説明

物品搬送装置

【課題】段積みされた物品をエレベータの収容空間の内奥にまで送り込むための、複雑な構造の送り込み装置や、予備的な操作も必要もなく、構造簡単で便利に用いることのできる物品搬送装置を提供する。
【解決手段】エレベータ3の収容空間Sの入り口箇所に、上下軸芯y周りで揺動作動して、収容空間Sを外部に開放した開放状態と、外部に対して区画する閉塞姿勢とに姿勢切り換え可能な開閉扉40を設け、その開閉扉40の扉内面側に、収容対象の段積み物品の押し込み方向での後面側に接触して収容空間Sの内奥側へ押し込み可能な押圧部45を備えさせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段に積み重ねられた物品を収容して垂直昇降させるエレベータを備えた物品搬送装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように、多段に積み重ねられた物品を収容して垂直昇降させるエレベータを備えた物品搬送装置としては、下記[1]又は[2]に記載のものが知られている。
【0003】
[1] 段積みされた育苗箱群を収容して垂直昇降させるエレベータを備え、そのエレベータの前記育苗箱群を収容する収容空間の手前に、階上のストックコンベアから送り込まれた育苗箱群を載置支持するベルトコンベアを備え、そのベルトコンベアからエレベータ側へ育苗箱群を送り込み、エレベータで降下させた育苗箱群を階下の供給機へ送り出すようにした物品搬送装置(特許文献1参照)。
[2] 階上で段積みされた育苗箱群を収容する育苗箱群供給コンベア及び順送コンベアを経て、ローラーコンベアからなる押出しコンベアに育苗箱群を搬送し、その押出しコンベア上の育苗箱群を、育苗箱群の上方側位置に配設された送り出しユニットでエレベータ内の収容空間へ送り込み、エレベータで降下させた育苗箱群を階下の育苗箱供給装置へ送り出すようにした物品搬送装置(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−127668号公報(段落番号〔0002〕、図1参照)
【特許文献2】特開平9−156766号公報(段落番号〔0029〕、〔0035〕、図11、図12参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記[1]に示すように特許文献1に記載の構造のものでは、エレベータの手前側のベルトコンベアから、エレベータ内の収容空間へ育苗箱群を送り込む際に、手前のベルトコンベアの動力だけでは十分に収容空間の内奥にまで育苗箱群を送り込むことができず、何らかの補助的な送り込み手段や、人手による送り込み操作が必要であった。
【0006】
上記[2]に示すように特許文献2に記載の構造のものでは、押出しコンベア上の育苗箱群をエレベータ内の収容空間へ送り込むための専用の送り込み手段として、育苗箱群の上方側位置に配設された送り出しユニットを備えている。したがって、収容空間の内奥にまで育苗箱群を送り込むことはできるが、そのための専用の装置が必要となり、構造の複雑化、大型化を避けにくいものであった。また、送り出しユニットが育苗箱群の上部に作用するものであるため、送り込み操作中に育苗箱群の姿勢が乱れないように予め段積みされた育苗箱群の姿勢を整えておく必要があった。
【0007】
本発明の目的は、段積みされた物品をエレベータの収容空間の内奥にまで送り込むに際して、複雑な構造の送り込み装置を必要とせず、また、段積みされた物品の姿勢を予め整えてから送り込み操作を行うような、予備的な操作も必要もなく、構造簡単で便利に用いることのできる物品搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明による物品搬送装置では、下記の技術手段を講じたものである。
〔解決手段1〕
本発明の物品搬送装置は、段積みされた物品を収容して垂直昇降させるエレベータを備え、このエレベータの前記物品を収容する収容空間の入り口箇所に、上下軸芯周りで揺動作動して、前記収容空間を外部に開放した開放状態と、外部に対して区画する閉塞姿勢とに姿勢切り換え可能な開閉扉を設け、その開閉扉の前記閉塞姿勢で収容空間内に向く扉内面側に、収容対象の段積み物品の押し込み方向での後面側に接触して収容空間の内奥側へ押し込み可能な押圧部を備えさせたものである。
【0009】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1で示した本発明の構成によると、上下軸芯周りで揺動作動して、収容空間を外部に開放した開放状態と、外部に対して区画する閉塞姿勢とに姿勢切り換え可能な開閉扉を、収容空間の入り口箇所に設け、その開閉扉の扉内面側に押圧部を備えさせたものであるから、扉の閉じ操作を物品の押し込み操作に利用することができる。
つまり、エレベータ内の収容空間よりも手前まで搬送してくる搬送装置では、その物品を完全にエレベータ内の収容空間の所定箇所に到達する位置までは押し込むことができないので、何らかの補助的な押し込み手段か人為操作での押し込み作業が必要となる。
しかしながら、従来技術で示したような物品群の上部に作用する送り出しユニットを設けると装置の大型化を招いたり、段積みされた物品の姿勢乱れが生じたりする虞がある。また、人為操作による押し込み作業では、多数の人手を要し非能率的な作業となる虞がある。
これに比べて本発明のものでは、エレベータ内の収容空間を外部と区分けするための開閉扉自体が段積み物品に対する押圧操作具となり、収容対象の段積み物品の押し込み方向での後面側に接触して段積み物品を押し操作するので、比較的小型で構造簡単なものでありながら、段積み物品の上部に作用する構造のものに比べて、押し込み操作に際しての姿勢乱れが生じる虞も少なくて済む。
