説明

特異的ウイルス標的用化合物

本発明は、式(I):B−R1−R2−Mを有する化合物に関し、ここで、Bは、標的を認識し、及び結合するための結合要素であり;R1は、当該標的と共有結合を形成するように当該標的の官能基と反応するための原子の第1基であり;R2は原子の第2基であり;R1及びR2は、R2−Mを遊離とするように、R1と当該標的との間の共有結合の形成がR1とR2との間の結合の開裂を生じさせるためのものであり;そしてMは、水素原子、及び医薬として許容される成分からなる群より選択される。あるいは、R1とR2は、式(II):B−R2−R1−Mを形成するために反転させられ得、そしてR1と標的との間の共有結合の形成は、R1とR2との間の結合の開裂を生じさせ、R2−Bを遊離させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本出願は、特異的なウイルス標的のための化合物、及びそれらの関連組成物及び方法に関し、そしてより特異的に、ウイルス侵入阻害剤及び抗融合化合物(anti−fusiogenic compound)に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
多くの治療分野において、治療戦略は、それらの特異的なウイルス標的に可逆的に結合する阻害剤又はリガンドに基づく。これらの阻害剤及びリガンドは、特異的標的と結合する形式とそれらの遊離型の形式との間で交互に入れ替わる。遊離型のとき、それらは、治療効果の損失を引き起こす酵素分解及び/又は素早い腎臓排出に供され得る。それらの治療効果を持続するために、それらの特異的ウイルス標的に共有結合する及び不可逆的に結合する阻害剤又はリガンドの必要性がある。
【発明の開示】
【0003】
本発明の概要
本発明に関して、以下の式(I):
B−R1−R2−M (I)
{式中:
−Bは、標的を認識し、かつ、結合するための結合要素であり;
−R1は、当該標的と共有結合を形成するように当該標的の官能基と反応するための原子の第1基であり;
−R2は原子の第2基であり;ここで、R1及びR2は、R1と当該標的との間の共有結合の形成がR1とR2との間の結合の開裂を生じさせて、R2−Mを遊離させる;そして
−Mは、水素原子及び医薬として許容される成分からなる群より選択される。}を有する化合物を提供する。
【0004】
本発明出願に関して、以下の式(II):
B−R2−R1−M (II)
{式中、
−Bは、標的を認識し、かつ、結合するための結合要素であり;
−R1は、当該標的と共有結合を形成するように、当該標的の官能基と反応するための原子の第1基であり;
−R2は原子の第2基であり;ここで、R1及びR2は、R1と当該標的との間の共有結合の形成がR1とR2との間の結合の開裂を生じさせて、B−R2を遊離させる、;そして
−Mは、医薬として許容される成分である。}
を有する化合物も提供する。
【0005】
この化合物の成分は、増量剤を含み、好ましくは、薬物又は治療薬、蛋白質、分子、粒子、ポリマー、リポソーム、及び細胞、より好ましくは、血清蛋白質(内因性の、組み換え型又はゲノムの)からなる群より選択され、及びさらにより好ましくは、当該かさ高は血清アルブミンである。
【0006】
本発明の好ましい態様において、当該R1は、以下の式(III):
X−C(Y) (III)
{式中、
Xは存在しないか、又はアルキル基、及び置換又は非置換フェニル基からなる群より選択され、;そして
Yは、硫黄、酸素、リン、及び窒素からなる群より、好ましくは硫黄、及び酸素からなる群より選択される。}におけるものである。
【0007】
例として、Yが酸素のとき、C(Y)はカルボニルである。
【0008】
本発明において、置換フェニル基は、好ましくは、ハロゲン、NO、SONH、SONHF、CF、CCl、CBr、C=N、SOH、COH、CHO、NHR、OH、NHCOCH、OCH、CH、及びCHCHの如き少なくとも1つの置換基を担持するフェニル基である。
【0009】
本発明の好ましい態様において、R2は、酸素、アセタール、ヘミアセタール、ホスホアセタール、硫黄、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシアミノ誘導体、置換又は非置換のいずれかのフェノキシ、チオフェノキシ、及びアミノフェノキシ誘導体からなる群より選択される。本発明において、置換フェノキシ、チオフェノキシ、又はアミノフェノキシは、ハロゲン、NO、SONH、SONHF、CF、CCl、CBr、C=N、SOH、COH、CHO、NHR、OH、NHCOCH、OCH、CH、及びCHCHの如き少なくとも1つの置換基を有するフェニル基を含む。
【0010】
本発明の他の態様において、R1R2は、アルキルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アリールチオエステル、ホスホエステル、オルトエステル、イミデート、混合無水物、ジスルフィド、アミド、及びチオアミンからなる群より選択される反応性官能基を含む。当該反応基は、上記のような置換又は非置換フェニル基の如き芳香族部分をも非制限的に含み得る。好ましくは、R1R2により形成される当該反応性官能基は、水性環境において安定である。
【0011】
本発明のある態様において、当該結合要素は、有機化合物、アミノ酸配列、ペプチド、蛋白質、核酸配列、小分子、それらの模倣剤、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0012】
本発明のある態様において、当該ウイルス標的は、ウイルス、ウイルス抗原、感染細胞上の受容体、ウイルス性ペプチド、感染細胞、感染細胞の表面に発現されたウイルス蛋白質、それらの断片又はそれらの特異的領域からなる群より選択される。
【0013】
本発明の好ましい態様において、当該ウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1及び2)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、エボラウイルス、デング熱ウイルス、風疹ウイルス、エプスタインバーウイルス、肝炎ウイルス、HTLV−1及び2、セムリキ森林ウイルス(SFV)、はしかウイルス(MeV)、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、及びダニ媒介脳炎(TBE)ウイルスからなる群より選択される。この態様において、当該結合要素は、非制限的に、当該ウイルスのgp41糖蛋白質の領域又はそれらの類似部分及び相当部分に対する結合親和力を有する結合要素となり得る。
【0014】
本発明のさらに好ましい態様において、当該結合要素は、配列番号1〜19からなる群より選択されるアミノ酸配列を有し、当該ウイルスはHIVである。
【0015】
本発明の他の態様において、当該成分は、治療薬を含む。この治療薬は、薬物蛋白質分解酵素阻害剤、抗増殖剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗ウイルス剤、ウイルス侵入阻害剤、及び抗融合剤(anti−fusiogenic agent)からなる群より選択され得る。
【0016】
本発明に関して、当該化合物がB−R1−R2−Mの構造であるとき、BとR1との間にリンカーL1をさらに含む本発明の化合物をも提供する。さらに又はあるいは、リンカーL2は、R2とMとの間に存在し得る。
【0017】
本発明に関して、当該化合物がB−R2−R1−Mの構造であるとき、BとR2との間にリンカーL2をさらに含む本発明の化合物をも提供する。さらに又はあるいは、リンカーL1は、R1とMとの間に存在し得る。通常は、当該リンカーは約1〜20原子の長さであって、当該原子は炭素、窒素、酸素、硫黄、及びリンなどとなり得る。当該リンカーは、一般的に約2〜16炭素原子、より一般的には約1〜25炭素原子のアルキレン基;当該アルキレン基が2〜3原子のものであり、約1〜8ユニット、及び好ましくは約1〜6ユニットを有するだろうポリアルキレン基;アルファ及びオメガアミノ酸を含むアミノ酸、又は約1〜8アミノ酸、及び好ましくは約1〜6アミノ酸を有するオリゴヌクレオチドであって、ここで当該アミノ酸が、極性又は非極性、荷電又は非荷電、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式芳香族、天然素材又は合成、右旋性(D)又は左旋性(L)となり得る。本発明において、好ましいことには、当該リンカーは、−NH−(CH−C(O)−の式を有し、ここでnは1〜25範囲の整数であり、より好ましくは当該リンカーは、−NH−(CH−C(O)−と−NH−CH−C(O)−から選択される。
【0018】
本発明に関して、対象に本発明の化合物を、単独で又は医薬として許容される担体と共に投与することを含む、当該対象におけるウイルス標的の活性を調節するための方法であって;当該結合要素が、ウイルス標的の活性に関する当該ウイルス標的の領域に対する結合親和力を有し、それによって、当該標的の領域への化合物の結合は、当該標的の活性の妨害又は低下をもたらす前記方法を提供する。
