説明

物品管理システム及び物品管理方法

【課題】物品に添付されたICタグ内に格納された物理情報に基づいて適切な物品管理を行う。
【解決手段】物品1にICタグ101と共に添付された検知材の示す色を測定する手段3で測定された色を第1物理情報に変換する。次に、前記ICタグ101の内部に予め備えられた記録領域に対し、該第1物理情報をICタグアクセス手段2を用いて記録する。そして、ICタグ101から読み出した第2物理情報と前記第1物理情報を比較できるように表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC(Integrated Circuit)タグを用いた物品管理システム及び物品管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、流通における上流から下流までの過程にわたって物品管理(例えば、サプライチェーンマネジメント)を行うシステムとして、ICタグを用いた物品管理システムが、数々提案または実現されている。さらに、このような物品管理システムには、物品に関する温度管理を行うシステムも提案されている。温度管理システムの一例(例えば、特許文献1参照)を以下に説明する。
【0003】
輸送される監視(あるいは管理)対象物は、対象物ID(Identifier)情報を有する無線装置と共に輸送される。次に、その監視対象物に関する温度を含む輸送状態情報が、所定の測定手段によって測定される。その後に、輸送経路上にあって受信手段を有する情報収集装置に対して前記無線装置によって送信される。
【0004】
前記無線装置は、具体的には、温度センサ等の輸送状態情報測定手段を搭載する無線アクティブタグにより実現される。このようなセンサ搭載アクティブタグは、自ら電波を発する無線装置であるために電池を搭載し、かつ、輸送状態情報を無線送信する前に自らに該輸送状態情報を随時記録しておく追記可能な電子的な記録媒体を搭載するものである。それ故、センサ搭載アクティブタグは、一般に高価であり、かつ、ある程度の物理的大きさを有する。
【0005】
以上のように、センサ搭載アクティブタグを使用して監視を行う条件は、次の通りである。まず、監視対象物である物品自体が、センサ搭載アクティブタグを付すに足るほどの価値があり、かつ、大きさが十分であること。あるいは、監視対象物の集合体(例えば、監視対象物が多数収められた箱単位,輸送パレット単位,輸送コンテナ単位)がセンサ搭載アクティブタグを付すほどの価値があり、かつ、大きさが十分であること。
【0006】
また、センサ搭載アクティブタグは電池を搭載するため、ある時点で、電池交換しなければならないという問題があった。さらに、センサ搭載アクティブタグは一般に高価であるために、輸送過程の最終段階で回収して使いまわす手立てを講じる必要があった。
【特許文献1】特願2006−76687号公報(段落[0024]〜[0025]等)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような物品に関する温度管理システムでは、物品の温度情報(例えば、電子温度計から得られる温度情報)を電子的に記録する記録媒体を該物品に添付する必要がある。そのため、前記記録媒体の機能を前記物品に添付されたICタグの記録部において実現する場合、該ICタグの記録部は、温度情報を記録するために、追記可能でなければならない。さらに、ICタグの記録部は、前記物品のID情報(即ち、物品を識別する識別子を含む情報)のみを格納する場合に比して大きな容量を備えざるを得ない。
【0008】
以上のように、ID情報のみを格納するICタグに比して高価なICタグを使用せざるを得ず、ICタグを付すべき対象の数に比例した数の高価なICタグを使用するため、結果的に、安価な温度管理システムを提供できない。
【0009】
また、高価なICタグを輸送過程の最終段階で回収して使いまわす手立てを講じる場合でも、その手立てのためにコストと手間を必要とするため、結果的に、安価な温度管理システムを提供できない。
【0010】
上述のようなシステムの他にも、物品を識別するID情報を記録したICタグから該ID情報を読み取るICタグリーダを備え、該ICタグと温度などの物理状態を検知する検知材が添付された物品の物理変化(例えば、温度変化)を管理する物品管理システムを想定できる。
【0011】
