説明

特に落石、地滑り及び雪止め用の柵に用いられるロープ構造用衝撃吸収装置

特に落石、地滑り及び雪止め用の柵に用いられる、ロープ構造のための過剰荷重による衝撃吸収装置であって、引張力によって変形が可能な少なくとも1つの中間部材(1、1’)を有し、該中間部材が引張力に曝されるロープに組み込まれて構成されている。該中間部材(1、1’)が、それぞれ帯材、棒材、線材、ロープ及び/又は撚り線の形成からなる1つ又は複数の長さ方向要素(7、8、20)を含んでいる。該1つ又は複数の長さ方向要素(7、8、20)は、その一端部(7a、8a、20a)がロープの一端部に接続される。撓み要素(10、10’)周りを案内される他端部が、ロープの他端部に接続される。中間部材(1、1’)への負荷作用によって、前記1つ又は複数の長さ方向要素に形成された撓み角度を実質的に維持する手段が備えられる。したがって、衝撃吸収特性がより良好に定められると共に最適化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載したロープ構造の過剰荷重による衝撃吸収装置、特に落石、地滑り及び雪止め用の柵に用いられる衝撃吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置は、スイス国特許第659,299号明細書(特許文献1)に開示されている。この装置は、ロープ鋼に組み込まれ、引張力によって変形する中間部材を含んでおり、該中間部材は湾曲してリングを形成し、負荷が作用した時に引き伸ばされる。この装置における衝撃吸収特性は、非常に精密な用途では許容することができない変化を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】スイス国特許第659,299号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の基本を構成する目的は、衝撃吸収特性をより良好に定めると共に最適化され、しかも、より繰返し可能である、冒頭で特定された形式の装置を提供することである。
【0005】
本発明によれば、その目的は、請求項1の特徴部分を有する装置により達成される。更に本発明による装置の好ましい実施形態は、従属請求項の命題を構成する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、中間部材が引張を受けるロープに組み込まれ、該中間部材は、帯材、棒材、線材、ロープ又は撚り線、及び/又は撚り線の組合わせから形成される1つ又は複数の長さ方向要素を有しており、一方の長さ方向要素が一方のロープ端に接続され、該長さ方向要素は、他方のロープ端に接続された撓み要素の周りを案内される。帯材、棒材、線材、ロープ又は撚り線の他端は自由端であり、撓み角は、好ましくは90〜225度の間である。中間部材に負荷が作用した時、その撓み角を実質的に維持する手段が備えられる。
【0007】
引張荷重の増大により、長さ方向要素が撓み要素(例えば1つ又は複数の撓みボルト)を一方に引張り、例えば落石又は落雪によってロープ上に働く衝撃荷重が、撓みと摩擦とにより緩和され、そこに含まれる運動エネルギーが吸収される。この衝撃吸収特性は、所望の方法で調整が出来、例えば帯材の数、厚み、又は幅の変更、これら長さ方向要素の形態、材料特性(例えば強度、降伏強度、弾性係数)、又は棒材、線材又は撚り線の長さ全体に渡って、数、又は厚みの変更により調整することが出来る。
【0008】
しかし、これらに対応する他の装置にすることも可能であり、多数の同様な撓み作用により、長さ方向要素を繰返し撓ませることができるようにして、エネルギー吸収作用を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下に図面を参照して、本発明を詳細に説明する。図面は以下の通りである。
【図1】本発明による、引張りに曝されるロープのための過剰荷重衝撃吸収装置の第1実施形態の側面図である。
【図2】図1の装置の平面図である。
【図3】本発明による、引張りに曝されるロープのための過剰荷重衝撃吸収装置の第2実施形態の側面図である。
