説明

特異的且つ選択的な電場および電磁場の印加を使用した生体細胞における線維芽成長因子−2(FGF−2)遺伝子発現の制御

【解決手段】 骨細胞または他の組織に対して特異的且つ選択的な電場および/または電磁場の静電結合または誘導結合を介して、骨細胞および他の組織における線維芽成長因子−2のmRNAおよび/またはFGF−2タンパク質を制御する方法および装置について記載する。この方法および装置では、罹患または損傷した骨および他の組織の治療を促進するために、骨細胞または他の組織に対して配置された電極または1若しくはそれ以上のコイルまたは他の電場発生デバイスに対して特異的且つ選択的な信号の適用により、特異的且つ選択的な電場および/または電磁場が発生する。遺伝子発現とは、ヒトゲノム(DNA)の特定部位(遺伝子)がmRNAに転写され、次にタンパク質に翻訳される過程の上方制御若しくは下方制御を意味する。本願の方法および装置は、損傷または罹患した骨および他の組織の標的治療のために提供されており、この方法および装置には、FGF−2タンパク質の遺伝子発現を上昇させるために最適化された標的組織において、電場および/または電磁場を発生させる特異的且つ選択的な信号を発生させる工程と、その組織におけるFGF−2タンパク質の遺伝子発現を制御するために前記特異的且つ選択的な信号によって生成される電場に骨および他の組織を露出させる工程とを含むものである。結果として得られた前記方法および装置は、骨粗鬆症、骨減少症、骨壊死、新鮮骨折、骨折の危険性のある骨、癒着不能の骨折、骨欠損症、脊椎固定、および/またはFGF−2タンパク質が関わる他の病態において有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2002年10月8日付け出願の米国特許出願第10/257,126号の一部継続特許出願である2008年2月8日付け出願の米国特許出願第12/028,530号に対して優先権を主張する国際出願であり、前記米国特許出願第10/257,126号は、2001年2月23日付け出願のPCT/US01/05991号の米国国内移行特許出願であって、さらに、前記米国国内移行特許出願は、2000年2月23日付け出願の米国仮特許出願第60/184,491号に対して優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、損傷または罹患した組織および骨を治療するために、特異的且つ選択的な電気信号および電磁信号をコイル、電極、またはその他の電場発生装置に適用することによって生成する電場および電磁場を印加することによって生体細胞における線維芽成長因子−2(fbroblastic growth factor−2:FGF−2)の遺伝子発現を上方制御する方法および前記信号を生成する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な生体組織および生体細胞内に存在すると考えられている生体電気の相互作用および活動は、最も解明が遅れている生理的過程の1つである。しかしながら、特定の組織および細胞の増殖および修復に関わるこのような相互作用および活動に関する研究が近年多数行われてきた。特に、電場および電磁場による刺激、さらに骨、軟骨および様々な成長因子の増殖および修復におけるその効果について多数の研究がなされてきた。研究者等は、このような研究が様々な医学的問題に対する新治療法の発展に有用である可能性があると確信している。
【0004】
線維芽成長因子−2(FGF−2)は、骨生成および維持の促進、すなわち事前骨芽細胞の増殖から、事前骨芽細胞の成熟骨芽細胞への分化、およびその寿命を通して骨芽細胞を維持するための重要な成長因子の1つである。FGF−2が無傷動物の骨生成で有益な同化作用を有することおよび骨粗鬆症の実験モデルで骨量減少を緩和することが示されている(Fromigue,O.,Modrowski,D.,and Marie,P.J:Curr.Pharmaceut.Design,10:2593−2603,2004)。FGF−2(基礎線維成長またはbFGFとも呼ばれる)は骨生成を促し、破骨細胞面を減少させ、さらに卵巣摘除ラットの脛骨の髄腔内に新しいを骨棘を誘導する(Liang H.,Pun S.,and Wronski,T.J.:Endocrinology,140:5780−88,1999)。FGF−2は、骨管壁細胞の転換を骨芽細胞へ誘導することにより、卵巣摘除ラットの骨形成に強い促進効果を有する(Power,R.A.,Iwaniec,U.T.,Magee,K.A.,Mitova−Caneva,N.G.,and Wronski,T.J.:Osteoporosis Int.,15:716−23,2004)。FGF−2は、骨芽前駆細胞を刺激して増殖させ骨芽細胞に分化させることによって骨粗鬆症モデルマウスの最大骨量を増加させ、これにより骨内膜モデリングを促進する(Nagai,H.,Tsukuda,H.,and Mayahara,H.:J.Vet.Med.Sci.,61:869−75,1999)。別の研究では、FGF−2は骨の機械的性質(失敗する最大力および作用(maximum force and work to failure))を改善させ、小動物骨粗鬆症モデルの柵状織(トラベキュラ)の数、厚さ、および結合を増加させる(Yao,W.,Hadi,T.,Jiang,Y.,Lotz,J.,Wronski,T.J.,and Lane,N.E.:Osteoporosis Int.,16:1939−47,2005)。
【0005】
このようにFGF−2の上方制御は一般に、鉱物質が失われ骨が異常に希薄化する骨粗鬆症として周知の疾患の治療にも有用である可能性がある。骨は細胞と基質からなる有機成分および無機若しくは鉱物成分を含有する。前記細胞および基質は、骨に硬性を付与するリン酸カルシウム(85%)および炭酸カルシウム(10%)の鉱物成分が含浸した膠原線維の骨格で構成される。健康な骨では骨形成と骨吸収が平衡状態にある。骨粗鬆症では骨吸収が骨形成を上回ることによって骨が脆弱化し、椎体が骨折したり圧潰することがある。骨粗鬆症は高齢者の疾患と考えられているが、ある種の骨粗鬆症は骨が機能的ストレスを受けにくい全年齢層の人々を侵す可能性がある。そのような場合、長期の固定期間中に患者の皮質骨および海綿骨が著しく失われる可能性がある。高齢患者では骨折後の固定化時における廃用により骨量が減少することが知られており、そのような骨量の減少は、最終的にすでに骨粗鬆症状態にある骨格における二次骨折を引起す可能性がある。骨密度の減少は椎骨の圧潰を引起すのみならず、股関節、前腕、手関節、足関節の骨折および耐え難い痛みを引起す可能性がある。これらの疾患に対しては、代替的、非外科的治療が必要である。