【0010】
したがって、装置全体の構造の複雑化や大型化を避けながら、簡単な操作で段積み物品の姿勢乱れを生じる虞も少なくエレベータ内の収容空間の所定箇所に段積み物品を押し込むことが可能となる利点がある。
【0011】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項2に記載のように、開閉扉は、収容空間の入り口の左右両側のそれぞれに位置する上下軸芯周りで揺動作動するように、観音開き式に構成されている点に特徴がある。
【0012】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記のように、解決手段2にかかる本発明の物品搬送装置では、開閉扉が、収容空間の入り口の左右両側のそれぞれに位置する上下軸芯周りで揺動作動する観音開き式に構成されたものであるから、収容空間の入り口の左右何れか一方側に位置する上下軸芯周りで揺動作動する開閉扉である場合に比べて、収容対象の段積み物品を左右バランス良く押し込み操作し易いものである。
つまり、開閉扉が収容空間の入り口の左右何れか一方側に位置する上下軸芯周りで揺動作動する開閉扉である場合には、扉内面側に形成される押圧部の段積み物品に対する接触点位置は、前記上下軸芯周りの円弧軌跡に沿って移動する。このため扉内面側の押圧部を、収容空間の入り口の左右方向での中央位置に形成しても、段積み物品に対する押圧部の接触点位置は、開閉扉の開閉動作にともなって段積み物品の左右方向で位置移動し、また、押圧箇所での力線の方向も変化して、段積み物品を収容空間の中央位置へ向けて正確に押圧し難い傾向がある。
これに比べて、開閉扉が収容空間の入り口の左右両側のそれぞれに位置する上下軸芯周りで揺動作動するように、観音開き式に構成した本発明のものでは、左右の各押圧部のそれぞれが左右の各上下軸芯周りで揺動作動し、押圧箇所での力線の方向も互いに左右横方向への分力が打ち消し合う方向であって、段積み物品を横移動させるような作用力が発生し難いので、左右バランス良く収容空間の中央側箇所へ向けて押圧し易いという利点がある。
【0013】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項3に記載のように、扉内面側の押圧部には、収容空間側へ移動する物品を、開閉扉の開放状態で収容空間の入り口箇所における左右方向での横移動を規制するガイド面を形成してある点に特徴がある。
【0014】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記のように、解決手段3にかかる本発明の物品搬送装置では、扉内面側の押圧部に、開閉扉の開放状態で収容空間の入り口箇所における左右方向での横移動を規制するガイド面を形成してあって、収容空間側へ移動する物品の横移動を規制するようにしてある。
したがって、エレベータ内の収容空間の手前位置まで搬送されてくる段積み物品が、搬送途中で左右方向へ横移動しかけた際に、その横移動を前記ガイド面で規制することができる。そして、段積み物品が横移動を規制されて所定位置にある状態で押圧部による押圧作用を受けることができるので、収容空間への押し込みを所期どおりに行い易くなる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】育苗箱搬送装置の全体側面図である。
【図2】育苗箱搬送装置の全体正面図である。
【図3】育苗箱搬送装置の上階側の側面図である。
【図4】育苗箱搬送装置の上階側の側面図である。
【図5】育苗箱搬送装置の上階側の側面図である。
【図6】育苗箱搬送装置の上階側を示す図3におけるVI-VI線断面図である。
【図7】育苗箱搬送装置の上階側を示す図5におけるVII-VII線断面図である。
【図8】育苗箱搬送装置の上階側を示す図5におけるVIII-VIII線断面図である。
【図9】育苗箱搬送装置の上階側を示す図5におけるIX-IX線断面図である。
【図10】育苗箱搬送装置の上階側を示す図5におけるX-X線断面図である。
【図11】載置支持装置の下降位置での作動状態を示す正面視での説明図であり、(a)は係止体が育苗箱群の最下段の育苗箱を支持した載置姿勢で下降する過程を示し、(b)は下降して階下の育苗箱に接当し押し上げられる過程を示し、(c)は育苗箱群の最下段の育苗箱から外れた退避姿勢を示す。
【図12】載置支持装置の上昇位置での作動状態を示す正面視での説明図であり、(a)は係止体が育苗箱群の支持を解除した退避姿勢で上昇する過程を示し、(b)は所定の上階位置に達して係止体が載置態勢に復元した状態を示す。
【図13】育苗箱搬送装置の上階側における開閉扉部分の正面図である。
【図14】育苗箱搬送装置の上階側における育苗箱群の収容空間への収納過程を示す説明図であり、(a)は育苗箱群が搬送コンベア上に位置する状態を示し、(b)は育苗箱群に対する搬送コンベアによる搬送作用の終了直前の状態を示し、(c)は搬送コンベアによる搬送作用が終了した直後の状態を示し、(d)は育苗箱群が収容空間に収納された状態を示す。
【図15】育苗箱搬送装置の階下側の側面図である。
【図16】育苗箱搬送装置の階下側の正面図である。
【図17】育苗箱搬送装置の階下側を示す図16におけるXVII-XVII線断面図である。
【図18A】落下供給装置における背面視での連係駆動機構の作動状態を示す説明図であり、下部爪が育苗箱群を係止し、上部爪が育苗箱群から外れた状態を示す。
