説明

牽引車両におけるエンジン冷却装置

【課題】シャッタが凍結して動かなくなる環境下での牽引登板でもオーバーヒートすることなく走行可能な技術を提供する。
【解決手段】エンジンルーム12前方に、冷却空気の流入を制御するために開閉自在に設けられたシャッタ10を備え、車両後部に形成される連結部材(カプラ3)を介して連結された被牽引車両(トレーラ2)を牽引する、牽引車両(トラクタ1)におけるエンジン冷却装置であって、被牽引車両が連結部材を介して牽引車両に電気的に連結されたことを検知する連結検知部23と、連結検知部23が連結を検知したときにシャッタ10を開状態に維持する制御部21aと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームの前方に冷却空気の流入を制御するために開閉自在に設けられるシャッタを備えた牽引車両におけるエンジン冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般車両では、フロントグリルのグリル開口部よりエンジンルーム内のラジエータに空気を流入させると共に、エンジンルーム内への空気の流入を遮断する開閉自在のシャッタを備えたエンジン冷却装置を備えている。このエンジン冷却装置の構造は、例えば、特許文献1、2、3に開示されている。
【0003】
特許文献1、2、3に開示されたエンジン冷却装置によれば、エンジンの作動直後はエンジンが十分に暖められておらず、このため、冷却水の温度も低い。エンジンが十分に暖められるまでは冷却水の温度を下げる必要が無い。このような場合は、ラジエータの前方に設けられたシャッタを閉じ、これによりエンジンが冷やされないため、エンジンを早期に暖めることができる。したがって、暖房性能や燃費性能等が向上する効果が得られる。
【0004】
ところで、車両の中には、被牽引車を牽引する牽引車両がある。この牽引車両において、被牽引車両を牽引するときエンジンに大きな負荷がかかる。特に、被牽引車両を牽引しながら登坂走行する場合にエンジンにかかる負担が大きい。この場合にシャッタを閉じた状態のままで走行すると、エンジン冷却装置による冷却性能が低下するため、シャッタを開放状態にして走行するのが好ましい。しかしながら、上述したエンジン冷却装置を寒冷地で氷点下の環境で使用する場合にシャッタが閉じたまま凍結し、必要な時にシャッタが開かなくなることがある。このような場合であってもエンジンを十分に冷却できることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60−6626号公報
【特許文献2】実開昭63−23121号公報
【特許文献3】特開2007−1503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、牽引車両が被牽引車両を牽引しながら登坂走行する場合であってもエンジンを十分に冷却可能な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明では、エンジンルーム前方に、冷却空気の流入を制御するために開閉自在に設けられたシャッタを備え、車両後部に形成される連結部材を介して連結された被牽引車両を牽引する、牽引車両におけるエンジン冷却装置であって、前記被牽引車両が前記連結部材を介して前記牽引車両に電気的に連結されたことを検知する連結検知部と、前記連結検知部が前記連結を検知したときに前記シャッタを開状態に維持する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明では、請求項1記載の牽引車両におけるエンジン冷却装置において、前記連結検知部は、前記牽引車両と連動して点灯する前記被牽引車両のテールランプの接続有無により前記被牽引車両の連結の有無を検知することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明では、請求項1記載の牽引車両におけるエンジン冷却装置において、前記連結検知部は、前記牽引車両と連動して点灯する前記被牽引車両のブレーキランプの接続有無により前記被牽引車両の連結の有無を検知することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明では、請求項1記載の牽引車両におけるエンジン冷却装置において、前記牽引車両の車両後部に設けられるモニタカメラを備え、前記制御部は、前記モニタカメラにより撮像され取り込まれる前記連結部材を含む前記被牽引車両を画像認識して前記被牽引車両の連結の有無を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、制御部は、被牽引車両が連結部材を介して牽引車両に電気的に連結されたことを検知する連結検知部が連結を検知したときに、シャッタを開状態に維持する。したがって、被牽引車両の連結が検知されたときにシャッタを開状態に維持するため、シャッタが凍結して動かなくなるような環境下の牽引登坂であってもエンジンを十分に冷却することができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、連結検知部は、牽引車両と連動して点灯する被牽引車両のテールランプの接続有無により被牽引車両の連結の有無を検知する。このため、既設のハーネスや電子部品を利用して連結検知部の接続が可能になる。