例えば、前記物品管理システムは、次のような動作を行う。まず、検知材の示す色を測定し、その検知材(例えば、示温材)の示す色を物理情報(例えば、温度情報)に変換する。そして、その物理情報とICタグリーダによって読み取られたID情報を関連付けてID物理データを形成し、前記ICタグの外部に存在する物理データ管理手段(例えば、データベース)に対し該ID物理データを記録する。
【0012】
上述の該ICタグと検知材が添付された物品の物理変化を管理する物品管理システムでは、ICタグの外部に存在する物理データ管理手段に対し物品の管理状態を示すID物理データを上述の物理データ管理手段に記録する手段を有している。
【0013】
上述の物理データ管理手段がICタグの外部に存在するため、もし、ICタグと物理データ管理手段の間の連絡が絶たれた場合、ID物理データを記録することができず、前回測定時における物品の管理状態と今回測定時における物品の管理状態との比較に基づいて物品管理することができない。
【0014】
例えば、今回測定時における物品の管理状態が、前回測定時における物品の管理状態に比して大きく乖離した事象が生じても、該事象を知ることが出来ず、適切な物品管理ができない。
【0015】
本発明は、前記課題に基づいてなされたものであって、物品に添付されたICタグ内に格納された物理情報に基づいて適切な物品管理を行う物品管理システム及び物品管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題の解決を図るために、請求項1記載の発明は、物品を識別するID情報を内部に記録したICタグを有し、前記ICタグの内部の情報にアクセスするICタグアクセス手段を備え、該ICタグと検知材が添付された物品の物理変化を管理する物品管理システムであって、前記検知材の示す色を測定する手段と、該検知材の示す色を第1物理情報に変換する手段と、前記ICタグの内部に予め備えられた記録領域に対し、該第1物理情報を前記ICタグアクセス手段を用いて記録する物理情報記録手段と、ICタグから読み出した第2物理情報と前記第1物理情報を比較できるように表示する比較表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記色を測定した際の第1測定時刻情報を、時刻管理手段から取得する時刻取得手段、を備え、前記物理情報記録手段が、前記ICタグの内部に存在する記録領域に対し、前記第1物理情報と前記第1測定時刻情報を組み合わせを記録し、前記比較表示手段が、ICタグから読み出した第2物理情報及び第2測定時刻情報の組み合わせと前記第1物理情報及び第1測定時刻情報の組み合わせを比較できるように表示する、ことを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記色を測定した際の第1測定時刻情報を、時刻管理手段から取得する時刻取得手段と、前記色を測定した際の第1測定場所情報を、場所管理手段から取得する場所取得手段と、を備え、前記物理情報記録手段が、前記ICタグの内部に存在する記録領域に対し、前記第1物理情報と第1時刻情報と第1測定場所情報とを組み合わせを記録し、前記比較表示手段が、ICタグから読み出した第2物理情報,第2測定時刻情報,第2測定場所情報の組み合わせと前記第1物理情報,第1測定時刻情報,第1測定場所情報の組み合わせを比較できるように表示する、ことを特徴とする。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記検知材が、前記物品に対して定められた物理管理条件から逸脱した場合に、色の変化を示し、該色の変化が不可逆である、ことを特徴とする。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記ICタグと前記検知材とが一体に形成されている、ことを特徴とする。
【0021】
請求項6記載の発明は、物品を識別するID情報を内部に記録したICタグを有し、前記ICタグの内部の情報にアクセスするICタグアクセス手段と、前記検知材の示す色を測定する測定手段と、を備え、該ICタグと検知材が添付された物品の物理変化を管理するシステムに使用する物品管理方法であって、前記測定手段を用いて前記検知材の示す色を測定するステップと、該検知材の示す色を第1物理情報に変換するステップと、前記ICタグの内部に予め備えられた記録領域に対し、該第1物理情報を前記ICタグアクセス手段を用いて記録する物理情報記録ステップと、ICタグから読み出した第2物理情報と前記第1物理情報を比較できるように表示する比較表示ステップと、を有することを特徴とする。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記色を測定した際の第1時刻情報を時刻管理手段から取得する時刻取得ステップ、を有し、前記物理情報記録ステップが、前記ICタグの内部に存在する記録領域に対し、前記第1物理情報と前記第1時刻情報とを組み合わせを記録し、前記比較表示ステップが、ICタグから読み出した第2物理情報及び第2測定時刻情報の組み合わせと前記第1物理情報及び第1測定時刻情報の組み合わせを比較できるように表示する、ことを特徴とする。
