が適し、高温ガスと接する面には少なくともアルマ加工を施す。また、入口基板14、中間基板15、燃焼筒取り付け基板16、内筒9a、スロート部内筒10a、スロート部外筒10bなどは、爆轟波を発生させたときの内圧により変形しないような耐圧強度を有する厚さ設計とする。
【0037】
《作動行程》
次に、図3、図4を参照しながら爆轟波発生器7Aにおける作動行程について説明する。図3は、爆轟波発生器の作動行程の説明図であり、(a)は、燃料噴射行程の説明図、(b)は、燃料噴射行程終了直後の点火行程の説明図、(c)は、爆轟波が点火器から中心軸Lに沿って両側に進行する第1の爆轟波進行行程の説明図、(d)は、燃焼筒基部側に向かった爆轟波が反射して、反射衝撃波と爆轟波が2重になってスロート部に向かって進行する第2の爆轟波進行行程の説明図、(e)は、爆轟波がノズル部に達しスロート部で衝撃波を発生させ、強力な衝撃波を発生させる多重衝撃波発生行程の説明図、(f)は、強力な衝撃波がノズル部を通過して被処理物に向かう衝撃波送出行程の説明図、(g)は、加圧空気を流して燃焼筒基部や内筒などを冷却し、既燃ガスを排出する排気行程の説明図である。
【0038】
(燃料噴射行程)
図3の(a)に示すように、燃料噴射行程は、前サイクルの排気行程に続いて、燃料噴射ノズル12の噴射孔12a(図2参照)から燃料を噴射するとともに、空気噴射孔17a,17bや空気通路溝17cや空気噴出ノズル25A,25Bから加圧空気を噴射する。これを「燃料噴射行程」と称する。
なお、空燃比がほぼ理想状態となるように、燃料と空気のそれぞれ噴射率は予め設定され、ECU101が流量調節弁41、流量調節弁53の開度を設定する。燃料の噴射率(g/秒)は、圧力ヘッダ37の一定に調圧されたヘッダ圧と流量調節弁41の開度のみで予め一定に決められており、この燃料噴射は、図3の(b)に示す前記した領域LF内の所定目標位置に斜線で示す燃料−空気の混合気MFAのフロント面FSが到達するまで一定流量で保持され、フロント面FSが目標位置に到達したと推定されるタイミングで流量調節弁41を閉制御される(図3の(b)ではフロント面FSの目標位置が領域LF一杯の場合で表示)。
【0039】
なお、フロント面FSの所定目標位置に到達した推定される時間は、以下のように決められる。まず、燃料噴射ノズル12から噴射される燃料の噴射率(g/秒)は、流量調節弁41の開度により一意に決まり、その燃料噴射が開始された時点から燃料噴射が終わるまでの時間に、予混合室11a内に空気噴射孔17a,17b、空気通路溝17c、および空気噴出ノズル25A,25Bから噴射される空気量に依存してフロント面FSの位置が決まる。そして、フロント面FSの位置までの容積に含まれる燃料量に応じて爆轟波のエネルギが決まる。
【0040】
従って、例えば、燃料の噴射率(g/秒)が所定値で一定の場合は、操作者が設定した前記した制御盤100(図1参照)の図示しない爆発力設定ダイヤルの設定に応じて燃料噴射開始から終了までの時間が、ECU101においてメモリに記憶させてある、爆轟波の強度と燃料の噴射率をパラメータとした燃料噴射時間マップを参照して決められる。次いで、ECU101において、(燃料の噴射率)×(噴射時間)で算出される燃料噴射量に応じた理想空燃比を実現する空気量を燃料噴射時間内に供給できるための空気噴射率(基準圧力換算の空気体積における流量(リットル/秒))を算出し、空気圧センサSPA1と空気流量センサSFAから、基準圧力で算出された前記空気噴射率を、現在の検出された空気圧に換算した空気流量(リットル/秒)を算出して、流量調節弁53の開度を制御する。
【0041】
