説明

物理量検出装置、および物理量検出装置の検査方法

【課題】 出力波形の形状に影響されず補正の精確さを高める物理量検出装置、および物理量検出装置の検査方法を提供する。
【解決手段】ホール素子11は、ヨーク30の回転角の変化に応じた信号を出力する。DSP12は、予め記憶されている所定補正値に基づいてホール素子11の実出力値を補正し、補正された値に基づいてヨーク30の回転角を算出して出力する。所定補正値算出手段は、所定補正値を算出する。また、所定補正値算出手段は、所定回転角範囲内の実出力値に対して一次関数補間処理を行うことで算出される補間後実出力値と、当該補間後実出力値に対応する実出力値との差である一次誤差量に基づいて所定補正値を設定する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量検出装置、および、物理量検出装置の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁石などの磁気発生手段およびホール素子などの磁束密度検出手段の一方を検出対象に設置し、検出対象が回転移動したときの磁気発生手段の磁気を磁束密度検出手段で検出することにより、検出対象の回転角度を検出する回転角検出装置が知られている。
例えば特許文献1に開示される回転角検出装置は、磁気発生手段としての磁石、磁束密度検出手段としての磁束密度センサ、および、処理部としての信号処理部を備え、信号処理部で補正演算を行う。信号処理部は、予め設定された補正点に対応する所定値(電圧レベル)に基づいて、磁束密度センサの出力信号に基づいた実出力電圧を補正する。ここで、予め設定された各種補正点は、等間隔で設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−206911号公報
【特許文献2】特開2007−71889号公報
【特許文献3】特許第3491577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、補正点の間隔が一定である場合、出力信号の非線形性は改善されず、実出力
電圧の誤差は回転角度の直線性誤差として残る。ここで、特許文献2には、出力変化率が小さい箇所より出力変化率が大きい箇所を細かく分割する補正方法が記載され、特許文献3には、磁気検出素子の出力信号に対してデジタル信号に変換し、逆正弦関数で演算処理を行う補正方法が記載されている。しかしながら、出力波形が不明な場合、特許文献2および特許文献3に記載の補正方法を適用することができない。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、出力波形の形状に影響されることなく、実出力値を精度よく補正可能な物理量検出装置、および、物理量検出装置の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明によると、物理量検出装置は、信号出力手段、処理部、および、所定補正値算出手段を備える。信号出力手段は、被検出体の物理量の変化に応じた信号を出力する。所定補正値算出手段は、所定補正値を算出する。処理部は、予め記憶されている所定補正値に基づいて信号出力手段による実出力値に基づく値を補正し、補正された値に基づいて被検出体の物理量を算出して出力する。また、所定補正値算出手段は、所定物理量範囲内の実出力値に基づく値に対して一次関数補間処理を行うことで算出される補間後実出力値と、当該補間後実出力値に対応する実出力値に基づく値との差である一次誤差量に基づいて所定補正値を設定する。
これにより、一次誤差量に基づいて所定補正値を設定することで、最適な補正点を求めることができ、出力波形の形状に影響されることなく、実出力値を精度よく補正することができる。また、実出力値に対して一次関数補間処理を行うことで所定補正値を求めるため、計算を単純化し処理時間を短縮することができる。
【0006】
請求項2に係る発明によると、実出力値に基づく値は、実出力値を逆正弦関数または逆余弦関数で処理した値である。
これにより、実出力値の直線性誤差をより低減することができる。
【0007】
請求項3に係る発明によると、所定補正値算出手段は、一次誤差量に対して一次関数補間処理を行うことで算出された補間後誤差量と、当該補間後誤差量に対応する一次誤差量との差である二次誤差量の最大絶対値を算出する最大絶対値算出処理を行い、二次誤差量の最大絶対値に対応する一次誤差量を所定補正値と設定する。