【0023】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記色を測定した際の第1時刻情報を時刻管理手段から取得する時刻取得ステップと、前記色を測定した際の第1測定場所情報を場所管理手段から取得する場所取得ステップと、を有し、前記物理情報記録ステップが、前記ICタグの内部に存在する記録領域に対し、前記第1物理情報と前記第1時刻情報と前記第1測定場所情報とを組み合わせを記録し、前記比較表示手ステップが、ICタグから読み出した第2物理情報,第2測定時刻情報,第2測定場所情報の組み合わせと前記第1物理情報,第1測定時刻情報,第1測定場所情報の組み合わせを比較できるように表示する、ことを特徴とする。
【0024】
請求項9記載の発明は、請求項6乃至8のいずれかに記載の発明において、前記検知材に、前記物品に対して定められた物理管理条件から逸脱した場合に、色の変化を示し、該色の変化が不可逆である検知材を採用する、ことを特徴とする。
【0025】
請求項10記載の発明は、請求項6乃至9のいずれかに記載の発明において、前記ICタグと前記検知材とを一体に形成したタグを添付した物品を管理対象とする、ことを特徴とする。
【0026】
前記請求項1,6の発明によれば、測定時に、前記ICタグの内部に検知材の示す物理情報を書き込むことができる。測定した際の物理情報とICタグから読み取った物理情報を表示できる
前記請求項2,7の発明によれば、前記物理情報と該物理情報を読み取った際の時刻情報とを関連付けた情報をICタグに記録できる。測定した際の物理情報,測定時刻とICタグから読み取った物理情報,測定時刻を表示できる。
【0027】
前記請求項3,8の発明によれば、前記物理情報と該物理情報を読み取った際の時刻情報と該物理情報を読み取った場所の場所情報を関連付けた情報をICタグに記録できる。測定した際の物理情報,測定時刻,場所とICタグから読み取った物理情報,測定時刻,場所を表示できる。
【0028】
前記請求項4,9の発明によれば、検知材の色の変化の結果を維持できる。
【0029】
前記請求項5,10の発明によれば、物品に前記ICタグと前記検知材を同時に添付できる。
【発明の効果】
【0030】
以上示したように請求項1,6の発明によれば、前記ICタグの内部に存在する物理情報を読み出せば、測定時における物理情報を知ることが出来る。作業担当者が、測定した際の物理情報とICタグから読み取った物理情報を比較できる。よって、該測定時における物品の管理状態を管理できる。
【0031】
請求項2,7の発明によれば、測定した物理情報と時刻をICタグから読み出せば、該測定時における物品の管理状態をより精緻に知ることが出来る。作業担当者が、測定した際の物理情報と測定時刻とICタグから読み取った物理情報と測定時刻を比較できる。
【0032】
請求項3,8の発明によれば、測定した物理情報と場所と時刻とをICタグから読み出せば、該測定時における物品の管理状態をより精緻に知ることが出来る。作業担当者が、測定した際の物理情報,測定時刻,場所とICタグから読み取った物理情報,測定時刻,場所を比較できる。
【0033】
請求項4,9の発明によれば、前記検知材が、前記物品に対して定められた物理管理条件から逸脱した場合に、色の変化を示すことができる。また、前記色の変化が不可逆であるため、物理管理条件からの逸脱の後においても、色の変化を知ることができる。
【0034】
請求項5,10の発明によれば、前記ICタグと前記検知材とが一体に形成されるため、特定のIDを持つ特定の物品について、物理情報の管理が簡便で確実にできる。
【0035】
これらを以って物品管理サービス分野に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本実施形態における物品管理システムの装置構成を図1に基づいて説明する。
【0037】
