説明

物品積載システム、物品積載シミュレーション方法、物品積載シミュレーションプログラム、及び記録媒体

【課題】積載に係る作業効率を高めると共に、収容空間内の積載率の向上を実現する物品積載システム、及び物品積載シミュレーション方法を提供する。
【解決手段】この航空貨物積載シミュレーションシステム60は、貨物に関する各種情報を入力する情報入力手段50と、貨物の少なくとも幅寸法、奥行き寸法、高さ寸法、重量、及び個数に関するデータを入力する貨物情報入力手段51と、収容空間に関する情報を入力する空間情報入力手段52と、入力された各情報に基づいて、収容空間内に貨物を効率的に積載する方法をアルゴリズムによりシミュレーションし、その結果を3Dにより確認修正するシミュレーション手段58と、シミュレーション手段58によりシミュレーションした結果に基づいて、貨物の積載位置、積載方向、及び、積載順序を指示した帳票57を作成して出力する帳票出力手段55と、を備えて構成されている。尚、ウェブベースで何時でも何処でも使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品積載システム、及び物品積載シミュレーション方法に関し、さらに詳しくは、貨物を積載手段に積載する際の効率的な積載方法に関する発明であって、例えば、航空機に積載する貨物をどの位置に、どのような方向から、どのような順序で積載するかをコンピュータによりシミュレーションし、その結果に従って貨物を最適な順序にて積載することを可能とする物品積載システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、航空機により輸送される貨物は、パレットやコンテナ等の機体搭載機材(ULD=Unit Load Device)に積載された状態で航空機に搭載される。従来、パレットやコンテナを航空機に搭載するに際しては、航空機ごとに算出された最大許容積載重量に基づいて、使用するパレット等の形状、サイズおよび台数が予め決定される。次いで、使用するパレット等の概略容積と、個々の貨物の重量、形状等から作業員が経験的に判断して各貨物の最適な積載順序を決めた上で、これらの各貨物をパレット等に積載する作業を実施している。また、航空貨物の取り扱い量が年々増加しているため、パレット等に種々の貨物を積載するに際して作業速度、正確性、品質向上が求められている。
【0003】
貨物を積載する際の効率を改善する従来技術として、特許文献1には、不規則なサイズと重さで受入れられた矩形の梱包製品をパレット積みするための方法および装置として、供給された貨物の容積を測定し、その測定データに基づいて把持機でパレットに自動的に積載してゆく技術が開示されている。
また、特許文献2には、各貨物の重量および荷姿を測定し、各貨物の重量および荷姿から各貨物の密度を算出し、各貨物の密度情報を集積して各貨物の積み付け位置を算出し、積み付け位置情報に基づいて各貨物を積み付ける方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、積み荷及び当該パレットの各寸法情報に基づき、当該パレットの積載面への積み荷の充填率を高めるように当該パレットの1段目の積み荷の荷姿を自動計算する平面荷姿計算ステップと、自動計算された1段目の荷姿を含むパレット上に積載されている積み荷の様子を示す荷姿を表示する表示ステップとを含み、荷姿上で指示された1つの積み荷若しくは複数の積み荷を指定方向へ小移動して位置を微調整する第1のステップを少なくとも有する指示ステップに従い、自動計算された1段目の荷姿の定義情報を基に当該パレットの種類及び当該品種の積み荷に対応する最終的な荷姿の定義情報を作成するシミュレーション技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献4には、予め、所定期間内に梱包すべき部材の数量およびその特性に基づいて、梱包に必要な外装ケースの仕様形態およびその数量を外装ケース展開マスタに記憶し、レイアウト端末において、人工知能もしくはエキスパートシステムにより、コンテナの奥側から順に、既に積み付けされた外装ケースの周囲に空間があるか否かを検索し、その空間に、積載条件テーブルに予め記憶された条件を満足する外装ケースを配置していく技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−335417公報
【特許文献2】特開2002−29631公報
【特許文献3】特開2003−176025公報
【特許文献4】特開平7−53049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の積載方法では、個々の貨物の重量、内容物に関するデータ、および形状に基づいて、経験を有した作業員が各貨物の積載順序などを決め、これらの各貨物をパレット、或いはコンテナに積載して、所定の重量および所定の荷姿にしているので作業員の経験と勘に頼らざるを得ず、必ずしも最適な積載順序になるとは限らなかった。
また、特許文献1に記載の従来技術は、供給された貨物の容積を測定し、その測定データに基づいて把持機でパレットに自動的に積載する手順に関する発明であり、貨物によっては積み重ね禁止や、破損の危険性があるため、積載条件を決めて積載する必要があるが、これらの条件をきめ細かく反映することができないといった問題がある。
また、特許文献2に記載の従来技術は、ピットスケールおよび三次元センサを起動させておき、ULDのパレットに積み付けた貨物の荷姿および重量を順次測定して、モニタディスプレイに表示された管理グラフを随時確認しながら積み付け作業を行なうものであり、特許文献1と同様に貨物による制限条件をきめ細かく反映することができないといった問題と、カットアンドトライによりパレットに貨物を積載するため作業時間が多くかかるといった問題がある。
【0007】
また、特許文献3に記載の従来技術は、シミュレーションの対象を単一品種の商品としているので、大きさが異なる貨物を取り扱う場合に適用されにくいといった問題がある。
