説明

物品

【課題】 香料を含有する水性組成物を、プラスティック容器に充填しても、内容物が目視でき、またくすみのない好ましい色合いを容器に付与することができ、且つ香料の安定性を損なわない物品の提供。
【解決手段】 シリコーン化合物(a)、香料(b)、及び水を含有し、(a)/(b)の質量比が50/50〜99/1である水性組成物を、下記要件A及びBを満足するプラスティック容器に充填した物品。
要件A:グレーインキ層を除く着色層を少なくとも1層とする、全厚さ50〜250μmの2層以上の積層フィルムを袋状に成形したプラスティック容器である。
要件B:JIS K7105-1981で測定した350nmの光透過率が10%以下であり、450nmの光透過率が10〜45%であり、且つ550nmの光透過率が40%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は香料を含有する組成物をプラスティック容器に充填した物品に関する。
【背景技術】
【0002】
香料を含有する組成物をプラスティック容器に充填する技術は公知であり、例えば特許文献1に開示されている。また、シリコーン化合物と香料を含有する組成物をプラスティック容器に充填する技術は、例えば特許文献2に開示されている。さらに、容器の光透過率を制御することで組成物の貯蔵安定性を改善することも知られており、例えば特許文献3、特許文献4、特許文献5に開示されている。
【特許文献1】特開2001−98300号公報
【特許文献2】特開2000−110074号公報
【特許文献3】特開平11−277667号公報、
【特許文献4】特開2000−44992号公報、
【特許文献5】特開2006−341887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、液体洗浄剤や液体柔軟仕上げ剤などのトイレタリー製品は、省資源の観点から樹脂量を低減したプラスティック容器(一般的にはパウチとして知られている)に充填したものが流通している。また、これらトイレタリー製品には嗜好性の点から香料を用いて賦香されることが一般的に行われている。樹脂量を低減したプラスティック容器はその薄さ故に光などが透過しやすく、従って光安定性に問題のある香料が含まれる場合には着色層を設けて遮光することが行われている。特許文献1には厚い着色層を設けて光をほぼ遮蔽する技術が開示されている。しかしながら、このような技術では、着色層が厚いため内容物を目視することができないばかりでなく、ややくすんだ色合いになりやすく、審美的に好ましくない。従って内容物が目視できる程度に光が透過し、くすみのない好ましい色合いを有し、且つ香料の安定性に優れる製品が望まれる。
【0004】
特許文献2にはシリコーン化合物と香料を含有する糊料組成物を薄膜フィルム性容器に充填した物品が開示されているが、着色層を有さないため、香料の安定性としては課題を有する技術である。また、特許文献3〜5には特定の光の透過性を制御することで目的とする物質の貯蔵安定性を改善する技術が開示されているが、特定の光の透過性を制御し、且つシリコーン化合物と香料が特定の比率で存在することで、香料の貯蔵安定性の問題を解決し得る点については示唆するものではない。
【0005】
従って、本発明の課題は、香料を含有する水性組成物を、樹脂量を低減したプラスティック容器に充填しても、内容物が目視でき、またくすみのない好ましい色合いを容器に付与することができ、且つ香料の安定性を損なわない物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シリコーン化合物(a)、香料(b)、及び水を含有し、(a)/(b)の質量比が50/50〜99/1である水性組成物を、下記要件A及びBを満足するプラスティック容器に充填した物品を提供する。
【0007】
要件A:グレーインキ層を除く着色層を少なくとも1層とする、全厚さ50〜250μmの2層以上の積層フィルムを袋状に成形したプラスティック容器である。
【0008】
要件B:JIS K7105-1981で測定した350nmの光透過率が10%以下であり、450nmの光透過率が10〜45%であり、且つ550nmの光透過率が40%以上である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の物品は、香料を含有する水性組成物を、樹脂量を低減したプラスティック容器に充填しても、内容物が目視でき、またくすみのない好ましい色合いを容器に付与することができ、且つ香料の安定性を損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[シリコーン化合物(a)]