【図18B】落下供給装置における背面視での連係駆動機構の作動状態を示す説明図であり、上部爪が育苗箱群を係止し、下部爪が育苗箱群から外れた状態を示す。
【図19】落下供給装置の作動状態を示す正面図であり、(a)は下部爪が育苗箱群を係止し、上部爪が育苗箱群から外れた状態を示し、(b)は上部爪が育苗箱群を係止し、下部爪が育苗箱群から外れた状態を示す。
【図20】落下供給装置の作動状態を示す側面視での作用説明図であり、(a)は下部爪が育苗箱群を係止し、上部爪が育苗箱群から外れた状態を示し、(b)は上部爪が育苗箱群を係止し、下部爪が育苗箱群から外れた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
【0017】
〔物品搬送装置の全体構成〕
物品搬送装置の一例として、物品の一例である育苗箱20を段積みした育苗箱群2Aを降下搬送する育苗箱搬送装置1を示す。
この育苗箱搬送装置1は、図1及び図2に示すように、建物の1階に設けられた播種プラント1Aと、2階に設けた播種プラント用の育苗箱供給部2とを備える播種センターに適用されたものであり、育苗箱搬送用のエレベータとしての役割を備えている。つまり、2階の育苗箱供給部2と1階の播種プラント1Aとの間で、搬送対象物品としての育苗箱20を上階の育苗箱供給部2から階下の播種プラント1A側に降下搬送するように構成されている。
【0018】
播種プラント1Aは、育苗箱20を搬送する播種コンベア1Bの上方に、床土供給装置(図外)、灌水装置(図外)、播種装置(図外)及び覆土装置(図外)などを設けて構成されている。
育苗箱供給部2は、搬送コンベア21を備え、この搬送コンベア21に、多段に積層(例えば30箱)した育苗箱20から成る育苗箱群2Aを、多数箇所に載置して育苗箱群2Aの列を形成し、育苗箱搬送装置1に向けて搬送するように構成してある。
【0019】
育苗箱搬送装置1は、1階の播種プラント1Aから2階の育苗箱供給部2に亘って立設された構造枠体10の内部で、エレベータ3として、育苗箱群2Aを搭載可能な昇降枠30を昇降移動させるように構成してある。
そして、この育苗箱搬送装置1では、前記エレベータ3に育苗箱群2Aを送り込む育苗箱供給部2側から、エレベータ3内部の収容空間Sを、育苗箱20の搬送方向上流側の外部空間と区画するための扉装置4が設けてある。
また、この育苗箱搬送装置1は、構造枠体10の下部側に、下降させた昇降枠30内の育苗箱群2Aを受け取って、段積み状態にある育苗箱群2Aから、最下段の育苗箱20を一箱ずつ取り出して播種コンベア1B側へ受け渡すための落下供給装置5を備えている。
【0020】
〔エレベータ〕
エレベータ3は、1階の播種プラント1Aから2階の育苗箱供給部2に亘って立設された構造枠体10の内部で、昇降作動する昇降枠30を備え、この昇降枠30をチェーン駆動機構31によって昇降作動させるように構成してある。
【0021】
チェーン駆動機機構31は、構造枠体10の上部に固定された電動モータ32と、その電動モータ32の出力スプロケット32aに係合し、かつ一端側が昇降枠30に、他端側がバランスウェイト34に連結されている駆動チェーン33、及び前記バランスウェイト34を備え、電動モータ32の正逆転駆動により、昇降枠30とバランスウェイト34とを背反的に昇降作動させるように構成してある。
前記バランスウェイト34は、昇降枠30とその収容空間S内に搭載された物品の重量との総和にバランスする程度の所定重量、この場合は30段の育苗箱20を積み込んだ昇降枠30の重量とバランスする程度の重量に設定されている。
【0022】
昇降枠30は、前記収容空間Sの前記扉装置4に面する側とは反対側箇所で、構造枠体10に設けられた上下に長いガイドレール12に対して、ガイドローラ36a,36bを介して前後左右の水平方向移動を規制された状態で昇降移動するように構成されている。
【0023】
すなわち、図3乃至図8に示すように、構造枠体10の上下方向で前記駆動チェーン30に吊設されたバランスウェイト34を内嵌して摺動案内する角筒状の案内枠11が設けてあり、この案内枠11に平板状部材11Aを溶接して、その平板状部材11Aの前記案内枠11から左右両側に突出する部分をガイドレール12として利用するように構成してある。
【0024】
そして、昇降枠30側には、前記ガイドレール12を左右両側から挟む位置に、上下に長い断面L字状のガイドブラケット35が溶接固定されている。このガイドブラケット35には、図3乃至図7に示すように、ガイドレール12を前後両側から挟み込むように、左右向きの横軸芯P1周りで回動する前後一対のガイドローラ36a,36aが、ガイドレール12の左右両側で、かつ、上下2箇所にも距離を隔てて設けてある。
また、前記ガイドブラケット35には、前記左右向きの横軸芯P1周りで回動するガイドローラ36a,36aが配設された箇所とは上下方向で異なる位置に、図3乃至図5、及び図8に示すように、前後向きの横軸芯P2周りで回動するガイドローラ36b,36bが、前記ガイドレール12の左右両側辺に対向して、左右両側から挟み込む状態で上下2箇所に設けてある。
【0025】
このように、左右向きの横軸芯P1周りで回動する前後一対のガイドローラ36a,36aでガイドレール12を前後両側から挟み込むことによって昇降枠30の前後移動を規制し、前後向きの横軸芯P2周りで回動するガイドローラ36b,36bで前記ガイドレール12を左右両側から挟み込むことによって昇降枠30の左右方向の移動を規制するように構成されている。
そして、これらの各ガイドローラ36a,36bが、上下に位置を隔てて2箇所に設けてあることにより、昇降枠30の鉛直線に対する傾きをも規制しながら昇降移動させることができるものである。