その後、ECU101において、メモリに記憶させてある、基準圧力で算出された前記空気噴射率と、燃料の噴射時間とをパラメータとしたフロント面位置算出マップを参照してフロント面目標位置が決まる。ECU101は、フロント面目標位置が領域LF内に入るように燃料の噴射率と噴射時間の組み合わせを設定する。このように燃料噴射と空気噴射を制御することによって、ほぼ燃料噴射が終了した時点で点火器21を作動させれば、適切なタイミングで燃料−空気の混合気MFAに点火できることになる。
【0042】
(点火行程)
図3の(b)に示すように、燃料噴射が終了したタイミングで、点火器21がECU101に制御されて混合気MFAに点火する。これを「点火行程」と称する。このとき混合気MFAのフロント面FSは領域LF内に留まっている。
【0043】
(第1の爆轟波進行行程)
混合気MFAに点火すると、図3の(c)に示すように、混合気MFAは着火し、爆轟波DWS1は、燃焼筒開口端部10A(図1参照)側へ進行し、爆轟波DWS2が燃焼筒基部8側(図1参照)へ進行する。これを「第1の爆轟波進行行程」と称する。
このとき、燃焼室11の内圧は爆轟波DWS1,DWS2それぞれの進行方向の背後で急激に高まり、その圧力が燃料噴射ノズル12を介して燃料噴射供給管40、逆止弁42へと伝わり、逆止弁42がそれより上流の燃料供給系3への圧力伝播を阻止する。それと同時に、おもに空気噴射孔17a,17b、空気室18、空気通路孔14bを介して空気供給管52、逆止弁54へと伝わり、逆止弁54がそれより上流の空気供給系5への圧力伝播を阻止する。
【0044】
なお、燃焼室11で急激に高まった内圧は、空気噴出ノズル25A,25Bから、冷却空気流通路24A,24B,24B,23A,空気通路孔16b、空気室18、空気通路孔14bを介して空気供給管52、逆止弁54へも伝わる。
この結果、流量調節弁41,53の衝撃による破損が防止できる。
【0045】
(第2の爆轟波進行行程)
そして、図3の(d)に示すように、爆轟波DWS2が燃焼筒基部8側で反射して反射衝撃波RSWとなり、燃焼筒開口端部10A(図1参照)側へ進行中の爆轟波DWS2を追いかける形となる。これを、「第2の爆轟波進行行程」と称する。
(多重衝撃波発生行程)
爆轟波DWS2、反射衝撃波RSWは、燃焼筒開口端部10A側に進行を続け、図3の(e)に示すように、爆轟波DWS2がスロート部29を通過するときにスロート部29の壁から斜めに発生する複数の斜め衝撃波SWを生じさせる。この斜め衝撃波SWは、スロート部29を通過する時に干渉し合い、干渉後に生成される斜め衝撃波は、流線がほぼ一様になるようにジェット噴流中に複数のダイヤモンド・ショックと謂われる垂直衝撃波DSW(以下、「ダイヤモンド・ショックDSW」と称する)を伴って被処理物に進む(図3の(e)では、1つのダイヤモンド・ショックDSWが代表的に表示してある)。これを、「多重衝撃波発生行程」と称する。
【0046】
(衝撃波送出行程)
さらに、この斜め衝撃波SWと反射衝撃波RSWは重なり合い、より強力な斜め衝撃波SWとなって、図3の(f)に示すようにスロート部29を通過する時に干渉し合い、複数のダイヤモンド・ショックDSWを伴って被処理物に進む(図3の(f)では、1つのダイヤモンド・ショックDSWが代表的に表示してある)。これを、「衝撃波送出行程」と称する。
このように生じる複数の連続するダイヤモンド・ショックDSWが被処理物に当てられると、断熱圧縮現象を被処理物に生じさせ、被処理物を一瞬にして高温高圧にし、例えば、3000°Kにまで高温にし、非処理物が分解処理される。例えば、養殖貝の実を取り除いた残りの貝殻である産業廃棄物や、火力発電所の海水取り入れ口などに付着するムラサキイガイ、ミドリイガイ、アカフジツボなどの貝類や、管棲多毛類などからなる産業廃棄物を水分やたんぱく質を含んだ状態でダイヤモンド・ショックDSWに当てて高温高圧処理して、しかも、臭い成分も分解して無臭処理できる。
