説明

特定の核酸配列の検出および測定の改良された方法

本発明は、新規なオリゴヌクレオチドおよび特定の核酸分子の検出または測定のための同オリゴヌクレオチドの使用方法を提供する。本発明はまた、本発明のオリゴヌクレオチドを含む核酸アレイも特徴とする。本発明のオリゴヌクレオチドは、(1)フルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズすることができるレポーター結合配列、および、(2)ステムループを形成することが出来るヘアピン形成配列を含む。ステムループの形成は、レポーター配列がオリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている場合、レポーター配列の蛍光シグナルを改変(例えばクエンチ)する。これは例えば、オリゴヌクレオチドにある1以上のグアニンをステムループの形成によってレポーター配列のフルオロフォアに近接させることによって達成できる。ヘアピン形成配列の少なくとも一部への標的配列ハイブリダイゼーションなどによるステムループの破壊によって、蛍光シグナルに検出可能な変化が生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年11月6日出願の米国仮出願第60/517399号からの優先権を主張し、その開示内容全体を引用により本明細書に含める。
【0002】
発明の分野
本発明は一般に核酸の検出および測定に関する。より具体的には、本発明は、生物材料から特定の配列の核酸を検出および測定する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
特定の核酸配列の検出および測定は、基礎的遺伝子研究、医学および獣医学での診断/予後、および法医学のための重要なツールとなっている。多数の技術が核酸配列の検出および測定のために開発されているが、ヒトゲノム配列および、マウスから細菌にわたる様々な非ヒトゲノム配列が最近公表されたことにより、いわゆる遺伝子マイクロアレイ技術によるかなりの興奮が生じた。この比較的新しい技術は、数千もの核酸配列を同時に検出および測定する能力を提供する。実際、ヒトゲノムはおよそ35,000の遺伝子を有し、遺伝子マイクロアレイ技術は、同時にすべてのヒト遺伝子の検出および測定を可能にする能力を有する。この技術の背後にある概念は、生物サンプルにおける特定の核酸配列の存在と量の検出のために、一本鎖核酸 (デオキシリボ核酸即ちDNAおよびリボ核酸即ちRNAの両方)が相補的一本鎖オリゴヌクレオチド配列にワトソン・クリック塩基対合を介してハイブリダイズする固有の能力を使用することである。
【0004】
遺伝子マイクロアレイ技術が適用されるもっとも刺激的な領域の一つは機能ゲノム科学である。ゲノムの遺伝子の総計に関する知識も非常に重要であるが、これら遺伝子のなかのいずれが、特定の時間に特定の細胞または組織で機能しているかを知ることの方がより重要であろう。DNA内に表される遺伝子は、機能するためにはまず最初にメッセンジャーRNA(mRNA)へと転写されなければならず、そしてmRNAはタンパク質へと翻訳されなければならない。特定のmRNA配列を測定することによって、ゲノム内に示されるいずれの遺伝子が特定の瞬間に機能しているかを判定することが出来る。ヒトおよび動物における多くの病状は、特定の細胞または組織における遺伝子機能の変化を特徴とし、それゆえ遺伝子発現パターンの検出は診断と予後の両方において有用である。
【0005】
遺伝子マイクロアレイ技術の一般的態様において、RNAが細胞または組織から抽出手順によって取り出され、mRNAの精製の後、逆転写、即ち、mRNAを相補的 DNA (cDNA)に変換する酵素によるプロセスに供される。この逆転写プロセスの際に、フルオロフォア標識化ヌクレオチドまたは、フルオロフォアの結合を可能とする化学的側鎖を有するヌクレオチドのいずれかが添加される。cDNAは、フルオロフォア標識された後、通常は固体基体に結合した相補的オリゴヌクレオチドを含む検出システムへと加えられる。ハイブリダイゼーションに好適な条件下で、フルオロフォア標識化cDNAは相補的塩基対合によって固体表面に「捕捉」され、そしてハイブリダイズしていないcDNAを除去するための洗浄工程の後、ハイブリダイズしたcDNAが数ある標準的蛍光定量技術のいずれかによって測定される。この手順の最終結果は特定の遺伝子の検出であり、場合によっては、そのmRNAの測定によるその発現の定量である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現代の遺伝子マイクロアレイ技術の貢献にもかかわらず、遺伝子マイクロアレイ技術は新たな解決策を要求する多くの問題を有する。例えば、遺伝子発現分析に用いる場合、測定すべきmRNAは、フルオロフォアの添加のために、細胞または組織から精製されなければならず、次いでcDNAへと酵素により変換されなければならない。これは時間のかかる技術であり、高価な装置と試薬を有する洗練された研究室を必要とする。さらに、この方法はハイブリダイズしていないcDNAを除去するための洗浄工程を伴うため、一工程で行うことが出来ない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の簡単な概要
本発明は、特定の核酸の検出および測定の改良された方法を提供する。一つの態様において、本発明は迅速かつコスト効率のよい核酸検出方法を提供する。別の態様において、本発明は、生物サンプルから複数の特定の核酸配列を定量的に測定する、インビトロ、インビボ、またはインサイチュ診断方法を提供する。
【0008】
ある態様によると、本発明の核酸の検出および測定方法は、RNA 精製、逆転写によるcDNA産生または、新生cDNA鎖の化学標識のいずれも必要としない。さらに、該方法は可逆的であり得、洗浄工程を必要としない;したがって、該方法はリアルタイムのインビボまたはインサイチュ遺伝子発現分析に好適である。
【0009】
大多数の遺伝子マイクロアレイを用いる核酸検出方法と同様に、本発明の多くの態様は測定すべき核酸と相補的な配列を有する一本鎖 DNA 捕捉オリゴヌクレオチドを用いる。この捕捉オリゴヌクレオチドはその他の検出可能な核酸分子、例えば、RNA、2'-O-メチルオリゴリボヌクレオチドであってよく、あるいは化学的に修飾された骨格、例えば、ペプチド結合に基づく骨格またはリン酸基の代わりにホスホロチオラートを有する骨格を有するものでもよい。この捕捉オリゴヌクレオチドは、溶液中で用いてもよいし、基体支持体に結合させて用いてもよい。基体支持体へのオリゴヌクレオチドの結合のためには様々な方法が当該技術分野で知られている。結合は共有結合によるものでの非共有結合によるものでもよい。例えば、化学官能基をオリゴヌクレオチドに組み込んでもよい。化学官能基は支持体上の他の化学官能基と共有結合を形成しうる。例としては、これらに限定されないが、標準的固相合成においてホスホラミダイト前駆体を用いてステムループ鎖へ導入しうる官能基が挙げられる。官能基の具体例をいくつか以下に挙げる:金属(例えば、金、銀、銅) 表面上へのセルフアセンブリーのため、またはチオールまたはジスルフィド反応性基 (例えば、アクリルアミド、エポキシド、チオール)によって誘導体化された基体表面との反応のための、チオールまたはジスルフィド基;アミノ反応性基(例えば、カルボン酸、スクシンイミド、酸無水物) によって誘導体化された基体表面との反応のためのアミノ基;または、アクリルアミド反応性基(例えば、チオール)によって誘導体化された基体表面との反応のためのアクリルアミド基。以下の文献をオリゴヌクレオチドの基体支持体への結合の方法の例として提供する: Fodor et al.、5,744,305; Beier and Hoheisel (1999) Nucleic Acids Research 27:1970-1977; Niemeyer and Blohm (1999) Angew. Chem. Int. Ed. 38:2865-2869; Rogers、Y-H. et al. (1999) Anal. Biochem. 266: 23-30; Schena、M. “DNA Microarrays. A Practical Approach”、Oxford University Press、New York、NY、(1999); Schena、M. “Microarray Biochip Technology”、Eaton Publishers.、Natrick、MA、(2000); Zammatteo、N. et al. (2000) Anal. Biochem. 280:143-150; Pirrung、M.C. (2002) Angew. Chem. Int. Ed. 41: 1276-1289; Charles、P.T. et al. (2003) Langmuir 19:1586-1591. Schena、M. “Microarray Analysis”、Wiley-Liss、Hoboken、NJ、(2003)、これらはいずれもその全体を引用により本明細書に含める。
【0010】
本発明の一つの態様において、捕捉オリゴヌクレオチドは表面に直接結合させず、表面に化学結合させたアドレスオリゴヌクレオチドの配列に相補的な3'配列を有するようにする。この結合手段により、表面への直接の化学結合を可能とするためにその3'末端が化学的に修飾されたより長い捕捉オリゴヌクレオチドを用いる必要が回避される。さらに、これにより、基体表面での捕捉オリゴヌクレオチドの容易なセルフアセンブリーが促進される。この態様の一本鎖捕捉オリゴヌクレオチドのさらなる特徴は、室温でのヘアピンまたはステムループの形成をもたらす 塩基配列を有することである。しかし、これら捕捉オリゴヌクレオチドが相補的核酸鎖にハイブリダイズすると、一本鎖捕捉オリゴヌクレオチドはヘアピンまたはステムループ二次構造を形成することがもはやできなくなり、直鎖状立体配置にて維持される。この態様の捕捉オリゴヌクレオチドのさらなる特徴は、それらがフルオロフォア標識化レポーターオリゴヌクレオチド配列とのハイブリダイゼーションを可能とする共通配列を有する5'テイルセグメントを含むことである。ヘアピンが開いた立体配置にある場合、ハイブリダイズしたレポーターオリゴヌクレオチドに結合しているフルオロフォアが励起される結果、光子の特徴的放出(蛍光)が起こる。しかし、捕捉オリゴヌクレオチドが閉じたヘアピンまたはステムループ立体配置にある場合、レポーターオリゴヌクレオチド上のフルオロフォアは、ハイブリダイズした塩基(ヘアピン形成配列)がヘアピンまたはステムループを形成する点の3'側に計画的に配置されたグアノシン塩基と近接するようになる。かかる条件下でのフルオロフォアの励起の際には、蛍光放出はクエンチされる。このクエンチングは好ましくは可逆的である。
【0011】
