説明

物体の展示方法及びその装置、物体展示用の画像作成プログラム及びその記録媒体

【課題】 工作機械の性能を視覚上簡単且つ効果的にアピール可能とする。
【解決手段】 展示装置1は、上面が平面である台板2上に、表面を鏡面状に加工した円錐形のワーク3を載置してなり、台板2の上面には、ワーク3に鏡映するための歪曲元画像4が表示されている。この歪曲元画像4は、歪んだ状態で描かれており、直接視では内容を認識できないが、台板2上の所定位置にワーク3を置いてその頂点側から見た場合には、歪曲元画像4がワーク3の表面に映し出されて具体的な絵や文字が認識できる整鏡像5として見えるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物体、特に工作機械で加工された物体(ワーク)の効果的な展示に利用できる物体の展示方法とその装置、さらには物体展示用の画像を作成するための画像作成プログラムとその記録媒体とに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の性能をアピールする目的で、展示会や会社内等で表面を鏡面状に加工したワークを展示することが良く行われる。具体的には、所定形状に加工したワークを台上やショーケース内に設置して、その表面に、左右逆に作成した絵や文字等の画像を鏡映して見せるといった一般的な展示方法が採用されている。
なお、このような展示方法や装置に関する先行技術文献は見あたらない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような展示方法は既に一般化して人目を惹くことが少なく、見学者は短時間で見飽きてしまい、効果的なアピールとはなっていなかった。特に近年は、工作機械の市場においても広告・宣伝効果は重要となっており、当業者のみが理解できるスペックのアピールに加えて、素人でも理解しやすい視覚的な広告・宣伝手段の採用は、市場での話題性や優位性を得るのに有効と言える。
一方、ワークに鏡映させる元画像は、ワークの形状に合わせて適正な鏡像が見えるように作成する必要があるが、ワークが立方体や直方体等の単純な形状の場合はまだしも、錐体等の特異な形状であると、元画像を人手で描画せざるを得ず、多大な時間と労力がかかってしまう。
【0004】
そこで、本発明は、工作機械の性能を視覚上より簡単且つ効果的にアピールできる展示方法とその装置、さらにはその展示用の元画像を簡単に作成するための画像作成プログラムとその記録媒体とを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、物体の展示方法であって、歪曲元画像を表示した表示手段の平面状の表示面に、表面鏡面状の物体をその底面が接するようにセットし、物体の所定角度から鏡面を見せることにより、物体周りの歪曲元画像を鏡面に鏡映させて、認識可能な整鏡像として見せることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の目的に加えて、より効果的なアピールを可能とするために、表示手段に複数の歪曲元画像を切り替え表示させて整鏡像を経時的に変化させるものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の目的に加えて、展示に好適な物体を用いるために、物体を、鏡面状の錘面を有する錐体として、頂点側での所定角度から錘面を見せる構成としたものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2の目的に加えて、展示に好適な物体を用いるために、物体を、円錐形状の凹部が設けられた透明素材のブロックとしたものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2の目的に加えて、展示に好適な物体を用いるために、物体を、鏡面状の外周面を有する円柱としたものである。
【0006】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、物体の展示装置であって、平面状の表示面に歪曲元画像を表示した表示手段と、その表示手段上に底面が接するようにセットされ、表面鏡面状の物体とを備え、所定角度から鏡面を見ることにより、鏡面に鏡映された物体周りの歪曲元画像を整鏡像として認識可能としたことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項6の目的に加えて、より効果的なアピールを可能とするために、予め保存された複数の歪曲元画像を表示手段に切り替え表示させる表示制御手段を備えたものである。
