説明

特定され選択された電気及び電磁信号を使用したマトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現の制御

【解決手段】 疾患または損傷関節軟骨の治療において、特定され選択された電気及び電磁気信号によって生成する場の適用を通して軟骨細胞中のマトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現を制御する方法及び装置。遺伝子発現とは、ヒトゲノム(DNA)の特定部分(遺伝子)がmRNAに転写され、その後に蛋白質に転換する過程の上方制御または下方制御を意味する。損傷または疾病軟骨組織の標的治療に対する方法と装置が提供されているが、これには、マトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現の減少に対する最適な場を生成するように特定され選択された電気及び電磁気信号、およびこのような軟骨組織でのマトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現を制御するために特定され選択された信号によって生成される前記場に軟骨組織を曝すことを含む。これから結果する方法と装置は、変形性関節症、関節リウマチ、軟骨損傷、軟骨欠損、および腫瘍転移に対する標的治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2000年2月23日申請の米国特許仮出願番号第60/184,491の申請日付の利益を主張する、2001年2月23日に申請された(国際出願第PCT/US01/05991号の米国国内段階特許出願である)米国特許出願番号第10/257,126の一部継続出願である、2003年6月13日に申請された米国特許出願番号第10/461,188に対して優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、損傷または疾患関節軟骨の治療のために特定され選択された電気及び電磁信号によって生成される場の適用を通して、軟骨細胞中のマトリクス・メタロプロテイナーゼ(MMP)遺伝子発現を下方制御する方法、およびそのような信号を生成する装置に関するものである。
【0003】
さまざまな生物組織と細胞に存在すると信じられている生体電気相互作用と活動は、生理的過程において最も理解されていないものの1つである。しかしながら、最近は、特定組織と細胞の成長及び修復に関するこれらの相互作用と活動についての多くの調査が行われてきた。特に、電場と電磁場による刺激、および骨と軟骨の成長及び修復における効果についての調査が行われてきた。研究者は、このような調査はさまざまな医学的問題に対する新しい治療の開発に有用であろうと信じている。
【0004】
変形性関節疾患としても知られている変形性関節症は、関節軟骨の変性および軟骨下骨の増殖と再構築を特徴とする。通常の症状は、凝り、運動の限定および痛みである。変形性関節症は、最も一般的な形の関節炎であり、罹患率は歳とともに実質的に増加する。変形性関節症を患う自己報告の高齢患者は、この症状のない同等者の2倍も頻繁に医者に通うことが判明している。また、同年令層の他の人に較べて、このような患者は活動が制限され、ベッドに縛り付けられる日々をより多く過ごしている。ある1つの調査では、前記症状の患者の多くは、8年間の追跡調査期間中に実質的に不具になった(Massardo et al.,Ann.Rheum Dis.48:893〜897,1989)。
【0005】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、相変わらず変形性関節症に対する主要な治療モダリティである。NSAIDsの効能がその鎮痛性または抗炎症特性にあるのか、あるいは軟骨の変性過程の遅滞によるものかは不明である。また、NSAIDsが患者に有害であるかもしれない心配もある。例えば、NSAIDsには胃、胃腸管、肝臓、腎臓に対する周知の毒性効果がある。しかし、アスピリンは、動物における通常軟骨修復過程とプロテオグリカン合成を阻止する。人間を対象とした1つの調査では、インドメタシンが股関節軟骨の破壊を加速させることを示唆している。全ての副作用は、高齢者すなわち変形性関節症にもっとも罹りやすい人口でより普通に現れる。
【0006】
変形性関節症として一般に知られている疾病では、骨が脱塩し異常に希薄になる。骨は、細胞とマトリックスの有機物成分、および無機性成分または鉱物性成分とを含んでいる。細胞とマトリックスは、リン酸カルシウム(85%)と骨に硬直性を与える炭酸カルシウム(10%)の鉱物成分が浸透している膠原繊維のフレームワークを有している。変形性関節症は一般的には高齢者を苦しめると考えられているが、あるタイプの変形性関節症は骨が機能的ストレスの対象とならない全ての年令層に影響を与える。このような場合、患者は、長期に渡る固定化によって皮質および海綿骨に著しい損失を被る。高齢患者は、骨折後の固定中に生じる不使用によって骨の損失を被ることが知られているが、これは最終的にすでに骨粗しょう症の骨格において二次骨折を引き起こす。骨の密度減少は、脊髄崩壊、臀部、前腕、手首、足首の骨折、およびまともに生活できないほどの痛みを招く場合がある。このような疾病に対しては代替の非外科的療法が必要とされる。
【0007】
1979年に食品医薬品局が承認して以来、パルス電磁場(PEMF)と静電結合(CC)が、非治癒骨折および骨治癒に関連した問題に広く利用されてきた。この形式の療法を試用する根拠の源は、骨への物理的ストレスが小さな電流の出現を招き、それが機械的ひずみと一緒になって、骨形成を促進する信号が物理的ストレスが変換される内在的メカニズムになると考えられる観察に基づいている。癒着不能の治療に成功した直流電場刺激と並んで、PEMFと静電結合(治療領域の皮膚上に電極を配置する)を使用した非侵襲性技術も効果があることが判っている。静電結合は前記組織中に直接電流を生起させるが、パルス電磁場では小さな誘導電流(ファラデー電流)を高誘電性の細胞外液中に生成する。これによって、PEMFsとCCは両方とも内因性電流を模倣する。
【0008】
