説明

牛のひづめ障害予防用の洗足剤及びその使用方法とその製造方法

【課題】牛のひづめの洗浄と消毒効果が同時に得られるようにし、牛のひづめの汚染部位が清潔に洗浄された状態で消毒されるようにすることによって、牛のひづめ障害の予防を通じて、産乳量及び繁殖率などの生産性の低下を未然に防止し、かつ、淘汰のような極端な状況を避けることができる他、牛の健康と快適性の向上にも大きく寄与することができる牛のひづめ障害予防用の洗足剤及びその使用方法とその製造方法を提供する。
【解決手段】牛のひづめ障害予防用の洗足剤を、牛ひづめについている異物を牛のひづめから除去するためにスズ酸とクエン酸と硫酸亜鉛とモリブデン酸ソーダと硝酸カリウムの各固形分の混合物に水を混合して用意する洗浄液と、異物の除去された牛のひづめを殺菌するための次亜塩素酸ソーダとを混合して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛のひづめ障害予防用の洗足剤及びその使用方法とその製造方法に係り、より詳細には、牛ひづめ用洗足器の洗足液の原料として使われる洗足剤であって、洗浄機能と消毒機能を兼備した牛のひづめ障害予防用の洗足剤及びその使用方法とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、韓牛や乳牛などのようにひづめの割れた家畜のひづめの間には、家畜に有害なバクテリアなどが繁殖し、ひづめに大きな障害が生じることができる。
なお、韓牛と乳牛は、身体が大きいために足に体重が多く集まり、一日の大部分の時間を立って生活する牛にとって、ひづめの障害はそのまま生存に直結するという恐れがあった。
したがって、韓牛と乳牛を飼育する農家では、ひづめの疾病を予防する方法がない場合には、ひづめ障害の発生時に、抗生軟膏を患部に塗布して包帯で包んだり、硫酸銅液を患部にスプレイしたりする方法を取ってきた。なお、硫酸銅液やホルマリンのような物質を、洗足器や洗足場で洗足液として使用する方法も採用してきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の消毒によるひづめの消毒方法では、韓牛や乳牛の割れたひづめの間から汚染物質がすっきり除去されないことから、消毒液が目的部位によく浸透されず、充分な消毒効果が得られないという問題点があった。
本発明は上記の問題点を解決するためのもので、その目的は、牛のひづめの洗浄と消毒効果が同時に得られるようにし、牛のひづめの汚染部位が清潔に洗浄された状態で消毒されるようにすることによって、牛のひづめ障害の予防を通じて、産乳量及び繁殖率などの生産性の低下を未然に防止し、かつ、淘汰のような極端な状況を避けることができる他、牛の健康と快適性の向上にも大きく寄与できるようにした牛のひづめ障害予防用の洗足剤及びその使用方法とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための、本発明に係る牛のひづめ障害予防用の洗足剤は、牛のひづめについている異物をひづめから除去するために、スズ酸とクエン酸と硫酸亜鉛とモリブデン酸ソーダと硝酸カリウムの各固形分の混合物に水を混合して用意する洗浄液と、異物の除去された牛のひづめについた細菌を殺菌するための次亜塩素酸ソーダと、を混合して製造されるものとした。
また、本発明に係る牛のひづめ障害予防用の洗足剤は、スズ酸15〜25重量%、クエン酸15〜25重量%、硫酸亜鉛15〜25重量%、モリブデン酸ソーダ15〜25重量%、硝酸カリウム15〜25重量%の各固形分を混合し;前記混合物と水とをそれぞれ50重量%ずつ混合しながら液状化させて洗浄液を製造し;前記洗浄液と次亜塩素酸ソーダとをそれぞれ50重量%ずつ混合してなることを特徴とする。
【0005】
また、前記洗足剤は、水と混合して希釈された状態で牛ひづめ用洗足器の洗足液として使用し、この洗足液において前記洗足剤の濃度は5重量%〜16重量%にすると良い。
また、本発明に係る牛のひづめ障害予防用の洗足剤の製造方法は、スズ酸15〜25重量%、クエン酸15〜25重量%、硫酸亜鉛15〜25重量%、モリブデン酸ソーダ15〜25重量%、硝酸カリウム15〜25重量%の各固形分を混合する過程と;前記混合物と水とをそれぞれ50重量%ずつ混合しながら液状化させて洗浄液を製造する過程と;次亜塩素酸ソーダ原液を用意する過程と;前記洗浄液と次亜塩素酸ソーダ原液とをそれぞれ50重量%ずつ混合する過程と;を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明による牛のひづめ障害予防用の洗足剤は、洗浄液成分と消毒成分を同時に含む。したがって、このような洗足剤を水に希釈して洗足器に使われる洗足液とした状態で、この洗足器を介して牛のひづめを洗浄すると、まず、洗足液に入っている洗浄液成分によって牛のひづめの間についていた異物が除去されながら牛のひづめについていた細菌が洗足液に完全に晒され、この状態では、洗足液中の次亜塩素酸ソーダによって牛のひづめについていた細菌がきれいに消毒されることができる。したがって、本発明による洗足剤によって作られた洗足液を使用すると、牛のひづめ障害が效果的に予防及び治療され、産乳量及び繁殖率などの生産性の低下を未然に防止し、且つ、淘汰のような極端な状況を避けることができる他、牛の健康と快適性の向上にも大きく寄与することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
本発明による洗足剤は、水に希釈された状態で牛ひづめ用の洗足器に使われる洗足液を形成する原料で、スズ酸15〜25重量%とクエン酸15〜25重量%と硫酸亜鉛15〜25重量%とモリブデン酸ソーダ15〜25重量%と硝酸カリウム15〜25重量%の各固形分と水とを混合して用意する洗浄液と、次亜塩素酸ソーダ原液とを混合して製造する。
なお、このような洗足剤は、スズ酸15〜25重量%、クエン酸15〜25重量%、硫酸亜鉛15〜25重量%、モリブデン酸ソーダ15〜25重量%、硝酸カリウム15〜25重量%の各固形分を混合する過程と、このようにして混合された混合物と水とをそれぞれ50重量%ずつ混合しながら液状化して洗浄液を製造する過程と、この洗浄液と次亜塩素酸ソーダ原液とをそれぞれ50重量%ずつ混合する過程と、を含んで製造される。
【0008】
なお、このようにして製造された洗足剤を用いて洗足液を作る時には、この洗足剤を再び水に混合し、洗足剤の濃度が5重量%〜16重量%の洗足液とすることが好ましい(これは、後述する実験値で証明する。)が、このように製造された洗足液を洗足器に入れた状態でこの洗足器を牛が通過すると、洗足器を通過する過程で牛のひづめが洗足液に浸され、洗浄液の洗浄作用と次亜塩素酸ソーダ原液の消毒作用によって牛のひづめに繁殖した細菌がきれいに除去されることができる。
すなわち、この洗浄液を構成する成分のうち、スズ酸、クエン酸及び硫酸亜鉛は、優れた洗浄力を発揮する物質で、これらスズ酸とクエン酸と硫酸亜鉛との混合物によって、牛が洗足器を通過する短い時間内で、ひづめについていた異物及び汚染物質が除去されるわけである。ここで、モリブデン酸ソーダと硝酸カリウムは、スズ酸とクエン酸と硫酸亜鉛とが混合される過程で各物質本来の洗浄力が低下するのを防止する役割を果たす。
【0009】
このような洗浄液の成分によって異物が除去されると、牛のひづめについていた細菌は洗足液に完全に晒された状態となり、この状態では、洗足液中の次亜塩素酸ソーダによって牛のひづめについていた細菌はきれいに消毒されることができる。この事実は、下記のような多くの臨床試験から明らかにされた。
次に、洗足液の殺菌効果試験の結果について説明する。下記の表1は、分離した細菌に対する洗足剤のMICとMBCを示す。
【0010】
【表1】

