説明

物品搬送用容器の脱水乾燥装置

【課題】短時間のうちにターンテーブルの中心付近まで完全に脱水して乾燥することのできる物品搬送用容器の脱水乾燥装置を提供すること。
【解決手段】中心位置を軸心として水平方向回転自在に配置されたターンテーブル13と、該ターンテーブルを所定の速度で回転駆動する回転駆動手段(モーター)18と、パレットP等の物品搬送用容器を収納して載置するための前記ターンテーブル上に固定配置された平面視長方形状になる容器入れカゴ22と、前記回転するターンテーブルと容器入れカゴの外周囲を囲む平面視四角形状になる四角形筒状ケース12とから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品搬送用容器(例えば、パレット、トレー、折りたたみ式コンテナ、番重等)の洗浄処理に際して、洗浄後の濡れた容器を脱水乾燥するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、配送センターからスーパー、コンビニエンスストア等へ商品を搬送するために物品搬送用容器が広く用いられているが、使用の経過に伴って容器にゴミや汚れが付着するため、定期的に洗浄処理を行っている。この洗浄処理に際しては、洗浄が終わった後の濡れた容器を速やかに脱水して乾燥させる必要がある。従来、この容器の脱水乾燥手段として、熱風室、熱風炉、熱風ファン等を用いて容器に熱風を吹き付けて乾燥させる方法や、ターンテーブル上に濡れた容器を載置固定し、ターンテーブルを高速回転させることによってその遠心力で容器に付着している水分を吹き飛ばして脱水する遠心脱水装置(特許文献1参照)等が用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開平2000−218194号公報(全ページ、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、熱風乾燥による場合、熱源としての重油やプロパンガスを大量に使用するため、ランニングコストが高くなるという問題があった。また、従来の遠心脱水装置の場合、遠心力によって水分を飛ばすだけのものであるため、ターンテーブルの外周付近は大きな遠心力が作用して十分な脱水効果を得ることができるが、ターンテーブルの中心付近では作用する遠心力が小さいため、十分な脱水効果を上げることができなかった。このため、中心付近の水分まで完全に脱水して乾燥するには長時間にわたってターンテーブルを回し続ける必要があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、短時間のうちにターンテーブルの中心付近まで完全に脱水して乾燥することのできる物品搬送用容器の脱水乾燥装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の脱水乾燥装置は、中心位置を軸心として水平方向回転自在に配置されたターンテーブルと、該ターンテーブルを所定の速度で回転駆動する回転駆動手段と、パレット等の物品搬送用容器を収納して載置するための前記ターンテーブル上に固定配置された平面視長方形状になる容器入れカゴと、前記回転するターンテーブルと容器入れカゴの外周囲を囲む平面視四角形状になる四角形筒状ケースとを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
なお、前記ターンテーブルの下面には、四角形筒状ケース内へ外部空気を導入するための空気導入羽根を備えることが望ましい。また、前記四角形筒状ケースの正面部には、物品搬送用容器を出し入れするための開閉扉を設けるとともに、前記容器入れカゴの正面部には、物品搬送用容器を出し入れするための開閉機構を設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高速回転するターンテーブルの遠心力によって容器入れカゴ内に収容された物品搬送用容器に付着している水分を振り落とすと同時に、高速回転するターンテーブル上に固設された平面視長方形状の容器入れカゴのプロペラ作用とその周囲を囲む四角形筒状ケースの作用によって発生するケース内空気の周期的な圧力変動により、ケース内の空気をターンテーブル上に固設された容器入れカゴに向けて吹き付けることができ、この吹き付けられる空気によって容器入れカゴ内に収容されているパレット等の物品搬送用容器を乾燥処理することができる。この結果、遠心力による脱水処理だけでなく、ケース内空気による乾燥処理も同時に行うことができ、パレット等の物品搬送用容器に付着している水分を極めて短時間のうちに脱水乾燥することができる。
【0009】
また、本発明によるときは、乾燥処理に際して熱風を必要としないので、熱源となる重油やプロパンガスがまったく不要であり、装置のランニングコストを大幅に低減することができる。また、熱風発生設備などが不要であるので、設備費と設置スペースを低減することができ、その経済的効果は甚大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本発明に係る脱水乾燥装置の一実施の形態を図1〜図6に示す。図1(a)(b)は装置の全体形状を示す図、図2は図1(a)中のII-II線断面図、図3は図1(a)中のIII-III線断面図、図4(a)(b)はターンテーブルの構造を示す図、図5(a)〜(b)はターンテーブル上に固設された容器入れカゴの構造を示す図、図6は容器入れカゴの物品出し入れ用開口部の開閉機構を示す図である。
【0011】
