説明

物体保持装置

【課題】ヒンジ部40で結合される第1部材20と第2部材30とで物体1を覆い囲む状態で保持する物体保持装置10において、第1部材20と第2部材30とを引き離そうとするような荷重Fが発生しても、両部材20,30を結合するロック手段(50,60,55,65)によるロック機能を維持できるようにして、物体1の保持能力を高める。
【解決手段】物体1を保持させた状態において、第1部材20と第2部材30とを引き離そうとする荷重Fの発生に伴い、係止部(50,60)と被係止部(55,65)との各引っ掛かり部分(51a,56)(61a,66)が互いに力を及ぼしあう前に、ヒンジ部40が弾性変形または塑性変形して荷重Fを吸収、減衰するよう構成されている。これにより、引っ掛かり部分(51a,56)(61a,66)が破損しにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を保持する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車において、燃料系統、潤滑系統等に用いる流体通管や、電気機器等に用いるハーネスやケーブル等のような物体を保持する装置がある。
【0003】
この保持装置としては、例えば、ヒンジ部で結合される第1部材と第2部材とで、前記物体の途中部分を挟持する構造になっていて、第1部材と第2部材とにおける反ヒンジ部側に、一組のロック手段としての係止部と被係止部とを振り分けて設けたものがある。
【0004】
このような保持装置において、前記物体が引っ張られることによって第1部材と第2部材とを引き離すような荷重が発生したときに、前記係止部と被係止部との各引っ掛かり部分(爪状の部分)が強く当接して潰れたり千切れたりするおそれがある。そのような場合には、第1部材と第2部材との結合が解かれるので、物体を保持できなくなる。
【0005】
このような事情に鑑み、第1部材と第2部材との結合を強固にするために、上記ロック手段に加えて、第1部材と第2部材とにおけるヒンジ部側にも、一組のロック手段としての係止部と被係止部とを振り分けて設けてダブルロック構造とすることが考えられている(特許文献1〜4参照。)。
【特許文献1】特開2001−317510号公報
【特許文献2】実開昭63−194521号公報
【特許文献3】特開2004−242478号公報
【特許文献4】特開2001−90870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例のようにダブルロック構造であれば、シングルロック構造の場合に比べて第1部材と第2部材との結合強度が増す。しかしながら、上記各従来例では、第1部材と第2部材とを引き離そうとするような荷重が発生したときに、この荷重が各組の係止部と被係止部との各引っ掛かり部分(爪状の部分)に直接的に作用するようになっているために、この各引っ掛かり部分が破損しやすい。このような破損が発生した場合には、上述したように第1部材と第2部材との結合が解かれるので、物体を保持できなくなることがある。
【0007】
本発明は、ヒンジ部で結合される第1部材と第2部材とで物体を覆い囲む状態で保持する物体保持装置において、第1部材と第2部材とを引き離そうとするような荷重が発生しても、前記両部材を結合するロック手段によるロック機能を維持できるようにして、物体の保持能力を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る物体保持装置は、ヒンジ部で結合される第1部材と第2部材とで物体を覆い囲む状態で保持するもので、かつ、第1部材と第2部材とに、前記両部材を結合するロック手段としての係止部と被係止部とを振り分けて設けている物体保持装置であって、前記物体を保持させた状態において、前記第1部材と第2部材とを引き離そうとする荷重の発生に伴い、前記係止部と被係止部との各引っ掛かり部分が互いに力を及ぼしあう前に、前記ヒンジ部が弾性変形または塑性変形して前記荷重を吸収、減衰するよう構成されてい
ることを特徴としている。
【0009】
この場合、前記第1部材と第2部材とを引き離そうとする荷重をヒンジ部で吸収、減衰するようにしているから、前記係止部と被係止部との各引っ掛かり部分が破損しにくくなる。これにより、第1部材と第2部材とが簡単に引き離されなくなるので、物体において前記両部材で保持されている領域が外部に露呈されずに済むとともに、物体が飛び出さずに済む。
