説明

爪貼付用粘着組成物および爪用貼付剤

【課題】 優れた粘着特性(粘着力、凝集力等)、および優れた薬物放出性と薬物安定性を有する爪貼付用粘着組成物およびそれを用いた爪用貼付剤を提供すること。
【解決手段】 シリコーン系粘着剤(好ましくは、(R)/(G)比が異なるシリコーン系粘着剤の2種以上)を含有することを特徴とする爪貼付用粘着組成物、および該粘着組成物を支持体の片面に設けた爪用貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爪甲に付着させて使用することを目的とする粘着組成物および該粘着組成物層を支持体の片面に設けた爪用貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
付け爪、爪甲保護材、陥入爪・巻き爪矯正具等の固定、爪真菌症、爪甲軟化症、爪甲剥離症、咬爪症等の治療剤や美容目的のネイルケア用品等を目的として、爪用接着剤(特許文献1参照)やネイルラッカー(特許文献2参照)等が提案されている。しかし、これらは含有する揮発性の有機溶剤や、爪から除去する際に用いる除光液等の薬剤によって、爪やその周囲の皮膚を侵したり、その蒸気を吸入することで中毒症状を引き起こしたりする恐れがある。
【0003】
それに対し、粘着剤を基材とした爪貼付用粘着組成物とそれを用いた爪用の貼付剤が提案されている(特許文献3参照)。これは溶剤を含有せず、爪から除去する際に薬剤を使用する必要もないという利点がある。
このような爪貼付用粘着組成物には、優れた粘着力と凝集力が要求される。これは、歩くときや物を掴むとき等、爪には負荷がかかることが多く、容易に脱落したりしないためである。また、該粘着組成物を爪から除去した際に、爪甲上に膏体が残る、所謂、糊残りが生じないことが好ましいことは言うまでもない。
しかしながら、これまで報告されている爪貼付用粘着組成物では、十分な粘着特性が確保されていない。
【0004】
更に、爪真菌症の治療を目的とした場合、爪甲に静菌効果が得られる量の抗真菌薬を長期間供給する必要がある。したがって、長期間貼付可能な粘着特性だけでなく、高い薬物放出能および薬物安定性が要求される。
【特許文献1】特許第2648735号公報
【特許文献2】特許第2635104号公報
【特許文献3】特開平10−330247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた粘着力と凝集力を有し、さらに優れた薬物放出性と薬物安定性を有する爪貼付用粘着組成物及びそれを用いた爪用貼付剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、シリコーン系粘着剤を含有する粘着組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0007】
[1]シリコーン系粘着剤を含有することを特徴とする、爪貼付用粘着組成物。
[2]シリコーンレジン/シリコーンゴム比が異なるシリコーン系粘着剤を2種以上含有する、上記[1]記載の粘着組成物。
[3]シリコーンレジン/シリコーンゴム比が、35/65〜70/30(w/w)の範囲から選択される、上記[1]または[2]記載の粘着組成物。
[4]アクリル系粘着剤と混合して架橋されている、上記[3]記載の粘着組成物。
[5]シリコーンオイル、一価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルおよび高級アルコールから選ばれる、少なくとも1種の添加物を含有する、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の粘着組成物。
[6]薬物を含有する、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の粘着組成物。
[7]シリコーン系粘着剤の残存シラノール濃度が800ppm未満である、上記[6]記載の粘着組成物。
[8]残存シラノール濃度が異なるシリコーン系粘着剤を2種以上含有する、上記[7]記載の粘着組成物。
[9]有機酸を含有する、上記[6]〜[8]のいずれかに記載の粘着組成物。
[10]有機酸が酒石酸またはサリチル酸である、上記[9]記載の粘着組成物。
[11]上記[1]〜[10]いずれかに記載の粘着組成物を支持体の片面に設けた、爪用貼付剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の爪貼付用粘着組成物は優れた粘着力および凝集力を有する。したがって、これを用いた貼付剤を爪甲に貼付した場合に容易には脱落せず、さらに剥がしたときに糊残りが生じにくい。
さらに、本発明の爪貼付用粘着組成物は優れた薬物放出性および薬物安定性を有するので、爪真菌症、爪甲軟化症、爪甲剥離症、咬爪症等の治療を目的とした貼付剤として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の爪貼付用粘着組成物は、シリコーン系粘着剤を含有することを特徴とする。
本発明の爪貼付用粘着組成物は、シリコーン系粘着剤のみで構成されていてもよく、また、シリコーン系粘着剤に目的に応じて、他の粘着剤、後述の薬物や各種添加剤を配合させてもよい。爪貼付用粘着組成物中の全粘着剤の含有量は、粘着特性などの本発明の効果を必要かつ十分に発揮させるためには、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。ここでいう全粘着剤とは、シリコーン系粘着剤単独、もしくは、後述するようにシリコーン系粘着剤とアクリル系粘着剤などの他の粘着剤を混合して用いる場合はそれらの合計量のことである。
【0010】