図において、11は床上等に設置される装置基台であって、この基台11上に、平面視四角形をした筒状のケース12が固設されている。この四角形筒状ケース12の内部中心位置には、円板状のターンテーブル13が水平配置され、その下面中心位置に設けられた回転軸14によって軸受けケース15に回転自在に軸支されている。
【0012】
回転軸14の下端部にはプーリー16が取り付けられ、ベルト17によってモーター18の回転軸に取り付けられたプーリー19に連結され、モーター18を回転駆動することにより、ターンテーブル13を所定の速度で回転できるように構成されている。
【0013】
また、ターンテーブル13の下面には、四角形筒状ケース12の下部開口からケース12内に乾燥用の空気を効率よく呼び込んで流入させるための空気導入羽根20が回転方向所定間隔をおいて複数枚(図示例では90度間隔で4枚)取り付けられている(図5参照)。さらに、ターンテーブル13の下面と軸受けケース15との間には、回転方向所定間隔をおいて支持ローラ21が複数個(例えば、90度間隔で4個)設けられ、高速回転するターンテーブル13を下面側から安定的に支持している。
【0014】
前記円板状になるターンテーブル13の上面には、脱水乾燥の対象品であるパレット等を積載収容するための容器入れカゴ22が固定配置されている。この容器入れカゴ22は、カゴ内への空気の出入りが自由となるように、細板状の桟22aを長方形状のカゴ形に組み立てたもので(図5参照)、長方形状をしたカゴの長辺部が円形状をしたターンテーブル13の外周円内に収まる大きさとされている(図1(a)参照)。
【0015】
前記容器入れカゴ22の正面側には、パレット等の物品搬送用容器を容器入れカゴ22内に出し入れするための開口部を開閉するための開閉機構が設けられている。図示例の場合、この開閉機構は、図6にその詳細を示すように、取り外し式の2本の縦桟22b,22c、縦桟22bに取り付けられた回動式の安全バー22d、左右一対の桟係止金具22e、左右一対の桟差し込み金具22fとから構成されている。
【0016】
桟係止金具22eは、上部側の桟22aに取り付けられているとともに、桟差し込み金具22fは下部側の桟22aに取り付けられている。開口部を閉じるには、縦桟22b,22cの上端の薄片部22gを左右の桟係止金具22eのコ字形溝部22j内に差し込んだ後、縦桟22b,22cの下端側を左右の桟差し込み金具22f内に落とし込んで固定する。次いで、縦桟22bの中央部付近に回動自在に軸支されている安全バー22dを回動し、その先端の二股部22hが縦桟22cを挟むようにしてストッパ22i上に係止させる。これにより、容器入れカゴ22の正面開口部が閉じられ、カゴ内部に収納したパレット等の物品搬送用容器が飛び出すことを防ぐことができる。開口部を開くには、上記と逆の操作を行えばよい。
【0017】
また、四角形筒状ケース12の正面位置(装置正面)にはスライド式の開閉扉23が設けられており、パレット等の物品搬送用容器の出し入れに際して上下一対のレール24で案内しながら開閉できるように構成されている。この開閉扉23には、内部の状態を視認できるように透明窓23aが形成されている。また、四角形筒状ケース12の内壁下縁部には、脱水された水分を受けるための水受け皿25が設けられている(図2,図3参照)。なお、図中、符号26は、電源スイッチ、操作ボタン、表示ランプ等の入った操作盤である(図1(b)参照)。
【0018】
次に、上記脱水乾燥装置の動作を説明する。
なお、以下の説明においては、処理対象品としてパレットを用いた場合について述べるが、パレット以外の他の物品搬送用容器(例えば、トレー、折りたたみ式コンテナ、番重等)も同様に処理できるものである。
【0019】
まず、装置正面のスライド式の開閉扉23を開くとともに、ターンテーブル13上に固設された容器入れカゴ22の正面左右の縦桟22b,22cを外し、容器入れカゴ22の正面を開口する。
【0020】
次いで、洗浄が終わった後の濡れたパレットPを上記開口部から容器入れカゴ22内に搬入し、図7に示すように、複数個のパレットPをカゴ内にバランスよく積み上げて載置した後、再び縦桟22b,22cを取り付けて容器入れカゴ22の正面開口部を閉じるとともに、開閉扉23も閉じる。
【0021】
上記のようにしてパレットの収納が終わったら、操作盤26を操作し、モーター18を駆動開始する。モーター18が回転駆動されると、モーターの回転はプーリー19,ベルト17,プーリー16を介してターンテーブル13の回転軸14に伝達され、ターンテーブル13を所定の速度(例えば、120回転/分)で高速回転する。
【0022】
ターンテーブル13が高速回転を開始すると、ターンテーブル13上の容器入れカゴ22内に収容されているパレットPに大きな遠心力が作用し、パレットに付着している水分が振り落とされて脱水される。脱水された水分は四角形筒状ケース12の内壁下縁部の水受け皿25で受け取られ、外部へと排出される。
【0023】
さらに、本発明の場合、ターンテーブル13上に長方形状の容器入れカゴ22が立設されているので、ターンテーブル13の回転に伴って長方形状の容器入れカゴ22がプロペラ作用を発揮し、四角形筒状ケース12内の空気を強力に攪拌する。一方、ターンテーブル13と容器入れカゴ22の外周囲を囲むケース12は、平面視四角形をした筒状体とされているので、容器入れカゴ22の回転に伴って容器入れカゴ22と四角形筒状ケース12の内壁面との間の間隔が周期的に変化し、四角形筒状ケース12内の空気の圧力は各部において周期的にプラス、マイナスに大きく変動する。