【0026】
〔収容空間〕
昇降枠30内の収容空間Sは、次のように構成されている。
図3乃至図10に示すように、収容空間Sのうち、扉装置4の存在箇所に近い入り口側では、育苗箱群2Aの左右方向幅よりもやや広めに間隔設定された横規制板30aが昇降枠30に取り付けてあり、この横規制板30aによって育苗箱群2Aの左右方向位置が、左右から挟み込まれた状態で規制されている。
【0027】
収容空間Sの内奥側では、育苗箱群2Aの左右両側と、内奥端側との両側位置を規制するように、断面L字状に形成された奥側規制板13が、昇降枠30と接触する位置を避けて構造枠体10に固定されている。つまり、この奥側規制板13は、収容空間S内に収容された育苗箱群2Aの位置規制を行うものではあるが、昇降枠30には固定されていず、昇降枠30、及びその昇降枠30内の育苗箱群2Aの相対移動を許すように構成されている。
【0028】
上記収容空間Sの入り口側である前端縁S1側は、図5乃至図7に示すように、昇降枠30の前端縁30bと面一、もしくはやや前方側へ突出して設けられている。これは、収容空間Sの前端縁S1に位置する育苗箱群2Aの入り口側の端縁に対して、後述する扉装置4での育苗箱群2Aの押し込み作用を有効に働かせるためと、図3乃至図5に示す前規制板14による育苗箱群2Aの前方側位置を規制する作用が有効に働くようにするためである。
つまり、前規制板14は、平板状の板材からなり、図3乃至図5に示すように、昇降枠30が2階の育苗箱供給部2に対応して位置している状態では何の機能も有していないが、昇降枠30が下降してくると、収容空間Sの前端縁S1に対向して、下降移動中の育苗箱群2Aの前方側への位置移動を規制するように作用する。
【0029】
〔載置支持装置〕
昇降枠30内における収容空間Sの下面側は次のように構成されている。
昇降枠30は、その下方側が開放されていて、下方から育苗箱群2Aを取り出し可能に構成されているものであるが、図3乃至図6、及び図10乃至図12に示すように、昇降枠30の下部で収容空間S内の育苗箱群2Aを下側から支持するように、載置支持装置37が設けられている。
この載置支持装置37は、収容空間S内に収容された育苗箱群2Aの底面側を、左右両側部で受け止め支持する係止体38と、その係止体38を、育苗箱群2Aを載置支持する載置姿勢と、載置支持を解除した退避姿勢とのそれぞれの姿勢に弾性付勢する付勢バネ39とを備えて構成されている。
【0030】
前記係止体38は、前後向きの水平方向軸芯P3周りで昇降枠30の左右両側下部に回動自在に枢支された横軸38bと一体に形成されていて、水平方向軸芯P3周りで上下揺動自在に構成されている。この水平方向軸芯P3周りの上下揺動による姿勢切り換えで、収容空間Sの育苗箱群2Aを載置支持するように載置面38aを水平にした載置姿勢と、載置面38aが収容空間Sの下部から外れて載置支持を解除された退避姿勢とに姿勢変更可能に構成されている。
【0031】
上記の係止体38の姿勢変更は、図10乃至図12に示すようにして行われる。
係止体38と一体の横軸38bは、その一端側にクランク状のアーム部38cを備え、他端側に付勢バネ39の一端側が連結されるバネ受け片38dを一体に装備している。
昇降枠30が最上昇位置にあって、育苗箱供給部2に対応して位置している状態では、前記アーム部38cが構造枠体10側に固定された接当ピン15に接当して、図10、及び図12(b)に示すように、係止体38の載置面38aは水平姿勢になり、育苗箱群2Aを載置支持可能な載置姿勢となる。
この載置姿勢で収容空間Sに育苗箱群2Aが搬入されると、図5に示すように育苗箱群2Aが昇降枠30内の収容空間Sに収容された状態となる。
【0032】
載置姿勢から昇降枠30を下降させると、係止体38の傾斜下縁38eが、階下に位置する育苗箱20に接当するまでは、図11(a)に示すように下降中にも載置面38aが水平な載置姿勢を維持している。図11(b)に示すように、係止体38の傾斜下縁38eが、階下に位置する育苗箱20に接当すると、その育苗箱20に押し上げられて係止体38が水平方向軸芯P3周りで上方側へ揺動し、図11(c)及び図12(a)に示すように、収容空間Sの下部から外れた退避姿勢に姿勢変更される。
この退避姿勢では、横軸38bに固定のバネ受け片38dに連結された付勢バネ39の連結点39aが、図12(a)中で、デッドポイントとなる水平方向軸芯P3の左側に位置している。したがって係止体38は、付勢バネ39の引っ張り側への弾性付勢作用により水平方向軸芯P3周りで時計回りに回動付勢され、昇降枠30の一部に接当して退避姿勢に維持される。これによって、昇降枠30の上昇の際に、その退避姿勢を維持した状態で係止体38が、降下させた育苗箱群2Aに引っ掛かることなく上昇作動する。
【0033】
そして、昇降枠30が上限位置まで上昇して、上階の育苗箱供給部2に対応して位置する状態になると、図12(b)に示すように、係止体38の横軸38bのアーム部38cが構造枠体10に固定されている接当ピン15に接当して水平方向軸芯P3周りで反時計回りに押し戻し、係止体38を載置面38aが水平となる載置姿勢となるように姿勢変更する。
この状態では、図12(b)に示すように、横軸38bに固定のバネ受け片38dに連結された付勢バネ39の連結点39aが、デッドポイントとなる水平方向軸芯P3の右側に移行する。この状態では、付勢バネ39の付勢力は係止体38を反時計回りに回動させるように付勢する方向に作用し、係止体38の載置面38a側の一部が昇降枠30の下部接当部30cに接当して姿勢規制される。
【0034】