その他のクエンチング機構も本発明に用いることが出来る。例えば、光誘導性電子移動 (または光誘導性電荷移動)が、発光化合物(蛍光、リン光、および電界発光)または発光ナノ粒子と、天然ヌクレオチド (例えば、グアノシンヌクレオチド)、合成ヌクレオチドアナログ、その他の合成クエンチャー(例えば、DNAまたはRNA 二本鎖に挿入されるクエンチャー、または固相オリゴヌクレオチド合成によって、前駆体、例えば、ホスホラミダイトモノマーからオリゴヌクレオチドに組み込まれ得るクエンチャー)、またはクエンチャーとしての金属(例えば、バルクまたはナノ粒子)の間で起こりうる。いくつかの例が(限定的ではないが)以下の文献に示されている: Schena et al.、(1995) Science 270:467-470; Claus、et al. (1996) J. Phys. Chem. 100:5541-5553; Lewis and Wu、(2001) J. Photochem、and Photobiol. C: Photochem. Rev. 2: 1-16; Lewis、et al. (2001) Acc. Chem. Res. 34:159-170; Prasanna de Silva et al. (2001) Trends in Biotechnol 19:29-34; Torimura et al.、(2001) Anal. Sci. 17:155-160; Thomas et al. (2002) Pure Appl. Chem. 74:1731-1738; Vullev et al.、(2002) Res. Chem. Intermed. 28:95-815; Yamane、A. (2002) Nucleic Acids Research 30: e97; Du et al.、(2003) J. Am. Chem. Soc. 125: 4012-4013; Kawai、K.、and Majima T. (2003) J. Photochem. Photobiol. C: Photochem. Rev. 3: 53-66; May、et al. (2003) Chem. Comm. 970-971、これらはいずれもその全体を引用により本明細書に含める。これらのクエンチャーはいずれも本発明の捕捉オリゴヌクレオチドに組み込むか、あるいは結合させることが出来る。
【0012】
本発明の多くの態様は、標準的核酸検出および測定技術に対していくつかの重要な改良を与える。例えば、本発明の捕捉オリゴヌクレオチドの多くは、基体表面への結合またはフルオロフォアの組込みのためになんらの化学的修飾をも必要とせず、それゆえ経済的に合成できる。別の例としては、本発明の捕捉オリゴヌクレオチドの多くは、1以上の基体支持体上でセルフアセンブリーできるため、核酸検出器の製造を迅速かつ安価に行うことが出来る。一つの態様において、大きなアレイにおける数千もの捕捉オリゴヌクレオチドのいずれもが同一のテイル配列を有するため、単一の蛍光レポーターオリゴヌクレオチドの使用が可能である。別の態様において、蛍光クエンチング結果は可逆的であり、検出システムのすべての成分が固定化されている。これによって、リアルタイムでのインサイチュ核酸検出が可能となる。
【0013】
一つの態様において、本発明は、基体と核酸複合体を含む核酸アレイを提供する。核酸複合体は、基体に安定に結合したアンカー核酸分子、および、該アンカー核酸分子にハイブリダイズした本発明のオリゴヌクレオチドを含む。該オリゴヌクレオチドは、(1)ステムループを形成することが出来るヘアピン形成配列および(2)核酸アレイハイブリダイゼーション条件下でフルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズすることができるレポーター結合配列を含む。多くの例において、レポーター結合配列はフルオロフォア標識化レポーター配列に相補的である。
【0014】
オリゴヌクレオチドにおけるステムループの形成により、レポーター配列がオリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている場合、フルオロフォア標識化レポーター配列の蛍光シグナルが変化する。多くの場合において、ステムループの形成は、フルオロフォア標識化レポーター配列の蛍光シグナルをクエンチする。例えば、ステムループの形成は、ステムループが開いた立体配置にある場合と比較して、少なくとも 10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上にて、レポーター配列の蛍光シグナルをクエンチすることが出来る。多くの別の場合において、レポーター配列がオリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている場合、ステムループの破壊により、フルオロフォア標識化レポーター配列の蛍光シグナルが検出可能に上昇する。ステムループの破壊は、例えば、ヘアピン形成配列の少なくとも部分と塩基対合を形成する好適な標的配列に対するオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって達成することが出来る。
【0015】
一つの態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、アンカー核酸分子にハイブリダイズすることを介して核酸アレイに安定に結合し、かつ、該オリゴヌクレオチドはフルオロフォア標識化レポーター配列にもハイブリダイズする。該オリゴヌクレオチドはステムループを形成していても形成していなくてもよいし、標的配列にハイブリダイズしていてもハイブリダイズしていなくてもよい。アンカー核酸分子の使用に加えて、本発明は、当業者に理解されるように、オリゴヌクレオチドを核酸アレイに結合させるその他の手段の使用も含む。
【0016】
一つの具体例において、本発明のオリゴヌクレオチドは少なくとも1つのグアニン塩基 (例えば、1、2、3、4、5またはそれ以上のグアノシン)を含む。レポーター配列がオリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている場合、オリゴヌクレオチドにおけるステムループの形成により、該グアニン塩基はフルオロフォア標識化レポーター配列に近接するようになり、それによってレポーター配列の蛍光シグナルのクエンチングが起こる。
【0017】
別の具体例において、本発明のオリゴヌクレオチドは、3'末端から5'末端の順に(または5'末端から3'末端の順に)、レポーター結合配列、ヘアピン形成配列、1以上のグアニン塩基、およびアンカー核酸分子にハイブリダイズすることができる配列を含む。
【0018】
いずれのタイプの核酸アレイも本発明に含まれ、例えば、常套のマイクロアレイ、ビーズアレイまたはマイクロプレートが挙げられる。各核酸アレイは複数の分離した領域を含む。核酸アレイ上のかかる分離した領域の位置はあらかじめ決定されているか、あるいは測定可能なものである。分離した領域はそれぞれアンカー核酸分子と安定に結合しうる。相異なる分離した領域におけるアンカー分子は好ましくは同一の配列を有する。相異なる配列を有するアンカー分子も使用することができる。
【0019】
各アンカー分子は本発明のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズしうる。相異なる分離した領域における該オリゴヌクレオチドは好ましくは異なるもの、例えば、相異なる標的結合配列を含むものである。相異なる分離した領域におけるオリゴヌクレオチドは同一の標的結合配列を有していてもよい。一つの態様において、本発明の核酸アレイは、少なくとも 5、10、20、30、40、50、100、500、1,000またはそれ以上の相異なる本発明の捕捉オリゴヌクレオチドを含む。
【0020】
捕捉オリゴヌクレオチドはアンカー分子に結合することなく安定に核酸アレイに結合するものでもよい。かかる捕捉オリゴヌクレオチドは、共有結合または非共有結合相互作用を介して核酸アレイ上の相異なる分離した領域に結合することが出来る。
【0021】
本発明はまた、本発明のオリゴヌクレオチドを含む核酸複合体も特徴とする。該オリゴヌクレオチドはフルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズするレポーター結合配列を含む。該オリゴヌクレオチドはまた、ステムループを形成することが出来るヘアピン形成配列も含む。ステムループの形成はレポーター配列の蛍光シグナルを改変(例えば、クエンチ)する。(例えば、標的配列へのハイブリダイズによる) ステムループの破壊は、フルオロフォア標識化レポーター配列の蛍光シグナルにおいて検出可能な変化 (例えば、上昇)を起こしうる。
【0022】
さらに、本発明は標的配列の存在または非存在を検出する方法を特徴とする。該方法は、以下の工程を含む:
本発明のオリゴヌクレオチドを核酸サンプルおよびフルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズさせる工程、
ここで、該オリゴヌクレオチドは、
(1)ステムループを形成することが出来るヘアピン形成配列、および、
(2)核酸アレイハイブリダイゼーション条件下でフルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズすることができる配列
を含み、
ここで該オリゴヌクレオチドは核酸アレイハイブリダイゼーション条件下で標的配列にハイブリダイズすることができ、そして該オリゴヌクレオチドの該標的配列へのハイブリダイゼーションにより、該オリゴヌクレオチドにおけるステムループの形成が妨げられ、ここで、レポーター配列がオリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている場合、ステムループの形成はフルオロフォア標識化レポーター配列の蛍光シグナルをクエンチする;および、
レポーター配列の蛍光シグナルを検出する工程。
核酸サンプルの非存在下における蛍光シグナルと比較しての、核酸サンプルの存在下におけるフルオロフォア標識化レポーター配列の蛍光シグナルの上昇は、サンプルにおける標的配列の存在を示唆し、一方、核酸サンプルの非存在下における蛍光シグナルと比較して、核酸サンプルの存在下におけるフルオロフォア標識化レポーター配列の蛍光シグナルに有意差がないことは、サンプルにおける標的配列の非存在を示唆する。
【0023】
さらに、本発明は、標的配列と目的配列との配列の相違を検出する方法を特徴とする。該方法は以下の工程を含む:
本発明のオリゴヌクレオチドを、目的配列およびフルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズさせる工程、
ここで該オリゴヌクレオチドは、
(1)ステムループを形成することが出来るヘアピン形成配列、および、