本発明に使用されるシリコーン系粘着剤としては、例えば、シリコーンレジン〔以下、(R)と略すことがある。〕とシリコーンゴム〔以下、(G)と略すことがある。〕の混合物、あるいは、これらをアルカリ触媒等の存在下で、脱水縮合させたものが挙げられ、粘着特性、凝集性、製造時の安定性を考慮すると、(R)と(G)の縮合物が好ましい。
【0011】
シリコーン系粘着剤を構成するシリコーンレジンとシリコーンゴムの構成比率は特に限定されるものではないが、爪貼付用粘着組成物としてバランスの取れた粘着特性とするためには、シリコーンレジン/シリコーンゴム比(重量比、以下、(R)/(G)比と略すことがある。)として、35/65〜70/30(w/w)の範囲とするのが好ましく、40/60〜65/35(w/w)の範囲が特に好ましい。(R)/(G)比がこの範囲より高いと、凝集力は高くなるが、タックが弱くなる傾向があり、また、粘着力は強くなるが、粘着性を失う場合がある。また、(R)/(G)比がこの範囲より少ないと、凝集力および粘着力が弱くなる傾向があり、爪貼付用粘着組成物として適さなくなる場合がある。
【0012】
シリコーン系粘着剤を構成するシリコーンゴムは、ポリオルガノシロキサンの両末端にOH基を有する長鎖重合体、例えば、一般式:(OH)RSi(RSiO1/2OSiROHで表される重合体を特に制限なく使用することができる。ここで、Rは、水酸基、一価の炭化水素基(例えば、メチル、フェニルなど)または−Si(R(Rは、メチル、フェニルなどの一価の炭化水素基を示す。)を示し、nは任意の整数である。
シリコーンゴムのオルガノシロキサン単位は、ジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン等が挙げられ、あるいはこれらの2種以上を併用してもよいが、粘着力やタックなどの粘着特性を考慮すると、ジメチルシロキサンを主成分とするシリコーンゴムが好ましい。
【0013】
シリコーン系粘着剤を構成するシリコーンレジンとしては、従来公知のものを特に制限なく使用することができ、例えば、RSiOl/2(ここで、Rは前記と同意義を示す。)で表されるM単位〔以下、(M)と略すことがある。〕と、SiO4/2で表されるQ単位〔以下、(Q)と略すことがある。〕とからなる3次元構造の重合体であるMQレジン、RSiO2/2(ここで、Rは前記と同意義を示す。)で表されるD単位とRSiO3/2(ここで、Rは前記と同意義を示す。)で表されるT単位とからなるDTレジン、D単位とT単位とQ単位とからなるDTQレジンなどが挙げられ、粘着力やタックなどの粘着特性を考慮すると、MQレジンが好ましい。
【0014】
MQレジンのM単位とQ単位の構成比率は特に制限されないが、爪貼付用粘着組成物としてバランスの取れた粘着特性とするためには、(M)/(Q)比(モル比)として、5/10〜12/10(モル/モル)の範囲とするのが好ましく、6/10〜9/10(モル/モル)の範囲が特に好ましい。(M)/(Q)比がこの範囲より高いと、凝集力、粘着力が弱くなる傾向があり、この範囲より少ないと、タックが弱くなる傾向があり、爪貼付用粘着組成物として適さなくなる場合がある。
【0015】
シリコーンレジンとシリコーンゴムの縮合は、自体公知の方法、例えば、特許第3538328号公報に記載の方法に準じて、アルカリ触媒等を用いて行なうことができる。
【0016】
上記のようにして得られたシリコーン系粘着剤には、重合または縮合反応に関与しなかったシラノール基が残存する。本発明の爪貼付用粘着組成物に、後述のように抗真菌剤等の薬物を配合する場合、この残存シラノールと薬物の相互作用により、薬物放出性が著しく低下する場合があるということが判明した。そこで、この残存シラノール基をトリメチルシリル基等でブロッキングして、残存シラノール濃度を抑制したシリコーン系粘着剤を用いると薬物放出性に優れる粘着組成物が得られるという知見が本発明により見出された。
【0017】
残存シラノール基のブロッキングは、自体公知の方法、例えば、特開2000−229885号公報に記載の方法に準じて、トリメチルシリル化などにより、特に制限なく行なうことができる。
【0018】
本発明に用いられるシリコーン系粘着剤の残存シラノール濃度の上限は、800ppm未満が好ましく、200ppm未満がより好ましい。当該残存シラノール濃度が800ppm以上となると、上述の通り、薬物によっては著しく放出性が低下する場合がある。
【0019】
当該残存シラノール濃度の下限は特に制限されるものではないが、残存シラノール濃度を抑えすぎると薬物安定性が低下する場合もあるので、10ppm以上程度が好ましく、20ppm以上がより好ましい。
【0020】
ここで、残存シラノール濃度(ppm)は、Kellumら, Anal. Chem., 39, 1623 (1967)およびJordan, Anal. Chem., 30, 297 (1964)で定義される数値であり、水素化リチウムアルミニウム ジ−N−ブチルアミドによる滴定により求められる。
【0021】
本発明に好適な(R)/(G)比、(M)/(Q)比、残存シラノール濃度等を有するシリコーン系粘着剤は溶液の形態で市販されており、かかる市販品から適宜選択して使用することができる。そのような市販品としては、例えば、ダウコーニング社製のBIO−PSA 7−4502〔(R)/(G)比:60/40(w/w)、残存シラノール濃度:約600ppm〕、BIO−PSA7−4602〔(R)/(G)比:55/45(w/w)、残存シラノール濃度:約600ppm〕、BIO−PSA 7−4402〔(R)/(G)比:65/35(w/w)、残存シラノール濃度:約600ppm〕、BIO−PSA 7−4202〔(R)/(G)比:60/40(w/w)、残存シラノール濃度:約125ppm〕、BIO−PSA 7−4102〔(R)/(G)比:65/35(w/w)、残存シラノール濃度:約125ppm〕、BIO−PSA 7−4302〔(R)/(G)比:55/45(w/w)、残存シラノール濃度:約125ppm〕などが挙げられる。