これにより、常に二次誤差量の最大絶対値に対応する一次誤差量を所定補正値に設定するため、誤差量が大きい箇所から順番に所定補正値および補正点を設定することができる。よって、最適な所定補正値および補正点を設定することができる。
【0008】
請求項4に係る発明によると、所定補正値算出手段は、二次誤差量が所定閾値より小さくなるまで、最大絶対値算出処理を繰り返して行う。
これにより、最大絶対値算出処理回数が増加することにより、処理時間が長くなることを抑制することができる。
【0009】
請求項5に係る発明によると、物理量は、相対回転角度、または、相対ストローク量である。
これにより、出力波形の形状に影響されることなく、相対回転角度、または、相対ストローク量の実出力値を精度よく補正することができる。
【0010】
請求項6に係る発明によると、請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載の物理量検出装置の検査方法であって、前記最大絶対値算出処理の処理回数が所定回数以上になると物理量検出装置の不良と判断する。
これにより、不良な物理量検出装置を簡単に見つけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の回転角検出装置を示す模式図。
【図2】本発明の一実施形態の回転角検出装置の処理回路を示す模式図。
【図3】本発明の一実施形態の回転角検出装置の所定補正値を示す図。
【図4】本発明の一実施形態の所定補正値を算出するフローチャート。
【図5】本発明の一実施形態の所定補正値を算出する処理を説明するためのバッファの内容を示す図。
【図6】本発明の一実施形態の回転角検出装置の角度と出力との関係を示す特性図。
【図7】本発明の一実施形態の回転角検出装置の角度と誤差量との関係を示す特性図。
【図8】本発明の一実施形態の所定補正値を算出する処理を説明するためのバッファの内容を示す図。
【図9】本発明の一実施形態の回転角検出装置の角度と誤差量との関係を示す特性図。
【図10】本発明の一実施形態の回転角検出装置の角度と出力との関係を示す特性図。
【図11】本発明の一実施形態の所定補正値を算出する処理を説明するためのバッファの内容を示す図。
【図12】本発明の一実施形態の回転角検出装置の角度と誤差量との関係を示す特性図。
【図13】本発明の一実施形態の回転角検出装置の角度と出力との関係を示す特性図。
【図14】本発明の一実施形態の所定補正値を算出する処理を説明するためのバッファの内容を示す図。
【図15】本発明の一実施形態の回転角検出装置の角度と誤差量との関係を示す特性図。
【図16】本発明の一実施形態の回転角検出装置の角度と出力との関係を示す特性図。
【図17】本発明の一実施形態の回転角検出装置の角度と誤差量との関係を示す特性図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の複数の実施形態による物理量検出装置を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態は、物理量検出装置を回転角検出装置に適用したものである。本発明の第1実施形態の回転角検出装置を図1に示す。回転角検出装置1は、検出対象としての例えばスロットルの弁軸の相対回転角度を検出する装置である。ここで、相対回転角度は、特許請求の範囲における「物理量」に対応する。回転角検出装置1は、永久磁石20、および、ホール素子11とデジタルシグナルプロセッサ(以下、DSPという)12とメモリ13とを含むホールIC10等を備えている。
【0013】
永久磁石20は、スロットルの弁軸に設けられた被検出体としてのヨーク30に取り付けられている。永久磁石20は、ヨーク30の回転に伴ってホールIC10に対して相対的に回転可能に設けられている。
ホール素子11は、半導体薄膜で形成されており、特許請求の範囲における「信号出力手段」に相当する。また、ホール素子11は、磁束密度の変化に対応する信号を出力する。
【0014】
DSP12は、デジタル信号処理に特化したものであり、ホール素子11から出力され、デジタル信号に変換された値に対し補正処理および回転角演算処理等の処理を行う。DSP12は特許請求の範囲における「処理部」に相当する。
【0015】
メモリ13は、例えば、読み出し専用メモリ、および、書き込みおよび消去可能なメモリを含み、DSP12で使われる各種データが記憶されている。また、メモリ13には、ヨーク30の回転角度に対応する所定補正値K(1)〜K(m)が記憶されている(図3参照)。ここで、mは1より大きい自然数である。