(2)核酸アレイハイブリダイゼーション条件下でフルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズすることができる配列、
を含み、
ここで該オリゴヌクレオチドは標的配列に相補的な配列を含み、そして、標的配列の該オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションにより該オリゴヌクレオチドにおけるステムループの形成が妨げられ、ここで、レポーター配列がオリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている場合、ステムループの形成はフルオロフォア標識化レポーター配列の蛍光シグナルをクエンチする;および、
レポーター配列の蛍光シグナルを検出する工程。
(例えば、目的配列と同濃度における) 標的配列の存在下における蛍光シグナルと比較しての目的配列の存在下におけるフルオロフォア標識化レポーター配列の蛍光シグナルの低下と、目的配列の非存在下における蛍光シグナルと比較しての目的配列の存在下におけるフルオロフォア標識化レポーター配列の蛍光シグナルの上昇とが同時に起こると、目的配列が標的配列と相同的であるが、同一ではないことを示唆する。一つの例において、標的配列と目的配列との間の配列の差異は単一ヌクレオチド突然変異である。本発明による単一ヌクレオチド突然変異の例としては、これらに限定されないが、ヌクレオチド置換、欠失、付加、または、塩基対合能に影響するその他の修飾が挙げられる。本発明はまた、標的配列と目的配列との間の2以上のヌクレオチドの差異の検出も含む。
【0024】
図面の簡単な説明
図面は例示の目的であり、限定の目的ではなく提供される。
【0025】
図1は、本発明の核酸の検出および測定システムの構成を示す。
【0026】
図2A-2Cは、2つの既知の形態のG-塩基クエンチング (AおよびB)と本発明の新規なG塩基クエンチング (C)とを対比する。
【0027】
図3A-3Cは、本発明の核酸の検出および測定システムの作動を示す。
図3Aは、開いた立体配置の捕捉核酸を示す;
図3Bは、標的分子とのハイブリダイゼーションを示す;そして、
図3Cは、捕捉核酸におけるステムループの形成を示す。
【0028】
図4A-4Cは、捕捉オリゴヌクレオチド (CO)のヘアピンループにおけるG 塩基がRO-TAMRAの蛍光クエンチングをもたらすことを示すのに用いた様々な実験的立体配置を示す。
【0029】
図5は、捕捉オリゴヌクレオチドのヘアピンループにおけるG 塩基がRO- TAMRAの蛍光クエンチングをもたらすことを示す蛍光スペクトルを示す。
【0030】
図6Aおよび6Bは、標的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが、捕捉オリゴヌクレオチドをヘアピンが開いた形態にトラップし、それによって近接するG 塩基によるRO- TAMRAのクエンチングが低下することを示すのに用いた2つの実験的立体配置を示す。
【0031】
図7は、RO-COおよびRO-CCO ハイブリッドの放出強度に対する24mer標的の効果を示す蛍光スペクトルを示す。
【0032】
図8は、室温でのRO-COハイブリッドによる24mer標的の検出を示す(24merとCOとの前混合または予熱は行わない)。
【0033】
図9は、室温でのRO-COハイブリッドによるB7-67merの検出を示す(B7-67merとCOとの前混合または予熱は行わない)。
【0034】
図10は、アドレスオリゴのクエンチングに対する効果を記載する。
【0035】
図11は、標的オリゴヌクレオチドと捕捉オリゴヌクレオチドにおける配列との間の一塩基ミスマッチが放出強度の差異として検出可能なことを示す。
【0036】
発明の詳細な説明
I.定義
本発明をより容易に理解可能とするため、特定の用語の定義をまず行う。さらなる定義は詳細な説明にわたって示される。
【0037】
本出願において、特に断りのない限り単数形の使用は複数形をも包含する。また、特に断りのない限り「または」の使用は、「および/または」を意味する。
【0038】
「標的核酸」なる用語は、本発明の改良方法を用いて検出または測定すべき核酸配列をいう。標的核酸はデオキシリボ核酸 (DNA)、リボ核酸 (RNA、メッセンジャーリボ核酸即ちmRNAを含む)、またはその他のタイプの核酸分子のいずれであってもよい。
【0039】
「塩基対」なる用語は、対の各塩基が非共有結合(例えば水素結合)によって互いに結合している、それぞれが別々の一本鎖核酸にあるヌクレオチド塩基(ヌクレオチド)の対をいう。例えば、ワトソン・クリック塩基対は通常、1つのプリンと1つのピリミジンを含む。グアノシンはシトシンと対合でき(G-C)、アデニンはチミンと対合でき(A-T)、そしてウラシルはアデニンと対合できる(U-A)。塩基対における2つの塩基は互いに相補的であるといわれる。
【0040】
本明細書において用いる「オリゴヌクレオチド」なる用語は、2以上の核酸残基から構成される分子(例えば、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはそれらの修飾形態)をいう。いずれの方法を用いて本発明のオリゴヌクレオチドを調製してもよい。例えば、オリゴヌクレオチドは化学合成してもよいし、好適なコンストラクトまたはベクターから発現させてもよい。本明細書において用いるオリゴヌクレオチドは、ポリヌクレオチドであり得、少なくとも10、20、30、40、50またはそれ以上のヌクレオチド残基を含みうる。
【0041】
「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイズ」なる語は、相補的塩基対合を介する2つの核酸一本鎖の特異的結合を含む意味である。ハイブリダイゼーションは典型的には、第一の核酸鎖におけるヌクレオチドと、第二の核酸鎖における対応するヌクレオチドとの間の水素結合の形成を伴う。
【0042】
「融解温度」(Tm)なる用語は、特定の核酸二本鎖における核酸鎖の50%が、規定されたイオン強度、pH、および核酸濃度にて解離する温度をいう。18塩基対より短いハイブリッドについては、Tm(℃)は、Tm = 2 (A + T 塩基数) + 4 (G + C 塩基数)として算出できる。18から49 塩基対長のハイブリッドについてはTm(℃)は、Tm = 81.5 + 16.6(log10Na+) + 0.41 (% G + C) - (600/N)、(ここで、Nはハイブリッドにおける塩基数であり、Na+はハイブリダイゼーションバッファーにおけるナトリウムイオンのモル濃度である)として算出できる。
【0043】
本明細書において用いる、「ヘアピンまたはステムループ」なる用語は、直鎖の一部にある相補的塩基が同一の鎖の別の部分にある塩基とハイブリダイズした場合に、一本鎖オリゴヌクレオチドにより形成される二次構造をいう。
【0044】
「捕捉オリゴヌクレオチド」なる用語は、限定的ではないが、3'末端から5'末端方向にて以下のヌクレオチドセグメントから構成されるヌクレオチド塩基の一本鎖配列をいう(この記載は3'末端にて基体に結合している配列に適用されるものであるが、捕捉配列はその5'末端にて結合するように同様に調製してもよいことに注意されたい): 1)特定のアドレスオリゴヌクレオチド配列に相補的な3'末端における可変長の配列; 2)ヘアピンまたはステムループ配列のすぐ3'側に位置したグアノシン塩基の配列; 4)検出および測定すべき核酸における配列に相補的な可変長の塩基の配列、5)核酸認識配列における最初の5〜15 塩基に相補的な配列(これはもっぱら核酸認識配列としてループ領域を用いるプローブも含みうることに注意されたい)であって、ハイブリダイゼーションするとヘアピンまたはステムループ二次構造を形成する配列;および、6)フルオロフォア標識化レポーターオリゴヌクレオチドの配列に相補的な5'末端にて終結する可変長の塩基の配列。ヘアピン形成配列をその融解温度に加熱するか標的核酸とハイブリダイゼーションさせることにより、捕捉オリゴヌクレオチドを直鎖状にすることが可能である。上記捕捉分子の各機能的セグメントは所望により再編成することが出来る。さらに、グアノシン塩基は、所望の蛍光クエンチングが達成されるのであれば、その他の天然、修飾または合成塩基と置換してもよい。その他のクエンチング部分を捕捉分子に用いてもよい。
【0045】
「アドレスオリゴヌクレオチド」なる用語は、限定的ではないが、基体上の官能基と共有結合を形成することが出来る官能基にてその5'または3'末端上を誘導体化されたヌクレオチド塩基の一本鎖配列を含む。例示のみの目的で、アドレスオリゴヌクレオチド上の官能基はアミノ基であり得、基体上の官能基はカルボキシル基であり得、その場合、アミド結合の形成が可能である。アドレスオリゴヌクレオチドは、捕捉オリゴヌクレオチドの5'または3'末端のいずれかにおける塩基配列に相補的な塩基配列を有する。捕捉オリゴヌクレオチドと、表面に固定化されたアドレスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの結果、捕捉オリゴヌクレオチドが基体に結合する。ユニバーサルセットのアドレス配列を有するマイクロアレイは、捕捉オリゴヌクレオチドのアドレス結合領域と標的結合領域の配列の組合せを制御することによって簡単にいずれの標的に対しても利用することが出来る。また、アドレスオリゴヌクレオチドにおける相補的塩基の長さおよび数は変動させることができ、所望の結合強度(融解温度)に影響を与えうる。
【0046】
本明細書において用いる「セルフアセンブリー」なる語は、アドレスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによる捕捉オリゴヌクレオチドの表面基体への結合を指し、また、ハイブリダイゼーションによるレポーターオリゴヌクレオチドの捕捉オリゴヌクレオチドへの結合も指す。
【0047】
「グアノシン塩基」なる用語は、一本鎖核酸配列またはグアノシン塩基がシトシン塩基と塩基対形成している二本鎖核酸配列のいずれかにおける1以上のグアノシンヌクレオチドをいう。
【0048】
「G-塩基クエンチング」なる用語は、一本鎖または二本鎖核酸の配列におけるグアノシン塩基に近接した際に、フルオロフォアの蛍光放出が減少することをいう。
【0049】
「標的核酸認識配列」なる用語は、標的核酸における配列に相補的な捕捉オリゴヌクレオチド内の一本鎖配列を表す。標的核酸認識配列は、捕捉オリゴヌクレオチドのループまたはステムのいずれかのアームの配列の何れの部分を含むものであってもよい。標的核酸認識配列はもっぱらループ配列であるものでもよい。mRNAの場合、該配列は一本鎖 mRNAにおける配列に相補的であろう。
【0050】