【0022】
また、本発明の爪貼付用粘着組成物として最適のバランスのとれた粘着特性を得るために、(R)/(G)比または(M)/(Q)比が異なる2種以上のシリコーン系粘着剤を適宜混合することにより、粘着特性を微調整することもできる。
さらに、薬物放出性と薬物安定性のバランスの最適化を図るために、残存シラノール濃度の異なる2種以上のシリコーン系粘着剤を適宜混合することにより、残存シラノール濃度を微調整するのがさらに好ましい。
【0023】
シリコーン系粘着剤は、凝集力を挙げるために、架橋構造物とすることができる。架橋する方法は特に限定されないが、残存シラノール同士を脱水縮合させる方法、有機過酸化物を架橋剤として用いてラジカル縮合させる方法、シリコーン系粘着剤としてビニル基やアルコキシ基等を有する変性シリコーンを用いた場合は、ヒドロシリル基を有する架橋剤を配合し、白金触媒等の存在下で付加反応させて架橋させる方法等が挙げられるが、後述のように薬物を配合させた場合は、当該薬物が白金触媒等の触媒毒となる場合もあること等を考慮すると、有機過酸化物を用いる方法が好ましい。
【0024】
架橋剤として用いられる有機過酸化物としては、従来、シリコーン系粘着剤に使用されている各種のものを特に制限なく使用できる。たとえば、過酸化ベンゾイル(BPO)、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、2,4−ジクロロ−ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジ−イソプロピルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキシン−3等が挙げられる。
これらの有機過酸化物は2種以上を併用してもよく、その使用量は、シリコーン系粘着剤100重量部当たり0.2〜5重量部程度である。
【0025】
ヒドロシリル基を有する架橋剤としては、従来、シリコーン系粘着剤に使用されている各種のものを特に制限なく使用できる。たとえば、ポリメチルハイドロジェンシロキサン等が挙げられる。
ヒドロシリル基を有する架橋剤の使用量は、シリコーン系粘着剤のビニル基等の含有割合にもよるが、通常シリコーン系粘着剤100重量部当たり5〜50重量部程度である。
【0026】
ヒドロシリル基を有する架橋剤を付加反応させる際に使用される金属触媒としては、遷移金属触媒が好ましく、特に白金、塩化白金酸等の白金触媒が好適に使用される。当該金属触媒の使用量は、シリコーン系粘着剤100重量部に対し、0.001〜1.5重量部程度が好ましい。
【0027】
本発明の爪貼付用粘着組成物は、シリコーン系粘着剤に、さらにアクリル系粘着剤を配合して架橋構造物とすることにより、組成物全体の凝集力を向上させることができる。
本発明において、「シリコーン系粘着剤とアクリル系粘着剤とを混合して架橋されている」とは、例えば、1)シリコーン系粘着剤が架橋されており、アクリル系粘着剤が架橋されていない;2)シリコーン系粘着剤が架橋されておらず、アクリル系粘着剤が架橋されている;3)シリコーン系粘着剤とアクリル系粘着剤の両方が架橋されている等の態様をすべて包含するものであり、所望の凝集力を達成するためには、2)または3)の態様が好ましい。
かかる各態様は、シリコーン系粘着剤とアクリル系粘着剤と所望の架橋剤を配合し、加熱等をして、組成物全体として架橋させることにより、爪貼付用粘着組成物として得ることができる。
【0028】
アクリル系粘着剤としては、カルボキシル基等の官能基を有するものが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとこれに共重合可能な、官能基を有するコモノマーとの共重合体が好ましい。
【0029】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の炭素数が4〜18のものが好ましく、その中でも、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等を特に好ましく使用できる。これらの化合物はいずれか1種のみでも2種以上を併用してもよい。
【0030】
官能基含有モノマーとしては、水酸基を有するモノマー、カルボキシル基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、アミノ基を有するモノマー等が挙げられ、水酸基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等が好適であり、カルボキシル基を有するモノマーとしては、マレイン酸ブチル等のマレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が好適であり、アミド基を有するモノマーとしては、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド等のアルキル(メタ)アクリルアミド;ブトキシメチルアクリルアミド、エトキシメチルアクリルアミド等のアルキルエーテルメチロール(メタ)アクリルアミド;ジアセトンアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン等が好適であり、アミノ基を有するモノマーとしては、ジメチルアミノエチルアクリレートが好適である。
共重合体における官能基含有コモノマーの共重合量はアクリル系共重合体全体の50重量%以下が好ましい。