【0016】
本実施形態の場合、ホールIC10は、図2に示すように、ホール素子11とDSP12とメモリ13との他に、アナログ−デジタル変換回路(以下、ADCという)14、および、デジタル−アナログ変換回路(以下、DACという)15などを内蔵したICチップである。ホールIC10はホール素子11の感磁面が中心軸O上に位置するよう設けられている(図1参照)。
【0017】
コンピュータ16は、ホールIC10の外部に設けられ、所定補正値K(1)〜K(m)を算出し、メモリ13に記憶する。コンピュータ16は、特許請求の範囲における「所定補正値算出手段」に対応する。
【0018】
続いて、回転角検出装置1の作動について説明する。
ホール素子11は、永久磁石20に対して中心軸Oの周りを相対回転することにより生じる磁束密度の変化に応じた信号を出力する。ADC14は、ホール素子11が出力するアナログ値をデジタル値に変換し、DSP12に伝送する。以下、ADC14によって変換されたデジタル値を単に実出力値という。DSP12は、ホール素子11からの出力値に対し補正処理および回転角演算処理等を行う。また、DSP12は、処理結果をDAC15に伝送する。DAC15は、DSP12から伝送されたデジタル値をアナログ値に変換し出力する。
DSP12による補正処理について説明する。
本実施形態の場合、予め、例えばm個の補正点を設定し、m個の補正点に対応する所定値に基づいて実出力値を補正する。メモリ13には、各補正点に対応する所定値A(1)〜A(m)および所定補正値K(1)〜K(m)が記憶されている。図3に示すように、所定値A(1)〜A(m)と所定補正値K(1)〜K(m)とはそれぞれ対応付けられている。また、所定値A(1)〜A(m)は、いずれもホール素子11の実出力値(電圧レベル)の範囲内の値である。ここで、特許請求の範囲における「所定物理量範囲」は、被検出体の回転可能な角度範囲に対応する。
【0019】
DSP12は、所定値A(1)〜A(m)、および、所定補正値K(1)〜K(m)に基づいて、ホール素子11の実出力値を補正する。
実出力値が所定値A(1)〜A(m)のうち、いずれか一個と一致する場合、実出力値と一致する所定値に対応する所定補正値を、実出力値から減算することで実出力値を補正する。例えば、実出力値がA(3)と一致する場合、図3に示すように、A(3)に対応する所定補正値がK(3)であるため、実出力値はA(3)−K(3)と補正される。
【0020】
また、実出力値が所定値A(1)〜A(m)のいずれとも異なる場合、実出力値に対応する演算補正値を、実出力値から減算することで実出力値を補正する。演算補正値Kは、実出力値を間にとる二つの所定値、および、この二つの所定値に対応する所定補正値を用いて下記の式1により導出される式2によって一次補間を行うことで算出される。
{K(n)−K(n−1)}/{A(n)−A(n−1)}={K−K(n−1)}/{A−A(n−1)} ・・・式1
K={K(n)−K(n−1)}/{A(n)−A(n−1)}×{A−A(n−1)}+K(n−1) ・・・式2
【0021】
例えば、実出力値が所定値A(3)と所定値A(4)との間の値Aである場合、この実出力値Aに対応する演算補正値をKとする。ここで、実出力値A、所定値A(3)、所定値A(4)、所定補正値K(3)、および、所定補正値K(4)を式1に代入すると、式3がられる。
{K(4)−K(3)}/{A(4)−A(3)}={K−K(3)}/{A−A(3)} ・・・式3
式3により下記の式4が得られる。
K=[{K(4)−K(3)}/{A(4)−A(3)}]×{A−A(3)}+K(3) ・・・式4
また、実出力値はA−Kに補正されるため、実出力値は以下の式5による計算値に補正される。
A−[{K(4)−K(3)}/{A(4)−A(3)}]×{A−A(3)}−K(3) ・・・式5
このように、DSP12は、一次関数補間処理によって算出された演算補正値を、実出力値から減算することで実出力値を補正し、回転角を算出する。
【0022】
以下、所定補正値の設定について、図4〜図16に基づいて詳細に説明する。
本実施形態では、ホールIC10の外部に設けられているコンピュータ16を用いて補正値を算出する。コンピュータ16は、図4に示す処理フローチャートに基づき、所定補正値を算出する。
