説明

独立系電源装置および制御方法

【課題】 過充電により蓄電池への充電が停止されていても、日射量を継続して算定することができる安価な独立系電源装置とその制御方法を提供する。
【解決手段】 太陽電池1に蓄電池2を接続し、蓄電池2の蓄積エネルギーにより負荷4を動作するようにした独立系電源装置の制御方法であって、蓄電池2への充電電流より日射量を算定し、日射量に基づいて負荷4の動作を制御する。また、蓄電池2の過充電を検出すると、太陽電池1を発電電流検知用負荷7側に切り換えて接続し、この発電電流検知用負荷7を流れる発電電流より日射量を継続して算定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽光発電により、建物内の換気装置、遮光装置、冷房装置等に電力供給を行う独立系電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、日射量に応じた発電量を出力する太陽電池を商用電力系統と接続し、太陽電池の発電量(すなわち、日射量)に基づいて建物内の換気装置や遮光装置、或いは冷房装置等の動作を制御することにより、屋内温度を適切な状態に管理するようにした太陽光発電施設(系統連携装置)が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
通常、上記系統連携装置は、負荷の電力消費が少なくて太陽電池の発電電力に余剰が生じた場合に余剰電力を商用電力系統へ放電(売電)すると共に、日射量が少なく電力が不足した場合に商用電力系統から電力の不足分を補充(買電)する機能を搭載した制御装置を備えている。
【0004】
従って、このような系統連携装置では、発電可能な日射が得られる間は、太陽電池は常に発電を継続し、負荷の電力消費の有無にかかわらず上記制御装置において日射量の算定が可能である。
【0005】
一方、商用電力系統との接続を行わない独立系電源装置では、太陽電池の発電電流を充電する蓄電池を備え、この蓄電池の蓄積エネルギーを使用して負荷の動作を制御することにより、日射量の少ない時にでも負荷の安定動作が得られるようにしている。
また、通常、このような蓄電池を備えた独立系電源装置では、太陽電池の発電電力量が負荷の電力消費量を上回った場合に充電が行われるが、充電電圧が一定値以上に達した場合に、蓄電池を保護する目的で太陽電池と蓄電池の接続を遮断して蓄電池への充電を停止する過充電防止機能が備えられている。
【特許文献1】特開平11−81579
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、係る独立系電源装置の場合、既述したように、蓄電池に過充電が生じた時に太陽電池と蓄電池の接続が遮断されることから、系統連携装置のように、制御装置において太陽電池の発電量より日射量を算定することができなくなるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような独立系電源装置が有する問題に鑑み成されたもので、蓄電池に過充電が生じて太陽電池と蓄電池の接続が遮断されても、その間も継続して日射量の算定が行える独立系電源装置および制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1に記載の本発明は、太陽電池に蓄電池を接続し、当該蓄電池の蓄積エネルギーにより負荷を動作するようにした独立系電源装置の制御方法であって、前記蓄電池への充電電流より日射量を算定し、当該日射量に基づいて負荷の動作を制御することを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の独立系電源装置の制御方法において、前記蓄電池の過充電を検出すると、前記太陽電池と前記蓄電池の接続を遮断すると共に、前記太陽電池を発電電流検知用負荷に切り換えて接続し、当該発電電流検知用負荷を流れる電流より日射量を算定することを特徴としている。
【0010】
また、請求項3に記載の本発明は、日射量に応じた発電量を出力する太陽電池と、当該太陽電池の発電電流を充電する蓄電池とを備え、日射量に基づき、当該蓄電池の蓄積エネルギーにより負荷の動作を制御する独立系電源装置において、前記蓄電池への充電電流を検知して前記日射量を算定する制御装置を備えることを特徴としている。
【0011】
また、請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の独立系電源装置において、前記制御装置は、前記蓄電池の過充電を検知して前記太陽電池と前記蓄電池の接続を遮断すると共に、前記太陽電池を発電電流検知用負荷に切り換えて接続する切換手段を備え、過充電検出時は前記発電電流検知用負荷を流れる電流を検知して日射量を算定することを特徴としている。