【0006】
パルス電磁場(Pulsed electromagnetic fields:PEMF)および静電結合(Capacitive coupling:CC)は、1979年に食品医薬品局(Food and Drug Administration)で承認されて以来、治癒不能の骨折(癒着不能)を治療および骨折治癒機転に関連する問題を処理するために広範囲に使用されてきた。この治療形式の治験の当初の基準は、骨に物理的な圧力をかけると機械的なひずみに伴って僅かな電流を引き起こし、その電流が、前記物理的圧力を骨形成を促進する信号に変換する発症機序であると考えられるという観察結果に基づいていた。癒着不能の治療において成功を収めた直接的電場刺激と同様に、PEMFおよび静電結合を使用した非侵襲的な技術(治療域の皮膚上に電極を配置するもの)もまた効果的であることが認められた。PEMFsは、伝導率の高い細胞外液に小誘導電流(ファラデー電流)を誘導し、一方、静電結合は前記組織に直接電流を生じさせるものである。それにより、PEMFsおよびCC双方とも内因性電流を擬態する。
【0007】
内因性電流は、当初骨内の結晶表面に起こる現象に起因すると考えられていたが、主に、陰性の固定電荷を有する有機成分を含有し、いわゆる「流動電位」を生成する、骨管内の電解質を含む液体の運動によって生じることが明らかになった。骨内における電気現象に関する研究は、骨を機械的に圧迫することにより、骨細胞の表面の陰性の固定電荷の表面上に液体運動および電解質が生じる際に起こることにより、流動電位を生成する機械−電気変換メカニズムを実証した。このような流動電位は、骨内で一定の目的を果たし、機械的な緊張と同様に、石灰化可能な基質における骨細胞の合成を刺激することが可能なシグナル伝達をもたらし、これにより骨形成が促進される。
【0008】
直流、静電結合およびPEMFsは主に整形外科で癒着不能の骨折治癒に応用されてきた(Brightonら、J.Bone Joint Surg.、63:2〜13、1981年、BrightonおよびPollack、J.Bone Joint Surg.、67:577〜585、1985年、Bassettら、Crit.Rev.Biomed.Eng.、17:451〜529、1989年、Bassettら、J.Am.Med.Assoc.247:623〜628、1982年)。成人における股関節の虚血壊死、および小児におけるレッグパーセス病(Legg−Perthes's disease)での臨床効果が報告されてきた(Bassettら、Clin.Orthop.246:172〜176、1989年、Aaronら、Clin.Orthop.249:209〜218、1989年、Harrisonら、J.Pediatr.Orthop.4:579〜584、1984年)。また、PEMFs(Mooney、Spine、15:708〜712、1990年)および静電結合(Goodwin、Brightonら、Spine、24:1349〜1356、1999年)が、腰椎部癒着の成功率を有意に高める可能性があることも示されている。さらに、末梢神経再生の増加およびその機能の増強、および血管形成の促進も報告されている(Bassett Bioessays 6:36〜42、1987年)。ステロイド注射および他の通常の措置に反応しない、持続性回旋筋腱板腱炎患者は、プラセボで治療を受けた患者と比べて有意に有益性を示した(Binderら、Lancet 695〜698、1984年)。最後に、Brightonらは、ラットにおいて、適切な静電結合の電場が、腰椎における椎骨骨粗鬆症を予防し、さらに好転させる能力があることを示した(Brightonら、J.Orthop.Res.6:676〜684、1988年、Brightonら、J.Bone Joint Surg.、71:228〜236、1989年)。
【0009】
この分野の研究は刺激が組織および細胞に与える影響に着目してきた。例えば、直流は細胞膜を透過しないこと、および細胞外基質の分化を介して調整が行われることが推測されてきた(Grodzinsky、Crit.Rev.Biomed.Eng.9:133〜199,1983年)。また、直流とは対照的に、PEMFsは、細胞膜を透過することが可能で、且つ、同細胞膜を刺激するか、細胞内器官に直接影響を与えるかのいずれかが可能であることが報告された。PEMFsが細胞外基質および生体内軟骨内骨化に与える効果についての試験では、軟骨分子の合成の増加および骨梁の成熟が認められた(Aaronら、J.Bone Miner.Res.4:227〜233、1989年)。さらに最近では、Lorichら(Clin.Orthop.Related Res.350:246〜256,1989年)、およびBrightonら(J.Bone Joint Surg.、83−A、1514−1523、2001年)は、静電結合型の電気信号のシグナル伝達は、電位依存性のカルシウムチャネルを介して行われるが、PEMFsまたは複合電磁場のシグナル伝達は、細胞内に貯蔵されているカルシウムの放出を介して行われる。3つのタイプの電気刺激全てにおいて、細胞質のカルシウムが増加し、さらに(細胞骨格の)カルモジュリンの活性化を促すことを報告した。
【0010】