S101では、目標誤差量を設定する。本実施形態の場合、例えば、目標誤差量を80に設定する。
【0023】
S102では、ヨーク30の回転可能な角度範囲内の角度に対応する角度値をバッファB1に記憶する。本実施形態では、ヨーク30の回転可能な角度範囲は90度である。また、図5に示すバッファB1に記憶されている角度値0は0度に対応し、角度値1024は90度に対応している。つまり、バッファB1に記憶されている値の1目盛は、90/1024度に相当する。
【0024】
S103では、ホール素子11にから出力された実出力値を検出し、ヨーク30の回転角に対応する実出力値をバッファB2に記憶する。図6に示すように、本実施形態の実出力値を点(0、0)を通る曲線S1で表す。
【0025】
S104では、ホール素子11により検出された実出力値に基づき、理想出力値を算出する。本実施形態の場合、理想出力値は、実出力値の最大値と最小値とを結んだ一次関数で表す直線上の値である。図6に示すように、本実施形態の理想出力値を点(0、0)を通る直線S2で表す。算出された理想出力値は、バッファB3に記憶される。ここで、理想出力値は、特許請求の範囲における「補間後実出力値」に対応する。
【0026】
S105では、実出力値の一次誤差量を算出する。実出力値の一次誤差量は、実出力値と理想出力値との差である。ここで、バッファB2に記憶されている実出力値とバッファB3に記憶されている理想出力値との差を算出し、バッファB4に記憶する。図7に示すように、所定角度範囲内の角度に対応する一次誤差量を曲線S3で表す。
【0027】
S106では、補正値を設定し、一次誤差量に対して一次関数補間処理を行う。ここで、バッファB4に記憶されている一次誤差量の最大絶対値を補正値と設定し、バッファB7の対応する領域に記憶する。図5、8に示すように、バッファB4に記憶されている一次誤差量の最大絶対値は165である。よって、この処理では、バッファB4に記憶されている165を補正値と設定し、バッファB7の対応する領域に記憶する。また、S106では、バッファB4の165と0との間の一次誤差量に対して一次関数補間処理を行い、算出された値を補間後誤差量とし、バッファB7の対応する領域に記憶する。続いて、バッファB4に記憶されている値とバッファB7の対応する領域に記憶されている値との差を二次誤差量とし、バッファB5に記憶する。ここで、図9に示すように、バッファB5に記憶されている二次誤差量を曲線S31で表す。また、図10に示すように、補正値165により補正された実出力値を曲線S11で表す。
【0028】
S107では、バッファB5に記憶されている全域のすべての二次誤差量の絶対値が所定値より小さいか否かを判断する。二次誤差量が所定値より小さい場合(S107:YES)、処理は終了する。一方、二次誤差量が所定値より大きい場合(S107:NO)、処理はS108へ移行する。処理後、図8、9に示すように、バッファB5には絶対値が目標誤差量80より大きい二次誤差量が存在するため、処理はS108へ移行する。
【0029】
S108では、バッファB5に記憶されている二次誤差量をバッファB6に複製する。処理後、図8、11に示すように、バッファB5に記憶されている二次誤差量はバッファB6に複製される。
【0030】
S109では、バッファB6に記憶されている二次誤差量の最大絶対値を算出する。ここで、図11に示すように、バッファB6に記憶されている二次誤差量の最大絶対値は215である。
【0031】
S110では、補正値を設定する。ここで、S109で検出された二次誤差量の最大絶対値に対応する一次誤差量を補正値と設定し、バッファB7の対応する領域に記憶する。処理後、図11に示すように、バッファB6の−215に対応するバッファB4の−144がバッファB7の対応する領域に記憶される。
【0032】
S111では、一次誤差量に対して一次関数補間処理を行う。ここで、バッファB6内の最大絶対値と、バッファB6内の最大絶対値と最も近い0値との間の二次誤差量に対応する一次誤差量に対して一次関数補間処理を行い、算出された値をバッファB7の対応する領域に記憶する。本実施形態では、図11に示すように、バッファB4内の角度値0〜角度値302に対応する一次誤差量、および、角度値302〜角度値749に対応する一次誤差量に対して一次関数補間処理を行い、算出された値を補間後誤差量とし、バッファB7の対応する領域に記憶する。
【0033】