「ヘアピン形成配列」なる用語は、ヘアピン構造を形成することが出来る捕捉オリゴヌクレオチド内の配列をいう。一つの具体例において、ヘアピン形成配列は標的核酸認識配列に隣接していてもよいし、標的核酸認識配列とオーバーラップしていてもよいし、標的核酸認識配列を包含していてもよい。
【0051】
「クエンチ」なる用語は、特定の波長において測定した蛍光基の蛍光強度における相対的減少、および、完全な減少を、相対的減少が達成される機構とは関係なく、意味する。具体例として、クエンチングは、分子衝突、FRET等のエネルギー移動、蛍光基の蛍光スペクトル(色)の変化またはその他の機構によって起こりうる。相対的減少の量は重要ではなく、広範囲に変動しうる。唯一要求されることは、減少が用いる検出システムによって確実に測定可能であることである。したがって、特定の波長においてその強度が測定可能な量にて確実に減少した場合、蛍光シグナルは「クエンチ」されるという。減少は、例えば、元の蛍光強度と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%でよく100%の場合もある。
【0052】
「安定に結合」なる用語は、オリゴヌクレオチドが基体上にその相対的位置を、ハイブリダイゼーションおよびその後のシグナル検出において維持することをいう。オリゴヌクレオチドは、非共有結合または共有結合相互作用によって基体に安定に結合しうる。
【0053】
「核酸アレイハイブリダイゼーション条件」なる用語は配列依存的であり、環境の相違によって異なる。より長い配列であればより高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸ハイブリダイゼーションについての詳細な説明は、Tijssen、Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes、"Overview of principles of hibridization and the strategy of nucleic acid assays" (1993)にみられる。一般に、高いストリンジェンシーの核酸アレイハイブリダイゼーション条件は、所定のイオン強度、pHにおける特定の配列のTmより約 5-10℃低い温度となるように選択される。低いストリンジェンシーの核酸アレイハイブリダイゼーション条件は一般にTm より約15-30℃低い温度となるように選択される。典型的には、核酸アレイハイブリダイゼーション条件は、塩濃度が約 1.0 M未満のナトリウムイオン、典型的には約 0.01〜1.0 Mのナトリウムイオン濃度(またはその他の塩)、pH 7.0〜 8.3 および短いプローブ(例えば、10〜 50 ヌクレオチド)については少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば、50 ヌクレオチドを超える)については少なくとも約60℃の温度である条件であろう。核酸アレイ条件は、不安定化剤、例えば、ホルムアミドの使用も含みうる。選択的または特異的ハイブリダイゼーションのためには、陽性シグナルは好ましくは少なくともバックグラウンドの2倍であり、より好ましくは、少なくともバックグラウンドの10倍である。
【0054】
II.本発明
一つの態様において、本発明は、フルオロフォア標識化プローブ配列にハイブリダイズした捕捉オリゴヌクレオチドを含む核酸複合体を特徴とする。捕捉オリゴヌクレオチドはヘアピン形成配列を含み、核酸アレイハイブリダイゼーション条件下で標的配列にハイブリダイズすることが出来る。ヘアピン形成配列によるヘアピン形成はプローブ配列の蛍光シグナルを変化させることができる。標的配列の捕捉オリゴヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションはヘアピン形成を破壊し、それによってプローブ配列の蛍光において検出可能な変化が生じる。検出可能な変化はいずれの蛍光特性における変化であってもよく、例えば、強度、最大放出または励起波長、または蛍光減衰特性の変化が挙げられる。ヘアピン構造による蛍光シグナルの変化は、例えば、G-塩基クエンチングであってもよいし、またはその他の蛍光特性の変化であってもよい。
【0055】
一つの具体例において、核酸複合体は、捕捉オリゴヌクレオチドにハイブリダイズした標的およびプローブ配列の両方を含む。
【0056】
別の態様において、本発明は、核酸複合体を含む核酸アレイを特徴とする。核酸複合体は、核酸アレイの基体に安定に結合したアンカー配列にハイブリダイズした捕捉オリゴヌクレオチドを含む。捕捉オリゴヌクレオチドはまた、ヘアピン形成配列を含み、核酸アレイハイブリダイゼーション条件下で標的配列およびフルオロフォア標識化プローブ配列にハイブリダイズすることが出来る。ヘアピン形成配列によるヘアピン形成およびプローブ配列の捕捉オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションが同時に起こると、プローブ配列の蛍光シグナルが変化する。標的配列の捕捉オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションはヘアピン形成を破壊し、それによってプローブ配列の蛍光シグナルにおいて検出可能な変化が生じる。
【0057】
本発明はあらゆるタイプの核酸アレイを含み、核酸複合体が多数のビーズに安定に結合したビーズアレイも含まれる。核酸アレイの基体はいずれの材料でできたものであってもよく、例えば、ガラス、シリカ、セラミクス、ナイロン、石英ウエハ、ゲル、金属および紙が挙げられる。
【0058】
一つの具体例において、核酸アレイ上の核酸複合体は、捕捉オリゴヌクレオチドにハイブリダイズした標的およびプローブ配列の両方を含む。別の具体例において、核酸複合体は捕捉オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしたプローブ配列を含む。核酸複合体はまた、ヘアピン形成配列によって形成されたヘアピン構造も含む。プローブ配列の蛍光シグナルはヘアピン構造の形成によりクエンチされる。
【0059】
さらに別の態様において、本発明は、目的とする標的配列の検出または測定に有用な方法を特徴とする。該方法は、捕捉オリゴヌクレオチドを核酸サンプルおよびフルオロフォア標識化プローブ配列にハイブリダイズさせる工程、および、プローブ配列の蛍光シグナルを検出する工程を含む。捕捉オリゴヌクレオチドはヘアピン形成配列を含み、核酸アレイハイブリダイゼーション条件下で標的配列にハイブリダイズすることが出来る。ヘアピン形成配列によるヘアピン形成およびプローブ配列の捕捉オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションが同時に起こると、プローブ配列の蛍光シグナルが変化する。標的配列の捕捉オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションは、ヘアピン形成を破壊し、それによって、プローブ配列の蛍光シグナルが検出可能に変化する。
【0060】
mRNAとして知られているクラスの核酸(これは本発明の方法によって検出しうる核酸のクラスの一例に過ぎない)の検出および測定の一つの態様において、ヘアピンまたはステムループ構造の捕捉オリゴヌクレオチドは標準的核酸合成技術を用いて合成する。ポリメラーゼ連鎖反応等のその他の技術が当該技術分野において知られており、捕捉オリゴヌクレオチド配列の製造に用いることが出来る。一つの配列について記載するが、数千ものかかる配列が同時に遺伝子発現アレイにおいて作ることが出来、また試験することも出来ることが理解される。本改良方法の構成を図1に示す。例示の目的で、一本鎖 DNA オリゴヌクレオチドを示し、以下の記載において明らかとなるように、その長さは、検出の要求条件に依存して変動しうる。その3’末端から開始して、捕捉オリゴヌクレオチド1は、基体表面 3、例えば、ガラスまたは金被覆シリカ、に結合した一本鎖アドレスオリゴヌクレオチド 2に相補的な長さが可変の配列を有する。これら2つの配列のワトソン・クリック塩基対形成、即ち、ハイブリダイゼーションにより、捕捉オリゴヌクレオチド1の基体表面 3への結合、即ちセルフアセンブリーが起こる。5’方向に向けて続けて、次に必要な配列は、示された位置における一連のグアノシン (G) 塩基 4である。これらグアノシンヌクレオチドの必要性は以下に記載する。次に5’方向にあるのは、測定すべき遺伝子のmRNAにおける配列に相補的なヌクレオチド配列である。このmRNA 認識配列 5は図示したものより短くても長くてもよい。次は、mRNA 認識配列におけるヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列である。このヘアピン形成配列 6において、相補的塩基の数は図示したものより短くても長くてもよい。これら塩基のその相補的塩基とのハイブリダイゼーションにより、ヘアピンまたはステムループ 7と称される二次構造が形成される。最後に、図1において、捕捉オリゴヌクレオチド配列の5’末端を形成する非対合ヌクレオチドからなる「テイル」構造があることが示される。この5'テイル配列 8は図示したものより短くても長くてもよい。これら塩基の配列は、レポーターオリゴヌクレオチド 9と称されるオリゴヌクレオチド配列に相補的である。図より、レポーターオリゴヌクレオチドはその5’末端に結合したフルオロフォア 10を有することが理解される。
【0061】
オリゴヌクレオチド鎖に化学的に結合した特定のフルオロフォアは、特定の波長の光で励起されると特有の蛍光放出を示し、かかる一本鎖オリゴヌクレオチドが、フルオロフォアの近傍に1以上のグアノシン塩基を有する相補的一本鎖にハイブリダイズしている場合、この特有の蛍光放出は有意に減少する(例えば、Morrison et al. (1989) Anal Biochem 183:231-244; Seidel et al. (1996) J Phys Chem 100:5541-5553; Broude et al. (2001) Nucl Acids Res 29:No.19 e92; Kurata et al. (2001) Nucl Acids Res 29:No.6 e34を参照)。また、以下の米国特許も参照: Livak et al. 5,723,591、Nardone et al. 6,117,986、Livak et al. 6,258,569、およびHawkins、6,451,530。フルオロフォアがグアノシン塩基に近接している際の蛍光放出の減少は、G-塩基クエンチングとして知られており、科学文献において詳細に説明されている。例えば、Torimura et al.、(2001) Anal Sci 17:155-160; Zahavy and Fox (1999)、J Phys Chem B 103:9321-9327; Crockett and Wittwer (2001)、Anal Biochem 290:89-97を参照。この立体配置において(図2A)、第一鎖 1が第二鎖 2と塩基対形成し、第二鎖 2は、鎖1と2とが塩基対形成した場合に、フルオロフォア 4と近接することになる一連のグアノシン (G) 塩基 3を有する。同様に、該鎖の一方の末端の塩基に結合したフルオロフォア 6 を、同じ鎖の他方の末端にあるグアノシン塩基7に近接させると、一本鎖オリゴヌクレオチドがヘアピンまたはステムループ立体配置 5を形成し、フルオロフォアの蛍光放出はクエンチされうる(図2B)。例えば、 Walter and Burke (1997) RNA 3:392-404参照。しかし、本発明の方法において(図2C)、本発明者らは、ヘアピンまたはステムループ立体配置 10を形成する能力を有する一本鎖オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしているフルオロフォア 9が結合したレポーターオリゴヌクレオチド 8が、構造がヘアピンまたはステムループ立体配置 10にある場合にフルオロフォア 9の近傍となるグアノシン塩基 11が存在する場合、その蛍光放出をクエンチさせることを見いだした。