1996年に本発明者らは、環状二軸で0.17%の機械的緊張によって、Cooperディッシュ中で培養したMC3T3−E1骨細胞中のFGF−2 mRNAが有意に増加することを報告した(Brightonら、Biochem.Biophys.Res.Commun.229:449〜453,1996年)。1997年には、重要な追研究がいくつか行われた。1研究においては、同一の環状二軸で0.17%の機械的緊張によって、類似骨細胞中のPDGF−A mRNAがクーパーディッシュ(Cooper dish)中で有意に増加したことが報告された(Brightonら、Biochem.Biophys.Res.Commun.43:339〜346,1997年)。また、60kHzで20mV/cmの静電結合型電場によって、クーパーディッシュ中で類似骨細胞中のFGF−2が有意に増加したことも報告された(Brightonら、Biochem.Biophys.Res.Commun.237:225〜229、1997年)。また、軟骨細胞基質遺伝子およびタンパク質が特異的且つ選択的な電場によて上方制御できることが報告されている(Wang,W.,Wang,Z.,Zhang,G.,Clark,C.C.,and Brighton,C.T.,Clin.Orthp.and Related Res.,427S:S163−173,2004;Brighton,C.T.,Wang,W.,and Clark,CC,Biochem.Biophys.Res.Commun.,342:556−561,2006)。さらに、骨形成タンパク質(BMPs)の遺伝子発現が、関節軟骨ための特異的且つ選択的な様々な信号形態による電場と異なる特異的且つ選択的な電場によって上方制御できることも示されている(Wang,Z.,Clark,C.C.and Brighton,C.T.,J.Bone Joint Surg.,88:1053−1065,2006)。
【0011】
「Regulation of Genes Via Application of Specific and Selective Electrical and Electromagnetic Signals(特異的且つ選択的な電気信号および電磁信号の印加による遺伝子制御)」と題する上述の親特許出願では、罹患組織、または損傷組織の標的遺伝子を制御することを目的する電場を発生させるために使用される前記特異的且つ選択的な電気信号および電磁信号の決定方法を開示している。本発明は、骨粗鬆症、骨減少症、骨壊死、骨欠損症、新鮮骨折、骨折の危険性のある骨、遷延治癒骨折、癒着不能、骨欠損症の治療、および脊椎固定術の補助療法において、特異的且つ選択的な電気信号および電磁信号によって生成される電場の印加を介して標的遺伝子ファミリーの発現、すなわち、線維芽成長因子−2(FGF−2)遺伝子の発現を制御する方法を説明することにより、前記親出願で記載された技術をさらに発展させるものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、興味のある骨または組織細胞に隣接したコイル、電極、またはその他の電場発生装置に印加される特異的且つ選択的な電気信号および/または電磁信号によって生成される特異的且つ選択的な電場および/または電磁場を印加することにより、骨細胞における線維芽成長因子−2(FGF−2)(一例として)の遺伝子発現の制御に関する。信号の継続時間、振幅、周波数、およびデューティサイクルに関する連続的用量反応曲線を作成し、生じる電場の作用を測定することにより、骨細胞におけるFGF−2のmRNAを上方制御するための最適な信号を発見した。前記最適な信号により、20〜40mV/cmの振幅、24時間の継続時間、60kHzの周波数、および50〜100%のデューティサイクルを伴う静電結合型電場が生成された。本発明は、より具体的には、このような信号によって生成される電場を印加することにより、骨細胞におけるFGF−2の遺伝子発現を上方制御する工程に関する。
【0013】
本発明の典型的な実施形態において、静電結合型電場、電磁場、または複合場を用いて、遺伝子発現(FGF−2のmRNAによって測定)を特定的および選択的に上方制御する方法を提供する。FGF−2の遺伝子発現を上方制御する、約24時間の電場継続時間、60kHzの周波数、50%〜100%のデューティサイクル、および正弦波形を伴う約20〜40mV/cmの静電結合型電場で骨粗鬆症、骨減少症、骨壊死、新鮮骨折、骨折の危険性のある骨、遷延治癒骨折、癒着不能の骨折、骨欠損症を、および脊椎固定術の補助療法として、治療する。本発明の方法によると、「特異的且つ選択的な」信号は、振幅、継続時間、デューティサイクル、周波数、および波形に一定の特性を有し、FGF−2の遺伝子発現を上方制御する信号である(特定性)。これにより、FGF−2の遺伝子発現を上方制御するための異なる信号を選択し、ある特定の生物学的反応または治療効果を達成することが可能になる(選択性)。さらに、本発明は、本明細書で説明する方法を用いた装置に関し、この装置は、前記FGF−2の遺伝子発現を上方制御する電場および/または電磁場を発生させる特異的且つ選択的な信号を生成するものである。
【0014】
関連態様において、本発明は、骨粗鬆症、骨減少症、骨壊死、新鮮骨折、骨折の危険性のある骨、遷延治癒骨折、癒着不能の骨折、骨欠損症、脊椎固定、骨壊死を治療するための方法および装置に関し、当該方法および装置は、上記のうちの1若しくはそれ以上の病態の治療における脊椎固定術および他の治療法の補助療法としての方法および装置である。また、本発明の前記方法は、FGF−2の細胞産生を増加させるとして知られている、若しくは増加させると推測される開始信号の継続時間を体系的に変化させることにより、FGF−2の遺伝子発現のための「特異的且つ選択的な」信号を決定する方法を含む。最適な継続時間を決定後、前記信号の振幅を、FGF−2の遺伝子発現に基づいて決定された最適な継続時間の間変化させる。同様の用量反応法で前記デューティサイクル、周波数、および波形を体系的に変化させ、それと同時に他の信号特性を一定にする。前記FGF−2の発現を最大限に上昇させる最適な信号が決定されるまで、この工程を繰り返す。
【0015】
本発明について上述した点および他の点については、以下の発明の詳細な説明において明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、骨細胞が様々な静電結合型電場振幅に露出された場合の、FGF−2のmRNA発現をグラフで示したものである。図示したように、前記様々なFGF−2のmRNAの最大発現は、信号が20mV/cm 〜 40mv/cmの場合に起った。
