説明

特に衣料品および靴のための布地

特に衣料品および靴のための布地(10)であって、− 使用者の身体へ指向され、実質的に疎水性かつ通気性であるとともに、この布地(10)で製造された衣料品などの使用者から液相の汗および蒸気相の汗を排出するために適している内側の第1層(11)と、− 実質的に疎水性であり、かつ、液相の汗を内側の第1層(11)から外側の第3層(13)へ向けて移送するとともに、蒸気相の汗のための、第1層(11)から外方への優先通路を画定する中間の間隔確保用第2層(12)と、− 実質的に親水性であり、かつ、蒸気相の汗を透過させるために、第1層(11)から到達する液相の汗を吸収するために、そして、液相の汗をそれが外方へ蒸発することができるようにその大きい表面にわたって分布させるために適している外側の第3層(13)とを備えてなる布地(10)。これらの層(11,12,13)は、単一体を形成するように接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に衣料品および靴のための改良型布地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣料品は、これらが、保護用外装と、発汗が最も多く起きる身体の領域に進入穴のある空所を形成する内側層とを備えてなることを特徴とする点で、現在知られているとともに商業的に広く評価されている。
【0003】
このような衣料品の提供は、同一発明者の文献である、国際出願公開パンフレット第0101803号、ヨーロッパ特許第1194049号および米国特許第6263511号に開示されている。
【0004】
このように製造された衣料品によれば、通常は身体によって作られた温かい空気および蒸気の対流が可能になるとともに、これらがこの衣料品の最上部領域に配置された穴によって外側へ放出することができ、また、水、不純物および他のものを中に入れない装置が前記の穴に配置されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの衣料品は評価されているものの、これらには、これらのいっそう際立った普及が抑制されるという限界のあることが示された。
【0006】
前記のような構造がある衣料品の提供は、実際には、その系を構成する相異なる複数の布地(少なくとも2種類の布地:外装と前記空所を形成する層とからなるが、通常は、実質的に常に存在している内側ライニングが含まれる3種類の布地)を切り取るとともに、これらをいっしょに縫い合わせるための多くの作業が必要であり、どちらかというと複雑であり、また費用が多くかかる。
【0007】
さらにまた、前記衣料品はたいてい、特に良好な適合性がなく、特別な視覚的インパクトもほとんどなく、また、審美的な観点から常に許容できるというものでもない。それらは、同じ種類の通常の衣料品よりもかさばっているとともにより堅いように見えるうえ、さらに着用者の運動をいっそう困難にする。
【0008】
ましてやなおさら、前掲の文書による衣料品の構造は、ニットウェアや特に下着類のような、柔軟性および快適性という高い品質を有していなければならない商品のために適したものではなく、これらの商品には、特に柔軟であって生理的に効果的な繊維が実際に必要である。
【0009】
観察された別の制限は、現在の構造では液体になった凝縮状の汗を除去することができないという事実によるものであるが、その理由は、この目的のために特に用意されていない繊維に前記空所が設けられているからである。
【0010】
これらの短所を未然に防ぐために、同一発明者の文献である、ヨーロッパ特許第1266584号および米国特許出願公開第2002184927号には、ある構造を有している衣料品および靴のため布地が開示されており、この布地は、
− ライニングとして作用するとともに凝縮状の汗を大きい表面にわたって分布させることのできる材料からなる内側層と、
− 衣料品の内側に凝縮した汗を外方へ移送することのできる材料からなる中間の間隔確保層と、
− 凝縮状の汗を、その即時蒸発を引き起こすように、かつ、その結果、全体の系を再生するように、きわめて大きい表面にわたって分布させることのできる材料からなる外側層と
を備えてなることを特徴とする。
【0011】
これらの層は、単一要素を形成するように一体化されている。
【0012】
この布地によれば、より大きい快適性、より良好な適合性、簡単で費用があまりかからない製造性および作業性がもたらされるが、この布地には、改良されてもよい側面もまた存在している。
【0013】
具体的には、実質的に親水性である前記内側層では、一方において、凝縮した水蒸気の大きい表面にわたる分布が促進されるが、他方において、その水蒸気のこの布地の外側への逸出は促進されない。
【0014】
さらにまた、このような中間の間隔確保層は、水と蒸気をかつ/または蒸気を吸収することなく運ぶことのできる繊維から作られており、それゆえ実質的に疎水性であるものの、前記内側層の全表面に実質的に影響を及ぼすように連続状に配置されている。