【0019】
本発明に関して、医薬として許容される担体とともに本発明の化合物を含む、対象におけるウイルス標的の活性を調節するための抗ウイルス性組成物であって;当該結合要素が、ウイルスの細胞感染の細胞膜融合過程の活性に関する当該ウイルス標的の領域に対する結合親和力を有し、それによって、当該標的の領域への化合物の結合は、当該標的の活性の妨害又は低下をもたらす当該抗ウイルス性組成物をも提供する。
【0020】
本明細書中の当該活性の調整は、好ましくは、非制限的に、当該活性の妨害又は低下である。
【0021】
本明細書中のある態様において、当該活性は、ウイルスの細胞感染の膜融合過程の活性である。
【0022】
本明細書に関して、対象の抗ウイルス治療において使用される薬物の製造のための化合物の使用をさらに提供する。さらに特に、抗ウイルス薬治療を必要とする対象は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1及び2)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、エボラウイルス、デング熱ウイルス、風疹ウイルス、エプスタインバーウイルス、肝炎ウイルス、HTLV−1及び2、セムリキ森林ウイルス(SFV)、はしかウイルス(MeV)、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、及びダニ媒介脳炎(TBE)ウイルスからなる群より選択されるウイルスにより感染している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の詳細な説明
本発明の完全な理解を確実にするために、当該記載において使用される用語の定義を最初に提供する。
【0024】
結合要素:当該結合要素は、ウイルス標的上の相補的領域に対する特異的結合親和力を有する領域を含み、そして有機化合物、アミノ酸配列、ペプチド、蛋白質、ホルモン、抗体、抗原、核酸配列、上記の模倣薬又は組合せとして具体化され得る。
【0025】
ウイルス標的:ウイルス標的は、当該活性を調節することが望ましい実体又は調節することが望ましい活性を提供するために他の実体と相互作用する実体である。当該ウイルス標的は、非制限的に、ウイルス、感染細胞の表面上に発現されたウイルス抗原、ウイルス又は感染細胞上の表面受容体のウイルス性抗原に特異的なリガンド、感染細胞表面受容体、ペプチド、感染細胞又はそれらの細胞膜、gp41の如き、感染細胞の表面に発現されたウイルス蛋白質、それらの断片又はそれらの特異的領域(すなわち、N−7反復又はC−7反復)となり得る。
【0026】
官能基:官能基は、当該ウイルス標的の潜在的な反応部位を表す原子の基である。官能基は、非制限的に、カルボキシ、アミノ、チオール、及びヒドロキシル基を含む。アミノ基が好まれ、そして、リジン、アルギニン、アスパラギン又はグルタミン残基、あるいはペプチド又は蛋白質の遊離のN末端により提供され得る。
【0027】
リンカー:リンカーは、場合により、当該結合要素と当該反応基との間、及び/又は当該反応基と当該成分との間に使用される。当該リンカーの長さは、親和力を有することにより当該結合要素が当該ウイルス標的の領域に結合するのを可能とするために、及び当該反応基が当該ウイルス標的の官能基と反応し、そして共有結合を形成するのを同時に可能とするために変化し得る。活性分析、及び結合競合分析法は、当該リンカーの適切な長さを決定するために有用である。
【0028】
医薬として許容される成分:医薬として許容される成分とは、生体内への投与について対象への使用が許容されるだろう成分を意図する。そのような成分は、水素原子となり得、又は治療薬、プロドラッグ及び/又は増量剤を含み得る。当該増量剤は、天然素材(内因性)あるいは合成、ゲノム又は組み換え源のものであり、例えば血清蛋白質、より好ましくは、血清アルブミンとなり得る。当該成分は、当該増量剤と共有結合する結合基をも含み得る。当該結合基は、もし立体障害を避けるように望まれるならば、当該反応基、及び当該結合要素から当該増量剤の距離を置くための連結基も含み得る。本発明に好適な治療薬の例は、ペプチド、小分子、薬物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗ウイルス剤、ウイルス侵入阻害剤、及び抗融合体剤から非制限的に選択される。
【0029】
結合(Bind)について:結合が、2つの分子間、2つのアミノ酸配列間、2つの核酸配列間などの電子引力、疎水性引力、静電気引力又はファンデルワールス引力に関することは、本発明の目的として意図される。そのような引力の強さは、通常、結合親和力と呼ばれる。結合は、結合状態と非結合状態との間の可逆的相互作用である。本発明に関して、そのような結合は、当該結合要素と当該ウイルス標的との間に生じる。
【0030】
結合(Bond)について:結合が、2分子間の共有結合を形成するために化学反応及び転位に関することは、本発明の目的として意図される。結合は、不可逆的相互作用である。本発明に関して、そのような結合は、当該反応基(R1)と当該ウイルス標的との間に生じる。
【0031】
当該ウイルス標的の活性:当該ウイルス標的の活性は、当該ウイルス標的の固有活性の内の1つを含む。例えば、それは、ウイルス又はウイルス感染細胞の細胞感染の間に関する過程(すなわち、膜融合過程)となり得る。
【0032】
医薬として許容される担体:医薬として許容される担体は、錠剤、ゲルカプセル、水溶液などの形式をとり得、当該対象により許容され得る純度、及び/又は浸透圧を有する。
【0033】
対象:対象は、哺乳類又は人間である。
【0034】
gp41糖蛋白質、及びgp41糖蛋白質類似体:gp41糖蛋白質は、HIV、SIV、RSV、HPV(HPIV)及びMeVの如きウイルスの侵入過程又は細胞感染過程の膜融合過程に関する蛋白質である。開示され、請求されるようなgp41糖蛋白質は、それらの切断体、欠失体、及び/又は挿入体を含む。欠失体は、当該gp41糖蛋白質からの1又は複数のアミノ酸残基の除去からなり、及びアミノ酸配列の単一連続部分又は複数部分の除去に関し得る。挿入体は、単一アミノ酸残基又は多くの残基を含み、そして当該配列のカルボキシ又はアミノ末端で、又は当該配列内の位置で作られ得る。
【0035】
gp41糖蛋白質類似体は、当該gp41糖蛋白質領域に相当するHIV以外のウイルスのペプチド領域を含む蛋白質であり、並びに、それらの切断体、欠失体、及び/又は挿入体も同様である。
【0036】
本発明に関して標的とされたgp41のより特異的な領域は、当該N−7反復又はC−7反復である。
【0037】
断片:断片はペプチド、DNA又は分子の全長配列の一部であって、本発明を達成するための役割を果たすために、完全ペプチド、DNA又は分子の特徴のいくつかを保持する。それ故、開示される当該断片は当該ウイルス標的に結合可能であることを意図する。
【0038】
プロドラッグ:プロドラッグは、酵素的に又は化学的に、生体内の化学的、及び/又は構造的修飾を被る化合物であって、抗ウイルス活性の如き、当初化合物の活性と異なる、分子に対する活性を授与するような化合物である。
【0039】
本発明の詳細な説明及び好ましい態様
本発明は、式(I):B−R1−R2−M、又は式(II)B−R2−R1−Mを有する化合物に関する。
【0040】
Bは、前記のようなウイルス標的についての結合親和力を有する結合要素である。本発明に関して、当該結合要素は、所望のウイルス標的に認識し、そして結合することが可能である。そのような結合要素、及びウイルス標的は、本分野において既に知られたものとなり得る。あるいは、既知の特異的ウイルス標的に対する結合要素が、国際特許公開第WO99/24075号に開示されたスクリーニング方法により決定され得、その内容全体を本明細書中に援用する。
【0041】
R1は、前記のようなウイルス標的と共有結合を形成するように当該ウイルス標的の官能基と反応可能とする第1反応基である。本発明の好ましい態様において、R1は、以下の式(III):
X−C(Y) (III)
{式中、
Xは存在しないか、又は脂肪族アルキル基、及び環状アルキル基からなる群より選択され、
Yは、硫黄原子、酸素原子、リン、及び窒素原子からなる群より、好ましくは、硫黄原子、及び酸素原子からなる群より選択される。}を有するものである。
【0042】
R2は、酸素、アセタール、ヘミアセタール、ホスホアセタール、硫黄、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシアミノ誘導体、前記のような置換又は非置換フェノキシのいずれか、チオフェノキシ、アミノフェノキシ誘導体、及び置換又は非置換のフェニル基からなる群より好ましくは選択される。本発明において、置換されたフェニル基は、好ましくは、ハロゲン、NO、SONH、SONHF、CF、CCl、CBr、C=N、SOH、COH、CHO、NHR、OH、NHCOCH、OCH、CH、及びCHCHの如き置換基を有するフェニル基である。本発明において、置換フェニル基は、好ましくは、ハロゲン、NO、SONH、SONHF、CF、CCl、CBr、C=N、SOH、COH、CHO、NHR、OH、NHCOCH、OCH、CH、及びCHCHの如き置換基を有するフェニル基である。