【図2】図2は、骨細胞が様々な継続時間の間20mV/cmの振幅で静電結合型電場に露出された場合の、FGF−2のmRNA発現をグラフで示したものである。図示したように、FGF−2のmRNAの最大発現は、継続時間が24時間の場合に起った。
【図3】図3は、骨細胞が、電場振幅が20mV/cmで、信号継続時間が24時間である、様々な静電結合型電場の周波数に露出された場合の、FGF−2のmRNA発現をグラフで示したものである。図示したように、FGF−2のmRNAの最大発現は、周波数が60kHzの場合に起った。
【図4】図4は、骨細胞が、周波数が60kHz、電場振幅が20mV/cm、信号継続時間が24時間である、様々な静電結合型電場のデューティサイクルに露出された場合の、FGF−2のmRNA発現をグラフで示したものである。図示したように、FGF−2のmRNAの最大発現は、デューティサイクルが50〜100%で正弦波の場合に起った。
【図5】図5は、骨細胞が、電場振幅が10〜40mV/cm、周波数が60kHz、正弦波形状であり、50%のデューティサイクルの静電結合型電場に露出された場合の、FGF−2タンパク質産生をグラフで示したものである。図示したように、FGF−2タンパク質の増加量は20mV/cm 〜 40mV/cmのいずれによっても同じであった。
【図6】図6は、本発明の例示的な適用に従った、例えば、膝の骨粗鬆症の治療のための装置を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜6を参照しながら、以下に本発明を詳細に説明する。前記図面に関する本明細書の記載は、例示的な目的のみを意図しており、いかなる点においても、本発明の範囲を制限することを意図しないことは、当業者であれば理解するものである。本発明の範囲に関する質問はすべて、添付の特許請求の範囲を参照することにより解決されうる。
【0018】
本発明は、遺伝子の近辺に配置されたコイル、電極、またはその他の電場発生装置を印加する特異的且つ選択的な電気信号および/または電磁信号を適用することにより、特定の遺伝子発現を制御することが可能であるという発見に基づいている。すなわち、本発明者らは、骨、軟骨および他の組織細胞における各遺伝子を制御するための電場を生成する特定の電気信号および/または電磁信号があり、このような特定の信号によって、前記細胞における遺伝子を特定的および選択的に制御することが可能になることを発見したものである。特に、組織または細胞の増殖、維持、修復、および変性または変質を支配する遺伝子発現は、本発明に従って、電場発生装置への特異的且つ選択的な電気信号および/または電磁信号の適用によって生成される電場を印加することにより制御することが可能であり、その結果、有益な臨床効果を得ることができる。このような発見は、骨粗鬆症、骨減少症、骨壊死、新鮮骨折、骨折の危険性のある骨、遷延治癒骨折、癒着不能の骨折、骨欠損症、脊椎固定を含むある特定の病状を標的とする治療法の開発において、上記の病状のうちのいずれか1若しくはそれ以上の病態の治療における補助療法として有益である。
【0019】
本明細書では、用語「信号」は、装置によって出力される、機械的信号、超音波信号、電磁信号および電気信号を含む様々な信号に言及するために使用される。本明細書での用語「電場」は、複合場、パルス電磁場、または直流、静電結合、または誘導結合によって生成された電場のいずれかに関わらず、標的組織内の電場に言及することが理解されるものである。
【0020】
用語「遠隔」は、距離を置いた場所から作用する、作用を受ける、または制御されることを意味するために使用される。「遠隔的に」提供することは、距離を置いた場所から提供することを指す。例えば、遠隔電源から特異的且つ選択的な信号を提供することは、組織または細胞から距離を置いた電源から、若しくは身体の外部または身体外側の電源から信号を提供することを指す。
【0021】
用語「特異的且つ選択的な」信号は、一定の特質の振幅、継続時間、デューティサイクル、周波数および波形を有し、標的遺伝子または補足遺伝子の標的機能を上方制御若しくは下方制御する電場を発生させる信号を意味する(特定性)。これにより、様々な遺伝子発現を上方制御若しくは下方制御するための異なる「特異的且つ選択的な」信号を選択し、ある特定の生物学的反応または治療効果を達成することが可能になる(選択性)。
【0022】
用語「制御する」は、遺伝子発現を制御することを意味する。「制御する」には、上方制御および下方制御の両方が含まれる。上方制御は遺伝子発現の上昇を意味し、また下方制御は遺伝子発現を抑制、若しくは阻止することを意味する。
【0023】
「機能的に相補的」は、ある特定の細胞または組織において、発現が相補的または相乗的である2若しくはそれ以上の遺伝子を指す。
【0024】
「組織」は、患者の構造物質の1つを形成する細胞外物質を伴う細胞の集合体を指す。本明細書では、用語「組織」は、筋肉および臓器組織、腫瘍組織、さらに骨組織または軟骨組織など身体のすべての組織を含むことを意図する。また、本明細書では、用語「組織」は、個別細胞を指す場合もある。
【0025】
「患者」は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。
【0026】
本発明は、特定の組織、細胞または疾患を標的とする治療方法および装置を提供するものである。特に、損傷または罹患した組織または細胞における修復過程に関連する遺伝子発現は、特異的且つ選択的な電気信号によって生成される電場を該標的組織または細胞における被制御遺伝子に対して印加することにより、制御することが可能である。遺伝子発現は、各遺伝子または補足遺伝子の各集合のための特異的且つ選択的な信号を印加することによって、上方制御若しくは下方制御することが可能であり、その結果有益な臨床効果を得ることができる。例えば、ある固有の特定および選択的な信号は、特定の望ましい遺伝子発現を上方制御する電場を生成し、一方、同一の、または別の固有の特定および選択的な信号は特定の望ましくない遺伝子発現を下方制御する電場を生成する場合もある。ある特定の遺伝子は、ある固有の特定および選択的な信号によって生成される電場により上方制御され、また、別の特異的且つ選択的な信号によって生成さる電場により下方制御される可能性もある。当業者であれば、組織の増殖、維持、修復、および変性または変質を支配する遺伝子を制御することにより、ある特定の罹患または損傷した組織を治療標的とすることが可能であることを理解するものである。