【0015】
このように、前記内側層を通り抜ける蒸気は、疎水的特性を有しているもののその外方への逸出を妨げる繊維で密に充填された前記中間層を通り抜けなければならず、そのような布地の内側あるいは表面における好ましくない凝縮が助長される。
【0016】
本発明の目標は、前掲の布地に関して、かつ、他の類似した公知の型の布地に関して、より良好な発汗作用および蒸気放散を行うことができる、特に衣料品および靴のための改良型布地を提供することである。
【0017】
この目標の範囲内で、本発明の1つの目的は、より良好な適合性を有するとともに生理的にいっそう快適である改良型布地を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、マウンテンスポーツのための専用衣類からウィンタージャケットあるいはスポーツジャケットさらには下着に到るまでの最も類似点のない衣料品を設けるために採用することができる改良型布地を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、本発明による布地で得られた商品の使用者の身体における自然体温調節が可能である改良型布地を提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、公知のシステムおよび技術で費用をあまりかけることなく製造することができる改良型布地を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目標、これらの目的、および後にいっそう明らかになる他の目的は、特に衣料品および靴のための改良型布地であって、
− 使用者の身体へ指向され、実質的に疎水性かつ通気性であるとともに、この布地で製造された衣料品などの使用者から液相の汗および蒸気相の汗を排出するために適している内側の第1層と、
− 実質的に疎水性であり、かつ、液相の汗を前記内側の第1層から外側の第3層へ向けて移送するとともに、蒸気相の汗のための、前記第1層から外方への優先通路を画定する中間の間隔確保用第2層と、
− 実質的に親水性であり、かつ、蒸気相の汗を透過させるために、第1層から到達する液相の汗を吸収するために、そして、前記液相の汗をそれが外方へ蒸発することができるようにその大きい表面にわたって分布させるために適している外側の第3層と
を備えてなることを特徴とする布地によって達成される。
【0022】
本発明のさらに別の特徴および利点は、添付図面において非限定的な例として示された、好ましいが限定的でない4つの実施形態の記載からいっそう明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図面によれば、本発明による特に衣料品および靴のための改良型布地は、図1に示された第1実施形態では、その全体が参照符号10によって表わされている。
【0024】
この改良型布地10は、
− 使用者の身体へ指向され、実質的に疎水性かつ通気性であるとともに、この布地10で製造された衣料品の使用者から蒸気相の汗および液相の汗を運び去るために適している内側の第1層11と、
− 液相の汗を前記内側の第1層11から外側の第3層13へ向けて移送するための実質的に疎水性である中間の間隔確保用第2層12であって、後にいっそう詳しく説明されるが、前記蒸気相の汗の通路のための、前記第1層11からその外側への優先通路を形成している中間の第2層12と、
− 実質的に親水性であり、かつ、蒸気相の汗を透過させるために、第1層11から到達する液相の汗を吸収するために、そして、前記液相の汗をそれが外方へ蒸発することができるようにその大きい表面にわたって分布させるために適している外側の第3層13と
を備えてなる。
【0025】
前記第1層11、前記第2層12および前記第3層13は、単一体を形成するように接合されている。
【0026】
本発明の前記第1実施形態では、中間の第2層12の上に形成された前記優先通路は複数の溝14によって設けられており、これらの溝は複数の平行なリブ15によって形成されている。
【0027】
これらの溝14は、特に、布地10が属する衣料品の使用のための構造に関してほとんど垂直に配置されているときには、衣料品の下部領域から上方への蒸気相の汗の上昇を促進するように構成されている。
【0028】
発汗によって作られた熱くて湿気の多い空気は実際、その熱のために自然に膨張しがちであり、また、常に下部領域から上方へ移動しがち(煙突効果)である。
【0029】
本発明による改良型布地10の第1実施形態では、内側の第1層11は、親水性布地の細長片16によって形成されており、これらの細長片のそれぞれは、対応リブ15に影響を及ぼすように配置されている。
【0030】
