説明

珪素含有イソシアネート化合物の製造方法

【課題】製造設備およびコストを低減することができ、製造効率よく経済的に珪素含有カルバメート化合物を製造することのできる、珪素含有イソシアネート化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】珪素含有イソシアネート化合物の製造方法において、一般式(1)で示される珪素含有アミン化合物と、一般式(3)で示される炭酸エステル化合物とを、Zr,Mn,Fe,SnおよびBiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む金属触媒の存在下で反応させることにより、一般式(4)で示される珪素含有カルバメート化合物を含む反応混合物を得るカルバメート製造工程と、前記反応混合物を、熱分解して、一般式(5)で示される珪素含有イソシアネート化合物を得る熱分解工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、珪素含有イソシアネート化合物の製造方法に関し、詳しくは、変性剤や末端封止剤として有用な珪素含有イソシアネート化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネート基は、水酸基やアミノ基などの活性水素基を有する有機化合物と容易に反応するため、イソシアネート基を有するオルガノ(ポリ)シロキサン(珪素含有イソシアネート化合物)は、有機化合物をシリコーン変性するために、変性剤や末端封止剤として、各種用途で用いられている。
このような珪素含有イソシアネート化合物は、従来より、アミノ基を含有するオルガノポリシロキサンとホスゲンとの反応により製造することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の方法では、有害なホスゲンを用いる上に、脱塩酸工程が必要であり、その脱塩酸工程にて生成する大量の塩を処理するための処理工程、および、その処理工程にかかるコストが不可避となる。さらに、製造された珪素含有イソシアネート化合物には、イソシアネート基の反応性を低下させる塩酸が残存するので、品質の向上を図るにも限界がある。
【0004】
一方、ホスゲンを用いることなく、珪素含有イソシアネート化合物を製造する方法として、珪素含有カルバミン酸エステルを、pH8以下で、金属または金属化合物の存在下、熱分解する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特許文献2に記載の方法では、ホスゲンに起因する不具合を生じることなく、珪素含有イソシアネート化合物を製造することができる。
【0005】
また、特許文献2の出発原料である珪素含有カルバミン酸エステルは、シリル基含有アルキルアミンと炭酸ジアルキルとの反応によって製造することができ(例えば、特許文献2、段落番号0020)、より具体的に、珪素含有カルバミン酸エステルを製造する方法として、例えば、アミノシランを、塩基性触媒の存在下で、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネートまたはこれらの混合物と反応させて、シリル有機カルバメートを含む反応混合物を得る方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平6−228161号公報
【特許文献2】特開平10−1486号公報
【特許文献3】特許第2963309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献3に記載される方法では、塩基性触媒として、具体的には、金属アルコキシド触媒が用いられており、工業的製造においては、作業者の安全性や機器の腐食を十分に考慮した対策が必要となる。
また、塩基性触媒を用いると、中和工程が必要となり、その中和工程にて生成する大量の塩を処理するための処理工程、および、その処理工程にかかるコストが不可避となる。
【0007】
本発明の目的は、製造設備およびコストを低減することができ、製造効率よく経済的に珪素含有カルバメート化合物を製造することのできる、珪素含有イソシアネート化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の珪素含有イソシアネート化合物の製造方法は、下記一般式(1)で示される珪素含有アミン化合物と、下記一般式(3)で示される炭酸エステル化合物とを、Zr,Mn,Fe,SnおよびBiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む金属触媒の存在下で反応させることにより、下記一般式(4)で示される珪素含有カルバメート化合物を含む反応混合物を得るカルバメート製造工程と、
【0009】
【化6】

【0010】
(式(1)中、Zは、下記一般式(2)で示される。)
【0011】
【化7】

【0012】
(式(2)中、R1〜R6は、同一または相異なって、1価の炭化水素基を示し、R7は、炭素数1〜8のアルキレン基を示し、n,m,lは、0〜3の整数を示し、かつ、n+m+l=3を満足する関係にあり、aは、0〜3の整数を示し、bは、0〜2の整数を示し、cは、0〜8の整数を示す。)
【0013】
【化8】

【0014】
(式(3)中、R8は、同一または相異なって、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基を示す。)
【0015】
【化9】

【0016】
(式(4)中、ZおよびR8は、上記と同意義を示す。)
前記反応混合物を、熱分解して、下記一般式(5)で示される珪素含有イソシアネート化合物を得る熱分解工程とを備えていることを特徴としている。
【0017】
【化10】