【0027】
本発明の方法および装置は、ある特定の標的罹患組織および損傷組織に関連する遺伝子発現のための特異的且つ選択的な電場を生成する信号を同定することに基づいている。例えば、様々な形態で印加される電場(例えば、静電結合、誘導結合、または複合場)は、各選択遺伝子に対する印加電場の生成のための電場発生装置に印加する信号の周波数、振幅、波形またはデューティサイクルを変化させることにより、患者の身体の標的組織または細胞における遺伝子発現を特定的および選択的に制御することが可能である。また、電場に対する露出継続時間も、この電場が患者の身体の標的組織または細胞における遺伝子発現を特定的および選択的に制御する能力に影響を及ぼす。遺伝子発現に対して望ましい効果を提供する周波数、振幅、波形、デューティサイクルおよび継続時間の組み合わせが検出されるまで、特異的且つ選択的な信号によって、各遺伝子に対して印加電場を生成する。
【0028】
ある特定の遺伝子発現のための電場の特定性および選択性は、複数の要因から影響を受ける可能性があるため、様々な罹患組織または損傷組織、若しくは病状を治療標的とすることが可能であることが理解されるものである。特に、ある特定の遺伝子発現のための、適切な周波数、振幅、波形、および/またはデューティサイクルを有する電気信号から生成される電場は特定的および選択的であるため、標的治療を提供することが可能である。また、時間的要因(例えば、電場に対する露出継続時間)も、ある特定の遺伝子発現のための電場の特定性および選択性に影響を与える。遺伝子発現の制御は、一定の継続時間の間電場を印加することによってより効果的(若しくは可能)になる場合がある。従って、本発明は、様々な罹患または損傷した、組織若しくは疾患を標的とする治療を提供するために、印加電場を生成する電気信号の周波数、振幅、波形、デューティサイクルおよび/または継続時間を変化させて、ある電場がある特定の遺伝子発現に対して特定的および選択的であることを検出する工程を提供することを、当業者であれば理解するものである。
【0029】
このように、本発明は、適切な継続時間の間、適切な周波数、振幅、波形、および/またはデューティサイクルを有する、特異的且つ選択的な信号によって生成される電場を印加することにより、特定の罹患組織または損傷組織に関連する特定の遺伝子発現を制御することが可能なため、標的治療を提供することができる。従って、電場を生成する信号の特定性および選択性を調整することにより、特定の遺伝子発現を制御して特定の罹患組織または損傷組織、若しくは病状を治療標的とすることが可能である。特に、本発明は、骨粗鬆症、骨減少症、骨壊死、新鮮骨折、骨折の危険性のある骨、癒着不能の骨折、骨欠損症、脊椎固定の標的治療を提供し、前記標的治療は、上記のうちの1若しくは全ての病態の治療法の補助療法としての治療である。
【0030】
本発明の装置では、、電場を患者の罹患または損傷した組織および/または皮膚に直接印加する特異的且つ選択的な電場を生成するための電場発生装置に特異的且つ選択的な信号を適用することが可能である。また、本発明の装置では、特異的且つ選択的な電場を遠隔的に印加する場合もある(例えば、罹患組織または損傷組織から距離を置いた場所で電場を印加しても、標的細胞内には望ましい効果が及ぶ)。但し、静電結合型の装置では被験者の皮膚への接触が必要になることが理解されるものである。静電結合の場合、本発明の装置は、患者の身体の損傷組織または罹患組織の近傍に電極を取着する手段を含む場合もある。例えば、自動接着性の導電性電極を、患者の骨折骨の両側の皮膚上に取着する場合もある。図6で示すように、本発明の装置10は、当該装置を患者の身体に取着するための自動接着性の電極12を具備することもある。例えば、本発明の装置10は、電源装置14に取着された電極を具備し、この電源装置14は、裏面にVELCRO(登録商標)パッチ16を有するため、患者のギプスの周囲に適合するVELCRO(登録商標)ストラップ(図示せず)に当該電源装置14を取着することが可能になる。誘導結合の場合、本発明の装置は、電極の代わりに電源装置に取着されたコイルを具備することもある。また、自動接着性電極は患者の背中に取り付けることができ、この自動接着性電極は脊椎に対して平行に延びるそれぞれの電極を備えた一対の電極を有し、この一対の電極の1つの電極は脊椎の片側に長手方向に配置され、別の電極は脊柱の反対側で長手方向に配置される。この場合、VELCRO(登録商標)パッチは、患者が着ている衣服の一部であってもよい。
【0031】
本発明の装置10は、様々な方法で用いることができる。前記装置10は、携帯用であってもよいし、患者の身体に一時的または永久的に取り付けられていてもよい。本発明の装置10は、非侵襲的であることが好ましい。例えば、予め定められた特異的且つ選択的な電気信号によって生成される電場を印加するために、患者の皮膚に接触するようなっている電極を取着することによって、本発明の装置10が患者の皮膚に取り付けられることもある。また、このような信号は内部に時変電流が流れるコイルを介して印加することも可能であり、前記標的組織を透過して内部に特異的且つ選択的な電磁場を生成する。例えば、前記コイルは、米国特許第7,158,835号に記載されているように、患者の衣服の中に組み込まれて、患者の脊椎および/または腰に近接して置かれるようにしてもよい。また、本発明の装置10を患者に埋め込むことも可能であり、この埋め込みには、患者の骨との直接接触のための皮下埋め込みが含まれる。
【0032】