【0013】
請求項3に係る発明では、連結検知部は、牽引車両と連動して点灯する被牽引車両のブレーキランプの接続有無により被牽引車両の連結の有無を検知する。このため、既設のハーネスや電子部品を利用して連結検知部の接続が可能になる。
【0014】
請求項4に係る発明では、制御部は、モニタカメラにより撮像され取り込まれる連結部材を含む被牽引車両を画像認識して連結の有無を判定する。このため、牽引車両にナビゲーション装置が搭載され、車両後部にモニタカメラが設置されてあれば、画像を取得するためのインタフェースと、市場に流通している画像認識ソフトウエアとを追加するだけで被牽引車両の連結有無の判定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係るエンジン冷却装置が搭載された牽引車両と被牽引車両との連結状態を示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係る牽引車両におけるエンジン冷却装置の機械構造を示す図である。
【図3】本発明の実施例1に係る牽引車両におけるエンジン冷却装置が有するコントローラの電気回路構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例1に係る牽引車両におけるエンジン冷却装置のコントローラの動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例2に係る牽引車両におけるエンジン冷却装置が有するコントローラの電気回路構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係る牽引車両におけるエンジン冷却装置のコントローラの動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例3に係るエンジン冷却装置が搭載された牽引車両と被牽引車両との連結状態を示す図である。
【図8】本発明の実施例3に係る牽引車両におけるエンジン冷却装置が有するコントローラの電気回路構成を示す図である。
【図9】本発明の実施例3に係る牽引車両におけるエンジン冷却装置のコントローラの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
(実施例1の構成)
図1は、実施例1のエンジン冷却装置を搭載した牽引車両と牽引車両との連結状態を模式的に示している。
牽引車両(以下、トラクタ1という)は、エンジンルーム前方に、冷却空気の流入を制御するために開閉自在に設けられたシャッタ10を備え、車両後部に形成される連結部材(以下、カプラ3という)を介して連結された被牽引車両(以下、トレーラ2という)を牽引する。
【0018】
トラクタ1には、コントローラ20が搭載されている。コントローラ20は、シャッタ10を含むエンジン冷却装置全体を制御するECU(電子制御ユニット)である。
ここでは、コントローラ20は、トレーラ2がカプラ3を介してトラクタ1に電気的に連結されたことを検知したときにシャッタ10を開状態に維持する処理を実行する。連結の有無は、トラクタテールランプ30と連動して点灯するトレーラテールランプ40の接続有無により検知される。詳細は後述する。
【0019】
図2は、図1に示すトラクタ1のエンジンルーム内に設けられるエンジン冷却装置の機械的構造を示した図である。
【0020】
図2によれば、エンジン冷却装置は、想像線で示されるエンジンルーム11内に配置されたエンジン12と、このエンジン12を冷却する冷却水が冷却水導入路13により導入され冷却水を冷却するラジエータ14と、このラジエータ14で冷却された冷却水をエンジン12へ戻すためにエンジン12に繋げられる冷却水排出路15と、ラジエータ14のコア面16の一部17の後方に配置されるファン18と、ラジエータ14のコア面16の残部19の後方に配置され、残部19を通過した空気をエンジンルーム11の外部へ導く導風板31と、コア面16の一部17の前方に配置されるヒートポンプ式空調装置の室外熱交換機32と、この室外熱交換機32の前方に配置され、ラジエータ14に向かう空気の量を調節するシャッタ10と、このシャッタ10の開閉を行うためにシャッタ10に接続され、不図示のコントローラによって制御されるアクチュエータ33と、コア面16の残部19の前方に配置されるインタクーラーやATF(Automatic Transmission Fluid)クーラー等の空冷用熱交換機34とからなる。