【0018】
(式(5)中、Zは、上記と同意義を示す。)
また、本発明の珪素含有イソシアネート化合物の製造方法では、前記金属触媒が、MnまたはMn化合物であることが好適である。
また、本発明の珪素含有イソシアネート化合物の製造方法では、前記カルバメート製造工程の後、前記熱分解工程の前に、前記反応混合物を、イソシアネート化合物で処理するイソシアネート処理工程を、さらに備えていることが好適である。
【0019】
また、本発明の珪素含有イソシアネート化合物の製造方法では、前記熱分解工程において、前記反応混合物を、pH8以下で熱分解することが好適である。
また、本発明の珪素含有イソシアネート化合物の製造方法では、前記熱分解工程において、前記反応混合物を、350℃以下で熱分解し、分解生成物である上記一般式(5)で示される珪素含有イソシアネート化合物とアルコール化合物とを、別々に回収するイソシアネート回収工程を、さらに備えていることが好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の珪素含有イソシアネート化合物の製造方法では、カルバメート製造工程において、珪素含有アミン化合物と炭酸エステル化合物とを、金属触媒の存在下で反応させることにより、珪素含有カルバメート化合物を含む反応混合物を得る。
そのため、塩基性触媒を用いる場合のような、作業者の安全性や機器の腐食に対する格別の対策や、中和工程を不要とすることができる。
【0021】
そして、本発明の珪素含有イソシアネート化合物の製造方法では、次いで、熱分解工程において、反応混合物を、熱分解して、珪素含有イソシアネート化合物を得るので、ホスゲンに起因する上記した不具合を生じることなく、珪素含有イソシアネート化合物を製造することができる。
その結果、本発明の珪素含有イソシアネート化合物の製造方法によれば、製造設備およびコストを低減することができ、製造効率よく経済的に珪素含有イソシアネート化合物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の珪素含有イソシアネート化合物の製造方法では、まず、カルバメート製造工程において、下記一般式(1)で示される珪素含有アミン化合物と、下記一般式(3)で示される炭酸エステル化合物とを、金属触媒の存在下で反応させる。
【0023】
【化11】

【0024】
(式(1)中、Zは、下記一般式(2)で示される。)
【0025】
【化12】

【0026】
(式(2)中、R1〜R6は、同一または相異なって、1価の炭化水素基を示し、R7は、炭素数1〜8のアルキレン基を示し、n,m,lは、0〜3の整数を示し、かつ、n+m+l=3を満足する関係にあり、aは、0〜3の整数を示し、bは、0〜2の整数を示し、cは、0〜8の整数を示す。)
【0027】
【化13】

【0028】
(式(3)中、R8は、同一または相異なって、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基を示す。)
上記一般式(2)において、R1〜R6で示される1価の炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニルなどの炭素数1〜9のアルキル基、例えば、ビニル、アリル、2−メチルアリル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−オクテニルなどの炭素数2〜10のアルケニル基、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリルなどの炭素数6〜20のアリール基などが挙げられる。
【0029】
R7で示される炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレンなどが挙げられる。
このような上記一般式(1)で示される珪素含有アミン化合物の具体例としては、例えば、α−トリメチルシリルメチルアミン、α−トリエチルシリルメチルアミン、α−トリメトキシシリルメチルアミン、α−ジメトキシメチルシリルメチルアミン、α−メトキシジメチルシリルメチルアミン、α−トリエトキシシリルメチルアミン、α−ジエトキシエチルシリルメチルアミン、γ−トリメチルシリルプロピルアミン、γ−トリエチルシリルプロピルアミン、γ−トリメトキシシリルプロピルアミン、γ−ジメトキシメチルシリルプロピルアミン、γ−メトキシジメチルシリルプロピルアミン、γ−トリエトキシシリルプロピルアミン、γ−ジエトキシエチルシリルプロピルアミン、γ−エトキシジエチルシリルプロピルアミン、6−トリメトキシシリルヘキシルアミン、6−ジメトキシメチルシリルヘキシルアミン、6−トリエトキシシリルヘキシルアミン、6−ジエトキシエチルシリルヘキシルアミン、γ−トリス(トリメトキシシロキシ)シリルプロピルアミン、γ−トリメトキシシロキシジメチルシリルプロピルアミン、γ−トリメチルシロキシジメトキシシリルプロピルアミン、γ−トリス(トリエトキシシロキシ)シリルプロピルアミン、γ−トリエトキシシロキシジエチルプロピルアミン、γ−トリエトキシシロキシジエトキシシリルプロピルアミン、γ−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルアミン、6−トリス(トリエトキシシロキシ)シリルヘキシルアミンなどが挙げられる。
【0030】
さらに、上記一般式(2)中、cで示される繰り返し単位として、ジアルキルポリシロキサン単位(例えば、ジメチルポリシロキサン単位など)、アルコキシアルキルポリシロキサン単位(例えば、メトキシメチルポリシロキサン単位など)、ジアルコキシポリシロキサン単位(例えば、ジメトキシポリシロキサン単位など)から選択される直鎖状オルガノポリシロキサンを有するものなどが挙げられる。
【0031】
このような、上記一般式(1)で示される珪素含有アミン化合物は、特に制限されることなく、公知の方法で合成することができ、また、工業原料として入手することもできる。
上記一般式(3)において、R8で示される炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0032】
また、R8で示される炭素数6〜8のアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリルなどが挙げられる。
このような上記一般式(3)で示される炭酸エステル化合物の具体例としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、例えば、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートなどが挙げられる。
【0033】
金属触媒としては、Zr(ジルコニウム),Mn(マンガン),Fe(鉄),Sn(錫)およびBi(ビスマス)から選択される金属単体または金属化合物が挙げられる。金属化合物としては、例えば、脂肪酸金属塩などの有機金属塩が挙げられる。
より具体的には、下記一般式(6)または下記一般式(7)で示されるカルボン酸金属塩が挙げられる。
【0034】
【化14】