【0012】
ここで、請求項3に記載の構成では、発電時の太陽電池の発電電流を計測することにより日射量を算定することができるため、専用の日射センサは不要であり、コストダウンが図れる。
【0013】
また、請求項4に記載の構成では、上記作用効果に加え、過充電により蓄電池への充電が停止されていても発電可能な日射が得られている間は日射量を継続して算定することができ、よって、日射量に応じた負荷の連続的な制御が可能となる。
また、この間、日射量算定のために消費される電力は、蓄電池への充電に供さない発電電力であり、太陽電池の発電を有効に利用したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、専用の日射センサを用いずに日射量を算定することができ、装置の低コスト化が図れる。
また、過充電により蓄電池への充電が停止されていても、発電可能な日射が得られている間は日射量を継続して算定することができ、よって、日射量に応じた負荷の連続的な制御が可能となる。例えば、負荷として、換気装置、遮光装置、冷房装置等の動作を制御すれば、建物内の温度環境を日射量に応じた適切な状態に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の独立系電源装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る独立系電源装置の回路構成を示し、図2、図3は太陽電池における日射量と発電電流の関係を示している。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の独立系電源装置は、日射量に応じた発電量を出力する太陽電池1と、この太陽電池1の発電電流を充電する蓄電池2と、建物設置負荷4(負荷4)への電力供給を制御する制御部3とを備えている。
【0017】
太陽電池1の正極(+)と蓄電池2の正極(+)の間には、切換手段5(切換スイッチ5)が介在され、太陽電池1の負極(−)と蓄電池2の負極(−)の間には、発電電流検知負荷7(抵抗7)が接続され、蓄電池2と負荷4の間には切断スイッチ6が介在されている。
上記切換スイッチ5は、太陽電池の(+)出力を蓄電池2または抵抗7の何れかに切換えて接続するためのスイッチであり、上記切断スイッチ6は、負荷4への電力供給をオン/オフ制御するためのスイッチであり、且つ、これらスイッチ5、6の動作は制御部3の制御により行われるようになっている。この制御部3には、蓄電池2の充電電圧V1および抵抗7の両端電圧(負荷電圧)V2が入力されている。
【0018】
上記負荷4は、例えば、建物内部に設置される空調装置や建物内外の通風を行う送風装置や建物の外部や内部に取り付けられる遮光装置等であり、蓄電池2から供給される直流電力で動作するもの、直流/交流変換器を通して交流電力にて動作するもの等が使用できる。発電時の日射量に応じて、これら負荷4の動作を制御することにより、建物内部の温度管理を行うことができる。
【0019】
上記構成の独立系電源装置においては、蓄電池2の充電電圧V1が所定電圧以下の場合には、切換スイッチ5の動作により太陽電池1と蓄電池2が接続されて充電経路が構成され、この充電経路を通して太陽電池1の発電電流が蓄電池2に充電されると共に、負荷4に対しては、切断スイッチ6を通して蓄電池2の充電電力が供給される。
【0020】
既述したように、負荷4の動作は発電時の日射量に応じてオン/オフ制御されるものであるが、この日射量は、充電中に発電電流検知用の抵抗7に太陽電池1の発電電流が流れることにより生じる電圧(両端電圧V2)より算出することができる。以下にその制御形態を説明する。
【0021】
ここで先ず、図2および図3について説明すれば、図2は蓄電池2に負荷4が接続されている時の日射量と発電電流の関係を示し、図3は蓄電池2と負荷4の接続が遮断されている時(後述する蓄電池の過充電検出時)の日射量と発電電流の関係を示している。また、図2、図3において、(イ)は充電中の特性を示し、(ロ)は、過充電により充電が停止されている時の特性を示している。各図より明らかなように、何れの場合も、太陽電池1における日射量と発電電流とは正の相関を示している。
【0022】
従って、制御部3においては、入力された抵抗7の両端電圧V2より太陽電池1の発電電流を求めると共に、制御部内蔵の演算回路(図示せず)により、得られた発電電流を上記日射量−発電電流特性に基づいて日射量に換算する。制御部3は、算定した日射量を予め設定した基準値と比較し、日射量の多少に応じて切断スイッチ6をオン/オフすることにより負荷4の動作を制御する。
