説明

物品移載機の駆動制御方法及び物品移載機の駆動制御装置

【課題】温度を検出する温度検出手段、結露を検出する結露検出手段等の気象条件に係る検出手段を必要とすることなく、走行用モータや昇降用モータを気象条件に応じて適切に駆動制御することができる物品移載機の駆動制御方法及び物品移載機の駆動制御装置の提供にある。
【解決手段】複数の物品収容部を有する棚体12に沿うように軌道上を走行する走行台車20と、前記走行台車20に対して昇降自在の昇降体と、走行用モータ24及び昇降用モータ25と、前記両モータ24、25を駆動制御する駆動制御手段28を備えた物品移載機の駆動制御方法であって、予め提供される温度データ及び湿度データのうち少なくとも温度データを駆動制御手段28に入力し、入力データに応じて予め設定された複数の駆動モードからいずれかの駆動モードを選択し、選択された駆動モードにおける駆動パターンにより走行用モータ24及び昇降用モータ25を駆動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物品移載機の駆動制御方法及び物品移載機の駆動制御装置に関し、特に、周囲の気象条件に応じて物品移載装置を駆動制御する物品移載機の駆動制御方法及びその駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な物品移載機としては、例えば、自動倉庫におけるスタッカクレーンが広く知られている。
自動倉庫では、通常、物品を収容する複数の収容部を備える棚体と、棚体に対する物品の入出庫を行なう物品移載機としてのスタッカクレーンを備えている。
スタッカクレーンは棚体に沿うように設置されるレール等の軌道に対して走行自在であり、スタッカクレーンの走行台車には、軌道に対して転動する車輪が備えられている。
また、走行台車には一対のマストが立設されており、キャリッジと称される昇降体がマストに沿って昇降自在に備えられている。
このキャリッジには、棚体に対して進退自在のスライドフォークが備えられている。
このため、スタッカクレーンは、スライドフォークを進退させることにより、物品を棚体の収容部に移載したり、棚体の収容部に収容されている物品を取り出すことができる。
なお、走行台車に備えられる走行用モータが車輪を駆動することによりレールに対するスタッカクレーンの走行が図られているほか、走行台車あるいはマスト等に設けられる昇降用モータにより、キャリッジの昇降を実現している。
【0003】
ところで、スタッカクレーンは入出庫の指示に基いて駆動される。
このため、入出庫の指示を受けたときには、スタッカクレーンは軌道上における停止状態から所定の速度まで加速し、加速後に定速で走行し、停止位置に接近すると減速することが多い。
このため、レールに結露が生じていると、加速時及び減速時にレールに対する車輪のスリップが生じるおそれがある。
特に、最近では入出庫のサイクルタイム短縮化を図るためにスタッカクレーンの高速化が求められており、レールに対するスリップを解消することが望まれている。
そこで、従来では、レールにおける結露の有無をセンサにより検出し、レールにおいて結露が認められる場合には、走行台車の加速時における加速度を結露が認められない場合よりも減少させ、定速での走行における走行速度を減少させ、さらに減速時における減速度を減少させることにより、レールに対する車輪のスリップを防止する走行台車の走行制御装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開平10−101215号公報(第2−4頁、図1−図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、結露の有無を検出するセンサ等の結露検出手段を必要とする問題がある。
具体的には、レール近くの雰囲気温度と湿度を検出する温度センサ、湿度センサに加え、レール温度を検出するレール温度センサを必要としており、装置としての構造や走行制御の簡素化が妨げられるおそれがある。
また、物品移載機としてのスタッカクレーンが備える走行用モータや昇降用モータは、通常減速機付モータが使用されることが多いが、例えば、冬季や寒冷地等における気温0度以下の低温の雰囲気では減速機における潤滑油の粘度が高くなる。
粘度が高くなることは、通常の温度の雰囲気と比較して両モータに対する電流を余分に必要とし、走行用モータ及び昇降用モータの負荷が大きくなるという問題がある。
特に、モータの能力以上の電流が要求される場合では、走行及び昇降ができないおそれもある。