【0010】
前記第1部材と第2部材とに、前記両部材を結合するロック手段としての係止部と被係止部とを振り分けて設けることができる。この場合、いわゆるダブルロック構造となり、ロック強度が向上する。
【0011】
前記一方のロック手段は、前記第1部材と第2部材とにおける反ヒンジ部側に設けられ、また、前記他方のロック手段は、前記第1部材と第2部材とにおけるヒンジ部側に設けられるものとすることができる。
【0012】
このように複数のロック手段の配置位置を特定すれば、仮にヒンジ部が破損した場合でも、第1部材と第2部材との結合状態が維持されるので、物体を保持し続けることが可能になる。
【0013】
前記係止部と被係止部との各引っ掛かり部分、および前記ヒンジ部側での前記両部材の突合せ面間に、それぞれクリアランスが設けられており、前記各引っ掛かり部分におけるクリアランスが、前記両部材の突合せ面間におけるクリアランスと同等以上に設定されたものとすることができる。
【0014】
この場合、荷重を吸収、減衰させるために、前記クリアランスの管理で簡単に調整することが可能になる。
【0015】
前記第1部材は、前記物体を収容可能な有底筒形とされており、前記第2部材は、前記有底筒形の第1部材の開口を覆う蓋形状とされたものとすることができる。
【0016】
この場合、物体を外部から隠蔽することが可能であるから、物体を保持することの他に保護が可能になる。
【0017】
前記有底筒形の第1部材の壁部に、前記物体の一部を外部に突出させるための開口部を有し、この開口部において前記壁部の外面側の角部に面取りが設けられたものとすることができる。
【0018】
この場合、例えば長尺な物体を保持するのに前記開口部を利用できるようになり、しかも、仮に、前記長尺な物体において前記開口部から突出する部分が径方向に引っ張られることによって、この物体が前記開口部の角部に干渉しても、この干渉部分に応力が集中しにくくなるので、そこが破損しにくくなる。
【0019】
前記保持対象となる物体を線状部材とする場合、前記両部材は、前記物体の長手方向途中部分を除いた部分を外部に露呈させる状態で保持する構成とすることができる。この場合、線状部材からなる物体を保持するのに適した構成とすることができる。
【0020】
前記保持対象となる物体を第1パイプと第2パイプとをコネクタを介して連通連結した構成の流体通管とする場合、前記両部材は、前記コネクタと第1パイプの連結端と第2パイプの連結端とを含む領域を除く領域を外部に露呈させる状態で保持する構成とすること
ができる。
【0021】
この場合、複合構成の流体通管からなる物体を保持するのに適した構成とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1部材と第2部材とを引き離そうとするような荷重が発生しても、前記両部材を結合するロック手段によるロック機能を維持できるようにして、物体の保持能力を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に示して説明する。図1から図8に本発明に係る物体保持装置の一実施形態を示している。これらの図において、1は物体、10は物体保持装置である。
【0024】
物体1は、例えば自動車等の燃料系統や潤滑系統等に用いる流体通管、あるいは電気機器等に用いるハーネスやケーブル等のような線状部材が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
この実施形態では、物体1として、図1および図4に示すように、ゴム等の柔軟性を有する第1パイプ2と金属等の硬質な第2パイプ3とをコネクタ4を用いて連通連結した構成の燃料ホースを例に挙げている。第2パイプ3は、L字形に屈曲している。
【0026】
物体保持装置10は、物体1のコネクタ4の外周部分(コネクタ4と第1パイプ2の連結端と第2パイプ3の連結端とを含む領域)を覆い囲むことによって隠蔽保護するとともに回り止めおよび抜け止めするよう保持するものであり、第1部材20と第2部材30とをヒンジ部40で結合した構成である。
【0027】
第1部材20は、帯状の底壁部21の四辺にそれぞれ直交する姿勢で第1長壁部22、第2長壁部23、第1短壁部24、第2短壁部25を一体に設けることによって、有底角筒形に形成されている。