【0047】
(排気行程)
その後、燃焼室11内の圧力は低下し、逆止弁54における流量調節弁53からの圧力が打ち克つと逆止弁54が開状態になり、所定時間に亘って加圧空気が流され、空気噴射孔17a,17b、空気通路溝17cにより燃焼筒基部8や燃料噴射ノズル12を冷却し、空気噴出ノズル25A,25Bや空気漏洩小孔27により内筒9a、スロート部内筒10aなどを冷却するとともに、燃焼室11内に滞留している既燃ガスをスロート部29から排気する(図3の(g)参照)。これを、「排気行程」と称する。
なお、このとき、空気流量センサSFAで逆止弁54の開を検出して、流量調節弁53の開度を一時的に増すようにECU101で制御して、冷却と排気を促進するようにしても良い。
【0048】
(主要行程における温度分布および圧力分布)
次に図4を参照しながら前記した主要行程における燃焼室11内の中心軸Lの軸方向位置における温度分布および圧力分布について簡単に説明する。ここでは、説明を簡単化するため、前記した爆轟波DWS1が燃焼室11の一端側(燃焼筒基部8側)から生じたとし、スロート部29のない単純に片端が開放した円筒管(片閉管)のモデルを用いて説明する。
図4は、単純な円筒管のモデルの爆轟波発生器における各行程のサイクルの圧力温度分布説明図であり、(a),(b)は、爆轟波進行行程の圧力温度分布説明図、(c),(d),(e),(f)は、排気行程の圧力温度分布説明図である。
【0049】
図4の(a),(b)に示す曲線Pのように、爆轟波の前面で圧力は急速に高くなりその背面側へ遠ざかるにしたがって圧力は低下して、一定の圧力になる。また図4の(a),(b)に示す曲線Tのように、爆轟波の前面で温度は急速に高くなるが、さらに、爆轟波の「CJ(Chapman-Jouguet)面」と表示した面で、温度は最高に達しその後、CJ面の背面側へ遠ざかるにしたがって温度は低下し、ほぼ一定の温度になる。爆轟波は、ZND(Zeldovich von Neumann Doering)理論によると、その最前面に衝撃波、その後ろに反応有機領域、発熱反応領域、CJ面から構成され、その後方に希薄波領域、静止気体領域が続く。
燃料―空気の混合気は、衝撃波によって不連続的に高温高圧となり化学反応が開始されるが、温度圧力がほぼ一定の反応領域(解離反応が支配的)を経て、発熱反応(再結合反応)が行われる。発熱反応領域では、気体は衝撃波から見て加速され音速に到達する。音速点はCJ面と呼ばれる。爆轟波の伝播速度は燃料の種類や酸化剤の組み合わせにより異なるが、例えば、1800〜3000m/秒であり、瞬時に高温高圧ガスを生成できる。
【0050】
図4の(c),(d)では、開放端から左方向に希薄波が伝播し、やがて希薄波は左端の閉側端で反射し、図4の(e)に示すように全軸方向位置の圧力、温度が低下する。そして、図4の(f)に示すように、既燃ガスの温度が、例えば、1500〜2000°Kと高いので、パージ空気を流して、新たに次のサイクルとして燃焼室11(図2参照)内に噴射される燃料が高温の既燃ガスと直接接触しないように、また、燃焼室11に面している壁、具体的には、燃料噴射ノズル12、入口基板14の燃焼室11に面している内壁、円環カラー17の内周面、燃焼筒取り付け基板16の燃焼室11に面している内壁、内筒9aの内周面、燃焼筒開口端部10Aのスロート部内筒10aの内周面を冷却するようにパージ空気を流す。
【0051】