第1層11、および従って、この第1層を構成する細長片16は、ポリエステルあるいはポリプロピレンの疎水性繊維から、または必要に応じて他の等価な疎水性繊維から作られているのが好ましい。具体的には、第1層11は、およそ150デニールの繊維寸法があるポリエステルのモノフィラメントから作られている。
【0031】
中間の第2層12は、疎水性のポリエステルあるいはポリプロピレンから作られているか、あるいは他の等価な疎水性繊維から作られている。具体的には、疎水性第2層12は、およそ30デニールの繊維寸法があるモノフィラメントによるポリエステル布地から作られている。
【0032】
第2層12の前記モノフィラメントは、リブ15を形成するように、第1層11の細長片16と第3層13とで織り合わされている。第2層12のリブ15は、対応している第1層11の細長片16へ接合されており、少なくとも2ミリメートルの、好ましくは3〜4ミリメートルの範囲にある厚さを有している。
【0033】
第1層11の布地の細長片16には、少なくとも2ミリメートルの、また多くとも6ミリメートルの、そして好ましくはおよそ4ミリメートルの幅がある。
【0034】
加えて、溝14には、2つの連続するリブ15どうしの間に3〜8ミリメートルの平均幅があり、好ましくは4ミリメートルの平均幅がある。
【0035】
通気性であって実質的に親水性である第3層13には、木綿、リンネル、セルロース、プラスチックあるいは他の等価な繊維のうちから選択された少なくとも1つの材料からなる繊維が含まれている。具体的には、前記第3層13には、例えば6−ナイロンあるいは66−ナイロンのような変性ポリアミド繊維が含まれている。
【0036】
代案として、親水性の前記第3層13には、変性されたポリアミドおよびポリエステルが混合された混成繊維、あるいは混合型繊維から作られた第1モノフィラメントとポリエステルから作られた第2モノフィラメントとの組み合わせが含まれている。
【0037】
混合型繊維から作られた前記第1モノフィラメントは、例えば変性されたポリアミドおよびポリエステルから作ることができ、前記第2モノフィラメントは、ポリエステルから作ることができる。この混合型繊維から作られた第1モノフィラメントにはおよそ90デニールの繊維寸法があるのが好ましく、一方、ポリエステルから作られた第2モノフィラメントにはおよそ150デニールの繊維寸法があるのが好ましい。
【0038】
一般に、繊維は、親水的特性を備えるためには、重合の間にポリマー鎖の化学的改質を引き起こすことによって、あるいは、化学的に親水性の部位を前記ポリマー鎖の内部へあるいは前記ポリマー鎖の副産物として挿入することによって、変性される。代案として、前記親水性の部位をそれらの面に付着させるように繊維に化学的処理を施すことは可能である。
【0039】
本発明による改良型布地10は、その溝14を備えており、前掲の布地に関して、かつ、他の類似した公知の型の布地に関して、蒸気相および液相の汗のより良好な放散が可能である。
【0040】
蒸気相の汗の放散に関して、溝14によれば実際に、汗は下方から上方へ連続的に移動し、都合のよいことにほとんど垂直に方位付けられている前記溝14に沿って上昇することができる。これらの溝14によって、蒸気相の汗がその上昇への障害に直面しない前掲の優先通路がもたらされ、従って、蒸気相の汗は、公知の布地あるいは前述の衣料品において生じる場合とは異なり、布地10の中で凝縮するおそれがない。
【0041】
さらにまた、内側の第1層11は、親水性ではなくて実質的に疎水性であり、使用者の身体から中間の第2層12へ向かい、次いで、その上に重なっている外側の第3層13へ向かう液体の汗の移動を促進する(親水性の第1層で起きるようにその移動を妨げるのではなく)。
【0042】
本発明による改良型布地10の作用は、より大きい明瞭さのために図6に例示されている。
【0043】
水滴21によって概略的に表わされた液相の汗は、使用者の皮膚20から流出する。使用者の身体の外側における温度条件および気圧条件に左右されるが、液相の汗21は、一部が皮膚自体の熱のために蒸発するとともに、一部が液相のままで残る。
【0044】
波線23によって示された蒸気相の汗は、第1層11を通り抜け、次いで、第2層12の溝14によってその上行移動が促進され、薄色の矢印24によって表示された通路に従って上昇する。
【0045】
改良型布地10の上に存在している液相の汗21は、皮膚20から直接にあるいは蒸気相の汗23の凝縮体から発生するが、このことは、衣料品の外側における温度条件および気圧条件が、皮膚20と第1層11との間の気圧および温度に関してこの状態遷移を引き起こすようなものであるときには、改良型布地10の内部で起きることがある。
【0046】
温度および気圧におけるこれらの差によって、液相の汗21は、疎水性であってそれゆえ液体を通過させるのに適している第1層11を通り抜け、その後、同じ作用によって、中間の第2層12のリブ15を通り抜けて外側の親水性第3層13へ到達し、そこで拡散して、利用可能なより大きい表面にそれ自体まとまる。