逆に、例えば、40度以上の高温の雰囲気では、走行用モータ及び昇降用モータを高速で駆動させ続けると、熱による走行用モータ及び昇降用モータの効率低下を招くおそれがある。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、温度を検出する温度検出手段、結露を検出する結露検出手段等の気象条件に係る検出手段を必要とすることなく、走行用モータや昇降用モータを気象条件に応じて適切に駆動制御することができる物品移載機の駆動制御方法及び物品移載機の駆動制御装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、請求項1記載の発明は、複数の物品収容部を有する棚体の正面に沿うように軌道上を走行する走行台車と、前記走行台車に対して昇降自在の昇降体と、走行用モータ及び昇降用モータと、前記両モータを駆動制御する駆動制御手段を備えた物品移載機の駆動制御方法であって、予め提供される温度データ及び湿度データのうち少なくとも温度データを駆動制御手段に入力し、予め設定した複数の駆動モードからいずれかの駆動モードを入力データに応じて選択し、選択した駆動モードの駆動パターンにより走行用モータ及び昇降用モータを駆動制御することを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、物品移載機の走行用モータ及び昇降用モータは、入力された温度データ又は湿度データに応じて選択された駆動モードにより駆動制御されるから、温度又は湿度に応じた適切な走行台車の走行及び昇降体の昇降を図ることができる。
なお、予め提供される温度データ及び湿度データとは、入力される時点での物品移載機周辺の雰囲気における実際のデータではなく、入力日における物品移載機の設置地域を対象とする温度及び湿度の予測データあるいは前年以前の同時期の過去データを意味する。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の物品移載機の駆動制御方法において、温度データに対する温度範囲を高温域、通常域及び低温域の3つの温度範囲に予め設定しておき、入力された温度データが通常域に含まれるときに駆動モードを通常駆動モードとし、入力された温度データが高温域又は低温域に含まれるときに低速駆動モードとすることを特徴とすることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、入力された温度データが通常域に含まれるとき、走行用モータ及び昇降用モータは通常駆動モードで駆動され、入力された温度データが高温域又は低温域に含まれるときには低速駆動モードで駆動される。
このため、入力された温度データが低温域の場合には、潤滑油の粘度が高くてもモータの負荷を軽減することができ、また、入力された温度データが高温域のときには両モータの熱による効率低下が抑制される。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の物品移載機の駆動制御方法において、湿度データに対する湿度範囲を低湿域と高湿域の2つの湿度範囲に予め設定しておき、入力された湿度データが低湿域に含まれるときに駆動モードを通常駆動モードとし、入力された湿度データが高湿域に含まれるときに低速駆動モードとすることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、入力される湿度データが低湿域に含まれるとき、物品移載機は通常駆動モードで駆動され、入力される湿度データが高湿域に含まれるとき低速駆動モードで駆動される。
このため、入力された湿度データが高湿域に含まれるときでも結露によるスリップを生じることなく走行台車は軌道上を走行する。
【0012】
請求項4記載の発明は、物品収容部を有する棚体に沿うように軌道上を走行する走行台車と、前記走行台車に対して昇降自在の昇降体と、走行用モータ及び昇降用モータと、前記両モータを駆動制御する駆動制御手段を備えた物品移載機の駆動制御装置であって、前記駆動制御手段は、温度データ及び湿度データの少なくとも温度データが予め入力され、予め設定された複数の駆動モードからいずれかの駆動モードを入力データに応じて選択する演算部と、選択された駆動モードにおける駆動パターンにより前記両モータを駆動制御するモータ制御部を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、物品移載機の走行用モータ及び昇降用モータは、入力された温度データ及び湿度データに応じて演算部が選択した駆動モードにより駆動制御されるから、温度及び湿度に応じた適切な物品移載機の駆動を図ることができる。
また、温度や湿度を検出する検出手段を必要としないことから。物品移載機の構造や駆動制御が簡素化される。