【0007】
上記目的を達成するために、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の何れかに記載の発明に用いられる歪曲元画像をコンピュータで作成するための画像作成プログラムであって、
物体がセットされる平面上で前記物体の底面内に表される整元画像の特定位置における画像情報を取得する手順と、
前記特定位置と物体の底面から所定距離離れた視点位置とを結ぶ第1の直線を求める手順と、
前記第1の直線と物体の鏡面との交点及びその交点を通る前記物体の法線を求める手順と、
前記第1の直線と法線とを含む平面内で前記法線に対して前記第1の直線と対称となる第2の直線を求める手順と、
前記第2の直線と物体がセットされる平面との第2の交点を求める手順と、
前記特定位置における画像情報を前記第2の交点の画像情報とする手順と、
をコンピュータに繰り返して実行させることによって、前記平面上に前記歪曲元画像を作成することを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項9に記載の発明は、請求項1乃至7の何れかに記載の発明に用いられる歪曲元画像をコンピュータで作成するための画像作成プログラムであって、
物体がセットされる平面上に歪曲元画像を作成する特定位置を設定する手順1と、
前記特定位置から前記物体の鏡面に伸びる第1の直線を求める手順2と、
前記第1の直線と物体の鏡面との交点及びその交点を通る前記物体の法線を求める手順3と、
前記第1の直線と法線とを含む平面内で前記法線に対して前記第1の直線と対称となる第2の直線を求める手順4と、
前記第2の直線が前記物体の底面から所定距離離れた視点位置を通るか否かを判定し、前記第2の直線が前記視点位置を通らない場合は、第1の直線の方向を変えて手順2から手順4を繰り返して、前記視点位置を通る第2の直線を求める手順5と、
前記第2の直線と物体の底面内に表される整元画像との交点を求める手順6と、
求めた交点における整元画像の画面情報を取得する手順7と、
前記整元画像の画面情報を前記特定位置における画像情報とする手順8と、
をコンピュータに繰り返して実行させることによって、前記平面上に前記歪曲元画像を作成することを特徴とする。
【0009】
そして、上記目的を達成する請求項10に記載の発明は、請求項8又は9に記載の画像作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
なお、本発明でいう「歪曲元画像」とは、歪んだ状態で表示されて直接視では表示内容が認識不能、或いは認識困難な画像をいい、「整鏡像」とは、物体の鏡面へ鏡映された歪曲元画像であって、その表示内容が認識可能な鏡像をいう。また、「整元画像」とは、平面上に表示され、表示内容が認識できる整鏡像と同じ内容の平面画をいう。
【発明の効果】
【0010】
請求項1及び6に記載の発明によれば、看者は、一見認識できない歪曲元画像を見た後、物体の所定角度から改めて整鏡像を視認することで、驚きを感じると共に、整鏡像が映し出される物体の鏡面精度の高さを認識することができる。よって、この物体を加工した工作機械の性能を視覚上より簡単且つ効果的にアピール可能となる。
請求項2及び7に記載の発明によれば、請求項1及び6の効果に加えて、整鏡像の変化によって強く看者の興味を惹くことができ、より効果的なアピールが可能となる。
請求項3乃至5に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加えて、展示に好適な物体を用いることができる。
請求項8及び9に記載の発明によれば、複雑な絵や模様等であっても、上記展示方法及び装置に用いる歪曲元画像を容易に作成することができる。
請求項10に記載の発明によれば、前記記録媒体を読み込むことで本発明を容易に実現して上記効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[展示装置の構成]