【0047】
液相の汗21の通路は濃色の矢印25によって表示されている。
【0048】
第3層13から、液相の汗は、蒸発することができるとともに、どのような場合にも第1層11から間隔を置いて残り、それゆえ、その接触によって、多くの場合、不快感が生じる使用者の皮膚20に接触していない箇所に残る。
【0049】
本発明によるこのような改良型布地10は、適度な厚さがあり、また、柔らかく、触って心地よいので、改善された適合性があるとともに、公知の布地よりも生理的に快適である。
【0050】
従って、改良型布地10は、マウンテンスポーツのための専用衣類からウィンタージャケットあるいはスポーツジャケットさらには下着に到るまでの最も類似点のない衣料品を作るために、良好に使用することができる。
【0051】
図2に示され、かつ、その中で参照符号110によって表わされた本発明の第2実施形態では、布地110は、通気性の内側第1層111が、細かく穴の開けられた連続状布地によって、第2層112のリブ115の上方に構成されている、ことを特徴とする。
【0052】
外側の第3層113は、ある意味では本発明の第1実施形態について説明されたものに充分に類似している、これまた親水性型のものである。
【0053】
この改良型布地110では、これまた、蒸気相の汗のための優先通路を形成する溝114を画定するリブ115があるが、第1実施形態とは異なり、それらは、内側第1層111をもたらす微小穴が開けられた布地によって影響を受ける。
【0054】
従って、このような内側第1層111には、本発明による改良型布地10の第1実施形態の第1層11をもたらす細長片16によって設けられた同様の制限区域に関して、使用者の身体に接触するためのより大きい表面積がある。
【0055】
本発明の第3実施形態が、図3および図4におけるその2つの変形例に示されている。
【0056】
本発明による布地のこの第3実施形態の第1変形例210では、通気性の内側第1層211は巨大穴が散乱状に開けられた布地によって構成されている。
【0057】
第2層212(前述の実施形態におけるように疎水特性を有している)は、第1層211と第3層213との間に、第1層211を形成する巨大穴が開けられた布地の穴217に影響を及ぼすことのないように存在している。
【0058】
これらの穴217と第2層212における対応開口218とによって、蒸気相の汗が第1層211から外方へ流出するための優先通路が形成されている。
【0059】
この布地の実施形態210では、実質的に網状である第2層212の全体構造を形成するように、先の第1実施形態10および第2実施形態110の溝14,114が、連続状に配置されているとともに平行線に沿ってずらされている開口218の組によって置き換えられている。
【0060】
第2層212の幾何学的パターンを覆うように実質的に六角形の穴217が開けられている第1層211には、使用者の身体に接触するために設計された区域があり、この区域は、第2実施形態の同様の表面よりも小さい表面を有しており、加えて、前記リブおよび前記溝が設けられた本発明の第1実施形態よりもいっそう連続的な接触面である。
【0061】
図4において参照符号310によって表わされた、本発明の第3実施形態の第2変形例では、実質的にダイアモンド形状である穴317および開口318が、第1方向に対して平行である線に沿って、また、前記第1層と同様な配置の平面に沿ってこの第1方向に垂直である第2方向に対して平行である線に沿って、設けられている。
【0062】
図5に概略的に示され、かつ、その中で参照符号410によって表わされた、本発明の第4実施形態では、衣料品の下部領域から上方への蒸気の上昇を促進する、第1層411から外方への蒸気相の汗のための優先通路をもたらすように、それぞれの間に溝414が形成される実質的に管状の平行な要素419を形成するために、第2層412のリブ415が第1層411の対応部分416によって包囲されている。
【0063】
本発明の第1実施形態10の細長片16があるリブ15は、本発明の第4実施形態のそれに対応する第1層部分415があるリブ415と同様に、布地10あるいは410と使用者の身体との間の接触のために設計された、第1層11あるいは411の全表面を形成しており、この表面は、使用者へ指向されている布地10あるいは410の全区域の50%に等しいかあるいはそれよりも小さい。
【0064】
接触面が減少した改良型布地10あるいは410によれば、衣料品の着用が容易になり、その衣料品と使用者の身体との間の摩擦が減少する。
【0065】
この明細書に記載されたいくつかの実施形態における改良型布地には、重量パーセントが8%〜15%の最小範囲から60%〜75%の最大範囲までの間にある親水性繊維が備わっていてもよい。
【0066】
この布地は例えば、340±5g/m2に対して、11%の親水性ナイロンと89%のポリエステルとによって構成することができる。
