説明

物品ホルダ

【課題】 物品ホルダにおいて、簡易に、かつ物品の寸法形状、材質によらず、物品を固定的に保持可能にすること。
【解決手段】 液体充填ラインで用いる物品ホルダ10であって、物品1を挿入して保持する有底枠状のホルダ本体11を有し、該ホルダ本体11の底面に、物品1を粘着保持するとともに剥離自在にする粘着シート12を設けたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器への内容物充填包装ライン等の物品処理ラインでは、ラインのコンベヤに載せた物品ホルダに物品を保持する状態で、物品をラインの内外に搬送可能にしている。
【0003】
このような物品ホルダでは、物品をホルダ本体内に挿入して保持するため、物品とホルダ本体の間に一定以上のクリアランスを設ける必要がある。物品ホルダを載せたラインのコンベヤが急発進、急停止等すると、物品は急発進、急停止等の加減速に伴なう衝撃によりホルダ本体内で横揺れする如くに動き、物品に充填した内容物の液ハネ等を生ずるおそれがある。
【0004】
そこで従来、物品を固定的に保持可能にする物品ホルダとして、特許文献1に記載の如く、ホルダ本体に弾性保持体を設け、弾性保持体により、ホルダ本体内に物品を出入可能にし、かつ物品に弾性把持力を及ぼして保持するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-282633
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の物品ホルダには以下の問題点がある。
(1)弾性保持体は特定の物品とホルダ本体の間のクリアランスを埋め得る等の特定の寸法からなるものであり、複雑になるし、汎用性に劣る。
【0007】
(2)柔軟容器や異形容器等の物品には適用できない。即ち、柔軟容器に対しては弾性保持体が及ぼす弾性把持力を強くできないし、異形容器では容器の異形部が弾性保持体に干渉してホルダ本体内に挿入困難又は挿入不能になる。
【0008】
本発明の課題は、物品ホルダにおいて、簡易に、かつ物品の寸法形状、材質によらず、物品を固定的に保持可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、液体充填ラインで用いる物品ホルダであって、物品を挿入して保持する有底枠状のホルダ本体を有し、該ホルダ本体の底面に、物品を粘着保持するとともに剥離自在にする粘着シートを設けたものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は実施例1の物品ホルダを示す模式図である。
【図2】図2は物品ホルダの使用状態を示す模式図である。
【図3】図3はホルダ本体への粘着シートの取着構造を示す模式図である。
【図4】図4は実施例2の物品ホルダを示す模式図である。
【図5】図5は参考例1の物品ホルダを示す模式図である。
【図6】図6は参考例2の物品ホルダを示す模式図である。
【図7】図7は参考例3の物品ホルダを示す模式図である。
【図8】図8は参考例4の物品ホルダを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)(図1〜図3)
ボトル、パウチ等の物品1の内容物充填包装ライン等の物品処理ラインでは、図1、図2に示す如く、ラインのコンベヤ2に載せた物品ホルダ10に物品1を保持する状態で、物品1をラインの内外に搬送可能にする。
【0012】
物品ホルダ10は、有底四角枠状のホルダ本体11を有し、物品1をホルダ本体11に挿入して保持するため、物品1の胴部1Aとホルダ本体11の枠内面11Aとの間に一定以上のクリアランスを有する。
【0013】
物品ホルダ10は、物品1を粘着保持するとともに剥離自在にする粘着シート12をホルダ本体11に設ける。粘着シート12は、物品ホルダ10をコンベヤ2に載せた概ね水平面上での搬送状態で、粘着シート12のシート面に沿う搬送方向では物品1を強力に粘着保持し、粘着シート12のシート面に直交する物品1の抜き取り方向では物品1を容易に剥離自在にする。
【0014】