なお、爆轟波発生器7Aで発生させる爆轟波の発生周期が高い場合や、燃料の種類によっては、燃焼筒開口端部10Aのスロート部内筒10aの内周面の温度が高くなり損傷するので、スロート部内筒10aの絞り度合いを弱くした燃焼筒開口端部10Aとすることが適切である。そのためフランジ9d,10eのボルト締結構造であることを利用し、燃焼筒開口端部10Aのスロート部内筒10aにおけるスロート部29の絞り度合いを変えたものを複数タイプ予め用意し、必要に応じて交換する。
【0052】
本実施形態によれば、爆轟波発生器7Aの中心軸Lの所定距離の領域LF(図1参照)のスロート部29側端以内に爆轟波を発生させる燃料―空気の混合気が充満したタイミングで点火し、燃料の噴射を止めるので、混合気が未燃のままでスロート部29から噴出して、燃費が悪化するのを防止できる。
また、爆轟波発生器7Aが、空気冷却で使用できる構成としているので、冷却水系統を必要としない分、簡単化でき、爆轟波発生装置1を低コストで製造できる。
【0053】
さらに、爆轟波の発生周期や燃料の種類に応じて、燃焼筒開口端部10Aのスロート部内筒10aの絞り度合いを容易に変更可能にしているので、被処理物に応じて爆轟波の発生周期を容易に変更でき、また、客先要求における柔軟な使用燃料の種類に容易に応じることができる。
【0054】
従って、本実施形態の爆轟波発生装置1を組み込んで、水分や中実を含んだ貝類に対しても燃費が良い、簡単な構成の産業廃棄物処理装置を提供できる。
【0055】
《爆轟波発生器の変形例》
次に、図5、図6を参照しながら、爆轟波発生器7Aの変形例の爆轟波発生器7Bについて説明する。図5は、変形例の爆轟波発生器の燃焼筒と燃焼筒開口端部の縦断面図であり、図6は、変形例の爆轟波発生器の燃焼筒と燃焼筒開口端部の図5におけるA矢視の平面図である。
本変形例の爆轟波発生器7Bでは、前記した実施形態における燃焼筒9A、燃焼筒開口端部10Aの代わりに燃焼筒9B、燃焼筒開口端部10Bを組み合わせる。
実施形態における爆轟波発生器7Aにおいては、燃焼筒9Aの燃焼筒先端9fと燃焼筒開口端部10Aをフランジ9d,10eによりボルトナット締結としていたが、本変形例の爆轟波発生器7Bでは、爆轟波がスロート部29を通過するときの燃焼室11内の内圧上昇に対して、フランジ9d,10e構造による締結力では不足する可能性があることから、より衝撃に強い締結方法としたものである。
従って、爆轟波発生器7Bにおける燃焼筒基部8の構造、燃焼筒9Bの燃焼筒先端9f側を除いた本体の構造は、前記した実施形態と同じであり、同じ構成に対しては同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0056】
図5に示すように燃焼筒9Bの燃焼筒先端9fには、外筒9bの外周に厚肉の環状の締結基部26が設けられている。そして、前記した環状の締結基部26の内周側が先端拡がり(図5において下方拡がり)になり、雌締結部26aを有し、燃焼筒開口端部10Bのスロート部外筒10bは外周側が先端拡がり(図5において下拡がり)になり、雄締結部10hを有し、雄締結部10hと雌締結部26aとで階段断隔螺式締結機構(階段断隔螺式の締結機構)28を構成している。
ここでいう階段断隔螺式締結機構28とは、大砲のなかでも現在一般に用いられている薬室後部から薬室に装填する形式の後装砲において、砲弾発射の際に、薬室後部を密閉し、発射薬(装薬)の燃焼ガスが薬室後部から漏れるのを防止する閉鎖機(breech)の中でも、螺旋式閉鎖機といわれるものの1種である階段断隔螺式の機構を利用したものである。階段断隔螺式の閉鎖機は、ネジの途中を切断して隔てたネジ(間隔ネジと呼ぶ)を階段状にして、より高圧に耐えるようにしたもので、雄締結部10h、雌締結部26aとも、この閉鎖機構を締結機構としたものである。