【0067】
本発明による改良型布地にはさらに、前記第3層の上およびその外側に、技術的な機能があるか、あるいは特殊な、化粧的な、あるいは装飾的な模様付けに耐える第4層が備わっていてもよい。
【0068】
簡単にするために示されていないこの第4層は、接着剤のスポットあるいは他の等価な手段によって、下にある前記第3層へ接合されている。この第4層には例えば防水性・通気性膜が備わっていてもよい。
【0069】
本発明による改良型布地によれば、記載されたように、液状形態にあり、かつ/または、蒸気形態にある汗を、この衣料品を着用した使用者の身体から外方へ運ぶことができる。
【0070】
すべての実施形態におけるこの改良型布地の作用原理は、汗が前記疎水性第1層によって押されて前記親水性第3層へ向かい、その第3層が汗を吸収して(汗を引き寄せて)、それを蒸発させるので、「プッシュプル」効果と名付けられている。
【0071】
皮膚に隣接している前記内側第1層と周囲との間における湿度の大きい差によって、記載されたように、汗の外側への移動が導かれる。
【0072】
記載された改良型布地が備わった衣料品あるいは靴を設けることで、人体によって作られた汗は、乾燥したままである前記内側第1層によって保持されることがない。
【0073】
液相の汗は間隔確保用の前記第2層を通して運ばれ、一方、蒸気相の汗はこの第2層の溝あるいは開口に沿って運ばれるが、これらの溝あるいは開口は、この衣料品の内部で都合よく方位付けられており、この第2層は、複数の溝あるいは複数の開口を構成する空所を形成している。
【0074】
液相の汗および蒸気相の汗が前記第3層へ到達した後に、その液相の汗は、それがそこから容易に蒸発することのできる前記第3層の上に分布する。
【0075】
この改良型布地の内側第1層も中間第2層を構成する前記モノフィラメント糸も、ともに疎水性であるため汗を吸収しないが、これらは、蒸気相の汗および温かい空気を一種の空隙あるいはチャンバーによって親水性の外側第3層へ導き、その第3層が、液相の汗をすべて吸収し、それを外側環境へ向けて蒸発させる。
【0076】
従って、この衣料品は、温かい空気、蒸気相の汗および液相の汗を放散させることができる。
【0077】
湿気が身体から外側環境へ向かって運ばれることで、衣料品の快適度が増大し、使用者の身体に最も近接して存在するこれらの層における湿った区域の形成が防止されあるいは最小限に抑えられる。
【0078】
実際に、以上のように記載された本発明によれば、従来技術の衣料品および布地に認められた短所が解消されることがわかった。
【0079】
具体的には、本発明によれば、従来技術の布地に関して、かつ、他の類似した公知の型の布地に関して、蒸気相の汗および液相の汗のより良好な放散を行うことができる、特に衣料品および靴のための改良型布地が提供される。
【0080】
さらにまた、本発明によれば、より良好に適合することができるとともに生理的にいっそう快適である改良型布地が提供される。
【0081】
さらにまた、本発明によれば、マウンテンスポーツのための専用衣類からウィンタージャケットあるいはスポーツジャケットさらには下着に到るまでの最も類似点のない衣料品を設けるために採用することができる改良型布地が提供される。
【0082】
さらにまた、本発明によれば、前記布地で得られた商品の使用者の身体における自然体温調節が可能である改良型布地が提供される。
【0083】
さらにまた、本発明によれば、公知のシステムおよび技術で費用をあまりかけることなく製造することのできる改良型布地が提供される。
【0084】
以上のように構想された本発明は、添付された特許請求の範囲の適用範囲内にすべてがある多数の修正および変形を受け入れることができ、すべての細部は、技術的に等価な他の要素でさらに置き換えることができる。
【0085】
実際に、使用される材料は、それらが特定の用途に適合する限り、寸法と同様に、諸要件および最新技術に従った任意のものであってよい。
【0086】
この出願が優先権を主張するイタリア特許出願番号第PD2006A000098号における開示は、引用によってこの明細書に組み入れられる。
【0087】
特許請求の範囲において言及された技術的特徴が参照符号に従う場合には、それらの参照符号は、特許請求の範囲の理解度を増大させるという唯一の目的だけのために含まれたものであり、従って、そのような参照符号には、そのような参照符号によって一例として特定されたそれぞれの要素の解釈における限定的効果はまったくない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、本発明による改良型布地の第1実施形態における概略斜視図である。
【図2】図2は、本発明による改良型布地の第2実施形態における概略斜視図である。
【図3】図3は、本発明による改良型布地の第3実施形態の第1変形例における概略斜視図である。