また、特許文献4に記載の従来技術は、コンテナへ最初に積み込まれる外装ケースとして、大きく、軽く、フルケースであるものが選択され、以後、既に積み込まれた外装ケースの周囲に積み付け可能な空間を探し、この空間に積み付け可能な外装ケースを順次抽出して積み付けていくことにより、レイアウト処理を進めていく方法であるが、空間に積み付け可能な外装ケースを順次抽出しなければならず、操作が煩わしいといった問題がある。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、複数の貨物をパレット、コンテナ等の収容手段の収容空間内に効率的に積載する方法を予めシミュレーションしておき、このシミュレーション結果を帳票形式で作成して出力し、この帳票に基づいて貨物を収容空間内に積載することにより、積載に要する作業時間を短縮して作業効率を高めると共に、収容空間内の積載率の向上を実現する物品積載システム、及び物品積載シミュレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、複数の物品を収容空間内に効率的に積載する方法をシミュレーションし、該シミュレーション結果に基づいて前記物品を前記収容空間内に積載する手順を提示する物品積載システムであって、前記物品の少なくとも幅寸法、奥行き寸法、高さ寸法、重量、及び個数に関するデータを入力する物品情報入力手段と、前記収容空間に関する情報を入力する空間情報入力手段と、前記物品情報入力手段、及び、空間情報入力手段により入力された各情報に基づいて、前記収容空間内に該物品を効率的に積載する方法をシミュレーションするシミュレーション手段と、該シミュレーション手段によりシミュレーションした結果に基づいて、前記物品の積載位置及び積載方向、又は前記物品の積載位置、積載方向、及び、積載順序を指示した帳票を作成して出力する帳票出力手段と、を備え、前記各情報は、Webページ上に表示された操作画面により入力可能としたことを特徴とする。
本発明の物品積載システムでは、個々の物品に関する情報(幅寸法、奥行き寸法、高さ寸法、重量、及び個数等)と、その物品を収容する収容空間(例えば、パレット又はコンテナ)に関する情報が予め入力される。シミュレーション手段は、これらの情報に基づいて、収容空間内に物品を効率的に積載する方法をシミュレーションする。シミュレーションの結果は、例えばハードコピーとして帳票出力手段により作成されて印刷される。作業員はこの帳票を見ながら現場で物品を収容空間に積載する。また、各情報は、Webページ上に表示された操作画面により入力できるので、時間を選ばずに何時でもシミュレーションを行うことができる。これにより、最適な積載方法を事前に確認することができると共に、最終結果を帳票出力手段により出力することにより、現場での作業効率を高めることができる。
【0010】
請求項2は、前記シミュレーション手段は、前記各物品に付与した積載順序を示す番号順に積載する際に、所定の積載基準により規定される積載候補点を手掛かりとした積載手順に基づいた積載を行い、第1の基準として前記収容空間の最も底部であること、第2の基準として左側又は右側の何れか一方であること、第3の基準として手前又は奥側の何れか一方であること、を順次積載基準として前記積載候補点を定めて、前記番号を付した物品が全て積載完了するまで前記積載手順を繰り返すことを特徴とする。
各物品には、予め積載しようとする順番に番号を付与し、この番号順に積載してゆく。そして、番号順に収容空間に積載する場合、所定の積載基準により規定される積載候補点を手掛かりとした積載手順に基づいた積載を行う。即ち、積載手順として、第1に収容空間の最も底部であること、第2の基準として左側又は右側の何れか一方であること、第3の基準として手前又は奥側の何れか一方であること、といった優先順位を決めて積載して、物品が全て積載完了するまでこの積載手順を繰り返すものである。これにより、積載手順が規格化されて、シミュレーションの計算速度を速めることができる。
【0011】
請求項3は、前記積載基準以外に、前記物品の重心が最も低くなるように積載すること、又は積載のし易さとして同じ物品を上に積載すること、又は前記物品の積載方向と大きさが揃うように積載すること、又は積載率が高くなるように積載すること、の少なくとも何れか一つを加味することを特徴とする。
本発明のアルゴリズムの基本は、第1から第3の積載基準に基づいて行なわれる。しかし、その基準以外に、幾つかの条件に基づいてシミュレーションされる。即ち、物品の重心を可能な限り低くしたり、同じ物品は上に積載したり、大きさを揃えて積載したり、又は、積載率が高くなるように積載する等の条件の何れか一つを更に加味してシミュレーションするものである。これにより、シミュレーションの精度が高くなると共に、積載結果が意図した積載方法に近づけることができる。
【0012】
請求項4は、前記シミュレーション手段のアルゴリズムは、前記収容空間、及び物品の形状を直方体又は立方体と仮定し、該収容空間の底面に含まれる頂点の一つを初期積載候補点とし、最初に積載する物品の底面に含まれる何れか一つの頂点が前記初期積載候補点に合致するように積載し、該物品の何れかの頂点と前記収容空間の辺とが合致する点を次の積載候補点とし、次の物品を積載するときは、前記次の積載候補点の中で最も優先順位が高い積載候補点に該次の物品の前記頂点が合致するように積載する手順を繰り返すことを特徴とする。
本発明の積載アルゴリズムは、前提条件として収容空間と物品を直方体又は立方体と仮定する。そして、収容空間の底面に含まれる1つの頂点を初期積載候補点とする。まず、初期積載候補点に物品の底面に含まれる1つの頂点が合致するように積載する。これにより、物品の各頂点と収容空間の辺とが合致する点が発生し、それらの点を次の積載候補点とする。次の物品を積載する場合は、各積載候補点の中で優先順位が高い順に物品の底面に含まれる頂点が合致するように積載する。この手順を順次繰り返して、全ての物品が積載終了するまで繰り返す。このアルゴリズムをBLD法(Bottom Left Depth Algorithm)と称する。
【0013】
請求項5は、前記シミュレーション手段のアルゴリズムは、前記次の積載候補点の中で最も優先順位が高い積載候補点に前記次の物品の前記頂点が合致するように積載することが不可能な場合、次の優先順位の積載候補点に前記次の物品の頂点が合致するように積載することを特徴とする。
物品の形状には、長尺物品、背の高い物品等、いろいろな形状が存在する。しかし、収容空間は限定された大きさのため、BLD法により積載していくと、最優先順位の積載候補点に積載しようとしても、収容空間内に収容しきれない物品も出てくる。そのような場合は、積載候補点の優先順位が高くても、次の優先順位の積載候補点に合致するように積載する。これにより、優先順位の高い順に可能な限り物品を積載することができる。
【0014】
請求項6は、前記積載候補点のうち、前記収容空間の最も底部にあり、且つ左側又は右側の何れか一方にあり、且つ手前又は奥側の何れか一方にある積載候補点を、前記最も優先順位が高い積載候補点とすることを特徴とする。
BLD法では、最も底部にあり、且つ左側にあり、且つ手前にある積載候補点が最も優先順位が高い。従って、この積載候補点から順次優先順位を決定する。また、底面に含まれる積載候補点が複数ある場合は、その中で、2番目に左側に近い積載候補点を次の優先順位とする。これにより、優先順位の基準が決定され優先順位を順次決定することができる。
【0015】
請求項7は、前記シミュレーション手段は、最下段しか積載できないという属性と、どのような物品でも上に乗せることができるという属性と、上に乗せてはいけないという属性と、同一物品の場合のみ重ねることができるという属性と、をシミュレーション時に考慮する物品の属性とすることを特徴とする。