【0028】
第1短壁部24および第2短壁部25には、それらの上端側へ向けて開放するU字形切欠きからなる開口部24a,25aが設けられている。底壁部21において第2短壁部25側には、L字形の第2パイプ3を支持する支持片26が一体に設けられている。
【0029】
このような第1部材20の内部空間27に、物体1のコネクタ4周辺が収容保持されるようになっており、第1短壁部24の開口部24aに第1パイプ2が、また、第2短壁部25の開口部25aに第2パイプ3がそれぞれ係入されるようになっている。
【0030】
第2部材30は、第1部材20における内部空間27の開口を開放または閉塞する蓋のようなもので、帯状板からなる。この第2部材30は、その一長辺における長手方向中間が、第1部材10の第1長壁部22の上端外側角部にヒンジ部40を介して結合されている。これによって、第2部材30はヒンジ部40を支点として揺動開閉可能になっている。
【0031】
ヒンジ部40は、第1部材20の各壁部や第2部材30の肉厚に比べて極薄く設定されており、図1および図5に示すように第2部材30を開いた状態では、側面視で一直線に延びた形状になっているが、図3および図7に示すように第2部材30を閉じた状態では、側面視で横向きのU字形状に屈曲される。
【0032】
このような物体保持装置10は、例えばコスト低減のために、合成樹脂からなるワンピース構造の成形品とされる。なお、前記合成樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることができるが、例えばポリアミド系樹脂(PA11、PA12、PA66等)、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等を好適に用いることができる。但し、この物体保持装置10は、所定の弾性を有する材料であれば材質は問わない。
【0033】
次に、上記物体保持装置10において、第2部材30を閉じた状態でロックするための構造について説明する。この実施形態では、ダブルロック構造になっている。
【0034】
具体的に、第1部材20と第2部材30とにおける反ヒンジ部側には、第1組のロック手段として第1係止部50と第1被係止部55とが振り分けて設けられており、また、第1部材20と第2部材30とにおけるヒンジ部40側には、第2組のロック手段として第2係止部60と第2被係止部65とが振り分けて設けられている。
【0035】
なお、第1部材20と第2部材30とにおける反ヒンジ部側とは、第1部材20と第2部材30とにおいてヒンジ部40を設けている辺と対向する第1部材20と第2部材30とにおける辺側のことである。
【0036】
第1係止部50は、第2部材30の内面において反ヒンジ部側の長手方向中間に、突出形成される突片からなる。この突片からなる第1係止部50の先端側には、第2部材30の短手方向外向きに突出する爪51が設けられている。この爪51は、側面から見て三角形状であり、第2部材30の内面と平行な平坦面51aと、この平坦面51a側から第1係止部50の先端側へ向けて張り出し量が漸次小さくなるテーパ面51bとを有している。
【0037】
第1被係止部55は、第1部材20の第2長壁部23における外面の長手方向中間に突出形成される略L字形の突片28の立ち上がり部28aの内面に、板厚方向に陥没形成される凹部からなる。この凹部からなる第1被係止部55を構成する三つの内壁面のうちの上側内壁面56は、第1部材20の第2長壁部23の上端面と平行な平坦面とされている。この平坦な上側内壁面56には、第1係止部50の爪51の平坦面51aが引っ掛けられるようになっている。
【0038】
第2係止部60は、第2部材30の内面においてヒンジ部側の長手方向中間に、突出形成される突片からなる。この突片からなる第2係止部60の先端側には、第2部材30の短手方向外向きに突出する爪61が設けられている。この爪61は、側面から見て凸形状であり、第2部材30の内面と平行な平坦面61aを有している。
【0039】
第2被係止部65は、第1部材20の第1長壁部22における内面の長手方向中間に陥没形成される凹部からなる。この凹部からなる第2被係止部65を構成する三つの内壁面のうちの上側内壁面66は、第1部材20の第1長壁部22の上端面と平行な平坦面とされている。この平坦な上側内壁面66には、第2係止部60の爪61の平坦面61aが引っ掛けられるようになっている。