【0021】
図3は、トラクタ1とトレーラ2がカプラ3を介して機械的にも電気的にも連結状態にある場合の、トラクタ1に搭載されたコントローラ20と、コントローラ20周辺の電気回路構成を示している。
【0022】
図3によれば、コントローラ20は、制御部21aを制御中枢とし、抵抗器22と、連結検知部23と、逆流防止ダイオード24と、オンディレイタイマ回路(ODT42)と、ドライバ44と、を含み構成される。
トラクタテールランプ30Aの一端には電源35による電源電圧が供給されており、他端には、一端が接地された2連のライティングスイッチ50が接続されている。この電源35−トラクタテールランプ30A−ライティングスイッチ50による径路を、便宜上、回路パスCaという。なお、トラクタテールランプ30AにはODT42が並列に接続されている。ODT42は、ライティングスイッチ50のON/OFFと連動して動作し、ライティングスイッチ50がONして一定時間経過後に出力がONになり、ライティングスイッチ50がOFFになると同時に出力がOFFになる、コイルを含む時定数回路である。
【0023】
トレーラテールランプ40Aの一端(A)には、上述したトラクタテールランプ30Aと同じ電源電圧が供給されており、他端(B)には、一端が接地された抵抗器22が接続されている。この電源35−端子A−トレーラテールランプ40A−端子B−抵抗器22の径路を、便宜上、回路パスCbという。回路パスCa、Cbは、逆流防止ダイオード24によって電気的に分離された構成になっている。
【0024】
なお、抵抗器22が有する抵抗値は、トレーラテールランプ40Aが有する内部抵抗値Riに比べて十分に大きな値Reを有するものとする(Ri≪Re)。連結検知部23は端子B(RiとReの抵抗分圧点)と制御部21aとの間に接続される。トレーラ2が連結されていない場合、端子Bの電位は、高抵抗値Reを有する抵抗器32が介在することにより、接地レベル、あるいは微小電位レベルとなり、トレーラ2が連結された場合は、後述する閾値以上の相当のレベルに上昇することになる。
【0025】
制御部21aには、ライティングスイッチ50と、イグニッションスイッチ60と、シャッタ開閉用のアクチュエータ33(のモータ)に設けられた角度センサ43と、アクチュエータ33を駆動するドライバ44とが接続されている。
【0026】
制御部21aは、ライティングスイッチ50のON/OFF、イグニッションスイッチ60のON/OFFを検知する。制御部21aは、ライテングスイッチ50がOFFの状態で連結検知部23により測定される端子Bの電位を取り込むことにより、トレーラ2の電気的な連結の有無を判定する。
また、制御部21aは、ライティングスイッチ50がON操作されたことを契機にODT42を駆動し、予め設定されたディレイタイム内に端子Bの電位を測定し、測定した電位が閾値以上あった場合にドライバ44経由でアクチュエータ33を駆動し、シャッタ10の開状態を維持する制御を行う。なお、制御部21aは、シャッタ10の開閉状態について角度センサ43から得られる信号により監視するものとする。
【0027】
(実施例1の動作)
次に、制御部21aをマイクロプロセッサによって構成した場合の制御フローについて、図4を参照しながら説明する。
イグニッションスイッチ50がONされると、トラクタ1の電気系統に電源電圧が供給され、まず、ステップS100でCFが初期化(CF=0)される。なお、CFは、トラクタ1にカプラ3経由でトレーラ2が電気的に連結されている状態が否かを示すフラグであり、制御部21aが内蔵するメモリ(図示省略)の所定の領域に割り当てられ記憶されるものとする。
【0028】
続いて制御部21aは、ステップS101でCFが”0”か否かを判定する。ここで、”0”であれば、ステップS102でライティングスイッチ50のON/OFFを判定する。ライティングスイッチ50がON操作されると、トラクタテールランプ30Aおよびトレーラテールランプ40Aが点灯する。このとき、制御部21aは、ライティングスイッチ50がOFFの状態で端子Bの電位を測定するため、ODT42を駆動する。
なお、ライティングスイッチ50がOFFの状態で端子Bの電位を測定する理由は、ライティングスイッチ50がONの状態で端子Bの電位を測定すると、トレーラ2が連結されていない場合と同じ電位(0もしくは微少レベル)になって連結の有無を判定できないからである。このため、ライティングスイッチ50がONしてからODT42で遅延される一定時間内に端子Bの電位を測定し、トレーラテールランプ40Aが接続されているか否か、すなわち、トレーラ2が電気的に連結されているか否かを判定するものとする。