図1は、本発明の物体の展示方法を採用した展示装置を示すもので、展示装置1は、上面が平面である表示手段としての台板2上に、物体としてここでは錐体、特に表面を鏡面状に加工した正円錐形のワーク(ここではアルミニウム材が使用されている。)3を底面が接するようにセットしてなり、台板2の上面には、図2に示すように、ワーク3に鏡映するための元画像4が表示されている。この元画像4は、歪んだ状態で描かれており、直接視では内容を認識できない(以下これを「歪曲元画像」という。)。しかし、点線で示す歪曲元画像4の中心にワーク3を置いてその頂点側から見た場合には、図3に示すように、歪曲元画像4がワーク3の表面に映し出されて具体的な絵や文字が認識できる鏡像(以下これを「整鏡像」という。)5として見えるようになっている。ここでは、汎用NC旋盤の整鏡像5がその説明文と共に鏡映されているが、この整鏡像5に歪みがない程ワーク3の円錐形及びその表面性状が良好であることになる。
【0012】
よって、この展示装置1によれば、看者は、一見認識できない歪曲元画像4を見た後、ワーク3の上方から改めて整鏡像5を視認することで、驚きを感じると共に、整鏡像5が映し出されるワーク3の鏡面精度の高さを認識することができる。よって、このワーク3を加工した工作機械の性能を視覚上より簡単且つ効果的にアピール可能となる。
【0013】
[歪曲元画像の作成方法]
次に、この歪曲元画像の具体的な作成方法について説明する。図4は、歪曲元画像の変換理論を示す説明図である。まず、鏡面加工されたワーク3の底面形状内に収まる大きさで、具体的な絵や文字が認識できる画像(整元画像)を用意する。このとき、図4において整元画像内の任意の座標P1(X,Y)と、これに対応する歪曲元画像内の座標P2(X,Y)との間には、以下の関係が成り立つ。
【0014】
【数1】

【0015】
そして、中心Oからワーク3の底面外周までの距離をR、中心Oから視点までの鉛直距離をE、ワーク3の頂点の高さをH、視点Eと座標P1とを結ぶ第1の直線L1とワーク3の錘面との交点の座標P3をR,Zとすると、以下の関係が成り立つ。
【0016】
【数2】

【0017】
これらの式より、以下の変換手順で歪曲元画像4の座標P2が得られる。
(イ)座標P1と視点位置Eとを通る第1の直線L1を求める。
(ロ)第1の直線L1とワーク3の錐面との交点の座標P3(R,Z)を求める。
(ハ)第1の直線L1と交点の座標P3を通る錘面の法線とを含む平面内で、前記法線に対して第1の直線L1と対称となる第2の直線L2を求める。なお、図4のようにワーク3の頂点の真上に視点Eが存在する場合は、L2は法線に対して第1の直線L1と線対称な直線となる。
(ニ)第2の直線L2と台板2上(E=0でR方向に伸びる直線)との交点(R,0)を求める。これが整元画像のRに対応する歪曲元画像となる。
(ホ)求められたRを先の式3,4に入れて座標P2(X,Y)を求める。
【0018】
そして、上記変換手順を用いることで、台板2上の歪曲元画像4をコンピュータで作成する画像作成プログラムが構築できる。以下この画像作成プログラムを図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0019】
まず、S1において、整元画像のデータを読み込む。次に、S2において、整元画像上のX座標位置I、Y座標位置Jを0にリセットし、S3,4で夫々の座標位置を最初の位置である1とする。
S5で、読み込んだ整元画像から、変換する座標P1(X,Y)(最初の位置では(X,Y))の画像情報(ここでは色)を取得する。
S6において、上記(イ)〜(ホ)の変換手順を用いて、整元画像上の座標P1(X,Y)に対応する歪曲元画像上の座標P2(X,Y)を演算する。
S7において、S5で取得した座標P1(X,Y)の画像情報を、変換した歪曲元画像上の座標P2(X,Y)に書き込む。
S8で、Xが最終位置か否か、すなわち整元画像の同一Y座標位置における全てのX座標位置についての変換を終了したか否かを確認する。ここで全ての変換が終了していればS9へ移り、終了していなければS4へ戻り、次のX座標位置に移ってS5以下の処理を行う。
同様にS9でも、Yが最終位置か否か、すなわち整元画像の同一X座標位置における全てのY座標位置についての変換が終了したか否かを確認する。ここで全ての変換が終了していれば、S10で歪曲元画像のデータを保存する。全ての変換が終了していなければS3へ戻り、次のY座標位置に移ってS5以下の処理を行う。