前記内因性電流は、骨中の結晶表面に生起する現象によるものと元は考えられていたが、固定負電荷を有する有機成分を含んだ骨のチャネル中の電解質を含んだ液体の運動に主によるものであることが証明されており、「流動電位」と呼ばれるものを生成する。軟骨中の電気現象の研究は、骨で説明したのに類似した機械的電気的変換メカニズムを明らかにしたが、これは、軟骨が機械的に圧搾された時に現れ、軟骨マトリックス中のプロテオグリカンとコラーゲン中の固定負電荷表面で流体と電解質の運動を生起する。これらの流動電位は、骨におけるものと同様な役割を軟骨で果たし、機械的ひずみと共に、マトリックス成分での軟骨細胞合成を刺激することができる信号取引を導く。
【0009】
直流、静電結合およびPEMFsの主な適用は、整形外科で癒着不能な骨折の治癒で用いられてきた(Brighton et al.,J.Bone Joint Surg.63:2〜13,1981;Brighton and Pollack,J.Bone Joint Surg.67:577〜585,1985;Basset et al.,Crit.Rev.Biomed.Eng.17:451〜529,1989;Bassett et al.,JAMA 247:523〜628,1982)。大人の阻血性腰骨壊死(Avascular Necrosisi of Hips)および子供のレグーパーセス病(Legg−Perthes‘s disease)での臨床反応が報告されている(Bassett et al.,Clin.Orthop.246:172〜176,1989;Aaron et al.,Clin.Orthop.249:209〜218.1989;Harrison et al.,J.Pediatr.Orthop.4:579〜584,1984)。また、PEMFs(Mooney,Spine15:708〜712,1990)と静電結合(Goodwin,Brighton et al.,Spine24:1349〜1356,1999)が腰椎融合の成功率を実質的に増加させることができると報告されている。また、末梢神経再生と機能の増加および血管形成の促進についての報告もある((Bassett,Bioessays6:36〜42,1987)。ステロイド注射および旧来の方法では難治性の持続性腱板腱炎の患者は、プラシーボ治療の患者に較べて著しい恩恵を示すことが報告されている(Binder et al.,Lancet695〜698,1984)。最後に、ブリントン等は、ねずみにおいては、適切な静電結合電場が腰椎の脊椎骨粗しょう症を防止且つ逆行させることができるのを証明しているBrighton et al.,J.Orthop.Res.6:676〜684,1988;Brighton et al.,J.Bone Joint Surg.71:228〜236,1989)。
【0010】
さらに最近のこの領域の調査では、刺激が組織と細胞に与える効果に焦点が当てられている。例えば、直流は細胞膜を貫通せず、コントロールは細胞外マトリックス分化を通して達成されると推測されている(Grodzinsky,Crit.Rev.Biomed.Eng.9:133〜199,1983)。直流と対照的に、PEMFsは細胞膜を貫通することができ、それを刺激するかまたは細胞外小器官に直接影響を与えることができると報告されている。細胞外マトリックスと生体での軟骨内骨化へのPEMFsの影響の検査では、軟骨分子の合成増加と骨梁の成熟が発見された(Aaron et al.,J.Bone Miner.Res.4:227〜233,1989)。さらに最近では、静電結合電気信号の信号変換は、電位依存性カルシウムチャネルを経由して、細胞質カルシウムの増加を導き、その結果として、活性化(細胞骨格)カルモジュリンを増加させることをLorich、Brightonらが報告している(Clin.Orthop.Related Res.350:246〜256、1998)。
【0011】
前記反応メカニズムを理解するために、多くの調査が組織培養の研究に向けられてきた。1つの研究では、電場は軟骨細胞のDNAへの[3H]-チミジン合体を増加させる事が発見され、電気的刺激によって生成されるNa+ と Ca2+の流動がDNA合成を誘発させるという考え方を裏付けた(Rodan et al.,Science 199:690〜692,1978)。複数の研究で、電気的摂動による、二次メッセンジャー、cAMPおよび細胞骨格再構成での変化が発見されている(Ryaby et al.,Trans.BRAGS6:1986;Jones et al.,Trans.BRAGS6:51,1986;Brighton and Townsend,J.Orthop.Res.6:552〜558,1988)。他の調査では、グリコサミノグリカン、硫酸化、ヒアルロン酸、リゾチーム活動、ポリペプチド配列への効果も発見されている(Norton et al.,J.Orthop.Res.6:685〜689,1988;Goodman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3928〜3932,1988)。
【0012】
1996年には、本発明者によって、環状二軸0.17%機械的ひずみが、培養したMC3T3−E1骨細胞でのTGF−(1 mRNAを実質的に増加させたことが報告されている(Brighton et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.229:449〜453,1996)。1997年には重要な複数の研究がこれに続いた。1つの研究では、同じ環状二軸0.17%機械的ひずみが、同様な骨細胞でPDGF−A mRNAを実質的に増加させたことが報告された(Brighton et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.43:339〜346,1997)。また、20mV/cmの静電結合電場60kHzが同様な骨細胞でTGF−(1 を実質的に増加させたことも報告された((Brighton et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.237:225〜229,1997)。しかし、このような場がその他の遺伝子に与える効果についての文献による報告はない。