【0029】
連結検知部23は、ステップS102で、ODT42のディレイタイム内に端子Bの電位αrを測定する。続いて制御部21aは、連結検知部23により測定された電位αrを取り込み、ステップS103で、取り込まれた電位αrと、予め設定された閾値αsとを比較する。ここで、取り込まれた電位αrが閾値αsより大きいと判定された場合(ステップS103”YES”)、制御部21aは、トレーラテールランプ40Aが接続されていると判断し、CFを値”1”を設定する(ステップS104)。
以上の動作は、ODT42によるディレイタイム内に実行される。なお、ステップS103で、取り込まれた電位αrが変動閾値αs以下であると判定された場合は(ステップS103”NO”)、ステップS108の処理に進む。
【0030】
次に、制御部21aは、ステップS105で角度センサ43からアクチュエータ33のモータの回転角度(=シャッタ10の開度)に関する情報を取得し、ステップS106でシャッタ10が全閉しているか否かを判定する。シャッタ10が全閉している場合(ステップS106”YES”)、制御部21aは、ステップS107でアクチュエータ33を制御してシャッタ10を強制的に開制御する。このとき、シャッタ10の開度は、冷却水の温度にもよるが、全閉の状態を回避できれば良いものとし、特に制限しない。なお、ステップS106でシャッタが少しでも開いている場合は(ステップS106”NO”)、ステツプS108の処理に進む。
【0031】
ステップS108では、制御部21aは、イグニッションスイッチ60又はライティングスィッチ50のOFFが検知されたか否かを判定する。ここで、OFFが検知されると(ステップS108”YES”)、上述した一連の処理は終了する。一方、いずれもONの状態が継続していた場合は(ステップS108”NO”)、ステップS101の処理に戻り、ここではCF=1となっているため、再度ステップS108の処理に進む。すなわち、CF=1の状態は、ステップS108でイグニッションスイッチ50又はライティングスイッチ60のOFFが検知されるまでの間、継続する。
【0032】
(実施例1の効果)
実施例1によれば、制御部21aは、トレーラ2がトラクタ1に電気的に連結されたことを検知する連結検知部23が連結を検知したときにシャッタ10を開状態に維持する。このため、通常は、シャッタ10により、暖房性能や燃費性能向上の効果が得られ、シャッタ10が凍結して動かなくなるような環境下での牽引登坂であってもエンジンを十分に冷却することができる。
なお、この場合、牽引負荷により水温が極端に下がることは無く、そのため、エアコンの暖房性能に与える悪影響は無い。
【0033】
また、連結検知部23は、トラクタテールランプ30Aと連動して点灯するトレーラテールランプ40Aの接続の有無によりトレーラ2の連結状態の有無を検知する。このため、既設のハーネスや電子部品を利用した接続が可能になり、また、抵抗器32やODT42等、僅かな回路部品の追加で、トレーラテールランプ40Aの点灯の有無が判別できる。
なお、トレーラテールランプ40Aの接続有無は、トレーラテールランプ40Aの一端(端子B)に接続された、トレーラテールランプ40Aの内部抵抗Riより十分に大きな抵抗値Re(Ri≪Re)を有する抵抗器22との分圧点(端子B)の電位を測定することにより判定できる。また、ODT42を付加し、ライティングスイッチ50が押下されてからODT42が有するディレイタイム内に端子Bの電位を測定することで確度の高い連結判定が可能になる。なお、ODT42を外付けすることなく、制御部21aが内蔵するタイマによりライティングスイッチ50のオンディレイを生成しても良く、この場合、ディレイタイムを柔軟にコントロールすることができる。
【実施例2】
【0034】
(実施例2の構成)
図5は、本発明の実施例2のトラクタ1に搭載されたコントローラ20の内部構成と、コントローラ20周辺の電気回路構成を示し、図6は、コントローラ20の動作を示している。
【0035】
以下に説明する実施例2において、図3に示す実施例1との構成上の差異は、実施例1のトラクタテールランプ30A、トレーラテールランプ40Aが、トラクタブレーキランプ30B、トレーラブレーキランプ40Bに、ライティングスイッチ50がブレーキスイッチ70にそれぞれ変更され、かつ、実施例1の制御部21aに接続されていたODT42が省略されたことにある。他の構成は、図3に示す実施例1の構成と同様である。
以下に説明する実施例2では、連結検知部23は、トラクタブレーキランプ30Aと連動して点灯するトレーラブレーキランプ40Bの接続有無によりトレーラ2の連結の有無を測定する。
【0036】
(実施例2の動作)
次に、制御部21bをマイクロプロセッサによって構成した場合の制御フローについて、図6を参照しながら説明する。