この育苗箱搬送装置1では、図3〜図5、及び図9に示すように、構造枠体10側にストッパーピン16を取り付け、昇降枠30側に係止孔30d設けて、昇降枠30が上限位置まで上昇して、上階の育苗箱供給部2に対応して位置する状態になると、前記ストッパーピン16を係止孔30dに対して係脱操作するための伸縮駆動装置17を備えている。 このストッパーピン16と係止孔30dとの係入は、誤操作による昇降枠30の昇降作動を抑止する状態と、その抑止操作を解除するためのものであり、伸縮駆動装置17としては、油圧シリンダや空気圧シリンダ、あるいは電磁ソレノイドで移動させるものなど、適宜構造のものを採用すればよい。
【0035】
〔扉装置〕
上記のエレベータ3内部の収容空間Sの入り口側に相当する構造枠体10には、前記収容空間Sを育苗箱群2Aの搬送方向での上流側の外部空間と区画するための扉装置4を設けてある。
この扉装置4は、図3乃至図10、及び図13に示すように、上下軸芯y周りで回動可能な左右一対の開閉扉40と、その開閉扉40を前記上下軸芯y周りで開閉操作する開閉駆動装置41とで構成されている。
【0036】
開閉駆動装置41は、構造枠体10の天井部近くに筒部42aを固定され、ロッド部42bを収容空間Sの入り口側に向けて伸縮自在に延出した油圧シリンダ42と、その油圧シリンダ42の前記ロッド部42bの前端部に固定されたアーム部材43と、そのアーム部材43の左右各端部と左右の各開閉扉40の内面側とのそれぞれを連結したリンク部材44とで構成されている。
前記油圧シリンダ42の作動は、人為的に操作可能な操作スイッチ(図外)の操作によって伸縮作動させるように構成してある。
【0037】
開閉扉40は、収容空間Sの入り口側において、収容空間Sの左右端部近くにおける構造枠体10に対して、左右両側の上下方向軸芯y周りで、左右の開閉扉40がそれぞれ揺動自在に枢着されて観音開き式に構成されている。
この左右の開閉扉40のそれぞれの内面側(収容空間S側)には、収容空間Sに収容される物品であるところの段積みの育苗箱群2Aを押し込むための押圧部45を設けてある。
【0038】
この押圧部45は、図5、図6、及び図10に示すように、上下方向では収容空間Sのほぼ全域に亘る上下長さを有し、平面視では、上下軸芯yが存在する側よりも上下軸芯yから離れた反対側の端部側に寄せて扉内面側に膨出形成されている。
【0039】
図4及び図6に示すように、押圧部45の一部には、育苗箱供給部2における搬送コンベア21が育苗箱群2Aを収容空間S側へ搬送する際に、その搬送コンベア21側の側部ガイド23が横移動を規制するように案内する範囲から収容空間S側寄りに外れた領域で、育苗箱群2Aの搬送方向に直交する左右方向での移動を規制するガイド面45aを形成してある。
このガイド面45aは、図6に示すように、上下軸芯yと側部ガイド23とを結ぶ仮想線分にほぼ沿う方向で、側部ガイド23側ほど少し外側に広がり、上下軸芯y側ほど狭まるように傾斜した姿勢となる位置で、搬送コンベア21で搬送される育苗箱群2Aの横移動を規制するように構成されている。
【0040】
押圧部45には、前記ガイド面45aよりも上下軸芯yから遠い箇所に、遊端側案内面45bが設けられ、ガイド面45aの上下軸芯yに近い側の端部にはガイド支持板45cが設けてある。
前記遊端側案内面45bは、図6に示す搬送コンベア21による育苗箱群2Aの搬送中における案内姿勢では搬送コンベア21上の搬送経路の外側で外向きに広がり、図7に示す育苗箱群2Aの収容空間Sへの押し込み姿勢では、収容空間Sの前端縁S1に平行な姿勢となるように形成されている。
前記ガイド支持板45cは、図6及び図7に示すように、開閉扉40の開閉操作に際して、押圧部45のガイド面45aが、前記開閉駆動装置41のリンク部材44との干渉を避けた位置に形成されるように設けてある。
【0041】
前記押圧部45は、図5、図6、及び図10に示すように、搬送コンベア21の押し込みローラ22による押し出し作用が及ばなくなって、育苗箱群2Aに対する搬送力が消失する位置aから、収容空間Sの入り口側端位置bに至る範囲L1で、育苗箱群2Aに対して収容空間S側への押し込み作用力を付与するように構成されている。
つまり、開閉扉40は、図6に示す育苗箱群2Aの横ズレを規制する状態から、図7に示す閉塞姿勢にまで作動するように、前記開閉駆動装置41による作動範囲を定めてあるが、前記押圧部45が存在しなけば、図10に示すように、育苗箱群2Aに対する搬送力が消失する位置aから、開閉扉40が閉塞する位置cまでの範囲L2でしか、開閉扉40による閉じ方向の動きを育苗箱群2Aの搬送のために用いることができない。
これに比べて、本発明のものでは、図10に示す押圧部45の膨出量L3を開閉扉40に備えさせたので、育苗箱群2Aに対して、前記搬送コンベア21による搬送力が消失する位置aから、収容空間Sの入り口側端位置bに至る全範囲L1で、開閉扉40による閉じ方向の動きを、収容空間S側への押し込み作用力として付与することが可能となる。
【0042】
前記育苗箱供給部2における搬送コンベア21から収容空間Sに育苗箱群2Aを受け渡す箇所での、育苗箱群2Aの姿勢と関連装置との動作について説明する。
図10及び図14(a)に示すように、構造枠体10の最前部に位置する前端側枠部材10aを挟んで、その前方側に搬送コンベア21の終端に位置する終端ローラ24が備えられ、前端側枠部材10aの後方側に収容空間Sの入り口側に位置する導入案内ローラ18が設けられている。