【0013】
「特定され選択された電気及び電磁信号の適用を通した遺伝子の制御(Regulation of Genes Via Application of Specific and Electromagnetic Signals)」と題された、上記の親特許出願では、標的となる疾患または損傷細胞を制御するための場の作成に使用する前記特定され選択された電気及び電磁信号を決定するための方法が開示されている。本発明は、そこに説明されている前記技術に立脚して、特定され選択された電気及び電磁信号によって生成される場の適用を通して、1つの標的遺伝子発現すなわちマトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現を制御する方法を説明することにより、軟骨疾患(関節炎)、軟骨傷害、軟骨欠損および腫瘍転移の治療に資するものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、特定され選択された電気また/または電磁信号によって生成される場の適用を通して、軟骨細胞中のマトリクス・メタロプロテイナーゼ(MMP)遺伝子発現を制御することに関する。電場の継続期間、振幅、周波数、およびデューティサイクルについての用量反応曲線を実行することによって、関節軟骨細胞中のマトリクス・メタロプロテイナーゼmRNAを下方制御するための最適な信号が発見された。前記最適な信号は、振幅20mV/cm、継続期間30分、デューティサイクル100%、周波数60kHz、および正弦波形態の静電結合電場を生成する。特に、本発明はこのような信号によって生成される場の適用を通して、軟骨細胞中のマトリクス・メタロプロテイナーゼ(MMP)遺伝子発現を下方制御することに関連する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、静電結合電場、誘導結合電場、電磁場または混合場で、(mRNAによって測定された)MMP−1、MMP−3、およびMMP−13およびその他のMMPsの前記遺伝子発現を特定的かつ選択的に下方制御するための方法を提供する。変形性関節症、関節リウマチ、軟骨損傷、軟骨欠損および同様な疾病は、MMP−1、MMP−3、MMP−13mRNAsの発現を下方制御する電場継続期間約30分、電場振幅約10−20mV/cm、周波数約60kHz、デューティサイクル約100%および正弦波構造を有する、約20mV/cmの静電結合または誘導結合電場によって治療される。本発明においては、「特定され選択された」信号は、MMP遺伝子の前記発現を下方制御する、所定特性の振幅、持続、デューティサイクル、周波数および波形を有する信号である(特異性)。これによって、所与の生体的または治療的反応を達成するために、MMP遺伝子発現を下方制御するための異なった信号を選択することが可能になる(選択性)。さらに本発明は、MMP遺伝子発現を下方制御する場を作成する特定され選択された信号を生成するための、ここに説明した前記方法を使用する装置にも関連する。
【0016】
関連側面では、本発明は、変形性関節症、関節リウマチ、軟骨損傷および軟骨欠損を治療するための方法および装置に関連する。本発明の前記方法には、メタロプロテイナーゼの細胞産生を減少させるのが知られているまたは減少させると思われる出発信号の継続期間を組織的に変更することによって、MMP遺伝子発現に対して「特定され選択された」信号を決定する方法論も含む。前記最適継続期間を選択した後は、MMP−1、MMP−3、MMP−13の前記遺伝子発現によって決定された最適継続期間のあいだ前記信号の前記振幅を変動させる。前記他の信号特性を一定に保ちながら、前記デューティサイクル、周波数および波形を組織的に変動させる。この過程は、メタロプロテイナーゼ発現の最大減少を実現する前記最適な信号が決定されるまで繰り返される。
本発明のこれらおよび他の側面は、本発明の以下の詳細な説明によって明示されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は図面1〜7を参照して以下に詳細に説明する。これらの図面に関する説明は例示の目的のみで提供するものであり、本発明の範囲を限定する意図が全くないことは当業者は充分に理解するであろう。本発明の範囲に関する全ての疑問は、添付の特許請求の範囲を参照することによって解決できるものである。
【0018】
本発明は、特定され選択された電気また/または電磁気信号によって生成される特定され選択された場の適用によって、一定遺伝子の前記発現を制御できるという発見に基づいている。すなわち、骨、軟骨および他組織細胞の各遺伝子を制御する場を生成する特定され選択された電気また/または電磁気信号があり、これらの特定信号はこれらの細胞中の前記遺伝子を特定の及び選択的に制御できることが、本発明者によって発見された。特に、組織または細胞の前記成長、維持、修復および変性または劣化を支配する遺伝子発現が、本発明に則って、特定され選択された電気また/または電磁気信号によって生成される場の前記適用によって制御でき、有益な臨床効果をもたらす。このような発見は、骨折と骨異常、変形性関節症、骨粗しょう症、癌、および他疾病を含む特定病状を標的とする治療方法の開発、およびこのような方法を使用する装置の開発に有用である。
【0019】
特に、本発明では、軟骨疾患の過程を遅滞または逆行させるために望ましい、関節軟骨のMMPの前記生産を減少させるために、MMPの前記発現を実質的に下方制御できることを明らかにする。本発明では、ここに説明する前記最適電場が実質的にMMPを下方制御すること、すなわち、IL−1βが存在しても、MMP合成を減少させることを明らかにする。この業界の熟練者は、ここに説明するような静電結合だけではなく誘導結合および他の周知の場適用技術を用いた、同様に効果的な適切な電場でも、関節炎(変形性関節症および関節リウマチの両方)軟骨損傷、軟骨欠損および組織癌の治療に使用できることも評価するであろう。
【0020】