【0040】
なお、第1係止部50の爪51と第2係止部60の爪61とを異なる形状にしているが、同じ形状であってもかまわない。
【0041】
このような構成の物体保持装置10は、図1および図5に示すように、初期状態として第2部材30を開いた状態にしているものとする。
【0042】
この開いた状態において、図2および図6に示すように、物体1のコネクタ4周辺部分を第1部材20の内部空間27に収容する。このとき、物体1の第1,第2パイプ2,3を、第1部材20の第1、第2短壁部24,25の開口部24a,25aからそれぞれ外部に飛び出した状態とする。
【0043】
この後、側面視で一直線に延びた形状のヒンジ部40の中央部分を支点として第2部材30を第1部材20の内部空間27の開口に近づけるように動かし、図3および図7に示すように、第2部材30の第1、第2係止部50,60としての突片を、第1部材20の第1、第2被係止部55,65としての凹部内に若干の弾性変形を経たスナップフィット状態で係入させる。これにより、ヒンジ部40は、その中央で折り畳まれて側面視で横向きのU字形状に屈曲されるとともに、爪51,61の平坦面51a,61aが第1、第2被係止部55,65の上側内壁面56,66に引っ掛けられる。この引っ掛かり代を確保しているので、上記のようなスナップフィットでの係入動作となる。
【0044】
このようにして、第1部材20の内部空間27を第2部材30で覆い被せて閉じた状態にする。この閉じ状態においては、物体1のコネクタ4周辺を外部から覆い囲んで保護することができるとともに、物体1を回り止めならびに抜け止めして保持することができる。なお、物体1の回り止めは、第1部材20の底壁部21と第1、第2長壁部22,23と第2部材30とで囲む内部空間27の短手方向の断面形状を、物体1のコネクタ4の軸方向と直交する方向の断面形状と同じ多角形にすることによって行っている。また、物体1の抜け止めは、第1部材20の第2短壁部25と第1、第2長壁部22,23の内面に設けてある突起22a,23aとによって物体1のコネクタ4の軸方向両端面を挟むことによって行なっている。
【0045】
ところで、上記閉じ状態において、例えば物体1が引っ張られたりすると、第1部材20と第2部材30とを引き離すような上向きの荷重Fが発生して第2部材30に付与されることがある。このような荷重Fが発生した場合でも、第2部材30が開きにくくなるように工夫しているので、以下で説明する。
【0046】
具体的に、図7に示すように、第1係止部50の爪51の平坦面51aと第1被係止部55の平坦な上側内壁面56との対向間にクリアランスS1を、また、第2係止部60の爪61の平坦面61aと第2被係止部65の平坦な上側内壁面66との対向間にクリアランスS2を、さらに、第1部材20の第1長壁部22の上端面と第2部材30の内面との対向間にクリアランスS3をそれぞれ設けたうえで、これら各クリアランスS1、S2、S3の関係を、S1=S2,S1(S2)>S3に設定している。
【0047】
このようにすれば、上記荷重Fは、第1、第2係止部50,60の爪51,61の平坦面51a,61aが第1、第2被係止部55,65の上側内壁面56,66に当接して互いに力を及ぼしあう前に、ヒンジ部40に付与される。これにより、ヒンジ部40が荷重Fの作用方向にまず弾性変形して延びてから塑性変形するようになり、それによって荷重Fが吸収または減衰されることになる。つまり、ヒンジ部40は、弾性変形および塑性変形する際に荷重Fと略反対の力を発生するので、この力でもって荷重Fが吸収または減衰されるのである。
【0048】
ところで、上記荷重Fの大きさによるが、比較的小さくてヒンジ部40の延び量が少しで済む場合には、第1、第2係止部50,60の爪51,61の平坦面51a,61aが第1、第2被係止部55,65の上側内壁面56,66に当接しないことがある。この場合には、爪51,61が潰れないので、第2部材30が開いて第1部材20の内部空間27が露呈されずに済んで、物体1を保護、保持する状態を維持できる。
【0049】