当業者であれば、本発明の装置を、一対または複数の対の電極、あるいは電磁コイルまたはソレノイドに印加するためのプログラムされた、複数の、切替え可能な、特異的且つ選択的な信号を伴う静電結合型の電源装置を含む様々な形態で提供することが可能であることがさらに理解されるものであり、これらの電極、あるいは電磁コイルまたはソレノイドは、切替え可能な、複数の、特異的且つ選択的な信号を伴う電源装置および特異的且つ選択的な信号を生成するための電源を伴う超音波刺激装置に取着されている。通常、患者の承諾および適応性に基づいて装置の選択が行われる。現行技術において入手可能な最も小型の携帯用装置は静電結合型装置であるが、皮膚が非常に敏感な患者においては、誘導結合型装置を使用することが好ましい場合もある。一方、超音波装置は患者の協力を最も必要とするが、特定の患者によって使用されるのが望ましい場合もある。
【0033】
実施例
本発明は、以下の実施例において実証されるものであるが、この実施例は例示を目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0034】
物質および方法
MC3T3−E1骨細胞(5×10細胞/cm)を、特別改良したCooperディッシュ上で平板培養した。前記細胞を培地で7日間増殖させ、この培地を実験条件を開始する直前に交換した。これらの研究全般における実験用細胞培養は、60kHz、静電結合型の正弦波、44.81Vピーク−ピークの出力を伴う電場の条件下に置いた。前記条件により、前記ディッシュの培地に、電流密度が300μA/cmで20mV/cmの算出電場強度を発生させた。対照細胞培養ディッシュは、電極が関数発生器に接続されていない点を除いては、刺激を受けた細胞培養ディッシュと同一であった。
【0035】
実験の終了時に、製造業者の取扱説明書に従い、TRIzolを使用して全RNAを分離し、SuperScript II逆転写酵素を使用して逆転写(reversed transcription:RT)を行った。リアルタイムのRT−PCR法において使用するオリゴヌクレオチドプライマーを、公開cDNA配列から選択するか、若しくは、Primer Expressソフトウェアプログラムを使用して設計した。ABI Prism(登録商標)7000 Sequence Detection Systemを使用して、RT−PCR産物のリアルタイム定量分析を行った。
【0036】
特にFGF−2遺伝子の望ましい上方制御のための最適な信号を以下のように体系的に検出した。ある特定のタンパク質の細胞産生を増加させる電場を生成することが知られている(若しくは、増加させると推測される)電気信号を、前記特定のタンパク質の遺伝子発現(mRNA)のため電場を標的組織で生成する特定の信号を決定するための開始信号とする。始めに、前記信号の振幅を変化させる一方で、その他全ての信号特性(継続時間、デューティサイクル、周波数、および波形)を一定に保つことにより、用量反応曲線を作成する(図1)。これにより、前記特定のタンパク質の遺伝子発現のための前記開始信号の最適な振幅が決定される。次に、第2の用量反応曲線の作成を行い、今回は、前記標的組織での前記電場の継続時間(単位mV/cm)を変化させる一方で、前記最適な振幅および他の信号特性を一定に保った(図2)。第3の用量反応曲線の作成を行い、今回は、前記信号の周波数を変化させる一方で、上記で検出された最適な振幅および最適な継続時間を一定に保った(図3)。第4の用量反応曲線の作成を行い、デューティサイクルを100%(連続稼動)〜10%若しくはそれ未満に変化させる一方で、上記で検出された最適な、振幅、継続時間、および周波数を一定に保った(図4)。前記方法により、FGF−2の遺伝子発現を最大限に上昇させるために最適な信号が決定される。もちろん、図で証拠として示されたように、他の信号もFGF−2の遺伝子発現を上昇させるように誘発してはいるが、しかし、そのような信号は前記のような最大限の反応を誘発していないので、他の信号はより好ましくないものである。
【0037】
50%のデューティサイクルの連続(信号)(静電結合、20mV/cm、60kHz、正弦波)を用いて第5の実験を行い、FGF−2タンパク質の産生における標的組織での10mV/cm〜20mV/cmの電場と40mV/cmの電場を比較した。示されるように、FGF−2タンパク質は20mV/cmおよび40mV/cmの電場で有意に同等に増加し、10mV/cmの電場では増加しなかった(図5)。
【0038】
前記実施例で説明した最適な電場により、FGF−2のmRNAを非常に有意に上方制御することが可能であり、骨粗鬆症、骨減少症、骨壊死、新鮮骨折、骨折の危険性のある骨、癒着不能、骨欠損症、脊椎固定において、これらの1若しくはいずれかの治療の補助療法として骨形成が促進されることを、本発明は明瞭に示している。本明細書では静電結合を用いた適切な電場を説明したが、誘導結合を用いた場合、さらに、均等または略均等の電場特性を発生させる全電磁システムを用いた場合も同様の効果があることを、当業者であれば理解するものである。また、より多くのデータポイント(例えば、100±3%のデューティサイクルを30±3分間)に関する実験をさらに行うことによって、より固有の信号特性を発見することが可能であるが、各信号特性のこのような僅かな変化は、本明細書の教示を鑑みると、当業者のレベルの範囲内であると確信するものであることも、当業者は理解するであろう。
【0039】
また、当業者であれば、本発明の要旨の範囲内で本発明に対し数多くの他の修正が可能であることも理解するものである。例えば、本明細書で説明した最適な電場は、対になったまたはストリップ状の、あるいは補強材、包帯またはギプスに組み込まれた、2若しくはそれ以上の適切な表面電極を介して任意の骨に印加可能であり、また前記電場は静電結合によって供給することができる。さらに、本明細書で説明した最適な電場は、補強材、包帯またはギプスに組み込まれたコイル(複数可)またはソレノイドを介して任意の骨に印加可能であり、誘導結合によって供給することができる。従って、本発明の範囲は、上述した好適な実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲よってのみ限定されることを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的組織で線維芽成長因子−2(FGF−2のmRNA)またはFGF−2たんぱく質産生の遺伝子発現を上方制御する方法であって、