【0057】
雄締結部10hは、雄ネジの途中を切断して隔てた間隔ネジを階段状にしてあり、雌締結部26aは、雌ネジの途中を切断して隔てた間隔ネジを階段状にしてある。雄締結部10hと雌締結部26aの締結の開閉に当り、燃焼筒開口端部10B本体を約40°回転することにより、雌締結部26aのネジ部と結合または弛めることができる。
燃焼筒開口端部10Bの図5における下面である端面10gと締結基部26の図5における下面の雌締結部26a外縁に、階段断隔螺式締結機構28が締結された状態のとき連通するキー溝10i,26bを放射状に複数形成してあり、その1組のキー溝10i,26bに対して1本のキー65aが対応するように、放射状に複数配置した留めリング65を下方から嵌め込み、ボルト67で締結基部26の下面にネジ止めする。
【0058】
このようにすることで、雄締結部10hと雌締結部26aの締結をしたのち、階段断隔螺式締結機構28の雄締結部10hと雌締結部26aの径方向内外の端面10gおよび締結基部26の図5における下面がキー65aで回転しないように固定されるので、使用中の燃焼筒開口端部10Bに掛かる圧力振動などによる緩みを防止することができる。
また、前記実施形態におけるフランジ結合よりも強力に、締結基部26と燃焼筒開口端部10Bとを締結できる。
【0059】
なお、燃焼筒開口端部10Bを締結基部26に締結すると、燃焼筒9Bの内筒先端9aFと燃焼筒開口端部10Bのスロート部内筒10aの燃焼筒先端9f側の端部とがテーパ面同士を隙間無く当接するテーパ突合せ68を構成しているので、爆轟波による冷却空気流通路24A,24Bへの燃焼ガス漏れ込みを防止できるとともに、燃焼筒9Bの中筒先端9cF端面と燃焼筒開口端部10Bのスロート部中筒10cの燃焼筒先端9f側端面も当接し、燃焼筒9Bの外筒先端9bF端面と燃焼筒開口端部10Bのスロート部外筒10bの燃焼筒先端9f側端面も当接し、冷却空気流通路23A,23Bが連通し、冷却空気流通路24A,24Bが連通する。外筒先端9bF端面とスロート部外筒10bの燃焼筒先端9f側端面の間には適切なシールガスケットを介設する。
また、燃焼筒9Bの燃焼筒開口端部10B側(他端側)の内筒9aと中筒9cとの離間距離、中筒9cと外筒9bとの離間距離を確保するため、周方向に離散的にスペーサ部材を溶接固定すると良い。
【0060】
ちなみに、燃焼筒開口端部10Bは、全体を鋳造製とし、一端側のスロート部内筒10aとスロート部中筒10cとの離間距離、スロート部中筒10cとスロート部外筒10bとの離間距離を確保するため、周方向に離散的にスペーサ部材も同時に鋳込むと良い。
【0061】
本実施形態では、燃料として灯油を例に説明したが、燃料はそれに限定されるものではなく、メタンやプロパンなどの気体燃料、他のケロシンなどの液体燃料を用いても良い。また、点火手段として本実施形態では火花放電による点火器21としたがそれに限定されるものではなく、適宜燃料の種類に応じて、例えば、プリデトネータ方式を用いても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 爆轟波発生装置
3 燃料供給系
5 空気供給系
7A,7B 爆轟波発生器
8 燃焼筒基部
9A,9B 燃焼筒
9a 内筒
9aF 内筒先端
9b 外筒
9bF 外筒先端
9c 中筒
9cF 中筒先端
9d フランジ
9f 燃焼筒先端(燃焼筒の他端)
10A,10B 燃焼筒開口端部
10a スロート部内筒
10aO 開口
10b スロート部外筒
10c スロート部中筒
10d 端板