まず、イグニッションスイッチ50がONされ、トラクタ1の電気系統に電源電圧が供給されると、ステップS200でCFが初期化(CF=0)される。続いて制御部21bは、ステップS201でCFが”0”か否かを判定する。ここで、”0”であれば、ステップS202でブレーキスイッチ70のON/OFFを判定し、OFFの場合、ステッブS203で抵抗分圧点である端子Bの電位を測定する。
【0037】
連結検知部23は、ステップS204で、端子Bの電位αrを測定する。続いて制御部21bは、連結検知部23から測定結果を取り込み、ステップS204で、測定した電位αrと閾値αsとを比較する。ここで、測定した電位αrが閾値αsより大きいと判定された場合(ステップS204”YES”)、ステップS205で制御部21bは、トレーラブレーキランプ40Bが点灯している、すなわち、トレーラ2が電気的に連結されたと判断し、CFに値”1”を設定する。なお、ステップS204で測定した電位αrが閾値αs以下であると判定された場合(ステップS204”NO”)、後述するステップS209の処理に進む。
【0038】
続いて制御部21bは、ステップS206で角度センサ43からアクチュエータ33を駆動するモータの回転角度(=シャッタ10の開度)に関する情報を取得し、ステップS207でシャッタ10が全閉しているか否かを判定する。
シャッタ10が全閉している場合(ステップS207”YES”)、制御部21bは、ステップS208でアクチュエータ33を制御してシャッタ10を強制的に開く制御を行う。このとき、シャッタ10の開度は、冷却水の温度にもよるが、全閉の状態を回避できれば良いものとし、特に制限しない。なお、ステップS207でシャッタ10が多少でも開いている場合は(ステップS207”NO”)、ステップS209の処理に進む。
なお、CF=1の状態は、ステップS209でイグニッションスイッチ60のOFFが検知されるまで継続するものとする。
【0039】
(実施例2の効果)
実施例2によれば、連結検知部23は、トラクタ1と連動して点灯するトレーラブレーキランプ40Bの接続有無により連結の有無を検知する。このため、既設のハーネスや電子部品を利用して接続が可能になる。また、トレーラブレーキランプ40Bは、走行直前は消灯しているため、ODTを用いたディレイタイム内にトレーラテールランプ40Aの接続有無によりトレーラ2の連結を検知する実施例1に比較して制御が簡単に済む。
【実施例3】
【0040】
(実施例3の構成)
以下に説明する実施例3では、連結されたトレーラ2を画像認識してトレーラ2の連結の有無を判定する。このため、図7に、実施例3に係るエンジン冷却装置が搭載されたトラクタ1とトレーラ2との連結状態が示されるように、トラクタ1にナビゲーション装置80が搭載されている場合に顕著な効果を有する。すなわち、コントローラ20は、トラクタ1後方に後方確認のために取り付けられたモニタカメラ81により撮影されたトレーラ2の画像をナビゲーション装置80経由で取り込んで画像認識を行い、連結の有無を判定する。
【0041】
図8に、実施例3のトラクタ1に搭載されたコントローラ20の内部構成を示し、図9にコントローラ20の動作を示している。
【0042】
図8によれば、コントローラ20は、制御部21cを制御中枢とし、メモリ25と、テンプレートDB26と、ビデオキャプチャ27とを含み構成される。
ビデオキャプチャ27は、ナビゲーション装置80を介してモニタカメラ81から伝送される撮影画像を取り込んで制御部21cへ供給する。なお、メモリ25には、市販のDP(Dynamic Programing)マッチングを用いた画像認識ソフトウエアがインストールされており、また、テンプレートDB26には、トラクタ1の後方からみてカプラ3を介して連結されたトレーラ2の撮影画像の特徴成分が予めテンプレートとして登録され、記憶されているものとする。
【0043】
なお、制御部21cには、他に、イグニッションスイッチ60と、シャッタ開閉用のアクチュエータ33の(モータの)回転角度(=シャッタ10の開度)を検知する角度センサ43と、アクチュエータ33を駆動するドライバ44と、が接続されている。
【0044】
(実施例3の動作)
次に、制御部21cをマイクロプロセッサによって構成した場合の制御フローについて、図9を参照しながら説明する。
まず、イグニッションスイッチ60がONされ、トラクタ1の電気系統に電源電圧が供給されると、ステップS300でCFが初期化(CF=0)される。続いて制御部21cは、ステップS301でCFが”0”か否かを判定する。ここで、”0”であれば、ステップS302でビデオキャプチャ27により、モニタカメラ81で撮影したトレーラ2の画像を取り込む。
【0045】