略60kHzの周波数を有する少なくとも1つの特異的且つ選択的な信号を生成する工程であって、前記標的組織に対して動作可能に配置された電極、1若しくはそれ以上のコイル、またはその他の電場発生装置に印加されたとき、前記標的組織で略20〜40mV/cmの振幅を有する電場および/または電磁場の生成を発生させるものであり、この電場および/または電磁場は、前記標的組織でFGF−2の遺伝子発現を上方制御および/またはFGF−2たんぱく質を上方制御するように特異的且つ選択的であり、前記上方制御は、前記電場が前記FGF−2を含む前記標的組織に印加されたとき、mRNAにより測定されるものである、前記生成する工程と、
前記電極、1若しくはそれ以上のコイル、またはその他の電場発生装置により生成された前記特異的且つ選択的な電場を前記標的組織に露出させる工程であって、24時間周期で略24時間の継続時間、50%〜100%の所定のデューティサイクルで、前記標的組織においてmRNAにより測定されるFGF−2の遺伝子発現を選択的に上方制御し、FGF−2たんぱく質を選択的に上方制御するものである、前記露出させる工程と
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記生成する工程は、前記適用された特異的且つ選択的な信号の振幅、継続時間、デューティサイクル、および波形を選択的に変化させる工程を有し、前記標的組織が結果として得られた前記特異的且つ選択的な電場に露出した結果、前記標的組織においてmRNAにより測定されるFGF−2および/またはFGF−2たんぱく質の遺伝子発現が大幅に上昇するまで行われるものである。

【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記生成する工程は、正弦波形状を有する電気信号を生成する工程を有し、前記標的組織で結果として得られた特異的且つ選択的な電場は略20〜40mV/cmの振幅を有するものである。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記生成する工程は、遠隔電源で前記特異的且つ選択的な信号を生成する工程を有し、前記露出させる工程は、前記特異的且つ選択的な電場を骨組織に印加する工程を有するものである。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、前記露出させる工程は、前記少なくとも1つの特異的且つ選択的な信号の適用により、前記電極、1若しくはそれ以上のコイル、またはその他の電場発生装置により生成された、前記標的組織における前記特異的且つ選択的な電場を静電結合または誘導結合を介して前記標的骨組織へ印加する工程を有するものでる。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、前記電極に適用された前記特異的且つ選択的な信号は、当該電極に静電結合電場を生成させ、前記1若しくはそれ以上のコイルに適用された前記特異的且つ選択的な信号は、当該1若しくはそれ以上のコイルに電磁場または複合場を生成させるものである。
【請求項7】
骨粗鬆症、骨減少症、骨壊死、新鮮骨折、骨折の危険性のある骨、癒着不能、骨欠損症、脊椎固定を含む病態を治療する方法および1若しくはいずれかの前記病態を治療する補助療法としての方法であって、FGF−2のmRNAおよび/またはFGF−2たんぱく質が患者に関係した状態で骨形成を増加させるものである、前記方法は、
略60kHzの周波数を有する少なくとも1つの特異的且つ選択的な信号を生成する工程であって、標的組織に動作可能に配置された電極、1若しくはそれ以上のコイル、またはその他の電場発生装置に前記信号が適用されたとき、前記標的組織で略20〜40mV/cmの振幅を有する電場および/または電磁場を生成させ、前記標的組織において前記FGF−2の遺伝子発現を上方制御および/または前記FGF−2たんぱく質を上方制御するように特異的且つ選択的であり、前記電場が前記FGF−2を含む前記標記的組織に印加されたときにmRNAによって測定されるものである、前記生成する工程と、
前記少なくとも1つの特異的且つ選択的な信号を適用することにより、前記電極、1若しくはそれ以上のコイル、またはその他の電場発生装置により生成された前記特異的且つ選択的な電場に前記標的組織を露出させる工程であって、24時間周期で略24時間の継続時間、50%〜100%の所定のデューティサイクルで、前記標的組織においてmRNAにより測定される前記FGF−2の遺伝子発現を選択的に上方制御するおよび/またはFGF−2たんぱく質を選択的に上方制御するものである、前記露出させる工程と
を有する方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記露出させる工程は、前記特異的且つ選択的な電場を前記標的組織に静電結合または誘導結合させる工程を有するものである。
【請求項9】
請求項7記載の方法において、前記露出させる工程は、前記標的組織に電磁場または複合場のいずれかを印加する工程を有するものである。
【請求項10】
請求項7記載の方法において、前記生成する工程は、正弦波形状を有する電気信号を生成する工程を有し、結果として得られた前記特異的且つ選択的電場が前記標的組織で略20〜40mV/cmの振幅を有するものである。
【請求項11】
請求項7記載の方法において、前記生成する工程は、
任意の電気信号で開始する工程であって、前記電極、1若しくはそれ以上のコイル、またはその他の電場発生装置に当該電気信号を適用したときに、生体細胞に効果的であると知られている若しくは考えられている電場および/または電磁場を生成するものである、前記生成する工程と、
前記最適な継続時間を決定るため、前記電場刺激の継続時間において第1の用量反応曲線を作成する工程と、
最適な振幅を決定するため、既に検出された前記最適な継続時間を使用して、前記適用された電気信号の振幅において第2の用量反応曲線を作成する工程と、
最適な周波数を決定するため、既に検出された前記最適な継続時間および前記最適な振幅を保持する前記適用された電気信号の周波数において第3の用量反応曲線を作成する工程と、