【図4】図3の装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図2に、ロープ構造の過剰荷重衝撃吸収装置、例えば、特に落石、地滑り及び雪止め用の柵のような自然の脅威に備えた装置に使用される中間部材1が示されており、この中間部材は、例えば、落石又は落雪による、増大する引張荷重に曝されるロープの衝撃荷重を緩和し、かつ運動エネルギーを弱めることができるように、引張力に曝されるロープに組合わされ、これによりロープ強度を十分に利用可能としている。ロープ構造、特に落石、地滑り及び雪止め用の柵に用いられるロープ構造が、本発明の請求項1の前文に示される。質量に起因する運動エネルギーが動的な減速作用により吸収されるようにするシステム並びに装置といった、更に他分野への応用が可能である。
【0011】
中間部材1は、連結金具3を備えた第1接続部材2を有し、該連結金具3には、図示されないロープが、その引張り取付要素を介して又はロープ端において取り付けられる。他方の引張り取付け要素又はロープ端は、第2接続部材4の連結金具5に連結される。接続要素として、連結金具の代わりに他の接続部材を利用することもできる。
【0012】
本発明による図1及び図2に示される実施形態において、中間部材1は、長さ方向要素としての互いに重合わされた2つの帯材又は平らな棒材7、8を有し、該長さ方向要素はその端部7a、8aと第1接続部材2とが、連結金具3を固定するねじ付ボルト9によって取付けられる。第2接続部材4は、2つの板材11、12を有し、これらの板材は、ねじ13、14により、前記帯材幅に相当する距離だけ互いに離した状態で結合される。一方のねじ13は、連結金具5とねじ付きボルト15に割当てられ、もう一方のねじ14は、撓みボルト10を構成し、その周りを帯材7,8が案内される。ねじ結合に代えて、それに対応する溶接結合も利用可能である。撓み角は、好ましくは少なくとも180度である。
【0013】
第1接続部材2に一端部7a、8aが固定された帯材7、8は、その他端部7b、8bは自由端である。この端部領域で、帯材7,8は、互いにねじ16結合され、また帯材7、8は、第1接続部材2の始端領域において、ねじ17で結合する。
【0014】
更に、第2接続部材4は、撓んだ帯材7,8用の撓みボルト10に対して平行な2つの案内ボルト21、22を備え、かつこれらの案内ボルトは、自由端7b、8bの方、つまり第1接続部材2の方向に位置をずらして配置され、外側の帯材8が支えられ、中間部材1に荷重がかかった時に、撓み角を維持するのを確実にする。自由端7b、8bをその位置に固定するためには、とりわけ案内ボルト21が重要であるが、2つの案内ボルト21、22があることがより望ましい。
【0015】
帯材7,8は、好ましくは、未加工の鋼、耐候性鋼(コルテン)、鍍金鋼又はステンレス鋼から製造されるが、非鉄鋼、好ましくは亜鉛、銅又は銅合金から製造してもよい。
【0016】
一方、腐食保護策がまた、適切な塗布処理(2重塗布又は粉末塗布)又は他の表面処理により実施されてもよい。
【0017】
更に、表面処理法が、エンボス加工、粗面化加工、潤滑等として長さ方向要素及び/又は撓みボルトに施すことができ、実質的に装置中の付着及び滑り摩擦作用を変化させ、これによって減速特性が特定の特性に適するようにすることができる。
【0018】
同様に、非金属材料から製造される実施形態、例えば、変形した時にエネルギー吸収する特殊な合成物、又はこれらの材料の組合せにより製造される実施形態とすることも可能である。
【0019】
引張荷重の増大によって、連結金具3を通って一方のロープ端部に接続された帯材7、8は、撓みボルト10を片側に引張る。帯材7、9の変形と摩擦により、ロープに作用した衝撃荷重は緩和され、例えば落石衝撃に含まれる運動エネルギーが吸収される。
【0020】
単一の長さ方向要素のみを用いることが可能であるが、2又はそれ以上の長さ方向要素を互いに重ね合わせて使用することにより、その効果を著しく増大することができる。
【0021】
本発明に基づく、少なくとも1つの帯材を含む中間部材1では、例えば帯材長さに渡り、その数、厚み又は幅を変更することにより、衝撃吸収特性を最適化することができる。
【0022】
例えば、帯材厚みを帯材の自由端に向かう所定長さで連続的に増加させること、及び/又は帯材厚みの選択により、衝撃緩和工程の緩やかな開始手段を設けることができる。
【0023】
同じ目的のために、1つ又は複数の帯材には、撓みボルト10直径よりも大径の初期湾曲となるように事前に湾曲を形成することも可能である。
【0024】
また、事前の熱処理により、1つ又は複数の帯材の始端領域における強度を弱めることも可能である。