重合方法は特に制限はなく、例えば、溶液重合、エマルジョン重合、塊状重合、けん濁重合などが挙げられる。
【0031】
アクリル系粘着剤の重量平均分子量は特に制限されるものではないが、粘着力やタックなどの粘着特性を考慮すると、100,000〜5,000,000が好ましく、200,000〜3,000,000がより好ましい。
【0032】
かかる条件を満たすアクリル系粘着剤は溶液の形態で市販されており、該市販品から制限なく選択することができる。市販のアクリル系粘着剤としては、例えば、National Starch & Chemical社製のDuro−Tak 87−2196、Duro−Tak387−2516等が挙げられ、これらの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
シリコーン系粘着剤とアクリル系粘着剤の配合比は特に限定されないが、粘着力やタックなどの粘着特性を考慮すると、シリコーン系粘着剤/アクリル系粘着剤(重量比)として、10/90〜80/20(w/w)の範囲とするのが好ましく、20/80〜70/30(w/w)の範囲が特に好ましい。シリコーン系粘着剤とアクリル系粘着剤の配合比がこの範囲より低いと、充分な凝集力が得られない傾向があり、この範囲より高いと、爪甲に対する良好な粘着特性を発揮しない場合がある。
【0034】
シリコーン系粘着剤とアクリル系粘着剤に配合される架橋剤として、アクリル系粘着剤の架橋剤としては、多官能性イソシアネート、金属キレート化合物等が挙げられ、シリコーン系粘着剤の架橋剤としては、上記で挙げられた有機過酸化物、ヒドロシリル基を有する架橋剤等が挙げられ、これらは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
アクリル系粘着剤の架橋剤として使用される多官能性イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート,4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート,ヘキサメチレンジイソシアネート,m−キシレンジイソシアネート,p−キシレンジイソシアネート,1,5−ナフタレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,リジンジイソシアネート,水添4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート,水添トリレンジイソシアネートなどが挙げられ、金属キレート化合物としては、アルミニウムトリアセチルアセトナート、チタニウムトリアセチルアセトナートなどが挙げられる。
当該架橋剤の添加量は、シリコーン系粘着剤とアクリル系粘着剤の総量100重量部に対して、0.1重量部〜2重量部の範囲から適宜選択すればよい。
【0036】
本発明の爪貼付用粘着組成物は、粘着力や凝集力の調整、および薬物透過性促進のために、シリコーンオイル、一価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルおよび高級アルコールから選ばれる、少なくとも1種の添加物を配合するのが好ましく、シリコーンオイル、多価アルコール脂肪酸エステルがより好ましい。
【0037】
当該添加物は2種以上を併用してもよく、その添加量は、シリコーン系粘着剤またはシリコーン系粘着剤とアクリル系粘着剤の総量100重量部に対して、40重量部以下、好ましくは2〜30重量部である。当該添加物の配合量がこの範囲より多いと、凝集力が低下する傾向があり、凝集破壊や糊残りが生じる場合があり、また、保存時に膏体が流れ出す、いわゆる、コールドフローが生じやすくなる。また、当該添加物の配合量が少ないと、所定の効果が達成できない場合がある。
【0038】
当該一価アルコール脂肪酸エステルとしては、炭素数6〜20、好ましくは6〜16の直鎖または分枝鎖の脂肪酸と、炭素数1〜5、好ましくは1〜4の直鎖または分枝鎖の一価アルコール類とのエステルが好ましく、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル等が挙げられ、ミリスチン酸イソプロピルが好ましい。
【0039】
当該多価アルコール脂肪酸エステルとしては、炭素数6〜16、好ましくは8〜10の直鎖または分枝鎖の脂肪酸と、炭素数2〜10、好ましくは2〜6の直鎖または分枝鎖の多価アルコール類とのエステルが好ましく、例えば、ジカプリル酸プロピレングリコール、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸エチレングリコール、ジイソオクタン酸エチレングリコール、モノカプリル酸グリセリン、モノカプリル酸ソルビタン等が挙げられ、ジカプリル酸プロピレングリコールが好ましい。
【0040】
当該高級アルコールとしては、炭素数8〜24、好ましくは10〜22の直鎖または分枝鎖のアルコールが好ましく、例えば、2−オクチルドデカノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられ、2−オクチルドデカノールが好ましい。
【0041】
本発明の爪貼付用粘着組成物は、治療の目的に応じて各種薬物を配合することができる。
【0042】
かかる薬物としては特に限定されないが、本発明の爪用貼付剤を爪甲に付着して適用した場合に、爪甲に浸透するもの、あるいは爪甲を透過して体内に吸収されるものであれば特に制限を受けるものではなく、例えば、次のイ)〜ソ)の薬物またはその製薬的に許容される塩が例示され、必要に応じて2種類以上併用することが出来る。
【0043】