本発明の(a)成分であるシリコーン化合物としては、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン等のアミノ変性シリコーン、ポリオキシアルキレン(好ましくはポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン、より好ましくはポリオキシエチレン)変性ジメチルポリシロキサン等のポリエーテル変性シリコーン、アミド変性ジメチルポリシロキサン等のアミド変性シリコーン、アミノポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン等のアミノポリエーテル変性シリコーン、アミドポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン等のアミドポリエーテル変性シリコーン、4級アンモニウム変性ジメチルポリシロキサン等の4級アンモニウム変性シリコーン、エポキシ変性ジメチルポリシロキサン等のエポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性ジメチルポリシロキサン等のカルボキシ変性シリコーン、フッ素変性ジメチルポリシロキサン等のフッ素変性シリコーン等が挙げられる。これらの中では、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アミドポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも1種が好適であり、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン及びアミドポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも1種が香料安定性の観点から更に好ましい。
【0011】
ジメチルポリシロキサンとしては重量平均分子量千〜100万、好ましくは3千〜50万、更に好ましくは5千〜25万、25℃における粘度が10〜10万mm2/s、好ましくは500〜5万mm2/s、更に好ましくは1千〜4万mm2/sの化合物を挙げることができる。
【0012】
アミノ変性シリコーンは、香料の安定性に優れた効果を有するが、一方で光照射に対して着色するなどの安定性の問題がある。従って香料及びアミノ変性シリコーンの両者の安定性を満足する目的から、アミノ当量(アミノ当量とは窒素原子1個当たりの分子量)は、1,500〜40,000g/molが好ましく、2,500〜20,000g/molがより好ましく、3,000〜10,000g/molが更に好ましい。また、25℃における粘度は、100〜20000mm2/sが好ましく、200〜10000mm2/sがより好ましく、500〜5000mm2/sが更に好ましい。
【0013】
ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン及びアミドポリエーテル変性シリコーンもアミノ変性シリコーンと同様に香料の安定性に優れた効果を有するが、一方で光照射に対して着色するなどの安定性の問題がある。従って、香料及びシリコーン化合物の両者の安定性を満足する目的から、1%水溶液の曇点が80℃以下、更に70℃以下の化合物が好適である。曇点がこのような範囲にある化合物は香料と親和性が高く、香料の安定性を向上させると考えられる。また、25℃における粘度は、100〜6500mm2/sが好ましく、200〜6000mm2/sがより好ましく、500〜5500mm2/sが更に好ましい。
【0014】
市販されているシリコーンを用いることも可能であり、好ましいものとしては信越化学工業(株)のPolonMF−14、PolonMF−14D、PolonMF−14EC、PolonMF−29、PolonMF−39、PolonMF−44、PolonMF−52、KF−393、KF−615A、KF−618、KF−859、KF−864、KF−945A、KF−6008、東レ・ダウコーニング(株)のY−7006、FZ−2203、FZ−2207、FZ−2120、FZ−2161、FZ−2163、FZ−2165、SM8702、SM8704、SM8702C、SM8704C、BY22−812、BY22−816、BY22−819、BY22−823、BY16−203、BY16−849、BY16−850、BY16−891、BY16−893、BY16−906、SF8471、BY22−019、SH−3746、SH−3771、SH3775M、SH−8400、SF−8410、SF8457C、SH−8700等を挙げることができる。
【0015】
[香料(b)]
本発明の(b)成分である香料としては、(a)成分と相溶性の高い香料成分を多く含むものが好適であり、具体的にはlogPowが2.0以上、好ましくは2.0以上、7.0以下、更に好ましくは3.0以上、7.0以下の香料成分(以下香料成分(b1)という)を20質量%以上含有する香料が好適である。(b)成分中の香料成分(b1)の含有量は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。一方で、よりlogPowの高い香料成分、即ち、より疎水性の香料成分を含有していることが好ましい。logPowが3.0以上の香料成分を(b)成分中に20質量%以上含有していることが好ましく、25質量%以上含有していることが更に好ましく、30質量%以上含有していることが特に好ましい。ここでlogPowとは化学物質の1−オクタノール/水分配係数で、f値法(疎水性フラグメント定数法)により計算で求められた値をいう。具体的には、化合物の化学構造を、その構成要素に分解し、各フラグメントの有する疎水性フラグメント定数(f値)を積算して求めることができ、CLOGP3 Reference Manual Daylight Software 4.34, Albert Leo, David Weininger, Version1, March 1994を参考にすることができる。このような(b)成分は非水溶性の化合物であり、界面活性剤を含有する水性組成物において界面活性剤に可溶化されて存在するが、組成物を疎水的に変化させるために安定性や組成物の外観に影響を与える性質を有する。
【0016】