なお、予め提供される温度データ及び湿度データとは、入力される時点での物品移載機周辺の雰囲気における実際のデータではなく、入力日における物品移載機の設置地域を対象とする温度及び湿度の予測データあるいは前年以前の過去データを意味する。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の物品移載機の駆動制御装置において、前記駆動制御手段は温度データ及び湿度データを提供するネットワークと接続されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、温度データ及び湿度データはネットワークを通じて演算部に入力される。
このため、物品移載機の設置地域を対象とする予め提供される温度データ及び湿度データを物品移載機の稼動する日に合わせて入力することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、温度を検出する温度検出手段、結露を検出する結露検出手段等の気象条件に係る検出手段を必要とすることなく、走行用モータや昇降用モータを気象条件に応じて適切に駆動制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る物品移載機の駆動制御装置について図1〜図5に基づき説明する。
本実施形態の物品移載機は、自動倉庫11におけるスタッカクレーン18であり、このスタッカクレーン18は物品を収容する棚体12に対して入出庫すべき物品を移載させるためのものである。
図1に示される自動倉庫11は、軌道上を往復走行するスタッカクレーン18と、スタッカクレーン18の軌道の両側において設置されている多段状の棚体12を備えている。
【0018】
この実施形態の棚体12は、所定の間隔を以って配設される支柱13と、支柱13に水平に設けられた多数の物品収容部としての棚部14を備えている。
この棚部14の上に物品を載置することができるようになっており、また、棚体12の長手方向がスタッカクレーン18の軌道に沿うものとなっており、
このため、棚部14に物品を収容する場合、棚部14上において物品が軌道に沿うように並んだ状態となる。
そして、一方の棚体12の隣には入庫コンベア15が設置され、他方の棚体12の隣には出庫コンベア16が設置されている。
入庫コンベア15は入庫する物品をスタッカクレーン18側へ送り込むためのコンベアであり、出庫コンベア16はスタッカクレーン18により出庫する物品を送り出すためのコンベアである。
また、棚体12の傍らには後述する地上側制御盤17が設置されており、この地上側制御盤17は棚体12の在庫管理を行なうほか、スタッカクレーン18へ入出庫の指示を行なう。
【0019】
次に、物品移載機としてのスタッカクレーン18について説明する。
スタッカクレーン18は、床面に敷設されているレール19と天井側に設置されているレール(図示せず)軌道に対して往復走行自在となっている。
スタッカクレーン18は、走行台車20、マスト21、キャリッジ22、スライドフォーク23、走行用モータ24、昇降用モータ25、機側制御盤27等から主に構成されている。
さらに詳述すると、図2に示されるように、走行台車20には一対のマスト21が前後に立設されており、両マスト21間において昇降体としてのキャリッジ22が昇降自在に備えられている。
マスト21の頂部は案内体26により互いに連結されており、この案内体26は天井側のレール(図示せず)に案内されるものとなっている。
【0020】
また、走行台車20には、床面の走行用レール19に対して転動する車輪(図示せず)を前後に備えているほか、走行台車20を走行用レール19上において往復走行させるための走行用モータ24と、キャリッジ20を昇降させるための昇降用モータ25と、スタッカクレーン18側の機器を制御する機側制御盤27が備えられている。
この走行用モータ24と昇降用モータ25はいずれも減速機付の電動モータであり、減速機内には減速ギヤが配置され、減速ギヤの潤滑のための潤滑油が充填されている。
一方、マスト21、21に対して昇降自在のキャリッジ22には、進退手段としてのスライドフォーク23が、棚体12内へ向けて進退自在に備えられている。
この実施形態のスライドフォーク23は、スタッカクレーン18の両側の棚体12に対して進退自在となっている。
【0021】
次に、地上側制御盤17と機側制御盤27について詳述する。
まず、地上側制御盤17は、入出庫の指示をスタッカクレーン18に与えるものであり、この実施形態では、次に説明する機側制御盤27とともに駆動制御手段28を構成する。
この地上側制御盤17には、棚体12及びスタッカクレーン18と別に設置されており、機側制御盤27と通信可能となっている。