【0011】
すなわち、透明なガラスのbroth培養管にmuller−hinton brothを用いて試製品及び硫酸銅の濃度を5.00、2.50、1.25、0.63、0.31、0.15、0.08%に希釈し、MIC(Minimal Inhibition Concentration、最小発育阻止濃度)及びMBC(Minimal Bactericidal Concentration、最小殺滅濃度)値を求めた結果、硫酸銅液のMICとMBCは細菌AとBに対してそれぞれ0.31%と表れた。これに対し、洗足液は、細菌A(E.coli)に対してはMBCが5%と表れた。洗足液は、硫酸銅に比べて、MBCが高く表れたが、5%以上の濃度では、ひづめから分離される大部分の細菌に対して死滅効果を示すものと判断された。
下記の表2は、細菌A(E.coli)の洗足液に対するMIC及びMBCを示す。
【0012】
【表2】

【0013】
ここでも、濃度は5.00、2.50、1.25、0.63、0.31、0.15、0.08%とした。
洗足液のE.coliに対するMIC及びMBCを測定した結果、表2に示すように、1.25%及び5%とそれぞれ表れた。牛のひづめから分離された細菌A(E.coli)と同様に、牛舎の床から良く分離されるE.coliへの消毒効果も充分なものと判断されたし、別に図示してはいないが、Bacillusに対しても略同様な結果が得られた。
本発明による洗足液の細菌減少率を調べた結果を、下写真に示す。
【0014】
[写真1]

【0015】
[写真2]

【0016】
洗足液を現場で使用した時と類似する状況において効果を検証するために、滅菌綿棒に細菌を接種し、洗足液に浸漬した時の細菌減少率を測定した結果、上の写真1及び写真2のように現れた。
細菌数の変化は、平板培地のCFU(colony forming units)を確認するために培養済みの平板培地を撮影し、赤いペンで表示してその個数を数えた。
下記の表3は、洗足液の綿棒試験結果を示す。
【0017】
【表3】