ここで、各箇所の相対的な高さ関係を図14に示すと、前記導入案内ローラ18の高さh1が最も高く、次いで搬送コンベア21の搬送面の高さh2が高く、その次に前記終端ローラ24の高さh3が高く、載置支持装置37の係止体38の載置面38aの高さh4が最も低くなるように位置設定されている。尚、構造枠体10の前端側枠部材10aの上面は、前記導入案内ローラ18と終端ローラ24との間に位置して、その何れよりも低いので、育苗箱群2Aの底面と接する可能性はほとんど無い。
【0043】
図14(a)に示す状態から、搬送コンベア21が育苗箱群2Aを収容空間S側(図中右側)へ搬送していくと、図14(b)に示すように、搬送コンベア21による搬送力が消失する直前には、育苗箱群2Aの底面が前記導入案内ローラ18と終端ローラ24とに乗り上げた状態となる。
この状態では、育苗箱群2Aの底面は搬送方向の前方側が高い導入案内ローラ18に乗り上げ、後方側が低い終端ローラ24上に位置し、育苗箱群2Aの重心が導入案内ローラ18の軸芯を通る鉛直線y1を越えていないので、前方側が高く後方側が低い後傾姿勢の状態で押し込みローラ22による搬送作用を受ける状態となっている。
その後、搬送コンベア21の押し込みローラ22による押し込み作用が消失した時点では、図14(c)に示すように、育苗箱群2Aの底面は搬送方向の前方側が低い係止体38の載置面38aに乗り、後方側が高い導入案内ローラ18上に位置して、前方側が低く後方側が高い前傾姿勢となって、育苗箱群2Aの重心が導入案内ローラ18の軸芯を通る鉛直線y1を越えている。
【0044】
つまり、搬送コンベア21の押し込みローラ22による押し込み作用が及ぶ範囲の最終段階では、育苗箱群2Aの重心が導入案内ローラ18の前側にある状態から後側にある状態に移行する過程で押し込み作用力が働いている。
したがって、押し込み作用を受ける育苗箱群2Aの底面が、摩擦抵抗の大きい係止体38の載置面38aに接触している状態で押し込み作用力が消失すると、その押し込み作用力が消失した時点の位置で育苗箱群2Aの移動は停止するが、育苗箱群2Aの底面が、摩擦抵抗の大きい係止体38の載置面38aに接触する前であれば、押し込み作用力が消失しても、育苗箱群2Aの移動慣性が働く距離だけ、押し込み作用が及ぶ範囲よりも遠くまで移動させることができる。
このように、搬送コンベア21の押し込み作用力が及ぶ範囲をできるだけ収容空間Sに近付けながらも、なお押し込み作用力が及ばない箇所で、育苗箱群2A自体の移動慣性を有効利用して、より収容空間Sに近付けるように工夫してある。
【0045】
このあと、扉装置4の開閉駆動装置41が作動して開閉扉40が閉じ側へ操作されると、図14(d)に示すように、押圧部45に押された育苗箱群2Aの全体が導入案内ローラ18を越えて収容空間Sへ押し込まれ、係止体38の載置面38a上に位置する状態となる。
【0046】
〔落下供給装置〕
育苗箱搬送装置1は、下降させた昇降枠30内の段積み状態にある育苗箱群2Aを受け取ったのち、段積み状態にある育苗箱群2Aから最下段の育苗箱20を一箱ずつ取り出すための落下供給装置5を備えている。
この落下供給装置5は、図15乃至図20に示すように、構造枠体10の下部側で下部取り付け枠19に装備され、段積み状態の育苗箱群2Aの最下段の育苗箱20を左右両側で載置支持する下部爪50と、下から2段目に位置する育苗箱20を左右両側で支持する上部爪51とを備えるとともに、これらの下部爪50と上部爪51とを連係移動させる連係駆動機構6と、上段側の育苗箱20と下段側の育苗箱20との間隔を広げる分離姿勢、及び分離姿勢を解除する分離解除姿勢とに姿勢切り換え可能に構成された間隔拡張機構7を備えて構成されている。
【0047】
下部爪50は、図15乃至図18A、図18Bに示すように、下部取り付け枠19に対して、前後向きの下部軸52を介して枢着してあり、下部軸52の軸芯である下部軸芯x1周りで揺動自在に構成されている。
この下部爪50は、図15乃至図18Aに示すように、最下段の育苗箱20の底面を載置させて支持する板状係止部50aと、その板状係止部50aの両端側を下部軸52に連結する腕杆部50bと、前記板状係止部50aの後方側で、後述する間隔拡張機構7を操作するように後方側へ延出された操作片50cとを備えている。
【0048】
上記の下部爪50は、図17及び図18A、図18Bに示すように、育苗箱群2Aを収容する収容空間Sの左右両側にそれぞれ位置させた一対のもので構成してあり、右側の下部爪50を取り付けた右側の下部軸52と、左側の下部爪50を取り付けた左側の下部軸52とのそれぞれには、下部連動リンク54a,54bが一体に取り付けてある。
図17及び図18A、図18Bに示すように、各下部連動リンク54a,54bは上面側が開放された断面U字状に形成されていて、右側の下部軸52に取り付けられた下部連動リンク54aには、連結用の長孔54cが、左側の下部軸52に取り付けられた下部連動リンク54bには、連結用のピン54dが装備されていて、ピン54dと長孔54cとによる融通のある連結構造によって、左右の下部爪50の揺動を許すように構成されている。
また、前記ピン54dの外周には第1ローラ54eが設けられていて、この第1ローラ54eが後述する連係駆動機構6の大径カム61と接触するカムフォロワーとしての役割を果たすように構成してある。
【0049】
上部爪51は、図15乃至図18A、図18Bに示すように、下部取り付け枠19に対して、前後向きの上部軸53を介して枢着してあり、上部軸53の軸芯である上部軸芯x2周りで揺動自在に構成されている。
この上部爪51には、図15乃至図18に示すように、下から2段目に位置する育苗箱20を左右両側で支持する板状係止部51aと、その板状係止部51aを上部軸53に連結する連結体51bと、後述する間隔拡張機構7とを備えている。