ここで使用される前記用語「信号」は、装置が出力する機械的信号、超音波信号、電磁気信号および電気信号を含むさまざまな信号に言及するのに使用される。ここで使用される前記用語「場」は、標的組織内の電場を言及するのに使用され、それが混合場でもまたはパルス電磁場でもよく、あるいは直流、静電結合または誘導結合によって生成されるのでもよい。
【0021】
前記用語「リモート」は、遠くからの作用、作動またはコントロールを意味するのに使用される。「リモート」制御は、遺伝子の前記発現を遠くからコントロールすることを意味する。「リモートから」は、遠くから提供することを意味する。例えば、特定され選択された信号をリモートソースから提供する、組織または細胞から離れたソースから、あるいは前記身体の外側または外部ソースから、前記信号を提供することを意味する。
【0022】
用語「特定され選択された」信号は、標的遺伝子または標的補足遺伝子の機能を上方制御または下方制御する、所定特性である振幅、継続期間、デューティサイクル、周波数および波形を有する電場を生産する信号を意味する(特異性)。これは、所与の生体的または療法的反応を達成するために、さまざまな遺伝子発現を上方制御または下方制御する、異なった「特定され選択された」信号を選択することを可能にする(選択性)。
【0023】
用語「制御」は遺伝子発現をコントロールすることを意味する。制御は、上方制御と下方制御の両方を含むものと理解されること。上方制御は遺伝子発現の増加を意味し、下方制御は遺伝子発現の阻止または防止を意味する。
【0024】
「機能的補足的」は、所与の細胞または組織でその発現が補足的または相乗的な2つ若しくはそれ以上の遺伝子を意味する。
【0025】
「組織」は、患者の前記構造材料の1つを形成する細胞外物質を加えた細胞の集合体を指す。ここで使用される前記用語「組織」は筋肉と臓器組織、腫瘍組織および骨または軟骨組織を含めるものである。また、ここで使用される前記用語「組織」は、個別細胞も指す場合もある。
【0026】
「患者」は動物、望むらくは哺乳動物、さらに望むらくは人間を指す。
【0027】
本発明は、一定組織、細胞または疾病を標的とする治療方法と装置を提供する。特に、損傷または疾病の組織または細胞の前記修復過程に関連する前記遺伝子発現は、前記標的組織または細胞で制御される前記遺伝子に対して特定され選択された電気信号によって生成される場の前記適用によって制御できる。遺伝子発現は、各遺伝子または各セットの補足遺伝子に対して特定され選択された信号の前記適用によって、有益な臨床効果をあげるために、上方制御または下方制御できる。例えば、特別な特定され選択された信号は、一定の望ましい遺伝子発現を上方制御する電場を作成でき、同じまたは別の特別な特定され選択された信号は、一定の望ましくない遺伝子発現を下方制御する電場を作成できる。ある一定の遺伝子は、1つの特別に特定され選択された信号によって生成される場によって上方制御され、別の特別に特定され選択された信号によって生成される場によって下方制御される。この業界の熟練者は、前記組織の前記成長、維持、修復及び変性または劣化を支配するこれらの遺伝子を制御することによって、一定の疾病または損傷組織を治療の標的とすることができることを理解するであろう。
【0028】
本発明の前記方法と装置は、標的である一定疾病または損傷組織に関連する前記遺伝子発現に対して特定され選択された場を生成するこれらの信号を識別することに基づいている。例えば、様々な形式(例、静電結合、誘導結合、混合場)の電気は、各選択遺伝子に対する前記適用場の前記周波数、振幅、波形またはデューティサイクルを変動させることによって、患者の身体中の標的となる組織または細胞の遺伝子発現を特定の及び選択的に制御できる。電気に曝す時間の長さも、患者の身体中の標的となる組織または細胞の遺伝子発現を特定の及び選択的に制御する電気の前記能力に影響を与える。特定され選択された信号は、遺伝子発現に前記望ましい効果を提供する周波数、振幅、波形またはデューティサイクルの前記適切な組合せを発見するまで、各遺伝子に適用する電場を組織的に生成できる。
【0029】
一定遺伝子発現に対して前記特定され選択された電場はさまざまな要素によって影響されるので、さまざまな疾病または損傷組織または疾病状態が治療の対象となることができることを理解するべきである。特に、適切な周波数、振幅、波形また/またはデューティサイクルの電場は、前記一定遺伝子の発現に対して特定の及び選択的であることができるので、その標的治療として提供することができる。時間的要因(例、前記電場に曝される時間の長さ)も、特定遺伝子発現に対する電場の特定性及び選択性に影響を与える。前記遺伝子発現の制御は、特定な時間的長さのあいだ電場を適用することによって、さらに効果的(または可能)になる。従って、この業界の熟練者は、さまざまな疾病または損傷組織または疾病を標的とする治療を提供するために、一定遺伝子発現に対して特定され選択された電場が発見されるまで、電場の周波数、振幅、波形、デューティサイクルまた/または適用の長さを変動させる方法を本発明が提供していることを理解するであろう。
【0030】
従って、本発明が標的治療を提供できるのは、適切な周波数、振幅、波形、また/またはデューティサイクルに特定され選択された信号によって生成される電場を適切な長さの時間だけ適用することを通して、特定疾病または損傷組織に関連する一定遺伝子発現を制御することが可能だからである。一定疾病または損傷組織または病態を治療の標的とするため、前記一定遺伝子発現を制御できるように、電場を生成する信号の前記特殊性及び選択性をこうして調整することができる。特に本発明は、変形性関節症、関節リウマチ、軟骨損傷及び軟骨欠損と転移に対する標的治療を提供できる。
【0031】
本発明は、マトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現を下方制御するために特定され選択された少なくとも1つの信号のソースを含む装置も提供する。本発明の前記装置は、静電結合の場合には前記特定され選択された信号によって生成される場を適用するために適合された少なくとも1つの電極によって、また誘導結合使用の場合には前記特定され選択された信号によって生成される前記場を適用するために適合された拡張コイルによって、軟骨細胞へ適用するためのこのような信号の生産を提供できる。ここに説明する前記最適な信号は、皮膚に適用される対または帯状の適切な表面電極を通して任意の関節に適用できるが、前記電極は衣類、ブレース、ラップまたはカストに内蔵され、静電結合、誘導結合(電磁場)または結合場による手段で伝達される。