図1における物品管理システムのシステム構成は、管理対象である物品1の物理変化を検知する検知材(物理変化を検知し変色して表す部材;別称はインジケータ)が塗布されたICタグ101,ICタグアクセス手段であってICタグ101から情報を読取る(またはICタグ101に情報を格納する)ICタグリーダライタ(ICタグへアクセスするICタグアクセス手段)2,色を測定する色彩計3,ICタグリーダライタ2と色彩計3が接続された汎用的な計算機(例えば、パーソナルコンピュータ)4,計算機4に格納された色と物理的な変化(例えば、温度変化,湿度変化,紫外線変化)の対応関係を示す対応表401,計算機4が接続されたネットワーク5,ネットワーク5に接続された物品管理センタ6,物品管理センタ6に備えられた物品データ管理手段(例えば、物品管理データベース)601から構成される。
【0038】
なお、以下では、検知材として示温材、物理的な変化として温度変化をそれぞれ採用して説明する。また、示温材と検知材を区別することもあるが、以下の説明では、示温材も検知材の一種として扱う。ICタグ101は、図示省略されているが、情報(例えば、ID情報)を格納するための記憶領域を有する記憶装置(例えば、不揮発性メモリ),無線で情報を入出力するインタフェース装置を備える。計算機4は、計算機4内で扱われる情報を格納し管理する記憶部(例えば、メモリやハードディスク装置)を備える。また、前記物品管理システムでは、ICタグと前記検知材とを一体に形成したタグを用いても良い。
【0039】
図1中の物品1に、物品1のID情報が記録されているICタグ101が貼付してある。なお、ICタグは、RFID(Radio Frequency Identification)、RF(Radio Frequency)タグ、電子タグとも呼ばれる。図1中のICタグ101はシート状であり、表面に検知材として示温材が塗布してあるものとする。また、剥がされないように、ICタグに示温材が含まれるシールが貼付してある実施形態でも無論構わない。
【0040】
その示温材は、温度によって異なる色を呈する材料であって、サーモクロミック材料などとも呼ばれ、日本国内においても、いくつかのメーカから市販されており、商品形態も、適用できる温度範囲も様々である。本実施形態におけるICタグ101に塗布された示温材は、少なくとも、物品1の保管すべき温度範囲と、該温度範囲を逸脱した温度範囲とで、異なる色を呈する必要がある。
【0041】
本実施形態において、物品1の温度が、物品1の保管すべき温度範囲(即ち、物理量的範囲、あるいは、物理管理条件)から逸脱した温度範囲に移行した場合、ICタグ101に塗布された示温材の色は変化するが、該変化は不可逆であるものとする。すなわち、一旦、物品1の保管すべき温度範囲から逸脱した場合、その後、物品1の保管すべき温度範囲に復帰した場合でも、ICタグ101に塗布された示温材の色は、物品1の保管すべき温度範囲を示す色に復帰しない。そのため、色の変化が不可逆な示温材は、その色の変化の結果を維持できる。
【0042】
本実施形態では、ICタグ101に記録されているID情報をICタグリーダライタ2によって一旦読み取り、そのID情報の読み取り作業の際、ICタグ101に塗布された示温材の色を、色彩計3によって測定する。
【0043】
なお、色彩計の代わりに分光測色計と呼ばれる測定器を用いても無論構わない。色彩計や分光測色計は、照明光源と受光器を備え、照明光源からの光を物質に照射し反射光を測定し、該物質の色を測定する機器であり、日本国内においても、いくつかのメーカから市販されている。
【0044】
本実施形態において、色彩計3によって測定されたICタグ101に塗布された示温材の色に関する情報は、計算機4によって、色と温度の対応関係を示す対応表401を参照して、前記示温材の呈する色が示す温度に関する情報(温度情報)に変換され、ICタグリーダライタ2によって読み取られたID情報、該ID情報を読み取った時刻(即ち、色を測定した(測定を開始した)際の測定時刻情報)とともにID物理データとして記録される。なお、時刻情報は、例えば、図1中の計算機4に予め備えられた時計装置を含む時刻管理手段から取得する。また、少なくとも、読み取られたID情報,温度情報などの物理的な情報を含み、それらを関連付けたデータをID物理データという。測定時刻は、ICタグからIDを読み取った際の時刻でも良いし、色彩計で測定した際の時刻でも良い。
【0045】