【0020】
以上の処理により、整元画像のデータが全てワーク周りの平面上に反映された歪曲元画像が完成する。後はこの歪曲元画像のデータをプリンタに出力したり、後述する表示画面に出力したりすることで、展示装置に用いることができる。
このように上記形態の画像作成プログラムによれば、複雑な絵や模様等であっても、錐体であるワークの展示装置に用いる歪曲元画像を整元画像から容易に作成することができる。
【0021】
次に、図6のフローチャートに基づいて画像作成プログラムの他の例を説明する。これは、図5の手順で整元画像の全ての座標を変換しても歪曲元画像上の座標全てに画像情報(色)を書き込めない場合があることから、歪曲元画像上の座標から逆に整元画像上の位置を求めることにより、求めた整元画像上の座標の画像情報を取得するものである。
【0022】
まず、S20において、整元画像のデータを読み込む。次に、S21において、歪曲元画像上のX座標位置R、Y座標位置Sを0にリセットし、S22,23で夫々の座標位置を最初の位置である1とする。
S24で、歪曲元画像のうち、画像情報の書き込まれていない座標(X,Y)を選択する。
S25において、収束演算によって座標(X,Y)に対応する整元画像上の座標(X,Y)を求める。具体的には、
(イ)選択した歪曲元画像上の座標(X,Y)からワークの錘面に伸びる第1の直線を求める。
(ロ)第1の直線とワークの錘面との交点の座標を求める。
(ハ)第1の直線と交点の座標を通るワークの法線とを平面内で、前記法線に対して第1の直線と対称となる第2の直線を求める。ここで第2の直線がワークの底面から所定距離離れた視点位置を通らない場合は、第1の直線の方向を変えて(イ)〜(ハ)の処理を繰り返すことにより、当該視点位置を通る第2の直線を求める。
(ニ)第2の直線とワークの底面とに一致する平面上の整元画像の交点の座標(X,Y)を求める。
との変換手順が実行される。
【0023】
そして、S26において、求められた整元画像の座標(X,Y)の画像情報(色)を取得する。
S27において、S26で取得した座標(X,Y)の画像情報(色)を歪曲元画像上の座標(X,Y)に書き込む。
S28で、Xが最終位置か否か、すなわち歪曲元画像の同一Y座標位置における全てのX座標位置についての変換を終了したか否かを確認する。ここで全ての変換が終了していればS29へ移り、終了していなければS23へ戻り、次のX座標位置に移ってS24以下の処理を行う。
同様にS29でも、Yが最終位置か否か、すなわち歪曲元画像における全てのY座標位置についての変換が終了したか否かを確認する。ここで全ての変換が終了していればS30で歪曲元画像のデータを保存する。全ての変換が終了していなければS22へ戻り、次のY座標位置に移ってS24以下の処理を行う。
【0024】
以上の処理によっても、整元画像のデータが全てワーク周りの平面上に反映された歪曲元画像が完成する。後はこの歪曲元画像のデータをプリンタや表示画面に出力することで、展示装置に用いることができる。
このように、上記画像作成プログラムにおいても、複雑な絵や模様等であっても、ワークの展示装置に用いる歪曲元画像を整元画像から容易に作成することができる。特にここでは、整元画像の画像情報を確実に歪曲元画像に反映させて正確な歪曲元画像を作成可能となる。
【0025】
[変更例の説明]
展示装置に用いる歪曲元画像は、台板上に1パターンのみ表示される形態に限らない。例えば、図7に示すように、CPUやROM、RAM、HDD等を備えた表示制御手段11と、例えば液晶表示画面等の表示手段12とを備えた展示装置10として、表示手段12の表示画面に物体(ここでは錐体13)の底面を貼着等によって固定して、表示制御手段11のROMやHDDに予め保存した複数のパターンの歪曲元画像(画像作成プログラムで作成された歪曲元画像のデータ)を、所定時間経過毎に表示手段12に切り替え表示させて錐体13に鏡映させる構成も考えられる。これにより、鏡映される整鏡像が経時的に変化し、より強く看者の興味を惹くことができる。この歪曲元画像は、全く異なるものを用意して切り替えても良いし、アニメーションのように一定の模様や絵、人物等が動作するように切り替えても良い。また、物体に鏡映される整鏡像が時間と共に徐々に認識できるような変化の付け方も可能である。
【0026】