【0035】
(式(6)中、Mは、金属を示し、R9は、ハロゲンで置換可能な炭素数1〜18の1価の炭化水素基を示す。)
【0036】
【化15】

【0037】
(式(7)中、R10は、ハロゲンで置換可能な炭素数2〜36の2価の炭化水素基を示す。)
上記金属触媒として、好ましくは、SnまたはSn化合物、MnまたはMn化合物が挙げられる。より好ましくは、MnまたはMn化合物、より具体的には、脂肪酸マンガン塩が挙げられる。MnまたはMn化合物を用いれば、珪素含有カルバメート化合物を高選択率で与えることができる。
【0038】
カルバメート製造工程において、珪素含有アミン化合物と炭酸エステル化合物との配合割合は、珪素含有アミン化合物1モルに対して、炭酸エステル化合物1〜20モルである。炭酸エステル化合物が1モルより少ないと、未反応の珪素含有アミン化合物が残存して、それが、下記反応式(8)に示すように、反応生成物である珪素含有カルバメート化合物と副反応して、次の熱分解工程において、熱分解により珪素含有イソシアネート化合物を生成しにくい尿素化合物を副生する。一方、炭酸エステル化合物が20モルより多いと、経済性の観点から実用的に不向きとなる。
【0039】
【化16】

【0040】
(式(8)中、ZおよびR8は、上記と同意義を示す。)
そして、カルバメート製造工程では、珪素含有アミン化合物と炭酸エステル化合物との反応は、上記した金属触媒の存在下、その反応温度が、0℃から、この反応により得られる反応生成液(反応混合物)の沸点までの温度の範囲において、より具体的には、例えば、30〜160℃の範囲において、常圧または加圧下で実施する。
【0041】
金属触媒は、金属単体または金属化合物として、珪素含有アミン化合物1モルに対して、例えば、0.0001〜20モル、好ましくは、0.01〜10モルの範囲で、添加する。
また、この反応において、溶媒の使用は任意であるが、溶媒を使用する場合には、好ましくは、熱分解工程において使用される不活性溶媒を、この反応の溶媒として用いる。そうすれば、この反応によって得られる反応生成液を、そのまま、熱分解に供することができ、製造効率の向上を図ることができる。
【0042】
そして、この反応では、上記一般式(1)で示される珪素含有アミン化合物と、上記一般式(3)で示される炭酸エステル化合物との反応により、下記一般式(4)で示される珪素含有カルバメート化合物が生成して、その珪素含有カルバメート化合物を含む反応混合物を、反応生成液として得ることができる。
【0043】
【化17】

【0044】
(式(4)中、ZおよびR8は、上記と同意義を示す。)
この反応において、未反応の珪素含有アミン化合物が残存すると、上記したように、それが、反応生成物である珪素含有カルバメート化合物と副反応して、熱分解により珪素含有イソシアネート化合物を生成しにくい尿素化合物を副生する。そのため、上記の反応終了後には、未反応の珪素含有アミン化合物が少なければ少ないほどよく、例えば、反応終了後において、反応生成液中の珪素含有アミン化合物と珪素含有カルバメート化合物との含有比率が、珪素含有アミン化合物(モル)/珪素含有カルバメート化合物(モル)=0/100〜50/50の範囲、好ましくは0/100〜30/70の範囲となるように、反応を終結させる。
【0045】
このように、未反応の珪素含有アミン化合物が低減されるように反応させれば、次に述べるイソシアネート処理工程において生成する珪素含有ビスウレア化合物を低減することができ、その結果、熱分解工程において、珪素含有ビスウレア化合物の熱分解により生成するジアミン化合物および副生するポリウレアを低減することができる。
次いで、この方法では、カルバメート製造工程で得られた反応混合物を、熱分解工程において、熱分解するが、反応混合物中に珪素含有アミン化合物が残存する場合、または、残存せずともその可能性がある場合には、カルバメート製造工程の後、熱分解工程の前に、必要により、イソシアネート処理工程において、反応混合物をイソシアネート化合物で処理する。
【0046】
反応混合物を、イソシアネート化合物で処理するには、反応混合物に、イソシアネート化合物を配合して、イソシアネート化合物と残存する珪素含有アミン化合物とを反応させる。
イソシアネート化合物としては、特に制限されないが、例えば、下記一般式(9)で示され、イソシアネート基を2つ有するジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0047】
【化18】