積載する物品には、それぞれ属性が存在する。例えば、重量が重いために最下段にしか積載できない物品や、堅牢な材質で構成されているために、どのような物品でも上に乗せることができる物品や、破損し易いために上に乗せることができない物品や、同一物品の場合のみ重ねることができるという物品がある。これらの物品の属性を考慮することにより、シミュレーションの結果に基づいて積載しても、物品の破損といった事故を未然に防止することができる。
【0016】
請求項8は、前記シミュレーション手段は、前記物品の積載方向を固定してシミュレーションすること、三次元画面での物品位置を固定すること、内径寸法と外形寸法を考慮して積載位置をシミュレーションすること、はみ出しを考慮してシミュレーションすること、及び、複数の物品をセットとして取り扱うこと、をシミュレーション時に考慮する条件及び可能な操作とすることを特徴とする。
物品の中にはセットとして構成されているものがある。例えば、パソコンの表示部と本体などがある。このようなセットとしての物品は、積載する収容空間が同じほうが好ましい。そこで本発明では、積載方向を固定したり、物品の位置を固定したり、物品の内径寸法と外形寸法を考慮したり、はみ出しを考慮してシミュレーションしたり、複数の物品をセットとして取り扱ったりすることをシミュレーション時の条件とするものである。これにより、異型の物品の積載を容易とし、積載時の積載効率を高めると共に、セット物品の積み下ろし時の時間を短縮することができる。
【0017】
請求項9は、前記シミュレーション手段は、シミュレーション結果を三次元画像としてリアルタイムに表示して、前記操作画面により前記三次元画像を任意に調整することにより、該シミュレーション結果を変更可能としたことを特徴とする。
シミュレーション結果は、三次元画像として操作画面に表示される。従って、操作者は、その画面を見ながら、物品の位置を任意に変更することにより、シミュレーション結果も併せて微調整することができる。これにより、シミュレーションが終了した積載状態が最適となるように微調整することができる。
【0018】
請求項10は、記帳票出力手段は、前記収容空間毎に積載する物品の積載位置、積載方向、及び積載数量を各積載段ごとに表示することを特徴とする。
物品の中には、積み重ねて積載することができる物品と積み重ねができない物品がある。そこで本発明では、積み重ねて積載することができる物品については、各積載段ごとに積載する物品の積載位置、積載方向、及び積載数量を図面化するものである。これにより、物品の積載方法を正確に且つ迅速に認識することができる。
【0019】
請求項11は、前記シミュレーション手段がシミュレーションした結果を記憶するデータベースを備え、該データベースに記憶されているシミュレーション結果を編集可能としたことを特徴とする。
データベースにはシミュレーションした結果を記憶している。従って、物品を積載する場合、過去に記憶したシミュレーション結果の中に同じものがあれば、再度シミュレーションをする必要がなくなる。そこで本発明では、物品を積載する場合、データベースに記憶されているシミュレーション結果を検索し、そのシミュレーション結果を編集できるようにするものである。これにより、無駄なシミュレーションをなくして、データを有効に活用することができる。
【0020】
請求項12は、複数の物品を収容空間内に効率的に積載する物品積載シミュレーション方法であって、前記各物品に付与した積載順序を示す番号順に積載する際に、所定の積載基準により規定される積載候補点を手掛かりとした積載手順に基づいた積載を行い、第1の基準として前記収容空間の最も底部であること、第2の基準として左側又は右側の何れか一方であること、第3の基準として手前又は奥側の何れか一方であること、を順次積載基準として前記積載候補点を定めて、前記番号を付した物品が全て積載完了するまで前記積載手順を繰り返すことを特徴とする。
本発明は請求項2と同様の作用効果を奏する。
【0021】
請求項13は、物品の形状を直方体又は立方体と仮定し、該収容空間の底面に含まれる頂点の一つを初期積載候補点とし、最初に積載する物品の底面に含まれる何れか一つの頂点が前記初期積載候補点に合致するように積載し、該物品の何れかの頂点と前記収容空間の辺と合致する点を次の積載候補点とし、次の物品を積載するときは、前記次の積載候補点の中で最も優先順位が高い積載候補点に該物品の前記頂点が合致するように積載する手順を繰り返すことを特徴とする。
本発明は請求項4と同様の作用効果を奏する。
【0022】
請求項14は、前記次の積載候補点の中で最も優先順位が高い積載候補点に前記次の物品の前記頂点が合致するように積載することが不可能な場合、次の優先順位の積載候補点に前記次の物品の前記頂点が合致するように積載することを特徴とする。
本発明は請求項5と同様の作用効果を奏する。
【0023】
請求項15は、前記積載候補点のうち前記収容空間の最も底部であり、且つ左側又は右側の何れか一方であり、且つ手前又は奥側の何れか一方に位置する積載候補点を前記最も優先順位が高い積載候補点とすることを特徴とする。
本発明は請求項6と同様の作用効果を奏する。
【0024】
また、請求項16の物品積載シミュレーションプログラムは、請求項12乃至15の何れか一項に記載の物品積載シミュレーション方法をコンピュータが制御可能にプログラミングしたことを特徴とする。
本発明の物品積載シミュレーション方法をコンピュータが制御可能なOSに従ってプログラミングすることにより、そのOSを備えたコンピュータであれば同じ処理方法により制御することができる。
【0025】
請求項17の記録媒体は、請求項16に記載の物品積載シミュレーションプログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録したことを特徴とする。
物品積載シミュレーションプログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録媒体に記録することにより、この記録媒体を持ち運ぶことにより何処でもプログラムを稼動することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、複数の物品を収容空間内に効率的に積載する方法をシミュレーションし、このシミュレーション結果に基づいて物品を収容空間内に積載する手順を提示する物品積載システムであって、物品の少なくとも幅寸法、奥行き寸法、高さ寸法、重量、及び個数に関するデータを入力する物品情報入力手段と、収容空間に関する情報を入力する空間情報入力手段と、物品情報入力手段、及び、空間情報入力手段により入力された各情報に基づいて、収容空間内に該物品を効率的に積載する方法をシミュレーションするシミュレーション手段と、このシミュレーション手段によりシミュレーションした結果に基づいて、物品の積載位置、積載方向、及び、積載順序を指示した帳票を作成して出力する帳票出力手段と、を備え、各情報は、Webページ上に表示された操作画面により入力可能としたので、積載に要する作業時間を短縮して作業効率を高めると共に、収容空間内の積載率の向上を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0028】