香料成分(b1)としては、(i)炭化水素系香料、(ii)アルコール系香料、(iii)アルデヒド・ケトン系香料、(iv)エステル系香料、(v)フェノール系香料、(vi)エーテル系香料から選ばれる化合物を選択することができる。
【0017】
(i)炭化水素系香料としては、α−ピネン、β−ピネン、カンフェン、リモネン、ジテルペン、テルピノーレン、ミルセン、p−サイメン、β−カリオフィレン等が挙げられ、特にリモネンが好適である。
【0018】
(ii)アルコール系香料としては、サンダルマイソールコア、サンタロール、テルピネオール、l−メントール、シトロネロール、ジヒドロミルセノール、エチルリナルール、ゲラニオール、リナロール、ムゴール、ミルセノール、ネロール、ネロリドール等が挙げられ、特にゲラニオール、ジヒドロミルセノール、リナロール、サンダルマイソールコアが好適である。
【0019】
(iii)アルデヒド・ケトン系香料としては、アルデヒドC−111、グリーナール、マンダリンアルデヒド、トリメチルウンデセナール、シトラール、シトロネラール、アミルシンナミックアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド、リリアール、ジヒドロジャスモン、シス−ジャスモン、l−カルボン、イオノンα、メチルイオノンα、メチルイオノンG、テンタローム等が挙げられ、特にアルデヒドC−111、シトラール、シトロネラール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、メチルイオノンG、リリアール、テンタロームが好適である。
【0020】
(iv)エステル系香料としては、フェニルエチルアセテート、アリルアミルグリコレート、リファローム、シス−3−ヘキシルアセテート、スチラリルアセテート、ヘプチルアセテート、o−t−ブチルシクロヘキサノン、p−t−ブチルシクロヘキサノン、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、リナリルアセテート、アセチルオイゲノール、シンナミルアセテート、エチルシンナメート、ヘキシルサリシレート、イソブチルサリシレート等が挙げられ、特に、フェニルエチルアセテート、アリルアミルグリコレート、スチラリルアセテート、o−t−ブチルシクロヘキサノン、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、リナリルアセテート、アセチルオイゲノール、シンナミルアセテートが好適である。
【0021】
(v)フェノール系香料としては、オイゲノール、イソオイゲノール、モスシンス、チモール、バニトロープ等が挙げられ、特にオイゲノール、モスシンスが好適である。
【0022】
(vi)エーテル系香料としては、アニソール、アンブロキサン、セドロキサイド、シトロネリルエチルエーテル、アネトール、メチルオイゲノール、メチルイソオイゲノール、ネロリンヤラヤラ等が挙げられ、特にアニソール、アンブロキサン、アネトール、ネロリンヤラヤラが好適である。
【0023】
本発明の(b)成分のうち(iii)のアルデヒド・ケトン系香料は、香り立ちに非常に好ましい香料成分であるが、一方で光に対する安定性に課題を有するため、(b)成分中の(iii)のアルデヒド・ケトン系香料の含有量は、好ましい香りと貯蔵安定性を満足させる観点から、10〜70質量%が好ましく、20〜60質量%がより好ましい。
【0024】
また、組成物中の安定性の点から、(ii)の香料成分と(iii)の香料成分と(iv)の香料成分の合計含有量が、(b)成分中20〜90質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることが更に好ましい。
【0025】
本発明の(b)成分には上記香料成分以外に、logPowが−0.5以上2.0未満の香料成分、希釈剤、保留剤を含有することが出来る。logPowが−0.5以上2.0未満の香料成分の好適な例としては、フェニルエチルアルコール、シス−3−ヘキセノール、ヘリオナール、ベンズアルデヒド、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、マルトール、クマリン、アニスアルデヒド等を挙げることができる。又、希釈剤、保留剤の好適な例としては、ジプロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピルエステル、ジエチルフタレート、ペンジルベンゾエート、流動パラフィン,イソパラフィン、油脂等を挙げることができる。香料成分と保留剤の質量比は1/0〜2/8が好ましい。
【0026】
[水性組成物]
本発明の水性組成物は、上記(a)成分、(b)成分、及び水を含有する。本発明の水性組成物中の(a)成分と(b)成分の質量比(a)/(b)は、好ましい香りと優れた香りの安定性を得る観点から、50/50〜99/1であり、60/40〜98/2が好ましく、70/30〜97/3がより好ましい。
【0027】
また、本発明の水性組成物中の(a)成分の含有量は、優れた香り安定性を得る観点から、1〜20質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。また(b)成分の含有量は、好ましい香りを得る観点から、0.05〜2質量%が好ましく、0.1〜1.5質量%がより好ましい。
【0028】