前記ID情報、時刻情報、温度情報を含むID物理データは、図1中では、ネットワーク5を介して、外部の物品管理センタ6にある物品管理データベース601に記録される。同時に、前記時刻情報と温度情報の組み合わせをICタグリーダライタ2によってICタグ1内部の記録領域に書き込む。このICタグ1内部の記録領域への前記データ格納によって、もし、何らかの原因により、外部の物品管理センタ6にある物品管理データベース601と計算機4との間の通信が途絶えていた場合(例えば、図1中のネットワーク5と計算機4間の回線が印×で示されるように途絶えた場合)でも、最後に測定した時刻と温度情報についてはICタグ1内部の記録領域に記録されていることになる。
【0046】
なお、前記対応表401は、計算機4自体に備えられていてもよいし、計算機4が接続可能な外部のデータベースに保存されていてもよい。
【0047】
ここで、物品に添付された示温材の呈する色から温度情報に変換する方法を説明する。なお、以下の説明において、図1中の符号と同じ符号のものの説明は省略する。
【0048】
色彩計3によって色を測定する方法は、物品1に添付されたICタグ101の示温材に光を照射し、該示温材から反射した光について、人の眼がもつ赤色,緑色,青色に対する感度に近いカラーフィルタを介して三刺激値を光電的に直読する方法である。
【0049】
まず、読み取られた色情報である赤色,緑色,青色に対応する三刺激値は数値として計算機4にいったん記録される。計算機4は、色情報(すなわち、赤色,緑色,青色に対応する三刺激値)と温度との対応関係を示す対応曲線(または対応表)データ(例えば、対応表401)を有してものとする。
【0050】
そして、読み取られた色情報である赤色,緑色,青色に対応する三刺激値の数値を、前記対応曲線(または対応表)を用いて、温度情報に変換する。
【0051】
なお、前記対応曲線(または対応表)に記してある温度と完全に合致しない中間的な温度の値については、前記対応曲線(または対応表)に記してある前後の温度から補間することによって、より近い温度の値を得ることが出来る。
【0052】
さらに、温度管理の必要な物品1に添付されたICタグ101に記録されたID情報と、該物品1に添付されたICタグ101の示温材の示す色から変換されて得られた温度情報とを関連付ける方法を以下に説明する。
【0053】
なお、ICタグリーダライタ2が前記ID情報を読み取った時点で、同時点からある一定の時間、該ICタグリーダライタが該ID情報を再度読み取ったとしても、物品1は1つと数えられるものとする。また、ある一定の時間とは、該物品1の次に異なる物品が届くまでの間の時間より短い時間を設定する。
【0054】
前記ICタグリーダライタ2が前記ID情報を読み取った時点を起点にして、その後、該ID情報は計算機4に到達し記録され、次いで、該計算機4は、接続された色彩計3による該物品に添付された示温材の示す色の測定を開始させる。
【0055】
前記色彩計3によって読み取った色情報である赤色,緑色,青色に対応する三刺激値の数値を、計算機4は温度情報に変換し、既に記録された前記ID情報と該温度情報をセットにしたデータ(即ち、ID物理データ)を生成する。
【0056】
以上のように、温度管理の必要な物品に添付されたICタグに記録されたID情報と、該物品に添付された示温材の示す色から変換されて得られた温度情報とを関連付けることができる。
【0057】
なお、ID情報と温度情報とを関連付けたデータ(即ち、ID物理データ)に付加する情報としては、次のようなものが考えられる。
【0058】
ID物理データに対し、ID情報を読み取った場所、該場所における作業内容や作業担当者についての情報を、図1における計算機4に記憶させ、該ID情報を読み取った場所、該場所における作業内容、作業担当者についての情報の全部あるいは一部を付加してもよい。
【0059】
なお、ID情報を読み取った場所、該場所における作業内容についての情報を該ID物理データに付加する方法としては、例えば、図1における物品1のID情報を場所情報(例えば、ICタグリーダライタ2によって読み取る場所に関する情報や示温材の示す色を測定した測定場所情報)及び該場所における作業内容に関する情報を、予め、計算機4に記憶させておき、前記ID情報を読み取った直後に、計算機4に予め備えられた場所管理手段(例えば、記憶領域に記憶された場所情報を管理する手段)などを用いて場所情報などを取得し、ID物理データに付加する方法がある。
【0060】