【0032】
本発明の前記装置では、疾病または損傷組織また/または患者の皮膚に、特定され選択された信号によって生成される場を直接に適用できる。本発明の前記装置では、特定され選択された場をリモート適用することもできるが(例、リモートからの疾病または損傷組織への場の適用)、静電結合装置が前記対象皮膚に接触していなければならないことは認識されるべきである。静電結合の場合、本発明の前記装置は、損傷または疾病組織近傍の患者の身体に電極を付着する方法を含んでもよい。例えば図7に示すように、変形性関節症に罹っている膝関節両側の患者皮膚に、自己接着の誘導電極を付着してもよい。また図7に示すように、本発明の前記装置10は、前記装置10を患者の前記身体に付着する自己接着電極12を含んでもよい。例えば、本発明の前記装置10は、VELCRO(登録商標)パッチ16を反対側に有する電源装置14に付着する電極12を含んでもよいが、これによって前記患者のふくらはぎ、大腿部またはウエストの周りに固着されたVELCRO(登録商標)ストラップ(非表示)に前記電源装置14を付着できる。誘導結合の場合は、本発明の前記装置10は、電極12の代りに電源装置14に付着するコイル(非表示)を含んでもよい。
【0033】
本発明の前記装置10は、はさまざまな方法で使用することができる。前記装置10は、携帯式でもよいし、または患者の身体に一時的にまたは永久に付着されてもよい。本発明の前記装置10は、非侵襲性であることが望ましい。例えば、所定の特定され選択された信号によって生成された場を適用するためには、患者の前記皮膚に接触するように適合された電極の適用によって、本発明の前記装置10を患者の前記皮膚に適用してもよい。このような信号を時間変動電流が流れるコイルを通して適用して、前記組織を貫通するような特定され選択された電磁場を作成することもできる。本発明の前記装置10は、患者に植込みすることもできるが、これには患者の皮膚の下への植込みも含む。
【0034】
下記例は、本発明の前記方法が軟骨の成長と修復に対して提供できることを図解する。変形性関節症患者の関節軟骨の破壊または劣化を防止または阻止するために、軟骨細胞中のマトリクス・メタロプロテイナーゼ発現の前記下方制御に対して特定され選択された信号を通して、軟骨の成長と修復を刺激することができる。特に本発明の前記方法は、軟骨を破壊するマトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子の下方制御に対して提供できる。さまざまな軟骨細胞が本発明の前記方法の標的となることができるが、この中には関節軟骨細胞を含み、且つ関節軟骨、ヒアリン軟骨および成長軟骨板を含む。
【0035】
この業界の熟練者は、その他の軟骨疾患および損傷が本発明の前記方法を通した治療の標的となり得ることを理解するであろう。
【0036】
また、この業界の熟練者は、本発明の前記装置がさまざまな形で提供され得ることを理解するであろう。これには、一対または多数の電極への適用のためのプログラム化した複数の切替可能に特定され選択された信号を有する静電結合電源装置、または切替可能な複数に特定され選択された信号を有する電源装置に付着した電磁気コイル、および特定され選択された信号を生成するための電源付きの超音波スティミュレータが含まれる。一般的に言って、装置選択は、患者の受入れまたは患者順守に基づく。現在、この業界で最小且つ最も携帯しやすい装置は静電結合装置であるが、極端に敏感な皮膚を有する患者が誘導結合装置を選り好む場合もある。一方、超音波装置は患者側からの協力を最も必要とするが、一定の患者には使用することが好ましい場合もある。
【実施例1】
【0037】
実施例
本発明は以下の実例によって説明するが、これは図解目的のためであり、本発明の範囲を制限する意図はない。
【0038】
材料と方法
軟骨細胞培養物は、胎児または成人の牛亜科動物の関節軟骨から準備される。軟骨細胞(5(105cells/cm2)は、特別に変形されたクーパー皿上にプレートされる。前記セルは7日間成長し、前記実験状態の始まる直前に前記培地を変更する。前記実験細胞培養物は、この研究中を通して、最大振幅出力44.81Vを有する静電結合60kHz正弦波信号電場の対象となる。これは、電流密度300(A/cm2を有する20mV/cmの皿中の前記培養媒体に計算された場の強さを作成する。前記電極が関数発生器に接続されていないことを除いて、コントロール細胞培養皿は、前記刺激された皿のそれと同一である。
【0039】
前記製造者指示に従って、TRIzolを使用して全RNAが分離され、スーパースクリプトII逆転写酵素を使用した逆転写(RT)が実行された。前記RT−PCR技術で使用されるオリゴヌクレオチドプライマを公開されたcDNA数列から選択するか、またはプライマエクスプレス(Primer Express)ソフトウェアプログラムを使用して設計する。ABIPrism(登録商標)7000Sequence Detectionシステムを使用して、RT−PCR製品の量的リアルタイム分析が実行された。
【0040】
MMP−1、MMP−3およびMMP−13などに対する遺伝子を含む、マトリクス・メタロプロテイナーゼ(MMP)遺伝子制御の前記望ましい下方制御に対する最適な信号が、以下のように組織的に発見された。MMPの細胞産生を減少させることが知られている(または単に減少させると思われている)電気信号が、MMPの前記遺伝子発現(mRNA)に対する前記場を生成するための前記特定信号を決定するために、前記出発点信号として採用される。最初に、前記信号の他特性(振幅、デューティサイクル、周波数および波形)を一定に保ちながら、前記信号の前記継続期間を変動させて用量反応曲線を実行する(図1−3)。これによって、前記MMPの遺伝子発現に対する前記出発点信号の最適継続期間を決定する。それから、2度目の用量反応曲線が実行されるが、今回は前記振幅などの他信号特性を一定に保ちながら、前記デューティサイクルを100%(一定)から8.3%若しくはそれ以下まで変動させる(図4〜6)。その他の信号特性を一定に保ったまま、用量反応を3度目(振幅変動)、4度目(周波数変動)、5度目(波形変動)と繰り返す。この方法によって、前記さまざまなMMPsの前記遺伝子発現で最大減少を産みだす最適な信号が決定される。