S112では、二次誤差量を算出する。ここで、バッファB4に記憶されている一次誤差量と、対応するバッファB7に記憶されている補間後誤差量との差を新たな二次誤差量とし、バッファB5に記憶する。処理後、図11に示すように、バッファB5内の値は、バッファB4内の値とバッファB7内の値との差で書き換えられる。ここで、図12に示すように、バッファB5に記憶されている二次誤差量を曲線32で表す。また、図13に示すように、補正値165および−144により補正された実出力値を曲線S12で表す。
【0034】
S113では、全域の二次誤差量の絶対値が目標誤差量より小さいかを判断する。全域の二次誤差量の絶対値が目標誤差量より小さい場合(S113:YES)、処理は終了する。一方、全域の二次誤差量の絶対値が目標誤差量より小さくない場合(S113:NO)、処理はS108へ移行する。処理後、図11、12に示すように、バッファB5には絶対値が目標誤差量80より大きい値が残っているため、処理はS108に移行する。
【0035】
S108では、バッファB5に記憶されている二次誤差量をバッファB6に複製する。処理後、図11、14に示すように、バッファB5に記憶されている二次誤差量は、バッファB6に複製される。
【0036】
S109では、バッファB6に記憶されている二次誤差量の最大絶対値を検出する。図14に示すように、バッファB6に記憶されている二次誤差量の最大絶対値は83である。
【0037】
S110では、補正値を設定する。ここで、S109で検出された二次誤差量の最大絶対値に対応する一次誤差量を補正値と設定し、バッファB7の対応する領域に記憶する。処理後、図14に示すように、バッファB6の最大絶対値83に対応するバッファB4の一次誤差量130がバッファB7の対応する領域に記憶される。
【0038】
S111では、一次誤差量に対して一次関数補間処理を行う。ここで、バッファB6内の最大絶対値と、バッファB6内の最大絶対値と最も近い0値との間の二次誤差量に対応する一次誤差量に対して一次関数補間処理を行い、算出された値をバッファB7の対応する領域に記憶する。図14に示すように、バッファB6内の最大絶対値83に対応する角度値は875であり、バッファB6内の最大絶対値83と最も近い0値に対応する角度値は749および1024である。ここで、バッファB4内の角度値749〜角度値875に対応する一次誤差量、および、角度値875〜角度値1024に対応する一次誤差量に対して一次関数補間処理を行い、算出された値をバッファB7の対応する領域に記憶する。
【0039】
S112では、新たな二次誤差量を算出する。処理後、図14に示すように、バッファB5内の値は、バッファB4内の値とバッファB7内の値との差に書き換えられる。ここで、図15に示すように、バッファB5に記憶されている二次誤差量をS33で表す。また、図16に示すように、補正値165、−144、83により補正された実出力値を曲線33で表す。
【0040】
S113では、全域の二次誤差量の絶対値が目標誤差量80より小さいかを判断する。判断後、図14に示すように、バッファB5には絶対値が目標誤差量80より大きい二次誤差量が残っていないため、処理は終了する。
【0041】
ここで、S108からS113までの処理は、二次誤差量の絶対値が目標誤差量80より小さくなるまで繰り返す。また、S108からS113までの処理は、特許請求の範囲における「最大絶対値算出処理」に対応する。
【0042】
続いて、回転角検出装置1の検査方法について説明する。
本実施形態では、二次誤差量の絶対値が目標誤差量80より小さくなるまで、最大絶対値算出処理回数が、所定回数以上になると、回転角検出装置1の不良と判断する。ここで、例えば、最大絶対値算出処理回数が6回以上になると回転角検出装置1の不良と判断する。
【0043】
本実施形態では、実出力値の二次誤差量の最大絶対値に対応する一次誤差量を補正値に設定する。これにより、最適な補正点を求めることができ、出力波形の形状に影響されることなく、実出力値を精度よく補正することができる。図17は、補正値165、−144、83により補正された実出力値の誤差量を示す。図17に示すように、本実施形態では、数少ない補正点により、実出力値に対して精度が高い補正を行うことができる。
また、常に二次誤差量の最大絶対値に対応する一次誤差量を所定補正値に設定するため、誤差量が大きい箇所から順番に所定補正値および補正点を設定することができる。よって、最適な所定補正値および補正点を設定することができる。