【0048】
(式(9)中、R11は、ハロゲンで置換可能な炭素数1〜18の2価の炭化水素基を示す。)
ジイソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、PDI(フェニレンジイソシアネート)、H6XDI(水添キシリレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、CHDI(シクロヘキサンジイソシアネート)、H12MDI(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、TMXDI(テトラメチルキシリレンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、NBDI(ジイソシアナトメチルノルボルナン)などが挙げられる。
【0049】
なお、イソシアネート化合物として、3つ以上のイソシアネート基を有するポリ(トリ、テトラ)イソシアネート化合物を用いることもできるが、そのようなポリ(トリ、テトラ)イソシアネート化合物を用いると、熱分解の実施途中で、架橋樹脂の生成により釜液が固化して、その後の処理に困難をきたすおそれがある。
イソシアネート化合物は、残存する珪素含有アミン化合物1モルに対して、例えば、イソシアネート化合物のイソシアネート基1〜20モルの範囲、好ましくは、1〜5モルの範囲で添加する。
【0050】
イソシアネート化合物が、イソシアネート基として1モルより少ないと、未反応の珪素含有アミン化合物が残存して、上記したように、次の熱分解工程において、熱分解により珪素含有イソシアネート化合物を生成しにくい尿素化合物を副生する。一方、イソシアネート化合物が、イソシアネート基として20モルより多いと、次の熱分解工程において、過剰のイソシアネート化合物が、熱分解により生成したアミン化合物(後述の反応式(13)参照。)と反応して、下記反応式(10)に示すように、ポリウレアを副生して、反応生成液の粘度上昇による攪拌不良を生じるおそれがある。
【0051】
【化19】

【0052】
(式(10)中、R11は、上記と同意義を示す。)
そして、イソシアネート処理工程において、添加されるイソシアネート化合物と、残存する珪素含有アミン化合物との反応は、その反応温度が、0℃から、この反応により得られる反応生成液(反応混合物)の沸点までの温度の範囲において、より具体的には、例えば、30〜160℃の範囲において、常圧または加圧下で実施する。
【0053】
また、この反応において、溶媒の使用は任意であるが、溶媒を使用する場合には、上記したように、好ましくは、熱分解工程の熱分解において使用される不活性溶媒を、この反応の溶媒として用いる。そうすれば、この反応によって得られる反応生成液を、そのまま、熱分解に供することができ、製造効率の向上を図ることができる。
そして、この反応では、上記一般式(1)で示される珪素含有アミン化合物と、例えば、上記一般式(9)で示されるイソシアネート化合物との反応により、下記一般式(11)で示される珪素含有ビスウレア化合物を生成させて、過剰の珪素含有アミン化合物を珪素含有ビスウレア化合物に変換することにより、珪素含有アミン化合物を含まず、珪素含有ビスウレア化合物をさらに含む反応混合物を、反応生成液として得ることができる。
【0054】
【化20】