また、画像作成プログラムは、光ディスク(CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM等)や磁気ディスク(MOやFD等)といったコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、必要に応じてドライバで読み込んで使用することができる。また、外部ネットワークとの通信手段を備えたコンピュータであれば、画像作成プログラムをインターネット等のネットワーク上からダウンロードして歪曲元画像を作成することも可能である。勿論得られる効果は上記形態と同様である。
よって、汎用のパーソナルコンピュータシステムであれば、上記記録媒体やネットワーク上から画像作成プログラムを得ることによって歪曲元画像を簡単に作成でき、液晶表示画面等のモニタに出力することでそのまま展示装置として使用できる。
【0027】
一方、錐体自体は円錐に限らず、底面が三角形や四角形、多角形である角錐でも良いし、錘面は、頂点と底面の閉曲線とを直線で結ぶ形状に限らず、図8に示すように、外側へ膨出する曲線で結ぶ形状(葱坊主状)の錐体14や、逆に内側へ湾曲する曲線で結ぶ形状であっても差し支えない。また、平面視で頂点が底面の中心に位置する正錐体に限らず、頂点が底面中心からずれる錐体でも採用できる。つまり、錐体の形状が正確に把握できれば、上記変換手順と同じ考え方で歪曲元画像の作成は可能である。但し、歪曲元画像を錘面に鏡映するためには、頂点は1つであって、且つ錐体が設置される平面に対する錘面の角度が45°以上である必要がある。
さらに、錐体の形状によっては、視点位置は必ずしも錐体の頂点の真上に設定する必要はなく、図9のように錐体3の頂点上からずれた視点位置であっても、それに合わせた歪曲元画像の作成によって適正な整鏡像が認識可能となる。
【0028】
さらに、錘面を有するものであれば、錐体以外でも同等の作用を得ることができる。例えば図10に示すように、透明なブロック15に円錐形状の凹部16を設けたものであっても良い。この場合、ブロックは透明な素材であれば良く、凹部は加工により形成されるものであっても良いが、より簡単な製作方法としては、所定の型枠内に図1に示したワーク3を置き、型枠内に透明な樹脂を流し込み固化させることにより簡単に製作可能である。この場合には、ワーク3の形状、表面性状が凹部に転写されるので、やはりワーク3を加工した工作機械の視覚的な広告、宣伝手段として使用できる。
なお、凹部は、表面性状が鏡面状であればよいが、凹部にメッキ処理などコーティング処理を施すと一層効果的である。
その他、物体としては、外周面を鏡面状とした円柱を用いることもできる。この場合、円柱の外周面に鏡映した鏡像を見せるため、視点位置からの所定角度は上述した錐体の例に比して大きく傾くこととなるが、特に図7に示す表示手段12上に、ワーク13として円柱を載置した場合には、周囲の複数の方向から同時に見せるようにすることもできる。
【0029】
その他、物体が設置される平面は、水平である必要はなく、傾斜したものや、図7の展示装置で説明した液晶表示画面のように鉛直方向、さらには下向きのものであっても、貼着等によって物体の固定が可能であれば、設置姿勢は適宜変更可能である。
また、物体の数は1つに限らず、同形又は異形、或いは相似形の複数の物体を平面上にセットして、各物体毎に表示させた歪曲元画像を鏡映させて、複数の整鏡像を見せるような構成も考えられる。
【0030】
なお、本発明は、工作機械で加工されたワークの展示について説明したが、単に歪曲元画像と整鏡像とを比較展示するために用いても良く、さらには看者の興味を惹く効果を利用して、鏡面による反射などに関する教材としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ワークの展示装置の説明図である。
【図2】歪曲元画像の説明図である。
【図3】整鏡像の鏡映状態を示す説明図である。
【図4】歪曲元画像の変換理論を示す説明図である。
【図5】画像作成プログラムのフローチャートである。
【図6】画像作成プログラムの他の例のフローチャートである。
【図7】展示装置の変更例を示す説明図である。
【図8】展示装置の変更例を示す説明図である。
【図9】展示装置の変更例を示す説明図である。