本発明の水性組成物は、更に貯蔵安定性の点から安定化剤、溶剤を含有することができる。また本発明の水性組成物は、乳化物の安定性を向上させ、かつ(a)成分、(b)成分の対象表面への吸着を促進させる目的から界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、乳化物の安定性の観点から、非イオン界面活性剤が好適である。安定化剤、溶剤、界面活性剤としては、トイレタリー製品に用いられるものであれば、特に限定されるものではない。
【0029】
本発明の水性組成物を応用できる好適なトイレタリー製品としては、液体洗浄剤組成物、液体繊維製品処理剤組成物等が挙げられる。水性組成物を液体洗浄剤組成物として用いる場合には、(a)成分、(b)成分及び水以外に、洗浄効果を賦与するための界面活性剤や、安定化剤、溶剤、金属封鎖剤等を含有することができる。水性組成物を液体繊維製品処理剤組成物として用いる場合には、(a)成分、(b)成分及び水以外に、繊維に柔軟効果を付与するためのカチオン界面活性剤やカチオン性高分子化合物、防汚効果を付与するための高分子化合物、安定化剤、溶剤等を含有することができる。
【0030】
[物品]
本発明の物品は、上述の水性組成物を、上記要件A及びBを満足するプラスティック容器に充填してなるものである。
【0031】
即ち本発明に用いられるプラスティック容器は、グレーインキ層を除く着色層を少なくとも1層とする、全厚さ50〜250μmの2層以上の積層フィルムを袋状に成形したプラスティック容器で(要件A)、かつJIS K7105-1981で測定した350nmの光透過率が10%以下、450nmの光透過率が10〜45%、且つ550nmの光透過率が40%以上(要件B)のものである。
【0032】
要件Bは特定の波長の光を遮光することで香料の安定性を改善できることを示すものであり、このような要件を満足するためには、要件Aの着色層に用いる着色剤の種類、積層フィルムの厚さなどを調整することで容易に設定することができる。
【0033】
本発明のプラスティック容器に使用できる着色剤としてはアゾレーキ系、不溶性アゾ系、縮合アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、ベンズイミダゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キノフタロン系、アニリンブラック系、ジケトピロロピロール系、ニグロシン系等の顔料や染料を挙げることができるが、要件Bを満足させる目的から、ファストイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、クロモフタルイエロー、アンスラピリジンイエロー、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルジオキシンイエロー、フラバンスイエロー、黄鉛、チタンイエロー、ジスアゾイエロー及びパーマネントイエローから選ばれる少なくとも1種の顔料を用いることが好ましい。
【0034】
一般に光を遮光する目的から、アルミ箔、アルミ蒸着膜や、グレーインキなどを応用することが行われているが、アルミ箔やアルミ蒸着膜は内容物を全く見ることができない。また、グレーインキはくすんだ色合いになるため、好ましい色合いを得ることができなくなるため、できるだけ使用を避けるべきである。
【0035】
本発明において、着色層を形成する方法としては、例えば、グラビアインキ組成物、オフセットインキ組成物、スクリ−ンインキ組成物等のインキ組成物を使用し、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、シルクスクリ−ン印刷方式、及びその他の印刷方式により着色層を形成する方法が挙げられる。本発明ではグラビア印刷方式が色合いや簡便性の点から好適である。グラビアインキ組成物としては例えば、ポリオレフィン系樹脂、繊維素系樹脂、ゴム系樹脂、天然樹脂、油脂類等の樹脂や油脂類の1種ないし2種以上の混合物に、染料・顔料等の着色剤の1種ないし2種以上を加え、さらに、必要ならば、例えば、充填剤、安定剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の光安定剤、分散剤、増粘剤、乾燥剤、滑剤、帯電防止剤、架橋剤等の添加剤を任意に添加し、溶剤、希釈剤等で充分に混練してなる各種の形態からなるグラビアインキ組成物を使用することができる。
【0036】
着色層の厚さは、要件Bを満足させる目的から、2〜20μmが好ましく、3〜18μmがより好ましく、4〜16μmが更に好ましい。
【0037】
本発明のプラスティック容器は、全厚さ50〜250μmの2層以上の積層フィルムを袋状に成形したものであり、積層フィルムを構成するプラスティック材料としては、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、結晶性ポリブテン−1、結晶性ポリ4−メチルペンテン−1、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等のポリオレフィン類、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等のニトリル重合体、ナイロン6、ナイロン66、パラまたはメタキシリレンアジパミド等のポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類、各種ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のポリアセタール類等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0038】