続いて、ビデオキャプチャ27により取り込まれた撮影画像は制御部21cに供給され、制御部21cでは、ステップS303でインストール済みの画像認識ソフトウェアにしたがい、ビデオキャプチャ27で取得した撮影画像の特徴抽出を行い、テンプレートDB26に登録済みのテンプレート画像とDPマッチングによる照合を行う。ここでいうDPマッチングとは、動的計画法を用いて2つのパターンの要素間の対応付けを行い、類似度を計算する周知の方法である。
【0046】
上述したDPマッチングによる照合の結果、ステップS304でトレーラ2が連結されたパターンであると判定されると(ステップS304”YES”)、ステップS305で、制御部21cはトレーラ2が電気的に連結されているものと判断してCFに値”1”を設定する。連結されていないと判断された場合は(ステップS304”NO”)、後述するステップS308の処理に進む。
【0047】
続いて制御部21cは、ステップS306で角度センサ43からアクチュエータ33のモータの回転角度(=シャッタ10の開度)に関する情報を取得し、ステップS307でシャッタ10が全閉しているか否かを判定する。
ここで、シャッタ10が全閉している場合(ステップS306”YES”)、制御部21cは、ステップS307でドライバ44経由でアクチュエータ33を制御し、シャッタ10を強制的に開く制御を行う。このとき、シャッタ10の開度は、冷却水の温度にもよるが、全閉の状態を解除できればよいもののとし、特に制限しない。なお、ステップS306でシャッタ10が少しでも開いている場合は(ステップS306”NO”)、ステップS308の処理に進む。
【0048】
なお、CF=1の状態は、実施例1,2同様、ステップS308でイグニッションスイッチ60のOFFが検知されるまで継続するものとする。
【0049】
(実施例3の効果)
実施例3によれば、制御部21cは、モニタカメラ81により撮像され取り込まれるトレーラ2を画像認識してトレーラ2の連結の有無を判定する。このため、トラクタ1にナビゲーション装置80が搭載され、トラクタ1後部にモニタカメラ81が設置されてあれば、画像を取得するためのインタフェース(ビデオキャプチャ27)と、市場に流通している画像認識ソフトウエアとを追加するだけで、トレーラ2の連結状態を判定することかできる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の牽引車両におけるエンジン冷却装置は、トレーラやキャンピングカー等を牽引する牽引車両に用いられ、牽引登板時のオーバヒートを回避する仕組みとして好適である。
【符号の説明】
【0051】
1…牽引車両(トラクタ)、2…被牽引車両(トレーラ)、3…連結部材(カプラ)、10…シャッタ、11…エンジンルーム、20…コントローラ、21a、21b、21c…制御部、22…抵抗器、23…連結検知部、24…逆流防止ダイオード、25…メモリ、26…テンプレートDB、27…ビデオキャプチャ、30A…トラクタテールランプ、30B…トラクタブレーキランプ、40A…トレーラテールランプ、40B…トラクタブレーキランプ、42…オンディレイタイマ回路(ODT)、43…角度センサ、44…ドライバ、50…ライティングスイッチ、60…イグニッションスイッチ、70…ブレーキスイッチ、80…ナビゲーション装置、81…モニタカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム前方に、冷却空気の流入を制御するために開閉自在に設けられたシャッタを備え、車両後部に形成される連結部材を介して連結された被牽引車両を牽引する、牽引車両におけるエンジン冷却装置であって、
前記被牽引車両が前記連結部材を介して前記牽引車両に電気的に連結されたことを検知する連結検知部と、前記連結検知部が前記連結を検知したときに前記シャッタを開状態に維持する制御部と、
を備えたことを特徴とする牽引車両におけるエンジン冷却装置。
【請求項2】
前記連結検知部は、
前記牽引車両と連動して点灯する前記被牽引車両のテールランプの接続有無により前記被牽引車両の連結の有無を検知することを特徴とする請求項1記載の牽引車両におけるエンジン冷却装置。
【請求項3】
前記連結検知部は、
前記牽引車両と連動して点灯する前記被牽引車両のブレーキランプの接続有無により前記被牽引車両の連結の有無を検知することを特徴とする請求項1記載の牽引車両におけるエンジン冷却装置。
【請求項4】
前記牽引車両の車両後部に設けられるモニタカメラを備え、
前記制御部は、
前記モニタカメラにより撮像され取り込まれる前記連結部材を含む前記被牽引車両を画像認識して前記被牽引車両の連結の有無を判定することを特徴とする請求項1記載の牽引車両におけるエンジン冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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