【0022】
この実施形態の地上側制御盤17は、ネットワークとしてのインターネットと接続可能な接続部29を備えており、インターネットを通じて予め提供される温度データ及び湿度データは入力データとして接続部29を通過する。
ここでいう、予め提供される温度データ及び湿度データは、入力される時点でのスタッカクレーン18周辺の実際の温度データ及び湿度データではなく、入力日におけるスタッカクレーン18の設置地域を対象とする予測データを意味している。
具体的には、自動倉庫11が設置されている地域の気象予報のウエブサイトにより提供される予測データであり、この実施形態では予測データを提供するウエブサイトにアクセス可能としている。
このため、予め提供される温度データとしてその日の予測最高温度と予測最低温度、予め提供される湿度データとして予測湿度がその日の未明にこの種のウエブサイトから地上側制御盤17に転送可能となっている。
【0023】
また、地上側制御盤17は、入出庫の指示をスタッカクレーン18に与えたり、予め設定された複数の駆動モードからいずれかの駆動モードを入力された温度データ及び湿度データに応じて選択する演算部30を備えている。
さらに、地上側制御盤17は、入出庫の指示や駆動モードの情報をスタッカクレーン18へ送信する通信手段の一部である送受信部31が備えられている。
この送受信部31は機側制御盤27とのデータの送受信を図るためのものであり、機側制御盤27の送受信部36と地上側制御盤17の送受信部31により通信手段が構成される。
【0024】
また、地上側制御盤17は記憶部32を備えており、この記憶部32は所定のプログラムや各種のデータを一時的または恒常的に格納することができる。
例えば、演算部30の処理結果や、スタッカクレーン18のキャリッジ22の現在位置情報、棚部14等の位置情報を記憶することが可能となっている。
また、この記憶部32には、カレンダー機能を有するプログラムが格納されているほか、入力される温度データ(予測最高気温及び予測最低気温)に対応する温度マップと、当日の湿度データに対応する湿度マップが格納されている。
【0025】
この温度マップ及び湿度マップは走行用モータ24及び昇降用モータ25の駆動モードを入力データに応じて決定するためのものである。
この実施形態の温度マップは、温度データとの関係から、
(1)予測最低気温が所定の温度以下(例えば、0度未満)の低温域、
(2)予測最低気温が所定の温度以上(例えば、0度以上)であって予測最高気温が所定温度以下(例えば、40度以下)の通常域
(3)予測最高気温が所定の温度(例えば、40度)を超える高温域
の3つの温度範囲が設定されている。
さらに、湿度マップには、所定の湿度(例えば、湿度80%)を境にして、(A)低湿域と(B)高湿域の2つの湿度範囲が設定されている。
【0026】
なお、地上側制御盤17の接続部29、受送信部31、記憶部32は演算部30に接続されているほか、ここでは図示しないキーボードやデータ表示用のディスプレイが地上側制御盤17に備えられ、手動操作によるデータの打込やプログラムの起動を可能としている。
また、地上側制御盤17は、入庫コンベア15及び出庫コンベア16と電気的な接続が図られており、各コンベア15、16における物品の有無を確認することができるものとなっている。
【0027】
次に機側制御盤27について説明する。
機側制御盤27は、スタッカクレーン18の駆動制御を行なうための制御盤である。
機側制御盤は演算部35、受送信部36、記憶部37、走行用モータ制御部38、昇降用モータ制御部39を備えている。
送受信部36は地上側制御盤17との交信を図り、入出庫の指示や駆動モードの情報を受信するほか、スタッカクレーン18の位置情報等を送信する。
記憶部37には、スタッカクレーン18の駆動に必要なプログラムや、演算部35による処理結果を一時的または恒常的に格納することができる。
【0028】
演算部35は、走行用モータ制御部38及び昇降用モータ制御部39を含むスタッカクレーン18各部の駆動を制御する各制御部を入出庫の指示に基いて制御する。
図3に示されるように、走行用モータ24は走行モータ制御部38を通じて駆動制御され、昇降用モータ25は昇降用モータ制御部39を通じて駆動制御される。
この実施形態の走行用モータ制御部38及び昇降用モータ制御部39は、夫々のモータ24、25を通常駆動モード又は低速駆動モードで駆動させることができる。
【0029】