本発明では特に2軸延伸ポリエチレンテレフタレート、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン、2軸延伸ナイロン及び未延伸ポリプロピレンから選ばれる少なくとも1種を用いることが好適であり、水性組成物が接触する層(最内層)に使用する材料としては、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン及び未延伸ポリプロピレンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、袋の外側の外気が接触する層(最外層)に使用する材料としては、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート及び2軸延伸ナイロンから選ばれる少なくとも1種が好適である。最内層の厚さは好ましくは60〜200μm、特に好ましくは70〜180μmであり、最外層の厚さは好ましくは5〜30μm、特に好ましくは6〜25μmであり、着色層は最内層と最外層の間に設けられることが好ましい。本発明の積層フィルムの全厚さは、50〜250μm、好ましくは80〜220μm、より好ましくは100〜200μmである。
【0039】
本発明のプラスティック容器の形状は特に限定されないが、例えば図1〜3に示すような、スタンディングパウチが挙げられる。図1はスタンディングパウチにおける、内容物が収容された状態の外観を示す斜視図であり、図2は図1に示すスタンディングパウチのX−X線矢視断面図であり、図3は、図2におけるY部分拡大断面図である。このスタンディングパウチは、2つの側面部1,1と下部に空間3を有する底面部2とからなり且つ起立可能で上方に行くに従って横断面の断面積が小さくなる立体形状を形成するように構成されている。そして、スタンディングパウチは、それぞれ表面に印刷等を施すことができる積層フィルム20からなり、積層フィルム20は、水性組成物が接触する層(最内層)21、着色層22、外気が接触する層(最外層)23からなる。
【実施例】
【0040】
実施例1〜7及び比較例1〜6
下記成分を用い、表2に示す組成の水性組成物を調製した。
・(a)成分
シリコーン1:KF−393(信越化学工業(株):アミノ変性シリコーン)
シリコーン2:KF−864(信越化学工業(株):アミノ変性シリコーン)
シリコーン3:BY16−203(東レ・ダウコーニング(株):アミノ変性シリコーン)
シリコーン4:BY16−891(東レ・ダウコーニング(株):アミドポリエーテル変性シリコーン)
シリコーン5:BY16−893(東レ・ダウコーニング(株):アミノポリエーテル変性シリコーン)
シリコーン6:KF−859(信越化学工業(株):アミノ変性シリコーン)
シリコーン7:BY16−849(東レ・ダウコーニング(株):アミノ変性シリコーン)
・(b)成分
表1に示す香料A〜C
【0041】
【表1】

【0042】
・その他成分(以下の成分中、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドの略である)
非イオン界面活性剤1:炭素数12〜14の直鎖第1級アルコールにEOを平均40モル付加させた非イオン界面活性剤
非イオン界面活性剤2:ステアリルアルコールにEOを平均20モル付加させた非イオン界面活性剤
非イオン界面活性剤3:ステアリルアルコールにEOを平均50モル付加させた非イオン界面活性剤
非イオン界面活性剤4:ステアリルアルコールにEOを平均140モル付加させた非イオン界面活性剤
非イオン界面活性剤5:炭素数12〜14の直鎖第1級アルコールにEO平均5モル/PO平均2モル/EO平均3モルの順に付加させた非イオン界面活性剤
非イオン界面活性剤6:炭素数12〜14の第2級アルコールにEOを平均3モル付加させた非イオン界面活性剤
カチオン界面活性剤1:ジアルキル(炭素数12〜14)ジメチルアンモニウムクロライド
カチオン界面活性剤2:アルキル(炭素数16〜18)トリメチルアンモニウムクロライド
ポリマー1:SOREZ 100(ISP社:エチレンテレフタレート単位及びエチレンイソフタレート単位と、ポリオキシエチレン単位を含むポリマー、重量平均分子量7100、平均EO付加モル数88.9)
ポリマー2:Texcare SRN−325(Clariant社:エチレンテレフタレート単位及びエチレンイソフタレート単位と、ポリオキシエチレン単位を含むポリマー、重量平均分子量12000、平均EO付加モル数35.6)
ポリマー3:DMAEMA/LMA(DMAEMA/LMA=80/20モル比、重量平均分子量(PEG換算)11,000、ここでDMAEMAはN−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアミン、LMAはラウリルメタクリレートを示す)
ポリマー4:MERQUAT280(NALCO COMPANY:塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリル酸=65/35)
PhOEtOH:フェノールにエチレングリコールを付加させたグリコールエーテル化合物
PhG−30:フェノールにEOを平均3モル付加させたグリコールエーテル化合物
【0043】
【表2】

【0044】