10e フランジ
10f 連通部
10g 端面
10h 雄締結部
10i キー溝
11 燃焼室
11a 予混合室
12 燃料噴射ノズル
12a 噴射孔
12b 燃料入口ノズル
13 加圧空気入口
13a 加圧空気入口ノズル
14 入口基板
14a,15a,16a,19a ボルト孔
14b,16b 空気通路孔
14c,16c 位置決め凹部
15 中間基板
16 燃焼筒取り付け基板
16d 溝部
16e,16f 段差部
17 円環カラー
17a,17b 空気噴射孔
17c 空気通路溝
18 空気室
19 ガスケット
20 締結ボルト
21 点火器(着火手段)
22 点火器支持構造
23A,23B 冷却空気流通路(空気供給路)
24A,24B 冷却空気流通路(冷却用の空気流通路)
25A,25B 空気噴出ノズル
26 締結基部
26a 雌締結部
26b キー溝
27 空気漏洩小孔(冷却空気孔)
28 階段断隔螺式締結機構(階段断隔螺式の締結機構)
29 スロート部
31 燃料タンク
32 燃料供給元管
33 フィルタ
34 流量調節弁
35 モータ
36 昇圧ポンプ
37 圧力ヘッダ
38 圧力調整弁
39 戻り配管
40 燃料噴射供給管
41 流量調節弁
42 逆止弁
51 エアコンプレッサ
52 空気供給管
53 流量調節弁
54 逆止弁
61 イグナイタユニット
65 留めリング
65a キー
68 テーパ突合せ
100 制御盤
101 ECU
PF 圧力センサ
FA 空気流量センサ
PA1,SPA2 空気圧センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に空気供給と熱交換を兼ねた空気供給路を有する同軸多重構造の筒構成を有する燃焼筒と、
該燃焼筒の一端側に形成された予混合室内に燃料を噴射する燃料噴射ノズルおよび前記噴射された燃料に空気を供給し攪拌する空気噴射孔を有する燃焼筒基部と、
さらに、前記燃焼筒の前記予混合室内に面した内周面から径方向内側に突出させ、前記燃焼筒で熱交換されて加熱された空気を前記空気供給路から噴出させ前記予混合室内の燃料−空気の混合気に旋回流を誘起させる空気噴出ノズルと、
前記燃焼筒の他端側に設けられ、スロート部を形成した燃焼筒開口端部と、
前記燃料−空気の混合気に着火する着火手段と、を備え、周期的に爆轟波を発生させて被処理物に高温高圧の衝撃波を当てる爆轟波発生装置であって、
前記着火手段は、前記空気噴出ノズルよりも前記燃焼筒開口端部側に配置され、
前記燃焼筒開口端部は、前記燃焼筒の前記空気供給路と連通する冷却用の空気流通路を有し、着脱手段により前記燃焼筒の他端と着脱自在であることを特徴とする爆轟波発生装置。
【請求項2】
前記着脱手段は、階段断隔螺式の締結機構を有し、前記燃焼筒開口端部を前記燃焼筒他端に容易に締結できることを特徴とする請求項1に記載の爆轟波発生装置。
【請求項3】
前記燃焼筒の空気噴出ノズルから前記燃焼筒開口端部までの所定の区間に、前記空気供給路の空気を径方向内方に噴出する冷却空気孔を配したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の爆轟波発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−236843(P2010−236843A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87888(P2009−87888)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(308037948)株式会社眞誠 (2)
【Fターム(参考)】