説明

玩具用継手構造

【課題】部品点数を減らしつつ、摺動部の脱落を抑制する。
【解決手段】アーム部61と前輪用シャーシ5とを互いに揺動可能に連結する玩具用継手構造において、アーム部61の先端部61aには、上下方向の中心軸を有するとともに互いに同心状に形成された半球状の第1凹部61b及び第2凸部61cが形成され、前輪用シャーシ5は、第1凹部61bと相補的な半球状の第1凸部52aが形成された上部前輪用シャーシ52と、第2凸部61cと相補的な半球状の第2凹部51aが形成された下部前輪用シャーシ51とを有するとともに、第1凸部52a及び第1凹部61bと、第2凸部61c及び第2凹部51aとが個別に摺動可能なように、上部前輪用シャーシ52と下部前輪用シャーシ51とによってアーム部61の先端部61aを挟持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玩具用の継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの部品を相対揺動可能に連結する玩具用の継手構造としては、図9に示すように、一方の揺動部材100に取り付けた球状のボール部材101を、他方の揺動部材102に形成された円弧状の摺動面102aに嵌合させてなる、いわゆるボールジョイント構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3798350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなボールジョイント構造では、摺動部であるボール部材101を揺動部材100,102とは別体で設けなければならず、部品点数を減らすことができなかった。また、ボール部材101を他方の揺動部材102から脱落させる方向への力が加わった場合に、比較的容易にボール部材101が脱落してしまう場合があった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、部品点数を減らしつつ、摺動部の脱落を抑制することのできる玩具用継手構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、玩具用部材の雄体と雌体とを互いに揺動可能に連結する玩具用継手構造において、
前記雄体は、同一の中心軸を有するとともに互いに同心状に形成された半球状の2つの摺動面を有し、
前記雌体は、
前記2つの摺動面のうちの一方の摺動面と相補的な半球状の第1被摺動面が形成された第1雌体と、他方の摺動面と相補的な半球状の第2被摺動面が形成された第2雌体とを有するとともに、
前記一方の摺動面及び前記第1被摺動面と、前記他方の摺動面及び前記第2被摺動面とが個別に摺動可能なように、前記第1雌体と前記第2雌体とによって前記雄体を挟持していることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の玩具用継手構造において、
前記第1雌体には、半球状の第1凸部が形成され、
前記雄体には、前記第1凸部と相補的な半球状の第1凹部と、当該第1凹部とは反対方向へ突設された半球状の第2凸部とが互いに同心状に形成され、
前記第2雌体には、前記第2凸部と相補的な半球状の第2凹部が形成され、
前記第1雌体と前記第2雌体とは、前記第1凸部と前記第1凹部とを摺動可能に嵌合させるとともに前記第2凸部と前記第2凹部とを摺動可能に嵌合させつつ、前記雄体を挟持していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の玩具用継手構造において、
前記雄体,前記第1雌体及び前記第2雌体は、弾性部材で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、雄体と雌体とは、それぞれに形成された摺動面又は被摺動面を互いに摺動させつつ揺動可能であるので、従来のように摺動部を別体で設ける必要がなく、部品点数を減らすことができる。また、第1雌体と第2雌体とによって雄体を挟持しているので、従来のボールジョイント構造に比べて雄体が脱落しにくい。つまり、摺動部の脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】玩具用継手構造を有する自動車玩具の外観図である。
【図2】ボディを取り外した状態の自動車玩具の平面図である。
【図3】図2のA−A矢視での断面図である。
【図4】図2のB−B矢視での断面図である。
【図5】自動車玩具の後端部の部分断面図である。