但し、上記荷重Fが過大でヒンジ部40の延び量が多い場合、あるいはヒンジ部40が千切れるような場合には、第1、第2係止部50,60の爪51,61の平坦面51a,61aが第1、第2被係止部55,65の上側内壁面56,66に当接してしまう。しかし、荷重Fがヒンジ部40の弾性変形や塑性変形によって吸収または減衰されるので、平坦面51a,61aが上側内壁面56,66に当接しても、その当接部分に作用する荷重は大幅に軽減されることになる。そのため、爪51,61が潰れたり、千切れたりすることが防止または抑制されるので、第2部材30が開いて第1部材20の内部空間27が露呈されずに済んで、物体1を保護、保持する状態を維持できる。
【0050】
以上説明したように、物体保持装置10において、第1部材20と第2部材30とを引き離そうとするような荷重Fを受けても、両部材20,30を結合するためのロック手段の破損を防止または抑制することができる。したがって、物体1の保護および保持に優れた信頼性の高い物体保持装置10を提供できる。
【0051】
以下、本発明の他の実施形態を説明する。
【0052】
(1)図9に示すように、第1短壁部24の開口部24aの外側角部に、丸い面取り24bを形成している。この面取り24bは、テーパ状であってもよい。
【0053】
このようにした理由を説明する。つまり、第1パイプ2が径方向一方へ引っ張られたときに、第1パイプ2が第1短壁部24の開口部24aの外側角部を支点として屈曲することがある。ここで、仮に、第1短壁部24の開口部24aの外側角部が角張っていると、第1パイプ2がその一点で鋭角に屈曲することになってしまい、前記屈曲支点となる一点に曲げ応力が集中し、そこが破損しやすくなる。
【0054】
しかしながら、上記のように面取り24bを設けていれば、第1パイプ2が図10の矢印で示すように軸方向と直交する方向へ引っ張られて図10の仮想線で示すように屈曲したときに、その屈曲部分が面取り24bに沿って緩やかに湾曲することになるので、曲げ応力の局部集中が回避されることになる。これにより、第1パイプ2の破損を防止または抑制できるので、信頼性が向上する。
【0055】
これは、第1パイプ2がゴム材等のように柔軟性に富んだものの場合はもちろん、樹脂や金属等のように僅かな撓む程度のものの場合であっても、第1パイプ2を保護するうえで有利となる。これと同様に、図示していないが、第2短壁部25の開口部25aの外側角部にも丸い面取りあるいはテーパ状面取りを形成してもよい。
【0056】
また、図11に示すように、第1短壁部24の外面にその開口部24aの淵に沿って隆起する隆起部29を設け、この隆起部29の内角部に、丸い面取り29a(あるいはテーパ状面取り)を設けてもよい。
【0057】
このような隆起部29を設けた場合、開口部24aにおいて第1パイプ2の外周面を受ける面積が可及的に大きくなるので、第1パイプ2が軸方向と直交する方向に引っ張られたときに、第1パイプ2の曲げ角度を小さく抑制することが可能になり、当該第1パイプ2の破損防止に効果がある。但し、隆起部29に面取り29aを設けていないものも本発明に含まれる。
【0058】
(2)上記実施形態では、第1、第2係止部50,60および第1、第2被係止部55,65を物体保持装置10の長手方向中間に各一つずつ設けているが、その大きさや数は特に限定されない。
【0059】
(3)上記実施形態では、ダブルロック構造としているが、シングルロック構造であってもよい。例えば第1組のロック手段としての第1係止部50および第1被係止部55を無くした構造、あるいは、第2組のロック手段としての第2係止部60および第2被係止部65を無くした構造のいずれかとしてもよい。
【0060】
(4)上記実施形態とは逆に、第1部材20側に突片からなる第1、第2係止部50,60を設けて、第2部材30側に凹部からなる第1、第2被係止部55,65を設けてもよい。
【0061】
(5)上記実施形態では、第1部材20を有底角筒形として、第2部材30を平坦な蓋状としたが、それらの形状は特に限定されるものでない。例えば第2部材30を有底角筒形としてもよい。あるいは、第1部材20は、第1、第2短壁部24,25を無くして、端面から見て凹形状としたものであってもよい。
【0062】
(6)上記実施形態において、三つのクリアランスS1,S2,S3の関係を、S1=S2=S3に設定してもよい。
【0063】