【0043】
本発明の他の態様において、R1R2は、アルキルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アリールチオエステル、ホスホエステル、オルトエステル、イミデート、混合無水物、ジスルフィド、アミド、及びチオアミンから選択される反応官能基を含む。当該反応基は、非制限的に、上記のような置換又は非置換フェニル基の如き芳香族部分をも含む。好ましくは、R1R2により形成される当該反応官能基は、水性環境において安定である。
【0044】
しかしながら、他の反応基、R1、R2、及びR1R2の組み合わせが本発明の目的に適していることを当業者は容易に認識するであろうことが理解される。
【0045】
Mは、水素原子、及び上記のような医薬として許容される成分からなる群より選択される。
【0046】
あるいは、本発明の化合物は、BとR1との間のリンカーL1、及び/又はR2とMとの間のリンカーL2を含み得る。当該リンカーの目的は、当該結合要素が当該ウイルス標的に既に結合されるとき、当該ウイルス標的と共有結合を形成するように、当該反応基が当該ウイルス標的の適合官能基と結合することを可能とするために、当該化合物の因子と一定の間隔をあけるためのものである。さらに、式B−R2−R1−Mの化合物において、当該成分が増量剤を含むとき、MとR1との間のリンカーは、ウイルス標的への反応基の共有結合及び/又は結合要素とウイルス標的との間の結合相互作用を伴って立体障害を妨害する。
【0047】
「適合官能基」を用いて、当該反応基と反応し、そしてそれと共有結合を形成し得る官能基が意図される。多くのリンカーは商業的に入手可能又は合成可能であり、そして本発明のリンカーは、特定のものに制限されない。使用に適したリンカーを決定するために、様々な長さ及びフレキシビリティを有する異なるリンカーを分析した。
【0048】
当該結合要素「B」は、以下の:5−へリックス、NCCG−gp41、N36 Mut(例えば)、DP−107、T−21、N36、エンフュービルタイド(enfuvirtide)、T−20、Fuseon、DP−178、ペンタフシド、T−1249、ADS−J1、SC34EK、IQN17、D10−PX−2K、IQN23、C14linkmid、C34コイル、(Cys)C34−GCN4(Cys)GCN4、T−649、C14、SJ−2176、scC34、sC34、C34、p38、p26、シアマイシン(siamycin)I及びII、ADS−J2、ADS−J1、N−36−E、S−29−I、SPC−3、CLIV、AMD−070、KRH−1636、KRH−1120、CXCR4阻害剤又はアンタゴニスト、T−134、T−140、AMD−8664、HIV−1、Tat類似体、ALX40−4C、AMD−3100、T−22、5,12−Tyr 7−Lysポリフェムシン(polyphemusin)II、TJN−151、バイカリン、AM−1401、NSC−651、コノカルボン(Conocurvone)、DAPTA、D−Ala1 ペプチド T−アミン、SCH−C、SCH−D、TAK−220、SCH−350、CCR5アンタゴニスト、ペプチドT、UCB−35、EGCG、エピガロカテキンガレート、Carraguard、ラムダ−カラギーナン、硫酸カードラン、OKU−40、OKU−41、Zintevir、コサレイン(cosalane)類似体、デキストリン−2−スルフェイト、Scyllatoxin類似体、CDR2様ループ、HIV p7阻害剤、マイケルアミン(michellamine)A,B及びFを非制限的に含む。
【0049】
本発明の第1の好ましい態様の記載
第1の好ましい態様において、当該反応基は、R1−R2であって、そして以下の式:B−R1−R2−M(I)のような化合物の式において配向される。この場合、当該MはR2と共に放出され、そして当該結合要素BはR1の結合を介してウイルス標的に共有結合したままとなる。当該結合要素の本質は、ウイルス標的の少なくとも1つの特異的活性を調節するためのものである。この態様の例を以下に提供する。
【0050】
第1の好ましい態様の適用は、ウイルス感染を遮断、低下又は妨害するために見出される。そのような場合に、当該ウイルス標的はウイルスであり、そして当該結合要素は、そのウイルスに対する、例えば、gp41に対する結合親和性領域を有する。gp41関連ウイルスのための結合要素及びそれらの類似体の例は、下記の表1に示される。そのような領域を結合すること、及び化合物の反応基を用いてそのような領域と共有結合したままでいることにより、ウイルス侵入過程及び膜融合過程は妨害され、そしてHIV感染は恒久的に阻害される。これは、固有の解離定数(Kd)に従ってそれらの結合領域から分離する非共有結合要素と異なる。それらは、酵素的分解、及び腎臓を介する血しょうクリアランスに供される。それらの抗ウイルス活性は、変化するウイルス活性によるウイルス抵抗性の発生、並びに化合物に生体内濃縮の変動に少なくとも部分的に起因して時間とともに衰える。これらの結合要素は、侵入、さらに具体的に言うと、非感染細胞へのHIVの浸透に関与する、細胞膜融合過程に関するgp41糖蛋白質の領域に結合するために選択的であることが見出される。当該化合物のこの作用機構は、他のウイルスの細胞感染過程を阻害することに適用され得、当該他のウイルスとは、例えば、非制限的に、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、エボラウイルス、デング熱ウイルス、風疹ウイルス、エプスタインバーウイルス、肝炎ウイルス、HTLV−1及び2、セムリキ森林ウイルス(SFV)、はしかウイルス(MeV)である。
【0051】
異なるファミリーからの多くのウイルスは、非常に類似する構造的特徴を伴った融合蛋白質を有することが現在知られている、当該構造的特徴の例は、細胞膜に対して垂直な配向(「スパイク」のような)、アミノ末端の又はアミノ隣接の融合ペプチドの存在、及びアルファへリックスの3本鎖コイルドコイルを構築する特有の融合後ヘアピン構造の形成である。そのような蛋白質は、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、レトロウイルス、及びフィロウイルス中に存在し、クラスIウイルス融合蛋白質に特定される。例えば、gp41の融合活性状態の中心は、インフルエンザ(Bullough,P.A. et al.,(1994)Nature,371,37−43)、モロニーマウス白血病ウイルス(Fass,D.,and Kim,P.S.(1995)Curr.Biol.,5,1377−1383;Fass,D.et al.(1996)Nat.Struct.Biol.,3,465−469)、サル・パラインフルエンザ・ウイルス5(Baker,K.A.et al.,(1999)Mol.Cell.,3,309−319)、エボラウイルス(Malashkevich,V.N.et al.,(1999)Biochemistry,96,2662−2667)、及びサル免疫欠損ウイルス(Caffrey,M.et al.,(1998)EMBO J.,17,4572−4584;Yang,Z.et al.,(1999)J.Struct.Biol.126,131−144;Maleshkevich,V.N.et al.,(1998)Biochemistry,95,9134−9139)由来のエンベロープ融合蛋白質の提案された融合遺伝子構造との類似性を示す。
【0052】
フラビウイルス属、及びアルファウイルス属の融合機構は、完全に異なる構造特徴を有し、それ故、対応する蛋白質は、クラスIIウイルス融合蛋白質に特定されるが、提案された融合機構は、クラスI融合蛋白質と類似する(Bressanelli,S.et al.,(2004)EMBO J.23,728−738;Modis Y.et al.(2004)Nature 427,313−319)。フラビウイルス属は、ペスチウイルス属、及びヘパシウイルス(ヒトC型肝炎ウイルス)属をも含むフラビウイルス科における属を構築する、小さく、20面体のエンベロープを持ったウイルスである。いくつかのフラビウイルス属は、重大な、蚊が媒介する又はダニが媒介するヒト病原菌であり、例えば、黄熱病、デング熱、日本脳炎、西ナイル熱、及びダニ媒介脳炎(TBE)ウイルスである。成熟したウイルス粒子は、3つの蛋白質であって、特定されたC(キャップシド)、E(エンベロープ)、及びM(膜)蛋白質を含む。当該E蛋白質は、当該ウイルス粒子表面の主要な構成要素であり、細胞受容体に結合すること、及びエンドソームにおける低pH誘発膜融合を媒介することの2重機能を有する。ウイルス集合は、小胞体において生じ、そして第1に、E蛋白質がMの前駆体(prM)とヘテロ二量体複合体を形成する融合機能不全の、非成熟ウイルス粒子の産生を導く。未成熟ウイルス粒子は、細胞のエンドサイトーシス経路を通り輸送され、そして、それらの放出のすぐ前に、prMは、フリン又はトランスゴルジ網における関連プロテアーゼにより開裂され、融合機能を有する成熟感染ウイルス粒子を産生する。
【0053】
【表1】