【図6】リモコンの外観図である。
【図7】充電器の外観図である。
【図8】横転防止リングを設けた自動車玩具の外観図である。
【図9】従来の玩具用継手構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る玩具用継手構造を有する自動車玩具1の外観図である。
この図に示すように、自動車玩具1は、オフロード車を模した走行玩具であり、前輪21,21を左右へ揺動可能に支持する前輪車軸2と、後輪31,31を支持する後輪車軸3(図5参照)と、ボディ4と、ウイング部材7とを備えている。
【0013】
図2は、ボディ4を取り外した状態の自動車玩具1の平面図である。
この図に示すように、前輪車軸2は前輪用シャーシ5に支持されており、後輪車軸3は後輪用シャーシ6に支持されている。
このうち、前輪用シャーシ5は、前輪車軸2を前端部で支持する略平板状の下部前輪用シャーシ51と、下部前輪用シャーシ51の車体中央部を覆う上部前輪用シャーシ52(図2では二点鎖線で図示)とが係合されて構成されている。下部前輪用シャーシ51上には、後述するリモコン8からの制御信号を受信して各部を駆動する電気基板53が載置されて上部前輪用シャーシ52に覆われている。また、下部前輪用シャーシ51には、図示しない操舵モータ及びギア機構が搭載されているとともに、前輪21,21に連結されたステアリングラック54が左右へ移動可能なように前輪車軸2と平行に支持されている。これらは自動車玩具1のステアリング機構を構成しており、操舵モータがギア機構を介してステアリングラック54を左右へ駆動することによって、前輪21,21が左右へ向きを変えて自動車玩具1が操舵される。更に、下部前輪用シャーシ51には、図示しないバッテリーが搭載されている。また、下部前輪用シャーシ51及び上部前輪用シャーシ52は、弾性部材で形成されている。
一方、後輪用シャーシ6は、後輪車軸3と連結されたモータ軸を有する駆動モータ62が後端部に搭載されている。この後輪用シャーシ6は、両側部から前方へ延出する2つのアーム部61,61を有しており、平面視略コ字状に形成されている。
これら前輪用シャーシ5と後輪用シャーシ6とは、2つのアーム部61,61によって両側部で連結されている。この2つのアーム部61,61は、車幅方向に離間した状態で前輪用シャーシ5の後端部を左右から挟みつつ、各先端部61aが前輪用シャーシ5の両側部に突設された連結部55と連結されている。
【0014】
図3は、図2のA−A矢視での断面図であり、図4は、B−B矢視での断面図である。但し、図3では、図示の分かり易さのために各部品の隙間を広げて図示している。
図3に示すように、連結部55には、下方へ突設するよう上部前輪用シャーシ52に設けられた半球状の第1凸部52aと、上方へ開口するよう下部前輪用シャーシ51に設けられた半球状の第2凹部51aとが形成されている。また、アーム部61の先端部61aには、第1凸部52aと相補的であって上方へ開口する半球状の第1凹部61bと、第2凹部51aと相補的であって下方へ突設された半球状の第2凸部61cとが、上下方向の中心軸を有するとともに互いに同心状に形成されている。そして、第1凸部52aと第1凹部61bとが摺動可能に嵌合されるとともに第2凸部61cと第2凹部51aとが摺動可能に嵌合されるように、上部前輪用シャーシ52と下部前輪用シャーシ51とによってアーム部61の先端部61aが上下から挟持されている。
このような継手構造を両側部に設けることにより、前輪用シャーシ5と後輪用シャーシ6との左右方向や上下方向への相対揺動を許容することができ、前後輪21,31の路面追従機能やサスペンション機能を実現している。
【0015】
また、2つのアーム部61,61は、図4に示すように、先端部61a近傍において車幅方向の内側に向かって傾斜する平板状にそれぞれ形成されている。より詳細には、このアーム部61,61は、図中の二点鎖線で示すように基端部では水平に設けられており、先端部61aに向かうにつれて内側に傾斜するように形成されている。このようにアーム部61,61を傾斜させることにより、当該アーム部に対して車幅方向に平行な外力が加わった場合であっても、傾斜角度に応じてこの外力を分散させ、アーム部61の幅方向に作用する荷重を低減させることができる。
更に、2つのアーム部61,61は、それぞれ弾性部材で形成されている。これにより、アーム部61を捻回させることができるため、ロール角を拡大することができる。加えて、アーム部61を上下方向へ弾性変形させることができるため、サスペンション機能を強化することができる。