【0062】
本発明は、オリゴヌクレオチド配列のフルオロフォアによる迅速かつ安価な標識化を可能とし、かつ、フルオロフォアによるより長い配列の化学的な標識を不要とする。より長い配列の標識化はより困難であり、より高価で時間のかかる精製手順を必要とする。レポーターオリゴヌクレオチドに相補的な同じ5'テイル配列を各捕捉オリゴヌクレオチドに付加することができるため、アレイにおける数万もの遺伝子配列の検出のために、一つのフルオロフォア標識化レポーターオリゴヌクレオチドのみしか製造する必要がない。フルオロフォアにより一つのヌクレオチド配列のみを標識すればよいことの利点は明らかであろう。さらにレポーターオリゴヌクレオチドの捕捉オリゴヌクレオチドへの結合は、捕捉オリゴヌクレオチドのアドレス配列への結合においてみられたように、セルフアセンブリーによって行われ、したがって、フルオロフォアの捕捉オリゴヌクレオチドへの付加は、ハイブリダイゼーションを可能とする条件下でレポーターと捕捉オリゴヌクレオチドとを混合するだけの簡便なものである。
【0063】
本発明の実施の一態様において、ヘアピンまたはステムループ立体配置 1の捕捉オリゴヌクレオチド 2を、二次構造が直鎖状となる温度まで加熱する (図3A)。これが起こると、レポーターオリゴヌクレオチド 4上のフルオロフォア 3はグアノシン塩基 5とは近接しなくなり、したがってその蛍光はクエンチされなくなる。mRNA 6のような捕捉オリゴヌクレオチド 2におけるmRNA 認識配列 7に相補的な配列を有する核酸鎖を、加熱された(開いた立体配置にある)捕捉オリゴヌクレオチドに添加し、そして系を冷却すると、mRNA 6は捕捉オリゴヌクレオチド 2とハイブリダイズし、それによってヘアピンまたはステムループ 1 二次構造の形成が妨げられる(図3B)。これは、レポーターオリゴヌクレオチド 4上のフルオロフォア 3のクエンチングを妨げる。一方で、相補的 mRNA 配列が被験サンプル中に存在しない場合は(図3C)、捕捉オリゴヌクレオチド 2のヘアピンまたはステムループ 立体配置 1が冷却により再形成され、レポーターオリゴヌクレオチド 4上のフルオロフォア 3は再び捕捉オリゴヌクレオチド 2におけるグアノシン塩基 5と近接することになり、これによってその蛍光がクエンチされる。それゆえ、生物サンプルにおける標的核酸の存在は蛍光クエンチングの阻害により示される。
【0064】
該立体配置のさらなる利点は、標的核酸濃度を数学的に評価するために、蛍光強度の内部標準を作成することができることである。標的核酸の非存在下において、冷却によりすべてクエンチされた状態にあるヘアピンまたはステムループ構造を用いて蛍光強度を測定すると、閉じた立体配置の標準シグナルを作成することができる。標的核酸の存在または非存在下において、二次構造を直鎖状にする温度まで加熱し、すべてのヘアピンまたはステムループ構造が開いた状態にある場合に蛍光強度を測定すると(図3A)、開いた立体配置の標準シグナルを作成することができる。これら蛍光強度の一方または両方が、被験サンプルにおける標的核酸の存在の判定のための比較用の標準シグナルとして用いることが出来る。閉じた立体配置の標準シグナルとおよそ同程度の蛍光強度は、標的核酸の非存在またはその濃度が非常に低いことを示す。開いた立体配置の標準シグナルに近い、高い蛍光強度は、標的核酸の濃度が高いことを示す。
【0065】
本発明の方法はハイブリダイゼーションを介したセルフアセンブリーを利用して核酸配列を検出および測定するため、設計指針の一つとして、各セットのハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドが解離、即ち融解する温度(融解温度、即ちTm)が含まれる。アドレス、ヘアピン、およびレポーターオリゴヌクレオチドにおける塩基の特定の配列を変動させることは可能であるが、A、T、C、およびG 塩基の混合比を優先するとよい。というのは該混合比は、2つの塩基対形成した鎖が解離即ち融解する温度を決定するためである。具体的には、二本鎖オリゴヌクレオチドのTmは一般に下記式にしたがってGおよびC 塩基の相対数により影響される。
[数1]
Tm = 69℃ + 0.41 (モル% G-C)-650/プローブ平均長
ヘアピンのステム領域のTmの塩基配列に対する依存度は、DNA フォールディングプログラム、例えば、Zuker フォールディングプログラムを用いて計算される、ステムハイブリッド形成の自由エネルギーから予測できる。本発明の方法において、標的核酸とのハイブリダイゼーションの前に加熱によりヘアピンを開くことは必須ではないが、加熱によるヘアピンの直鎖化により、標的とのハイブリダイゼーションは促進される。それゆえ、捕捉オリゴヌクレオチドにおけるそれぞれの相補的配列に対するアドレスオリゴヌクレオチドおよびレポーターオリゴヌクレオチドの融解温度は、ヘアピンの融解に用いられる温度よりも高いことが好ましい。さらに、核酸認識配列と標的核酸鎖の融解温度は、ヘアピン配列にハイブリダイズしたヘアピン形成配列の融解温度よりも高いことが有利である。これによって、ヘアピンを開いた立体配置に維持する温度にて、標的核酸を標的核酸認識配列にハイブリダイズすることを可能にすることにより、標的核酸の捕捉が促進される。融解温度が10℃違うだけで、捕捉オリゴヌクレオチドのアドレスオリゴヌクレオチドからの遊離または捕捉オリゴヌクレオチド上のテイルにおける相補的配列からのレポーターオリゴヌクレオチドの遊離を起こすことなく、ヘアピン構造を融解することが十分に可能である。正確に温度制御された温度サイクリング技術は当業者に周知である。さらに、当業者は、ヌクレオチドプローブの設計のための様々な市販および無料のソフトウェアプログラムを使用することによって、融解温度の計算を容易に行うことが出来る。
【0066】
本発明は以下の特定の実施例からより明らかに理解することが出来るであろう。これらの実施例は単に例示の目的で提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0067】
実施例
本発明の実施を例示するために、フルオロフォア標識化レポーターオリゴヌクレオチドが結合したヘアピン捕捉オリゴヌクレオチドを用いて溶液中で特定の核酸配列を検出する様々な研究を行った。検出した核酸配列はすべてマウス B7.2 遺伝子からのものである; GenBank BC613807、GI:15489434を参照。
【0068】
全般の材料および方法
以下のオリゴヌクレオチドを、Integrated DNA Technologies、Inc. (IDT、Coralville、IA)またはSynthetic Genetics、Inc. (San Diego、CA)から注文合成した。塩基配列は、特定の融解温度を達成し、そして、セルフダイマー、望ましくないヘアピン、およびクロスハイブリダイゼーションの形成を最小にするためにIDTからのOligoAnalyzer 3.0 ソフトウェアを用いて設計した。すべての配列は5'→3'方向に示されていることに注意されたい。実施例1から5において以下の1以上のオリゴヌクレオチドを用いた。
【0069】
レポーターオリゴヌクレオチド(RO-TAMRA): TAMRA-AAAATCCACCCACCCCACCC (配列番号1)。この5'-TAMRA-標識化オリゴヌクレオチドは、捕捉オリゴヌクレオチドの5'テイル配列に相補的である。
【0070】
レポーター相補体(RC): GGGTGGGGTGGGTGGATTTT (配列番号2)。このオリゴヌクレオチドはレポーターオリゴヌクレオチドに相補的であり、TAMRA フルオロフォアから5ヌクレオチド離れたG 塩基がクエンチングをもたらすことが出来るかを判定するために用いた。
【0071】
捕捉オリゴヌクレオチド(CO): GGGTGGGGTGGGTGGATTTTCCCAAACTTACGGATCGTGGGTGCTTCCGTAAGTTTGGGCCCCTCCTCCTCCCTCCTCC (配列番号3)。この79-mer オリゴヌクレオチドは、マウス B7.2 mRNAにおける配列に相補的な短いヌクレオチド配列を有する。
【0072】
対照捕捉オリゴヌクレオチド(CCO): GGGTGGGGTGGGTGGATTTTAAAAAACTTACGGATCGTGGGTGCTTCCGTAAGTTTTTTCCCCTCCTCCTCCCTCCTCC (配列番号4)。このオリゴヌクレオチドは、位置23〜25(5’末端から)における3つのグアニンの代わりに3つのチミンを有する以外は捕捉オリゴヌクレオチドと同じ配列を有する。
【0073】
24mer 標的配列 (24mer): CCCAAACTTACGGAAGCACCCACG (配列番号5)。このオリゴヌクレオチドは、COおよびCCOにおける標的認識配列中の24 ヌクレオチドに相補的な標的を表す。
【0074】
B7-67mer 標的配列 (B7-67mer): CCAGAACTTACGGAAGCACCCACGATGGACCCCAGATGCACCATGGGCTTGGCAATCCTTATCTTTG (配列番号6)。このオリゴヌクレオチドは、マウス B7.2 mRNA 配列のセグメントを表す。その配列は、mRNA 認識配列における22 ヌクレオチドに相補的である。
【0075】
ジスルフィドを有するアドレスオリゴヌクレオチド(AO/SS): 5'-ジスルフィド-GGAGGAGGGAGGAGGAGGGG (配列番号7)。このオリゴヌクレオチドは5’末端に基体への結合を可能とするジスルフィド基を有する。捕捉オリゴヌクレオチドのこのアドレスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの結果、捕捉配列の表面への結合が起こる。