イ)抗真菌剤:例えばネチコナゾール、ビホナゾール、クロトリマゾール、ミコナソール、エコナゾール、オキシコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、チオコナゾール、イソコナゾール、スルコナゾール、クロコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、オモコナゾール、テルコナゾール、セルタコナゾール.トルナフタート.テルビナフィン、ブテナフィン、アモロルフィン、グリセオフルビン、シクロピロックス、ペンタマイシン、アムホテリシンB、ピロールニトリン、クロトリマゾールなど、
【0044】
ロ)コルチコステロイド類;例えばハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、ベクロメタゾンプロピオネート、フルメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニドアセテート、プロピオン酸クロベタゾールなど、
【0045】
ハ)鎮痛消炎剤;例えばアセトアミノフェン、メフェナム酸、フルフェナム酸、インドメタシン、ジクロフェナック、ジクロフェナックナトリウム、アルクロフェナック、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、サリチル酸、サリチル酸メチル、l−メントール、カンファー、スリンダック、トルメチンナトリウム、ナプロキセン、フェンブフェンなど、
【0046】
ニ)催眠鎮痛剤;例えばフェノバルビタール、アモバルビタール、シクロバルビタール、トリアゾラム、ニトラゼパム、ロラゼパム、ハロペリドールなど、
【0047】
ホ)精神安定剤;例えばフルフェナジン、テオリタジン、ジアゼパム、フルジアゼパム、フルニトラゼパム、クロルプロマジンなど、
【0048】
ヘ)抗高血圧剤;例えばクロニジン、ピンドロール、プロプラノロール、ブフラノロール、インデノロール、ニバジピン、ロフェジキシン、ニプラジロール、ブクモロール、ニフェジピンなど、
【0049】
ト)降圧利尿剤;例えばハイドロサイアザイド、ペンドロフルナサイアザイド、シクロベンチアザイドなど、
【0050】
チ)抗生物質;例えばペニシリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、フラジオマイシン、エリスロマイシン、クロラムフェニコールなど、
【0051】
リ)麻酔剤;例えばリドカイン、ベンゾカイン、アミノ安息香酸エチルなど、
ヌ)抗菌性物質;例えばベンザルコニウム、ニトロフラゾン、ナイスタチン、アセトスルファミン、クロトリマゾールなど、
【0052】
ル)ビタミン剤;例えばビタミンA、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、オクトチアシン、リボフラビン酪酸エステルなど、
ヲ)抗てんかん剤;例えばニトラゼパム、メプロパメート、クロナゼパムなど、
【0053】
ワ)冠血管拡張剤;例えばニトログリコール、イソソルビドジナイトレート、エリスリトールテトラナイトレート、ペンタエリスリトールテトラナイトレート、プロパチルナイトレートなど、
【0054】
カ)抗ヒスタミン剤;例えばジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ジフェニルイミダゾールなど、
ヨ)鎮咳剤;例えばデキストロメトルファン、テルブタリン、エフェドリン、サルブタモールなど、
【0055】
タ)性ホルモン;例えばプロゲステロン、エストラジオールなど、
レ)抗鬱剤;例えばドキセピンなど、
【0056】
ソ)その他;例えば5−フルオロウラシル、ジヒドロエルゴタミン、フェンタニール、デスモプレシン、ジゴキシン、メトクロプラミド、ドンペリド、スコポラミン、プロスタグランディンなど。
【0057】
薬物の配合量は、使用する薬物や治療の目的にもよるが、多すぎると粘着特性が損なわれる場合があるので、組成物全量の2〜30重量%程度とするのが好ましい。
【0058】
本発明の爪貼付用粘着組成物に薬物を配合させる場合は、組成物中の薬物安定性を向上させるために、有機酸を配合するのが好ましい。
かかる有機酸としては、特に限定されず、例えば、酒石酸(L−(+)−酒石酸、D−(+)−酒石酸、ラセミ酒石酸等)、サリチル酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、アジピン酸、ソルビン酸等が挙げられ、酒石酸、サリチル酸が好ましい。
有機酸の配合量は、組成物全量の0.05〜5重量%程度であり、0.1〜3重量%が好ましい。
【0059】
本発明の爪貼付用粘着組成物には、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、製剤分野で一般的に使用される各種の添加剤、例えば、粘着付与剤、顔料、溶解助剤、薬物吸収促進剤、安定化剤、結合剤、充填剤、爪軟化剤、保湿剤、コールドフロー防止剤(例えば、ステアリン酸カルシウムのような脂肪酸の金属塩、ポリサッカライド等)等が挙げられる。
これらの添加剤は、2種以上を併用してもよい。その配合量は特に限定されるものではないが、多量に配合した場合、凝集力が不足し、凝集破壊や糊残りが生じやすく、また保存時に膏体層が流れ出す、所謂、コールドフローが生じやすくなる場合があるので、添加剤の総量として、組成物全量の1〜20重量%程度とするのが好ましい。
【0060】
かくして得られる爪貼付用粘着組成物を、支持体の片面に粘着剤層として形成することにより、爪用貼付剤を得ることができる。
【0061】