また、作業担当者についての情報を該ID物理データに付加する方法としては、例えば、該作業担当者が、図1における計算機4を用いた作業を開始するにあたって、該作業担当者の名前やIDといった作業担当者についての情報を計算機4に入力しておく。そして、前記物品1のID情報を読み取った直後に、ID物理データに付加する方法がある。
【0061】
例えば、計算機4に備えられ、ID情報を読み取った場所や該場所における作業内容や作業担当者についての情報を入力する手段(キーボード装置、ディスプレイ装置など)によって入力された情報(即ち、場所(場所情報)や作業内容に関する情報)を計算機4に予め備えられた記憶部に記憶させても良い。即ち、計算機4は場所管理手段を有することになる。
【0062】
さらに、ID物理データに対し、物品がさらされた温度範囲が保管すべき温度範囲として適するか否かを前記温度情報に基づいて判定した結果を付加してもよい。例えば、物品がさらされた温度範囲が保管すべき温度範囲として適するか否かを前記温度情報に基づいて判定するプログラムを図1中の計算機4に格納し実行し、該適否に関する情報を付加してもよい。なお、物品1の保管すべき温度範囲に関する情報は、物品1に貼付されたラベル等、物品1のメーカや輸入業者等が提供する情報に含まれ、容易に得られるものとする。
【0063】
本実施形態における処理手順1を図2に基づいて説明する。なお、図2中で図1中の符号と同じ符号のものの説明は省略する。
【0064】
まず、作業担当者Uは、場所についての情報を計算機4に入力することから作業を始める(M11,S11)。
【0065】
次いで、ICタグリーダライタ2を物品1に貼付されたタグ101にかざすことによってIDを読み取り(M12,S12,S13)、色彩計3による測定を開始し(M13,S14)、色情報を取得する(M14)。
【0066】
次いで、計算機4では、該色情報を、対応表401に基づいて物理情報(色彩計3から得られた測定値に基づく第1物理情報)に変換する(S15)。なお、第1物理情報は、色彩計3から得られた測定値を直ぐに変換して得られた物理情報である。
【0067】
そして、処理手順1では、物理情報(第1物理情報),時刻管理手段を含む時刻取得手段を使って手段取得した測定時刻情報,場所管理手段を含む場所取得手段を使って取得した場所(測定場所情報)を含むデータをICタグ内部の記録領域に書き込む(M15,S16,S17)。同時に、ID情報,物理情報,測定時刻情報,測定場所情報を含むID物理データを外部データベース601に記録する(S18)。
【0068】
本実施形態における処理手順2を図3に基づいて説明する。図3は、既に前回測定が行われており、今回同じ物品について測定を行う処理手順である。
【0069】
まず、作業担当者Uは、場所についての情報を計算機4に入力することから作業を始める(M21,S21)。
【0070】
次いで、ICタグリーダライタ2を物品1に貼付されたICタグ101にかざすことでIDを読み取り、同時に、前回測定の時刻、測定場所、物理情報(ICタグ101から読み出した第2物理情報)を読み取る(M22,S22,S23)。なお、前記第2物理情報は、処理手順1における第1物理情報と同じ値を有する情報であるが、ICタグから読み出した物理情報として定義している(区別している)。
【0071】
次いで、今回、色彩計3による測定を開始し、色情報を取得する(M23,M24,S24)。
【0072】
次いで、計算機4では、該色情報を、対応表に基づいて物理情報(色彩計3から得られた測定値に基づく第1物理情報(処理手順2における第1物理情報))に変換する(S25)。
【0073】
そして、処理手順2では、計算機4において、前回測定の測定時刻、測定場所、物理情報(第2物理情報)と今回測定の測定時刻、測定場所、物理情報(第1物理情報)を各々比較できるように表示する(S26)。例えば、計算機4に予め備えられた表示装置に、前回測定と今回測定の測定時刻、測定場所、物理情報を並べて表示する。
【0074】
図4は、図3に示した処理手順2において、前回測定と今回測定の測定時刻、測定場所、物理情報を比較できるように表示した例である。図4中では、符号D11で示すものが前回測定データ、符号D12で示すものが今回測定データである。
【0075】
同一の物品であるため、ID情報(符号D111で示すID情報と符号D121で示すID情報)が一致している。図4中では、場所に関する情報(符号D113で示す場所情報と符号D123で示す場所情報)も同一としてあり、前回測定時刻情報D112「T1」から今回測定時刻情報D122「T2」の間に物理情報は「A」(物理情報D114)から「B」(物理情報D124)に変化している。