【図10】展示装置の変更例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・展示装置、2・・台板、3・・ワーク、4・・歪曲元画像、5・・整鏡像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歪曲元画像を表示した表示手段の平面状の表示面に、表面鏡面状の物体をその底面が接するようにセットし、前記物体の所定角度から前記鏡面を見せることにより、前記物体周りの前記歪曲元画像を前記鏡面に鏡映させて、認識可能な整鏡像として見せることを特徴とする物体の展示方法。
【請求項2】
表示手段に複数の歪曲元画像を切り替え表示させて整鏡像を経時的に変化させる請求項1に記載の物体の展示方法。
【請求項3】
物体が、鏡面状の錘面を有する錐体であって、頂点側での所定角度から前記錘面を見せる請求項1又は2に記載の物体の展示方法。
【請求項4】
物体が、円錐形状の凹部が設けられた透明素材のブロックである請求項1又は2に記載の物体の展示方法。
【請求項5】
物体が、鏡面状の外周面を有する円柱である請求項1又は2に記載の物体の展示方法。
【請求項6】
物体の展示装置であって、
平面状の表示面に歪曲元画像を表示した表示手段と、その表示手段上に底面が接するようにセットされ、表面鏡面状の物体とを備え、所定角度から前記鏡面を見ることにより、前記鏡面に鏡映された前記物体周りの前記歪曲元画像を整鏡像として認識可能としたことを特徴とする物体の展示装置。
【請求項7】
予め保存された複数の歪曲元画像を表示手段に切り替え表示させる表示制御手段を備えた請求項6に記載の物体の展示装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の発明に用いられる歪曲元画像をコンピュータで作成するための画像作成プログラムであって、
物体がセットされる平面上で前記物体の底面内に表される整元画像の特定位置における画像情報を取得する手順と、
前記特定位置と物体の底面から所定距離離れた視点位置とを結ぶ第1の直線を求める手順と、
前記第1の直線と物体の鏡面との交点及びその交点を通る前記物体の法線を求める手順と、
前記第1の直線と法線とを含む平面内で前記法線に対して前記第1の直線と対称となる第2の直線を求める手順と、
前記第2の直線と物体がセットされる平面との第2の交点を求める手順と、
前記特定位置における画像情報を前記第2の交点の画像情報とする手順と、
をコンピュータに繰り返して実行させることによって、前記平面上に前記歪曲元画像を作成することを特徴とする画像作成プログラム。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れかに記載の発明に用いられる歪曲元画像をコンピュータで作成するための画像作成プログラムであって、
物体がセットされる平面上に歪曲元画像を作成する特定位置を設定する手順1と、
前記特定位置から前記物体の鏡面に伸びる第1の直線を求める手順2と、
前記第1の直線と物体の鏡面との交点及びその交点を通る前記物体の法線を求める手順3と、
前記第1の直線と法線とを含む平面内で前記法線に対して前記第1の直線と対称となる第2の直線を求める手順4と、
前記第2の直線が前記物体の底面から所定距離離れた視点位置を通るか否かを判定し、前記第2の直線が前記視点位置を通らない場合は、第1の直線の方向を変えて前記手順2から手順4を繰り返して、前記視点位置を通る第2の直線を求める手順5と、
前記第2の直線と物体の底面内に表される整元画像との交点を求める手順6と、
求めた交点における整元画像の画面情報を取得する手順7と、
前記整元画像の画面情報を前記特定位置における画像情報とする手順8と、
をコンピュータに繰り返して実行させることによって、前記平面上に前記歪曲元画像を作成することを特徴とする画像作成プログラム。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の画像作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−198185(P2006−198185A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13293(P2005−13293)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【出願人】(504328761)
【Fターム(参考)】