図1は本発明の一実施形態に係るステーション内の貨物積載システム(物品積載システム)の構成を模式的に示すブロック図である。この貨物積載システム100は、複数の貨物(物品)をパレット又はコンテナ等の収容手段の収容空間内に効率的に積載する方法をシミュレーションし、このシミュレーション結果に基づいて貨物を収容手段内に積載する貨物積載システムであって、大きく分けて顧客、営業、予約、スペースコントロール、及び積み付けの業務に分かれる。具体的には、航空貨物積載シミュレーションシステム6により実行される。
【0029】
営業部門3が営業活動により顧客1から見積を依頼されたり、顧客1が代理店2を介して見積を依頼すると、営業部門3又は代理店2により顧客1に関する貨物輸送の予約4がなされる。それにより、その予約内容は案件として航空貨物積載シミュレーションシステム6に登録される(5)。その際、貨物に関する各種情報と、貨物の少なくとも幅寸法、奥行き寸法、高さ寸法、重量、及び個数に関する貨物情報と、収容手段に関する空間情報と、が航空貨物積載シミュレーションシステム6に入力される(7)。そのデータは案件データとしてデータベース(DB)17に記憶される。そして、各種情報、貨物情報、及び、空間情報の各情報に基づいて、収容手段内に貨物を効率的に積載する方法をシミュレーションする(8)。そのシミュレーション結果は、リアルタイムに3D画像により画面上に表示される(9)。そして最適なシミュレーションが終了すると、シミュレーションした結果に基づいて、貨物の積載位置、積載方向、及び、積載順序を指示した帳票を作成して出力する(10)。その結果からパレット数の見積書11を作成し、その見積書11に基づいて代理店2、営業3を介して顧客1に見積書が渡される。
【0030】
一方、顧客1が見積を確認して了承すると、案件が確定し(16)、積み付け/案件登録20として航空貨物積載シミュレーションシステム26に入力される。そして確定した貨物に関する各種情報と、貨物の少なくとも幅寸法、奥行き寸法、高さ寸法、重量、及び個数に関する貨物情報と、収容手段に関する空間情報と、を入力する(21)。そのデータは案件データとしてDB17に記憶される。そして、各種情報、貨物情報、及び、空間情報の各情報に基づいて、収容手段内に貨物を効率的に積載する方法をシミュレーションする(22)。そのシミュレーション結果は、リアルタイムに3D画像により画面上に表示される(23)。そして最適なシミュレーションが終了すると、シミュレーションした結果に基づいて、貨物の積載位置、積載方向、及び、積載順序を指示した帳票27を作成して出力する(24)。帳票27は現場の作業員に渡され、収容手段28に帳票27に従って顧客1の貨物が積載される。そして、航空機31やトラック29に搭載されて目的地に輸送される。尚、本実施形態では、航空貨物積載シミュレーションシステム6が予約時に使用され,航空貨物積載シミュレーションシステム26が案件確定時に使用されるように説明しているが、一つの航空貨物積載シミュレーションシステムで行なっても構わない。また、総合貨物情報システム25は、各ステーションをオンラインで接続して、貨物の予約から引渡し、更には運賃精算まで、輸送業務の全ての流れ・情報を総合的に管理するシステムである。
【0031】
図2は航空貨物積載シミュレーションシステムの機能ブロック図である。この航空貨物積載シミュレーションシステム60は、貨物の依頼主、貨物の種類、輸送先等の各種情報を入力する情報入力手段50と、貨物の少なくとも幅寸法、奥行き寸法、高さ寸法、重量、及び個数に関するデータを入力する貨物情報入力手段51と、収容手段28に関する情報を入力する空間情報入力手段52と、情報入力手段50、貨物情報入力手段51、及び、空間情報入力手段52により入力された各情報に基づいて、収容手段28内に貨物を効率的に積載する方法をシミュレーションするシミュレーション手段58と、シミュレーション手段58によりシミュレーションした結果に基づいて、貨物の積載位置、積載方向、及び、積載順序を指示した帳票57を作成して出力する帳票出力手段55と、シミュレーション結果である3D(三次元画像)を表示する表示部54と、ネットワークと接続してWebページ上に表示された操作画面により各情報を入力可能とする通信手段と、図示しない記憶手段に記憶されたプログラムに基づいて、各手段を制御する制御手段53と、情報入力手段50、貨物情報入力手段51、及び、空間情報入力手段52により入力された各情報とシミュレーション結果等を格納するデータベース59と、を備えて構成されている。
【0032】
即ち、本実施形態の航空貨物積載シミュレーションシステム60は、情報入力手段50により積載する貨物の各種情報(依頼主、貨物の種類、輸送先等の情報)を入力することにより、データベース59上に管理される。また、個々の貨物に関する情報(幅寸法、奥行き寸法、高さ寸法、重量、及び個数等)と、その貨物を収容する収容空間(パレット又はコンテナ)に関する情報が入力される。そして、シミュレーション手段58は、これらの情報に基づいて、収容手段内に貨物を効率的に積載する方法をシミュレーションする。シミュレーションの結果はハードコピーとして帳票出力手段55により作成されて印刷される。作業員はこの帳票57を見ながら現場で物品を収容手段に積載する。また、各情報は、Webページ上に表示された操作画面により入力できるので、時間を選ばずに何時でもシミュレーションを行うことができる。これにより、最適な積載方法を事前に確認することができると共に、最終結果を帳票出力手段55により出力することにより、現場での作業効率を高めることができる。
また、シミュレーション結果は、3Dとして表示部54に表示される。従って、操作者は、その画像を見ながら、貨物の位置を微調整することにより、シミュレーション結果も変更することができる。これにより、シミュレーションが終了した積載状態を更に最適な積載位置に微調整することができる。
【0033】
また、貨物の中には、積み重ねて積載することができる貨物と積み重ねができない貨物がある。そこで本実施形態では、各積載段ごとに積載する貨物の積載位置、積載方向、及び積載数量を作成するものである。これにより、貨物の積載方法を正確に且つ迅速に認識することができる。
また、データベース59には各種情報毎にシミュレーションした結果を記憶している。従って、貨物を積載する場合、過去に記憶した積載方法の中に同じものがあれば、再度シミュレーションをする必要がなくなる。そこで本実施形態では、貨物を積載する場合、データベース59に記憶されている既存情報を検索し、同じ貨物があればシミュレーション結果を編集できるようにする。これにより、無駄なシミュレーションをなくして、データを有効に活用することができる。
【0034】