【図4】図4は、本発明による改良型布地の第3実施形態の第2変形例における概略斜視図である。
【図5】図5は、本発明による改良型布地の第4実施形態における概略斜視図である。
【図6】図6は、本発明による改良型布地の、使用者の皮膚に近い部分の概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に衣料品および靴のための布地であって、
− 使用者の身体へ指向され、実質的に疎水性かつ通気性であるとともに、この布地(10)で製造された衣料品などの使用者から液相の汗および蒸気相の汗を排出するために適している内側の第1層(11)と、
− 実質的に疎水性であり、液相の汗を前記内側の第1層(11)から外側の第3層(13)へ向けて移送するとともに、蒸気相の汗のための、前記第1層(11)から外方への優先通路を画定する中間の間隔確保用第2層(12)と、
− 実質的に親水性であり、かつ、蒸気相の汗を透過させるために、第1層(11)から到達する液相の汗を吸収するために、そして、前記液相の汗をそれが外方へ蒸発することができるようにその大きい表面にわたって分布させるために適している外側の第3層(13)と
を備えてなり、
− これらの層(11,12,13)は、単一体を形成するように接合されている
ことを特徴とする布地。
【請求項2】
前記中間の第2層(12)に形成された前記優先通路は、複数の平行なリブ(15)によって形成された複数の溝(14)によって設けられており、これらの溝(14)は、特にほとんど垂直に配置されているときには、衣料品の下部領域から上方への蒸気相の汗の上昇を促進するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の布地。
【請求項3】
前記内側の第1層(11)は、親水性布地の細長片(16)によって形成されており、これらの細長片のそれぞれは、前記リブ(15)の対応リブに影響を及ぼすように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の布地。
【請求項4】
前記第1層(11)は、ポリエステルあるいはポリプロピレンの疎水性繊維から、または他の等価な疎水性繊維から作られていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の布地。
【請求項5】
前記第1層(11)は、およそ150デニールの繊維寸法があるモノフィラメントによるポリエステル布地であることを特徴とする請求項4に記載の布地。
【請求項6】
前記中間の第2層(12)は、ポリエステルあるいはポリプロピレンの疎水性繊維から、あるいは他の等価な疎水性繊維から作られていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の布地。
【請求項7】
前記中間の第2層(12)は、およそ30デニールの繊維寸法があるポリエステルモノフィラメントから作られていることを特徴とする請求項6に記載の布地。
【請求項8】
前記第2層(12)の前記モノフィラメントは、前記リブ(15)を形成するように、第1層(11)および第3層(13)で織り合わされていることを特徴とする請求項7に記載の布地。
【請求項9】
前記第1層(11)の対応細長片(16)へ接合された前記第2層(12)の前記リブ(15)は、少なくとも2ミリメートルの、好ましくは3〜4ミリメートルの範囲にある厚さを有していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の布地。
【請求項10】
前記第1層(11)の布地の細長片(16)は、少なくとも2ミリメートルの、また多くとも6ミリメートルの幅を、好ましくはおよそ4ミリメートルの幅を有していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の布地。
【請求項11】
前記溝(14)は、2つの連続するリブ(15)どうしの間に3〜8ミリメートルの平均幅を有していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の布地。
【請求項12】
前記溝(14)は、好ましくは4ミリメートルの平均幅を有していることを特徴とする請求項11に記載の布地。
【請求項13】
通気性であって実質的に親水性である前記第3層(13)は、木綿、リンネル、セルロース、プラスチックあるいは他の等価な繊維のうちから選択された少なくとも1つの親水性材料からなる繊維を含んでいることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の布地。
【請求項14】
親水性の前記第3層(13)は、変性ポリアミド繊維、例えば6−ナイロンあるいは66−ナイロンを含んでいることを特徴とする請求項13に記載の布地。
【請求項15】