【0018】
洗足液に対する洗足剤の現場使用濃度だけでなく、MBC濃度においても細菌減少率は、95%以上と高い水準を示した。すなわち、洗足剤の濃度が5重量%〜16重量%である洗足液において、優れた細菌減少率が確認された。
下記の表4は、水道水と硫酸銅液及び本発明による洗足液を通過する前と通過した後において、牛のひづめの間の細菌数を比較した結果である。
【0019】
【表4】

【0020】
上記の表4から確認されるように、通過する前と通過した後の細菌数を比較してみると、本発明による洗足液を通過した牛のひづめの間の細菌数が、水道水や硫酸銅液の場合に比べて顕著に減ったことがわかる。
下記の表5は、一般のな牛舎で搾乳牛にひづめ障害が発生する比率を調べた結果である。
【0021】
【表5】

【0022】
上記の調査期間は、2005年5月から7月までで、調査頭数は搾乳牛を基準にした数である。また、4箇所の搾乳牛を対象に調査が行われた。
上記の調査結果、ひづめ障害の発生率は、歩行姿勢指数(ここで、歩行姿勢指数1が正常。)が低い、すなわち、状態がひどくないひづめ障害の発生比率が相対的に高いことが確認された。
下記の表6は、硫酸銅液と本発明による洗足液を使って歩行姿勢指数2〜3から正常(歩行姿勢指数1)に回復する比率を調べた結果を示す。
【0023】
【表6】

【0024】
調査期間は2005年5月から7月までとし、第1期間は開始日から30日間であり、
第2期間は開始日から60日間である。上記試験で使用した硫酸銅液と洗足液は、硫酸銅と洗足剤がそれぞれ16重量%と希釈されたものを使用したし、それぞれ7日間隔で入れ替えた。また、試験場所は、4箇所(それぞれ異なる4箇所)とした。
下記の表7は、硫酸銅液と本発明による洗足液を使って歩行姿勢指数4〜5から正常(歩行姿勢指数1)に回復する比率を調べた結果を示す。
【0025】
【表7】

【0026】
ここで、調査期間は2005年5月から7月までとし、第1期間は開始日から30日間であり、第2期間は開始日から60日間である。この試験で使用した硫酸銅液と洗足液は、硫酸銅と洗足剤をそれぞれ16重量%に希釈したものとしたし、この硫酸銅液と洗足液はそれぞれ7日間隔で入れ替えた。また、試験場所は4箇所(それぞれ異なる4箇所)とした。
下記の表8は、洗足液を適用する期間中にひづめ障害が発生した比率を示す。
【0027】
【表8】

【0028】
ここで、洗足液を使用した調査期間は、2005年5月から7月までとし、硫酸銅液を使用した調査期間は2005年8月から11月までとした。そして、調査頭数は搾乳牛を基準にして選定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛のひづめについている異物をひづめから除去するために、スズ酸とクエン酸と硫酸亜鉛とモリブデン酸ソーダと硝酸カリウムの各固形分の混合物に水を混合して用意する洗浄液と、異物の除去された牛のひづめについた細菌を殺菌するための次亜塩素酸ソーダと、を混合して製造されることを特徴とする、牛のひづめ障害予防用の洗足剤。
【請求項2】
スズ酸15〜25重量%、クエン酸15〜25重量%、硫酸亜鉛15〜25重量%、モリブデン酸ソーダ15〜25重量%、硝酸カリウム15〜25重量%の各固形分を混合し、
前記混合物と水とをそれぞれ50重量%ずつ混合しながら液状化させて洗浄液を製造し、
前記洗浄液と次亜塩素酸ソーダとをそれぞれ50重量%ずつ混合してなることを特徴とする、牛のひづめ障害予防用の洗足剤。
【請求項3】
請求項2による牛のひづめ障害予防用の洗足剤の使用において、
前記洗足剤は水と混合して希釈された状態で牛ひづめ用洗足器の洗足液として使用し、
前記洗足液において前記洗足剤の濃度は5重量%〜16重量%とすることを特徴とする、牛のひづめ障害予防用の洗足剤の使用方法。
【請求項4】
スズ酸15〜25重量%、クエン酸15〜25重量%、硫酸亜鉛15〜25重量%、モリブデン酸ソーダ15〜25重量%、硝酸カリウム15〜25重量%の各固形分を混合する過程と、
前記混合物と水とをそれぞれ50重量%ずつ混合しながら液状化させて洗浄液を製造する過程と、
次亜塩素酸ソーダ原液を用意する過程と、
前記洗浄液と次亜塩素酸ソーダ原液とをそれぞれ50重量%ずつ混合する過程と、
を含むことを特徴とする、牛のひづめ障害予防用の洗足剤の製造方法。

【公表番号】特表2009−519217(P2009−519217A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539942(P2008−539942)
【出願日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【国際出願番号】PCT/KR2006/004950
【国際公開番号】WO2007/061236
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(599151282)大韓民国農村振興庁 (16)
【氏名又は名称原語表記】RURAL DEVELOPMENT ADMINISTRATION
【住所又は居所原語表記】250 Seodundong,Kwonseongu,Suwon,Gyeongido 441−707,Republic of Korea
【出願人】(508142376)
【Fターム(参考)】