物品ホルダ10は、粘着シート12をホルダ本体11に着脱可能に設けてある。図3に示す如く、粘着シート12は裏面のシート面S1をホルダ本体11の底面11Bに粘着することにてホルダ本体11に取着され、表面のシート面S2に物品1の底面1Bを粘着保持可能にする。このとき、粘着シート12の表裏の両シート面S1、S2は同一性状をなし、(a)粘着シート12の裏面のシート面S1が接するホルダ本体11の底面11Bを鏡面、粘着シート12の表面のシート面S2が接する物品1の底面1Bを粗面とすることにより、粘着シート12はホルダ本体11よりも物品1との間で相対的に剥離容易とされ、(b)粘着シート12の裏面のシート面S1が接するホルダ本体11の底面11Bとの接触面積A1より、粘着シート12の表面のシート面S2が接する物品1の底面1Bとの接触面積A2を小にしていることによっても、粘着シート12はホルダ本体11よりも物品1との間で剥離容易とされる。
【0015】
粘着シート12としては、ゴム系樹脂やゴム系混合物が使用できる。例えば、エーテル系ポリウレタン樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン−エチレン系樹脂、ブチレン−スチレン系樹脂、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体とナフテン系の混合物などが採用できし、常温粘着性を有する溶液タイプ、エマルジョンタイプ、ホットメルトタイプの粘着材や、アクリル系、ゴム系、ウレタン系、シリコーン系の粘着材も採用できる。
【0016】
尚、物品ホルダ10は、図1(B)に示す如く、ホルダ本体11に保持した物品1の排出等に際し、ホルダ本体11の底面11Bに設けた孔11Cに挿入されるロッド等により物品1の底面1Bを突き上げ可能にするため、粘着シート12に孔12Aを設けることができる。
【0017】
(実施例2)(図4)
実施例2の物品ホルダ10が実施例1の物品ホルダ10と異なる点は、物品ホルダ10をコンベヤ2に載せた概ね水平面上での搬送状態で、ホルダ本体11の底面11Bが水平に対して勾配をなすものとし、この底面11B上に設けた粘着シート12により物品1の底面1Bを粘着保持する。物品1の注入口1Cが物品1の正立状態で鉛直方向に対して傾くものであるとき、この物品1の物品ホルダ10による保持状態で注入口1Cを鉛直方向にセットし、充填容易にできる。尚、物品1は胴部1Aをホルダ本体11の枠内面11Aに支持され、底面1Bを粘着シート12に粘着保持される。
【0018】
参考例1)(図5)
参考例1の物品ホルダ20が実施例1の物品ホルダ10と異なる点は、ホルダ本体11に代わるホルダ本体21を立上り面21Aと底面21Bを備えるL字状にし、物品1の胴部1Aの背面をホルダ本体21の立上り面21Aに設けた粘着シート12に粘着保持するとともに、物品1の底面1Bをホルダ本体21の底面21Bに支持可能にしたものである。ホルダ本体21に対する粘着シート12の取着構造、粘着シート12による物品1の保持性能は実施例1におけると同じである。
【0019】
参考例2)(図6)
参考例2の物品ホルダ30が実施例1の物品ホルダ10と異なる点は、ホルダ本体11に代わるホルダ本体31を底面31Aを備える平板状にし、物品1の底面1Bをホルダ本体31の底面31Aに設けた粘着シート12に粘着保持するようにしたものである。ホルダ本体31に対する粘着シート12の取着構造、粘着シート12による物品1の保持性能は実施例1におけると同じである。
【0020】
参考例3)(図7)
参考例3の物品ホルダ30が参考例2の物品ホルダ30と異なる点は、ホルダ本体31の底面31Aに設ける粘着シート12をくさび状粘着シート13に代えたことにある。物品ホルダ30をコンベヤ2に載せた概ね水平面上での搬送状態で、粘着シート13の物品載置面13Aが水平に対して勾配をなすものになる。物品1の注入口1Cが物品1の正立状態で鉛直方向に対して傾くものであるとき、この物品1の物品ホルダ30による保持状態で注入口1Cを鉛直方向にセットし、充填容易にできる。
【0021】
参考例4)(図8)
参考例4の物品ホルダ30が参考例2の物品ホルダ30と実質的に異なる点は、ホルダ本体31の底面31Aに設ける粘着シート12を複数枚に分割したこと、及び底面31Aに立設した支持ロッド32に物品1のネック部1Dを把持するネック把持装置40を設けたことにある。ネック把持装置40は、相対する把持爪41、41を支持ロッド32の上のガイドレール42にスライド自在に嵌合するとともに、それらの把持爪41、41をばね43で閉じ方向に付勢する。物品1は物品ホルダ30の粘着シート12により底面1Bを粘着保持されるとともに、ネック部1Dをネック把持装置40の把持爪41、41により把持される。尚、支持ロッド32に沿って、ガイドレール42を上下動可能とすれば、ガイドレール42を上下方向自在な位置に設定することができ、物品1の高さに対する自由度をもたせることも可能である。