【0050】
上記の上部爪51は、図17及び図18A、図18Bに示すように、育苗箱群2Aを収容する収容空間Sの左右両側にそれぞれ位置させた一対のもので構成してあり、右側の上部爪51を取り付けた右側の上部軸53と、左側の上部爪51を取り付けた左側の上部軸53とのそれぞれには、上部連動リンク55a,55bが一体に取り付けてある。
図17及び図18A、図18Bに示すように、各上部連動リンク55a,55bは上面側が開放された断面U字状に形成されていて、右側の上部軸53に取り付けられた上部連動リンク55aには、連結用の長孔55cが、左側の上部軸53に取り付けられた上部連動リンク55bには、連結用のピン55dが装備されていて、ピン55dと長孔55cとによる融通のある連結構造によって、左右の上部爪51の揺動を許すように構成されている。
また、前記ピン55dの外周には第2ローラ55eが設けられていて、この第2ローラ55eが後述する連係駆動機構6の小径カム62と接触するカムフォロワーとしての役割を果たすように構成してある。
【0051】
下部爪50と上部爪51とを連係作動させる連係駆動機構6は次のように構成されている。
図15乃至図18A、図18Bに示すように、連係駆動機構6は、下部取り付け枠19に装備させた電動モータ60を動力源として備え、その電動モータ60からの出力軸60aに一体に装備させた大径カム61及び小径カム62とを備えている。
これらの大径カム61と小径カム62とのそれぞれに対応するカムフォロワーとして、前記下部連動リンク54a,54b側の第1ローラ54eと、上部連動リンク55a,55b側の第2ローラ55eを備え、さらに、前記下部連動リンク54a,54b側の第1ローラ54eを大径カム61側へ押し付け付勢するように、下部連動リンク54a,54bを上昇側へ引き上げ付勢する引っ張りバネ63と、前記上部連動リンク55a,55b側の第2ローラ55eを大径カム61側へ押し付け付勢するように、上部連動リンク55a,55bを上昇側へ引き上げ付勢する引っ張りバネ64とを備えている。
【0052】
前記出力軸60aに設けられる大径カム61及び小径カム62は、出力軸60aの軸芯x3を挟んで相反する方向に、それぞれのカムの長径方向を向けるように装着してあり、一方のカム(大径カム61又は小径カム62)の長径部が下向きであるときに、他方のカム(小径カム62又は大径カム61)は上向きであるように、180度位相をずらして取り付けてある。
したがって、図18Aに示すように、小径カム62の長径部が下向きとなり、大径カム61の長径部が上向きとなる状態では、上部連動リンク55a,55b側の第2ローラ55eが下方に押し下げられて、上部爪51が非作用姿勢に位置し、下部連動リンク54a,54b側の第1ローラ54eは、大径カム61の短径部に接当するように引っ張りバネ63で引き上げられて、下部爪50が作用姿勢となる。この状態が、上部爪51が非作用姿勢で、下部爪50で最下段の育苗箱20を載置支持する待機状態である。
【0053】
図18Bに示すように、大径カム61の長径部が下向きとなり、小径カム62の長径部が上向きとなる状態では、下部連動リンク54a,54b側の第1ローラ54eが下方に押し下げられて、下部爪50が非作用姿勢に位置し、上部連動リンク55a,55b側の第2ローラ55eは、小径カム62の短径部に接当するように引っ張りバネ64で引き上げられて、上部爪51が作用姿勢となる。この状態が、上部爪51で上段側の育苗箱20を載置支持して前記下部爪50による最下段の育苗箱20の載置支持を解除した供給状態である。
【0054】
〔間隔拡張機構〕
このように構成された落下供給装置5には、上段側の育苗箱20と下段側の育苗箱20との間隔を広げる分離姿勢と、その分離姿勢を解除する分離解除姿勢とに姿勢切り換え可能に構成された間隔拡張機構7が備えられている。
この間隔拡張機構7は、図15乃至図20に示すように、上部爪51に一体的に組み込まれた状態で設けてある。
【0055】
すなわち、図19及び図20に示すように、上部爪51の板状係止部51aの下側に、平板状の分離操作体70が重なる状態で位置させ、この分離操作体70と一体の操作軸71を、前記上部爪51の上部軸53との連結体51bの両側に設けたボス部51cに挿嵌して支持させている。
前記操作軸71の前記分離操作体70とは反対側に露出する部位には、ベルクランク72の中間箇所を固着してあり、両側の操作軸71のそれぞれに装着されたベルクランク72の互いに近い側の端部に、その端部同士を互いに近接する方向へ引き寄せる引っ張りバネ74を連結してある。
前記ベルクランク72の他端側には、前記操作軸71の軸芯z1と平行な軸芯z2周りで回動自在な受圧ローラ73を装着してあり、下部爪50の操作片50cの押し上げ操作に伴って操作軸71を回転させるように構成してある。
【0056】
このように構成された間隔拡張機構7は、図18A、図18B乃至図20に示すように作動する。
すなわち、図18Aに示すように、小径カム62の長径部が下向きとなり、大径カム61の長径部が上向きとなって、上部爪51が非作用姿勢に位置し、下部爪50が作用姿勢に位置している状態では、図19(a)、及び図20(a)に示すように、下部爪50によって育苗箱群2Aの底面側が支持され、上部爪51には育苗箱群2Aの荷重が作用していない。
この状態では、間隔拡張機構7は、図20(a)に示すように、両側のベルクランク72の互いに近い側の端部が引っ張りバネ74で引き寄せられ、操作軸71のうち、右側の操作軸71は時計回りに回転する方向へ付勢され、左側の操作軸71は反時計回りに回転する方向へ付勢される。