【0016】
図5は、自動車玩具1の後端部の部分断面図である。
この図に示すように、ウイング部材7は、弾性部材で形成されたステー部材71を介して後輪用シャーシ6に連結されている。ステー部材71は、前後方向に屈曲されたS字状の屈曲部を有しており、ウイング部材7の車幅方向中央部に1つだけ取り付けられている(図2参照)。このようなステー部材71を介してウイング部材7を取り付けることにより、自動車玩具1の横転等によりウイング部材7が壁や路面に接触した場合であっても、ステー部材71での局部的な応力集中を緩和して当該ステー部材71の塑性変形や破損を防止することができる。
【0017】
ステー部材71の前端部には、バネ部材63の一端が固定されており、このバネ部材63の他端は、上部前輪用シャーシ52後端の突設部52bに固定されている。このバネ部材63は、前輪用シャーシ5と後輪用シャーシ6とを略上下方向に付勢しており、主にサスペンションの機能を果たしている。
【0018】
また、下部前輪用シャーシ51の後端部には、後方へ突設された係止部51b,51bが形成されており、後輪用シャーシ6の前端部には、前方へ突設された突起部6a,6aが係止部51b,51bの上方に形成されている(図2参照)。これら係止部51b,51b及び突起部6a,6aは、アーム部61の先端部61aを中心とした前輪用シャーシ5及び後輪用シャーシ6の上下方向への相対揺動を規制するためのものである。こうして前輪用シャーシ5及び後輪用シャーシ6の相対揺動を所定範囲に規制することにより、アーム部61の先端部61aが連結部55から脱落することを防止するとともに、電気基板53と駆動モータ62との配線の露出を防止している。なお、バネ部材63は、これら係止部51b,51bと突起部6a,6aとが常態で所定距離だけ上下方向に離間した状態となるように、付勢力が調整されている。
【0019】
図6は、自動車玩具1を遠隔操作するリモコン8の外観図である。
この図に示すように、リモコン8は、駆動モータ62を駆動して自動車玩具1を前進又は後進させるためのレバー部81と、操舵モータを駆動して自動車玩具1を操舵するための操舵ホイール部82とを備えており、本実施形態では、左手でグリップ部8aを握りつつレバー部81を操作し、右手で操舵ホイール部82を操作するように構成されている。
レバー部81は、ニュートラル状態から図中のF方向に動かすと自動車玩具1を前進させ、B方向に動かすと自動車玩具1を所定時間だけ制動させた後に後進させる。また、レバー部81のB方向側部分には、操舵ホイール部82とは反対側(図6の手前側)への張出し部81aが形成されており、B方向へのレバー部81の操作の際に、操作する指(例えば、左手の人差し指)が簡単に抜けてしまわないようになっている。
操舵ホイール部82は、ニュートラル状態から左右に回転させることで、操舵モータを駆動させて自動車玩具1を左右に操舵することが可能となっている。
また、リモコン8には、電源スイッチ83の他、操作可能な自動車玩具1を切り替えるための周波数設定ボタン84を備えている。この周波数設定ボタン84は、自動車玩具1から設定信号を出力させた状態で押下することにより、この信号を出力している自動車玩具1の操作が可能なように設定することができる。
【0020】
図7は、自動車玩具1のバッテリーを充電するための充電器9の外観図である。
この図に示すように、充電器9は、電源スイッチ91と充電開始ボタン92とを備えており、図示しない充電ケーブルを自動車玩具1に接続した状態で電源スイッチ91をONにして充電開始ボタン92を押下することにより、図示しない内蔵電池から電力を供給して自動車玩具1のバッテリーを充電することが可能となっている。また、充電器9には電源LED93と充電LED94とが設けられており、電源LED93の点灯/消灯により電源のON/OFF状態を判別することができ、充電LED94の点灯/消灯により充電中/充電完了を判別することができる。
【0021】
以上の自動車玩具1によれば、前輪用シャーシ5と後輪用シャーシ6(アーム部61)とは、それぞれに形成された半球状の凹凸面を互いに摺動させつつ揺動可能であるので、従来のように摺動部を別体で設ける必要がなく、部品点数を減らすことができる。また、上部前輪用シャーシ52と下部前輪用シャーシ51とによってアーム部61の先端部61aを挟持しているので、従来のボールジョイント構造に比べて当該先端部61aが脱落しにくい。つまり、摺動部の脱落を抑制することができる。
【0022】