例えば、走行用モータ24に対する通常駆動モードは、図4に示されるように、走行台車20の停止状態から定速走行までの加速度や、定速走行から停止までの減速度、定速走行における速度を大きく設定した通常駆動パターン(図4における実線グラフ)を有する駆動モードであり、低速駆動モードは、走行台車20の停止状態から定速走行までの加速度や、定速走行から停止までの減速度、定速走行における速度を通常駆動モードよりもいずれも小さく設定した低速駆動パターン(図4における破線グラフ)を有する駆動モードである。
低速駆動モードは低温時における走行用モータ24の電流増大による負荷の軽減、結露時におけるレール19に対する走行台車20のスリップ防止、高温時における走行用モータ24の熱による効率低下の抑制を目的としている。
また、昇降用モータ25に対する通常駆動モード及び低速駆動モードは、低温時の昇降用モータ25の負荷の軽減及び高温時における昇降用モータ25の熱による効率低下の抑制を意図している。
【0030】
なお、演算部35は、走行用モータ制御部38、昇降用モータ制御部39のほかにスタッカクレーン18の各部に対応する各制御部(図示せず)と接続されており、これらの各制御部は演算部35からの指示により各部を駆動制御するものである。
【0031】
次に、この実施形態に係るスタッカクレーン18の駆動制御について説明する。
まず、スタッカクレーン18の稼動予定日の未明頃に、予め温度データ(予測最高気温及び予測最低気温)及び湿度データ(予測湿度)をインターネットの気象予報サイトから接続部29を通じて記憶部32に格納する。
つまり、駆動制御手段28に対して温度データと湿度データが入力されたことになる。
演算部30において走行用モータ24の駆動モードが、入力された入力データ、温度マップ及び湿度マップに基いて決定される。
一方、昇降用モータ25の駆動モードは、入力データと温度マップに基いて決定される。
【0032】
このとき、予測最高温度と予測最低温度が温度マップにおいて通常域に含まれ、かつ、予測湿度が低湿域に含まれるときは、走行用モータ制御部38と昇降用モータ制御部39を介して走行用モータ24及び昇降用モータ25は通常駆動モードで駆動されることが予定される。
そして、実際に入出庫の指示を受けてスタッカクレーン18が稼動するときには、走行用モータ24及び昇降用モータ25は通常駆動モードの通常駆動パターンに従って駆動される。
【0033】
なお、走行用モータ24及び昇降用モータ25が低速駆動モードにより駆動される場合は、湿度に関わらず、予測最低温度が温度マップにおいて低温域にあるとき、あるいは、予測最高温度が温度マップにおいて高温域にあるときである。
予測最低気温が低温域に存在する場合、走行用モータ24及び昇降用モータ25の減速機における潤滑油の粘度が大きくなる可能性が高い。
低速駆動モードに基く各モータ24、25の駆動は、通常駆動モードよりも低く設定されているから、潤滑油の粘度の増大により余分な電流を必要としても通常駆動モードにおける駆動における電流値を超えることはなく、結果的には各モータの負荷を軽減することとなっている。
なお、低速駆動モードによる各モータ24、25の駆動が繰り返されることにより、潤滑油の粘度が通常駆動モードに耐えられる程度に小さくなった場合には、手動により通常駆動モードへの切替を地上側制御盤17の操作により行なってもよい。
【0034】
また、走行用モータ24のみが低速駆動モードにより駆動される場合は、予測最高温度及び予測最低温度が通常域に含まれるときあって、予測湿度が高湿域に含まれるときである。
予測湿度が高湿域に含まれる場合、レール19において結露の発生が予測されるが、走行台車20の湿度マップにおける低速駆動モードの低速駆動パターンに従う。
このため、走行台車20の加速及び減速の際に、走行台車20の車輪とレール19とのスリップは発生しない。
こうした走行用モータ24及び昇降用モータ25の駆動モードの選択は、図5に示されるフローチャートの手順に従う。
なお、走行台車20が低速駆動モードによる走行を繰り返すことにより、結露が解消された場合には、手動により通常駆動モードへの切替を地上側制御盤17の操作により行なってもよい。
【0035】
この実施形態に係るスタッカクレーン19の駆動制御装置によれば以下の効果を奏する。
(1)走行用モータ24及び昇降用モータ25は、入力された温度データ又は湿度データに応じて選択された駆動モードにより駆動制御されるから、温度又は湿度に応じた適切な走行台車20の走行及びキャリッジ22の昇降を図ることができる。例えば、低温により各モータ24、25の減速機における潤滑油の粘度が大きくなっても、低速駆動モードによる駆動によりモータ24、25の負荷を抑制することができる。また、高温時にあっても低速駆動モードで駆動することにより、熱によるモータ24、25の効率低下を抑制することができる。