本発明の爪用貼付剤の製造方法は特に限定されず、例えば粘着組成物をトルエンなどの溶媒に溶解または分散させ、得られた溶液または分散液を支持体の片面に塗布し、必要により加熱して架橋反応を進行させながら乾燥して、粘着剤層を支持体の表面に形成させる方法などが挙げられる。また、上記の溶液または分散液を離型ライナー上に塗布し、必要により加熱して架橋反応を進行させながら乾燥して離型ライナー上に粘着剤層を形成させ、その後に支持体を粘着剤層に接着させることによっても製造することもできる。
乾燥後の粘着剤層の厚さは、通常10〜250μm、好ましくは40〜160μmである。
【0062】
本発明で使用される支持体としては、一般に爪用貼付剤の支持体として使用されているものを使用することができる。この支持体の素材としては、例えば、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、可塑性ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリオレフイン、ポリ塩化ビニリデンおよびアルミニウム等を挙げることができる。これらは、フィルムまたはこれらを使用した繊維で作られた織布および不織布ならびに抄紙の形態で単層シートあるいは積層シートとして用いられる。アルミニウムはその箔が使用される。
支持体の厚さは、通常1〜100μm、好ましくは5〜50μmである。
【0063】
剥離ライナーとしては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等が挙げられる。剥離ライナーの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素系処理などの剥離処理が施されていてもよい。離型ライナーの厚さは、通常10〜200μm、好ましくは25〜100μmである。
【0064】
本発明の爪用貼付剤の形状は限定されず、例えば、テープ状、シート状、付け爪状等が含まれる。
【0065】
本発明の爪貼付用粘着組成物および爪用貼付剤は、付け爪、爪甲保護材、陥入爪・巻き爪矯正具等の固定、爪真菌症、爪甲軟化症、爪甲剥離症、咬爪症等の治療剤や美容目的のネイルケア用品等の用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
各実施例の爪用貼付剤の保持力は、JIS Z 0237に準拠して測定した。ただし、試験板はベークライト板を用い、試験片の幅10mm、接着面積200mm、荷重2.94N、雰囲気温度40℃で行い、脱落するまでの時間(min)を計測した(n=3)。
脱落時間が3分未満の粘着組成物では、ライナーの剥離不良や、爪から剥離する際の糊残り、保存時のコールドフローが生じた。
【0067】
実施例1
シリコーン系粘着剤溶液(BIO−PSA 7−4502、 Dow Corning社製)を、フッ素系剥離剤で処理したPETライナー上に塗布し、加熱乾燥して膏体層(厚み60μm)を形成させた。これに支持体として厚み12μmのPETフィルムを貼り合わせて爪用貼付剤を得た。
得られた爪用貼付剤を、ボランティア6名の足爪甲に、粘着組成物が爪甲よりはみ出さないよう貼付し、貼付してから脱落するまでの日数(以下、爪貼付日数という。)を調査した。ただし、7日間脱落しなかったものは、そこで終了とした。その結果の平均値を表1に示す。
【0068】
比較例1
シリコーン系粘着剤溶液の代わりに、アクリル系粘着剤溶液(Duro−Tak 387−2516、National Starch&Chemical社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、爪用貼付剤を調製し、爪貼付日数を測定した。その結果の平均値を表1に示す。
【0069】
比較例2
シリコーン系粘着剤溶液の代わりに、ゴム系粘着剤溶液(中分子量ポリイソブチレン(Oppanol B80、BASF社製)10部、低分子量ポリイソブチレン(Oppanol B12、BASF社製)15部、ポリブテン(HV−300、日本石油社製)15部のトルエン溶液)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、爪用貼付剤を調製し、爪貼付日数を測定した。その結果の平均値を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
シリコーン系粘着剤を用いた本発明の爪用貼付剤は、爪甲への貼付性に優れるものであった。
【0072】
実施例2
シリコーン系粘着剤溶液(BIO−PSA 7−4502)95部(固形分換算)に、添加剤として、シリコーンオイル(Q7−9120 Silicone Fluid l00 cSt、Dow Corning社製)を5部混合し、試験例1と同様にして爪用貼付剤を調製し、爪貼付日数を測定した。
また、同貼付剤の保持力をJIS Z 0237に準じて測定した。それぞれの結果の平均値を表2に示す。
【0073】
実施例3
シリコーンオイルの代わりに、ミリスチン酸イソプロピルを使用したこと以外は、実施例2と同様に行い、爪用貼付剤を調製し、爪貼付日数および保持力を測定した。それぞれの結果の平均値を表2に示す。
【0074】
実施例4
シリコーンオイルの代わりに、ジカプリル酸プロピレングリコールを使用したこと以外は、実施例2と同様に行い、爪用貼付剤を調製し、爪貼付日数および保持力を測定した。それぞれの結果の平均値を表2に示す。
【0075】
実施例5
シリコーンオイルの代わりに、2一オクチルドデカノールを使用したこと以外は、実施例2と同様に行い、爪用貼付剤を調製し、爪貼付日数および保持力を測定した。それぞれの結果の平均値を表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