【0054】
HIV−1ウイルスに対する抗ウイルス薬の使用の場合、T−20(配列番号1)と呼ばれる既知のウイルス融合阻害剤が使用され得る。当該ウイルス標的は、T20(配列番号1)に対する高い結合親和力を有することが知られているHIV−1ウイルスのエンベロープ蛋白質gp41、又は感染細胞表面上に発現されるgp41である。当該ウイルス標的上の反応官能基は、T−20/gp41結合部位の近傍に位置するリジン残基のイプシロンアミンであって、例えば、gp41膜透過ドメイン又はその周辺におけるC7反復でのgp41におけるN7反復対応T−20配列である。ウイルス性エンベロープ蛋白質を有するT−20の結合に関して、及びもし当該分子距離が適当であれば、当該反応基は、官能反応基と反応し、当該結合要素を標的分子に結合する共有ペプチド結合を産生する。その標的結合部位に対するT−20(配列番号1)の共有結合は、当該分子の融合事象を永続的に生ずるように妨害し、それ故、当該ウイルスが当該非感染細胞を感染することを妨害する。
【0055】
天然C34(配列番号5)のペプチド類似体も、本発明に関して含まれる。かかる類似体は、Xとして下記の式(IV)において特定された位置に天然ペプチドの1又は複数のアミノ酸変異を含み、それは、6へリックス束構造の間に、これらの残基が、暴露されそしてN36との結合に関与しない溶媒であることに基づく。(Akira Otaka et al.,Angrew.Chem.Int.Ed.2002,41,No.16,2937−2940)。従って、いくつかのアミノ酸は、N36と当該類似体ペプチドの結合親和力に影響を与えることなしに、これらの位置の1又は複数で置換され得る。好ましい類似体は、1つのリジンのみを含み、そして、かかるリジン残基は、以下の式(IV)における1、4、5、8、11、12、15、18、19、22、25、26、29、32、及び33の位置番号でいくつかのアミノ酸残基を置換し、R1−R2−Mで化学的に修飾されることを可能とする1つの反応群(すなわち、置換されたフェニル)を創造する。かかるリジン残基の好ましい位置は、1、5、及び8の位置であり、最も好ましくは5の位置である。さらに好ましくは、C34の天然配列中の位置28でのリジン残基は、アルギニンの如きより低い反応性アミノ酸により置換される。
【0056】
【化1】