(2)走行用モータ24と昇降用モータ25は、入力される湿度データが湿度マップにおいて低湿域に含まれるとき通常駆動モードで駆動され、入力される湿度データが高湿域に含まれるとき低速駆動モードで駆動されるから、レール19が結露する高湿域のときでもスタッカクレーン18の走行台車20はレール19とスリップすることなく走行することができる。
(3)温度や湿度を検出する検出手段をスタッカクレーン18に必要としないことから、スタッカクレーン18の構造や駆動制御が簡素化される。
(4)温度データ及び湿度データはインターネットから接続部29を通じて駆動制御手段28に予め入力されるから、スタッカクレーン18の設置地域を対象とする予め提供される温度データ及び湿度データをスタッカクレーン18の稼動する日に合わせて入力することができる。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る物品移載機の駆動制御装置について図6及び図7に基いて説明する。
この実施形態の物品移載機は、第1の実施形態と同様にスタッカクレーンである。
従って、ここでは、構成の相違する駆動制御手段40のみを図示するほか、説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、先の説明を援用する。
図6に示されるように、駆動制御手段40は、地上側制御盤41と機側制御盤27とから構成されている。
地上側制御盤41は、演算部42、送受信部43、記憶部44を備えており、接続部29は備えられず、また、機側制御盤27は先の実施形態と同一構成である。
【0037】
従って、機側制御盤27は地上側制御盤41からの入出庫の指示を受けて、スタッカクレーン18を駆動するが、この実施形態では、スタッカクレーン18の設置地域を対象とする前年の月毎の過去データが機側制御盤27の記憶部37に記憶されており、地上側制御盤17が備えるカレンダー機能とともに、該当する月の過去の温度データ(最高温度及び最低温度)に基づいて、走行用モータ24及び昇降用モータ25の駆動モードが選択される。
【0038】
図7に示されるフローチャートのとおり、入力データは温度データであることから、走行用モータ24及び昇降用モータ25に対する駆動モードの選択は、温度マップに基いて選択され、この実施形態の温度マップも通常域、低温域、高温域の3つの温度範囲に設定されている。
因みに、この実施形態では入力データが記憶部37に格納されている過去の温度データであることから、通常は1年前あるいは2年前の月毎の温度データを入力データとして取り扱うことになる。
なお、例えば、過去の最低温度データが低温域に存在し、低速駆動モードを選択しても、実際の温度が通常域に明らかに存在すると判断できる場合には、地上側制御盤17を手動により操作し、通常駆動モードへの切替を図ってもよい。
【0039】
この実施形態の物品移載機の駆動制御装置についても、先の実施形態と同様に温度に応じた適切な走行台車20の走行及びキャリッジ22の昇降を図ることができる。
また、機側制御盤27の記憶部37にカレンダーに対応する過去の温度データを入力データとして格納しておけばよいことから、ネットワークとの接続を図る必要がなく、ネットワーク接続のための接続部29等の機器を必要としない。
【0040】
なお、本発明は、上記した第1の実施形態及び第2の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
○ 第1の実施形態では、地上側制御盤とインターネットが接続されたが、機側制御盤とインターネットとの接続を図ってもよく、少なくとも、地上側制御盤と機側制御盤とにより構成される駆動制御手段に対してインターネットが接続されればよい。
○ 第1の実施形態では、ネットワークとしてのインターネットと接続されるとしたが、ネットワークは、例えば、LAN(ローカルエリアネットワーク)との接続も含まれ、接続の手段も有線、無線を問わず特に限定されない。
○ 第1の実施形態では、物品移載機の稼動が予定される未明頃に予め提供される温度データ又は湿度データを入力するとしたが、少なくとも稼動の直前までに両データを入力すればよく、また、物品移載機の設置箇所の気象条件に応じて予め提供される温度データのみを入力するようにしてもよい。
○ 第2の実施形態では、機側制御盤に入力データとなる過去の温度データを格納するとしたが、地上側制御盤に過去の温度データを格納してもよく、少なくとも、地上側制御盤と機側制御盤とにより構成される駆動制御手段に対して過去の温度データを格納する状態にあればよい。