【0055】
(式(11)中、ZおよびR11は、上記と同意義を示す。)
これによって、過剰の珪素含有アミン化合物を消失させることにより、次の熱分解工程において、熱分解により珪素含有イソシアネート化合物を生成しにくい尿素化合物の副生を防止することができる。
そして、この方法では、熱分解工程において、反応混合物を熱分解する。
【0056】
熱分解は、例えば、液相法、気相法などの公知の分解法が用いられる。好ましくは、液相法、より好ましくは、分解生成物である珪素含有イソシアネート化合物と、副生するアルコール化合物とを、系外に分離する反応蒸留方式により実施する。
さらに好ましくは、反応蒸留方式の実施後に、イソシアネート回収工程において、分解生成物である珪素含有イソシアネート化合物とアルコール化合物とを、分縮により別々に回収する。これらを別々に回収すれば、珪素含有イソシアネート化合物を容易に得ることができる。
【0057】
熱分解温度は、通常、350℃以下であり、好ましくは、80〜350℃、より好ましくは、100〜300℃である。80℃よりも低いと、実用的な反応速度が得られず、また、350℃よりも高いと、珪素含有イソシアネート化合物の重合など、好ましくない副反応を生じる場合がある。
また、熱分解圧力は、上記の熱分解温度に対して、生成する珪素含有イソシアネート化合物およびアルコール化合物が気化しうる圧力が好ましく、設備面および用役面から、実用的には、例えば、0.133〜90kPaである。
【0058】
また、熱分解において、反応系(反応混合物)中のpHは、8以下、好ましくは、4〜8に調整される。反応系中のpHを8以下にすれば、高純度の珪素含有イソシアネート化合物を、高収率で得ることができる。
なお、pHが8を超えると、好ましくない副反応を生じ、珪素含有イソシアネート化合物の収率が低下する場合がある。また、pHが4より低いと、アルコキシシリル基などの反応が促進されて、反応系中でポリシロキサンの重合を生じ、その結果、やはり、珪素含有イソシアネート化合物の収率が低下する場合がある。
【0059】
pHは、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの鉱酸を、反応系(反応混合物)中に添加することにより、適宜調整することができる。また、アルコキシシリル基の加水分解を抑制する観点から、ポリリン酸などの水分を含有しない酸を添加することも好適である。
また、この熱分解は、好ましくは、分解生成物である珪素含有イソシアネート化合物の沸点よりも、高沸点の不活性溶媒の存在下で実施する。不活性溶媒を用いない場合には、反応系中に、珪素含有ビスウレア化合物や珪素含有イソシアネート化合物が高濃度で存在してしまうため、反応が長時間にわたると、重合などの副反応を生じ、珪素含有イソシアネート化合物を高収率で得ることができない場合がある。
【0060】
このような不活性溶媒は、少なくとも、珪素含有ビスウレア化合物、珪素含有カルバメート化合物および珪素含有イソシアネート化合物に対して不活性であり、さらに、上記したように、珪素含有カルバメート化合物の合成やイソシアネート化合物による処理の段階から用いる場合には、珪素含有アミン化合物、炭酸エステルおよびイソシアネート化合物に対して不活性であることが必要とされる。
【0061】
また、この不活性溶媒は、珪素含有イソシアネート化合物の沸点よりも高い沸点を有することが必要とされる。不活性溶媒の沸点が、珪素含有イソシアネート化合物の沸点よりも低い場合には、熱分解の途中で不活性溶媒が気散してしまい、上記したように、珪素含有イソシアネート化合物を高収率で得ることができない場合がある。
このような不活性溶媒としては、例えば、常圧(101.3kPa)においてその沸点が、250〜550℃のものが好ましく、より具体的には、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジドデシルなどのエステル類、例えば、ジベンジルトルエン、フェニルナフタレン、ビフェニル、ジエチルビフェニル、トリエチルビフェニル、水素化トリフェニルなどの芳香族系あるいは脂環族系炭化水素類などが挙げられる。
【0062】
また、工業的には、熱媒体として常用されている、例えば、NeoSK−OIL1400(沸点391℃、総研化学(株)製)、NeoSK−OILL400(沸点440℃、総研化学(株)製)などの市販の高沸点溶媒などが挙げられる。
不活性溶媒の使用量は、反応混合物1重量部に対して、0.005〜100重量部の範囲、好ましくは、0.01〜50重量部、さらに、経済面から、実用的には、0.1〜20重量部の範囲である。なお、この使用量は、珪素含有カルバメート化合物の合成やイソシアネート化合物による処理の段階から用いる場合においても同様である。
【0063】
また、不活性溶媒を用いる場合には、反応混合物と不活性溶媒とを一括で仕込む回分反応、または、不活性溶媒中に減圧下で反応混合物を連続的に仕込む連続反応のいずれか方法で実施することができる。
また、熱分解工程では、所望により、珪素含有カルバメート化合物の合成に用いられ、反応混合物に含有される金属触媒以外に、他の触媒を添加することもできる。
【0064】
他の触媒として、例えば、イソシアネート基と水酸基とのウレタン化反応に用いられる、Sn、Sb、Fe、Co、Ni、Cu、Cr、Ti、Pbなどから選ばれる1種以上の金属単体またはその酸化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩、リン酸塩、有機金属化合物などの金属化合物が挙げられる。
Sn化合物としては、例えば、酸化スズ、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ、ギ酸スズ、酢酸スズ、シュウ酸スズ、ステアリン酸スズ、オレイン酸スズ、リン酸スズ、二塩化ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシジスタノキサンなどが挙げられる。Fe化合物としては、酢酸鉄、安息香酸鉄、ナフテン酸鉄、鉄アセチルアセトナートなどが挙げられる。
【0065】
そして、熱分解工程では、反応混合物中の珪素含有カルバメート化合物が熱分解されて、下記一般式(12)で示すように、イソシアネート化合物に対応するアルコール化合物を副生しながら、珪素含有イソシアネート化合物を生成する。
【0066】
【化21】