【0076】
核酸サンプルの調製
オリゴヌクレオチドをTEバッファー (Tris-EDTA バッファー: 10 mM Tris-HCl、1mM EDTA、1 M NaCl、〜pH 7.7)に溶解した。TEバッファー溶液は二回蒸留水 (Barnstead MegaPure 3 system)を用いて調製し、使用前に滅菌0.2μm ナイロンシリンジフィルター (Nalgene(商標))でろ過した。
【0077】
蛍光分光法
すべての蛍光スペクトルは、Spex Fluorolog 3 蛍光分光計 (Instrument S.A.、Inc.、New Jersey)を用いて取得した。励起および放出単色光分光器はともに、二重機械的ブレーズド平面回折格子を用いるものである。キュベット中の溶液からの放出は入射光線に対して90°の角度で取得した。サンプルは555 nmで励起し、放出スペクトルは波長範囲570-675 nmにおける1回のシングルスキャン(1回増分1 nmおよび積分時間0.5秒)にて取得した。
【0078】
様々な温度での実験をシングルセルサンプルヒーター/クーラー・ホルダー(モデルFL 1027、JY Inc.、New Jersey)を用いて行った。サンプルホルダーの温度は温度制御水浴 (Fisher Scientific Model # 9150)からの循環水によって変化させた。所望の温度に達すると、サンプルを含むキュベットをジャケット付きサンプルホルダーに入れ、溶液を5分間平衡化した。溶媒の蒸発を最小にするために、平衡化時間はこれより長くしなかった。循環装置の温度読み出し値からの実際のサンプル温度の相違を以下のようにして較正した。水循環装置が所望の温度に達すると、キュベット中のTEバッファー溶液をサンプルホルダーに入れて5分間平衡化した。バッファー溶液の実際の温度と循環装置中の循環水の温度を温度計を用いて測定し、循環浴の温度読み出し値と比較した。以下に記載するすべての実験の温度値はサンプルの較正後の温度である。
【0079】
実施例 1.捕捉オリゴヌクレオチドのヘアピンループにおけるG 塩基によるRO-TAMRAの蛍光クエンチングの証拠
RO-TAMRA 3の放出のクエンチングにおけるCO 2のヘアピンループにおけるG-塩基 1 (図4Bに示す)の有効性を評価するために、それぞれRC 4 (図4A)、CO 2 (図4B)、およびCCO 5 (図4C)とのハイブリダイゼーションの際のRO-TAMRA 3の蛍光放出変化を比較した。RO-TAMRAの1.5 x 10-6 M 溶液の3つのアリコット 1-3 (各600 μL)を調製し、その蛍光放出スペクトルを記録した。RC (2 μL)、CO (〜1.1 μL)、およびCCO (1 μL)の少量の溶液(〜8.8 x 10-4 M(濃度))をそれぞれ溶液 1-3に添加した。その結果得られた溶液の蛍光放出スペクトルを25℃で記録した。相異なる溶液の蛍光強度の比較を容易にするために、すべての放出スペクトルを標準化した。他のオリゴヌクレオチドの添加の前のRO-TAMRAの各溶液の最大放出強度を100%とみなした(図5a)。RC、CO、またはCCOの添加後の溶液の、RC、CO、またはCCOの添加前の最大放出強度に対する相対放出強度を算出した。
【0080】
図5bに示すように、RCとのハイブリダイゼーションによってRO-TAMRAの放出強度のわずかな低下(〜6 %)が観察された。この穏やかなクエンチングは、TAMRAから5ヌクレオチド離れたG 塩基の存在によるものであるか、あるいはRC 配列における他のヌクレオチドの穏やかなクエンチング効果による。一方、ヘアピンが閉じた形態にあるCOとのハイブリダイゼーションによって、RO-TAMRA の放出強度のより程度の高い低下(〜40 %)が観察された(図5c)。これらの結果は、COのヘアピンループセグメントにあるG 塩基がTAMRA 蛍光をクエンチしたことを強く示唆する。しかし、このG 塩基クエンチングを証明するため、本発明者らは図4Cに示すように、3つのG 塩基が3つのT 塩基 6に置換されたCCOを設計した。CCOとのRO-TAMRAのハイブリダイゼーションによっては、TAMRAの蛍光クエンチングは約 6 %しか起こらず(図5d)、RCによるクエンチングの程度と同様であった。この結果は、閉じたヘアピンループにおけるTAMRAに近接するG 塩基が、COの大きなクエンチング効果を主にもたらすことを示す。
【0081】
実施例 2. ヘアピンが開いた形態におけるCOとのハイブリダイゼーションによる24mer 標的オリゴヌクレオチドの検出
CO のmRNA 認識配列に相補的な24-mer 鎖 (24mer)を用いて、標的オリゴヌクレオチド 1のハイブリダイゼーションがCO 2 をヘアピンが開いた形態にトラップし(図6A)、それによって、ヘアピン部分におけるG 塩基 4によるRO-TAMRA 3のクエンチングが減少することを示した。対照実験をCO 2の代わりにCCO 5を用いて行った(図6B)。
【0082】
表1に挙げる溶液を調製した。溶液 6および8を76℃に10分間加熱して、ヘアピンを開いた状態にし、次いで25℃に冷却して標的 24merとのハイブリダイゼーションを可能にした。溶液 1-4からの蛍光放出を記録した後、溶液 5-8の2-μLのアリコットをそれぞれ溶液 1-4に添加し、溶液 1a-4aを得た。溶液 1a-4aからの蛍光放出を記録した。他のオリゴヌクレオチドの添加前の溶液 1-4の最大放出強度を100とみなした(図7a)。RC、CO、またはCCOの添加の前の最大放出強度に対する溶液 1a-4aの相対放出強度を算出した。
表 1. RO-CO ハイブリッドの放出強度に対する標的 24merの効果の研究に用いた溶液
【表1】

【0083】
図7および表2に示すように、閉じたヘアピン形態のCOのRO-TAMRAとのハイブリダイゼーションは、COのヘアピン部分におけるG 塩基によるTAMRA 放出の有意なクエンチング (〜25 %)を導いた(図7b)。標的 24merとCOとのプレハイブリダイゼーションは、ヘアピンを開いた形態にトラップした。その結果、この開いたヘアピンとRO-TAMRAとのハイブリダイゼーションによる、TAMRA 放出のクエンチングはより弱くなった(〜13 %)(図7c)。予測されたように、ヘアピンが開いた RO-TAMRA-CO- 24mer ハイブリッドからの放出強度(図7c)は、RO-TAMRA-CCO ハイブリッド (図7d)およびRO-TAMRA-CCO-24mer ハイブリッド (図7e)からの放出と同程度であった。それは、3つのすべてのハイブリッドはRO-TAMRAに相補的な配列におけるG-塩基によってしかクエンチされなかったからである。COまたはCCOの非存在下では、過剰の 24merのROへの添加は、TAMRAの蛍光放出において観察可能な変化をもたらさなかったことに注意されたい。この結果は、ROの蛍光放出に対して24merの直接の影響はないことを確認するものであった。
表 2. RO-COおよびRO-CCO ハイブリッドの放出強度に対する標的 24merの効果についての研究の要約
【表2】

【0084】
実施例 3. COのヘアピンが開いた形態への予熱を行わない、COとのハイブリダイゼーションによる24mer 標的オリゴヌクレオチドの検出
この実施例は、捕捉オリゴヌクレオチドのヘアピンが開いた形態への予熱および標的とヘアピンが開いた捕捉オリゴヌクレオチドとのプレハイブリダイゼーションを行わない、標的核酸の検出の代替手法を示す。この実施例において、600-μLの〜1.7 x 10-7 MのRO-TAMRA溶液を調製し、溶液の蛍光放出スペクトルを記録した(図8a)。少量のCO溶液 (〜1.0 x 10-4 M(濃度))を、溶液の蛍光強度のさらなる低下が観察されなくなるまでRO-TAMRA溶液に添加した。少量 (3 μL)の標的 24mer溶液 (〜9.2 x10-5 M)を添加し、RO-CO ハイブリッドとハイブリダイズさせた。結果として得られた溶液のRO-TAMRA、CO、および24mer 標的の濃度はそれぞれおよそ1.7 x 10-7 M、3.4 x 10-7 M、および4.6 x 10 7 Mであった。蛍光強度の変化をモニターした。図8および表3に示すように、2 μLのCOのハイブリダイズしたRO-TAMRAへの添加の後、RO-TAMRAの放出強度の大幅な低下(〜45 %)が観察された(図8b)。24merとRO-COとのハイブリダイゼーションは、捕捉オリゴヌクレオチドをヘアピンが開いた形態にトラップし、したがってTAMRA 放出のクエンチングが減少し、それによって放出強度の〜30 %の上昇が導かれた(図8c)。
表 3. RO-CO ハイブリッドの放出強度に対する標的 24merの効果の要約
【表3】

【0085】
実施例 4. ヘアピンが開いた形態におけるCOとのハイブリダイゼーションによるB7-67mer 標的オリゴヌクレオチドの検出
この実施例において、600-μLの1.7 x 10-7 M RO-TAMRA溶液を調製し、溶液の蛍光放出スペクトルを記録した(図9a)。COの少量の溶液 (1.0 x 10-4 M(濃度))を溶液の蛍光強度のさらなる低下が観察されなくなるまでRO-TAMRA溶液に添加した。少量 (3 μL)の標的 B7-67mer溶液 (9.2 x10-5 M)を添加し、RO-CO ハイブリッドとハイブリダイズさせた。蛍光強度の変化をモニターした。図9および表4に示すように、2 μLのCOの、ハイブリダイズしたRO-TAMRAへの添加の後、RO-TAMRAの放出強度の大幅な低下(〜45 %)が観察された(図9b)。B7-67merとRO-COとのハイブリダイゼーションは、捕捉オリゴヌクレオチドをヘアピンが開いた形態にトラップし、それによってTAMRA 放出のクエンチングが減少し、その結果、放出強度が〜10 %上昇した(図9c)。COの非存在下でRO-TAMRA溶液にB7-67merを添加した場合には、TAMRAの放出強度における変化は観察されなかった。これによって、B7-67merがRO-TAMRAの蛍光放出に対して直接の影響をもたらさないことが確認された(表4)。
表 4. RO-CO ハイブリッドの放出強度に対する標的 B7-67merの効果の要約
【表4】

【0086】
実施例 5. RO-TAMRA- COおよびRO-TAMRA- CCO ハイブリッドの放出強度に対するAO-SSの効果