本発明の爪用貼付剤は、各種添加剤を含有させても、爪甲への貼付性に優れるものであった。しかしながら、爪甲から剥離した際、糊残りが生じたものもあった。この糊残りが生じた爪用貼付剤の保持力は2分程度であった。
【0078】
実施例6
シリコーンレジンとシリコーンゴムの組成比が異なる2種類のシリコーン系粘着剤(BIO−PSA 7−4602:(R)/(G)比=55/45(w/w)、BIO−PSA 7−4402:(R)/(G)比=65/35(w/w)、DowCorning社製)の混合溶液95部(固形分換算、BIO−PSA 7−4602/BIO−PSA 7−4402=50/45(w/w))に、ジカプリル酸プロピレングリコール5部を混合し、実施例1と同様に行い、爪用貼付剤を調製し、爪貼付日数を測定した。また、該爪用貼付剤について実施例2と同様に保持力試験を行なった。それぞれの結果の平均値を表3に示す。
【0079】
実施例7
シリコーン系粘着剤溶液の混合比を、BIO−PSA 7−4602/BIO−PSA 7−4402=30/65(固形分換算、w/w)にしたこと以外は、実施例6と同様に行い、爪用貼付剤を調製し、爪貼付日数および保持力を測定した。それぞれの結果の平均値を表3に示す。
【0080】
実施例8
シリコーン系粘着剤溶液の混合比を、BIO−PSA 7−4602/BIO−PSA 7−4402=10/85(固形分換算、w/w)にしたこと以外は、実施例6と同様に行い、爪用貼付剤を調製し、爪貼付日数および保持力を測定した。それぞれの結果の平均値を表3に示す。
【0081】
【表3】

【0082】
シリコーンレジンとシリコーンゴムの組成比が異なるシリコーン系粘着剤を混合して用いることで、保持力等の粘着特性を調整することができた。また、これらの爪用貼付剤も爪甲に対する貼付性は良好であった。
【0083】
実施例9
シリコーン系粘着剤溶液(BIO−PSA 7−4502)90部(固形分換算)に、ジカプリル酸プロピレングリコール10部および過酸化ベンゾイル1.8部を混合し、これをライナー上に塗布した。溶剤の乾燥は、過酸化ベンゾイルの遊離ラジカルが発生するのに十分な温度(100〜150℃)で行い、架橋も同時に行った。最後にPETフィルムを貼り合わせて爪用貼付剤を得た。
得られた爪用貼付剤について、実施例1および2と同様にして、爪貼付日数および保持力を測定した。その結果を表4に平均値で示す。
【0084】
【表4】

【0085】
過酸化物によるラジカル縮合により生成した新たな架橋構造により、爪用貼付剤の保持力は大幅に向上した。
【0086】
実施例10
シリコーン系粘着剤溶液(BIO−PSA 7−4502)とアクリル系粘着剤溶液(Duro−Tak 87−2196、National Starch & Chemical社製)の混合溶液90部(固形分換算、BIO−PSA 7−4502/Duro−Tak 87−2196=2/1(w/w))に、ジカプリル酸プロピレングリコール10部を混合し、実施例1と同様に、ライナー上に塗布し、乾燥後、PETフィルムを貼り合わせた。これを70℃、48時間エージングを行い、爪用貼付剤を得た。得られた爪用貼付剤について、実施例1および2と同様にして、爪貼付日数および保持力を測定した。その結果を表5に平均値で示す。
【0087】
実施例11
シリコーン系粘着剤溶液およびアクリル系粘着剤溶液の混合比を、BIO−PSA 7−4502/Duro−Tak 87−2196=1/1(固形分換算、w/w)にしたこと以外は、実施例10と同様に行い、爪用貼付剤を調製し、爪貼付日数および保持力を測定した。それぞれの結果の平均値を表5に示す。
【0088】
実施例12
シリコーン系粘着剤溶液およびアクリル系粘着剤溶液の混合比を、BIO−PSA 7−4502/Duro−Tak 87−2196=1/2(固形分換算、w/w)にしたこと以外は、実施例10と同様に行い、爪用貼付剤を調製し、爪貼付日数および保持力を測定した。それぞれの結果の平均値を表5に示す。
【0089】
【表5】

【0090】
シリコーン系粘着剤とアクリル系粘着剤を配合した粘着組成物で調製した爪用貼付剤は、アクリル系粘着剤の比率を上げていくにつれ保持力が向上した。
【0091】
実施例13
シリコーン系粘着剤溶液(BIO−PSA 7−4502)90部(固形分換算)に、ジカプリル酸プロピレングリコール5部、さらに抗真菌薬であるネチコナゾール5部を混合した。これを試験例1と同様にして爪用貼付剤を得、得られた爪用貼付剤について、薬物透過性試験を行った。
薬物透過性試験は、アフリカニシキヘビの脱皮殻に、6mmφの該爪用貼付剤を貼付し、これを透過試験装置(Automatic Flow Thru Diffusion Cell Apparatus、Vangard lnternational社製)にセットして、レセプター側のPBSへのネチコナゾールの24時間累積透過量を液体クロマトグラフ法で測定した(n=3)。
また、この爪用貼付剤の50℃、3ヶ月保存後の薬物残存率を液体クロマトグラフ法で測定した(n=3)。それらの結果を表6に平均値で示す。
【0092】
【表6】

【0093】
本発明の爪用貼付剤において、薬物の透過が認められた。また、優れた薬物安定性を示した。
【0094】
実施例14
シリコーン系粘着剤溶液を、残存シラノールが約600ppmのもの(BIO−PSA 7−4502、Dow Corning社製)から、約125ppmのもの(BIO−PSA 7−4202、Dow Corning社製)に置き換えた他は、実施例13と同様にして爪用貼付剤を得た。
この爪用貼付剤の薬物透過性と50℃、3ヶ月保存後薬物残存率を試験例13と同様に測定した。それらの結果を表7に平均値で示す。
【0095】
【表7】

【0096】