図3は新規案件の登録から帳票作成までの流れを示すフローチャートである。まずシステムを立ち上げると、初期画面が表示されてログインのためのID及びパスワードを入力する(S1)。ID及びパスワードが正しければ新規案件のためのメイン画面が表示され、その新規案件をDB59に登録し(S2)、必要な案件情報を入力し(S3)、貨物の少なくとも幅寸法、奥行き寸法、高さ寸法、重量、及び個数に関する貨物情報を入力し(S4)、収容空間に関する積載空間情報を入力する(S5)。入力が終了するとシミュレーション画面を呼び出し(S6)、シミュレーションを開始する(シミュレーションのアルゴリズムの詳細は後述する)(S7)。シミュレーションが完了すると(S8でYES)、シミュレーションを終了し(S9)、メイン画面に復帰する(S10)。ここでシミュレーション結果を微調整するために、シミュレーション結果を三次元表示する3D画面を呼び出すと(S11)、画面上に3D表示が開始され(S12)、画面を見ながら微調整を行なう(S13)。微調整が完了すると(S13でYES)、3D表示を終了させ(S14)、メイン画面に復帰する(S15)。
【0035】
次に、シミュレーション結果を帳票に出力するためにメイン画面から帳票を呼び出し(S16)、それを実行すると帳票が作成され(S17)、帳票の作成が完了すると(S18でYES)、帳票作成を終了して(S19)、帳票データをダウンロードして(S20)、保存する場所を指定して帳票を保存する(S21)。そして、帳票を編集して印刷する(S22)。その帳票データを登録するための画面を呼び出し(S23)、その画面から帳票登録ファイルを選択してアップロードする(S24)。それにより帳票登録が終了して(S25)、帳票画面をクローズして終了し(S26)、メイン画面に復帰する(S27)。そして、ログアウトすることにより(S28)、画面がログイン画面に戻る(S29)。
【0036】
図4は既存案件の編集から帳票作成までの流れを示すフローチャートである。同じ動作は図3と同じステップ番号を付して説明する。まずシステムを立ち上げると、初期画面が表示されてログインのためのID及びパスワードを入力する(S1)。そしてDB59を検索して(S30)、既存案件が存在した場合(S31でYES)、その案件を確定する(S32)。次に、貨物の少なくとも幅寸法、奥行き寸法、高さ寸法、重量、及び個数に関する貨物情報を編集し(S33)、収容空間に関する積載空間情報を編集する(S34)。これ以降は、図2のステップS6以降の動作と同じであるため、説明を省略する。
【0037】
図5はWebUIから3D連携する動作を説明するフローチャートである。まず、3D画面を呼び出し(S35)、その画面が表示されると画面を見ながら操作する(S36)。操作が終了すると、そのデータをセーブする(S37)。セーブされたシミュレーションのデータは当然変更されているので、再びその画面を呼び出し(S38)、WebUI「B/U Plan」を実行し(S39)、そのデータをセーブする(S40)。この段階で3Dを操作する場合は3D画面を再び呼び出して(S41)、ステップS36から繰り返す。また、シミュレーションを繰り返す場合は、シミュレーションを実行して(S43)、3Dを呼び出してステップS36から繰り返す。
【0038】
図6、図7は積載アルゴリズムの既存のBL法について説明する図である。BL法は、二次元パッキングのアルゴリズムであり、本発明のBLD法を理解するために必要であるため先に説明する。図6(a)は、積載する貨物に積載順に番号を付与した図である。本実施形態では、10個の貨物をパレット40に積載する場合について説明する。図6(b)は、パレット40を側面から見た図であり、各辺を夫々41,42,43,44とする。そして、辺41の最も下(Bottom)にあり、且つ辺44の左側(Left)の点aを初期積載候補点と呼ぶ。BL法のアルゴリズムの基本は、番号が付与された貨物を番号順に図6(b)に示すようになるべく下(Bottom)、積載候補点(後述する)が同じ高さであればできる限り左(Left)に積載するアルゴリズムである。
【0039】
以下、図6(c)〜(l)を参照して貨物1〜貨物10が積載される手順について説明する。尚、説明を簡略化するために、パレットと各貨物の形状を矩形として説明する。
図6(c):貨物1は、貨物1の1つの頂点が初期積載候補点aに合致するように積載する。そのとき、辺44に貨物1の頂点が合致する積載候補点(以下、単に候補点と呼ぶ)Aと、辺41に貨物1の頂点が合致する候補点Bが発生する。アルゴリズムの定義により、候補点AがBよりBottomであるので、候補点の優先順位はA、Bとなる。
図6(d):貨物2は、貨物2の1つの頂点が優先順位の高い候補点Aに合致するように積載する。そのとき、辺44に貨物2の頂点が合致する候補点Cと、貨物1の辺と貨物2の頂点が合致する候補点Dが発生する。アルゴリズムの定義により、候補点Cが最もBottomであるので、候補点の優先順位はC,D、Bとなる。
図6(e):貨物3は、貨物3の1つの頂点が優先順位の高い候補点Cに合致するように積載する。そのとき、辺44に貨物3の頂点が合致する候補点は存在しないので、前の候補点B、Dが残る。
図6(f):貨物4は、貨物4の1つの頂点が優先順位の高い候補点Dに合致するように積載する。そのとき、貨物3の辺に候補点Eが発生する。従って、候補点はB、Eとなる。アルゴリズムの定義により、候補点Bが最もBottomであるので、候補点の優先順位はB,Eとなる。
【0040】
図7(g):貨物5は、貨物5の1つの頂点が優先順位の高い候補点Bに合致するように積載する。そのとき、貨物1の辺に候補点Fが発生する。従って、候補点はE,F,Gとなる。アルゴリズムの定義により、候補点Fが最もBottomであるので、候補点の優先順位はF,E,Gとなる。
図7(h):貨物6は、貨物6の1つの頂点が優先順位の高い候補点Fに合致するように積載したいが、その場所には貨物6は積載不可能である。従って、次の優先順位である候補点Eに合致するように積載する。そのとき、貨物3の辺に候補点Hが発生する。従って、候補点はF,G,Hとなる。アルゴリズムの定義により、候補点Fが最もBottomであるので、候補点の優先順位はF,H,Gとなる。
図7(i):貨物7は、貨物7の1つの頂点が優先順位の高い候補点Fに合致するように積載したいが、その場所には貨物7は積載不可能である。従って、次の優先順位である候補点Hに合致するように積載する。そのとき、貨物3の辺に候補点Jが発生する。従って、候補点はF,G,I,Jとなる。アルゴリズムの定義により、候補点Fが最もBottomであるので、候補点の優先順位はF,J,G,Iとなる。
【0041】
図7(j):貨物8は、貨物8の1つの頂点が優先順位の高い候補点Fに合致するように積載したいが、その場所には貨物8は積載不可能である。従って、次の優先順位である候補点Jに合致するように積載したいが、その場所も貨物8は積載不可能であるので、次の優先順位である候補点Gに合致するように積載する。そのとき、貨物4の辺に候補点Kが発生する。従って、候補点はJ,I,K,Lとなる。アルゴリズムの定義により、候補点Jが最もBottomであるので、候補点の優先順位はJ,K,I,Lとなる。