【0076】
例えば、物理情報が温度であれば、今回測定時刻情報D122「T2」においては、前回測定時刻D112「T1」よりも、B−Aだけ高い温度で物品が管理されていることになる。あるいは、物理情報が紫外線被曝量であれば、前回測定時刻情報D112「T1」から今回測定時刻D122「T2」までに、B−Aだけ被曝したことが判り、単位時間当たりの紫外線被曝量は、(B−A)/(T2−T1)で求められる。このように、前回と今回の管理状態を比較でき、一元的な物品管理に役立つ。
【0077】
以上のように本実施形態によれば、ICタグと外部の物理データ管理手段の間の連絡が絶たれた場合であっても、測定した物理情報と場所と時刻とを前記ICタグの内部に存在する記録領域に記録できるため、これを読み出せば、該測定時における物理情報と場所と時刻、すなわち、該測定時における物品の管理状態を知ることが出来、該測定時と今回測定時との間で連続的に物品の管理状態を把握することが出来、該測定時における物品の管理状態と今回測定時における物品の管理状態との比較に基づいて物品管理することができる。例えば、今回測定時における物品の管理状態が前回測定時における物品の管理状態に比して大きく乖離した事象が生じた場合、該事象を知り得るため、該事象に応じて適切な措置を講ずることで、適切な物品管理が可能になる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は説明した実施形態に限定されるものでなく、各請求項に記載した範囲において各種の変形を行うことが可能である。
【0079】
例えば、上述の処理手順2におけるステップS26において、前回測定データと今回測定データを比較し、予め設定された条件に従って判断する物理情報判断ステップを有しても良い。即ち、図4中のB−Aが特定の値以上であれば、作業担当者に対し警告手段(例えば、警告音を発したり、警告メッセージを表示する手段)を使って警告する。
【0080】
また、IDタグに情報を書き込む際に認証を行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本実施形態における物品管理システムの装置構成図。
【図2】本実施形態における処理手順1を示す図。
【図3】本実施形態における処理手順2を示す図。
【図4】本実施形態における比較表示の一例を示す図。
【符号の説明】
【0082】
1…物品
101…示温材が塗布されたICタグ
2…ICタグリーダライタ
3…色彩計
4…計算機
401…色と温度変化の対応関係を示す対応表
5…ネットワーク
6…物品管理センタ
601…物品管理データベース
D11…前回測定データ
D111…ID情報
D112…測定時刻情報
D113…測定場所情報
D114…物理情報
D12…今回測定データ
D121…ID情報
D122…測定時刻情報
D123…測定場所情報
D124…物理情報
U…作業担当者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を識別するID情報を内部に記録したICタグを有し、
前記ICタグの内部の情報にアクセスするICタグアクセス手段を備え、
該ICタグと検知材が添付された物品の物理変化を管理する物品管理システムであって、
前記検知材の示す色を測定する手段と、
該検知材の示す色を第1物理情報に変換する手段と、
前記ICタグの内部に予め備えられた記録領域に対し、該第1物理情報を前記ICタグアクセス手段を用いて記録する物理情報記録手段と、
ICタグから読み出した第2物理情報と前記第1物理情報を比較できるように表示する比較表示手段と、
を備えることを特徴とする物品管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の物品管理システムにおいて、
前記色を測定した際の第1測定時刻情報を、時刻管理手段から取得する時刻取得手段、
を備え、
前記物理情報記録手段が、前記ICタグの内部に存在する記録領域に対し、前記第1物理情報と前記第1測定時刻情報の組み合わせを記録し、
前記比較表示手段が、ICタグから読み出した第2物理情報及び第2測定時刻情報の組み合わせと前記第1物理情報及び第1測定時刻情報の組み合わせを比較できるように表示する、