また、下記方法により表3に示すプラスティック容器1〜7を作成した。得られたプラスティック容器について、350nm、450nm及び550nmの光透過率を、島津製作所製分光光度計UV−2550を用い、JIS K7105-1981に従い測定した。結果を表3に示す。
【0045】
<容器の作成方法>
まず、図3に示すような積層フィルム20を作成した。即ち、延伸ポリプロピレン(OPP)20μm/線状低密度ポリエチレン(LDDPE)130μmにより最内層21を作成した後、該最内層21上に、デザインを示すグラビアインキ3μm、白グラビアインキ3μm、白グラビアインキ3μm、表3に示す黄・灰・青・赤・白の各色グラビアインキ3μm、を順次塗布し、デザインインキ層22a、白インキ層22b、白インキ層22c、色インキ層22dからなる着色層22を形成した。次いで、該着色層22上に、延伸ナイロン(ONY)15μmを被覆して最外層23を形成し、積層フィルム20を得た。得られた積層フィルム20を袋状に成形し、図1及び2に示すスタンディングパウチを作成した。
【0046】
【表3】

【0047】
表2に示す水性組成物1〜5と、表3に示す容器1〜7とを、表4に示す組み合わせで用い、本発明の物品及び比較の物品を得た。得られた物品について、下記方法により審美性を評価した。また、下記の保存条件で保存し、下記方法により匂い及び外観を評価した。これらの結果を表4に示す。
【0048】
<審美性評価方法>
容器1〜7のデザインインキ層の審美評価を白インキ層のみからなる容器7と比較し、下記基準で視覚判定した。
・判定基準
○:印刷デザインが美しく見え、審美的に好まれる。
×:印刷デザインが薄暗くくすんで見え、審美的に好まれない。
【0049】
<匂いの評価方法>
物品を温調可能なボックスに入れ、40℃に温調しながら、日光暴露させた。尚、実験は8月に行った。14日後の物品と、調製直後の物品とを比較して、下記基準で嗅覚判定した。
・判定基準
○:匂いの変化が認められない。
△:やや匂いの変化が認められる。
×:明らかに匂いの変化が認められる。
【0050】
<外観評価方法>
匂いの評価方法と同様に、14日間日光暴露させた物品と、調製直後の物品とを比較して、下記基準で視覚判定した。
・判定基準
○:分離が認められない。
△:やや分離が認められる。
×:明らかに分離が認められる。
【0051】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のプラスティック容器の一例を示すスタンディングパウチの斜視図である。
【図2】図1のX−X線矢視断面図である。
【図3】図2におけるY部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 パウチの側面部
2 パウチの底面部
3 空間
20 積層フィルム
21 水性組成物が接触する層(最内層)
22 着色層
23 外気が接触する層(最外層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン化合物(a)、香料(b)、及び水を含有し、(a)/(b)の質量比が50/50〜99/1である水性組成物を、下記要件A及びBを満足するプラスティック容器に充填した物品。
要件A:グレーインキ層を除く着色層を少なくとも1層とする、全厚さ50〜250μmの2層以上の積層フィルムを袋状に成形したプラスティック容器である。
要件B:JIS K7105-1981で測定した350nmの光透過率が10%以下であり、450nmの光透過率が10〜45%であり、且つ550nmの光透過率が40%以上である。
【請求項2】
シリコーン化合物(a)が、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン及びアミドポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の物品。
【請求項3】
香料(b)中のアルデヒド・ケトン系香料の含有量が10〜70質量%である請求項1又は2記載の物品。
【請求項4】
積層フィルムを構成するプラスティック材料が、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン、2軸延伸ナイロン及び未延伸ポリプロピレンから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3いずれかに記載の物品。
【請求項5】
着色層が、ファストイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、クロモフタルイエロー、アンスラピリジンイエロー、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルジオキシンイエロー、フラバンスイエロー、黄鉛、チタンイエロー、ジスアゾイエロー及びパーマネントイエローから選ばれる少なくとも1種の顔料を含むインキを、グラビア印刷方式により塗布してなる層を含むものである請求項1〜4いずれかに記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−154915(P2009−154915A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334642(P2007−334642)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】