さらに、実出力値に対して一次関数補間処理を行うことで所定補正値を求めるため、計算を単純化し処理時間を短縮することができる。
【0044】
本実施形態では、目標誤差量80が設定されている。これにより、最大絶対値算出処理回数が増加することにより、処理時間が長くなることを抑制する。
【0045】
本実施形態では、目標誤差量80より小さくなるまで、所定補正値を算出する時、所定補正値の数が所定数以上になると、回転角検出装置1の不良と判断する。これにより、不良な回転角検出装置1を簡単に見つけることができる。
【0046】
(他の実施形態)
上記実施形態では、物理量検出装置を回転角検出装置に適用している。これに対し、他の実施形態では、物理量検出装置をストローク量検出装置に適用することとしても良い。また、他の曲線線形の実出力値を補正する物理量検出装置に適用することとしても良い。
上記実施形態では、所定補正値を算出する所定補正値算出手段としてのコンピュータは、ホールICの外部に設けられている。これに対し、他の実施形態では、所定補正値算出手段としてのマイコン等の演算装置をホールICに設けることとしても良い。
上記実施形態では、所定補正値算出手段は実出力値の一次誤差量に対して最大絶対値算出処理を行うことで所定補正値を設定し、処理部は実出力値に対して所定補正値を用いて補正処理を行う。これに対し、他の実施形態では、所定補正値算出手段は実出力値を逆正弦関数または逆余弦関数で処理した値の一次誤差量に対して最大絶対値算出処理を行うことで所定補正値を設定し、実出力値を逆正弦関数または逆余弦関数で処理した値に対して所定補正値を用いて補正処理を行うこととしても良い。
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 ・・・回転角検出装置(物理量検出装置)
11・・・ホール素子(信号出力手段)
12・・・DSP(処理部)
16・・・コンピュータ(所定補正値算出手段)
30・・・ヨーク(被検出体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出体の物理量の変化に応じた信号を出力する信号出力手段と、
所定補正値を算出する所定補正値算出手段と、
予め記憶されている前記所定補正値に基づいて前記信号出力手段による実出力値に基づく値を補正し、補正された値に基づいて前記被検出体の物理量を算出して出力する処理部と、
を備え、
前記所定補正値算出手段は、所定物理量範囲内の前記実出力値に基づく値に対して一次関数補間処理を行うことで算出される補間後実出力値と、当該補間後実出力値に対応する前記実出力値に基づく値との差である一次誤差量に基づいて前記所定補正値を設定することを特徴とする物理量検出装置。
【請求項2】
前記実出力値に基づく値は、前記実出力値を逆正弦関数または逆余弦関数で処理した値であることを特徴とする請求項1に記載の物理量検出装置。
【請求項3】
前記所定補正値算出手段は、
前記一次誤差量に対して一次関数補間処理を行うことで算出された補間後誤差量と、当該補間後誤差量に対応する前記一次誤差量との差である二次誤差量の最大絶対値を算出する最大絶対値算出処理を行い、
前記二次誤差量の最大絶対値に対応する前記一次誤差量を所定補正値と設定することを特徴とする請求項1または2に記載の物理量検出装置。
【請求項4】
前記所定補正値算出手段は、
前記二次誤差量が所定閾値より小さくなるまで、前記最大絶対値算出処理を繰り返して行うことを特徴とする請求項3に記載の物理量検出装置。
【請求項5】
前記物理量は、相対回転角度、または、相対ストローク量であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の物理量検出装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の物理量検出装置の検査方法であって、
前記最大絶対値算出処理の処理回数が所定回数以上になると前記物理量検出装置の不良と判断する物理量検出装置の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−19829(P2013−19829A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154657(P2011−154657)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】