最適なデューティサイクルを決定するため、既に検出された前記最適な継続時間、振幅、および周波数を保持しながら、前記適用された電気信号のデューティーサイクルを変化させて第4の用量反応曲線を作成する工程と、
前記最適な継続時間、振幅、周波数、およびデューティサイクルを一定に保持しながら、mRNAにより測定される前記FGF−2の遺伝子発現の上方制御および前記FGF−2たんぱく質の上方制御のための最適な波形が検出されるまで、当該波形を変化させる工程と
を有するものである。
【請求項12】
FGF−2のmRNAおよび/またはFGF−2たんぱく質が患者に関係された状態で骨粗鬆症、骨減少症、骨壊死、新鮮骨折、骨折の危険性のある骨、癒着不能、骨欠損症、脊椎固定、および/またはその他の病態における骨形成を増加させる治療のための装置、および骨粗鬆症、骨減少症、骨壊死、新鮮骨折、骨折の危険性のある骨、癒着不能の骨折、骨欠損症、脊椎固定の治療における補助療法としての装置であって、
略60kHzの周波数を有する少なくとも1つの特異的且つ選択的な信号を生成する信号発生源であって、この信号発生源は24時間周期で略24時間の継続時間、50%〜100%の所定のデューティサイクルで、前記少なくとも1つの特異的且つ選択的な信号を適用する継続時間の制御および変更を行うものである、前記信号発生源と、
前記信号発生源と接続された電極、1若しくはそれ以上のコイル、またはその他の電場発生装置であって、前記少なくとも1つの特異的且つ選択的な信号を受け取り、標的組織に対して動作可能に配置されているものであり、当該電極、1若しくはそれ以上のコイル、またはその他の電場発生装置が前記少なくとも1つの特異的且つ選択的な信号を受け取ることにより、前記標組織で略20〜40mV/cmの振幅を有する特異的且つ選択的な電場および/または電磁場の生成を発生させ、前記標的組織において前記FGF−2の遺伝子発現を上方制御するおよび/または前記FGF−2たんぱく質を上方制御するように特異的且つ選択的であり、前記電場が前記FGF−2を含む標的組織に印加されるときにmRNAにより測定されるものである、前記電極、1若しくはそれ以上のコイル、またはその他の電場発生装置と
を有する装置。
【請求項13】
請求項12記載の装置において、この装置は、さらに、
前記信号発生源を駆動する携帯用電源装置を有するものである。
【請求項14】
請求項12記載の装置おいて、この装置は、さらに、
前記電場発生装置を患者の体に、その標的骨組織の近傍に取り付けるための手段を有するものである。
【請求項15】
請求項12記載の装置において、この装置は、さらに、
前記信号派生源を患者の体に取り付けるための手段を有するものである。
【請求項16】
請求項12記載の装置において、前記少なくとも1つの特異的且つ選択的な信号を前記電極、コイル、またはその他の電場発生装置に適用することにより発生した前記電場は、静電結合または誘電結合を介して前記標的組織に印加されるものである。
【請求項17】
請求項16記載の装置において、前記特異的且つ選択的な信号は正弦波形状を有するものである。
【請求項18】
FGF−2のmRNAおよび/またはFGF−2たんぱく質が患者に関係された状態で骨粗鬆症、骨減少症、骨壊死、新鮮骨折、骨折の危険性のある骨、癒着不能、骨欠損症、脊椎固定を含む病態を有する患者の骨形成を増加させる方法、および1若しくはいずれかのそのような病態を治療する補助療法としての方法であって、
請求項12記載の装置によって生成された前記特異的且つ選択的な電場に標的骨組織を露出させる工程であって、これにより前記標的骨組織においてmRNAの測定による遺伝子発現を上方制御し、FGF−2たんぱく質を増加せるものである、前記露出させる工程
を有する方法。
【請求項19】
電極、1若しくはそれ以上のコイル、またはその他の電場発生装置が印加されたとき、標的組織においてFGF−2のmRNAおよびFGF−2たんぱく質を上方制御する電場を生成させる特異的且つ選択的な信号を決定する方法であって、
まず最初に、信号形状および周波数を有する開始電気信号を発生させる工程であって、前記電極、1若しくはそれ以上のコイル、またはその他の電場発生装置が印加されたとき、FGF−2のmRNAおよびFGF−2たんぱく質の細胞産生に影響を及ぼすと知られているまたは考えられている電場および/または電磁場を生成するものである、前記発生させる工程と、
FGF−2のmRNAおよびFGF−2たんぱく質の産生において最も有意な増加を提供する継続時間が検出されるまで、前記開始信号を適用する継続時間を選択的に変化させる工程と、
FGF−2のmRNAおよびFGF−2たんぱく質の産生において最も有意な増加を提供する振幅が検出されるまで、前記開始信号の振幅を選択的に変化させる工程と、
FGF−2のmRNAおよびFGF−2たんぱく質の産生において最も有意な増加を提供するデューティサイクルが検出されるまで、前記開始信号のデューティーサイクルを選択的に変化させる工程と、
FGF−2のmRNAおよびFGF−2たんぱく質の産生において最も有意な増加を提供するオン/オフ間隔が検出されるまで、前記信号のデューティーサイクルのオン/オフ間隔を選択的に変化させる工程と
を有する方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法において、この方法は、さらに、
FGF−2のmRNAおよびFGF−2たんぱく質の産生において最も有意な増加が検出されるまで、前記開始信号の周波数および波形を選択的に変化させる工程であって、他の信号特性は一定に保ったままである、前記変化させる工程を有するものである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−514813(P2011−514813A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545946(P2010−545946)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/032925
【国際公開番号】WO2009/100048
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】