【0041】
蛋白質発現は、リアルタイム量的RT−PCR、ノーザン解析、免疫分析、直接生化学分析及び同種のものなど、業界周知の方法によって決定されてもよい。
【0042】
関節軟骨細胞によるメタロプロテイナーゼ生産
関節軟骨細胞は、60kHzで20mV/cmの静電結合電場に曝された。前記結果は図1〜6に図解されている。
【0043】
図1は、関節軟骨細胞が、インターロイキン(IL‐1β)の存在下で、20mV/cmの静電結合電場にさまざまな継続期間のあいだ曝された場合のMMP−1mRNA発現のグラフ表示である。図のように、最小MMP−1発現は、30分間の信号持続で生起している。MMP−1mRNAの最大発現は、IL‐1βの存在下で、電気が全く使用されていない場合に生起した。
【0044】
図2は、関節軟骨細胞が、IL‐1βの存在下で、20mV/cmの静電結合電場にさまざまな継続期間のあいだ曝された場合のMMP−3mRNA発現のグラフ表示である。図のように、最小MMP−3生産は信号が30分間と6時間の信号持続で生起した。MMP−3mRNAの最大発現は、IL‐1βの存在下で、電気が全く使用されていない場合に生起した。
【0045】
図3は、関節軟骨細胞が、IL‐1βの存在下で、20mV/cmの静電結合電場にさまざまな継続期間のあいだ曝された場合のMMP−13mRNA発現のグラフ表示である。図のように、最小MMP−13発現は信号が30分間と24時間の信号持続で生起した。MMPmRNAの最大発現は、IL‐1βの存在下で、電気が全く使用されていない場合に生起した。
【0046】
図4は、関節軟骨細胞が、IL‐1βの存在下で、異なったデューティサイクルで20mV/cmの静電結合電場に曝された場合のMMPmRNA発現のグラフ表示である。図のように、MMP−1mRNAの最小の発現は100%のデューティサイクル信号で生起した。MMP−1mRNAの最大発現は、IL‐1βの存在下で、電気が全く使用されていない場合に生起した。
【0047】
図5は、関節軟骨細胞が、IL‐1βの存在下で、異なったデューティサイクルで20mV/cmの静電結合電場に曝された場合のMMP−3mRNA発現のグラフ表示である。図のように、最小の発現は100%と8.3%のデューティサイクルで生起した。MMP−3mRNAの最大発現は、IL‐1βの存在下で、電気が全く使用されていない場合に生起した。
【0048】
図6は、関節軟骨細胞が、IL‐1βの存在下で、異なったデューティサイクルで20mV/cmの静電結合電場に曝された場合のMMP−13mRNA発現のグラフ表示である。図のように、最小の発現は100%と50%のデューティサイクルで生起した。MMP−13mRNAの最大発現は、IL‐1βの存在下で、電気が全く使用されていない場合に生起した。
【0049】
上記のように、図7は膝の変形性関節症の患者を治療するために使用される、本発明に従った装置10を図解している。図解のように、円形の柔らかい導電性の自己接着する2つの電極12が、どちらかの側の膝の皮膚上に関節レベルで配置される。前記電極12は、反対側にVELCRO(登録商標)パッチ16を有する電源装置14に付着されるが、これはふくらはぎ、ももまたはウエストの周りのVELCRO(登録商標)ストラップ(非表示)に前記電源装置14を付着するためである。前記電極12は、前記患者が夜就寝する前またはその他の都合のよい時に、前記皮膚に配置されてもよい。もちろん、その他の適切なタイプの電極12またはコイル(誘導結合用)が使用されてもよい。
【0050】
前記電源装置14は、小型で(例、6〜8オンス)、標準9ボルトを動力源として、前記皮膚に配置されている前記電極12に、最大振幅5V、6−10mA、20mV/cm、60kHmの正弦波信号を放出することが望ましい。この信号が前記適切なデューティサイクル(100%)で1日約30分間提供されると、コード化マトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子を実質的に下方制御することが証明されている。この治療は、関節軟骨のさらなる劣化を防止または最小限にするばかりではなく、すでに損傷または変性した関節軟骨を治す。この治療はまた、腫瘍転移を防止または最小限にする。
【0051】
上記に説明した実例では、MMP−1、MMP−3およびMMP−13遺伝子の前記発現を実質的に下方制御して、関節軟骨を破壊する前記酵素の生産を減少させることができるので、関節炎(変形性関節症および関節リウマチの両方)、軟骨傷害および軟骨欠損を治療できる。プロテオグリカンおよびタイプIIコラーゲンは、関節軟骨の主な有機成分であり、メタプロテイナーゼによる関節炎の初期段階に損傷、劣化また/または破壊される。実例で説明した前記最適電場では、MMP−1、MMP−3およびMMP−13mRNAを極めて実質的に下方制御することができ、それによって、IL‐1βが存在する場合でも、軟骨マトリックス破壊を減少させることを本発明で明示した。この業界の熟練者は、ここでは静電結合で説明した適切な電場は、同等またはほとんど同等の電場特性を生産する、誘導結合及び全ての電磁気システムでも同様な効果があることを理解するであろう。また、この業界の熟練者は、さらなるデータポイント(例、30±3分に対する100±3%のデューティサイクル)を有するさらなる実験を通して、より一意的な信号特性を発見できることを理解するであろうが、各前記信号特性中の比較的小さな偏差は、ここに教示を供与するこの業界の熟練者のレベル内にあると信じる。
【0052】