3’末端においてG 塩基を多く有するアドレスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによるRO-TAMRA-COにおけるTAMRAのさらなるクエンチングは、標的鎖とのハイブリダイゼーションによるヘアピンが閉じた形態と開いた形態との間の放出強度の相違を最大にすることが出来た。この実施例において、TEバッファー中にCO (2.0 x 10-7 M)または CCO (2.0 x 10-7 M)とハイブリダイズしたRO-TAMRA (1.7 x 10-7 M)溶液を調製した。RO-COおよびRO-CCOを含有するこれら溶液の蛍光放出スペクトルをそれぞれ図9aおよび9bに示す。各溶液に1.2μLの1.0 x 10-3 MのAO-SS溶液を添加した。その結果得られた溶液におけるAO-SS濃度は〜 2.0 x 10-6 Mであった。図10および表5に示すように、RO-TAMRA-CO ハイブリッドとAO-SSとのハイブリダイゼーションはRO-COの蛍光放出を約 14 %低下させた(図10c)。AO-SSの3’末端のG 塩基とRO-TAMRA-CCO ハイブリッドにおけるTAMRAとの空間的分離は、RO-TAMRA-CO ハイブリッドにおけるものと類似しているはずであるため、RO-TAMRA-CCOからの放出に対してAO-SSによる同様のクエンチング効果が観察された(図10d)。捕捉オリゴヌクレオチドの非存在下では、過剰のAO-SSのRO-TAMRAへの添加は、TAMRAの蛍光放出において観察可能な変化をもたらさなかった。これによって、溶液中で離れている場合にはAO-SSによるRO-TAMRA 放出の直接のクエンチングは起こらないことが確認された。
表 5. RO-TAMRA- COおよびRO-TAMRA- CCO ハイブリッドの放出強度に対するAO-SSの効果の要約
【表5】

【0087】
実施例 6. 15-mer-標的配列における一塩基変化を検出することが可能である
この実施例に記載する実験はわずかに改変した技術を用いて行った。ここで、TEバッファー中の1.0 x 10-8 M RO-TAMRA溶液を4 mL調製した。温度制御循環水浴 (Fisher Scientific model 9105)を用いて溶液を76℃に加熱し、次いで18℃に冷却した。溶液の温度を溶液に挿入したプローブ (Model LN2002 702A)を備えたデジタル装置 (Omega Digicator model410B-THC-C)を用いてモニターした。溶液の蛍光放出スペクトルを温度が18℃に達するまで2℃温度が低下する毎に記録した。放出強度を18℃でのRO-TAMRA 溶液の放出と比較して算出した。この実施例に用いたヌクレオチド配列を表6に示す。
表 6.実施例6に用いたヌクレオチド配列
【表6】

【0088】
図11は、非放射減衰の低下により、温度低下にともなってRO-TAMRAの放出強度が上昇することを示す。COのループにおける配列に相補的な15mer 配列中の一塩基ミスマッチを検出することが可能であることを確かめるために、数μLの10-5 MのT3またはSM溶液を上記のように調製したセルフアセンブリーしたCO + RO-TAMRA (10-8 M)の溶液に添加した。溶液を76℃から冷却した場合の溶液の放出スペクトルをモニターした。18℃でのRO-TAMRAの最大放出強度に対する溶液の相対放出強度を算出した。CO ループ領域のみに相補的なT3の配列の融解温度は〜60℃であった。SMはT3と、位置 6における一塩基のみが相違している。1モル当量のT3の存在は、RO-TAMRA + COをヘアピンが開いた形態にトラップし、18℃での放出強度を〜80%まで上昇させた。T3と比較して、SMはRO-TAMRA + COとより低い温度で結合し、RO-TAMRA + COをヘアピンが開いた形態に維持する効果が低い。したがって、RO-TAMRA + CO + SM ハイブリッドの放出プロファイルはRO-TAMRA + CO + T3のものと有意に相違し、18℃で観察されたRO-TAMRA + CO + SMについてのTAMRA 放出強度はより低かった。
【0089】
表7に要約するように、18℃でのRO-TAMRA + COの放出強度は、RO-TAMRAのみにより得られた値(この値を100%として標準化した)の48%であった。CO + RO-TAMRAは数μLのCOの濃溶液 (10-5 M)をRO-TAMRA溶液(10-8 M)にRO-TAMRAに対するCOが1モル当量となるように添加することにより調製した。その結果得られた溶液を76℃に加熱し、そして18℃に冷却した。溶液の放出スペクトルを温度が18℃に達するまで2℃温度が低下する毎に記録した。冷却前に添加したB7-67merはステムループを開いた立体配置に維持し、88%の放出強度をもたらした。予測されたように、T3を添加した場合、より小さい15merはステムループを開いた立体配置に維持する効果がわずかに弱かった(18℃での放出強度82%)。しかし、SMを添加した場合、18℃での放出強度はたった70%であり、COにおける相補的配列とのたった一塩基のミスマッチが検出できることを示した。マイクロアレイに適用すると、これは、単一塩基のみ異なるすべての配列の同定を可能とし、現在の遺伝子マイクロアレイにおける主要な問題である類似のヌクレオチド配列間の交差反応性を妨げると考えられる。これは遺伝子配列における点突然変異の分析にも利用可能であり得る。
表 7. 15mer 標的配列における一塩基変化を放出強度の変化として検出することが可能である
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、本発明の核酸の検出および測定システムの構成を示す。
【図2】図2A-2Cは、2つの既知の形態のG-塩基クエンチング (AおよびB)と本発明の新規なG塩基クエンチング (C)とを対比する。
【図3】図3A-3Cは、本発明の核酸の検出および測定システムの作動を示す。
【図4】図4A-4Cは、捕捉オリゴヌクレオチド (CO)のヘアピンループにおけるG 塩基がRO-TAMRAの蛍光クエンチングをもたらすことを示すのに用いた様々な実験的立体配置を示す。
【図5】図5は、捕捉オリゴヌクレオチドのヘアピンループにおけるG 塩基がRO- TAMRAの蛍光クエンチングをもたらすことを示す蛍光スペクトルを示す。
【図6】図6Aおよび6Bは、標的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが、捕捉オリゴヌクレオチドをヘアピンが開いた形態にトラップし、それによって近接するG 塩基によるRO- TAMRAのクエンチングが低下することを示すのに用いた2つの実験的立体配置を示す。
【図7】図7は、RO-COおよびRO-CCO ハイブリッドの放出強度に対する24mer標的の効果を示す蛍光スペクトルを示す。
【図8】図8は、室温でのRO-COハイブリッドによる24mer標的の検出を示す(24merとCOとの前混合または予熱は行わない)。
【図9】図9は、室温でのRO-COハイブリッドによるB7-67merの検出を示す(B7-67merとCOとの前混合または予熱は行わない)。
【図10】図10は、アドレスオリゴのクエンチングに対する効果を記載する。
【図11】図11は、標的オリゴヌクレオチドと捕捉オリゴヌクレオチドにおける配列との間の一塩基ミスマッチが放出強度の差異として検出可能なことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体および核酸複合体を含む核酸アレイであって、該核酸複合体が以下を含み:
基体に安定に結合している第一の核酸分子;および、
該第一の配列にハイブリダイズしている第二の核酸分子、
ここで、該第二の核酸分子は、
(1)ステムループを形成することができるヘアピン形成配列、および、
(2) 核酸アレイハイブリダイゼーション条件下でフルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズすることが出来るレポーター結合配列、
を含み、ここで、
該フルオロフォア標識化レポーター配列が該第二の核酸分子にハイブリダイズしている場合、該ステムループの形成が、該レポーター配列の蛍光シグナルを変化させる、核酸アレイ。
【請求項2】
該フルオロフォア標識化レポーター配列が該第二の核酸分子にハイブリダイズしている場合、該ステムループの形成が、該レポーター配列の蛍光シグナルをクエンチする、請求項1の核酸アレイ。
【請求項3】
該フルオロフォア標識化レポーター配列が該第二の核酸分子にハイブリダイズしている場合、該ステムループの破壊が、該レポーター配列の蛍光シグナルを検出可能に上昇させる、請求項2の核酸アレイ。
【請求項4】
該破壊が、標的配列の該第二の核酸分子へのハイブリダイゼーションを介して起こる、請求項3の核酸アレイ。
【請求項5】
該第二の核酸分子が該フルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズしている、請求項2-4のいずれかの核酸アレイ。
【請求項6】
該第二の核酸分子が該ステムループを含む、請求項5の核酸アレイ。
【請求項7】
該第二の核酸分子が該ステムループを含まず、標的配列にハイブリダイズしている、請求項5の核酸アレイ。
【請求項8】
該第二の核酸分子が少なくとも1つのグアニン塩基を含み、かつ、該フルオロフォア標識化レポーター配列が該第二の核酸分子にハイブリダイズしている場合、該ステムループの形成により、該少なくとも1つのグアニン塩基が該レポーター配列に近接し、それによって該レポーター配列の蛍光シグナルのクエンチングが起こる、請求項2-7のいずれかの核酸アレイ。
【請求項9】
該少なくとも1つのグアニン塩基が2以上のグアニン塩基である請求項8の核酸アレイ。
【請求項10】
該第二の核酸分子が、5’末端から3’末端の方向にて、該レポーター結合配列、該ヘアピン形成配列、該少なくとも1つのグアニン塩基、および該第一の核酸分子にハイブリダイズする配列を含む、請求項8の核酸アレイ。
【請求項11】
該第二の核酸分子が、3’末端から5’末端方向にて、該レポーター結合配列、該ヘアピン形成配列、該少なくとも1つのグアニン塩基、および該第一の核酸分子にハイブリダイズする配列を含む、請求項8の核酸アレイ。
【請求項12】
該第一の核酸分子が核酸アレイの相異なる分離した領域に安定に結合しており、該相異なる分離した領域のそれぞれが該第一の核酸分子にハイブリダイズする相異なるオリゴヌクレオチドを含み、該オリゴヌクレオチドが、
(1)ステムループを形成することができるヘアピン形成配列、および、
(2)核酸アレイハイブリダイゼーション条件下でフルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズすることが出来るレポーター結合配列
を含み、ここで、該フルオロフォア標識化レポーター配列が該オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている場合、該ステムループの形成が、該レポーター配列の蛍光シグナルをクエンチし、かつ該相異なるオリゴヌクレオチドのそれぞれが相異なる標的配列にハイブリダイズすることが出来る、請求項2-11のいずれかの核酸アレイ。
【請求項13】