【0057】
好ましくは、ペプチド類似体は、1つのアセチルを有するそれらのN末端で、又は少なくとも1つのシステイン酸(1、2又はそれ以上)で修飾され、それらの溶解性を増大する。
【0058】
表2は、結合要素が配列番号1である本発明の化合物を示す。
【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

【0064】
【表7】

【0065】
【表8】

【0066】
【表9】

【0067】
【表10】

【0068】
【表11】

【0069】
先に述べたように、リンカーは、当該化合物の構造に依存してBとR1との間又はMとR1との間に追加され得、当該化合物と当該標的分子との間の反応を促進する。通常、リンカーは、長さ約1〜20原子のものであって、当該原子は、炭素、窒素、酸素、硫黄、リンなどとなり得る。
【0070】
当該リンカーは、一般的には、約2〜16炭素原子、より一般的には約1〜25炭素原子のアルキレン基;アルキレン基が2〜3原子のものであって約1〜8構成単位、好ましくは1〜6構成単位を有するポリアルキレン基;アルファ及びオメガアミノ酸、又は約1〜8アミノ酸、好ましくは1〜6アミノ酸を有するオリゴヌクレオチオドを含むアミノ酸となり得、ここで当該アミノ酸は、極性又は非極性、荷電又は非荷電、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式、天然に生じた又は合成の、右旋性(D)又は左旋性(L)となり得る。本発明において、好ましくは、当該リンカーは、式−NH−(CH−C(0)−を有し、ここでnは1〜25の整数であり、さらに好ましくは、当該リンカーは、−NH−(CH−C(0)−、及び−NH−CH−C(0)−から選択される。
【0071】
この目的に好適なリンカーの例が表3に示されるが、それは例証目的のためだけであり、本出願において企図されるリンカーの範囲を限定するように理解すべきではない。
【0072】
【表12】