【0067】
(式(12)中、ZおよびR8は、上記と同意義を示す。)
また、イソシアネート処理工程が実施されている場合には、そのイソシアネート処理工程において生成する珪素含有ビスウレア化合物が、熱分解されて、下記反応式(13)で示すように、イソシアネート化合物に対応するアミン化合物を副生しながら、珪素含有イソシアネート化合物を生成する。
【0068】
【化22】

【0069】
(式(13)中、ZおよびR11は、上記と同意義を示す。)
そして、本発明の珪素含有イソシアネート化合物の製造方法では、上記したように、カルバメート製造工程において、珪素含有アミン化合物と炭酸エステル化合物とを、金属触媒の存在下で反応させることにより、珪素含有カルバメート化合物を含む反応混合物を得る。そのため、塩基性触媒を用いる場合のような、作業者の安全性や機器の腐食に対する格別の対策や、中和工程を不要とすることができる。
【0070】
また、次いで、熱分解工程において、反応混合物を、熱分解して、珪素含有イソシアネート化合物を得るので、ホスゲンに起因する弊害を生じることなく、珪素含有イソシアネート化合物を製造することができる。
その結果、本発明の珪素含有イソシアネート化合物の製造方法によれば、製造設備およびコストを低減することができ、製造効率よく経済的に珪素含有イソシアネート化合物を製造することができる。
【実施例】
【0071】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、実施例により何ら制限されるものではない。なお、以下の記載の単位は、特に言及がない限り、重量基準である。
実施例1
実施例1−1(カルバメート製造工程)
窒素導入管、温度計、精留塔、還流頭、冷却器を装備した1000mL4つ口フラスコを反応器として用いた。冷却器には15℃の水を流した。
【0072】
フラスコに、γ−トリエトキキシシリルプロピルアミン(信越化学工業(株)製 KBE−903)443g(2.0mol)、ジエチルカーボネート(三井化学(株)製 H−DEC)473g(4.0mol)および2−エチルヘキサン酸マンガン(II)(和光純薬工業(株)製 Mn8%)27.6g(0.04mol)を仕込み、フラスコをマントルヒーター内に設置した。
【0073】
反応系内を窒素置換した後、攪拌しながら昇温し128℃で、副生するエタノールを抜出しながら10時間反応させた。反応混合物の一部をサンプリングし、0.1N塩酸で電位差滴定したところγ−トリエトキキシシリルプロピルアミンの転化率は91%であった。また、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)で定量した結果、γ−トリエトキキシシリルプロピルカルバミン酸エチルの収率は88%であった。
【0074】
実施例1−2(イソシアネート処理工程)
窒素導入管、温度計、冷却器を装備した1000mL4つ口フラスコを反応器として用いた。冷却器には15℃の水を流した。
フラスコに、実施例1−1で得られた反応混合物856gおよびジフェニルメタンジイソシアネート(三井化学ポリウレタン(株)製 コスモネートPH)32.3g(0.13mol 、NCO/NHモル比=1.5)を仕込み、フラスコをマントルヒーター内に設置した。
【0075】
反応系内を窒素置換した後、攪拌しながら昇温し、80℃で4時間反応させた。
実施例1−3(熱分解工程)
窒素導入管、温度計、精留塔、還流頭、冷却器を装備した500mL4つ口フラスコを反応器として用いた。冷却器には20℃の水を流した。
フラスコに、実施例1−2で得られた反応混合物215gを85%リン酸0.74gでpH7.5に調整した液および不活性溶媒としてNeoSK−OIL1400(綜研化学(株)製)101gを仕込み、フラスコをマントルヒーター内に設置した。
【0076】
反応系内を窒素置換した後、攪拌しながら200℃まで昇温し、留出物を抜出した。次いで、冷却器に90℃の温水を流し、受器は冷メタノールで冷却したコールドトラップを通して真空ポンプへ連結した。
反応系内を11.4kPaに減圧し215℃まで昇温した。その後圧力11.4kPa以下、238℃までの温度で1.5時間反応させた。反応終了後、受器に87gのγ−トリエトキキシシリルプロピルイソシアネートが得られた(γ−トリエトキキシシリルプロピルアミン基準の粗収率73%)。
【0077】
この一部を、ジ−n−ブチルアミン(1Nトルエン溶液)でウレア化し、過剰のジ−n−ブチルアミンを0.5N塩酸で電位差滴定して、空試験と比較することにより、得られたγ−トリエトキキシシリルプロピルイソシアネートの純度が99%と求められた。
実施例2
実施例2−1(カルバメート製造工程)
フラスコに、γ−トリエトキキシシリルプロピルアミン222g(1.0mol)、ジエチルカーボネート237g(2.0mol)および2−エチルヘキサン酸マンガン(II)13.8g(0.02mol)を仕込み、反応時間を9.5時間とする以外は、実施例1−1と全く同様の操作により反応混合物を得た。
【0078】
反応混合物の一部をサンプリングし、0.1N塩酸で電位差滴定したところγ−トリエトキキシシリルプロピルアミンの転化率は92%であった。また、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)で定量した結果、γ−トリエトキキシシリルプロピルカルバミン酸エチルの収率は89%であった。
実施例2−2(イソシアネート処理工程)
実施例2−1で得られた反応混合物431gおよびジフェニルメタンジイソシアネート15.5g(0.06mol、NCO/NH2モル比=1.5)を仕込んだ以外は、実施例1−2と全く同様の操作により反応させた。
【0079】
実施例2−3(熱分解工程)
実施例2−2で得られた反応混合物211gを85%リン酸0.83gでpH7.1に調整した液、NeoSK−OIL1400 100gおよびジブチル錫ジラウレート(東京化成工業(株)製)1.7gを仕込んだ以外は、実施例1−3と全く同様の操作により熱分解した。
【0080】
反応終了後、受器に99gのγ−トリエトキキシシリルプロピルイソシアネートが得られた(γ−トリエトキキシシリルプロピルアミン基準の粗収率84%)。