この場合、物体保持装置10において、第1部材20と第2部材30とを引き離そうとするような荷重Fを受けると、この荷重Fがヒンジ部40に付与されると同時に、第1、第2係止部50,60の爪51,61の平坦面51a,61aが第1、第2被係止部55,65の平坦な上側外壁面56,66に当接することになる。
【0064】
このような状況では、ヒンジ部40と前記当接部分とが共に弾性変形することによって前記荷重Fが吸収、減衰される。但し、前記荷重Fは、ヒンジ部40や前記当接部分の両方に略同時に作用するので、荷重Fを受ける有効面積が大きくなっており、単位面積当たりにかかる荷重負担が小さくて済む。そのため、爪51,61が潰れたり、千切れたりすることが防止または抑制される。
【0065】
(7)図12から図14に本発明の他の実施形態を示して説明する。この実施形態において上記実施形態との相違はヒンジ部の構成である。
【0066】
つまり、第1部材20における第2部材30との連結側の辺の長手方向中間部には、円筒部41が設けられており、また、第2部材30における第1部材20との連結側の辺の長手方向両端部には、円筒部42,43が設けられている。これら各円筒部41〜43の中心孔に、単一の支軸44が挿通されており、第1部材20と第2部材とが支軸44を支点として揺動可能に連結されている。このように支軸44を用いてヒンジ部を構成している。
【0067】
そして、第1部材20の円筒部41における中心孔の内径は、支軸44の外径より若干小さく設定されており、また、第2部材30の円筒部42,43における中心孔の内径は、支軸44の外径より大きく設定されている。これにより、支軸44は、第1部材20の円筒部41に圧入等により固定状態で嵌入されており、第2部材30の円筒部42,43に対しては所定のガタを持つ状態に嵌入されている。つまり、例えば図13に示すように、第1部材20の開口を第2部材30で閉塞するように第2部材30を閉じた状態では、支軸44が第2部材30の円筒部42,43における中心孔の略中心に配置されることになり、それらの径方向対向間で上半分と下半分とにそれぞれクリアランスS3が存在するようになっている。
【0068】
なお、各クリアランスS3は、上記実施形態での図7に示すクリアランスS3と略同一寸法に設定される。つまり、各クリアランスS1、S2、S3の関係は、上記実施形態と
同様に、S1=S2,S1(S2)>S3に設定される。
【0069】
このようにすれば、上記実施形態で説明していることと同様に、第1部材20と第2部材30とを引き離そうとする荷重Fの発生に伴い、この荷重Fは、第1、第2係止部50,60の爪51,61の平坦面51a,61aが第1、第2被係止部55,65の上側内壁面56,66に当接して互いに力を及ぼしあう前に、第2部材30の円筒部42,43および支軸44に付与される。これにより、第2部材30の円筒部42,43が荷重Fの作用方向にまず弾性変形して延びてから塑性変形するようになり、それによって荷重Fが吸収または減衰されることになる。
【0070】
なお、この実施形態において、まず、支軸44を、第2部材30の円筒部42,43に圧入等により固定状態に嵌入して、第1部材20の円筒部41に対して所定のガタを持つ状態に嵌入してもよい。また、上記各クリアランスS3は、上記(6)と同様に、S1=S2=S3に設定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る物体保持装置の一実施形態で、第2部材を開いた状態を示す斜視図である。
【図2】図1の第1部材に物体を収容した状態を示す斜視図である。
【図3】図2の第2部材を閉じた状態を示す斜視図である。
【図4】図2の物体保持装置において物体の一部を断面にして示す平面図である。
【図5】図1に示す状態の物体保持装置の長手方向中央を短手方向に沿って断面にした図である。
【図6】図2に示す状態の物体保持装置の長手方向中央を短手方向に沿って断面にした図である。
【図7】図3に示す状態の物体保持装置の長手方向中央を短手方向に沿って断面にした図である。
【図8】図7において荷重Fが発生したときの状態を示す要部の拡大断面図である。
【図9】本発明に係る物体保持装置の他の実施形態で、図2と逆向きの斜視図である。
【図10】図9の物体保持装置の第2部材を開いた状態を示す平面図である。
【図11】本発明に係る物体保持装置のさらに他の実施形態で、図9に対応する図である。