○ 第1、第2の実施形態では、温度データ及び湿度データに応じて駆動モードを通常駆動モードと低速駆動モードの2つとしたが、例えば、低速駆動モード、通常駆動モード、高速駆動モード等のように3以上の駆動モードを設定してもよく、この場合、設定される駆動モードの数に応じて温度マップの温度域及び湿度マップの湿度域を設定すればよい。
○ 第1、第2の実施形態では、走行用モータと昇降用モータの駆動モードを選択するための温度マップ及び湿度マップを共通するとしたが、モータ毎に仕様が異なる場合には、各モータ毎に温度マップ及び湿度マップを設定することが好ましい。
○ 第1、第2の実施形態では、機側制御盤と地上側制御盤により駆動制御手段が構成されたが、機側制御盤と地上側制御盤に上位の管理コンピュータを接続し、上位の管理コンピュータに予め提供される温度又は湿度データを入力するようにしてもよく、この場合、機側制御盤と地上側制御盤と上位の管理コンピュータにより駆動制御手段が構成されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施形態に係る自動倉庫の概要を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係るスタッカクレーンの概要を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る駆動制御手段を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態の走行台車の駆動パターンをグラフとして示す図である。
【図5】第1の実施形態に係るスタッカクレーンの駆動制御を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施形態に係る駆動制御手段を示すブロック図である。
【図7】第2の実施形態に係るスタッカクレーンの駆動制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
11 自動倉庫
12 棚体
17 地上側制御盤
18 スタッカクレーン
19 レール
20 走行台車
24 走行用モータ
25 昇降用モータ
27 機側制御盤
28、40 駆動制御手段
29 接続部
30、35 演算部
31、36 送受信部
32、37 記憶部
38 走行用モータ制御部
39 昇降用モータ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物品収容部を有する棚体に沿うように軌道上を走行する走行台車と、前記走行台車に対して昇降自在の昇降体と、走行用モータ及び昇降用モータと、前記両モータを駆動制御する駆動制御手段を備えた物品移載機の駆動制御方法であって、
予め提供される温度データ及び湿度データのうち少なくとも温度データを駆動制御手段に入力し、予め設定した複数の駆動モードからいずれかの駆動モードを入力データに応じて選択し、選択した駆動モードの駆動パターンにより走行用モータ及び昇降用モータを駆動制御することを特徴とする物品移載機の駆動制御方法。
【請求項2】
温度データに対する温度範囲を高温域、通常域及び低温域の3つの温度範囲に予め設定しておき、入力された温度データが通常域に含まれるときに駆動モードを通常駆動モードとし、入力された温度データが高温域又は低温域に含まれるときに低速駆動モードとすることを特徴とする請求項1記載の物品移載機の駆動制御方法。
【請求項3】
湿度データに対する湿度範囲を低湿域と高湿域の2つの湿度範囲に予め設定しておき、入力された湿度データが低湿域に含まれるときに駆動モードを通常駆動モードとし、入力された湿度データが高湿域に含まれるときに低速駆動モードとすることを特徴とする請求項1又は2記載の物品移載機の駆動制御方法。
【請求項4】
物品収容部を有する棚体に沿うように軌道上を走行する走行台車と、前記走行台車に対して昇降自在の昇降体と、走行用モータ及び昇降用モータと、前記両モータを駆動制御する駆動制御手段を備えた物品移載機の駆動制御装置であって、
前記駆動制御手段は、温度データ及び湿度データの少なくとも温度データが予め入力され、予め設定された複数の駆動モードからいずれかの駆動モードを入力データに応じて選択する演算部と、
選択された駆動モードにおける駆動パターンにより前記両モータを駆動制御するモータ制御部を備えることを特徴とする物品移載機の駆動制御装置。
【請求項5】
前記駆動制御手段は温度データ及び湿度データを提供するネットワークと接続されていることを特徴とする請求項4記載の物品移載機の駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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