この一部をジ−n−ブチルアミン(1Nトルエン溶液)でウレア化し、過剰のジ−n−ブチルアミンを0.5N塩酸で電位差滴定して、空試験と比較することにより、得られたγ−トリエトキキシシリルプロピルイソシアネートの純度が99%と求められた。
【0081】
実施例3
実施例3−1(カルバメート製造工程)
フラスコに、γ−トリエトキキシシリルプロピルアミン222g(1.0mol)、ジエチルカーボネート237g(2.0mol)および2−エチルヘキサン酸マンガン(II)13.8g(0.02mol)を仕込んだ以外は、実施例1−1と全く同様の操作により反応混合物を得た。
【0082】
反応混合物の一部をサンプリングし、0.1N塩酸で電位差滴定したところγ−トリエトキキシシリルプロピルアミンの転化率は91%であった。また、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)で定量した結果、γ−トリエトキキシシリルプロピルカルバミン酸エチルの収率は91%であった。
実施例3−2(イソシアネート処理工程)
実施例3−1で得られた反応混合物215gおよびジフェニルメタンジイソシアネート5.6g(0.02mol、NCO/NH2モル比=1.0)を仕込んだ以外は、実施例1−2と全く同様の操作により反応させた。
【0083】
実施例3−3(熱分解工程)
実施例2−2で得られた反応混合物212gを85%リン酸1.1gでpH7.1に調整した液、NeoSK−OIL1400 100gおよびジブチル錫ジラウレート(東京化成工業(株)製)1.6gを仕込んだ以外は、実施例1−3と全く同様の操作により熱分解した。
【0084】
反応終了後、受器に97gのγ−トリエトキキシシリルプロピルイソシアネートが得られた(γ−トリエトキキシシリルプロピルアミン基準の粗収率81%)。
この一部をジ−n−ブチルアミン(1Nトルエン溶液)でウレア化し、過剰のジ−n−ブチルアミンを0.5N塩酸で電位差滴定して、空試験と比較することにより、得られたγ−トリエトキキシシリルプロピルイソシアネートの純度が99%と求められた。
【0085】
実施例4(イソシアネート処理工程省略)
実施例3−1で得た反応混合物を、ジフェニルメタンジイソシアネートで処理することなく、その210g(pH10.0)を85%リン酸3.2gでpH7.0に調整したところ、ゼリー状となり流動性を失った。このゼリー状となった反応混合物、NeoSK−OIL1400 98gおよびジブチル錫ジラウレート1.4gを、上記と同様のフラスコに仕込んだ。冷却器には20℃の水を流した。
【0086】
反応系内を窒素置換した後、攪拌しながら200℃まで昇温し、留出物を抜出した。次いで、冷却器には90℃の温水を流し、受器は冷メタノールで冷却したコールドトラップを通して真空ポンプへ連結した。
反応系内を11.4kPaに減圧し220℃まで昇温した。その後圧力11.4kPa以下、230℃までの温度で反応させた。反応終了後、受器に52gのγ−トリエトキキシシリルプロピルイソシアネート(γ−トリエトキキシシリルプロピルアミン基準の粗収率43%)を得た時点で、反応液の粘度が著しく増大し攪拌困難となったため反応を中止した。
【0087】
得られたγ−トリエトキキシシリルプロピルイソシアネートの一部をジ−n−ブチルアミン(1Nトルエン溶液)でウレア化し、過剰のジ−n−ブチルアミンを0.5N塩酸で電位差滴定して、空試験と比較することにより、得られたγ−トリエトキキシシリルプロピルイソシアネートの純度が98%と求められた。
比較例1
2−エチルヘキサン酸マンガンを仕込むことなく、γ−トリエトキキシシリルプロピルアミン444g(2.0mol)およびジエチルカーボネート473g(4.0mol)を仕込んだ以外は、実施例1−1と全く同様の操作により反応混合物を得た。
【0088】
反応混合物の一部をサンプリングし、0.1N塩酸で電位差滴定したところγ−トリエトキキシシリルプロピルアミンの転化は確認できず、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)でも、γ−トリエトキキシシリルプロピルカルバミン酸エチルの生成は確認できなかった。
参考例1〜5
金属触媒として2−エチルヘキサン酸マンガン(II)、珪素含有アミン化合物としてγ−トリエトキキシシリルプロピルアミン、炭酸エステルとしてジエチルカーボネートを用いて、カルバメート製造工程を、表1に示す条件で実施した。
【0089】
参考例1(100℃)、参考例2(115℃)、参考例3(128℃)の12時間まで、および、参考例5(128℃)の12時間までは、γ−トリエトキキシシリルプロピルカルバミン酸エチルの選択率は良好であった。そのため、これらに、イソシアネート処理工程を実施して、残存するγ−トリエトキキシシリルプロピルアミンを対応する珪素含有ビスウレア化合物に転化し、次いで、熱分解工程を実施すれば、γ−トリエトキキシシリルプロピルイソシアネートを高収率で得ることができる。
【0090】
参考例3(128℃)の12時間より後、参考例4(140℃)および参考例5(128℃)の12時間より後では、γ−トリエトキキシシリルプロピルアミンの残存量は少なくなるが、γ−トリエトキキシシリルプロピルカルバミン酸エチルの選択率が低下した。
これは、上記した反応式(8)に示す副反応により、尿素化合物が生成した結果と考えられる。これらに対しても、イソシアネート処理工程を実施して、残存するγ−トリエトキキシシリルプロピルアミンを対応する珪素含有ビスウレア化合物に転化し、次いで、熱分解工程を実施すれば、γ−トリエトキキシシリルプロピルイソシアネートを得ることができる。しかし、その収率は、カルバメート製造工程のγ−トリエトキキシシリルプロピルカルバミン酸エチルの選択率低下に見合った分、低下すると考えられる。
【0091】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される珪素含有アミン化合物と、下記一般式(3)で示される炭酸エステル化合物とを、Zr,Mn,Fe,SnおよびBiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む金属触媒の存在下で反応させることにより、下記一般式(4)で示される珪素含有カルバメート化合物を含む反応混合物を得るカルバメート製造工程と、
【化1】