図7(k):貨物9は、貨物9の1つの頂点が優先順位の高い候補点Jに合致するように積載したいが、その場所には貨物9は積載不可能である。従って、次の優先順位である候補点Kに合致するように積載したいが、その場所も貨物9は積載不可能であるので、次の優先順位である候補点Iに合致するように積載する。そのとき、貨物7の辺に貨物9の頂点が合致する候補点は存在しないので、前の候補点J,K,Lが残る。アルゴリズムの定義により、候補点Jが最もBottomであるので、候補点の優先順位はJ,K,Lとなる。
図7(l):貨物10は、貨物10の1つの頂点が優先順位の高い候補点Jに合致するように積載したいが、その場所には貨物10は積載不可能である。従って、次の優先順位である候補点Kに合致するように積載する。そのとき、貨物4の辺に貨物10の頂点が合致する候補点Mが発生する。アルゴリズムの定義により、候補点Jが最もBottomであるので、候補点の優先順位はJ,M,Lとなる。ここまでで全ての貨物の積載が終了する。
【0042】
図8は本発明の積載アルゴリズムのBLD法について説明する図である。BLD法は上記で説明した二次元パッキングのBL法を三次元に応用したものである。図8(a)は、積載する貨物に積載順に番号を付与した図である。本実施形態では、4個の貨物をコンテナ45に積載する場合について説明する。図8(b)は、コンテナ45を斜め後方から見た図であり、各辺を夫々46,47,48とする。そして、最も下(Bottom)であり、且つ左側(Left)であり、且つ手前側にある点aを初期積載候補点と呼ぶ。BLD法のアルゴリズムの基本は、番号が付与された貨物を番号順に図8(b)に示すようになるべく下(Bottom)、積載候補点が同じ高さであればできる限り左(Left)で、且つできる限り手前に積載するアルゴリズムである。尚、図8(b)では、方向を矢印P側から見た場合を表し、矢印Pの反対側から内部を透視した図として表している。
以下、図8(c)〜(f)を参照して貨物1〜貨物4が積載される手順について説明する。尚、説明を簡略化するために、コンテナと各貨物の形状を直方体又は立方体として説明する。
【0043】
図8(c):貨物1は、貨物1の1つの頂点が初期積載候補点aに合致するように積載する。そのとき、辺47に貨物1の頂点が合致する候補点Aと、辺48に貨物1の頂点が合致する候補点Bと、辺46に貨物1の頂点が合致する候補点Cが発生する。アルゴリズムの定義により、候補点Aと候補点Bは同じ高さであるが、候補点Aが最も左側であるので、候補点の優先順位はA、B、Cとなる。
図8(d):貨物2は、貨物2の1つの頂点が優先順位の高い候補点Aに合致するように積載する。そのとき、辺47に貨物2の頂点が合致する候補点Dと、貨物1の辺と貨物2の頂点が合致する候補点E,Fが発生する。アルゴリズムの定義により、候補点B,D,Eは同じ高さであるが、候補点Dが最も左側であるので、候補点の優先順位はD,E,B,F,Cとなる。
【0044】
図8(e):貨物3は、貨物3の1つの頂点が優先順位の高い候補点Dに合致するように積載したいが、その場所には貨物3は積載不可能である。従って、次の優先順位である候補点Eに合致するように積載したいが、その場所も貨物3は積載不可能である。従って、次の優先順位である候補点Bに合致するように積載する。そのとき、辺48に貨物3の頂点が合致する候補点Gと、貨物1の辺と貨物3の頂点が合致する候補点Hが発生する。アルゴリズムの定義により、候補点G,D,Eは同じ高さであるが、候補点Dが最も左側であるので、候補点の優先順位はD,E,G,F,H,Cとなる。
図8(f):貨物4は、貨物4の1つの頂点が優先順位の高い候補点Dに合致するように積載したいが、その場所には貨物4は積載不可能である。従って、次の優先順位である候補点Eに合致するように積載したいが、その場所も貨物4は積載不可能である。従って、次の優先順位である候補点Gに合致するように積載する。そのとき、辺48に貨物3の頂点が合致する候補点Iと、貨物3の辺と貨物4の頂点が合致する候補点Jが発生する。アルゴリズムの定義により、候補点D,E、J,Iは同じ高さであるが、候補点Dが最も左側であるので、候補点の優先順位はD,E,J,I,F,H,Cとなる。ここまでで全ての貨物の積載が終了する。
【0045】
即ち、各貨物には、予め積載しようとする順番に従って番号を付与し、この番号順に積載してゆく。そして、番号順にコンテナ45に積載する場合、所定の積載基準により規定される候補点を手掛かりとした積載手順に基づいた積載を行う。即ち、積載手順として、第1にコンテナ45の最も底部であること、第2の基準として左側であること、第3の基準として手前側であること、といった優先順位を決めて積載して、貨物が全て積載完了するまでこの積載手順を繰り返すものである。これにより、積載手順が規格化されて、シミュレーションの計算速度を速めることができる。
また、本実施形態のアルゴリズムの基本は、第1から第3の積載基準に基づいて行なわれる。しかし、その基準以外に、幾つかの条件に基づいてシミュレーションされる。即ち、物品の重心を可能な限り低くしたり、同じ物品は上に積載したり、大きさを揃えて積載したり、又は、積載率が高くなるように積載する等の条件の何れか一つを更に加味してシミュレーションするものである。これにより、シミュレーションの精度が高くなると共に、積載結果が意図した積載方法に近づけることができる。
【0046】
また、積載する貨物には、それぞれ属性が存在する。例えば、重量が重いために最下段にしか積載できない貨物や、堅牢な材質で構成されているために、どのような貨物でも上に乗せることができる貨物や、破損し易いために上に乗せることができない貨物や、同一貨物の場合のみ重ねることができるという貨物がある。これらの貨物の属性を考慮することにより、シミュレーションの結果に基づいて積載しても、貨物の破損といった事故を未然に防止することができる。
また、貨物の中にはセットとして構成されているものがある。例えば、パソコンの表示部と本体などがある。このようなセットとしての貨物は、積載する収容空間が同じほうが好ましい。そこで本実施形態では、積載方向を固定したり、貨物の位置を固定したり、貨物の内径寸法と外形寸法を考慮したり、はみ出しを考慮してシミュレーションしたり、複数の貨物をセットとして取り扱ったりすることをシミュレーション時の条件とするものである。これにより、異型の貨物の積載を容易とし、積載時の積載効率を高めると共に、セット貨物の積み下ろし時の時間を短縮することができる。
【0047】