【0025】
単一又は複数の帯材に代わりに、互いに隣り合うように配置される個々の、又は多数の長さ方向要素を変形要素として利用してもよい(材料は、これまでに述べた帯材と同一の材料が利用できる)。
【0026】
図3及び図4では、更に別の実施形態である中間部材1’が示されており、該中間部材1’は、ロープを挿入する為の、長さ方向要素として設けられた線材20(又は棒材又は撚り線)が一端20aに接続される第1接続部材2’と、撓みボルト10’を備えた第2接続部材4’とを有する。これらの接続部材2’、4’はそれぞれ両側に、ロープ端部を取付ける連結金具3’、5’を有する。線材20の自由端20bは、撓みボルト10’の周りを約180度の撓み角で順に案内され、終端止め具19で結合される(図1及び図2の実施形態のように止め具を設けても、又は止め具をねじ16により形成してもよい)。
【0027】
撓みボルト10’は、第2接続部材4’のフォーク形状部24に割当てられたねじ25により形成される。また、該フォーク形状部24には、好ましくは撓みボルト10’に平行な2つの案内ボルト21’、22’が備えられ、これらの撓みボルト10に対する位置関係と案内ボルト21、22の機能は、図1及び図2のものと対応しており、平行に伸びる線材20に外側から接触する。フォーク形状部24は、連結金具5’のねじ付ボルト26によって保持される。
【0028】
中間部材1’の第1接続部材2’には、2つの追加の連結金具27、28が備えられ、これらの連結金具は、一方のロープ端部に取り付けられる連結金具3’を、線材端部20aの取付け部分に接続する。
【0029】
本発明による、特に落石、地滑り及び雪止め用の柵に用いられる、ロープ構造用の過剰荷重によるこの態様の衝撃吸収装置では、線材、又は棒材又は撚り線の数、或いは太さを変更することにより衝撃吸収特性を最適化することができる。1又は複数の帯材を使用した場合と同様に、この態様においても緩やかな衝撃緩和工程を実施することができる。
【0030】
言うまでもなく、接続部材の構造設計については、ここに示された実施形態から変更することが可能であり、撓みボルト10又は10’に代えて、他の撓み要素を使用することもできる。さらに、中間部材に荷重が作用した際に撓み角を維持するために、案内ボルト21、22及び21’、22’に代えて、他の手段を用いてもよい。2つの撓み要素以上についての長さ方向要素の撓み態様も想定でき、これにより1又は複数の長さ方向要素が、多回数の曲げが可能となり、より大エネルギーの吸収が可能となる。
【0031】
これらの撓み要素は、軸受形状としたり、又は回転可能にすることもでき、これらにより同様に、装置の付着及び/又は滑り摩擦作用を実質的に変更でき、減速特性を特定の特性に調整することが可能になる。回転可能な撓み要素により、所望の表面摩擦低減を達成することができる。同様にこの特性は、長さ方向要素及び撓み要素の特別な表面設計によって変えることができる。この目的のために、例えば、滑り摩擦を低減させる表面に潤滑剤を塗布することが好ましい。
【0032】
中間部材とロープ端部との間のねじ接続に代えて、例えば、溶接構造又は相互圧縮のような他の接続方法が用いられてもよい。
【0033】
衝撃緩和特性の最適化は、材料の特性、例えば、強度、材料流れ限界、弾性係数によって実施することができる。
【符号の説明】
【0034】
1、1’ 中間部材; 2、2’ 第1接続部材; 3、3’ 連結金具;
4、4’ 第2接続部材; 5、5’ 連結金具; 7、8 帯材(長さ方向要素);
10、10’撓みボルト; 11、12 板材; 20 線材(長さ方向要素);
21、22 案内ボルト; 24 フォーク形状部; 27、28 追加の連結金具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柵に用いられるロープ構造の過剰荷重による衝撃吸収装置であって、引張力によって変形が可能な少なくとも1つの中間部材(1、1’)を有し、該中間部材が引張力に曝されるロープに組み込まれて構成されており、
前記中間部材(1、1’)が、それぞれ帯材、棒材、線材、ロープ及び/又は撚り線の形態とすることができる1つ又は複数の長さ方向要素(7、8、20)を含み、該少なくとも1つの長さ方向要素(7、8、20)は、その一端(7a、8a、20a)がロープの一端部に接続され、他端が、ロープの他端部に接続された撓み要素(10、10’)の周りを案内され、