親水性の前記第3層(13)は、変性されたポリアミドおよびポリエステルの混合された混成繊維を含んでいることを特徴とする請求項13に記載の布地。
【請求項16】
前記第3層(13)は、混合型繊維から作られた第1モノフィラメントとポリエステルから作られた第2モノフィラメントとの組み合わせからなっていることを特徴とする請求項13に記載の布地。
【請求項17】
混合型繊維から作られた前記第1モノフィラメントは、変性されたポリアミドおよびポリエステルから作られており、前記第2モノフィラメントは、ポリエステルから作られていることを特徴とする請求項16に記載の布地。
【請求項18】
混合型繊維から作られた前記第1モノフィラメントは、およそ90デニールの繊維寸法を有しており、一方、ポリエステルから作られた前記第2モノフィラメントは、およそ150デニールの繊維寸法を有していることを特徴とする請求項17に記載の布地。
【請求項19】
通気性の前記内側第1層(111)は、細かく穴の開けられた連続状布地によって構成されていることを特徴とする請求項1,2,4〜7および13〜18のいずれか1つに記載の布地。
【請求項20】
通気性の前記内側第1層(211)は、巨大穴が散乱状に開けられた布地によって構成されていることを特徴とする請求項1,4〜7および13〜18のいずれか1つに記載の布地。
【請求項21】
前記第2層(212)は、前記第1層(211)と前記第3層(213)との間に、前記第1層(211)を形成する巨大穴が開けられた布地の穴(217,317)に影響を及ぼすことのないように存在していることを特徴とする請求項20に記載の布地。
【請求項22】
前記の穴(217,317)と前記第2層(212)における対応開口(218,318)とは、前記第1層(211)から外方への前記蒸気相のための前記優先通路を形成していることを特徴とする請求項20または21に記載の布地。
【請求項23】
前記第2層(412)のリブ(415)は、前記第1層(411)から外方への蒸気相の汗のための前記優先通路をもたらすために、かつ、衣料品の下部領域から上方への蒸気相の汗の上昇を促進するために適している、それぞれの間に前記溝(414)が形成される実質的に管状の平行な要素(419)を画定するように、前記第1層(411)の対応部分によって包囲されていることを特徴とする請求項1,2,4〜7および13〜18のいずれか1つに記載の布地。
【請求項24】
細長片(16)あるいはこれらに対応する第1層部分(416)がある前記リブ(15,415)は、前記布地(10,410)と使用者の身体との間の接触のために設計された、前記第1層(11,411)の全表面を形成しており、この表面は、使用者へ指向されている布地(10,410)の全区域の50%に等しいかあるいはそれよりも小さいことを特徴とする請求項1〜3,13〜18および23のいずれか1つに記載の布地。
【請求項25】
この布地は、重量パーセントが8%〜15%の最小範囲から60%〜75%の最大範囲までの間にある親水性繊維を備えていることを特徴とする請求項1〜24のいずれか1つに記載の布地。
【請求項26】
この布地は、340±5g/m2に対して、11%の親水性ナイロンと89%のポリエステルとによって構成されていることを特徴とする請求項1〜25のいずれか1つに記載の布地。
【請求項27】
前記第3層(13,113,213)の上およびその外側に、技術的な機能があるか、または、特殊な、化粧的な、あるいは装飾的な特性がある第4層が、積層されていることを特徴とする請求項1〜26のいずれか1つに記載の布地。
【請求項28】
前記第4層は、接着剤のスポットあるいは他の等価な手段によって、下にある前記第3層(13,113,213)へ接合されていることを特徴とする請求項27に記載の布地。
【請求項29】
前記第4層は、防水性・通気性膜を備えていることを特徴とする請求項27または28に記載の布地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−530139(P2009−530139A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500738(P2009−500738)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/002200
【国際公開番号】WO2007/107264
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(502346105)ジェオックス エス.ピー.エー. (27)
【氏名又は名称原語表記】GEOX S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Feltrina Centro 16,31044 MONTEBELLUNA(Treviso),Localita Biadene,ITALY
【Fターム(参考)】