残存シラノールを低減させたシリコーン系粘着剤を用いることで.薬物透過量が大幅に向上した。
【0097】
実施例15
残存シラノール濃度の異なる2種類のシリコーン系粘着剤(BIO−PSA 7−4502、BIO−PSA 7−4202)の混合溶液95部(固形分換算、BIO−PSA 7−4202/BIO−PSA 7−4502=2/1(w/w))に、ネチコナゾール5部を混合し、実施例1と同様にして爪用貼付剤を得た。
この爪用貼付剤の薬物透過性と50℃、3ヶ月保存後の薬物残存率を実施例13と同様に測定した。それらの結果を表8に平均値で示す。
【0098】
実施例16
残存シラノール濃度の異なる2種類のシリコーン系粘着剤溶液の混合比を、BIO−PSA 7−4202/BIO−PSA 7−4502=1/1(固形分換算、w/w)にしたこと以外は、実施例15と同様に行い、爪用貼付剤を調製し、薬物透過性および薬物残存率を測定した。それぞれの結果の平均値を表8に示す。
【0099】
実施例17
残存シラノール濃度の異なる2種類のシリコーン系粘着剤溶液の混合比を、BIO−PSA 7−4202/BIO−PSA 7−4502=1/2(固形分換算、w/w)にしたこと以外は、実施例15と同様に行い、爪用貼付剤を調製し、薬物透過性および薬物残存率を測定した。それぞれの結果の平均値を表8に示す。
【0100】
【表8】

【0101】
残存シラノールを低減させたシリコーン系粘着剤を用いた爪用貼付剤(実施例14)では、薬物安定性にやや劣ったが、表8から明らかなように.残存シラノール濃度の異なる粘着剤を混合することで、薬物透過量と薬物安定性のバランスをはかることができることが分った。
【0102】
実施例18
シリコーン系粘着剤溶液(BIO−PSA 7−4202)90部(固形分換算)に、ジカプリル酸プロピレングリコール5部、ネチコナゾール5部、さらにL(+)−酒石酸0.5部を混合した。これを実施例1と同様にして爪用貼付剤を得た。
これらの爪用粘着組成物の薬物透過性と50℃、3ヶ月保存後の薬物残存率を実施例13と同様に測定した。それらの結果を表9に平均値で示す。
【0103】
実施例19
L(+)−酒石酸の配合量を1.0部としたこと以外は、実施例18と同様にして、爪用貼付剤を得、その薬物透過性と50℃、3ヶ月保存後の薬物残存率を測定した。それらの結果を表9に平均値で示す。
【0104】
実施例20
L(+)−酒石酸の代わりに、サリチル酸0.5部を配合したこと以外は、実施例18と同様にして、爪用貼付剤を得、その薬物透過性と50℃、3ヶ月保存後の薬物残存率を測定した。それらの結果を表9に平均値で示す。
【0105】
実施例21
サリチル酸の配合量を1.0部としたこと以外は、実施例20と同様にして、爪用貼付剤を得、その薬物透過性と50℃、3ヶ月保存後の薬物残存率を測定した。それらの結果を表9に平均値で示す。
【0106】
【表9】

【0107】
有機酸を添加することで、薬物安定性が改善することが分った。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の爪貼付用粘着組成物およびそれを用いた爪用貼付剤は、優れた粘着力と凝集力を有し、使用時に脱落しにくく、さらに剥がしたときに糊残りが生じにくく、付け爪、爪甲保護材、陥入爪・巻き爪矯正具等の固定、美容目的のネイルケア用品等に好適に使用することができる。
また、本発明の爪貼付用粘着組成物および爪用貼付剤は、優れた薬物放出性と薬物安定性をも有しているので、爪真菌症、爪甲軟化症、爪甲剥離症、咬爪症等の治療の目的に好適に適用することができる。
さらに、本発明の貼付剤は、爪に対する接着性に優れているので、経皮適用にて皮膚刺激が生じるような薬物の投与に対しても優れた効果を発揮するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン系粘着剤を含有することを特徴とする、爪貼付用粘着組成物。
【請求項2】
シリコーンレジン/シリコーンゴム比が異なるシリコーン系粘着剤を2種以上含有する、請求項1記載の粘着組成物。
【請求項3】
シリコーンレジン/シリコーンゴム比が、35/65〜70/30(w/w)の範囲から選択される、請求項1または2記載の粘着組成物。
【請求項4】
アクリル系粘着剤と混合して架橋されている、請求項3記載の粘着組成物。
【請求項5】
シリコーンオイル、一価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルおよび高級アルコールから選ばれる、少なくとも1種の添加物を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の粘着組成物。
【請求項6】
薬物を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の粘着組成物。
【請求項7】
シリコーン系粘着剤の残存シラノール濃度が800ppm未満である、請求項6記載の粘着組成物。
【請求項8】
残存シラノール濃度が異なるシリコーン系粘着剤を2種以上含有する、請求項7記載の粘着組成物。
【請求項9】
有機酸を含有する、請求項6〜8のいずれかに記載の粘着組成物。
【請求項10】
有機酸が酒石酸またはサリチル酸である、請求項9記載の粘着組成物。
【請求項11】
請求項1〜10いずれかに記載の粘着組成物を支持体の片面に設けた、爪用貼付剤。

【公開番号】特開2006−213650(P2006−213650A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28283(P2005−28283)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】