該オリゴヌクレオチドのそれぞれが、少なくとも1つのグアニン塩基を含み、かつ、該フルオロフォア標識化レポーター配列が該オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている場合、該オリゴヌクレオチドにおける該ステムループの形成が、該少なくとも1つのグアニン塩基を該レポーター配列に近接させ、それによって該レポーター配列の蛍光シグナルのクエンチングが起こる、請求項12の核酸アレイ。
【請求項14】
該フルオロフォア標識化レポーター配列が対応するオリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている場合、1つの該標的配列の対応するオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションが、該対応するオリゴヌクレオチドにおける該ステムループを破壊し、それによって、該レポーター配列の蛍光シグナルが検出可能に上昇する、請求項12の核酸アレイ。
【請求項15】
該相異なるオリゴヌクレオチドのそれぞれにおける該レポーター結合配列が同一のヌクレオチド配列からなる、請求項12の核酸アレイ。
【請求項16】
フルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズしているオリゴヌクレオチドを含む核酸複合体であって、該オリゴヌクレオチドがステムループを形成することができるヘアピン形成配列を含み、該レポーター配列が該オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている場合、該ステムループの形成が該レポーター配列の蛍光シグナルを変化させる、核酸複合体。
【請求項17】
該フルオロフォア標識化レポーター配列が該オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている場合、該ステムループの形成が、該レポーター配列の蛍光シグナルをクエンチする、請求項16の核酸複合体。
【請求項18】
該フルオロフォア標識化レポーター配列が該オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている場合、該ステムループの破壊が、該レポーター配列の蛍光シグナルを検出可能に上昇させる、請求項17の核酸複合体。
【請求項19】
該破壊が、標的配列の該オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを介して起こる、請求項18の核酸複合体。
【請求項20】
該オリゴヌクレオチドが標的配列にハイブリダイズしており、該ステムループを含まない、請求項19の核酸複合体。
【請求項21】
該オリゴヌクレオチドがステムループを含み、該標的配列にハイブリダイズしていない、請求項19の核酸複合体。
【請求項22】
該オリゴヌクレオチドが少なくとも1つのグアニン塩基を含み、該フルオロフォア標識化レポーター配列が該オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている場合、該ステムループの形成が、該少なくとも1つのグアニン塩基を該レポーター配列に近接させ、それによって該レポーター配列の蛍光シグナルのクエンチングが起こる、請求項17-21のいずれかの核酸複合体。
【請求項23】
該少なくとも1つのグアニン塩基が2以上のグアニン塩基である、請求項22の核酸複合体。
【請求項24】
該オリゴヌクレオチドが、一方の末端から他方の末端の方向にて、該フルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズする配列、該ヘアピン形成配列、および該少なくとも1つのグアニン塩基を含む、請求項22の核酸複合体。
【請求項25】
以下の工程を含む、標的配列の存在または非存在を検出する方法:
オリゴヌクレオチドを核酸サンプルおよびフルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズさせる工程、ここで該オリゴヌクレオチドが、
(1) ステムループを形成することができるヘアピン形成配列、および、
(2)核酸アレイハイブリダイゼーション条件下でフルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズすることが出来る配列、
を含み、ここで該オリゴヌクレオチドは核酸アレイハイブリダイゼーション条件下で該標的配列にハイブリダイゼーションすることができ、かつ、該オリゴヌクレオチドの標的配列へのハイブリダイゼーションが、該オリゴヌクレオチドにおけるステムループの形成を妨げ、ここで、該フルオロフォア標識化レポーター配列が該オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている場合、該ステムループの形成が該レポーター配列の蛍光シグナルをクエンチする;および、
該レポーター配列の蛍光シグナルを検出する工程、
ここで、核酸サンプルの非存在下と比較しての核酸サンプルの存在下におけるフルオロフォア標識化レポーター配列の蛍光シグナルの上昇が、サンプルにおける標的配列の存在を示し、核酸サンプルの非存在下と比較して核酸サンプルの存在下でのフルオロフォア標識化レポーター配列の蛍光シグナルに有意差が無いことが、サンプルにおける標的配列の非存在を示す。
【請求項26】
以下の工程を含む、標的配列と目的配列との配列の相違を検出する方法:
オリゴヌクレオチドを目的配列とフルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズさせる工程、ここで該オリゴヌクレオチドが、
(1)ステムループを形成することができるヘアピン形成配列、および、
(2)核酸アレイハイブリダイゼーション条件下でフルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズすることが出来る配列、
を含み、ここで該オリゴヌクレオチドが標的配列に相補的な配列を含み、かつ、標的配列の該オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが該オリゴヌクレオチドにおけるステムループの形成を妨げ、ここで、該フルオロフォア標識化レポーター配列が該オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている場合、該ステムループの形成が、該レポーター配列の蛍光シグナルをクエンチする;および、
該レポーター配列の蛍光シグナルを検出する工程、
ここで、標的配列の存在下と比較しての目的配列の存在下でのフルオロフォア標識化レポーター配列の蛍光シグナルの低下と、目的配列の非存在下と比較しての目的配列の存在下でのフルオロフォア標識化レポーター配列の蛍光シグナルの上昇とが両方起こることが、目的配列が標的配列と相同的であるが、同一ではないことを示す。
【請求項27】
標的配列が、1つの単一ヌクレオチド突然変異によって目的配列と異なっている、請求項26の方法。
【請求項28】
複数の核酸分子を含む核酸アレイであって、該核酸分子のそれぞれが核酸アレイの相異なる分離した領域に安定に結合しており、該核酸分子のそれぞれが、
(1)ステムループを形成することができるヘアピン形成配列、および、
(2)核酸アレイハイブリダイゼーション条件下でフルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズすることが出来るレポーター結合配列、
を含み、ここで該フルオロフォア標識化レポーター配列が1つの核酸分子にハイブリダイズしている場合、該1つの核酸分子における該ステムループの形成が、該レポーター配列の蛍光シグナルを変化させる、核酸アレイ。
【請求項29】
該フルオロフォア標識化レポーター配列が該1つの核酸分子にハイブリダイズしている場合、該1つの核酸分子における該ステムループの形成が、該レポーター配列の蛍光シグナルをクエンチする、請求項28の核酸アレイ。
【請求項30】
該フルオロフォア標識化レポーター配列が該1つの核酸分子にハイブリダイズしている場合、該1つの核酸分子における該ステムループの破壊が、該レポーター配列の蛍光シグナルを検出可能に上昇させる、請求項29の核酸アレイ。
【請求項31】
該破壊が、標的配列の該1つの核酸分子へのハイブリダイゼーションを介して起こる、請求項30の核酸アレイ。
【請求項32】
該1つの核酸分子が該フルオロフォア標識化レポーター配列にハイブリダイズしている、請求項29-31のいずれかの核酸アレイ。
【請求項33】
該1つの核酸分子が該ステムループを含む、請求項32の核酸アレイ。
【請求項34】
該1つの核酸分子が、該ステムループを含まず、標的配列にハイブリダイズしている、請求項32の核酸アレイ。
【請求項35】
該1つの核酸分子が少なくとも1つのグアニン塩基を含み、かつ、該フルオロフォア標識化レポーター配列が該1つの核酸分子にハイブリダイズしている場合、該ステムループの形成が、該少なくとも1つのグアニン塩基を該レポーター配列に近接させ、それによって該レポーター配列の蛍光シグナルのクエンチングが起こる、請求項29-34のいずれかの核酸アレイ。
【請求項36】
該少なくとも1つのグアニン塩基が2以上のグアニン塩基である、請求項35の核酸アレイ。
【請求項37】
該1つの核酸分子が、5’末端から3’末端の方向にて、該レポーター結合配列、該ヘアピン形成配列、および、該少なくとも1つのグアニン塩基を含む、請求項35の核酸アレイ。
【請求項38】
該1つの核酸分子が、3’末端から5’末端方向にて、該レポーター結合配列、該ヘアピン形成配列、および、該少なくとも1つのグアニン塩基を含む、請求項35の核酸アレイ。
【請求項39】
該核酸分子のそれぞれが、核酸アレイの相異なる分離した領域に共有結合している、請求項29-38のいずれかの核酸アレイ。
【請求項40】
該核酸分子のそれぞれが、核酸アレイの相異なる分離した領域に非共有結合によって結合している、請求項29-39のいずれかの核酸アレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−528213(P2007−528213A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539685(P2006−539685)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/037041
【国際公開番号】WO2005/047468
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(506155255)ユニバーシティ・オブ・ネバダ・リノ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF NEVADA, RENO
【Fターム(参考)】