この業界の熟練者には、本発明の範囲以内で本発明へのその他の数々の変動が可能であることを理解するであろう。例えば、ここに説明した前記最適電場は、衣服、ブレース、ラップまたはカストに合体した、一対またはストリップの2つ若しくはそれ以上の適切な表面電極を通して任意の関節に適用し、静電結合によって配達できる。また、ここに説明する前記最適な場は、衣服、ブレース、ラップまたはカストに合体した、コイルまたはソレノイドを通して任意の関節に適用することができ、誘導結合によって配達できる。従って、本発明の範囲は、上記に説明した最良実施形態によって制限されるものではなく、前記の添付請求によってのみ制限されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、関節軟骨細胞が、インターロイキン(IL‐1β)の存在下で、20mV/cmの静電結合電場にさまざまな継続期間の間曝された場合のMMP−1mRNA発現のグラフの表示である。図面のように、最小MMP−1発現は信号が30分間適用された時に生起した。MMP−3mRNAの最大発現は、IL‐1βの存在下で、電気が全く使用されていない場合に生起した。
【図2】図2は、関節軟骨細胞が、IL‐1βの存在下で、20mV/cmの静電結合電場にさまざまな継続期間の間曝された場合のMMP−3mRNA発現のグラフの表示である。図面のように、最小MMP−3発現は30分間と6時間の信号持続で生起した。MMP−3mRNAの最大発現は、IL‐1βの存在下で、電気が全く使用されていない場合に生起した。
【図3】図3は、関節軟骨細胞が、IL‐1βの存在下で、20mV/cmの静電結合電場にさまざまな継続期間の間曝された場合のMMP−13mRNA発現のグラフの表示である。図のように、最小MMP−13発現は30分間と24時間の信号持続で生起した。MMP13mRNAの最大発現は、IL‐1βの存在下で、電気が全く使用されていない場合に生起した。
【図4】図4は、関節軟骨細胞が、IL‐1βの存在下で、異なったデューティサイクルで20mV/cmの静電結合電場に曝された場合のMMP−1mRNA発現のグラフ表示である。図のように、MMP−1mRNAの最小の発現は100%のデューティサイクル信号で生起した。MMP−1mRNAの最大発現は、IL‐1βの存在下で、電気が全く使用されていない場合に生起した。
【図5】図5は、関節軟骨細胞が、IL‐1βの存在下で、異なったデューティサイクルで20mV/cmの静電結合電場に曝された場合のMMP−3mRNA発現のグラフの表示である。図のように、最小の発現は100%と8.3%のデューティサイクルで生起した。MMP−3mRNAの最大発現は、IL‐1βの存在下で、電気が全く使用されていない場合に生起した。
【図6】図6は、関節軟骨細胞が、IL‐1βの存在下で、異なったデューティサイクルで20mV/cmの静電結合電場に曝された場合のMMP−13mRNA発現のグラフの表示である。図のように、最小の発現は100%と50%のデューティサイクルで生起した。MMP−13mRNAの最大発現は、IL‐1βの存在下で、電気が全く使用されていない場合に生起した。
【図7】図7は、本発明の最良実施形態に従った、膝の変形性関節症の治療用である2つの異なった装置を図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟骨組織中のマトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現を、特定的かつ選択的に下方制御する方法であって、
a.mRNAで測定された前記マトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現を下方制御するために実質的に最適化された、少なくとも1つの特定され選択された信号を生成する工程と、
b.前記特定され選択された信号によって生成された場に、所定の間隔で所定の継続期間の間、前記軟骨組織を曝す工程であって、それによりmRNAで測定された前記マトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現を下方制御するものである、工程と
を有する方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記生成する工程は、前記軟骨組織中のmRNAで測定された前記マトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現が実質的に減少するまで、前記特定され選択された信号の振幅、継続期間、デューティサイクル、周波数、及び波形を選択的に変更する工程を有するものである。
【請求項3】
請求項1の方法において、前記曝す工程は、一日に一度所定の間隔で前記所定の継続期間の間、前記特定され選択された信号によって生成された前記場に関節軟骨細胞を曝す工程を有するものである。
【請求項4】
請求項1の方法において、前記生成する工程は、リモートソースで前記特定され選択された信号を生成する工程を有し、前記曝す工程は、前記特定され選択された信号によって生成された前記場を前記軟骨組織に適用する工程を有するものである。
【請求項5】
請求項4の方法において、前記曝す工程は、前記軟骨組織の近傍に位置する(1)電極、(2)少なくとも1つのコイル、および(3)少なくとも1つのソレノイド、のうちの1つに前記特定され選択された信号を適用する工程を有するものである。
【請求項6】
請求項5の方法において、前記曝す工程は、静電結合及び誘導結合のうちの1つを通して、前記特定され選択された信号によって生成された前記場を前記軟骨組織に適用する工程を有するものである。
【請求項7】
請求項6の方法において、前記特定され選択された信号は、前記電極に静電結合電場の1つを生成させ、且つ前記コイルに電磁場および混合場を生成させるものである。
【請求項8】
(1)変形性関節症、関節リウマチ、軟骨損傷、軟骨欠損のうち少なくとも1つの治療、(2)細胞移植、培養骨格、及び成長因子のうち少なくとも1つを含む他の治療への補助の提供、(3)軟骨欠損の治療、及び(4)腫瘍転移の予防のうち少なくとも1つを実行する方法であって、
a.mRNAで測定されたマトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現を下方制御する少なくとも1つの特定され選択された信号を生成する工程と、