【図12】本発明に係る物体保持装置のさらに他の実施形態で、図1に対応する図である。
【図13】図12に示す状態の物体保持装置の長手方向一端側を短手方向に沿って断面にした図である。
【図14】図13において荷重Fが発生したときの状態を示す要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 物体
2 第1パイプ
3 第2パイプ
4 コネクタ
10 物体保持装置
20 第1部材
21 底壁部
22 第1長壁部
23 第2長壁部
30 第2部材
40 ヒンジ部
50 第1係止部
51 第1係止部の爪
51a 爪の平坦面
55 第1被係止部
56 第1被係止部の上側内壁面
60 第2係止部
61 第2係止部の爪
61a 爪の平坦面
65 第2被係止部
66 第2被係止部の上側内壁面
S1 第1組のロック手段側のクリアランス
S2 第2組のロック手段側のクリアランス
S3 ヒンジ部側におけるクリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジ部で結合される第1部材と第2部材とで物体を覆い囲む状態で保持するもので、かつ、第1部材と第2部材とに、前記両部材を結合するロック手段としての係止部と被係止部とを振り分けて設けている物体保持装置であって、
前記物体を保持させた状態において、前記第1部材と第2部材とを引き離そうとする荷重の発生に伴い、前記係止部と被係止部との各引っ掛かり部分が互いに力を及ぼしあう前に、前記ヒンジ部が弾性変形または塑性変形して前記荷重を吸収、減衰するよう構成されていることを特徴とする物体保持装置。
【請求項2】
前記第1部材と第2部材とに、前記両部材を結合するロック手段としての係止部と被係止部とを振り分けて設けていることを特徴とする請求項1に記載の物体保持装置。
【請求項3】
前記一方のロック手段は、前記第1部材と第2部材とにおける反ヒンジ部側に設けられ、また、前記他方のロック手段は、前記第1部材と第2部材とにおけるヒンジ部側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の物体保持装置。
【請求項4】
前記係止部と被係止部との各引っ掛かり部分、および前記ヒンジ部側での前記両部材の突合せ面間に、それぞれクリアランスが設けられており、前記各引っ掛かり部分におけるクリアランスが、前記両部材の突合せ面間におけるクリアランスと同等以上に設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の物体保持装置。
【請求項5】
前記第1部材は、前記物体を収容可能な有底筒形とされており、前記第2部材は、前記有底筒形の第1部材の開口を覆う蓋形状とされていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の物体保持装置。
【請求項6】
前記有底筒形の第1部材の壁部に、前記物体の一部を外部に突出させるための開口部を有し、この開口部において前記壁部の外面側の角部に面取りが設けられていることを特徴とする請求項5に記載の物体保持装置。
【請求項7】
前記保持対象となる物体を線状部材とする場合、前記両部材は、前記物体の長手方向途中部分を除いた部分を外部に露呈させる状態で保持する構成とされていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の物体保持装置。
【請求項8】
前記保持対象となる物体を第1パイプと第2パイプとをコネクタを介して連通連結した構成の流体通管とする場合、前記両部材は、前記コネクタと第1パイプの連結端と第2パイプの連結端とを含む領域を除く領域を外部に露呈させる状態で保持する構成とされていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の物体保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−183737(P2006−183737A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376106(P2004−376106)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】