また、本発明の積載アルゴリズムは、条件としてコンテナ45と貨物1〜貨物4を直方体又は立方体と仮定する。そして、コンテナ45の底面に含まれる1つの頂点aを初期積載候補点とする。貨物1は、まずこの初期積載候補点aに貨物の底面に含まれる1つの頂点を合致するように積載する。これにより、貨物1の各頂点とコンテナ45の辺とが合致する点が発生し、それらの点を次の候補点とする。次の貨物2を積載する場合は、各候補点の中で優先順位が高い順に貨物2の底面に含まれる頂点が合致するように積載する。この手順を順次繰り返して、全ての貨物が積載終了するまで繰り返す。このアルゴリズムをBLD法(Bottom Left Depth Algorithm)と呼ぶ。
また、貨物の形状には、長尺貨物、背の高い貨物等、いろいろな形状が存在する。しかし、コンテナ45は限定された大きさのため、BLD法により積載していくと、最優先順位の候補点に積載しようとしても、コンテナ45内に収容しきれない貨物も出てくる。そのような場合は、候補点の優先順位が高くても、次の優先順位の候補点に貨物の頂点が合致するように積載する。これにより、優先順位の高い順に可能な限り貨物を積載することができる。
また、BLD法では、最も底部で、且つ左側で、且つ手前の候補点が最も優先順位が高い。従って、この候補点から順次優先順位を決定する。即ち、次の優先順位は、底面に含まれる候補点が複数ある場合は、その中で、2番目に左側に近い候補点が次の優先順位となる。これにより、優先順位の基準が決定され優先順位を順次決定することができる。
【0048】
図9は本発明の最適解を探索するアルゴリズムの動作を説明するフローチャートである。まず、貨物の並び順を決める(S51)。このとき、ランダムに並べるが、体積順、幅順を考慮してチューニングが必要である。次に、並び順に従って積載する(積載の処理フローは図10参照)(S52)。更に、並び順はそのままで貨物の向きを変更して(S53)積載する(S54)。これをN通り繰り返す。次に、2つの貨物の並び順を入れ替えて(S55)積載する(S56)。これをN(N−1)/2通り繰り返す。そして指定試行回数分、このフローを繰り返し、積載率が最大のものを結果として出力する(S57)。以上の動作を指定反復回数繰り返す。
【0049】
図10は図9のステップS52,S54,S56に係る積載処理のフローチャートである。貨物の並び順の通りに貨物を選択する(S60)。選択した貨物をULDに積載する(S61)。そのとき積載可能な積載候補点を見つけて積載する(S62)。積載した貨物が選択したULDに積載可能か否かを判断する(S63)。そのULDに積載不可ならば(S63でNO)次のULDへの積載を試みて、積載可能なULDが見つかるまで繰り返す(S66〜S68)。ステップS63で積載可能であれば(S63でYES)そのULDに積載し(S64)、積載候補点を更新する(S65)。全ての貨物の積載をこのフローで試みる。
【0050】
図11は図9のステップS53に係る回転処理の詳細フローチャートである。まず、N個の貨物の中から1つの貨物を選択し、L×W面を回転する(S71)。このとき選び方はN通りである。次に、そのときの積載体積V’を算出し(S72)、もとの体積Vと比較して(S73)、積載率が減少したら元の向きに戻して別の貨物を回転してみる(S80)。ステップS73で積載率が増加したら(S73でYES)、元の体積Vを更新して(S74)、また1つの貨物の向きを回転させる(S76)。そして、そのときの積載体積V’を算出し(S77)、もとの体積Vと比較して(S78)、積載率が減少したら全てを元の向きに戻して別の貨物を回転してみる(S80)。ステップS78で積載率が増加したら(S78でYES)、元の体積Vを更新して(S79)繰り返す。このフローをN通り繰り返し、積載率が最大のものを結果とする。
【0051】
図12は図9のステップS55に係る順番入れ替えの詳細フローチャートである。まず、N個の貨物の中から2つの貨物を選択し、順番を入れ替える(S91)。このとき選び方はN(N−1)/2通りである。次に、そのときの積載体積V’を算出し(S92)、もとの体積Vと比較して(S93)、積載率が減少したら元に戻して別の貨物を入れ替える(S96)。ステップS93で積載率が増加したら(S93でYES)、元の体積Vを更新して(S94)、また2つの貨物の順番を入れ替える(S96)。そして、そのときの積載体積V’を算出し(S97)、もとの体積Vと比較して(S98)、積載率が減少したら全ての入れ替えた貨物の並び順を元に戻す(S101)。ステップS98で積載率が増加したら(S98でYES)、元の体積Vを更新して(S99)繰り返す。このフローをN(N−1)/2通り繰り返し、積載率が最大のものを結果とする。
【0052】
以上の説明では、航空機貨物をパレット又はコンテナに積載する場合を例にして説明したが、本発明は、貨物をトラック、貨車或いは船舶に積載する場合にも適用可能であることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係るステーション内の貨物積載システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】航空貨物積載シミュレーションシステムの機能ブロック図である。
【図3】新規案件の登録から帳票作成までの流れを示すフローチャートである。
【図4】既存案件の編集から帳票作成までの流れを示すフローチャートである。
【図5】WebUIから3D連携する動作を説明するフローチャートである。
【図6】積載アルゴリズムのBL法について説明する図(その1)である。
【図7】積載アルゴリズムのBL法について説明する図(その2)である。
【図8】本発明の積載アルゴリズムのBLD法について説明する図である。
【図9】本発明の最適解を探索するアルゴリズムの動作を説明するフローチャートである。
【図10】図9のステップS52,S54,S56に係る積載処理のフローチャートである。
【図11】図9のステップS53に係る回転処理の詳細フローチャートである。
【図12】図9のステップS55に係る順番入れ替えの詳細フローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
6、26、60 航空貨物積載シミュレーションシステム、17、59 データベース、50 情報入力手段、51 貨物情報入力手段、52 空間情報入力手段、53 制御手段、54 表示部、55 帳票出力手段、56 通信手段、57 帳票、58 シミュレーション手段、100 貨物積載システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物品を収容空間内に効率的に積載する方法をシミュレーションし、該シミュレーション結果に基づいて前記物品を前記収容空間内に積載する手順を提示する物品積載システムであって、
前記物品の少なくとも幅寸法、奥行き寸法、高さ寸法、重量、及び個数に関するデータを入力する物品情報入力手段と、
前記収容空間に関する情報を入力する空間情報入力手段と、
前記物品情報入力手段、及び、空間情報入力手段により入力された各情報に基づいて、前記収容空間内に該物品を効率的に積載する方法をシミュレーションするシミュレーション手段と、