【0073】
設計目的として、当該化合物の設計のために既存のカルボキシル基を使用しないように選択され得る。この場合、かかる変異が当該結合要素の結合能を低減/変化しない位置で、新たな残基の削除/追加を実施することが適し得る。配列番号2を使用する、かかる変換の例を以下に示す。似たような変換は、当業者が理解するように、当該ペプチド上のどこでも実施され得る。
【0074】
【化2】

【0075】
表4は、本発明の化合物を示し、ここで、当該結合要素は、ウイルス融合の他の阻害剤である配列番号3及び配列番号4から選択される配列を有する。
【表13】

【0076】
場合により、Mは、治療薬を含む成分である。それ故、当該治療薬の効果は、当該結合要素の不活性作用に加えて作用する。好ましくは、当該治療薬は、抗ウイルス治療に有用であり、さらに好ましくは、抗HIV治療に有用であり、そして、非制限的に、薬物、プロテアーゼ阻害剤、抗増殖剤、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、抗ウイルス剤、ウイルス侵入阻害剤又は抗融合化剤となり得る。
【0077】
本発明の2番目に好ましい態様の記載
2番目に好ましい態様について、当該反応基は、R1−R2であり、そして、B−R2−R1−Mのような化合物の式中に配置される。この場合、当該結合要素Bは、R2と共に放出され、そしてMはR1の結合を介して当該標的と共有結合したままである。Mは成分であり、当該成分の本質は、当該標的の少なくとも1つの特異的活性を調節するようなものである。当該成分は、好ましくは、蛋白質(内因性の、ゲノムの又は組み換え型の蛋白質)(すなわち、組み換え血清蛋白質)、分子、粒子、ポリマー、リポソーム、及び細胞からなる群より選択される増量剤を含む。例えば、当該成分は、アルブミンとなり得る。
【0078】
第2の好ましい態様の出願は、ウイルス感染を遮断、低減、及び防止するために有用であることがわかっている。本出願において、当該標的は、ウイルスであり、そして当該化合物は、当該ウイルスのgp41糖蛋白質又はgp41糖蛋白質類似体の領域に対する結合親和力を有する結合要素を含む。当該ウイルスがHIVであるとき、かかる結合要素は好ましくは表1に示されるものである。例えば、非制限的に、SIV、RSV、HPV(HPIV)、MeVである他のウイルスのウイルス感染活性は、本発明の第2の好ましい態様における化合物により止められ、防止され得ることが理解されるべきである。この場合、Mは、好ましくは、細胞膜融合過程に干渉することにより、ウイルスの細胞感染活性を遮断、又は低減するような性質を有する成分である。好ましくは、当該成分の大きさは、gp41糖蛋白質又はその類似体のフォールディングに物理的に干渉し、細胞膜融合過程を阻害する。
【実施例】
【0079】
実施例1
cap化合物の一般的製造手順
DMF(1mL)中のペプチド(20mg)を、4−メチルモルホリン(20μL)の存在下、室温で4時間、活性化ペンタフルオロフェニル(pFP)エステルと反応させた。当該反応を、AcOHの添加により急冷し、次いで、20mLまで水で希釈した。当該水溶液を、半分取HPLC(Phenomenex luna,RP−18,10μ フェニル−ヘキシル 250×21.2mmカラム、9.5mLフラクションの回収で流速9.5mL/分。120分超に渡り、水(0.1%TFA)中において30から60%へのアセトニトリル(0.1%TFA)の勾配を使用した。)に投入し、対応するcapペプチドを得た。当該精製画分を合わせ、そして凍結乾燥し、白色粉を得た。
【0080】
リンカー合成
当該置換フェノールを、ジクロロメタン中Et3N(2当量)の存在下、グルタル酸無水物(1.5当量)と反応させた。当該対応する酸を、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、当該グルタル酸のフェノールエステルを得た。
【0081】
当該酸を、ジクロロメタン中、16時間、ペンタフルオロフェニル(2.2当量)及びEDC(2.2当量)の反応により活性化した。当該活性化ペンタフェニルエステルをフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、固形物又は油を得た。
【0082】
【化3】

【0083】
当該長リンカー型を、NMMの存在下、上記製造された活性化エステルとDMF中の8−アミノオクタン酸のカップリングにより生成した。当該酸を、ペンタフルオロフェニル及びEDCと反応させ、フラッシュクロマトグラフィー後、対応するpFPエステルを得た。
【0084】
実施例2
HIV−1株IIIBを使用した抗ウイルス薬の活性を分析するためのIC−50の測定
試薬
当該試験は、1薬物あたり6つの濃度以上、1薬物濃度あたり2穴で、1穴あたり500,000個のPHA刺激されたCBMC(さい帯血単球)を有する96穴プレートにおいて実施される。使用した培地は、10%FBS、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、グルタミン(2mM)、ヒドロコルチゾン(5μg/ml)、及びIL−2(20U/ml)を伴ったRPMI 1640である。
【0085】
薬物生成
対照薬物ストックは、天然化合物又は反応化合物に2mlの緩衝液を添加することにより生成される。当該ストックは、−20セ氏温度で保存される。当該薬物濃度を、ConjuChem Inc.により決定した。
【0086】
【化4】

【0087】
細胞感染に先立つ当該化合物の添加
標的細胞は、37セ氏温度で30〜60分間、異なる化合物濃度で培養され、その後、ウイルス(感染の多重度(MOI)=0.1〜1.0)が添加される。プレーティング後、標的細胞は、計7日間の間、異なる濃度の阻害剤の存在下に置かれる。
3〜4日の培養後、各化合物が補充される。
逆転写酵素アッセイを使用して、IC50を測定する。
CC50(細胞毒性濃度)も全化合物に対して評価される。
3TCは、対照阻害剤として使用される。
【0088】
RT結果(cpm)(7日)
【表14】