b.前記特定され選択された信号によって生成された場に、所定の間隔で所定の継続期間の間、前記軟骨組織を曝す工程であって、それによりmRNAで測定された前記マトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現を選択的に下方制御するものである、工程と
を有する方法。
【請求項9】
請求項8の方法において、前記曝す工程は、前記場を前記軟骨組織に静電結合する工程を有するものである。
【請求項10】
請求項8の方法において、前記曝す工程は、電磁場と混合場のうち少なくとも1つを前記軟骨組織に適用する工程を有するものである。
【請求項11】
請求項8の方法において、前記生成する工程は、約20cmV/cmの振幅、正弦波形態、約100%のデューティサイクル、及び約60kHzの周波数を有する電場を生成する工程を有するものである。
【請求項12】
請求項11の方法において、前記曝す工程は、毎24時間ごとに約30分の継続期間で前記電場を前記軟骨組織に適用する工程を有するものである。
【請求項13】
請求項8の方法において、前記生成する工程は、前記軟骨組織中のmRNAで測定された前記マトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現の前記生成された場による前記下方制御が実質的に減少するまで、前記特定され選択された信号の前記振幅、継続期間、デューティサイクル、周波数、及び波形を選択的に変更する工程を有するものである。
【請求項14】
請求項13の方法において、前記曝す工程は、静電結合と誘導結合のうち1つを通して、前記特定され選択された信号によって生成された前記場を前記軟骨組織に適用する工程を有するものである。
【請求項15】
請求項14の方法において、前記特定され選択された信号は、前記電極が(1)静電結合電場、(2)電磁場、及び(3)混合場のうち1つを生成するようにするものである。
【請求項16】
変形性関節症、関節リウマチ、軟骨損傷、軟骨欠損、及び腫瘍組織中転移のうち少なくとも1つの治療のための装置であって、
mRNAで測定されたマトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現を下方制限するために、特定され選択された場を作成する少なくとも1つの信号を提供する信号源を有し、さらにこの信号源に接続された(a)電極、(b)少なくとも1つのコイル、および(3)ソレノイドのうち1つのものを有し、
所定の間隔で所定の継続期間の間前記軟骨組織へ前記場を適用するために、前記少なくとも1つの特定され選択された信号を受領することにより、前記軟骨または腫瘍組織中のmRNAで測定されたマトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現を選択的に下方制御するものである、装置。
【請求項17】
請求項16の方法であって、この方法は、さらに、
前記信号源を駆動する携帯電源装置を有するものである。
【請求項18】
請求項16の方法であって、この方法は、さらに、
患者の身体の前記軟骨または腫瘍組織近傍に前記電極を付着する手段を有するものである。
【請求項19】
請求項16の方法であって、この方法は、さらに、
患者の身体に前記信号源を付着する手段を有するものである。
【請求項20】
請求項16の方法において、前記少なくとも1つの特定され選択された信号によって生成される前記場は、静電結合と誘導結合のうち1つを通して、前記軟骨または腫瘍組織に適用されるものである。
【請求項21】
請求項20の方法において、前記特定され選択された信号は、正弦波形態を有し、且つ60kHzで約20mV/cmの振幅と約100%のデューティサイクルとを有する電場を生成するものである。
【請求項22】
(1)変形性関節症、関節リウマチ、軟骨損傷、軟骨欠損のうち少なくとも1つの治療、(2)細胞移植、培養骨格、及び成長因子のうち少なくとも1つを含む他の治療法への補助の提供、(3)軟骨欠損の治療、及び(4)腫瘍転移の防止のうち少なくとも1つを実行する方法であって、
請求項21の前記装置によって生成された前記特定され選択された場に軟骨組織を曝す工程を有し、それにより前記軟骨組織中の(RNAで測定された)前記マトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現を下方制御するものである、工程
を有する方法。
【請求項23】
マトリクス・メタロプロテイナーゼを下方制御する電場を生成する選択的な信号を決定する方法であって、
マトリクス・メタロプロテイナーゼの細胞産生を減少させると知られているまたはそれに影響を与えると思われる開始信号(スターティングシグナル)を選択する工程と、
マトリクス・メタロプロテイナーゼの最適減少を提供する最適継続期間が発見されるまで、前記開始信号の適用継続期間を選択的に変更する工程と、
マトリクス・メタロプロテイナーゼの最適減少が発見されるまで、前記最適継続期間の間前記開始信号の振幅を変更する工程と、
マトリクス・メタロプロテイナーゼの最適減少が発見されるまで前記信号のデューティサイクルを変更する工程と
を有する方法。
【請求項24】
請求項23の方法であって、この方法は、さらに、
mRNAで測定された前記マトリクス・メタロプロテイナーゼ遺伝子発現の最大減少が発見されるまで、他の信号特性を一定に保ったまま、前記信号の周波数及び波形を選択的に変更する工程を有するものである。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−502693(P2007−502693A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533804(P2006−533804)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/019137
【国際公開番号】WO2004/112708
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】