これに伴い、右側の分離操作体70は時計回りに回転する方向へ付勢されて板状係止部51aの下面側に押し付けられた姿勢で位置固定され、左側の分離操作体70は反時計回りに回転する方向へ付勢されて板状係止部51aの下面側に押し付けられた姿勢で位置固定される。
【0057】
そして、図18Bに示すように、小径カム62の長径部が上向きとなり、大径カム61の長径部が下向きとなって、上部爪51が作用姿勢に位置し、下部爪50が非作用姿勢に位置している状態では、図19(b)、及び図20(b)に示すように、上部爪51によって下から2段目に位置する育苗箱20がそれよりも上方側の育苗箱群2Aとともに支持され、下部爪50には育苗箱群2Aの荷重が作用していない。
この状態では、間隔拡張機構7は、図19(b)及び図20(b)に示すように、受圧ローラ73が、非作用姿勢側へ駆動された下部爪50の操作片50cと接当して押し上げられるため、引っ張りバネ74の付勢力に抗して右側の操作軸71が反時計回りに回転し、左側の操作軸71は時計回りに回転する。
これに伴い、右側の分離操作体70は反時計回りに回転し、左側の分離操作体70は時計回りに回転して、最下段の育苗箱20を、板状係止部51aで支持されている下から2段目に位置する育苗箱20から離れる下方側へ押し下げて、前記下から2段目に位置する育苗箱20との距離を強制的に広げるように作用する。
【0058】
このとき、左右の分離操作体70は、その間隔拡張の際の動作が、例えば、育苗箱群2Aに対して遠近方向で移動するように、向かい合う育苗箱群2Aの一つの面に沿う方向の水平軸芯周りで回動操作されるのではなく、向かい合う育苗箱群2Aの一つの面に直交する方向の水平軸芯を有した操作軸71の軸芯z1周りで回動するように構成されている。
したがって、分離操作体70の間隔拡張の際の動作は、育苗箱群2Aに対して遠近する方向には変化せず、その動作中における分離操作体70の育苗箱20との係合深さd(図19b参照)は、一定のままである。
これによって、分離操作体70による間隔拡張操作中における育苗箱20と分離操作体70との係合代を所定量に確保したままの状態で動作させることができ、この係合代が分離操作体70の動作中に漸次変化して所期の間隔拡張操作を的確に行えないというような不具合を生じる虞がない。
【0059】
〔別実施形態の1〕
開閉扉40を上下軸芯y周りで開閉操作する開閉駆動装置41の油圧シリンダ42の作動は、人為的に操作可能な操作スイッチ(図外)の操作によって伸縮作動させる構造のものに限らず、例えば、育苗箱供給部2の搬送コンベア21の適所に育苗箱群2Aの位置を検出するセンサを備えさせて、そのセンサの感知結果に基づいて開閉駆動装置41の油圧シリンダ42の作動を制御するようにしてもよい。
【0060】
〔別実施形態の2〕
エレベータ3のバランスウェイト34の重量は、昇降枠30の重量と育苗箱群2Aの重量との総和に対してバランスするような重量に限らず、例えば、昇降枠30の重量と同程度に設定されていてもよい。
つまり、エレベータ3が満杯状態に積載した状態でバランスするか、空荷の状態でバランスするように構成するか、その中間的な値でバランスするように構成するかは、適宜に設定すればよい。
【0061】
〔別実施形態の3〕
開閉扉40の開閉構造としては、実施の形態で説明した観音開き式の構造のものに限らず、例えば、収容空間Sの入り口箇所の左右何れか一方側の上下軸芯y周りで揺動する片開き式の開閉扉40であってもよい。
この場合は、押圧部45を収容空間Sの入り口箇所の左右方向での中間的な箇所に設けるのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の物品搬送装置は、播種センターにおける育苗箱群2Aをエレベータ3に収容する際の搬送のみならず、段積み状態で搬送される各種の物品の搬送装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 育苗箱搬送装置
2 育苗箱供給部
2A 育苗箱群
3 エレベータ
4 扉装置
5 落下供給装置
10 構造枠体
20 育苗箱
30 昇降枠
40 開閉扉
45 押圧部
45a ガイド面
S 収容空間
y 上下軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
段積みされた物品を収容して垂直昇降させるエレベータを備え、このエレベータの前記物品を収容する収容空間の入り口箇所に、上下軸芯周りで揺動作動して、前記収容空間を外部に開放した開放状態と、外部に対して区画する閉塞姿勢とに姿勢切り換え可能な開閉扉を設け、
その開閉扉の前記閉塞姿勢で収容空間内に向く扉内面側に、収容対象の段積み物品の押し込み方向での後面側に接触して収容空間の内奥側へ押し込み可能な押圧部を備えさせた物品搬送装置。
【請求項2】
開閉扉は、収容空間の入り口の左右両側のそれぞれに位置する上下軸芯周りで揺動作動するように、観音開き式に構成されている請求項1記載の物品搬送装置。
【請求項3】
扉内面側の押圧部には、収容空間側へ移動する物品を、開閉扉の開放状態で収容空間の入り口箇所における左右方向での横移動を規制するガイド面を形成してある請求項2記載の物品搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−178498(P2011−178498A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43082(P2010−43082)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】