【0024】
この大きな圧力変動の結果、四角形筒状ケース12内の空気は、回転する容器入れカゴ22に押されてターンテーブル13の回転方向に流れるだけでなく、図8に示すように、ターンテーブル13の中心方向、すなわち容器入れカゴ22の方向にも流れ込んでいき、容器入れカゴ22の内部にも流れ込むようになる。このため、容器入れカゴ22内のパレットPは、遠心力による脱水だけでなく、上記流れ込んでくる空気によっても乾燥処理される。この結果、本発明装置によれば、洗浄後の濡れたパレットを確実に脱水・乾燥し、極めて短時間のうちに乾かすことができる。
【0025】
なお、ターンテーブル13が回転すると、ターンテーブル13の下面に取り付けられた空気導入羽根20の作用によって、図2中に矢印で示すように、乾燥用の空気が四角形筒状ケース12の下部開口からケース内に流れ込み、ケースの上部開口を通って外部へ排出されるので、常に新鮮な空気を取り入れながら上記乾燥処理を実行することができる。
【0026】
ちなみに、本発明者らの実験によれば、四角形筒状ケース12の下部開口から流れ込む空気の湿度が40〜60%のとき、上部開口から排出される空気の湿度は50〜80%であった。この湿度差の分が上記圧力変動による乾燥処理によってパレット表面から蒸発した水分の量に相当するものである。
【0027】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、発明の主旨の範囲内において変形、変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、容器入れカゴ22を細板状の桟22aを用いて構成したが、これに限られるものではなく、カゴとしての形状を保ち、かつ、カゴ内に外部から空気が自由に出入りできるものである限り、他の部材を用いて構成してもよいものである(例えば、梁等の部分を金属骨材、カゴの各面を金属網)。
【0028】
また、上記実施の形態では、ターンテーブル13を円形状としたが、円形状に限らず、例えばターンテーブル上に固設された容器入れカゴ22の平面視形状と
同じ長方形状のターンテーブルとしても何ら問題ない。
【0029】
さらに、容器入れカゴ22の正面開口部の開閉を左右1対の縦桟22b,22cの取り付け・取り外しによって行うように構成したが、開閉機構はこれに限定されるものではなく、パレット等の物品搬送用容器を容器入れカゴ22内に出し入れできるとともに回転時に容器が外へ飛び出さない限り、どのような開閉機構を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態に係る脱水乾燥装置の全体形状を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】図1(a)中のII-II線断面図である。
【図3】図1(a)中のIII-III線断面図である。
【図4】ターンテーブルの構造を示すもので、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【図5】ターンテーブル上に固設された容器入れカゴの構造を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図6】容器入れカゴの物品出し入れ用開口部の開閉機構を示す図である。
【図7】容器入れカゴ内へのパケットの積載例を示す図である。
【図8】ターンテーブル回転時における円筒形状ケース内の空気の流れの説明図である。
【符号の説明】
【0031】
11 装置基台
12 円筒形状ケース
13 ターンテーブル
14 回転軸
15 軸受けケース
16 プーリー
17 プーリーベルト
18 モーター(回転駆動手段)
19 プーリー
20 空気導入羽根
21 支持ローラ
22 容器入れカゴ
23 開閉扉
24 レール
25 水受け皿
26 操作盤
P パレット(物品搬送用容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心位置を軸心として水平方向回転自在に配置されたターンテーブルと、
該ターンテーブルを所定の速度で回転駆動する回転駆動手段と、
パレット等の物品搬送用容器を収納して載置するための前記ターンテーブル上に固定配置された平面視長方形状になる容器入れカゴと、
前記回転するターンテーブルと容器入れカゴの外周囲を囲む平面視四角形状になる四角形筒状ケースとを備えたことを特徴とする物品搬送用容器の脱水乾燥装置。
【請求項2】
前記ターンテーブルの下面に、四角形筒状ケース内へ外部空気を導入するための空気導入羽根を設けたことを特徴とする請求項1記載の物品搬送用容器の脱水乾燥装置。
【請求項3】
前記四角形筒状ケースの正面部に物品搬送用容器を出し入れするための開閉扉を設けるとともに、前記容器入れカゴの正面部に物品搬送用容器を出し入れするための開閉機構を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の物品搬送容器の脱水乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−65858(P2010−65858A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229977(P2008−229977)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(592156046)
【Fターム(参考)】