【0089】
配列番号93のC34(Asp5の位置)のペプチド配列内への(リンカー−R1−R2−M)の化学的挿入後、C34天然(非共有)型(配列番号32)と比較すると抗HIV活性における低下は本質的に観察されない。それ故、配列番号32内に見出される結合要素(B)は、当該ウイルス標的と直接接触することが知られるアミノ酸残基(すなわち、HIV−1のgp41のN−7反復)上の化学的挿入にもかかわらず、天然C34(配列番号93)とウイルス標的に結合することに同程度の有用性である。
【0090】
HPLC
【化5】

【0091】
リン酸緩衝液中の反応
・2mMの各C34は、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7)中に作成した。
・10mMの天然N36は95%ETOH中に作成した→50mMのTris(pH10.7)+19%のETOH中において2mMに希釈した。
・37℃で、0.2mMのDAC:C34+50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7)中の0.2mMのN36+1.9%のETOH。
・HPLC又はLC/MSにペプチド溶液の10μlを注入。
【0092】
50/50リン酸緩衝液+EtOH中の反応
・2mMの各C34は、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7)中に作成した。
・天然N36は95%ETOH中に2mMで作成した。
・37℃で、0.2mMのC34+50%ETOH/50%リン酸ナトリウム緩衝液(pH7)中、0.2mMのN36。
・HPLC又はLC/MSにペプチド溶液の10μlを注入。
【0093】
結果は、図1〜4に示す。結合親和力を摂動しないことに加えて、C34の位置5(すなわち、位置5でのアスパラギン酸)で反応成分の挿入は、N36ペプチドの単独リジン残基特異的共有結合を形成する。
【0094】
PAGE
室温で1時間培養後、少なくとも20マイクログラムの総N36/C34ペプチド混合物を各穴に充填し、ネイティブポリアクリルアミドゲル電気泳動(17.5%アクリルアミド)を使用して分離し、クマシーブリリアントブルーを使用して染色した。SDS−PAGEとは違って、ネイティブ−PAGEは、3つのC34ペプチドにより囲まれた3つの中心N36ペプチドからなる約28kDaの6へリックス束の構造を視覚化することが可能である。この構造及び他のウイルス間のその類似体の形成は、その後の膜融合事象に極めて重要である。
【0095】
結果を図5に示す。
【0096】
標準生体外試験を使用したとき天然C34(CJC−1646、配列番号93)と同程度有効なHIV−1の逆転写酵素(RT)活性を阻害する酵素配列番号32(CJC−1655)の能力に加えて、ネイティブPAGEは、C34の天然(未反応性)型(CJC−1560、配列番号5、及びCJC−1646、配列番号93)と比較して、C34の構造中の多様な位置{すなわち、N末端(CJC−1505及びCJC−1648、配列番号55);D5(CJC−1655、配列番号32);I8(CJC−1656、配列番号59);N9(CJC−1179、N9 Lys(AEEA)−MPAを伴うC34)、及びK35(CJC−1509)}へのリンカー及びR1の挿入がHIV−1のgp41糖蛋白質のN−7反復由来のその標的N36ペプチド(CJC−1592)に結合することからC34を妨げないことを示す。
【0097】
本発明はそれらの特定の態様に関連して記載されるが、さらなる改良が可能であり、本出願は、一般的に、本発明の原則に加えて、本発明のいずれの変更、使用又は適応をも含むことを意図され、本発明の属する分野において知られた又は慣習的な手順に含まれるくらい近いような、及び上記の本質的特徴に適用され得るような、並びに当該添付の請求項の範囲に含まれるような本発明の開示からの出発物の如きものを含むと理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、C34:N36(1655/1722)二量体のHPLCを示す。
【図2】図2は、C34:N36(1655/1723)二量体のHPLCを示す。
【図3】図3は、C34:N36(1646/1722)二量体のHPLCを示す。
【図4】図4は、共有結合N36:C34二量体のLC/MS同定を示す。
【図5】図5は、N36/C34複合体のネイティブPAGEを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
B−R1−R2−M (I)
{式中:
−Bは、ウイルス標的を認識し、かつ、結合するための結合要素であり;
−R1は、前記標的と共有結合を形成するように前記ウイルス標的の官能基と反応するための原子の第1基であり;
R2は原子の第2基であり;ここで、R1及びR2は、R1と前記標的との間の共有結合の形成がR1とR2との間の結合の開裂を生じさせて、R2−Mを遊離させる;そして
−Mは、水素原子、及び医薬として許容される成分からなる群より選択される。}又は、以下の式(II)
B−R2−R1−M (II)
{式中、
−Bは、ウイルス標的を認識し、かつ、結合するための結合要素であり;
−R1は、前記標的と共有結合を形成するように前記標的の官能基と反応するための原子の第1基であり;
−R2は原子の第2基であり;ここで、R1及びR2は、R1と前記標的との間の共有結合の形成がR1とR2との間の結合の開裂を生じさせて、B−R2を遊離させる;そして
−Mは、医薬として許容される成分である。}
を有する抗ウイルス性化合物。
【請求項2】
前記R1が、以下の式(III):
X−C(Y) (III)
{式中、
Xは存在しないか、又はアルキル基、及び置換又は非置換フェニル基からなる群より選択され、;
Yは、水素原子、硫黄原子、酸素原子、及び窒素原子からなる群より選択される。}を有する基から選択される、請求項1に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項3】
前記置換フェニル基が、ハロゲン、NO、SONH、SONHF、CF、CCl、CBr、C=N、SOH、COH、CHO、NHR、OH、NHCOCH、OCH、CH、及びCHCHからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を担持する、請求項2に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項4】
R1が、硫黄、酸素、リン、及び窒素からなる群より選択される、請求項1に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項5】
Yが、硫黄、及び酸素からなる群より選択される、請求項2に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項6】
前記R2が、酸素、アセタール、ヘミアセタール、ホスホアセタール、硫黄、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシアミノ誘導体、置換又は非置換フェノキシ、置換又は非置換チオフェノキシ、及び置換又は非置換アミノフェノキシ誘導体からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項7】
前記置換フェノキシ、チオフェノキシ、又はアミノフェノキシ誘導体が、ハロゲン、NO、SONH、SONHF、CF、CCl、CBr、C=N、SOH、COH、CHO、NHR、OH、NHCOCH、OCH、CH、及びCHCHからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を担持する置換フェニル基を含む、請求項6に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項8】
前記R1−R2が、アルキルエステル、アリールエステル、アルキルチオエステル、アリールチオエステル、ホスホエステル、オルトエステル、イミデート、混合無水物、ジスルフィド、アミド、及びチオアミンから選択される官能基を含む、請求項1に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項9】
前記R1がカルボニル基であり、そして前記R2が酸素原子である、請求項1に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項10】
前記ウイルス標的の官能基がNHからなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項11】
前記結合要素が、有機化合物、アミノ酸配列、ペプチド、蛋白質、核酸配列、小分子、それらの模倣剤、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項12】
前記ウイルス標的が、ウイルス、感染細胞の表面上に発現されたウイルス抗原、ウイルス又は感染細胞上の表面受容体のウイルス性抗原に特異的なリガンド、感染細胞表面受容体、ペプチド、感染細胞又はそれらの細胞膜、感染細胞の表面に発現されたウイルス蛋白質、それらの断片又はそれらの特異的領域からなる群より選択される、請求項1に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項13】
前記ウイルスタンパク質がgp41である、請求項12に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項14】
前記特異的領域が、gp−41のN−7反復、及びC−7反復である、請求項12に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項15】
前記ウイルス標的がウイルスである、請求項1に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項16】
前記ウイルスが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1及び2)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、エボラウイルス、デング熱ウイルス、風疹ウイルス、エプスタインバーウイルス、肝炎ウイルス、HTLV−1及び2、セムリキ森林ウイルス(SFV)、はしかウイルス(MeV)、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、及びダニ媒介脳炎(TBE)ウイルスからなる群より選択される、請求項15に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項17】
前記結合要素が、前記ウイルスのgp41糖蛋白質又はそれらの類似体の領域に対する結合親和力を有する、請求項16に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項18】
前記結合要素が、以下の:
【化1】

からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、請求項17に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項19】
前記アミノ酸配列のN末端に、1つのアセチル又は少なくとも1つのシステイン酸をさらに含む、請求項18に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項20】
前記Mが治療薬を含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項21】
前記治療薬が、薬物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗ウイルス剤、ウイルス侵入阻害剤、及び抗融合剤(anti−fusiogenic agent)からなる群より選択される、請求項20に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項22】
前記Bと前記R1との間にリンカーL1をさらに含む、請求項1に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項23】
前記R2と前記Mとの間にリンカーL2をさらに含む、請求項1又は22に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項24】
前記リンカーが1〜20原子の基であり、ここで当該原子は炭素、窒素、酸素、硫黄、及びリンからなる群より選択される、請求項22又は23に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項25】
前記リンカーは、アルキレン基、ポリオキシアルキレン基、アミノ酸、及びオリゴペプチドからなる群より選択される、請求項22又は23に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項26】
前記アルキレン基が、1〜25の炭素原子を含む、請求項25に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項27】
前記アルキレン基が、2〜16の炭素原子を含む、請求項25に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項28】
前記ポリオキシアルキレン基が、2〜3炭素原子のアルキレン基を含み、そして1〜8ユニットを含む、請求項25に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項29】
前記ポリオキシアルキレン基が、2〜3炭素原子のアルキレン基を含み、そして1〜6ユニットを含む、請求項25に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項30】
前記オリゴペプチドが、1〜8のアミノ酸を含む、請求項25に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項31】
前記オリゴペプチドが、1〜6のアミノ酸を含む、請求項25に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項32】
前記リンカーが、式−NH−(CH−C(O)−を有し、ここでnが1〜25で変化する整数である、請求項25に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項33】
前記リンカーが、式−NH−(CH−C(O)−である、請求項25に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項34】
前記リンカーが、式−NH−CH−C(O)−である、請求項25に記載の抗ウイルス性化合物。
【請求項35】
配列番号20〜92からなる群より選択される抗ウイルス性化合物。
【請求項36】
医薬として許容される担体とともに請求項1〜35のいずれか1項に記載の化合物を含む、ウイルス標的の活性を調節するための抗ウイルス性組成物であって;
前記結合要素が、ウイルスの細胞感染の膜融合過程の活性に関わる前記ウイルス標的の領域に対する結合親和力を有し、それにより、前記標的の領域への前記化合物の結合が、前記標的の活性の妨害又は低下をもたらす、前記抗ウイルス性組成物。
【請求項37】
単独で又は医薬として許容される担体とともに、請求項1〜35のいずれか1項に記載の化合物を対象に投与することを含む、前記対象におけるウイルス標的の活性を調節する方法であって;
前記結合要素が、ウイルスの細胞感染の膜融合過程の活性に関わる前記ウイルス標的の領域に対する結合親和力を有し、それにより、前記標的の領域への前記化合物の結合が、前記標的の活性の妨害又は低下をもたらす、前記方法。
【請求項38】
対象の抗ウイルス治療において使用される薬物の製造のための化合物の使用であって、当該化合物が請求項1〜35のいずれか1項に記載の化合物である前記使用。
【請求項39】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1及び2)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、エボラウイルス、デング熱ウイルス、風疹ウイルス、エプスタインバーウイルス、肝炎ウイルス、HTLV−1及び2、セムリキ森林ウイルス(SFV)、はしかウイルス(MeV)、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、及びダニ媒介脳炎(TBE)ウイルスからなる群より選択されるウイルスにより、前記対象が感染している、請求項38に記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2008−505059(P2008−505059A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511802(P2007−511802)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000689
【国際公開番号】WO2005/108418
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(506272840)コンジュシェム バイオテクノロジーズ インコーポレイティド (3)
【Fターム(参考)】