ことを特徴とする物品管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の物品管理システムにおいて、
前記色を測定した際の第1測定時刻情報を、時刻管理手段から取得する時刻取得手段と、
前記色を測定した際の第1測定場所情報を、場所管理手段から取得する場所取得手段と、
を備え、
前記物理情報記録手段が、前記ICタグの内部に存在する記録領域に対し、前記第1物理情報と第1測定時刻情報と第1測定場所情報との組み合わせを記録し、
前記比較表示手段が、ICタグから読み出した第2物理情報,第2測定時刻情報,第2測定場所情報の組み合わせと前記第1物理情報,第1測定時刻情報,第1測定場所情報の組み合わせを比較できるように表示する、
ことを特徴とする物品管理システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の物品管理システムにおいて、
前記検知材が、
前記物品に対して定められた物理管理条件から逸脱した場合に、色の変化を示し、該色の変化が不可逆である、
ことを特徴とする物品管理システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の物品管理システムにおいて、
前記ICタグと前記検知材とが一体に形成されている、
ことを特徴とする物品管理システム。
【請求項6】
物品を識別するID情報を内部に記録したICタグを有し、
前記ICタグの内部の情報にアクセスするICタグアクセス手段と、
前記検知材の示す色を測定する測定手段と、を備え、
該ICタグと検知材が添付された物品の物理変化を管理するシステム
に使用する物品管理方法であって、
前記測定手段を用いて前記検知材の示す色を測定するステップと、
該検知材の示す色を第1物理情報に変換するステップと、
前記ICタグの内部に予め備えられた記録領域に対し、該第1物理情報を前記ICタグアクセス手段を用いて記録する物理情報記録ステップと、
ICタグから読み出した第2物理情報と前記第1物理情報を比較できるように表示する比較表示ステップと、
を有することを特徴とする物品管理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の物品管理方法において、
前記色を測定した際の第1測定時刻情報を時刻管理手段から取得する時刻取得ステップ、
を有し、
前記物理情報記録ステップが、前記ICタグの内部に存在する記録領域に対し、前記第1物理情報と前記第1測定時刻情報との組み合わせを記録し、
前記比較表示ステップが、ICタグから読み出した第2物理情報及び第2測定時刻情報の組み合わせと前記第1物理情報及び第1測定時刻情報の組み合わせを比較できるように表示する、
ことを特徴とする物品管理方法。
【請求項8】
請求項6に記載の物品管理方法において、
前記色を測定した際の第1測定時刻情報を時刻管理手段から取得する時刻取得ステップと、
前記色を測定した際の第1測定場所情報を場所管理手段から取得する場所取得ステップと、
を有し、
前記物理情報記録ステップが、前記ICタグの内部に存在する記録領域に対し、前記第1物理情報と前記第1測定時刻情報と前記第1測定場所情報との組み合わせを記録し、
前記比較表示手ステップが、ICタグから読み出した第2物理情報,第2測定時刻情報,第2測定場所情報の組み合わせと前記第1物理情報,第1測定時刻情報,第1測定場所情報の組み合わせを比較できるように表示する、
ことを特徴とする物品管理方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかに記載の物品管理方法において、
前記検知材に、前記物品に対して定められた物理管理条件から逸脱した場合に、色の変化を示し、該色の変化が不可逆である検知材を採用する、
ことを特徴とする物品管理方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれかに記載の物品管理方法において、
前記ICタグと前記検知材とを一体に形成したタグを添付した物品を管理対象とする、
ことを特徴とする物品管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−156097(P2008−156097A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349734(P2006−349734)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】