なお、本発明は上記実施形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることは勿論である。
【0023】
例えば、上記実施形態では、本発明に係る玩具用継手構造を自動車玩具のシャーシ連結部に適用した例によって説明したが、この適用例に限定されず、2つの玩具用部材を揺動可能に連結する構造であれば多岐に亘って適用することができる。
【0024】
また、アーム部61の先端部61aと前輪用シャーシ5の連結部55とに設けられる半球状の凸部や凹部は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。つまり、アーム部61は、同一の中心軸を有するとともに互いに同心状に形成された半球状の2つの摺動面を有していればよく、前輪用シャーシ5は、当該2つの摺動面のうちの一方の摺動面と相補的な半球状の第1被摺動面が形成された上部前輪用シャーシ52と、他方の摺動面と相補的な半球状の第2被摺動面が形成された下部前輪用シャーシ51とを有するとともに、一方の摺動面及び第1被摺動面と、他方の摺動面及び第2被摺動面とが個別に摺動可能なように、上部前輪用シャーシ52と下部前輪用シャーシ51とによってアーム部61の先端部61aを挟持していればよい。
【0025】
また、図8に示すように、自動車玩具1には、略帯状の横転防止リング10を設けることが好ましい。この横転防止リング10は、透明のポリカーボネートで形成されており、前後方向の略中央部で自動車玩具1を囲うように下部前輪用シャーシ51の裏面に固定されている。また、横転防止リング10の上端部には、前後方向への2つの突起部10a,10aが、車幅方向の中心を跨ぐように異なる周方向位置に形成されている。このような横転防止リング10を設けることにより、自動車玩具1を保護することができる他、自動車玩具1が横転しそうな場合に、この横転防止リング10が壁や路面と接触して自動車玩具1の体勢を復帰させることができる。また、自動車玩具1が反転してしまった場合でも、突起部10aの先端で支持される不安定な反転状態となるため、前輪21,21を操舵したり後輪31,31を駆動したりして反動をつけることで自動車玩具1の体勢を復帰させることができる。
【符号の説明】
【0026】
5 前輪用シャーシ(雌体)
6 後輪用シャーシ
51 下部前輪用シャーシ(第2雌体)
51a 第2凹部
52 上部前輪用シャーシ(第1雌体)
52a 第1凸部
55 連結部
61 アーム部(雄体)
61a 先端部
61b 第1凹部
61c 第2凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玩具用部材の雄体と雌体とを互いに揺動可能に連結する玩具用継手構造において、
前記雄体は、同一の中心軸を有するとともに互いに同心状に形成された半球状の2つの摺動面を有し、
前記雌体は、
前記2つの摺動面のうちの一方の摺動面と相補的な半球状の第1被摺動面が形成された第1雌体と、他方の摺動面と相補的な半球状の第2被摺動面が形成された第2雌体とを有するとともに、
前記一方の摺動面及び前記第1被摺動面と、前記他方の摺動面及び前記第2被摺動面とが個別に摺動可能なように、前記第1雌体と前記第2雌体とによって前記雄体を挟持していることを特徴とする玩具用継手構造。
【請求項2】
前記第1雌体には、半球状の第1凸部が形成され、
前記雄体には、前記第1凸部と相補的な半球状の第1凹部と、当該第1凹部とは反対方向へ突設された半球状の第2凸部とが互いに同心状に形成され、
前記第2雌体には、前記第2凸部と相補的な半球状の第2凹部が形成され、
前記第1雌体と前記第2雌体とは、前記第1凸部と前記第1凹部とを摺動可能に嵌合させるとともに前記第2凸部と前記第2凹部とを摺動可能に嵌合させつつ、前記雄体を挟持していることを特徴とする請求項1に記載の玩具用継手構造。
【請求項3】
前記雄体,前記第1雌体及び前記第2雌体は、弾性部材で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の玩具用継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−143090(P2011−143090A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6633(P2010−6633)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【出願人】(503439167)株式会社ギャング (9)
【Fターム(参考)】