例えば、発電電流より算定した日射量が上記基準値を超えている場合は、負荷4への電力供給を開始して負荷を作動し、日射量が基準値以下の場合は、負荷4への電力供給を停止して負荷の動作を停止するように切断スイッチ6の動作を制御する。係る制御により、建物内部の好適な温度管理を行う。
【0023】
蓄電池2への充電が進み、充電電圧V1が一定値以上に上昇した場合、制御部3は蓄電池2の過充電を検知し、過充電による蓄電池2の損傷や破裂を防止するために切換スイッチ5を抵抗7側へ切換え、太陽電池1から蓄電池2への充電経路を遮断する。
【0024】
従来装置では、太陽電池1と蓄電池2の充電経路が断たれた場合に日射量の算定ができなくなるという問題があったが、本発明では、過充電により充電経路が遮断された場合にも、その間の日射量の算定を継続可能にしている。
【0025】
すなわち、本実施形態では、充電が進んで蓄電池2の過電圧が検出された際に、切換スイッチ5を抵抗7側に切換えることにより、太陽電池(+)〜抵抗7〜太陽電池(−)による発電電流のバイパス経路を構成し、その際の抵抗7の両端電圧V2に基づき、制御部3において日射量の演算を行うものである。尚、この場合の日射量の算定処理は、上記した充電時の場合と同様である。
【0026】
このように、本発明では、過充電により蓄電池2への充電が停止されていても、バイパス経路を介して抵抗7に発電電流を流すことにより、発電可能な日射量が得られている間は制御部3において日射量を継続して算定することができ、よって、日射量に応じた負荷4の連続的な制御が可能となる。
例えば、負荷として、換気装置、遮光装置、冷房装置等の動作を制御すれば、蓄電池2の充電/過充電状態を問わず、常に建物内の温度環境を日射量に応じた適切な状態に保持することができる。加えて、この間、日射量の算定のために消費される電力は蓄電池2への充電に供さない発電電力であり、太陽電池1の発電電力を有効に利用したものである。
【0027】
また、本発明の構成では、負荷4を動作するための電力源である太陽電池1を日射センサとしても利用するため、日射量の算定に従来のような専用の日射センサを用いる必要は無くなり、よって、装置構成が簡略化し、低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る独立系電源装置のブロック構成図。
【図2】負荷接続時の太陽電池における日射量と発電電流の関係を示す図。
【図3】負荷接続を切断した時の太陽電池における日射量と発電電流の関係を示す図。
【符号の説明】
【0029】
1 太陽電池
2 蓄電池
3 制御部
4 負荷(建物設置負荷)
5 切換手段(切換スイッチ)
6 切断スイッチ
7 発電電流検知用負荷(抵抗)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池に蓄電池を接続し、当該蓄電池の蓄積エネルギーにより負荷を動作するようにした独立系電源装置の制御方法であって、
前記蓄電池への充電電流より日射量を算定し、当該日射量に基づいて負荷の動作を制御することを特徴とする独立系電源装置の制御方法。
【請求項2】
前記蓄電池の過充電を検出すると、前記太陽電池と前記蓄電池の接続を遮断すると共に、前記大陽電池を発電電流検知用負荷に切り換えて接続し、当該発電電流検知用負荷を流れる電流より日射量を算定することを特徴とする請求項1に記載の独立系電源装置の制御方法。
【請求項3】
日射量に応じた発電量を出力する太陽電池と、当該太陽電池の発電電流を充電する蓄電池とを備え、日射量に基づき、当該蓄電池の蓄積エネルギーにより負荷の動作を制御する独立系電源装置において、
前記蓄電池への充電電流を検知して前記日射量を算定する制御装置を備えることを特徴とする独立系電源装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記蓄電池の過充電を検知して前記太陽電池と前記蓄電池の接続を遮断すると共に、前記太陽電池を発電電流検知用負荷に切り換えて接続する切換手段を備え、過充電検出時は前記発電電流検知用負荷を流れる電流を検知して日射量を算定することを特徴とする請求項3に記載の独立系電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−230097(P2006−230097A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40417(P2005−40417)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(591065549)福岡県 (121)
【出願人】(504155293)国立大学法人島根大学 (113)
【出願人】(000204099)太洋興業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】