【0022】
物品ホルダ10、20、30によれば以下の作用効果を奏する。
(a)物品ホルダ10、20、30にあっては、物品1をホルダ本体11、21、31の粘着シート12、13に粘着保持する。従って、物品ホルダ10、20、30を載せたラインのコンベヤ2が急発進、急停止等しても、物品1がホルダ本体11、21、31に対して動くことがなく、液ハネ等を抑えた安定した搬送を可能にする。
【0023】
(b)ホルダ本体11、21、31に粘着シート12、13を設けるだけの構成であり、簡易である。
【0024】
(c)粘着シート12、13は物品1の底面1Bに対する粘着保持と剥離を繰り返し自在にして物品1を保持可能にするものであり、寸法の異なる物品1、柔軟な物品1、異形の物品1についても確実に粘着保持して固定化する。
【0025】
(d)粘着シート12、13をホルダ本体11、21、31に対して着脱可能にした。従って、使用経過によって汚れた粘着シート12、13をホルダ本体11、21、31から一旦取外して水やアルコール等で清浄化することにより、その粘着性を回復させて再使用できる。また、粘着力の異なる複数枚の粘着シート12、13や、粘着シート12、13の物品載置面が水平をなすもの又は水平に対して勾配をなすもの等の複数種の粘着シート12、13を用意しておき、使用状況(物品重量、物品搬送速度、物品1の注入口1Cが水平に対してなす角度等)に応じた適宜の粘着シート12、13を選択使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、液体充填ラインで用いる物品ホルダであって、物品を挿入して保持する有底枠状のホルダ本体を有し、該ホルダ本体の底面に、物品を粘着保持するとともに剥離自在にする粘着シートを設けた。これにより、物品ホルダにおいて、簡易に、かつ物品の寸法形状、材質によらず、物品を固定的に保持できる。
【符号の説明】
【0027】
1 物品
10 物品ホルダ
11 ホルダ本体
12 粘着シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体充填ラインで用いる物品ホルダであって、物品を挿入して保持する有底枠状のホルダ本体を有し、該ホルダ本体の底面に、物品を粘着保持するとともに剥離自在にする粘着シートを設けた、液体充填ラインで用いる物品ホルダ。
【請求項2】
前記ホルダ本体の枠内面が物品の胴部との間にクリアランスを有する請求項1に記載の液体充填ラインで用いる物品ホルダ。
【請求項3】
前記粘着シートの表裏の両シート面は同一性状をなし、粘着シートの裏面のシート面が接するホルダ本体の底面を鏡面とし、粘着シートの表面のシート面が接する物品の底面を粗面とする請求項1又は2に記載の液体充填ラインで用いる物品ホルダ。
【請求項4】
前記粘着シートの表裏の両シート面は同一性状をなし、粘着シートの裏面のシート面が接するホルダ本体の底面との接触面積より、粘着シートの表面のシート面が接する物品の底面との接触面積を小にする請求項1又は2に記載の液体充填ラインで用いる物品ホルダ。
【請求項5】
前記ホルダ本体の底面が水平に対して勾配をなすものにする請求項1〜4のいずれかにに記載の液体充填ラインで用いる物品ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−155655(P2010−155655A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56467(P2010−56467)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【分割の表示】特願2004−122203(P2004−122203)の分割
【原出願日】平成16年4月16日(2004.4.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】