該シミュレーション手段によりシミュレーションした結果に基づいて、前記物品の積載位置及び積載方向、又は前記物品の積載位置、積載方向、及び、積載順序を指示した帳票を作成して出力する帳票出力手段と、を備え、
前記各情報は、Webページ上に表示された操作画面により入力可能としたことを特徴とする物品積載システム。
【請求項2】
前記シミュレーション手段は、前記各物品に付与した積載順序を示す番号順に積載する際に、所定の積載基準により規定される積載候補点を手掛かりとした積載手順に基づいた積載を行い、
第1の基準として前記収容空間の最も底部であること、第2の基準として左側又は右側の何れか一方であること、第3の基準として手前又は奥側の何れか一方であること、を順次積載基準として前記積載候補点を定めて、前記番号を付した物品が全て積載完了するまで前記積載手順を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の物品積載システム。
【請求項3】
前記積載基準以外に、前記物品の重心が最も低くなるように積載すること、又は積載のし易さとして同じ物品を上に積載すること、又は前記物品の積載方向と大きさが揃うように積載すること、又は積載率が高くなるように積載すること、の少なくとも何れか一つを加味することを特徴とする請求項2に記載の物品積載システム。
【請求項4】
前記シミュレーション手段のアルゴリズムは、物品の形状を直方体又は立方体と仮定し、該収容空間の底面に含まれる頂点の一つを初期積載候補点とし、最初に積載する物品の底面に含まれる何れか一つの頂点が前記初期積載候補点に合致するように積載し、該物品の何れかの頂点と前記収容空間の辺とが合致する点を次の積載候補点とし、次の物品を積載するときは、前記次の積載候補点の中で最も優先順位が高い積載候補点に該次の物品の前記頂点が合致するように積載する手順を繰り返すことを特徴とする請求項2又は3に記載の物品積載システム。
【請求項5】
前記シミュレーション手段のアルゴリズムは、前記次の積載候補点の中で最も優先順位が高い積載候補点に前記次の物品の頂点が合致するように積載することが不可能な場合、次の優先順位の積載候補点に前記次の物品の頂点が合致するように積載することを特徴とする請求項2、3又は4に記載の物品積載システム。
【請求項6】
前記積載候補点のうち、前記収容空間の最も底部にあり、左側又は右側の何れか一方にあり、且つ手前又は奥側の何れか一方にある積載候補点を、前記最も優先順位が高い積載候補点とすることを特徴とする請求項4又は5に記載の物品積載システム。
【請求項7】
前記シミュレーション手段は、最下段しか積載できないという属性と、どのような物品でも上に乗せることができるという属性と、上に乗せてはいけないという属性と、同一物品の場合のみ重ねることができるという属性と、をシミュレーション時に考慮する物品の属性とすることを特徴とする請求項4又は5に記載の物品積載システム。
【請求項8】
前記シミュレーション手段は、前記物品の積載方向を固定してシミュレーションすること、三次元画面での物品位置を固定すること、内径寸法と外形寸法を考慮して積載位置をシミュレーションすること、はみ出しを考慮してシミュレーションすること、及び、複数の物品をセットとして取り扱うことをシミュレーション時に考慮する条件及び可能な操作とすることを特徴とする請求項4又は5に記載の物品積載システム。
【請求項9】
前記シミュレーション手段は、シミュレーション結果を三次元画像としてリアルタイムに表示して、前記操作画面により前記三次元画像を任意に調整することにより、該シミュレーション結果を変更可能としたことを特徴とする請求項1に記載の物品積載システム。
【請求項10】
前記帳票出力手段は、前記収容空間毎に積載する物品の積載位置、積載方向、及び積載数量を各積載段ごとに表示することを特徴とする請求項1に記載の物品積載システム。
【請求項11】
前記シミュレーション手段がシミュレーションした結果を記憶するデータベースを備え、該データベースに記憶されているシミュレーション結果を編集可能としたことを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の物品積載システム。
【請求項12】
複数の物品を収容空間内に効率的に積載する物品積載シミュレーション方法であって、
前記各物品に付与した積載順序を示す番号順に積載する際に、所定の積載基準により規定される積載候補点を手掛かりとした積載手順に基づいた積載を行い、
第1の基準として前記収容空間の最も底部であること、第2の基準として左側又は右側の何れか一方であること、第3の基準として手前又は奥側の何れか一方であること、を順次積載基準として前記積載候補点を定めて、前記番号を付した物品が全て積載完了するまで前記積載手順を繰り返すことを特徴とする物品積載シミュレーション方法。
【請求項13】
前記物品の形状を直方体又は立方体と仮定し、該収容空間の底面に含まれる頂点の一つを初期積載候補点とし、最初に積載する物品の底面に含まれる何れか一つの頂点が前記初期積載候補点に合致するように積載し、該物品の何れかの頂点と前記収容空間の辺と合致する点を次の積載候補点とし、次の物品を積載するときは、前記次の積載候補点の中で最も優先順位が高い積載候補点に該物品の前記頂点が合致するように積載する手順を繰り返すことを特徴とする請求項12に記載の物品積載シミュレーション方法。
【請求項14】
前記次の積載候補点の中で最も優先順位が高い積載候補点に前記次の物品の前記頂点が合致するように積載することが不可能な場合、次の優先順位の積載候補点に前記次の物品の前記頂点が合致するように積載することを特徴とする請求項12又は13に記載の物品積載シミュレーション方法。
【請求項15】
前記積載候補点のうち前記収容空間の最も底部であり、且つ左側又は右側の何れか一方であり、且つ手前又は奥側の何れか一方に位置する積載候補点を前記最も優先順位が高い積載候補点とすることを特徴とする請求項12、13又は14に記載の物品積載シミュレーション方法。
【請求項16】
請求項12乃至15の何れか一項に記載の物品積載シミュレーション方法をコンピュータが制御可能にプログラミングしたことを特徴とする物品積載シミュレーションプログラム。
【請求項17】
請求項16に記載の物品積載シミュレーションプログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録したことを特徴とする記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−265970(P2008−265970A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112418(P2007−112418)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(507132547)日本貨物航空株式会社 (1)
【出願人】(591280197)株式会社構造計画研究所 (59)
【Fターム(参考)】