前記中間部材(1、1’)に負荷が作用したときの、前記1つ又は複数の長さ方向要素に形成される撓み角を実質的に維持する手段が設けられる
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1による装置であって、前記1つ又は複数の長さ方向要素の一端部(7b、8b、20b)が自由端であり、撓み角が90〜225度の間であることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1による装置であって、前記長さ方向要素(7、8、20)が、鋼、好ましくは、耐候性鋼(コルテン)、鍍金鋼又はステンレス鋼、及び/又は非鉄鋼、好ましくは亜鉛、銅又は銅合金から製造されることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1つによる装置であって、前記長さ方向要素(7、8、20)の一端部(7a、8a、20a)は、ロープ端部接続用の連結金具(3、3’)を備える第1接続部材(2、2’)内にそれぞれ取付けられることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4による装置であって、前記撓み要素が第2接続部材(4.4’)内に取付けられた撓みボルト(10、10’)により形成され、前記第2接続部材(4.4’)がロープの他端部と接続された連結金具(5、5’)を備えることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5による装置であって、前記中間部材(1、1’)に負荷が作用したときの撓み角度を維持する前記手段が、撓みボルト(10、10’)に平行で、かつ、該撓みボルトから前記長さ方向要素(7、8、20)の自由端部(7b、8b、20b)の方向に離れた少なくとも1つの案内ボルト(21、22、21’、22’)により形成され、前記1つ又は複数の案内ボルト(21、22、21’、22’)は、撓みボルト(10、10’)の周りで撓まされる前記長さ方向要素(7、8、20)の外側に接触することを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1つによる装置であって、終端止め具(16、19)が前記長さ方向要素(7、8、20)の自由端部(7b、8b、20b)に備えられていることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1つによる装置であって、前記中間部材(1)が、少なくとも1つの帯材(7、8)を含み、該帯材の厚み及び/又は幅がその自由端部(7b、8b)に向かって所定長さに渡って連続的に増加することを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1つによる装置であって、前記中間部材(1)が、少なくとも2つの帯材(7、8)を含み、該帯材は互いに重なり合い、かつ撓み要素(10)周りを案内されることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか1つによる装置であって、前記中間部材(1’)が、多数の長さ方向要素(20)を含み、該長さ方向要素が隣り合って伸びて撓み要素(10)の周りを案内されることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項9又は10による装置であって、衝撃吸収特性が前記長さ方向要素、即ち、帯材、棒材、線材、ロープ又は撚り線又は撚り線の組合せであり、その長さに渡り、その数、形状又は厚みにより変更されることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−522978(P2011−522978A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508782(P2011−508782)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【国際出願番号】PCT/CH2009/000151
【国際公開番号】WO2009/137951
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(510301231)ジェオブルッグ・アーゲー (5)
【Fターム(参考)】