(式(1)中、Zは、下記一般式(2)で示される。)
【化2】

(式(2)中、R1〜R6は、同一または相異なって、1価の炭化水素基を示し、R7は、炭素数1〜8のアルキレン基を示し、n,m,lは、0〜3の整数を示し、かつ、n+m+l=3を満足する関係にあり、aは、0〜3の整数を示し、bは、0〜2の整数を示し、cは、0〜8の整数を示す。)
【化3】

(式(3)中、R8は、同一または相異なって、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基を示す。)
【化4】

(式(4)中、ZおよびR8は、上記と同意義を示す。)
前記反応混合物を、熱分解して、下記一般式(5)で示される珪素含有イソシアネート化合物を得る熱分解工程と
を備えていることを特徴とする、珪素含有イソシアネート化合物の製造方法。
【化5】

(式(5)中、Zは、上記と同意義を示す。)
【請求項2】
前記金属触媒が、MnまたはMn化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の珪素含有イソシアネート化合物の製造方法。
【請求項3】
前記カルバメート製造工程の後、前記熱分解工程の前に、
前記反応混合物を、イソシアネート化合物で処理するイソシアネート処理工程を、さらに備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載の珪素含有イソシアネート化合物の製造方法。
【請求項4】
前記熱分解工程において、
前記反応混合物を、pH8以下で熱分解することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の珪素含有イソシアネート化合物の製造方法。
【請求項5】
前記熱分解工程において、前記反応混合物を、350℃以下で熱分解し、
分解生成物である上記一般式(5)で示される珪素含有イソシアネート化合物とアルコール化合物とを、別々に回収するイソシアネート回収工程を、さらに備えていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の珪素含有イソシアネート化合物の製造方法。

【公開番号】特開2008−1613(P2008−1613A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170659(P2006−170659)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(501140544)三井化学ポリウレタン株式会社 (115)
【Fターム(参考)】